白書  厚生労働省ホームページ

「2003〜2004年 海外情勢報告」

諸外国における少子化の動向と次世代育成支援策


(要約版)




厚生労働省大臣官房国際課


まえがき


 「厚生労働省 海外情勢報告(海外情勢白書)」は、諸外国の労働情勢及び社会保障情勢全般に関する情報を整理・分析し、広く提供することを目的として、毎年厚生労働省においてとりまとめ、公表しているものです。

 今回の報告では、「諸外国における少子化の動向と次世代育成支援策」を特集として紹介しています。
 次代の社会を担う子ども達が健やかに生まれ育つためによりよい環境を整備することは、社会全体の重要な責務です。しかし、我が国では未婚化・晩婚化が依然として進行しており、さらに近年では、結婚した夫婦の出生力そのものも低下しています。こうした結果、生まれる子どもの数が減少しています。少子化の進行は、我が国における子どもの育つ環境が十分整備されている状況にはないことを意味するのかもしれません。子どもを生み、育てることを望んでいる者が何らかの理由であきらめている、あるいは、現在、子育てをしている者が仕事と子育ての両立や子育てそのものに負担感を持っているとしたら、とても残念なことです。また、社会全体で子どもが減少する場合、労働力や年金など社会経済に大きな影響が及ぶことも予想されます。これは現役世代だけでなく、将来大人となる子ども達の世代にとっても重要な課題です。したがって、少子化については、政府はもちろんのこと、地域、家庭、職場、学校など社会全体が、一層真剣に考え、取り組むことが必要です。
 少子化は我が国だけの課題ではありません。ヨーロッパ諸国は、我が国に先んじて少子化に直面してきました。また、近年は韓国、シンガポールなど、発展しつつあるアジア諸国においても少子化が進行しています。このように、少子化の問題は、今や世界的な課題となっています。
 こうした中で、少子化に直面している国々の対応は、我が国の今後の対応を考える上で大変参考になります。そこで、早くから少子化を経験しているヨーロッパ諸国の中から、フランス、ドイツ、イタリア、オランダ、ノルウェーを対象として、育児に対する経済的支援(児童手当等)、子育てと仕事の両立を支援する制度(育児休業等)、保育サービスなど、次世代の育成と密接に関係する施策について調査を実施しました。

 報告の後半では、欧米、アジア諸国の労働情勢及び社会保障情勢を紹介しております。諸外国の労働情勢を概観しますと、アメリカではイラク戦争終了後2003年後半から景気拡大が顕著になり、雇用も2004年に入り大幅に拡大しております。イギリスでは景気拡大により空前の低失業率を記録し、アジア諸国も多くの国では好調を持続しています。対照的に、フランスやドイツでは失業率が依然高い水準にあり、雇用は引き続き厳しい状況にあります。
 社会保障の分野では、ドイツとフランスで医療保険、年金制度について、財政の安定化に向けた制度の大胆な見直しが行われています。ドイツでは2003年9月に医療保険近代化法が制定され、2004年には公的年金保険法改正と公的年金保険持続法制定が相次いで実現しております。フランスでも2003年7月に年金改革法が成立して年金改革が着手されるとともに、2004年6月疾病保険改革法案が閣議決定され、国民議会で審議されているところです。

 今回の報告が、読者の皆様が海外の労働・社会保障情勢について理解を深める上で参考になれば、幸甚に耐えません。

2004年9月

厚生労働省大臣官房総括審議官 長谷川 真一


特集 諸外国における少子化の動向と次世代育成支援策


1.概要
 我が国では、子どもを生みたい人が生み育てやすいようにするための環境整備に力点を置いて、様々な対策を実施してきたところである。近年、従来の少子化の主たる要因であった晩婚化に加え、「夫婦の出生力そのものの低下」という新しい現象が見られ、現状のまま推移すれば我が国における少子化は今後一層進行すると予想される。急速な少子化の進行は、今後、我が国の社会経済全体に極めて大きな影響を与えるものであり、少子化の流れを変えるため、改めて政府・地方公共団体・企業等が一体となり、これまで以上に取組みを強化する必要がある。
 対策を進める上で、我が国に先んじて少子化に直面してきた国々の経験は参考になると思われる。そこで、特集では、早くから少子化が進行しているフランス、オランダ、ノルウェー、イタリア、ドイツを取り上げ、育児に対する経済的支援(児童手当等)、子育てと仕事の両立を支援する制度(育児休業、看護休暇制度、保育サービス等)等次世代育成に効果的と思われる施策について各国の制度や利用状況等を調査した。


2.調査対象国における少子化の動向
(1)若年者人口の動向
 調査対象国では、いずれも1970年代前半に若年者人口(15歳未満)のピークを迎えた後、1970年代から1980年代前半にかけて若年者人口の急速な減少を経験している(図1−1)

図1−1 若年者人口の推移(1970=100)
(%)
図
資料出所 国連事務局 経済社会部


 1980年代後半以降の動向は国によって異なり、オランダ、ノルウェーでは若年者人口が増加に転じた一方、フランス及びイタリアでは減少し続けている。ドイツでは1990年代は増加に転じたが、直近では再び減少している。
 全人口に占める若年者人口の割合は、全ての調査対象国で1970年代から1980年代前半にかけて低下傾向が顕著になった。この結果、1990年代半ばには全ての国で20%を割り込み、ドイツ、イタリアでは2000年には15%前後の水準にまで低下している(図1−2)

図1−2 全人口に占める若年者人口の割合の推移
図
資料出所 1−1に同じ。


(2)合計特殊出生率の動向
 全ての調査対象国では、女性が一生の間に出産する子どもの数に相当する合計特殊出生率は、若年者人口に先行して1970年代以降低下し始めた。1980年代に入ると、ノルウェーとオランダではゆるやかな上昇に転じる一方、ドイツ、イタリアでは緩やかに低下し続け、1.5を割り込んだ。フランスでは、1980年代後半から90年代前半にかけてなだらかに低下したが、依然比較的高い水準を維持している(図1−3)。

