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2017年8月2日 第9回厚生労働省国立研究開発法人審議会高度専門医療研究評価部会

医政局医療経営支援課

○日時

平成29年8月2日(水)12:00~15:00


○場所

都道府県会館4階401会議室


○出席者

委員

永井部会長 内山部会長代理 大西委員 祖父江委員 花井委員 深見委員 福井委員 藤川委員 本田委員

○議題

(1)国立研究開発法人国立精神・神経医療研究センターの平成28年度業務実績評価について
(2)国立研究開発法人国立がん研究センターの平成28年度業務実績評価について
(3)その他

○配布資料

【国立精神・神経医療研究センター】
資料1-1 平成28事業年度 業務実績評価書(案)
資料1-2 平成28事業年度 業務実績評価説明資料
資料1-3 平成28年度 財務諸表等
資料1-4 平成28年度 監査報告書
【国立がん研究センター】
資料2-1 平成28事業年度 業務実績評価書(案)
資料2-2 平成28事業年度 業務実績評価説明資料
資料2-3 平成28年度 財務諸表等
資料2-4 平成28年度 監査報告書
【参考資料】
参考資料1 国立研究開発法人審議会高度専門医療研究評価部会 委員名簿
参考2-1 独立行政法人の評価に関するスキーム
参考2-2 独立行政法人の評価に関する指針(抜粋)
参考2-3 平成26年度評価等についての点検結果
参考2-4 平成27年度評価等についての点検結果

○議事

 

○医政局医療経営支援課江口課長補佐

それでは、定刻になりましたので、ただいまから第9回「厚生労働省国立研究開発法人審議会高度専門医療研究評価部会」を開催いたします。

 議事に進むまでの間、進行役を務めさせていただきます医政局医療経営支援課の課長補佐をしております江口と申します。どうぞよろしくお願いいたします。

 委員の皆様には、大変お忙しい中、お集まりいただきまして、本当にありがとうございます。

 まず初めに、委員の先生の御紹介をさせていただきます。

 委員任期中の大西委員以外の委員の先生におかれましては、6月30日をもって委員の任期が満了となりましたが、皆様から引き続き御就任いただいております。

 なお、本会議に先立ちまして、各委員間の互選によりまして、永井委員に引き続き部会長に御就任いただくこと、そして永井部会長から部会長代理として内山委員が指名されたことをあわせて御報告いたします。

 それでは、五十音順に沿って御紹介させていただきます。

 まず、内山聖委員でございます。

 大西昭郎委員でございます。

 祖父江元委員でございます。

 深見希代子委員でございます。

 福井次矢委員でございます。

 藤川裕紀子委員でございます。

 本日、斎藤聖美委員が御欠席という御連絡を受けております。また、花井委員と本田委員が少し遅れるという連絡がございました。いずれにいたしましても、過半数を超えておりますので、会議が成立することを御報告いたします。

 また、花井委員と福井委員におかれましては、精神・神経医療研究センターのところまで出席という御連絡を受けておりますので、途中退席をさせていただきたいと思います。

 それではまず、開催に当たりまして、医政局医療経営支援課長の佐藤より御挨拶を申し上げます。

○医政局医療経営支援課佐藤課長 

本日は、委員の先生方におかれましては、お暑い中、また、お忙しい中、御出席を賜り、誠にありがとうございます。

 本日を含めまして、8月7日、8月8日、来週の月曜日、火曜日でございますが、3日間にわたり、国立高度専門医療研究センターの第2期中長期目標期間における2年目、平成28年度の業務実績評価に係る御意見を聴取するものでございます。委員の皆様におかれましては、御専門の立場から御意見、御助言をいただきますことをお願い申し上げます。

 簡単ではございますが、挨拶とさせていただきます。どうぞよろしくお願いいたします。

○医政局医療経営支援課江口課長補佐 

本日、医療経営支援課長の佐藤につきましては、この後、公務が立て込んでおりまして、大変恐縮でございますが、事務局説明の後に途中退席をさせていただきますので、御了承いただければと思います。どうぞよろしくお願いいたします。

 また、本日の議題の2の国立がん研究センターの実績評価からの参加となるのですが、本部会が属する国立研究開発法人審議会から、がん対策担当の大臣官房審議官の佐原が事務局に加わることになっておりますので、どうぞよろしくお願いします。

 続きまして、8月1日付で事務局に異動がございましたので、紹介させていただきます。

 医療経営支援課の松永政策医療推進官でございます。

 それでは、本日の会議資料の確認をお願いいたします。

 委員の皆様のお手元に、委員名簿と座席表、資料1-2としまして、国立精神・神経医療研究センターの業務実績評価説明資料、資料2-2としまして、国立がん研究センターの業務実績評価説明資料、そのほか、委員のお手元限りでございますが、評価を記入していただく用紙と、永井部会長のほうから事前に依頼のございました資料を参考に紙で置かせていただいております。資料の不足、乱丁等ございましたら、事務局までお申し出ください。

 また、タブレットでございますが、資料1-1としまして、精神・神経医療研究センターの業務実績評価書、1-2としまして、紙でもお配りしています業務実績評価説明資料、1-3としまして、財務諸表等、1-4としまして、監査報告書、同じく2-1から2-4までがん研究センターの資料がタブレットに入っています。 それでは、以降の進行につきまして、永井部会長、よろしくお願いします。

○永井部会長 

それでは、よろしくお願いいたします。

 では、先般行われました本部会が属する国立研究開発法人審議会において、委員に対して評価方法の説明がありましたので、改めて御紹介いたします。

 総務省の独立行政法人評価制度委員会など評価結果を点検する方々は、評価の理由をよく読まれています。したがいまして、評価の根拠、理由を書いていない場合には、S評価、A評価はいささか認めがたいということになりかねないということでございます。評価の基準はBでありますので、S評価、A評価に値するのであれば、その理由を明確にしていただきたいということでございました。

 また、政策評価官からは、法人に説明不足がある場合は、委員が質疑等において成果とその理由づけを引き出すのも一つの方法であるということ、そういうお話もございました。

 それから、全ての独法においてA評価以上の平均が13.8%であるということが前回指摘されましたけれども、研究開発法人についてはどうなのかというところがもしお分かりでしたら事務局に御説明いただきたいと思います。いかがでしょうか。

○医政局医療経営支援課江口課長補佐

 委員の先生の皆様のタブレットにも、7月19日に行われました国立研究開発法人審議会と同じ資料を御用意しております。

 まず、評価基準につきましては、その中にも入っておりますが、ただいま永井部会長から説明がありましたとおり、特に定性的な業務について、S評価、A評価をつけられる場合には、委員の方々からも評価理由をいただく必要があるということでございます。

 また、ただいまありました研究開発法人のA評定以上の割合につきまして申し上げます。これもタブレットの資料の中の参考資料2-3に入っています。本部会が評価する6法人は国立研究開発法人に分類されるのですが、国立研究開発法人全体のA以上の割合は、平成26年度で28.4%、平成27年度では29.3%でございました。

 参考に申し上げますと、ナショナルセンターにつきましては、27年度から国立研究開発法人に移行しておりますが、平成27年度のA評価以上の割合は16.0%、オールジャパンの国立研究開発法人のA以上の割合29.3%に対しまして、ナショナルセンターは16.0%というものでございます。

 以上でございます。

○永井部会長

 ありがとうございます。

 国立研究開発法人以外も含むと13.8%ですが、他省庁の国立研究開発法人のみに焦点を当てて調べますと、A以上の割合が28.4%であるということで、ナショナルセンターのA評価は平成27年度で16%でしたので、決して高くはないということをまず御認識いただければということであります。

 よろしいでしょうか。もしここまでのところで御質問等がありましたら、よろしくお願いいたします。

 それでは、議事に入ります。「国立研究開発法人国立精神・神経医療研究センターの平成28年度業務実績評価について」であります。

 初めに、「研究・開発の成果の最大化に関する事項」の評価項目1-1と1-2に係る業務実績と自己評価について、まず法人から御説明いただき、その後に質疑応答という形にしたいと思います。どうぞよろしくお願いいたします。

○国立精神・神経医療研究センター水澤理事長

 国立精神・神経医療研究センター理事長の水澤でございます。

 本日は、平成28年度業務実績評価につきまして、大変お世話になりますが、どうぞよろしくお願い申し上げます。詳しくは、この後、各担当から御説明申し上げますけれども、まず私から幾つかポイントをお話ししたいと思います。

 資料1-2の概要をご覧いただきたいと思います。1枚めくっていただきますとそこに出てくるカラー印刷のものが1ページでございます。当センターは、精神と神経の研究と診療を一体となって行っているという意味で、世界にも例を見ない特徴のある組織と考えております。

 そのミッションは、精神疾患、神経疾患、筋疾患、発達障害の克服でありまして、具体的には、右下の「設置根拠」のところに書いておりますけれども、研究、医療、人材育成、政策提言の領域で特に活動しております。

 組織といたしましては、左側の「主な組織」というところにございますけれども、今、申し上げましたように、精神と神経の2つの研究所と病院、訪問看護ステーションのほかに、4つのセンター内センターがあります。すなわち、トランスレーショナル・メディカルセンター(TMC)は、臨床研究を担当です、メディカル・ゲノムセンター(MGO)はゲノム診療あるいはバイオバンクの担当もしております。脳病態統合イメージングセンター(IBIC)は画像の研究センター、それから、認知行動療法センター(CBT)と、4つのセンター内センターを配置いたしまして、ミッションの達成を目指しております。

 3ページに自己評価のリストがございます。平成28年度を我々NCNPは改革元年ということで位置づけまして、全ての事業の基盤となる経営の立て直しを課題として運営に取り組んできました。昨年度の御指導に基づいてやってまいりまして、その結果、黒字化に手が届くところまで到達いたしました。さらに、病棟の構成の見直しなども進めておるところでございます。これにつきましては、下の方から3行目、2行目のところの評価をAとさせていただいている背景でございます。

 また、医療分野の推進に大きく貢献する研究成果として、目標を大きく上回ります4件の成果を上げました。バイオバンク、クリニカル・イノベーション・ネットワーク等でも大きな成果を上げていること、あるいは研究・開発におきまして、原著論文数が大きく増えまして、クラリベイト・アナリティクス社によります論文引用動向による日本の研究機関のランキングを出していただきますと、生物・生化学分野で第9位に位置するということでも御理解いただけるかと思います。研究・開発に関するところといたしましては、今回はS評価をつけさせていただきました。

 医療の提供におきましては、我々の特徴であります希少難病の集積の高さはさらに増しております。また、認知行動療法や難病患者へのリハビリテーションなど、我々独自の先駆的な業績を上げておりまして、医療のところもA評価とさせていただきました。ここには、全国で唯一の拠点となりますてんかんの診療全国拠点として公募に応じまして、指定されたということもございます。

 人材育成におきましても、レジデントや流動研究員の教育はもちろんでございますけれども、コメディカル等の方々も含めて延べ3,000人を超える方々の人材育成を担ってきているということがございます。

 また、政策提言に関しましては、たくさんありますけれども、特に申し上げたいことは、自殺総合対策推進センターが刷新されまして、ここに非常に多くの政府からの御指導等をいただきまして、それに取り組んできております。

 このような形で、昨年度いただきました宿題をほぼ解決しつつあるかと思っております。職員一同頑張ってやってきておりますので、ぜひその評価をよろしくお願いいたします。

 後、引き続き担当者から説明をさせていただきます。

○国立精神・神経医療研究センター武田神経研究所長

 ありがとうございます。

 引き続き、評価項目1-1につきまして、神経研究所長の武田から御説明させていただきます。

 「担当領域の特性を踏まえた戦略的かつ重点的な研究・開発の推進」でございまして、自己評価としてはSとさせていただいているところです。

 ここの目標といたしましては、医療分野の推進に大きく貢献する研究成果を上げるということを約束しておりまして、それに合致して4件の成果を上げたと考えております。

 その内容といたしましては、新規性が非常に高いということは当然でございますけれども、海外の著名誌に発表しておりまして、なおかつ国や社会からの評価が高いということをポイントにさせていただいております。

 その4件について順次、御説明させていただきますが、5ページ目を見ていただければと思います。

 そのうちの一つが皮膚筋炎のバイオマーカーでございます。皮膚筋炎といいますのは、国の指定難病の一つで、国内に8,500名ぐらいの患者さんがいらっしゃると思います。ただ、非常に診断が難しい疾患として知られておりまして、生検をする必要がございます。その診断において新たなマーカーを開発したということでございまして、ミクソウイルス抵抗蛋白質Aと呼んでおります。右下図を見ていただきますと、非常に感度にすぐれたマーカーで、71%とあります。こういった感度が高い場合に特異度が下がる場合がございますが、特異度98%ということでございます。これは米国の神経学会誌に発表しておりますが、反響が大きかったために、Response to this articleとしてさらに公開させていただいた次第でございます。

 2つ目は、6ページ目、鬱病のリスクに関する研究でございます、皆様御存じのように、鬱病の受診患者数は年間96万人ぐらいですけれども、そのほぼ3倍の数の患者さんが受診していない。トータルでは400万人ぐらいはいらっしゃるということになっておりまして、それだけに、生活習慣、食生活などが非常に注目されます。

 そこで、私どもの研究者が、便のビフィズス菌の数を測定しておりまして、左の図を見ていただきますと、大鬱病では健常者に比べてビフィズス菌の数が少ない、統計学的に有意に少ないということがございます。また、大鬱病の中を比較いたしますと、週1回以上ヨーグルトや乳酸菌飲料を飲んだ方に比べて、飲んでいない場合にはビフィズス菌の数が有意に少ないということが出てまいりました。そうしますと、こういったビフィズス菌というのがリスクファクターとして働いていること、なおかつ、恐らくはヨーグルトや乳酸菌飲料を飲むことが鬱病の予防・治療につながることを示唆しておりまして、生活習慣との関連で極めて重要な発見と考えております。