図1−3 合計特殊出生率の推移
図
資料出所 図1−1に同じ。


(3)少子化の背景
 若年者人口や合計特殊出生率の低下には、女性の社会進出や結婚・出産年齢の上昇等の現象が影響しているものとみられている。このうち、結婚については結婚数の減少や晩婚化、出産については晩産化が各国共通の特徴として見られ、出生数の減少を促しているものと思われる。一方、子どもを持つ女性を含め、女性の就業意欲が向上しているものの、希望通り就業している女性の割合は対象国の間で大きな違いが見られる。
 (1)結婚
 全ての調査対象国では、女性の人口に対する結婚数は低下しており、結婚しなくなる傾向が見られる。各国とも50歳未満の女性の結婚率(50歳未満の女性1,000人当たりの結婚数)は1970年代に大きく低下した。この傾向は1980年代後半まで続き、その後は概ね0.5から0.7の間で変動している(図1−4)。

図1−4 女性の結婚率の推移
図
資料出所 Council of Europe “Demographic Yearbook 2002”


 晩婚化も進展している。調査対象国における女性の初婚時の平均年齢は1960年代から1970年代にかけて22〜24歳の間の水準に低下していたが、1970年代前半を境にして上昇に転じ、27〜28歳前後の水準にまで上昇している(図1−5)。

図1−5 女性の平均初婚年齢の推移
図
資料出所 図1−4に同じ。


 (2)出産
 出産の高年齢化も調査対象国で共通して見られる。女性の平均出産年齢についてはおおむね1970年代後半を底として、その後は各国とも一貫して2〜3歳程度上昇している(図1−6)。

図1−6 女性の平均出産年齢の推移
図
資料出所 図1−4に同じ。


 (3)女性の就業環境
 女性の社会進出を示す労働力率(人口に対する就業者及び失業者の割合)は全ての調査対象国で上昇しており、女性の就業意識は向上している(図1−7)。

図1−7 女性(15〜64歳)の労働力率の推移
図
資料出所 経済協力開発機構“Labour Force Statistics 2003”


 出生傾向との関係では、出生傾向が回復している国は労働力率の上昇傾向が顕著である。反対に、出生率が低下している国では上昇傾向は緩やかである。
 子どもを持つ母親も近年では就業意欲が旺盛で、仕事と子育てとの両立を希望している。EUが1998年に実施したアンケート調査によると、6歳以下の子どもを持つカップルの大半は、男性がフルタイムで働くだけでなく、女性も何らかの形で働くことを希望しており、男性だけが働くことを希望するカップルはどの国でも少ない。
 ところが、実際の就業形態は理想と大きく異なっており、母親が就業していないカップルの割合は各国とも3割以上を占める。特に、出生率の低下傾向が著しいドイツとイタリアでは、6歳以下の子どもを持つカップルの7〜8割程度が母親の就労を理想としているにもかかわらず、現実に就業しているのは4割前後にとどまっており、理想と現実の割合が大きく乖離している。

表1−1 6歳以下の子どもを持つカップルの就業形態の理想と現実
(%)
  父親、母親
ともに労働
父親が労働、
母親は働かない
その他
フランス 現実 53.2 38.3 8.4
理想 74.3 14.1 11.7
ドイツ 現実 38.8 52.3 8.9
理想 74.9 5.7 19.4
イタリア 現実 46.7 43.3 10.0
理想 78.1 10.7 11.2
オランダ 現実 59.6 33.7 6.7
理想 75.5 10.7 13.8
資料出所 経済協力開発機構(OECD)“Employment Outlook 2001”
 上記データは、1998年に実施した調査“Employment Options of the Future”の回答から、6歳以下の子どもを持つカップルについて個票を集計したものである。


 このように、調査対象国では女性の就労意識が高まっているが、国によっては子育てと仕事の両立が困難な環境にあることが伺える。こうした国では、仕事を続けるため子どもを持つことを躊躇する女性も多いと考えられる。
 子どもを持つ女性の就業環境について、経済協力開発機構“Employment Outlook 2003”は、(1)「勤務時間」は子どもを持つ親にとって重要な労働条件であり、フルタイムでの勤務しか認められなければ、それだけ母親の就業機会は制約されることから、パートタイム労働へのアクセスが容易にすること、(2)保育施設の数を十分確保すること及び保育時間の柔軟性を維持・向上させること等の重要性を指摘している。
 女性の就労意欲が向上していることを踏まえ、女性が働き続けながら子どもを生み、育てることを容易にするためのこうした環境整備を行うことは、出生を促進する上でも重要な取組みと思われる。


3.調査対象国における次世代育成支援策

 これまで、調査対象国における少子化の動向と背景事情についてみてきた。 少子化に係る背景事情のうち、未婚化、晩婚化及び晩産化は各国とも共通してみられる現象である。しかしながら、これらの国においては、結婚や出産は個人的な問題と認識されている。このため、政府が結婚や出生の促進自体を目的として施策を講じることは希であり、少子化に関連する施策のほとんどは、子どもを持つ家庭や個人の負担を軽減することを目的としているものである。
 そこで、本稿では、調査対象国について、出生と関連の深い施策である、(1) 育児に対する経済的支援、(2) 出産・育児休暇や保育サービスなど子育てと仕事の両立支援施策等について調査した。

(1)育児に対する経済的支援
 調査対象国では、いずれも働く女性が出産する時に休暇を取得できる制度があり、休暇中は賃金の80〜100%を保障する手当が支給される。

表1−2 出産時の手当
フランス
出産休暇手当(出産休暇を取得する女性に、家族給付全国基金が休暇前賃金の80%を支給)
ドイツ
母性手当(出産休暇を取得する女性に対し、疾病金庫又は連邦保険庁から1日につき就労禁止期間の開始前3カ月間の平均手取り日額が支払われる。疾病金庫からは1日13ユーロ、連邦保険庁からは総額210ユーロが上限)休暇期間中も平均賃金相当額が使用者から支払われ、母性手当を受給した場合にはその額が控除される。
イタリア
出産手当(出産休暇を取得する女性に、休暇前賃金の80%を支給)
全国社会保障機関の出産手当(一定の社会保険料を納めた女性に対して一時金1,671.76ユーロを支給)
この他、州独自の出産手当がある。
オランダ
賃金保障(出産休暇を取得する女性に全国失業基金・就労不能基金が休暇前賃金の100%を支給。ただし、日額163.33ユーロが上限)
ノルウェー
出産手当(出産休暇を取得する女性に、国民保険が休暇前賃金の80%又は100%を支給。ただし、年収325,020クローネが上限)
注:出産休暇については表1−4参照。


 また、子どもを育てる親に対する手当の支給も行われている。支給内容は国によって異なる。支給要件等の違いがあることから、単純な比較はできないが、3歳未満の子ども1人に対する1カ月当たりの支給額をみると、ドイツ、フランス及びノルウェーは比較的高い水準にあるといえる。

表1−3 育児に関する主な手当
フランス
家族手当
20歳未満の子どもが2人以上いる世帯に支給される。子どもが2人の場合月額112.59ユーロ、3人の場合256.83ユーロ、第4子以降子ども1人当たり144.25ユーロが加算される。
乳幼児迎え入れ手当−基礎手当
子どもが誕生してから3歳になるまでの間(2004年1月1日以降に生まれた子どもが対象。2003年までに生まれた子どもについては乳幼児手当が支給される)、月額161.66ユーロが支給される。
ドイツ  18歳未満の子どもを持つ親は、次の2つの制度のうち1つを選択することができる。また、2歳以下の子どもを養育する非就業・不完全就業(週30時間以下の就業)の者は育児手当を受給できる(就業経験のない者も受給可能)。
児童手当
子ども1人につき月額154ユーロ(第4子以降は179ユーロ)が支給される。
児童扶養控除
子ども1人につき、年間5,808ユーロの扶養控除が適用される。
イタリア
家族手当
農家や自営業者で未成年の子どものいる世帯に対して、子ども1人当たり月額10.21ユーロが支給される。所得制限あり(3人家族の場合、年収19,555.12ユーロ以上で支給停止)。
核家族手当
未成年の子どもを3人以上持つ被用者に対して支給される。支給額は家族構成と世帯所得によって異なる(年間総所得が19,904.35ユーロ以下の世帯の場合、年間1,437.54ユーロが支給される)。
オランダ  18歳未満の子どもを持つ親は、児童手当か税制上の優遇措置を選択できる。
児童手当
18歳未満の子どもを持つ親に対して支給される。支給額は子どもの年齢によって異なる(6歳未満の子ども1人に対して3カ月で176.62ユーロが支給される)。
児童控除
世帯最高所得者の年収等により変わるが、18歳未満の子どもが3人以上いて、最高所得者の年収が28,079ユーロ以下の世帯の場合、721ユーロが控除される。この他、補足児童控除等がある。
ノルウェー
児童手当
18歳未満の子どもを持つ親に対して、子ども1人当たり月972クローネが支給される。


(2)子育てと仕事の両立支援策

 (1) 休暇制度
 いずれの調査対象国も出産休暇を制度化している。出産休暇の最長期間は、ドイツの14週間からイタリアの5カ月までとなっている。

表1−4 出産休暇
フランス
出産後6週間を含む最短8週間、最長16週間(3人目以降又は双子以上には特例あり)
ドイツ
産前6週間、産後8週間の計14週間
イタリア
産前2カ月+産後3カ月又は産前1カ月+産後4カ月の計5カ月(労働内容により出産後7カ月までの取得が可能)
オランダ
○産前6〜4週間、産後10〜12週間の計16週間
ノルウェー
産前12週間、産後6週間の計18週間


 また、ドイツ以外では育児休暇以外に父親が出産時に休暇を取得する制度も法制化されている。ドイツには出産時に父親が休暇を取得できる制度はないが、両親休暇(表1−6参照)を取得することができる。

表1−5 出産時の父親休暇
フランス
出産後11日間(双子以上の場合は18日間)
ドイツ
出産時の休暇は制度化されていない(両親休暇を取得できる)。
イタリア
死亡等により母親が子どもを養育できない場合、父親が出産休暇を取得できる
オランダ
出産後の2日間
ノルウェー
出産休暇出産前後の2週間


 育児休暇制度については、フランス、ドイツ、ノルウェーでは子どもが3歳になるまでの取得が可能である上、長期間休暇を取得することができる。一方、イタリアとオランダは子どもが8歳になるまでの間に取得することができるが、休暇の合計期間はそれぞれ合計10カ月、6カ月と短い。また、ノルウェーでは、母親の出産休暇明けに父親だけが取得できるパパ・クオータ制が設けられており、取得率は9割に達している。
 なお、どの国でも休暇中の給料は支払われないが、オランダ以外の国では政府から手当が支給されている。

表1−6 育児休暇制度
フランス
養育休暇
3歳未満の子どもを持つ親が取得できる。1〜3年間休職するか、パートタイム労働に移行できる。休暇中は第一子が生まれた場合には最長6カ月、子どもが2人以上いる場合には対象となる子どもが3歳になる前の月まで賃金補助が支給される。
ドイツ
両親休暇
3歳未満の子どもを持つ親が取得できる。両親合わせて最長3年間、休暇を取得するか、パートタイム労働に移行することができる。休暇中、子どもが満2歳になるまでは育児手当が支給される。
イタリア
両親休暇
子どもが満8歳になるまでの間、両親合わせて10カ月取得できる。休暇中は賃金の30%が全国社会保障機関から支給される。
オランダ
育児休暇
子どもが満8歳になるまでの間、合計6カ月間に週労働時間の半分を休暇として取得できる。フルタイムで取得する場合は最大13週間取得できる。民間の労働者は労働協約に特別の定めがない限り無給である。公的部門の労働者は賃金の75%まで支給される。
ノルウェー
育児休暇
3歳未満の子どもを持つ親が取得できる(最初の1年は両親が分割して取得し、残り2年は父親と母親が1年ずつ取得する)。休暇中は出産休暇(産前3週間と産後6週間)及びパパ・クオータの4週間を含む42週間まで国民保険より休暇前賃金相当額が支給される(52週間の80%支給も可能)。
パパ・クオータ
母親の出産休暇後から子どもが満1歳になるまでの間の最長4週間。休暇中は国民保険より、出産前の母親の就業割合に応じた賃金相当額が支給される。利用しない場合、出産・育児休暇手当の支給期間(合計52週間又は42週間)がその分短縮される。