 3つ目については、7ページ目をご覧ください。潜在的睡眠不足に関する話題でございます。現在、これは「睡眠負債」という名前で呼ばれております。まず、対象になる方の実際に必要な睡眠時間を睡眠パターンから予測いたします。そうすると、在宅ではそれに1時間足りない睡眠しかとっていないということがわかります。そこで、睡眠の延長負荷をかけますと、右の方を見ていただくと、驚かれるかもしれませんが、多くの代謝の指標、例えば血糖値が下がり、インシュリンは増えていきます。また、ストレスに関連した副腎皮質刺激ホルモンは低下傾向であり、副腎皮質ホルモン(コルチゾール)は減ってまいります。すなわち、このように睡眠を適切にとることによって随分リスクが変わってくるということが分かってまいりました。これは世界で初めての研究でございます。こういった潜在的睡眠不足、睡眠負債が生活習慣病などのリスクとなっていることを明らかにした論文でございまして、「NHKスペシャル」で放送されておりますので、ご覧になった方もたくさんいらっしゃるかもしれません。

 4つ目に移ります。自閉症スペクトラムに関する話題でございます。これはいろんな数え方があると思いますけれども、学童期だと少なくとも1%ぐらいはいらっしゃる。特にこれまでは自閉症といいますと、行動の異常あるいはコミュニケーションの障害があることを皆さんお気づきだったと思います。私どもの研究者が、実は聴覚性驚愕反射というものに注目して、むしろ感覚のほうに異常があるのではないかということを見出しました。

 これは音で刺激するわけですけれども、自閉症スペクトラムの方は、潜時、反応するまでの時間が長い、あるいはむしろ弱い音に対しては自閉症スペクトラムのほうが反応が強いということを見出しました。これはどんなことを意味するかといいますと、ある程度騒音がある中、例えば家庭でテレビを見ているところでお話をした場合に、普通ですと、頭の中でテレビの音を下げて相手の言っていることを聞きとるわけですけれども、自閉症スペクトラムの方はそういうことが難しい。そういうことが病気の本体と関係するということに着目したすぐれた研究でございます。これも「NHKスペシャル」の発達障害という番組で取り上げられましたので、多くの方に見ていただいたのではないかと思います。

 ただ、こういったことは私どもがピックアップした課題でございます。その背景には、論文数の定量的な評価が必要でございます。

 9ページ目を見ていただけたらと思います。原著論文数が増え、原著論文数プラス総説の数も非常に増えているということを御指摘申し上げます。いつも永井委員長に、ただ論文を出しても引用されなければだめだと言われております。

 例えば平成27年に出した論文は、28年に2,021回の引用を受けております。さらに、こういったことを背景としまして、理事長からお話がございましたが、トムソン・ロイターを引き継いだクラリベイト・アナリティクスによりまして、高被引用論文、要するに傑出論文を数えてランキングしていただいたのですが、生物学・生化学分野では国内第9位に私どものセンターがランクインしております。こういったことを背景に、十分な定量的な数があって、なおかつすぐれた仕事をしたということで、自己評価としてSとさせていただいた次第でございます。

 続けて、10ページ目、1-2「実用化を目指した研究・開発の推進及び基盤整備」について説明をさせていただきます。

 お約束をしているのは医師主導治験でございまして、これについては遠位型ミオパチーで新たに1件、開始することができました。また、FDG-PETを用いましたアルツハイマーの診断について先進医療をこれも平成28年から開始することができました。十分に目標をクリアしております。

 これまでやってきたプロジェクトの推移を簡単に述べますと、多発性硬化症に対するOCHという免疫修飾薬に関しては、慶應義塾大学において今度はクローン病に対する臨床試験を開始することができました。また、何度か御説明した筋ジストロフィーに対するアンチセンスの核酸医薬に関しましても、厚生労働省から27年度「先駆け審査指定制度」の指定を受けまして、これは後期の試験、企業治験としてやっているわけですけれども、28年度については米国においても先駆け審査に相当しますファスト・トラックを受けることができました。米国でも臨床試験が開始され、その推移を見守っているところでございます。

 こうした臨床試験の背景には基盤整備が必要ですが、簡単に2つお話し申し上げたいと思います。

 1つは、バイオリソースでございます。28年度、バイオリソース検体2,091件の新規保管を示しております。これがもとになって、例えば、私どもの理事長が進めていますような未診断疾患プロジェクト(IRUD)あるいは難病診断拠点形成が進んでいるところでございます。

 バイオリソースの解説を11ページで簡単にさせていただきます。このように保管は進んでおりますが、それと並んで大事なのが利活用でございます。特に28年度は利活用の仕組みをつくり直すことができまして、その成果として企業への有償分譲が初めてできております。と同時に、GAPFREEと呼ばれていますAMEDとのプロジェクト、あるいは先ほどのIRUD等が進んでいるところでございまして、これが、バイオバンク・ジャパンや東北メディカル・メガバンクとの違いになると私は思います。脳バンクについては、恐らく後で理事長から簡単に御説明があると思います。

 基盤整備でもう一つ大事なものが、12ページ目のクリニカル・イノベーション・ネットワークでございます。これまでも、例えば筋ジストロフィーの患者さんのレジストリーをしました、ネットワークをつくりましたということをお話ししてまいりました。それから、精神科レジストリー(RoMCo)、認知症(IROOP)、運動失調症(J-CAT)、プリオン病(JACOP)、パーキンソン病(JPPMI)といったもので臨床情報の登録を進めているわけですが、それをさらに進めたものがCIN(クリニカル・イノベーション・ネットワーク)でございまして、これは一言でいうと、患者さんの登録をもとにして新規の医薬品を開発し、医療機器を開発することでございます。

 そのプロジェクトについて、27年度は厚生労働省の特研班、28年度はAMEDの研究班を組織させていただきました。そこで私ども提案させていただいたことが2つございます。

 1つは、各論でございまして、レジストリーをもとにした考え方は当然、難病や希少性疾患では有効です。しかし、これに、がん、脳神経外科の医療機器が入っております。皆様御存じのように、がんについても確かに組織がん、それぞれはすごい数です。しかし、遺伝子の多型をもとにしてどの抗がん剤が効くかということに着目いたしますと、実は組織がんですらも、これはある意味で希少性の疾患の集積でございます。したがって、レジストリーが有効です。

 また、医療機器に関しては、いわゆるポストマーケティング、販売後の調査が非常に大事です。ここでもレジストリーが本質的な役割を果たします。こういった各論が必要だということを私ども提案することができました。

 もう一つ、この前、ヒアリングで御質問がございました。レジストリーは実は横軸が大変大事です。国内にはさまざまなレジストリーがございます。しかし、それについては、各疾患分野についてある程度統合し、連携することが大事と思っております。そこで、私たちの研究班で、中央支援部門、ワンストップサービスを提案させていただきました。これを軸として各疾患領域でレジストリーをまとめていただくことができるのではないか、これを使ってレジストリーをさらに国内に普及し、新たな医薬品の開発を目指すことが可能になるだろうと思います。これらも、Remudyを中心にした筋ジストロフィー等の経験を生かして、その上で御提案申し上げた次第でございます。これが基盤整備の2つです。

 最後でございますが、10ページ目の下に戻っていただきます。こういった基盤整備をもとにして、目標でございます学会ガイドラインに、後で現在進行中のものも幾つか出てまいりますが、既に記載されたものとして、28年度、パーキンソン病、ジストニア治療、2件の記載をしていただくことができました。これも目標を十分クリアしております。

 このように、2つの基盤整備を進め、目標もクリアしていることから、1-2についても自己評価としてSとさせていただいているところでございます。

 私の説明は以上です。

○永井部会長

 ありがとうございます。

 それでは、御質問、御意見をお願いいたします。

 いつも論文引用数を出していただいていますけれども、精神・神経医療研究センターは2013年ごろから上向きになってきて、2014年、2015年と論文の数も引用数も非常に大きく伸びています。それは、ある意味で研究の基盤がしっかり整備されてきたということでよろしいのでしょうか。

○国立精神・神経医療研究センター武田神経研究所長

 御指摘のとおりだと思います。私ども、運営費交付金を基盤として、研究の基盤、特に動物施設等の整備を進めさせていただきました。こういうことがもとになりまして、論文数につきましても、また書いた論文についても十分引用していただき、それの一つの成果としてクラリベイト・アナリティクスランキングにも入ったと理解しているところでございます。

○永井部会長

 ありがとうございます。

 これは先生方お持ちですね。経年的な変化がよく分かりますし、非常に順調なのではないかと思いますが、いかがでしょうか。祖父江委員、どうぞ。

○祖父江委員

 どうもありがとうございました。

 この前、プレで聞いたときよりも更に良くなっている感じがします。この前もちょっとお聞きしたのですが、バイオリソースとCINを中心にしたクリニカル・レジストリーとかコホート、これはナショナルセンターが疾患ごとにぜひ全国展開でやるべき非常に重要なテーマだと思っているのですが、2つお聞きしたいと思います。

 この間もお聞きしたと思いますが、特に精神・神経医療研究センターは、そんなに数は多くない希少疾患をたくさん抱えておられるので、Remudyは非常にアウトスタンディングなのですけれども、たくさんの種類のレジストリーとかコホートが並行して走るというのはどうしても出てくると思います。やはりこれは今後、発展させて、かつ、今おっしゃったように、何かに使えるような形に持っていくためには、非常に時間がかかると思うのです。ですから、そういう時間軸で展開するための基盤整備といいますか、ちょっと触れられたのですが、お金と人とシステム維持をどう今後、例えば10年単位、20年単位ぐらいで考えておられるかというところをお聞きできたらと思います。

 もう一点は、バイオリソースのデポジット、有償で企業との連携で利用していくというのは今後の非常に大きなポイントだと思います。特に企業はこういうヒューマン・リソースというのが非常に不足していて使いたがっていますので、これを有償でやっていくというのは非常にいい方法だと思います。今、年額幾らぐらいで、どういう実績があるのか、お教えいただければと思います。

 この2点をお願いします。

○国立精神・神経医療研究センター武田神経研究所長

 御質問ありがとうございます。

 最初に、レジストリーに関してですけれども、委員の御指摘のとおりでございまして、特に希少疾患は、数が多いのですが、一つ一つについてみると、患者さんの数が少ない場合に、最初に予算的な措置を受けたとしてもどうやってレジストリーを維持していくかが極めて大事です。

 それから、やはり医薬品の開発等を考えますと、前向きコホートとして運営していく必要がありますので、その上の配慮も必要だと思います。

 そこで、私ども提案しておりますのが、こういったワンストップサービスである程度統合するということと、それぞれの疾患領域でコンソーシアムをつくって、企業の方にも入っていただいて、経費を負担いただく形をとることによって、長い期間安定してそのレジストリーを維持していくことができるのではないか。

 先生の前で大変失礼なのですけれども、アカデミアの先生方の場合に、傑出した教授がいらっしゃると、逆に教授がお代わりになるとそのレジストリーが宙に浮くことがあると私ども伺っております。そういう意味では、各疾患領域でミッションを持っております6ナショナルセンターが頑張るべきだというのが私どもの意見でございます。ぜひアドバイスをお願いしたいと思います。

 次に、バイオリソースでございますが、これは11ページ目で御説明しております。確かに28年度から有償の分譲を開始いたしました。これは3件でございまして、また、GAPFREEというプロジェクトでは企業1社に対して、私どもナショナルセンターが組みまして、バイオリソースを使った医薬品の開発等を目指しております。GAPFREEのほうは、企業4,000万円、AMED4,000万円でございます。有償分譲に関しては2社に提供して541万円に達しております。これは間接経費を含んでおります。

 以上でございます。

○国立精神・神経医療研究センター水澤理事長

 補足なのですけれども、運営を将来的にどうするかということに関しまして、これは昨年も御指摘いただいたかと思います。今、研究所長が申し上げましたように、例えば中央支援部門でも、あるいは別のコンソーシアムでもよろしいのですが、CINには企業の方々が全て参加しておられますので、その方々と話し合いを進めていく形で、一つの疾患だけではなくて、私としては、多くの疾患を含めた形で御支援していただく、一緒にやっていくというのが理想的ではないか、そうすることで非常に希少な疾患でもレジストリーもできて、薬の開発にも弾みがつくと期待しております。

○永井部会長

 福井委員、どうぞ。

○福井委員

 研究の中で、例えば6ページのもので伺いたいのですけれども、これは因果関係まで分かっているということですか。それとも単なる統計学的な関連性を示しているものなのか。つまり、食生活やプロバオイティクスに手をつけることで鬱病の予防・治療につながるという因果関係まで、この論文で分かるのでしょうか。

○国立精神・神経医療研究センター武田神経研究所長

 これは先生の御指摘どおりでございます。この研究の前提としましては、健常人で便の中のビフィズス菌等を測定する研究がまずございました。今回の研究は、鬱病を対象にした世界で初めての研究でございます。しかし、その内容は先生がおっしゃったとおりでございまして、大鬱病ではビフィズス菌の数が減っているということを御指摘申し上げ、なおかつ、ヨーグルトや乳酸菌飲料を飲んだ飲まないの差を出したにすぎません。したがって、こういったビフィズス菌がリスクになっているということを想定したのみでございまして、この後は、当然のことながら、例えばヨーグルトや乳酸菌飲料を鬱病の人が飲んだ場合にどのように推移していくかというような臨床研究を初めとして、その基盤となる基礎研究その他が非常に重要でございまして、そういったものがなければ、鬱病の予防・治療に役立つことを断定することは難しいと考えます。ただ、その糸口を与えた研究と理解していただければと考える次第です。

○福井委員

 例えば、鬱病になったからこういうものを食べる頻度が減ってきたという逆の関連性までは、それを否定するというようなデータではないということですね。

○国立精神・神経医療研究センター武田神経研究所長

 これは先生の御指摘どおりでございまして、研究自体はもちろん十分なnを確保し、ある期間、見ているわけですけれども、逆に、鬱病とヨーグルトや乳酸菌飲料というのが、病気になってそれを摂るとか、そういったことまで踏み込んだ長期間のフォローアップ研究ではございません。そういったことに関しましても、今後、検討すべきだと考える次第です。

○深見委員

 研究成果も大変出ていて、自己評価もSということなのですけれども、まず、1-1の研究についてですが、4件、研究レベル及び社会性というようなことでお話ししていただいたような気がします。Sの評価というときには、初めの連絡でもありましたけれども、非常に顕著な研究ということで評価すべきと思っています。サイエンス的なレベルと「NHKスペシャル」等々に取り上げられた社会的な注目度は、評価として両方を一緒にして評価するのはなかなか難しいところがあると思っています。

 今、福井先生からも御指摘があったのですけれども、例えば皮膚筋炎、これはとてもおもしろいお仕事だと思います。今の善玉菌もサイエンス的な評価と社会的な評価はちょっと違うかなと思いますけれども、社会的なアピールのほうが強いのかなという印象を受けまして、そのあたりはどうでしょうかというのが第一点です。