 (2) 保育サービス
 少子化の進行しているドイツ、イタリアでは集団託児施設の整備が遅れている。
 フランスでは、1990年代以降託児施設の整備に取り組む一方、認定保育ママ(自宅か乳幼児の自宅で保育サービスを行う者)の拡充に取り組んだ結果、現在は認定保育ママが保育サービスの主流となっている。
 ノルウェーでは集団託児施設の整備が比較的進んでいて、対象乳幼児の66%が保育施設を利用しており、乳幼児の施設利用が一般的になっている。

表1−7 乳幼児向け集団託児施設
フランス 託児所は3歳未満の乳幼児を対象とする。
1997年に行われた調査では、3歳未満の乳幼児の9.5%が託児所に預けられている。
1998年の集団託児所の受入能力は13万8,400人であるが、政府は2001年から2004年までにさらに25万人増加させる予定である。
ドイツ 保育所は0〜3歳までの乳幼児を対象とする。
保育所の整備は旧西独地域を中心に遅れている。ノストライン・ヴェストファーレン州における保育所の利用者の割合は2001年で2.3%である。
政府は2005年から保育施設整備費として各自治体に15億ユーロの補助金を給付する予定。保育所及び学童保育所のカバー率を20%に引き上げることを目標としている。
イタリア 保育所は3歳未満の乳幼児を対象とする。
2003年の保育所数は3,008か所である。保育所の定員数は3歳未満の乳幼児数の約6%であり、整備が遅れている。
オランダ 保育所は0〜4歳の乳幼児を対象とする。
2001年では対象となる乳幼児の22.5%が利用している。
ノルウェー 保育施設は0〜5歳の乳幼児を対象とする。
2002年では対象となる1〜5歳児の66%が利用している。


 (3) 多様な働き方を実現するための取組み
 オランダではワークシェアリングの推進もあり、女性のパートタイム労働が積極的に受け入れられ、結婚、出産後も働く女性が大幅に増加している。全世帯に占める共働き世帯の割合は36%(1990年)から51%(2002年)まで増加している。
 また、女性が子どもを持つとパートタイム労働者の割合が大きく上昇しており、女性がフルタイム労働からパートタイム労働にシフトすることによって子育てとの両立を図ろうとしているという状況が伺える。

表1−8 オランダにおける女性労働者の就業形態別割合
(%)
  就業率  
フルタイム労働者の割合 パートタイム労働者の割合
70.9 31.3 39.6
子ども無し 75.3 46.5 28.8
子ども1人 69.9 19.2 50.7
子ども2人以上 63.3 11.0 52.3
資料出所 経済協力開発機構“Employment Outlook 2002”


(3)調査対象国における制度改革
 調査対象国では1970年代以降少子化が進行した。今後、少子化が一層進行することも予想されることから、最近では少子化に関連して以下のような施策が既に講じられ、あるいは導入が検討されている。

表1−9 最近の少子化関連施策の動き
フランス
託児所の増設のため「施設拡充のための乳幼児特別金庫」(FIPE)を創設(2001年)
養育手当等既存の手当を統合・整理し、「乳幼児迎え入れ手当」(PAJE)を導入(2004年)
ドイツ
児童手当と児童扶養控除を統合した一元化・選択的仕組を創設(1995年)
育児手当法を改正(2001年)
イタリア
第2子以降の出産に対する一時金支給制度を創設(2003年)
保育所を整備する事業主に対する助成開始(2003年)
オランダ
基本保育対策法(Wet Basisvoorziening Kinderopvang)制定に向けて審議開始(2004年)
ノルウェー
父親の育児参加の促進に向けたパパ・クオータ利用時の手当算出方法の見直し(実施時期未定)


(4)まとめ

 以上、調査対象国の次世代育成支援制度をみてきた。いずれの国においても、経済的支援、休暇制度、保育サービス等について一定の施策が講じられているが、国によって取組状況は異なっている。
 まず、ドイツでは、経済的支援は比較的手厚く、休暇制度も整備されているものの、保育所の整備はイタリア同様遅れている。前述したとおり、両国では母親の就労に関する理想と現実が乖離し、子育てと仕事の両立が困難な状況にあることが伺われるが、保育所整備の遅れも両立を困難にする要因の一つと考えられる。これらの国では乳幼児向けの集団託児施設の整備が急務となっている。こうしたことから、例えばイタリア政府は、職場内に保育所を設置する事業主に対する助成制度を新たに創設している。
 フランスでは、経済的支援制度や休暇制度は整備されている。また、保育所の整備は十分に進んでいるとはいえないが、認定保育ママを雇用する家庭に対する援助制度を導入する等した結果、認定保育ママの受入能力も大幅に拡大し、現在は保育サービスの主流となっている。さらに、近年は保育所の受入能力の拡充にも努めている。こうした取組みにより、仕事を続けながら子どもを育てる環境が整備されてきている。
 ノルウェーでは、次世代育成支援策が全般的に充実している。手当を伴う各種休暇制度が整備され、仕事を持つ母親の育児が容易になっているばかりでなく、父親の育児参加も進んでおり、パパ・クオータ制による休暇の取得率は9割程度に達している。また、集団託児施設の整備も進んでおり、乳幼児の施設利用が一般的になっている。
 オランダでは、育児休暇の取得可能な期間は比較的短いものの、ワークシェアリングの推進もあり、女性のパートタイム労働が積極的に受け入れられ、育児をしながら働くことが容易になっていると考えられる。
 このように、フランス、オランダ及びノルウェーにおいては、仕事と子育ての両立が可能となるような環境整備が進んでいると評価することができる。これら3カ国の合計特殊出生率が比較的高い水準にあることは、子どもを出産しても女性が働き続けられる環境を整備することの重要性を示唆するものといえよう。



4.今後の課題

 各国で少子化が進むに伴い、経済成長を支える労働力の確保や健全な社会保障制度の維持など、若年者人口の減少が社会に及ぼす影響に対する関心が高まりつつある。労働力確保等の観点からは一定の若年者人口を確保することが不可欠である。しかしながら現在では、今回の調査対象国を含む多くの国において、結婚や出産は個人的な問題と幅広く認識されている。このため、政府が結婚や出生の促進自体を目的として施策を講じることは希である。本報告では調査対象国ごとに出生に影響を及ぼす施策を紹介しているが、子どもを持つ家庭や個人の負担を軽減することを目的として講じられていることがほとんどである。
 こうした中で、少子化が進展しているイタリアで政府が第2子以降の子を出産した母親に対する一時金制度の導入に踏み切るなど、少子化の克服に向けて政府が出生の促進自体を目的として施策を講じるケースも見られつつある。少子化に直面した国が、その国の実情を踏まえ、結婚や出生という個人的な問題にどのような政策手段を組み合わせて関与していくか、今後の取組みが注目される。


2003〜2004年の海外情勢

主要国の労働施策の動向


I アメリカ

 経済及び雇用・失業等の動向
 米国経済は2001年3月から景気後退期に入ったが、2001年11月には景気が反転した。2003年7〜9月期の実質GDP成長率は年率8.2%と、大幅な伸びを記録し、以降、堅調に推移している。
 2003年に入ってからの雇用動向を見ると、年の半ばまで緩やかに減少したものの、サービス業の伸びなどに支えられ秋口から増加に転じた。失業率は6月の6.3%をピークに低下傾向で推移している。

 賃金・物価・労働時間等の動向
 2003年の週当たり名目賃金の上昇率は対前年比2.2%と、2002年より伸びが0.4ポイント低下した。2003年の週当たり支払い労働時間は前年より0.2時間少ない33.7時間となった。
 労働災害に関しては、死亡災害件数が2002年は前年に比べてやや減少した。
 労働組合に関しては、2003年は2002年に比して組合員数、組織率ともにそれぞれやや減少している。
 労働争議に関しては、2003年は2002年に比して争議件数はやや減少したが、参加人員・労働損失日数は大きく増大した。

 労働施策をめぐる最近の動向
(1)2004年大統領一般教書の発表
 ブッシュ大統領は、2004年1月、一般教書演説を行った。イラク復興の重要性を強調するなど、主に安全保障に言及した。内政面に関しては、減税の恒久化のほか、21世紀雇用プログラム(高等教育及び職業訓練の強化などが内容)、新移民政策(下記(2))などをあげた。
(2)新移民政策
 ブッシュ大統領は、2004年1月、不法滞在している外国人労働者や国内での就労を希望する外国人に対して、期限を定めた合法的就労を認める新制度を提案した。提案では、非合法で就労している外国人労働者について、不当に取り扱われないようにするため、「臨時労働者」としての地位を付与し、3年間の在留資格が与えられる、などとされた。
(3)連邦公正労働基準法関係規則改正
 2004年4月20日、連邦労働省は、連邦公正労働基準法関係規則の最終内容を公表した。所定外労働手当の割増や最低賃金に係る規制を受けるイグゼンプト労働者となるための要件の1つである賃金要件が、週給455ドル以上という基準に一本化された。また労働時間の20%以上を非イグゼンプト労働に投入する労働者はイグゼンプト労働者ではないとする従来の規定が撤廃された。施行は2004年8月23日からとなっている。


II イギリス

 経済及び雇用・失業の動向
 イギリスの2003年の実質GDP成長率は2.2%と、前年に引き続き堅調な伸びを示した。2003年前半もイラク戦争の影響は軽微にとどまり、その後欧州全体の経済の回復とともに拡大傾向が顕著になっている。
 雇用情勢を見ると、2003年の失業率は5.0%となり、極めて低い水準で推移している。就業者数は2,809万5,000人と引き続き増加傾向にあり、過去最高と言われる高水準を維持している。

 賃金・物価・労働時間の動向
 名目賃金上昇率は2003年には対前年比3.3%と2002年よりも0.3ポイント低下したが、2003年後半から再び伸びが高まっている。一方、消費者物価上昇率は1.4%と、2003年を通じて安定的に推移している。また、2003年のフルタイム雇用者の週当たり実労働時間は前年と同じ39.6時間となった。

 労働施策をめぐる最近の動向
(1)EU一般雇用均等指令の国内法化に向けた動き
 EU一般雇用均等指令の国内法化に係る措置として、2003年6月26日、雇用均等(性的指向)規則及び雇用均等(宗教又は信条)規則が成立した。また、2003年7月から10月の間、職場における年齢差別を禁止する法律を制定するため、施策の枠組を示した協議書を発表し、パブリック・コメントの募集を開始した。政府は、指令の国内法化の期限である2005年3月23日までに国内法を整備することを予定している。
(2)一人親・就労不能給付受給者に対する就労支援
 2003年10月2日、雇用年金省は、就労していない一人親に対する新たな支援事業を2004年10月より試験的に実施することを発表した。また、2003年10月27日より、就労不能給付(Incapacity Benefit)の受給者が就労に復帰するための支援事業(“Pathways to Work”pilots )の試行が開始された。
(3)2003年雇用関係法案の議会提出
 2003年12月2日、雇用関係法改正法案(Employment Relations Bill)が議会に提出された。同法案の主な内容は、労働組合の法定承認制度の改正、労働争議の実施に係る組合員投票制度の改正等である。2004年秋に成立する見通しである。


III ドイツ

 経済及び雇用・失業の動向
 2003年の経済成長率はマイナス0.1%となり、前年に比べさらに低成長となった。
 雇用情勢を見ると、2003年の失業率は10.5%となり、引き続き高い水準で推移している。

 賃金・物価・労働時間等の動向
 製造業生産労働者の時間当たり実収賃金上昇率は、2003年は2.5%となった。
 消費者物価上昇率は、2003年は対前年比1.1%となった。
 製造業生産労働者の週当たり支払い労働時間は、2003年は37.9時間となった。