○国立精神・神経医療研究センター武田神経研究所長

 それはごもっともな御指摘でございます。実は、サイエンスとして見ますと、私ども28年度にすばらしい研究をしております。それらはモデル動物を使ったものであったり、新たな治療の研究なのですけれども、その結果としてプレスリリースを年間で15件ほどさせていただいております。

 その中から、どうしてこうした4件を選んだかと言いますと、私どもが論文で発信をし、評価を受けた、学問領域での評価がございます。その上に、メディア等で取り上げられていただいたということをエコーが戻ってきたというふうに考えまして、その両方、サイエンスがすばらしいのは絶対必要でございますが、その上に反響をいただいた研究成果を選ばさせていただいた次第です。

 それはなぜかといいますと、私どもナショナルセンターで研究をしているということは、単に学問領域だけで認められれば良いわけではなくて、その成果を国民にお返しする必要があるといつも考えているからなのです。国民の皆様からエコーがあったものを医療分野での意味があったと考えて出したわけでございます。

 その前提として、全てすばらしい雑誌に載っているということがありますし、そういう意味では、私たちはサイエンスの評価はたくさん受けることができております。

○深見委員

 ありがとうございます。もちろんサイエンスのところと社会的な注目度というのが全く切り離されていると思っているわけではないのですけれどもと、つけ加えさせていただきます。

 あともう一つ、13ページの希少疾患に戻りますけれども、希少疾患で精神・神経医療研究センターが占める割合が書いてあります。この数値というものが高いのか低いのか、私にはよく判断できないのですけれども。

○国立精神・神経医療研究センター武田神経研究所長

 質問の途中で大変恐縮でございます。冒頭に理事長が少しお触れになりましたけれども、13ページからは1-3でございまして、村田病院長の担当で、これから御説明させていただきます。そのときに御質問いただいたほうがよろしいかなと思いますが、いかがでしょうか。

○深見委員

 この数値が出てきてしまうと、この数値からどのような解釈をしていいのかというのがちょっとわからないということで、いろんな連携等をすごくしているということをお話ししていただいたので、過程の中でどういう数値なのだろうという、ちょっとそこのところの位置づけというのが分からなくて聞かせていただいたということです。

○永井部会長

 またそれは後で。

 では、時間がありませんので、内山委員。

○内山部会長代理

 1-1に関しては、私も福井委員、深見委員と全く同感でございます。ただ、先ほど研究所長さんから社会的な反響が大きかったという説明がありましたが、キーワードが睡眠不足、鬱病ということで、これは社会的に一番興味のあるテーマでございます。私も「NHKスペシャル」で潜在的睡眠不足の番組を見せていただきまして、これはいい意味で社会的な影響を与えることでとても良かったと思いました。

 先ほど福井委員からも御質問がありましたが、一方で、鬱病のビフィズス菌、乳酸桿菌というのも社会的影響が大きいと思うのですけれども、因果関係が出ていなくて、統計学的な解釈ということです。国立精神・神経医療研究センターが発表される内容は、皆さんがすごく注目していますので、やはりしっかりと因果関係を出されてから、4つの大きな研究に挙げられたほうが、センターとしての信用性が高まるのではないか、個人的にそのように思っております。よろしくお願いいたします。

○永井部会長

 簡単に。

○国立精神・神経医療研究センター武田神経研究所長

 本当に御指摘のとおりだと思います。よく先生方が御存じのように、こういったサプリメント等については、その場限りの臨床研究が非常に多いということがございます。それに対しまして、私どもこれを選ばせていただいたのは、基礎研究として力を持っている私どものセンターで、非常に卑近な課題であるけれども、それに正面から取り組んで、確かに端緒に終わっているかもしれないけれども、ビフィズス菌と、例えばヨーグルトというようなことを推察させる出発となるデータということで発表させていただいた次第でございます。

 ただ、たくさんこの世の中にありますサプリメントの研究等と違うのは、これを端緒としてきちんと臨床研究をさせていただいて、なおかつその背景となる研究もさせていただいて前に進ませていただきたいというのが私どもの見解でございます。

○永井部会長

 最後に、レジストリーが重要ということですけれども、いわゆるEDC、データを電子カルテから取り込む、そういう仕組みについては検討されていますか。

○国立精神・神経医療研究センター武田神経研究所長

 これも先生の御指摘のとおりでございまして、実は昨年暮れに米国からリアルワールドデータというのが出てまいりました。その内容は、電子カルテ情報、レセプト情報、レジストリー、この3つを根幹として、新たな医薬品、医療機器の開発を進め検証する方向でございます。やはり正確にきちんと記録していくことが前提になりまして、そのためには、私ども既に持っておりますけれども、EDCあるいはCDISCというようなものをさらに充実させていくことが一番根本になると思っております。

○永井部会長

 ありがとうございます。

 それでは、次に参ります。医療の提供とその他の業務の質の向上に関する事項、1-3から1-5についてお願いいたします。

○国立精神・神経医療研究センター村田理事・病院長

 それでは、13ページをご覧ください。「医療の提供に関する事項」について病院長の村田から御説明させていただきます。

 目標の内容は、トランスレーショナルリサーチメディシンの実施等の役割を担うために医療政策の一環として、NCNPで実施すべき高度かつ専門的な医療、標準化に資する医療の提供を行う、そのために患者の視点に立った良質かつ安心な医療の提供に取り組むということで、自己評価はAをつけさせていただきました。

 先ほど御質問がございました希少疾患の集積性のことでございますが、例えば一番下のGNEミオパチーは患者さんが300400名しかいなくて、15%ぐらい当院が拝見しているというのは、当院で全ての診療を拝見しているという意味ではございません。下にありますように、全国からかなり患者さんがみえております。例えば、その患者さんに関しての診療というのは、普通の内科的な評価をすることと、この疾患に特異的な評価、診療が必要になりますので、それを例えば1年に一遍評価して、次の1年をどのように過ごしていただくか、その助言をさせていただく。それを患者さんと地元の先生にするというような形にしております。おいでいただいたカルテベースの数で集積性という形をとっております。

 例えば、このうちのパーキンソン病の1,300人というのは、かなりはこちらに見えている方です。一部は1年に1回とか2回ぐらい北海道から来るとか、沖縄から来るという方もおられます。筋ジスに関しましては、本当に希少になり、地域では経験症例数がどうしても少なくなりますので、その時々に必要な診療がし難いということで、こちらでそういう助言をさせていただくという形で集積しております。集積性は以上のことです。

 次に、14ページをご覧ください。医療の提供の内容に関しましては、ここではまずリハビリのことを挙げさせていただきました、神経疾患のリハは脳血管障害が中心で、慢性進行性の神経難病に対応できるリハのスタッフというのは非常に少ないです。効果自体が十分に理解されていないことすら医療関係者の中でもございまして、当院では集積性に基づいて、実際に患者さんにリハビリをしてどのような効果があるのか、どういうふうに指導したらいいのか、広げることをしております。

 例えば、ここに出ておりますパーキンソン病で2週間の検査入院のときに一緒にリハビリをしております。それによって、たった2週間でも入院の前後で有意に改善するということを示しまして、さらに自宅での練習方法をお教えして、1カ月後、3カ月後に評価と指導をするということで、6カ月にわたってその効果が維持できるということを示した上で、それを地域でもしていただけるように、そのためのパンフレットなどをつくっております。

 また、米国等で評価されているリハビリ方法に関して、実際に米国から指導者を招いて国内での講習会をするという形でリハビリテーションの普及を進めております。

 これはパーキンソン病ですが、例えば脊髄小脳変性症に関しましても、先ほど申しませんでしたが、かなり集積性は高いので、リハビリテーションのプログラムをつくったり、臨床遺伝子検査、リハビリテーションも含めたガイドラインを当センターを中心とした研究班が学会とともにつくっております。

15ページをご覧ください。治験や臨床研究について少し触れたいと思います。研究所でのシーズはいろいろ上がってまいりますので、それに対してファースト・イン・ヒューマン試験をする、あるいは医師主導治験をするために、病棟の中に治験ユニットを201512月につくりまして、昨年度1年間使いました。

 当院の場合、かなり希少な疾患が対象になり、疾患治験であるということの知識のほかに、疾患ごとの特殊性の理解がかなり重要ですので、毎回それに関しての教育をもう一度するということと、治験での緊急時の体制や対応時のマニュアル等をつくって安全に動かしております。

 また、ベッドサイドでの研究の一つとして、右に挙げておりますのが、筋萎縮性側索硬化症の患者さんの場合、呼吸機能がかなり下がるのですが、肺の筋肉と同時に喉の筋肉が弱いために息こらえができないので肺活量がどんどん小さくなってしまうということがあります。それをトレーニングするための器械を、おうちで使えるような形の簡易なものを開発して市販することができました。今までは病院の中でしか使えなかったのが、毎日おうちで使えるということで、下にありますように、カファシストというのは、痰を出すための咳をするアシストなのですが、そういうものの使用頻度がかなり減ったり、あるいは呼吸器を日中、離脱できるようになったり、目に見えるような効果を得ております。

16ページをご覧ください。当院としてかなり力を入れておりますのが診療科横断的あるいは多職種の連携での医療です。一つはてんかんで、てんかんは、精神科、神経内科、小児科、脳外科が、全ての年齢で薬物療法でも手術療法でも全ての対応ができるということをしております。特にてんかんの手術に関しましては、大人も含めて全国の14.8%、特に小児は集積率がかなり高くて16.4%を当院で占めています。たまたま昨年は人の変更があったので、7月以降しか動いていなかったのですが、それでもこれぐらいの数はできました。

 また、昨年の秋、てんかんの地域診療連携体制整備の全国拠点となりまして、問題点の洗い出し、専門医がどういうふうに連携するか、始めたところですが、今年もなることになりましたので、さらにそれを進めていきます。

 また、右側に書いてありますのは、多職種連携という意味で、パーキンソン病の患者さんに対する自己管理という本を2009年に初版で出したのですが、診療科もさまざまですし、職種もさまざまなものがそれぞれの得意分野を生かして書いております。

17ページ、もう一つ当院の特徴でありますのは司法精神医学です。当院は全国で一番大きい規模を持っておりまして、実際に全国の拠点になっておりますが、その中で全国の基礎データを収集して解析するということをしております。

 下にありますように、地域処遇後というのは退院後という意味なのですが、退院後に重大な再他害行為があったという比率が3年間で1.8%、これは物すごく低い数字で、例えば司法病棟ができる前の我が国ではかなり強い他害行為、重大犯罪のみでも6~7%、英国での司法病棟でも2年間で5.6%という、非常にいい医療ができていることを示しています。

 また、もう一つ、当院の特徴であります認知行動療法(CBT)というのがありますが、認知行動療法センターと病院が連携して行っております。例えば鬱病では、そこに示しましたように、睡眠薬や抗不安薬をほぼ半減できるぐらいの効果がございますし、鬱、不安以外に、強迫性神経障害や発達障害というなかなか薬物治療が難しいものに対しての認知行動療法を進めておりまして、このような効果を得ています。

 最後に18ページですが、医療安全を進めているということと、入院時から地域ケアを見通した医療というのは、もちろん一般でも精神でもどちらも重要なのですが、特に精神では、精神保健研究所とも連携しまして、NCNPとして訪問看護ステーションを持っております。そこと病棟が毎週カンファレンスを持つことで、患者さんが入院されたところで既に退院後にどういうふうにカバーしていくかということを話し合いながらやっていく。その経験がまた、ここの訪問看護ステーションだけではなく、外にある普通の訪問看護ステーションの方々にも知識を広げるという形で進んでおります。下にありますように、精神病床の平均在院日数は43.0日、我が国の平均在院日数は274.7日と書いてありますが、うちは43日で、それなりにいい医療ができていると思っています。

 もう一つ、もうちょっと軽い方では、退院後に就労できるということが非常に重要ですので、就労支援にも力を入れています。特にピアスタッフを活用して就労支援専門員とともに就労支援を行っております。

 このようなさまざまなことをした上で、病床利用率は89.3%、平均在院日数も精神が43日、一般が15.6日ということで、後ほど出てくると思いますが、ようやく昨年は3.3億円の黒字で医業収支率も104.3%というように、経営を相当考えながらこのような診療ができてきたということでAをつけさせていただきました。

 以上です。

○国立精神・神経医療研究センター中込精神保健研究所長

 それでは、続きまして、私、精神保健研究所の中込と申します。

 1-4の「人材育成に関する事項」及び1-5の「医療政策の推進等に関する事項」について御報告させていただきます。

19ページをご覧ください。NCNPにおける人材育成については、精神・神経疾患等に対する医療及び研究等を推進するに当たり、リーダーとして活躍できる内外の人材の育成ということを目標としております。特に臨床研究や疫学研究における研究デザイン、統計解析の方法論に係る知識として非常に不可欠とされながらも専門家の絶対数が不足する生物統計学については、数値目標として年に5回以上の生物統計学講座を開催することを目標にしておりました。平成28年度におきまして、私どもはトランスレーショナル・メディカルセンターを中心に臨床研究研修を毎年行っておりまして、平成28年度も27年度と同様に行われております。先ほど申し上げました生物統計学講座に関しましては、受講者のニーズを受け入れまして、5回という目標にさせていただいておりましたが、10回開催することができました。

 続きまして、20ページをご覧ください。人材育成に関しましては、特に精神保健研究所において毎年、国、地方自治体、病院などで精神保健の業務に従事する医療関係者においてリーダーとして活躍できる人材の育成の一環として、精神保健に関する技術研修課程を開催しておりまして、平成28年度におきましても、研修課程15課程と延べ受講者数840名を数えております。昨今、社会的な問題になりがちな発達障害についても、例えば、乳幼児健診にかかわる医師及び保健師等を対象とした発達障害早期総合支援研修ということで、発達障害の早期発見・早期治療に係る研修を行い、受講者はそれぞれの自治体で研修会の講師として各地域で展開していくという形で行っております。

 薬物依存の問題は、これも社会的に大きな問題とされていますけれども、我がセンターにおきましての臨床研究をもとに、平成28年度より保険収載された「認知行動療法の手法を活用した薬物依存症に対する集団療法研修(SMARPP)」をこの技術研修課程の中で行いましたところ、実際には定員の3倍近い応募がありました。この背景には、薬物依存に対応できる医療機関、医療者が圧倒的に不足している我が国の状況がございます。推定ではございますけれども、40万人の薬物依存の患者さんに対して専門医療機関はわずか10施設で、専門医は20名足らずといった状況にあります。