 労働施策をめぐる最近の動向
(1)労働市場改革に関する主な動き
 シュレーダー政権が雇用失業対策の切り札として、1999年の政権発足当時から取り組んできた労働市場改革については、首相の諮問委員会であるハルツ委員会の最終報告(2002年8月)を基に法案が作成され、一部を除き2002年末までに成立し、実施された。2002年の再選後、シュレーダー首相は労働市場改革を本格化させ、2003年3月、労組等の反対で見送られていた失業給付期間の短縮や解雇保護法(解雇を規制する法律)の緩和や失業扶助と社会扶助の整理・統合等を実施すべく「アジェンダ2010」を提案した。
 2003年には、「アジェンダ2010」に関連する法案がすべて成立し2004年始めから実施(失業給付に係る改正の部分は2006年早期の予定)された。
(2)2003年の労使交渉結果
 ドイツ経済・社会科学研究所(WSI)がまとめた2003年の労使交渉結果によると、2003年に妥結した労使協約(各協約とも産業内の8割以上の雇用者をカバーし、対象となる雇用者総数は890万人)による平均賃上げ率は2.5%となり、2002年の2.7%よりは若干伸びが低下した。
 産業・業種別にみると、最も高い伸びとなったのは、建設業及び公部門で3.0%、最も低いのは銀行・保険業の2.1%であった。また、旧東独地域では3.0%と、旧西独地域の2.4%を若干上回った。この結果、旧東独地域の平均協約賃金は旧西独地域の93.4%(2002年92.8%)となった。


IV フランス

 経済及び雇用・失業の動向
 フランスの経済は2000年をピークに減速傾向である。2003年の経済成長率は0.5%となり、前年に比べさらに低下している。 雇用情勢をみると、2003年の失業率は9.7%となり、2001年第2四半期以降上昇傾向にある。

 賃金・物価・労働時間等の動向
 非農業労働者の時間当たり賃金上昇率は、2000年に週35時間労働制導入の影響もあり前年同期比で5.2%となった後やや低下し、2003年は2.8%となった。
 職種・職位別の平均月収は、2001年は生産労働者が1,640ユーロ、事務労働者が1,660ユーロ、技術者が2,370ユーロ、幹部職(カードル)が4,330ユーロとなった。
 消費者物価上昇率は安定して推移し、2003年は2.1%となった。
 2000年2月1日(20人以下の事業所は2002年1 月1日)の週 35 時間労働制の導入以来、非農業労働者の週当たり実労働時間は短くなっており、2003年は35.6時間となった。

 労働施策をめぐる最近の動向
(1) 労働市場改革に向けた取組みがスタート
 2003年12月、シラク大統領は、雇用対策法成立に向け労使との協議を開始するようラファラン内閣に指示した。政府は2004年1月、公的雇用サービスの改善に関するマランベール報告書と労働規制の緩和に関するビルビル報告書をそれぞれ受理し、両報告書に基づいて労使と意見調整し、労働関係法規の明確化(簡素化)、公的雇用サービスの刷新、若年層の就職サポート体制の強化等を内容とする雇用対策法案の策定に着手した。
(2)「職業訓練と労使対話」に関する法案の成立
 2003年12月、職業訓練の刷新と低学歴者及び中小企業の被用者の職業訓練に関する不平の是正を目的とし、被用者に年間20時間の職業訓練(有給)を与えるなどを内容とする「職業訓練と労使対話」に関する法案が国民議会において可決された。
(3) 使用者の社会保険料負担軽減策の実施
 2003年1月17日施行の「賃金・労働時間・雇用促進法」(通称フィヨン法)に基づき、6種類ある最低賃金が2005年までに最も高い額に一本化されることとなり、労働コスト増加に対応するため、7月1日より、低賃金労働者に対する使用者の社会保険料負担が最高で月額保証賃金(GMR)の26%相当額まで控除されることとなった。


V 韓国

 経済及び雇用・失業等の動向
 韓国では、1997年末に通貨・経済危機に陥ったものの経済は短期間で急速に回復し、2002年には6.9%の成長となったが、2003年は3.1%の成長となっている。
 通貨・経済危機以降、雇用情勢は急速に悪化したが景気の回復に伴いその後は改善に転じた。2003年の失業率は前年に比べて微増の3.4%となった。最近では若年者の失業率の高さ、正規・非正規労働者間の労働条件格差が社会問題になっている。

 賃金・物価・労働時間等の動向
 賃金に関しては、1997〜1998年の経済危機で上昇は鈍化したが、経済の回復とともに伸びを回復している。
 労働時間に関しては、1999年から減少傾向にある。

 労働施策をめぐる最近の動向
(1)外国人雇用労働許可制の導入
 2003年8月、「外国人勤労者の雇用等に関する法律」が公布され、「不法在留外国人に対する就業確認及び在留資格申請基準・手続等」が公告された。これにより、2003年9月から一定の不法在留者に対しては一定の就業資格を付与するなど就業を認め、その他の不法在留者については自発的出国猶予期間を定めその後取り締まりを行うこととされた。
(2)改正勤労基準法の成立(週40時間労働制の導入)
 2003年8月、勤労基準法改正案が成立した。これにより、公企業、金融・保険業及び労働者1,000人以上の企業については2004年7月から、労働者が20人以上1,000人未満の企業については2008年7月までに段階的に、20人未満の小企業についても2011年までに、法定週労働時間が現行の44時間から40時間となることとなった。
(3)政労使による「雇用創出のための社会協約」の締結
 2004年2月10日、労使政委員会本委員会は、「雇用創出のための社会協約」を採決した。この協約により、(1) 労働組合は相対的に賃金の高い部門で今後2年間賃金の安定に協力すること、(2) 使用者側は雇用調整を最大限自制することについて合意した。また政府は、企業投資の活性化と雇用の拡大のため、規制緩和や税制上の支援を拡大することとなっている。


VI 中国

 経済及び雇用・失業の動向
 中国では消費の堅調な増加や輸出増による生産の増加などから景気拡大が続いており、2003年の経済成長率は9.1%と1996年以来の高い伸びとなった。

 賃金・物価・労働時間等の動向
 都市部労働者の年間実収賃金の上昇率は、2003年は13.0%となった。
 消費者物価上昇率は、2003年に1.2%となった。

 労働施策の最近の動向
(1) 全国人民代表大会(第10期第2回)の開催
 第10期第2回全国人民代表大会が2004年3月5日から14日まで開催された。温家宝総理は「政府活動報告」(以下「報告」という。)の中で、2004年度の政府活動の主要任務として、国有企業改革の加速とともに、都市部での「下崗労働者」(注1)の再就職促進や社会保障の充実等について述べた。
(2) 就業・社会保障関係部分
 昨年の報告と比較して「就業問題」への言及は記述が具体的になりかつ量も増加した。就業問題の重点は、「下崗労働者」(注1)から「出稼ぎ労働者」(注2)に移行した。現在、社会問題化(注3)している出稼ぎ労働者への給与不払い・遅配の防止について詳述されており、この問題への政府の関心の強さを示している。