 そこで、精神保健研究所の薬物依存研究部のほうでは、このNCNPでの研修のみならず、全国各地の依存症治療拠点機関の精神科医療関係者、地域保健機関職員、民間リハビリ機関スタッフ等を対象に研修会を展開してまいりました。単に研修を行うだけではなく、各施設においてプログラム立ち上げ支援、フォローアップ実地指導、スーパービジョンも含めて、現在では全国31カ所の医療機関、32カ所の精神保健福祉センターでこのプログラムが実施できる体制を構築しております。

21ページをご覧ください。そのほかに精神保健研究所以外にも、病院あるいは認知行動療法センター、我々のさまざまなセンター内の施設におきまして、研修、人材育成を行っておりまして、その数は1,328名になっております。

22ページをご覧ください。ここからは「医療政策の推進等に関する事項」です。国への政策提言はここに挙げたとおりなのですが、特にこれも非常に大きな問題になっています児童の性的搾取の被害者対策についても、我がセンターから専門家を派遣し、事例報告とともに意見を報告しております。それのみならず、児童の性的搾取の被害防止のために、事件の再発を予防する取り組みとして加害者治療プログラムの開発に取り組み、支援者養成のための研究会を開催しております。

23ページをご覧ください。政策提言のほかに、医療の均てん化並びに情報の収集及び発信が非常に重要だと指摘されていますが、先ほどもお話がありましたIRUDによるネットワーク構築、それから、患者レジストリーを活用した筋ジストロフィー臨床試験ネットワークに関しましても、全国網羅的に39施設に増えております。ネットワークを活用した臨床研究では、目標症例数をはるかに超える組み入れができており、これから介入試験に移ろうといった段階でございます。

 そのほかにも、診療データを活用したネットワーク構築、あるいは摂食障害の全国基幹センターとして全国での摂食障害を扱う機関のネットワーク、それから、医療観察法における医療において指定入院医療機関でのネットワークシステム等々、当センターを中心としてネットワークを構築しております。情報発信に関しましては、プレスリリースが全部で25件、NCNPメディア塾、これはマスコミ関係者を対象にした啓発活動でございますけれども、これも平成28年8月に開催しております。

 また、数多くのガイドラインの作成に貢献しているということが一番下に記載されております。

 以上でございます。

○永井部会長

 ありがとうございました。

 それでは、御質問、御意見をお願いいたします。祖父江委員。

○祖父江委員

 どうもありがとうございました。

 また後で議論が出ると思うのですが、精神・神経医療研究センターが全国の患者さんをどのぐらい診ているのかというお話です。私、同じような領域の者ですのでちょっと申し上げておくと、全国の患者さんの10%を診ているというのは、非常に希少で特別な例を除いてみても、結構診ていらっしゃるのではないかと判断します。

 ただ、この前も同じようなことを申し上げたのですが、これだけ全国的に患者さんを集めて診るというときに、先生のところでないとできない医療といいますか、やはりここへ来て価値があった、帰っていかれて地域でまたそれを続けるというような、そういうパラダイムができると収入面でも非常にいいのではないかと思うのですが、そういうものは何がありますかということなのです。

 一つは、先ほどの小児のてんかんの外科の手術などは非常に重要な意味を持つ可能性があるという感じがします。リハビリはお金がとれるのかどうかというのも含めて、それから、認知行動療法、この辺を強調されたと思うのですが、その辺はどういうふうにお考えか、お聞きしたいと思います。

○国立精神・神経医療研究センター村田理事・病院長

 てんかん外科は海外からもかなり患者が来ておりますので、とてもいいです。

 リハビリテーションは、20分幾らの世界ですが、それでとれます。やはりパーキンソン病などですと、かなり良くなって、帰った患者さんの周囲の人が、それで宣伝になってくれますので、全国から来ていただいています。

 今回出しませんでしたが、腰曲がりの治療も同じで、それで患者さんが集まります。

 認知行動療法は、相当、要望は高いのですが、ちょっと問題なのは、心理士がやるだけだと点数がすごく低いのです。精神科の先生がなさったというような形にしないと、それでも点数はそんなに高くないのですが、自費診療みたいにしても物すごくたくさん集まるぐらいの感じです。ただ、今、パーキンソン病の認知行動療法もやっているのですが、それはまだ保険が通っておりませんので、今のところは研究扱いでやっているところです。それを進めたいとは思っています。

○祖父江委員

 ここでないとやれないというのは、全国的にモニュメンタルにあるというのは非常に重要な意味がありますし、収入の面でも意味があると思いますので、ぜひ進めていただけるといいなと思っております。

○永井部会長

 福井委員、どうぞ。

○福井委員

 人材育成のところについて2点ほど伺いたいのですけれども、19ページの研修制度は、この施設のセンター内のスタッフを対象にしているものなのか、外からの方をも受け入れているものなのかというのが一つです。

 それから、19ページから21ページにかけて共通することで、どうしても教育関係はこういうことをやったということだけのプレゼンテーションになってしまうのですけれども、行った結果としてどれくらいアウトカムが出ているとか、患者さんに還元されているとか、難しいことは承知の上ですが、教育のアウトカムみたいなものを出すことはできませんでしょうか。

 その2点だけ伺いたいと思います。

○国立精神・神経医療研究センター中込精神保健研究所長

 ありがとうございます。

 トランスレーショナル・メディカルセンターにおきます臨床研究研修制度は、外部も内部も受け入れておりまして、比較的外部の方が毎年多いという特徴がございます。この中で、例えば医学英語論文ライティングとか一部のものは内部の方が多いのですけれども、入門講座、Meet The Expert等々は外の方も結構来ておられます。

 それから、研修の成果ということですけれども、一つ、薬物医療に関しましては、最終的なアウトカムは薬物依存患者がどのぐらい減ったかということになると思いますが、今のところ、ようやく薬物依存に対応できる医療機関を育成しているという段階ですので、最終的なアウトカムにつきましては、もう少し時間がかかるかもしれません。

 ちょっと時間がなくて申し上げられなかったのですけれども、薬物依存にはかなり力を入れています。もう一つは、薬物依存の治療だけではなくて、重要なのは供給を断つということでありまして、薬物依存研究部のほうでは、22ページをご覧いただければお分かりだと思いますけれども、覚醒剤のみならず危険ドラッグ等の問題がありますので、依存性薬物の指定ということを行ってまいりました。そういう意味で、入り口と出口と両方断つということで将来的にはアウトカムを見ていきたいと思っております。

 精神保健研究所等の研修においてもう一つは、実際にその研修を受けた者が各地域に戻ってどんな活動をしたのか、そこでどのぐらいの人数に対してどういう研修を行ったかをちゃんとアンケートで聴取するというフォローアップを非常に重視しているところであります。

 以上です。

○永井部会長

 大西委員。

○大西委員

 1-5の医療政策のところのお話になるのですけれども、自己評価でAをつけていただいています。非常に申し上げにくいような話なのですけれども、目標をかなり上回る成果が上がっているということがそのときの考え方になるのですが、確かに何点か、142例の組み入れとかあるのですが、そのあたりもう少し補強するとしたらどういう点を御示唆いただけるか、教えていただければと思います。

○国立精神・神経医療研究センター中込精神保健研究所長

 先ほど自殺の問題を申し上げられませんでしたが、当センターで、精神保健研究所の中なのですけれども、新たに自殺総合対策推進センターができまして、ここのところをかなり強化しており、「新たな自殺総合対策大綱」についても、当センターの自殺総合対策推進センターの意見が十分反映されたものができ上がっております。その特徴は、どちらかというと包括的な自殺対策への取り組みということで、ここにもありますが、自殺対策推進のための地域自殺実態プロファイル、これも初めての試みだと思いますけれども、各地域における自殺の特徴、どこに力を入れれば自殺を防止できるかという具体的な情報を1,000幾つの自治体について見えるような形にしました。ここはちょっと時間がなくて申し上げられなかったのですけれども、私としては大事な部分だろうと思っております。

○永井部会長

 訪問看護ステーションをセンターとして運営なさっていらっしゃるということなのですね。これは確かに地域への医療ということと人材育成という意味でも、地味ですけれども、かなり重要なことのように思いますが、いかがでしょうか。

○国立精神・神経医療研究センター村田理事・病院長

 ありがとうございます。

 やはり東京でも精神疾患の訪問看護というのはまだまだ足りないものですから、うちの中の訪問看護ステーションでどういうことが必要かということをやった上で、地域の訪問看護ステーションの看護師たちにセミナーをするというようなことを始めているところです。

○永井部会長

 直接ステーションを経営しているわけではないのですか。

○国立精神・神経医療研究センター村田理事・病院長

NCNPとして直接、ステーションがあります。病院の外、ちょっとよく分からないのですが、それがありまして、それが病棟と密接に連携して訪問看護をしているということです。

○永井部会長

 このごろは医師会からも大学病院にそういうステーションを運営してくれないかという要望もあるものですから、ある意味では先駆けていらっしゃると思ったのです。花井委員、どうぞ。

○花井委員

 人材育成について、特に薬物依存に関しては、将来的成果の創出という意味では評価できると思うのですが、ドラッグ流通に関しては、今、世界的に見ると日本は非常に孤立した政策を展開していて、世界的な流れから日本は異質な国になっていると思います。そういった意味で、政策とともに、現場で育成した人材がうまく力を発揮できる環境ということについては、今の感触としては将来とともにどういうふうにお考えでしょうか。

○国立精神・神経医療研究センター中込精神保健研究所長

 ありがとうございます。

 おっしゃるとおり、我が国の薬物依存に対する対応は、法的な規制にあまりにも偏っていたという批判がございます。それに関しまして、今、薬物依存研究部のほうでは、メディア塾等を通してマスコミを積極的に啓発していくということも同時に行っているところであります。国民の皆さんがあまり御存じないこととしてヨーロッパでの取り組みとか、そういったものをどんどん紹介していくべきだと、私も個人的に思っております。

○永井部会長

 よろしいでしょうか。

 それでは、業務運営の効率化、財務内容の改善、その他業務運営に関する事項、評価項目2-1から4-1についてお願いいたします。

○国立精神・神経医療研究センター冨澤企画戦略室長

 それでは、24ページをお開きいただきたいと思います。「業務運営の効率化に関する事項」でございます。

 まず、目標の2つ目の丸でございますけれども、平成28年度の経常収支率98.2%を目標としております。これまでおおむね3億から8億の赤字で推移しておりまして、過去の経営状況を踏まえますと難易度が非常に高いということでございますけれども、2の2つ目の丸に書いておりますように、目標は98.2%で経常収支差は2億6,500万円のマイナスに対して、実績につきましては、経常収支率が99.5%で経常収支差が7,300万円のマイナスということで、大幅に実績が上がっているということでございます。

 次に、一般管理費でございますけれども、15%の削減の目標に対し、実績は27.2%の削減ということで管理費の削減、次の後発医薬品については、70%以上の後発医薬品の目標に対し、実際の使用量については79%ということで実績がかなり上がっているということでございます。

 このため、業務運営の効率化については、自己評価をAとさせていただいているところでございます。特に右下の表に書いておりますように、平成28年度後半は患者数が420430人ということで、昨年度より入院患者の方々にかなり多く入っていただくことができました。

 そのための取り組みとして、25ページにありますが、まず1つ目は、病院で働いていらっしゃる職員の方々の適正数を検討し、もう一つは、部門ごと、特に神経内科あるいは精神科、その他部門ごとの年間の入院・通院の患者数の目標の明確化と、それを基本的に見直して、本当にその対策が正しいのかどうか、PDCAを行い、経営効果を目指した対策を行ってきたところでございます。

 その次は病棟構成の再編ということで、神経内科の待機患者が非常に多いということを踏まえまして、右側の表にございますように、精神病床の「4南」と書いてある病棟を一般病床に転換することを昨年度決定し、今年度実行する工事に当てはめるということで、今年度さらに経営の効率化を図ることを考えております。

 その次に、先ほど理事長から説明がありましたように、てんかんの全国診療拠点病院の指定を受けておりますが、これによって多くの点数を得ることができるようになっております。

 それから、人件費の抑制です。昨年度も御説明いたしましたけれども、平成27年度の経営状況を踏まえて、同年度の国の人事院勧告では16%の地域手当となっておりますけれども、当センターでは14%にとどめております。

 また、平成28年度は、賞与1カ月分の増などの人事院勧告がございましたけれども、当センターは昨年度の勧告についても凍結し、人件費を抑えることによって、職員の皆さんに我慢していただいて努力しているところでございます。

 次に、26ページをご覧いただきたいと思います。当センターの独自の努力として行っている外部資金の獲得でございます。昨年度に比べまして104%の増、合計約29億円でございます。このうち多いのが受託研究(企業等)で対前年度146%、共同研究(企業等)が8,800万円、対前年度173%でございまして、努力しているところでございます。

 その他考慮すべき事項でございますが、これは、いわゆる財投の長期借入金、短期借入金の新規借り入れは行わない、長期借入金残高の縮減を行っているということでございまして、記載のとおり残高が減っているということでございます。経営については相当努力していると考えております。

 次に、27ページ目、その他です。法令等に従って行っているか、働きやすい職場環境をつくっているか、人材の確保をしているか、離職の防止を行っているかというようなことでございまして、これは法令等に従って適切に行っているところでございます。

 次のページに行っていただきまして、当センターの構造的リスクでございます。精神科はやはり診療収入が少ないということと、当センターでは1病棟当たり、35床ということで、非常に収益を上げにくい状況になって構造的リスクがございます。

29ページの右下の赤で書いてあるところは、先ほど申し上げました外部資金の獲得状況でありまして、平成22年度に比べますと28年度は3億5,700万円の増になっておりますが、運営費交付金につきましては、22年度から約7億円減っておりまして、運営費交付金の対象事業について28年度でも5億6,000万円が不足しているところでございます。

 最後の30ページでございます。医療観察法病棟は、基本的に厚生労働省から人員が決められており、人員に対する費用は一定で、1床当たり2,000万円です。右下の折れ線グラフにありますように、入ってくる患者さんの数が少ないとそれだけ収入が少なくなってしまうという構造的な問題があります。

 当センターだけでは解決できない構造的な問題がありながら、先ほど申し上げましたように、入院患者数をふやす等、努力し、さらに29年度は一般病床を増やすことによって経営の改善を行うことを考えております。

 以上でございます。

○永井部会長

 ありがとうございます。

 それでは、御質問をお願いいたします。藤川委員。

○藤川委員

 この項目に関しては、1のところで「難易度が高い」という表現はあるのですが、資料1-1のほうでは特に「難易度高」という下線がないので、設定は特にはしていないけれども、実質的に難易度が高いというお考えで、この部分に関して100%から120%の達成で、Aが120%以上ということになると思いますけれども、そこまではいっていないのかなというところで、「難易度高」を反映できないとすればここをどう考えるのか、気になりました。

○国立精神・神経医療研究センター冨澤企画戦略室長

 まず、難易度につきましては、120%を超えるということは、研究と違い、財政的には、先ほど申し上げましたように、精神科については一病棟あたり35床でしかも同科では一人あたりの診療収入が少ないという構造がございますので、その点に鑑みますと120%を超えるということは非常に困難と考えております。その中で、昨年度3億7,000万円の赤字だったものを本年度は7,300万円の赤字に抑えることができたということは、先生がご指摘される点について相当な努力を払ったのではないかと考えております。

○藤川委員

 確かに構造的な問題というのは、センターにおいてどうしようもない、乗り越えようがないところがあるということは十分理解しているところでございます。現実、人事院勧告を反映しないということに関してもかなり難しい話だと思いますので、努力はよく分かりますが、逆に、必要な投資が十分にできない状況にもあるのではないかとか、そういったところも気になるところです。Aをつけたいお気持ちはよく分かるのですけれども、相当な努力は感じられますが、悩ましいと感じられます。

○国立精神・神経医療研究センター冨澤企画戦略室長

 先生おっしゃることはごもっともでございまして、投資につきましては、25ページの下から3行目に書いておりますけれども、「経営見通しに合わせた投資計画」ということで、これまでキャッシュが十分とはいえないものですから、なかなか経営投資ができないという状況にありました。今後は、平準化していくことによって、古いもので人の身体に対して影響が及ぶ危険性が高いものにつきましては、こちらのほうである程度年度的な計画を立てておりまして、随時行っていきたいと会議の中で決定しております。本日、具体的なところは示しておりませんけれども、平準化した中で、投資計画を立てて推進していくということを決定しております。

○国立精神・神経医療研究センター柳澤理事長特任補佐

 1点、補足させていただきたいと思います。

 評価のあり方として、先ほど先生がおっしゃるように、定量的に120%というのは承知しています。ただ、定性的な評価というものも当然加味されなければいけないと私どもは認識しておりまして、今回の構造改革については、一般病床に切りかえだとか、あるいは実際の経営基盤のPDCA、ルールの見直しとか、すべからく手をつけたことについては28年度すぐに結果が定量的に出るわけではない。その中で3億円の経営改善を行い、患者さんの医療需要に見合った病棟構成をすることによって、精神の35床というものが41床になったりとか、あるいは神経難病の患者さんの増える病床構成になりますから、29年度、30年度になればさらに経営が上向くという基盤を28年度中につくっているということが極めて重要だと思っています。逆に、29年度、30年度にたまたま数字が良くなったからといって、120%になったからAということではなくて、28年度に定量的と定性的に何をやったかということが重要なのではないかと思っています。

○永井部会長

 大西委員、祖父江委員。

○大西委員

 まさしく今その点をお伺いしようと思ったのですが、28年度における取り組みというところを拝見しますと、今お話がありましたように、人勧の抑制ですとか、非常にカンフル剤的なものが多かったように思います。一方で、病床の変更、または一般病床への転換といった構造的なこともされておられますから、今のお話を伺いますと、経営は比較的安定的に向上していく素地ができ上がったというふうに捉えてよろしゅうございますか。

○国立精神・神経医療研究センター冨澤企画戦略室長

 先生おっしゃるように、努力してまいりました。運営戦略会議を設けまして、理事長をトップに、院長、研究所長等に入っていただきまして、この戦略会議で28年度に体制を決定し、29年度の9月ごろから工事を始めるということで、2月を目途として完成する予定でございます。先生おっしゃるとおり、素地については着々とできているところでございまして、その効果については今後をご覧いただきたいと思っております。

○祖父江委員

 この間のプレのときにも申し上げたのですが、運営戦略会議というのができて、これが成果を生むにはもうちょっと時間がかかるのではないかと思います。ですから、これで皆さん一丸となってこの問題に取り組むというところが出てきているのかなと拝見しました。

 ただ、言い方は悪いのですが、なかなか儲かりにくい領域でどうやって黒字経営に持っていくのかというところが、非常に知恵を絞ってやっていただきたいところなのですが、それをきちっとやっていただければ、非常にインパクトが出てくると思います。

 一つお伺いしたいのは、診療でも研究でもスクラップ・アンド・ビルドということをどれぐらい考えておられて、何かお考えになっていることがあったら教えていただきたいと思います。

○国立精神・神経医療研究センター冨澤企画戦略室長

 スクラップにつきまして、スクラップをどの部分にするかという点については、やるのであればこれから考えなければならないと思っております。一般病床にすれば点数も高くなりますし、先生おっしゃるように、儲けも多くなるということは確かにそうなのですが、当センターは、やはり精神・神経医療研究センターということで、全国の中核として精神的なものを担うという役割を持っております。それが果たして本当にどこまでできるのかというのはセンターの中でも議論しなければならないし、厚生労働省との話し合いもしなければならないと思っておりますので、先生がおっしゃったことについてはこれからまた議論していく必要があろうかと思っております。

○国立精神・神経医療研究センター村田理事・病院長

 病院としましては、まず、人勧を抑えたというのはもちろん大きいのですが、それは増やすところを増やさなかっただけであって、そもそも収入が増えないとこんな3億円も黒字にならないのです。やはり1日平均患者数は、正直申し上げて大変な努力をして、このように毎年平均患者数が4人増えるというのは、土日はほとんど入院しませんから、週5日間をどうやって使うかということでこれだけ増やしてまいりました。

 先ほど祖父江先生がおっしゃっていただいたように、うちの病院に来ればいかにいいことをしてもらえるかということを全国展開で説明し、御理解いただき、それなら来たいということで来ていただいて、それはどの科も同じでございます。

 その上で、既に神経難病は入院が120人待ちという状況もありまして、病床を転換するということで、それと精神科に関しましては、世界的に精神科診療が入院から外来へ、在宅へという方向になっておりますので、入院のベッド数は少し減りますが、その分を外来のデイケアであったり、訪問看護ステーションであったり、外来診療の中でやっていく例えば認知行動療法であったりというほうにシフトしていこうとしておりまして、それもこの病棟編成の一つでございます。

○永井部会長

 後発医薬品79%、大分高くなりましたけれども、今、全国的に80%を超える大学病院も結構増えていて、このあたりはどの辺を目標にしたらよろしいのでしょうか。各大学は思った以上に急速に後発医薬品の導入が増えています。目標が70%だったものですから、そのあたりはどうなのでしょうか。

○国立精神・神経医療研究センター村田理事・病院長

 この70%というのは、70%以上にしないと何々というのがありますね。それの数字で出しております。一応、経営改善にもかかわるかもしれませんが、NHOの共同購入などにも参加させていただいて、できるだけ後発品を入れるような形にはしております。

○永井部会長

 ありがとうございます。よろしいでしょうか。

 それでは、法人の監事より、業務の監査結果等を取りまとめた監査報告について御説明いただくとともに、監査等を踏まえた現在の法人の業務運営の状況、今後の課題、改善方針等についてコメントをいただければと思います。

○国立精神・神経医療研究センター林監事

 監事の林でございます。

 監事監査に関しましては、お手元の監査報告書に記載しているとおりで、特にコメントはございませんが、1点、経営に関しましてコメントさせていただきたいと思います。

 当センターは、繰越欠損金の解消が大きな経営課題となっておるわけでありますが、28年度は、理事長以下、役職員が一丸となりまして、大変構造的に厳しい環境の中で、先ほど来説明がございましたが、大変な努力をされているということは監事として評価させていただきたいと思っております。今後もこれを遵守し、適正な内部統制を構築しながら、経営改善に努めていっていただくよう、注視していきたいと思います。

 以上でございます。

○永井部会長

 ありがとうございます。

 続いて、法人の理事長より、日々のマネジメントを踏まえ、現在の法人の業務運営の状況、今後の課題改善方針等についてコメントをいただければと思います。

○国立精神・神経医療研究センター水澤理事長

 ありがとうございます。

 まず最初に、補足と申しましょうか、追加で一言申し上げたいと思っております。

 私はもともと神経内科医でございますけれども、この施設に来て感じたことは、精神疾患の克服という課題に対してその原因やメカニズムが分からない、バイオマーカー等がなく、なかなか客観的診断ができないということから、いろんな意味で遅れているという部分があると思います。

 それに対して我々の役目としては、根本的な原因解明と治療の開発を目指していくべきではないかということで、実は力を入れております。なかなか数値目標的なものでは表れてこない部分があるかもしれませんけれども、今、それに向かって、例えばビッグデータの活用とか、あるいは先ほどちょっとお話がありまして、データとしてはお示しできなかったのですけれども、ブレインバンクがやはり重要だろうと考えております。精神疾患を特に考え、ジャパンブレインバンクネットワークを構築いたしまして、現在、既に1,587の検体が活用できる状況になっており、精神疾患で100以上あるという状況になってきております。日本全国をカバーするネットワークが構築できたということで、これは日本全国の多くの施設の方々に協力していただいております。

 もう一点、強調したいことなのですけれども、これもなかなか医療というふうには出しにくいのですが、例えば精神疾患の精神保健という観点から、病気になる前の精神的な健康状態をさらによくするという予防的な側面が非常に重要だろうと思っております。先ほど来、話が出ております認知行動療法等を活用して、現在、産業界でストレスチェックということが始まっておりますが、チェックされて少し問題のある方々に対して認知行動療法を応用することで、予防のほうにも貢献できるという体制を整えつつあります。今日は、ほとんどお話しできなかったのですが、そういった方面で貢献を増しているというふうに考えております。

 もう一点ですけれども、先ほどのいろいろな経営改革に関しまして、例えば人事院勧告の抑制といったことは比較的一時的な施策に見えるかもしれませんが、やはり職員の意識改革がとても重要だろうと思っております。そういうことで、人事院勧告の抑制につきましても、多くの者と検討いたしまして、そうすることで意識の改革に役立てていただく、そういう効果がかなりあるのではないかと考えております。

 そういう意味で、根本に立ちまして、患者さんの声を聞くということをまず始めました。精神疾患を含め、発達障害の患者さんの方々の患者会、家族会等の方々から意見を直接お聞きして、それを反映してこういう施策を進めてきているということを強調しておきたいと思います。

 課題として感じましたことは、今日来ていただいている先生方は皆さんよく知っていただいたと思うのですけれども、ナショナルセンターの中では、例えばがん、循環器病の脳卒中あるいは認知症といったものに比べますと、精神・神経疾患といってみてもなかなか知られていないということを非常に実感しております。そういう意味で、やはり患者さんとともに、これらの疾患そのものをよく知っていただく。普通の国民の方々によく知っていただくことがとても重要だと思いまして、そういう努力を、これまでもやっておりましたけれども、それをさらに強力に進めていくというふうに考えております。

 今後の展望でございますが、きょうお話ししましたように、研究等で成果を上げることはもちろんですけれども、経営、運営の改善というものも、先ほどのお話によりますと、難易度は超高いというふうに考えていただければと思いますが、それを完成させる、黒字化を達成するということを目指していきたいと思います。

 実はあまりお話に出せませんでしたけれども、先ほど投資の話がありましたが、建物等がかなり老化してきておりますので、そういったものの建て替え等も念頭に置いてこれから努力していきたいと思っております。引き続きよろしくお願いを申し上げます。

 以上です。

○永井部会長

 ありがとうございました。

 何か御質問、御意見ございますでしょうか。よろしいでしょうか。

 もしございませんでしたら、以上で国立精神・神経医療研究センターの28年度業務実績評価を終了いたします。どうもありがとうございました。

 

 

(休憩)

 

 

○永井部会長

 それでは、国立研究開発法人国立がん研究センターの平成28年度業務実績評価について御議論いただきます。

 初めに、「研究・開発の成果の最大化に関する事項」の評価項目1-1と1-2に係る業務実績及び自己評価について、まず法人から御説明をいただき、その後、質疑応答ということでお願いいたします。説明時間は15分でよろしくお願いいたします。

○国立がん研究センター間野理事・研究所長

 では、研究・開発とその成果について、私、研究所長の間野から御報告申し上げます。

 資料2-2をご覧ください。5ページ目からが項目1-1と1-2の説明になります。

 私ががん研究センター研究所長に赴任して1年少しになりますけれども、その間、基礎研究から応用研究まで一貫して世界に伍する開発・研究を行っていこうという思いで研究所を運営してまいりました。特に注力したのは研究所と両病院の連携を深くすることと、もう一つは、ゲノム医療の日本での実現に向けて、そのインフラをつくっていこうということを心がけて1年間過ごしてまいりました。幾つか研究成果について具体的に御紹介申し上げます。

 5ページ目の左側、1の1でございます。肝臓がん300例の全ゲノムの解読を行いました。国際がんゲノムコンソーシアムでがんのゲノムの解析が大規模に行われていますけれども、その中で、特にC型肝炎ウイルスの罹患患者さんに起きた肝細胞がん(Hepatocellular carcinoma)に関して300例の全ゲノムの解析を行いました。単独のがん種の全ゲノム解析としては世界最大規模になります。

 当然のことながら、既知の肝臓がんのがん遺伝子、例えばp53とかSmadなどは見つかってきたのですけれども、興味深いことに、蛋白をコードしないRNA、非コードRNAの後天的変異、体細胞変異が幾つかの非コードRNAに集積していることが明らかになりました。具体的には、NEAT1とかMALAT1というノンコーディングRNAなのですが、これは恐らく肝細胞がんの発症メカニズムに蛋白が関与するだけではない新しいメカニズムがあるということを示唆する重要な所見ではないかと思います。そこの図にありますのは、テロメア遺伝子(TERT)が染色体の構造異常によって肝細胞がんでしばしば高発現していることを示しております。