(注1) 国有企業からの一時帰休者。実際は一定期間の所得保障の後解雇。
(注2) 地方から都市部に期間限定で働きに来ている労働者。現在9,300万人に上ると言われる。
(注3) 中国では地方からの農民出稼ぎ労働者に対する賃金未払いの問題が深刻化している。賃金未払い総額は、農民の平均年収3,800万人分に相当する1,000億元に上るとの報道もある。2003年、政府は、未払いの多い建設業界などに、3年以内に問題を解決するよう通知した。

表1 各国の実質GDP成長率の推移
(%)
地域別 国名 2001 2002 2003   2004
1〜3月 4〜6月 7〜9月 10〜12月 1〜3月
欧米諸国 アメリカ 0.3 2.4 1.1 2.0 3.1 8.2 4.1 4.2
イギリス 2.1 1.6 2.2 1.9 2.2 2.2 2.7 3.1
ドイツ 0.8 0.2 -0.1 0.4 -0.7 -0.2 0.2 1.5
フランス 2.1 1.1 0.5 0.8 -0.1 0.4 1.1 1.7
EU 1.6 1.0 0.7 0.1 0.0 0.5 0.5 0.6
アジア 韓国 3.8 6.9 3.1 3.7 2.2 2.4 3.9 5.3
中国 7.5 8.0 9.1 9.9 8.2 8.7 9.1 9.8
シンガポール -2.4 2.2 1.1 1.7 -3.9 1.7 4.9 7.5
インドネシア 3.4 3.7 4.2 4.2 4.0 4.3 4.1 4.5
タイ 2.1 5.4 6.8 6.7 5.8 6.6 7.8 6.5
フィリピン 3.0 3.1 4.7 4.8 4.2 4.8 5.0 6.4
オーストラリア 2.8 3.5 3.3 0.9 0.3 1.4 1.3 0.2
ロシア 5.1 4.7 7.3 6.8 7.2 6.2 7.6 7.4
資料出所 内閣府「海外経済データ」及び各国資料
(注) アメリカの四半期は前期比年率。ロシアは各期末の前期末比。他は前年同期比。


表2 各国の失業率の推移
(%)
地域別 国名 2001 2002 2003   2004
1〜3月 4〜6月 7〜9月 10〜12月 1〜3月
欧米諸国 アメリカ 4.8 5.8 6.0 5.8 6.1 6.1 5.9 5.6
イギリス 4.9 5.2 5.0 5.1 5.0 5.0 4.9 4.7
ドイツ 9.4 9.8 10.5 10.4 10.6 10.6 10.5 10.4
フランス 8.7 9.0 9.7 9.5 9.7 9.8 9.9 9.8
EU 7.4 7.7 8.1 8.0 8.1 8.1 8.1 8.1
アジア 韓国 3.8 3.1 3.4 3.1 3.4 3.5 3.6 3.3
中国 3.6 4.0 4.3
シンガポール 3.3 4.4 4.7 4.5 4.6 5.5 4.5 4.5
インドネシア 8.1 9.1 9.5
タイ 3.3 2.4 2.2 2.8 2.5 1.5 1.8 2.8
フィリピン 11.1 11.4 11.4 10.6 12.2 12.6 10.2 11.0
オーストラリア 6.8 6.3 5.9 6.6 6.1 5.6 5.2
ロシア 8.9 7.9 8.4 9.1 8.2 7.9 8.0 8.9
資料出所 内閣府「海外経済データ」及び各国資料
(注) 失業率の定義は各国ごとに異なるため、厳密な比較はできない。


表3 各国の物価上昇率の推移
(%)
地域別 国名 2001 2002 2003   2004
1〜3月 4〜6月 7〜9月 10〜12月 1〜3月
欧米諸国 アメリカ 2.8 1.6 2.3 2.9 2.1 2.2 1.9 1.8
イギリス 1.2 1.3 1.4 1.5 1.3 1.4 1.3 1.3
ドイツ 2.0 1.4 1.1 1.2 0.9 1.1 1.2 1.0
フランス 1.7 1.9 2.1 2.4 1.9 2.0 2.2 1.9
EU 2.2 2.1 2.0 2.2 1.8 1.9 1.9 1.6
アジア 韓国 4.1 2.7 3.6 4.1 3.3 3.2 3.5 3.2
中国 0.7 -0.8 1.2 0.5 0.6 0.7 1.2 2.8
シンガポール 1.0 -0.4 0.5 0.7 0.2 0.5 0.7 1.4
インドネシア 11.5 11.9 6.6 7.7 7.0 6.1 5.5 4.9
タイ 1.7 0.6 1.8 2.0 1.8 1.9 1.6 1.9
フィリピン 6.1 3.1 3.1 2.9 3.2 3.3 3.4 3.9
オーストラリア 4.4 3.0 2.8 3.4 2.7 2.6 2.4 2.0
ロシア 18.6 15.1 12.0 5.2 2.6 0.6 3.1 3.5
資料出所 内閣府「海外経済データ」及び各国資料
(注) 前年比又は前年同期比。


表4 各国の名目賃金上昇率の推移
(%)
地域別 国名 2001 2002 2003   2004
1〜3月 4〜6月 7〜9月 10〜12月 1〜3月
欧米諸国 アメリカ 2.7 2.6 2.2 3.2 2.2 2.1 1.6 1.5
イギリス 4.4 3.6 3.3 3.3 3.0 3.6 3.4 5.2
ドイツ 1.8 2.3 2.5 3.0 3.1 2.3 2.3 2.4
フランス 4.2 3.6 2.8 2.9 2.6 2.9 2.7 2.8
EU 2.6 3.3
アジア 韓国 6.3 12.0 8.8 14.1 7.2 7.9 6.4
中国 16.0 14.3 13.0
シンガポール 2.3 0.8 1.7
インドネシア 31.8
タイ 2.5 -1.3 2.7 2.7 1.2 3.1 1.9
フィリピン 10.3 10.3
オーストラリア 4.7 3.8 5.2 2.1 1.0 1.1 1.6
資料出所 各国資料
(注) 前年比または前年同期比。
 アメリカは民間非農業、生産・非監督的労働者の週当たり賃金。四半期は、それぞれ3、6、9、12月の数値。
 イギリスは非農業主要産業労働者の週当たり賃金。
 ドイツは製造業生産労働者の時間当たり賃金。
 フランスは非農業、生産労働者の時間当たり賃金。
 EUは製造業労働者の時間当たり賃金。
 韓国は製造業常用の月当たり賃金。
 中国は都市部雇用者の年間実収賃金。
 シンガポールは非農業主要産業労働者の月当たり賃金。
10 インドネシアは全産業雇用者の週当たり賃金。
11 タイは全産業雇用者の月当たり賃金の各年第1四半期の上昇率。
12 フィリピンは非農業の月間実収賃金。
13 オーストラリアは全産業雇用者の週当たり賃金。


表5 各国の週労働時間の推移
(時間)
地域別 国名 2001 2002 2003  
1〜3月 4〜6月 7〜9月 10〜12月
欧米諸国 アメリカ 34.0 33.9 33.7  33.6 33.7 33.9 33.8
イギリス 39.8 39.6 39.6 
ドイツ 38.0 37.9 37.9 37.3 37.9 38.0 38.1
フランス 36.1 35.7 35.6 35.6 35.6 35.6 35.7
アジア 韓国 47.0 46.2
シンガポール 46.2 46.0 46.0
フィリピン 41.5
オーストラリア 35.2 35.0
資料出所:各国資料及びILO”Yearbook of Labour Statistics 2003”
(注) アメリカは民間非農業、生産・非監督的労働者の週当たり支払い労働時間。
 イギリスは全産業フルタイム労働者の週当たり実労働時間。4月時点の数値。
 ドイツは製造業生産労働者の週当たり支払い労働時間。
 フランスは非農業労働者の週当たり実労働時間。
 韓国は非農業漁業雇用者の週当たり実労働時間。
 シンガポールは全産業労働者の週当たり実労働時間。
 フィリピンは全産業労働者の週当たり実労働時間。
 オーストラリアは全産業雇用者の週当たり実労働時間。
 労働時間の定義は各国ごとに異なるため、厳密な比較はできない。


表6 各国の労働組合組織率の推移
(%)
国名 1997 1998 1999 2000 2001 2002
アメリカ 14.1 13.9 13.9 13.5 13.4 13.3
イギリス 30.4 29.9 29.6 29.5 29.1
ドイツ 34.8 32.2 30.0 29.0 27.0 26.6
韓国 13.3 12.2 12.6 12.0 12.0
シンガポール 14.2 14.9 15.5 16.7 16.2 19.0
タイ 2.1 2.0
マレーシア 8.3 8.6 8.3 8.2
フィリピン 27.0 27.0 27.1 27.2
オーストラリア 30.3 28.1 25.7 24.7 24.5
資料出所 各国資料
(注) フィリピンの組織率は、組合員数÷賃金労働者数。


表7 各国の労働争議件数の推移
(件)
国名 1997 1998 1999 2000 2001 2002
アメリカ 29 34 17 39 29 19
イギリス 216 166 205 212 194 146
ドイツ 144 46 200 67 48
フランス 1,607 1,475 2,319 3,142 2,131
韓国 78 129 198 250 235 322
シンガポール 253 291 246 231 266 260
インドネシア 234 272 125 273 174 174
タイ 23 8 16 13 5
マレーシア 5 12 11 11 13 4
フィリピン 93 92 58 60 43 36
オーストラリア 447 519 731 698 675 766
資料出所 各国資料及びILO”Yearbook of Labour Statistics 2002”
(注) 労働争議件数の定義は各国ごとに異なるので、厳密な比較はできない。


2003〜2004年の海外情勢

主要国の社会保障施策の動向


I アメリカ
 アメリカでは2003年12月、メディケア制度改革法案が成立し、1965年のメディケア制度(高齢者及び障害者向け公的医療保険)発足以来の大きな改正が実現した。この法改正により、これまで保険の適用外だった外来患者に係る処方せん薬代が適用対象に加わることとなった。

II イギリス
 イギリスでは、労働党政権下における公共サービスの「近代化」政策のため支出が伸び続ける一方、税収が伸び悩みつつある。ブラウン財務大臣は、2004年度の財政演説でも、NHS(国民保健サービス)、教育等の重点分野に対する投資を今後も継続するとしており、その財源として中央省庁の大幅なリストラを含む行政の効率化を掲げている。また、2004年、(1)年金保護基金(Pension Protection Fund)の設置、(2)年金監督機関の新設、(3)支給開始を繰り延べた人に対する繰り延べ年金の一括支給制度の創設が盛り込まれた年金改革関連法案が国会に提出されている。

III ドイツ
 ドイツでは、2003年3月、シュレーダー首相が連邦議会における所信表明演説で、自らの改革方針「アジェンダ2010」を公表し、労働市場改革とともに、医療保険改革、年金保険改革を断行することを宣言した。その後、2003年9月に医療保険改革法、2003年12月に短期的年金改革法、2004年3月に中長期的年金改革法と、「アジェンダ2010」に関連する法律が成立した。

IV フランス
 フランスでは、2003年7月、(1)公務員の満額年金受給資格取得のための保険料拠出期間を現在の37.5年から2008年までに民間と同じ40年に延長する、(2)さらに、2012年までに41年、2020年までに41年9カ月に延長することを検討する、(3)満期加入の低所得者に対する年金給付の最低保証額を最低賃金(SMIC)の85%とすること等を内容とする年金改革法案が成立した。

V 中国
 中国では、近年、医療、年金制度の改革が行われ、財源を個人口座の設定など個人拠出に依存するとともに、給付限度額等を設定するなど、自助努力を含めた多層的な対応によって、保障を確保しようとしている。
 また、都市企業労働者に対する老後所得保障や医療保障を図るため、(1)WTO加盟等を背景とする国有企業等の競争力立て直し(過剰な企業負担の軽減)、(2)個人負担を含む安定的な拠出財源を背景にした安定的な給付の実現(国有企業の年金財政の破綻が背景)、(3)国有企業以外の企業に勤務する従業者等の老後保障の確保等を目的とする全国統一的な新たな年金制度(基本年金制度)の普及・移行等が進められている。


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