 次に、6ページをご覧ください。右側の「4RET融合遺伝子陽性の肺がんに対する分子標的治療薬『バンデタニブ』の有効性を確認」であります。これは、当センター研究所の河野らが、チロシンキナーゼをコードするRET遺伝子が肺腺がんの一部の症例において遺伝子融合を起こして活性化されて肺がんの原因となることを発見しました。この発見を受けて、RETチロシンキナーゼの特異的な阻害薬であるバンデタニブが治療薬として使えるのではないかということを臨床試験によって検証しようとしたものであります。

RET融合遺伝子は肺腺がんの1~2%にしか存在しませんので、大規模な日本全国にわたる臨床試験のネットワークを構築しました。それは当時「LC-SCRUM-Japan」と呼ばれたのですが、これが現在のSCRUM-Japanとなって、さまざまながん種における臨床試験のネットワークの礎となったものであります。

LC-SCRUM-Japanにおいては1,500名を超える患者さんをスクリーニングして、結局19名のRET陽性の患者さんが医師主導のバンデタニブの臨床試験に入ることができました。下の図にありますように、バンデタニブによって肺がんのサイズが著明に縮小していることが分かります。奏効率が約5割ということで、明らかな臨床的有用性が証明されました。プルーフ・オブ・コンセプトが得られたということになります。RET遺伝子陽性の患者さんは世界で毎年1~2万人の方が亡くなっていると考えられますから、その方たちの救命に直接つながる研究を、標的の発見から臨床試験の成功までを一つのセンターがなし得たということで、これは重要な成果ではないかと考えています。

 7ページをご覧ください。「5肝臓を再構築する肝前駆細胞へのリプログラミングにラット、マウスで成功」であります。当研究所の勝田、落谷らの成果でありますけれども、肝細胞(Hepatocyte)というのは終末分化細胞であって増殖することはないと長く考えられていました。ところが、勝田らは、Hepatocyteが低分子化合物を3種類組み合わせるだけで細胞のリプログラミングが起きて、急速に増殖する肝前駆細胞へ再プログラミングされることを明らかにしました。彼らは、その細胞をChemically-induced Liver ProgenitorsCLiP)と名づけています。

 3種類の低分子化合物は、ROCKという酵素の阻害剤とTGFβレセプターの阻害剤とGSK3βの阻害剤なのですが、その3種類を組み合わせて投与するだけで肝細胞がリプログラミングされて再増殖することを明らかにしました。これは、単に再生医療に使われるだけではなくて、例えば遺伝子を導入することで肝細胞がんのモデル型を構築することができますから、新しい肝細胞がんに対する薬をハイスループットスクリーニングすることにも使える応用範囲が広い成果ではなかったかと思います。

 9ページをご覧ください。3の「1変異型IDH1阻害剤の悪性脳腫瘍に対する第1相臨床試験を開始」であります。悪性脳腫瘍(神経膠腫)の特にローグレードの神経膠腫においては、IDH1の遺伝子異常が高頻度に起きることが知られています。IDH1は、イソクエン酸脱水素酵素でTCAサイクルの酵素なのですけれども、そこの特異的なアミノ酸の置換が特にローグレードのグリオーマで起きることが知られていました。そこで、このIDH1阻害剤をつくったら治療薬にできないかということを検証したものであります。

 研究所の北林らは、第一三共製薬と共同で、変異型IDH1だけを選択的にブロックするような化合物の合成に成功しました。野生型正常のIDH1には影響を及ぼさないが、変異型のIDH1だけを抑制するような阻害剤であります。しかも、競合する世界の何種類かつくられているIDH1阻害剤と違うところは、この化合物は血液脳関門を透過するので、脳への移行がすごくいいことであります。言い換えれば、脳腫瘍の治療に使えるということであります。

 それをin vivoで検証したのが右の図ですけれども、ネズミの脳に人のIDH1変異の脳腫瘍を移植しまして、そのネズミに末梢からIDH1阻害剤を投与しました。そうしますと、その図にありますように、脳腫瘍が著明に縮小していることが分かります。こうしてプルーフ・オブ・コンセプトが得られましたので、GMPグレードのIDH1阻害剤をつくって、世界で初めてのファースト・イン・ヒューマンの第1相臨床試験を国立がん研究センターの病院でスタートいたしました。これも、標的の発見は既に論文で知られていましたけれども、化合物をつくって、マウスでプルーフ・オブ・コンセプトを得て、しかもさらにそれを病院で第1相臨床研究を行うという、基礎から応用までを一つのセンターで行った成果ではないかと考えます。

10ページは、国立がん研究センターの全体の論文業績を示したものであります。かいつまんで申し上げますと、右上の2016年を見ていただきたいのですけれども、英文の論文総数760、インパクトファクター15以上の論文総数31、ともにこれまで過去最高の成果であることが分かります。

 国内の他のアカデミアと比べたのが左下にありますけれども、がん研究センターでは高被引用論文、たくさん引用されている論文(HCP)が89報ということで、国内のアカデミアで比べて19位になります。しかし、これは、当センターの場合は物理学とか工学などの領域が入っていないわけですから、もう少し分かりやすく比べたのが次の11ページです。

 臨床医学と腫瘍学に限って比べています。臨床医学の分野では、論文数では9位、被引用回数では4位、高被引用論文数では2位となっていて、分野を腫瘍学だけに限るとどのカテゴリーでも日本では1位になります。

 右端に別の図をつくってありますけれども、ファーストオーサーあるいはコレスポンディングオーサーになった論文数では、高被引用論文の1位はがん研究センターですので、がんの研究及び成果に関しては日本でトップクラスの業績を上げているのではないかと考えます。

12ページをご覧ください。1の1ですが、がんゲノム医療の基盤整備として、当センターで開発したがん関連遺伝子パネル検査システムが厚生労働省の先駆け審査制度の対象品目に指定されました。これまでがん研究センターにおいては「TOP-GEAR」という名前でクリニカルシークエンスを行ってまいりました。そこで使われていたのが「NCC oncopanel」という、センターで独自に開発したがん関連遺伝子の次世代シークエンスを用いた解析システムであります。NCC oncopanelというキットがこのたび、厚生労働省、PMDAの体外診断用医薬品の先駆け審査指定制度に認められました。恐らく数年後には日本でがんゲノム医療が保険診療のもとで行われる時代になると思われますが、そのときの実際に使われる第1号の遺伝子解析パネルとして、このNCC oncopanelが使われるのではないかと我々は期待しています。

 しかし、これに限らず、遺伝子パネルだけではなくて、日本のがんゲノム医療実現のためのさまざまなインフラを国内の他の施設と一緒につくっていきたいと我々は考えています。例えば、腫瘍ゲノムを調べて遺伝子に異常が見つかったときに、どういう薬剤がそれに対応するのかという知識データベースの日本最大のものをつくったり、様々なインフラストラクチャーをぜひ国内でつくっていきたいと考えています。

13ページ、左側の「3日米韓がん撲滅ムーンショット会議に参加」ということで、これは、アメリカの当時のバイデン副大統領が提唱したがん撲滅のためのキャンサー・ムーンショットプログラムというものに日米韓が共同研究をスタートしていくものであります。去年の9月に塩崎厚生労働大臣と中釜がん研究センター理事長と私も参加しましたけれども、ことしの2月にはソウルでさらに実務者会議を開催しておりまして、日米韓共同でがん撲滅に対して連携していこうというものであります。このように、研究所及両病院と一緒になって研究開発に力を入れて現在も進んでおります。

 私からは以上です。

○永井部会長

 ありがとうございます。

 それでは、ただいまの説明に御質問、御意見をいただきたいと思います。いかがでしょうか。大西委員。

○大西委員

 大変いろんな成果を上げておられることに感銘させていただきました。その中で、一つのセンターの中で基礎から応用まできちんと成果をつなげていったというお話がございましたが、こういう事例というのは世界的にもあまりないのでございましょうか。

○国立がん研究センター間野理事・研究所長

 これができるところは、非常にすぐれた基礎研究の施設と、臨床試験の面で製薬会社に認められてもらっている病院とがカップルしていないと難しいのです。アメリカでは、例えばスローン・ケタリングがんセンター、MDアンダーソンがんセンターとか、幾つかの施設はあるのですけれども、国内でこれをできるところはかなり限られるのではないか、率直に申し上げて、がん研究センターができなければなかなか難しいのではないかと個人的に思います。

○大西委員

 ありがとうございます。

○永井部会長

 何年か前に、2年前だったですか、マイクロRNAでいろいろながんが診断できるという話がありましたけれども、あれはその後どうなりましたか。

○国立がん研究センター間野理事・研究所長

 それも順調に進行しておりまして、13種類のがんの早期診断を血中のマイクロRNAで測定するというものであります。当時は5年で7万人の検体の解析を行う予定で、今、3年半ぐらい経ちましたけれども、4万人の解析が終了しています。特に乳がんと大腸がんにおいてはAUC0.97とか、素晴らしい値のバイオマーカーのマイクロRNAが見つかっています。

 ただし、解析に用いたのは既存のストックしてある検体ですので、もしかしたら特定のマイクロRNAは保存状態によっては安定ではないかもしれないので、これが本当に使われるものになるためには前向き検証がどうしても必須です。現在、前向き検証もサポートを得て既にスタートしています。

○永井部会長

 感度と特異性も大事だということを前に議論したのですけれども、そこもよく見ていただければと思います。

 ほかにいかがでしょうか。本田委員、どうぞ。

○本田委員

12ページのがん関連遺伝子パネル検査システムの件なのですけれども、日本で初めてNCCがつくってきたこういう形のものが先駆け審査の対象となって、これが今後の保険医療に役立っていくものになりたいということですけれども、こういうシステムというのはいろんなところでバラバラにつくられているものなのですか。それともNCCのものが先駆けで確立していくことで、日本全体のほかの施設にとってもすごく役に立つものなのですか。

○国立がん研究センター間野理事・研究所長

 もしこれが保険で認められれば、もちろんがん研究センターだけではなくて多くの施設でこれを用いたがん遺伝子のゲノム医療が行われるようになりますから、広く使われるようになると思います。

 ただし、これ以外の遺伝子パネルが日本で使われないということではなくて、パネル検査の保険収載のガイドラインが昨年発表されましたけれども、パネル検査キットと次世代シークエンサーそのものと、それから出たデータを解析するインフォマティクスまでを含めたパッケージとして保険で認めたいというガイドラインでした。NCC oncopanelが本当に最初になるか分かりませんけれども、最初に通れば、例えばシークエンサーとソフトウエアのところはそれを使って、パネルだけを入れ替えたようなシステムでほかの保険収載される遺伝子パネルができるかもしれないです。NCC oncopanelは、白血病や悪性リンパ腫といった血液のがんの解析には向きません。血液のがんはすごくたくさんの融合遺伝子が起きて、遺伝子変異は割と少ないがんなので、血液疾患用にはまた専用のパネルができるのではないかと思います。

○本田委員

 ありがとうございました。

○永井部会長

 祖父江委員。

○祖父江委員

 どうもありがとうございました。

 非常にすばらしい成果を出しておられると思います。先生が来られてから、世界的なレベルで開発を行い、それを企業と連携しながら実臨床に持っていく、そういうパラダイムは非常にしっかり見えてきていると思います。

 先ほどもちょっと触れられたのですけれども、ダナ・ファーバーとかスローンとか、世界のそういうことをやっているトップレベルのところに比べると、それに伍していっていると思っているのですが、日本でそれをやっていくときに足かせといいますか、今後展開していく上で何かありますか。その辺は、私、素人なのでよく分からないのですが、いかがでしょうか。

○国立がん研究センター間野理事・研究所長

 今回、私も来て、一生懸命頑張ってはいるのですけれども、これは、もともと、がん研究センターの前研究所長とか病院との連携の成果のほうがむしろ多いので、私が来てからの成果というわけでは必ずしもないということをまず申し上げておきます。

 それから、製剤の開発研究において、日本が総力を結集してがん研究センターが頑張って、今、世界でスローンやブロードに比べられるかといったら、正直、とても比べられないと思います。新しいファースト・イン・ヒューマンのスタディーの数からいってもそうですし、第2相まで含めてもそれに付随するような研究費を製薬会社が日本に対してはまだ十分入れてくれていないと思います。

 私が一番心がけているのは、病院と連携して単に薬の治験を行うだけではなくて、そこに付随研究をして、新しいバイオマーカー、新しい標的をそこで見つけていく、日本のがんセンターというのは世界の中でそういう大事な施設なのだということを製薬会社に認めさせるというのはすごく大事なことです。そうでないと日本で早期治験してくれなくなりますから、そういう意味において、例えば免疫チェックポイント阻害薬が今、日本の企業が主体になっていることは非常に大きなチャンスです。このときにそこの分野で新しいマーカーを病院と一緒に見つけて成果を出すことで認めてもらいたいというのが内心の気持ちです。

○内山部会長代理

 祖父江委員もおっしゃっていましたけれども、本当にすばらしい成果を上げておられて感服する次第です。特にこういった臨床と関係した基礎研究ということで、研究所と病院との関係がうまくいっているということは容易に推測できます。それぞれ研究内容を見ますと臓器も違いますし、インディペンデントにやっているところもあると思います。お互い研究室同士の交流、病院と研究所との情報共有、あるいは論文、研究成果の共有などについて、どのような工夫をされておられるのでしょうか。

○国立がん研究センター間野理事・研究所長

 私が去年来てから、若手研究セミナーというのをつくりまして、若手にしか発表するチャンスを与えなくて、全ての分野長とか、指導層に当たる人たちが全員でそれを応援するようなセミナーを開始しました。それで随分、分野間の垣根が減ってきて、若手同士の交流が盛んになって、年に2回、すぐれた課題に対して所長賞という表彰をしているのですけれども、そういう形で若手のほうからボトムアップ的に境をなくすというような試みをしています。

 それから、病院とは最初のころはできなかったのですけれども、そろそろ西田院長などとも御相談して、病院が受ける臨床試験の付随研究に最初から例えば所長が入って、どういう臨床研究、付随研究をやればいいものが見つかるかということを一緒に介入してやっていくようにしています。

 具体的には、個々の問題だけではなくて、今月の終わりか来月ぐらいにセンター内で発表するのですけれども、研究所と病院とのそういう臨床治験の付随研究のための専用の両者が入ったTRボード組織というのをつくって、付随研究にも最初から介入して、本当にいいものをつくっていくということをやるように計画中です。

○永井部会長

 では、深見委員、そして花井委員、お願いします。

○深見委員

 基礎研究から臨床研究までの流れがきちっと成果になって表れてとてもすばらしいと思います。

 御説明いただいた変異型IDH1阻害剤の開発でお伺いしたいのですけれども、脳内の移行性があるということで、悪性腫瘍という脳腫瘍に対するお薬の開発ということで、標的としてこういうものがあったということなのだと思います。開発に当たって、BBBを通るということは、これまでにこういったものを開発するのがなかなか難しかったということがあったと思うのですが、初めから脳腫瘍にターゲットをしてBBBを通るようなスクリーニングをしたという理解でよろしいのですか。それともそういう系がどのぐらいきちっとあるのかということでお伺いしたいと思います。

○国立がん研究センター間野理事・研究所長 詳細は教えてくれないのですけれども、スクリーニング自体に、BBBを通るものをスクリーニング系に使ったということは多分なかったと思います。ただし、IDH1あるいはIDH2の変異が高頻度に起きるのはグリオーマと白血病なのですので、やはりグリオーマというのは最初からこの研究のターゲットにしていて、スクリーニングはBBBのアッセイ系は使ってはいないのですけれども、そこで見つかった化合物に関してはネズミを使って脳への移行を調べて、脳への移行がいいものを臨床試験に向けたGMPグレードに上げたというふうに私は聞いています。

○永井部会長

 花井委員。

○花井委員

 国立時代から比べると見違えるような感じの成果で眩しいのですけれども、素人の患者としてはどのくらい良くなったのかというのがあって、いろんなことをやられていて、がんは素人的に言うと、外科手術、放射線、薬物みたいなイメージがあります。

 1つの質問は、放射線領域で今、重粒子線とか陽子線とかいろいろやっていて、一方で、やられている割にはエビデンスがないということで評価は難しくて、どのがんでどれだけ使っていいのかも分からない。費用対効果はどうなのかという議論があって、がん研究センターの中ではそういう放射線系の話というのはあまり聞かないのですが、そういうものなのかということが一つです。

 それから、今回、例えば新しくバンデタニブですか、これの適応拡大について一貫して医師主導でできたというお話なのですが、ここまでいくと具体的に延命率とか医師主導で分かって、適応拡大が申請できるという感じなのですか。

○国立がん研究センター間野理事・研究所長

 そうです。OSはまだ出ていないと思いますけれども、無増悪生存期間(PFS)は数値が出ていますので、それをもとに第3相臨床試験を不要として承認申請ができる段階に来ています。

 放射線療法に関しては西田病院長のほうからお願いします。

○国立がん研究センター西田中央病院長 放射線療法に関して西田からお答えします。

 放射線療法に関しては、重粒子線に関しては我々の施設にはございませんので、陽子線に関してまず申し上げます。陽子線に関しては現在、各施設の標準化をまずやらないと臨床試験はできません。それが終わって、今ちょうど臨床試験が始まったところで、これから成果が出て、きちっとしたエビデンスが出せるのではないかと思っています。実際に肝臓がんのものが動き始めています。

 標準的なIMRTとその他に関しても既に臨床試験は始まっています。臨床試験は成果が出るのに5年ぐらいかかりますので、もう少しお待ちいただく必要があると思います。

○永井部会長

 よろしいでしょうか。

○花井委員

 今回、Sということなので、Sをつけるためには特にこれはトレビアンというのを言っていただくというか、素人だと、昔で言えばグリベックの登場、これは生と死がすごいみたいな感じで、成果だと分かるのですけれども、そういう意味で、アウトカムとしてこれは世界的にすごいというのがあればアピールしていただければいいかなと思います。

○国立がん研究センター間野理事・研究所長 これは人によって意見が違うかもしれませんが、私、個人的には、一つは、さっき申し上げたRET、バンデタニブというのは、特に最初から最後までを全部センターがやったというのは、私の前任の成果でありますけれども、これはすばらしい成果だと心から思います。

 もう一つは、さっき取り上げた変異型IDH1阻害剤です。今、血液脳関門をよく通る変異型IDH1特異的阻害剤というのはこれしかありません。ローグレードのグリオーマというのはやがて悪性化するので、患者さんにとってはかわいそうなのです。それこそグリベックが効いた白血病と同じことで、5年後には急性転化するのだろうと思いながら生きていくわけですけれども、これが本当に効けばそういう方たちを救うことができるので、これもまだまだ第1相が始まったばかりですが、それだけでもすばらしい成果だったと思います。

○永井部会長

 では、祖父江委員。

○祖父江委員

 ちょっとクエスチョンですけれども、評価から外れる質問で申しわけないのですが、非常に興味があったのは、肝がんの全ゲノムシークエンスで非コード型のRNAの変異がたくさん見つかったというお話でした。ゲノムのことをどんどん進められているのですが、ゲノムの中には発がんに非常にリンクするものと、モディファイアーといいますか、経過とかをモディファイしていくものと分けられるのかどうか、ちょっと素人質問で申しわけないのですが、教えてください。

○国立がん研究センター間野理事・研究所長

 おっしゃるとおり、例えばゲノムの不安定性を上げるようなものは、必ずしもそれ自身が細胞増殖に関係ないけれども、クローナルダイバーシティーを上げることによって発がんに寄与するクローンができることを助ける。そういうふうな変異というのは実はがんの持っているゲノム変異にはたくさんあります。ノンコーディングRNAがどれに相当するかというのはまだこれからの研究に待つということになると思います。

○永井部会長

 では、最後に藤川委員。

○藤川委員

 素人なので分からないことがいっぱいあるのですが、先ほど6ページの4の御説明のところで、毎年、世界で1~2万人の方が死亡するような病気に効果があるものだというような具体的な数字もあったりしました。一つ一つの研究が一体どれぐらいの対象の人がいるのかということももうちょっと御説明いただけると分かりやすいという気がいたしました。

 それから、毎年、非常にたくさんの研究に取り組まれて、それも成果が出ていると思うのですけれども、それが蓄積されてきて、また進んでいる部分もあるのですが、毎年新しいことが次々出てきてしまうので、それがどういうふうにバランスがとれて、今、全体としてどうなっているのかというところが何となく分からないような気がします。毎年一つ一つ新しいことが出てくるので、そういったところも、ここを目指していたら進捗がここら辺まで来たというようなことがわかると、もう少し国民からの理解も得られやすいのではないかという気がしました。

○国立がん研究センター間野理事・研究所長

 ありがとうございます。重要なテーマに関しては、その後のフォローアップの情報も次回から入れていこうと思います。

○永井部会長

 よろしいでしょうか。

 それでは、続いて、評価項目1-3から1-5について説明をお願いします。

○国立がん研究センター西田中央病院長

 1-3「医療の提供に関する事項」は中央病院長の西田が御説明申し上げます。

14ページを開いていただけますでしょうか。私どもは、がん征圧のための中枢機関として、予防や診断、治療において非常に高いレベルの医療を提供するとともに、患者さんの視点に立って安全で安心な医療を提供することを目的としています。同時に、研究開発法人ですので、新しい医療を開発するということで臨床試験に集約してまいりました。

 第1点としましては、昨年度になりますけれども、私の前任病院である東病院が厚労省から28年の医療法改正後の初めての特定機能病院として承認されたということで、両病院が特定機能病院であり、かつ臨床研究中核病院になったということで、一法人の中にこれだけ2つが揃った法人はないと思っています。なったことが重要なのではなくて、こういうことがとれたということは、それだけの高度な能力を備えた病院であるという御評価をいただいたのではないかと思っております。

 東病院ですけれども、この3月に私どもが「NEXT棟」と申していますけれども、次世代の外科、低侵襲外科治療が提供でき、内視鏡の新しい治療ができる「次世代外科・内視鏡治療開発センター」をオープンしました。ここでは、内視鏡の治療と開発、及び先ほど申しましたように、内視鏡外科手術を中心としました低侵襲手術を患者さんに提供するとともに、これから、この2つの領域の機器開発を含めてやっていこうということで、開発的なこともできるような施設をつくりました。既に幾つかの臨床試験が動いていますけれども、ここを中心として機器開発や遺伝子検査等の開発が行われることを期待していただいていいのではないかと思っております。

 次に、15ページです。私どもこの新しい体制になって大きく2つの課題を挙げております。

 1つは、アンメット・メディカル・ニーズのある希少がんあるいは難治がんの開発を行うこと、それから、先ほども間野が申しましたように、個々の遺伝子情報、ゲノム情報に基づいた個別化医療ができるような体制を実際に臨床で実施していくことを目指しております。その中で、希少がんの領域においてこの2つを充足するような研究、MASTER KEYプロジェクトを開始しました。

 具体的に申しますと、もともと希少がんというのはどういう病態を示しているのか、何が問題なのか、明確でないという一つ大きな問題がありますので、そこは第1番目のステージでレジストリー研究ということで、個々に患者さんにインフォームド・コンセントをとった後、参加していただいて、レジストリー研究で患者さんあるいは疾患のプロファイルを明確にし、その後、トップギアプロジェクトで遺伝子プロファイルを明確にして、その遺伝子プロファイルに応じたバイオマーカーに基づくバスケットトライアルをしようということです。これは産学協働でやるプロジェクトでございまして、これまで11社と契約を結び、既に3つの新しい臨床試験、特に医師主導治験あるいは治験が動き始めています。

 ということで、希少がんには我々力を入れているところでございます。希少がんの中で患者さん方の声の非常に大きいのが、正しい最新の情報が欲しいということです。ページの下を見ていただいてお分かりになりますように、できるだけアップデートされた情報を全国の患者さんに流そうということで「希少がんMeet the Expert」というのを今年から始めております。これは中央病院の中でやっているのですけれども、これをビデオに撮ってホームページで公開することで、全国の患者さんが家にいて情報を得られるような形をとっております。

 次に、16ページです。これまでがん研究センターは、キュア(治療)ということに大きな重点を置いてきました。しかし、患者さんのQOLを上げるためにはキュアだけではだめで、支持療法であったりケアというものに力を入れていかなければいけません。そこで病院の8階を改装しまして「患者サポート研究開発センター」というものを設置しました。

 ここで重要なのは、第一に、多職種、医師以外の看護師、臨床心理士、薬剤師、その他が集まってチーム医療で患者さんがニードするものをいつでもワンストップで提供できるシステムをつくりました。そこでプログラムは、「常設プログラム」と書いてありますけれども、こういうプログラムを幾つか用意して、患者さんが行きたいところにいつでも行けるという形をとっております。

 ただ、中央病院に来られた患者さんがメリットを受けるだけではだめなので、ここからある程度きちっとしたエビデンスを出さなければいけないと考えています。一例としまして、その右側を見ていただいて分かりますように、最近、アピアランスというのががん領域では非常に注目されています。アピアランスというのは外見ということでございますけれども、抗がん剤の副作用等で外見がおかしくなる、皮膚がただれたり、髪の毛が抜けたりすると、それだけで精神的にまいる患者さんがいらっしゃいます。アピアランスを調整することで患者さんの精神面やQOLも上げようという試みです。その標準的な手法を明らかにしていかなければいけないということで、手引書を発刊し、全国に広めていくような試みも行っております。

 以上、簡単ではございますが、医療の提供に関する事項に関しまして西田が説明しました。この後、人材育成に関しましては、若尾より御説明いたします。よろしくお願いします。

○国立がん研究センター若尾がん対策情報センター長

 続きまして、人材育成及び医療政策の推進に係る事項につきまして、がん対策情報センター、若尾から御説明いたします。

17ページをご覧になってください。評価項目1-4「人材育成に関する事項」です。がん研究センターでは、今まで御説明しましたとおり、研究の推進及び医療の推進のほかに、我が国のがん医療の底上げをするためにさまざまな人材育成に取り組んでおります。

 まず、2のリーダーとして国際的に活躍できる人材としまして、3年間のレジデント、及び短期レジデントでも最低1カ月、全国のがん医療専門施設からがん研究センターで研修していただいて、昨年度は109名が研修を修了いたしました。

 3として、我が国だけではなく海外からの研修生も積極的に受け入れ、内視鏡を中心に長期の研修生が急激にふえて、この4年間で倍増して昨年度は180名を海外から受け入れたという状況です。

 4として、全国の拠点病院等からの医療従事者を対象に、42種類の専門研修に6,000人を超える医療従事者が受講しております。この中で、地域の指導者研修という形で10種類の研修を実施しまして、目標7種に比べまして142%の研修を実施しております。

 さらに、5です。臨床研究を進めるための人材を養成することも非常に重要なのですが、それらに対しましてはeラーニングのシステムをつくりまして、1万6,000人の新規登録があり、8,000人を超える修了者を出している状況です。

 続きまして、評価項目1-5「医療政策の推進に関する事項」でございます。

 まず、1です。ナショナルセンターとしまして、国の審議会、検討会に多くのスタッフが参加し、厚生労働省の「がん対策推進協議会」あるいは内閣官房の「健康・医療戦略参与会合」など、国の医療政策で重要な役割を持っているところに参画しまして、大きな成果を上げているところです。

 たばこにつきましては、たばこパッケージの調査、国際シンポジウム、15年ぶりとなります「たばこ白書」の作成に参画しまして、たばこ政策に対するエビデンスの提供などに大きく貢献しております。

19ページをご覧になってください。6は、がんとの闘いに終止符を打つ「がんゲノム医療フォーラム2016」を厚生労働省と共催で開催いたしました。こちらは単にがん研究センターにおける開催だけではなく、全国15カ所をテレビ会議システムで結びました。このフォーラムにおきましては、塩崎厚生労働大臣が安倍首相のメッセージを代読し、がんゲノム医療実現のためのプロジェクトを策定することを表明していただきました。これを受けて「がんゲノム医療推進コンソーシアム懇談会」の開催につながっております。

 さらに、医療の均てん化並びに情報の収集及び発信に関する事項としまして、ネットワーク構築について御説明いたします。現在、全国には434の国が指定するがん診療連携拠点病院がございますが、そちらを各都道府県で取りまとめております49の都道府県がん診療連携拠点病院を取りまとめた連絡協議会を開催しております。都道府県拠点病院がまとめました県内の意見等を最終的に集約し、現在、国のほうで検討されています「がん対策推進基本計画」の策定に向けた提案を厚生労働省に提出させていただいております。

 それから、拠点病院の質の改善ということが大きな課題となっておりますが、それを進めるためのPDCAサイクルフォーラムなども開催させていただいております。

 次に、20ページです。拠点病院のネットワークを使いまして、病理診断医が少ない中、正確な診断を行うための病理診断コンサルテーションを昨年、487件実施しました。これは目標330件に対しまして147%の対応となっております。

 さらに、昨年春に発生しました熊本地震におきましても、この拠点病院のネットワーク、相談支援センターのネットワークを用いて、熊本被災地の情報を集めるとともに、周辺県の情報を集めて、化学療法あるいは治療の中断を強いられている患者さんに受け入れ先の医療機関の情報などをリアルタイムに発信いたしました。

 最後に、情報の収集・発信ということで、昨年1月から全国がん登録がスタートいたしました。それに基づいて、全国がん登録データベースを運用し、現在、情報を収集しているところです。

 それと並行しまして、従来から行われております地域がん登録のデータをまとめて、2012年の罹患数あるいは5年生存率などを公表しております。

 さらに、がん情報サービス「がんの臨床試験を探す」というシステムは、新たな患者申し出療養あるいは先進医療と今までバラバラであったデータを集めて、一つのデータベースを構築し、情報を発信しています。

 免疫療法につきましても、今、世の中には間違った情報があふれている中、臨床腫瘍学会が策定しましたガイドラインをベースに一般向けに分かりやすい解説などを発信し、正しいがん情報を国民、患者さんに伝えることを実施いたしました。

 以上でございます。

○永井部会長

 ありがとうございます。

 それでは、御質問をお願いいたします。深見委員。

○深見委員

 医療の提供のところです。アピアランスケアという考えはとても新鮮な感じがしたのですけれども、こういった考え方というのは全国的にあるのか、それともがん研究センターが初めてこういうことを考えついたのか、お伺いしたいと思います。

○国立がん研究センター西田中央病院長

 日本の中では多分、がん研究センターが最初の一つではないかと思っています。ただ、グローバルに見ますと、フランスとかその辺ではエステティシャンとか、その辺が入ってきて、病院の中で、アピアランス、外見を大切にするということは以前からやられていますので、世界で断トツで初めてかと言われるとちょっと微妙なところです。日本では我々のところからいろんな施設にテクニカルなところを伝授していっているというような、ちょっとおこがましい言い方をすればそういう形で広げているところでございます。

○深見委員

 実際に使われたというか、レスポンス、反応はどんな感じなのでしょうか。

○国立がん研究センター西田中央病院長

 定量的にはかってエビデンスを出していかなければいけないところで、ちょうど今取り組んでおります。これから一つの支持療法の臨床研究として入れていこうと思っているところです。結果は今、言葉にするわけにはいかない状況ですが、ただ、患者さんの満足度は非常に高いです。

○永井部会長

 ほかにいかがですか。1-3の医療の提供のところはこれからの話が多くて、今、成果として上げられるもの、あるいは上げたものというのはどの辺なのでしょうか。

○国立がん研究センター西田中央病院長

 1-3の中で、現実は、始まったところを大分多く書いています。

○永井部会長

 夢は大きくてよいのですけれども、地道なところでこういう成果が上がっているということを記載することが大切と思います。

○国立がん研究センター西田中央病院長

 最初に申しました特定機能病院をきちんととれたというのが一つの成果と私自身は思っています。実は私が病院長時代から特定機能病院を取りにいこうと取り組んでおりました。いろんなことがあって見直しがあったので、2年延びになって昨年度になったのですけれども、その時代からやってきたことですので、それは一つ大きな成果かなと思っています。

 それから、今回言いませんでしたけれども、14ページの右の下の明細胞がん、これは医師主導治験も始まって、登録がもう少しで終わるのではないかというところまで来ています。この病気というのは、100万人に1人、2人というレベルの数ですので、非常にまれなものでも臨床試験ができるということをある程度証明できた重要な研究ではないかと思っております。

○永井部会長

 藤川委員、それから祖父江委員。

○藤川委員

 全国では、本当はがん研究センターで診てもらいたいのだけれども、遠いから行けないとか、いろんな事情で行けないというような方も多いと思うので、遠隔で何かを提供するとか、前はセカンドオピニオンのこととかも随分触れられていたのですが、最近はそういうことからちょっと離れてしまったのかなと思ったりします。いかがでしょうか。

○国立がん研究センター西田中央病院長

 セカンドオピニオンは既に定着してしまったので、同じことを繰り返しても仕方がないので省いております。申しわけございません。

 例えば、今回、希少がんに集約して出していますので、希少がんに関しましては、希少がんホットラインというのがございます。そのデータからは、確かに、患者さんが100人いたら60人ぐらいはがん研究センターにいらっしゃいますが、来られない方がいらっしゃいます。そういう方には、この病気であればここに専門家がいらっしゃいますといってそれをつなぐような形で、患者さんの住居地に近いところの病院を紹介する。紹介するだけでなくて、つなぐという形で、今、我々は貢献していると思っております。

○国立がん研究センター若尾がん対策情報センター長

 若干補足させていただきますと、先ほど御紹介しました病理診断コンサルテーションなども、非常に難しい診断をしっかりと情報を集めて中央側で行うということは大事ですし、さらに、こちらで人材育成しました医療スタッフが全国に散らばっていって、がんセンターに比するような医療を実践していただいております。ただ、希少がんなど集約が必要なものは情報を共有した上で、一定の集約を目指しているということで対応させていただいております。

○永井部会長

 祖父江委員。

○祖父江委員

 どうもありがとうございます。

 1点だけ確認というか、お聞きしたい点があります。今、特定機能病院とか、がん登録とか、フォローアップという話がございましたけれども、治療後の長期予後が実際にどれぐらい良くなったかというのを、例えばリアルワールドで見ていくという作業が今後非常に大事ではないかと思っています。その辺はがん研究センターとしてはどのあたりまでやっておられるかということと、そういう実績がおありになるかどうか、教えていただきたいと思います。

○国立がん研究センター西田中央病院長

 実績は、リアルワールドデータに関しては、正直申し上げて出ておりません。ただ、先生御指摘されたことは以前から非常に重要だと思っていまして、リアルワールドデータを拾い上げるようなシステムをつくることがまず大事です。拾うためには、今の病院のシステムからいくと電子カルテはそのままデータに移行できないので、そのシステム設計から今、入っていっているところです。我々、2年先に電カルシステムを変えるのですけれども、そのときを目指して、標準とは言わないまでも、モデルケースをつくっていって、先ほど間野先生から話があったのですけれども、ゲノム情報と臨床情報を自動的にコンピューターレベルでくっ付けられるようなシステムをつくっていきたいと思って、今、医療情報部に活を入れてやっているところです。

○国立がん研究センター若尾がん対策情報センター長

 関連してですが、昨年の1月から全国がん登録が始まりました。予後を調べるには正確な予後調査が必要で、今までは個人情報保護の制約等もありまして、病院では予後調査はなかなかできない状況だったのですが、ようやく法に基づいて予後調査もできるようになり、死亡情報を市町村から集めたものをがん登録のデータとマッチングすることで正確な予後情報を各医療機関に戻すことができるようになります。2016年診断例からですので、まだ5年以上かかるのですが、そうしますと正確な予後の情報が各医療機関で持てるようになって、がん医療の進捗状況が分かるようになると思います。

○永井部会長

 どうぞ。

○内山部会長代理

 先ほども話題に出ました希少がんに関する相談のホットラインの件です。人数で見ると平日換算で1日10件以上、そのほか、御自分が希少がんかどうか分からなくて電話をされる方もおられるはずで、かなりの数だと思います。当然、電話相談に応じる部署の方がおられて、その方たちは院内の医療に関す情報もかなり必要なわけですね。その方たちをどのように教育されているのかということと、その後、7割近くの患者さんが受診されていますので、電話相談段階で既に外来予約まで案内を差し上げているのか、外来とのコネクションの問題をどのように解決されているのか、教えていただけますか。

○国立がん研究センター西田中央病院長

 希少がんセンターには専属のナースが1人と事務員がおります。ナースがハブになって、各診療科にそれぞれ希少がんの担当医師がいまして、その医師につなぐことで患者さんがすぐ来ても診られるようなシステムになっています。予約も、電話がかかってきたら、ほかのところからとる必要はなくて、その場でとれるようになっていますので、ワンストップでサービスが提供できていると思います。ただ、先ほど申しましたように、3分の1はアプローチができない方がいらっしゃいます。それに関しては、先ほどのように地域を紹介するというような形でやっております。

○永井部会長

 本田委員、どうぞ。

○本田委員

 質問というか、意見が一つです。医療の提供に関する事項で、先ほどもどなたか先生がおっしゃっていましたけれども、新しくこれから始めるというものをすごく丁寧にお示しいただいています。それもとても重要なのですけれども、これまでの実績のところで、例えば患者サポート研究開発センターを開設したことでどれぐらいの方にどんなことをやって、さらに全国にどうやって広げるか、具体性がよく分からない、そういうものを感じました。せっかくやっていらっしゃるので、今後どれぐらいの広がりを持って、何を目的にするのか、ほかの拠点病院にどう広げていくのか、そういうこともあればと思いました。

 もう一つ、人材育成のところで、これもそうなのですけれども、これだけの人をこれだけ研修したというのは実績としてそうなのだと思いますが、それがどういう意味を持つのかが私みたいな素人にはよく分からなくて、例えば臨床研究者等を育成するためにこういう新しいことをやっているということで「1万6,500人の年間新規登録があり」とありますが、国内の臨床研究に携わる人のどれぐらいが新たに学んでもらっているとか、どういう影響があるのか、そういうことも書いていただければいいと思いました。

○国立がん研究センター西田中央病院長

 最初のところだけ少し補足させていただきます。患者サポート研究開発センターは昨年9月に開設しました。昨年内はそれほどアクティビティーは高くなかったのですけれども、今年に入りまして、各部門や施設とつなぎながら、J-SUPPORTという研究チームもつくりました。まだ、ここの領域は、はっきりとしたエビデンスは少ないです。また、実際に各施設に広げようと思ったら、やはり診療の中で認めていただかないとだめだということで、一緒にエビデンスをつくっていく、臨床研究を一緒にやっていこうということで、AMEDのお金もいただきながら、まだ1桁ですけれども、8つぐらいの臨床研究が動き始めています。参加施設は、ほとんど全国のこういった支持療法をやっている施設をカバーしている状況でございます。

○国立がん研究センター若尾がん対策情報センター長

 人材育成について若干補足させていただきます。

 2のリーダーの育成なのですが、今回、数字はお示しできておりませんが、ほとんどがん診療拠点病院に帰っておりまして、さらにその先には、がん関係の大学の教授などになっている者が多く出ております。済みませんが、具体的な数字はございません。

 臨床研究のほうですが、やはり全体の数字が分かっておりませんが、今までで累計3万7,000人受けていただいていますので、臨床研究に携わる方の多くがこのシステムを使っています。ほかに学ぶ状況がないので、貢献していると思いますが、データとしてはお示しできない状況です。

○本田委員

 ほかにこういうのはないということですね。

○国立がん研究センター若尾がん対策情報センター長

 そうですね。臨床研究について体系的に学ぶという仕組みはございませんので、多くの方は、がんにかかわらず利用していただいているという状況です。

○永井部会長

 よろしいでしょうか。ありがとうございます。

 続いて、業務運営の効率化、財務内容の改善、その他業務運営に関する事項、2-1から4-1についてよろしくお願いいたします。

○国立がん研究センター横幕理事長特任補佐

 企画経営部長でございます。

21ページから後ろをまとめて御説明します。

 まず、21ページ、2-1ですが、ここは目標にあるとおり経常収支を中心とするところでございます。右側の下に、グラフがございます。27年度、28年度と経常収支はプラスになっておりまして、28年度は104.0%、プラス26.8億円、2年間を累計するとプラス2.9%ということになっております。

 背景としましては、次のページにも関係してきますけれども、一つは、患者さんが引き続き多くお越しいただいているということ、もう一つが、22ページ、項目で言えば3-1、外部資金の導入などですが、左側に外部資金の獲得状況がございます。共同研究費、治験、AMEDなどの競争的資金、どれもかなり伸びております。

 左下のグラフは共同研究に関するものですけれども、ご覧いただくとおり、18億円とかなり大きくなっておりまして、ほかの大学と比べてもかなり高目にきております。待つというよりは積極的な提案を行うことなどが表れているのではないかということですが、こういった外部資金の獲得も経常収支が上がっていくところにかなり効いているということがございます。

 さらに、寄附金は規模としては1億円強ということで、センター全体の中ではそう大きくございませんけれども、伸び率で言えば7割を超えるということで、ここも努力の一つでございます。

 こういったところを進めていくに当たって、21ページの左側に「財務ガバナンスの強化」とございますが、計画的に予算を執行していくために、部門ごとに意思決定していくだけでなくて、センター全体で将来を見通しながら、全体を俯瞰して意思決定するという仕組みを新しくスタートしています。

23ページ、4-1のその他ですけれども、左側が内部統制関係で内部監査の充実など、右側が施設整備ということで、下が先ほど話に出た東病院のNEXT棟です。上の写真は、研究所に新しい棟ができまして、今、引っ越し中です。これらを計画的に実施しつつあるというところでございます。

 最後、25ページに、業務運営だけではなく、全体を通じての定量的指標の達成率をまとめたものをつけております。太いところが20%を超えるというものでございます。

 以上、3項目は業務運営に関するところですので、標準、Bということになろうかと思いますが、21ページの収支のところだけは、2年連続100%を超えたということで、恐縮ながら自己評定Aということでつけさせていただいております。

 以上です。

○永井部会長

 いかがでしょうか。藤川委員。

○藤川委員

 今、2年連続100%以上とおっしゃっていたのですが、一応、定量的な指標からすると、それではAというのは難しい部分もあるのかなというのが意見としてはあります。むしろ3-1のほうが、目標値はないのだけれども、例えば外部資金の獲得などもここ2年大変伸びているという点で、こちらのほうが数値的には大変いい数値が出ているというところが印象としてございました。

○永井部会長

 ほかにいかがでしょうか。

 6つのナショナルセンターの中では、圧倒的にがん研究センターの経常収支がよろしいと思いますので、これはそれなりに評価されるのではないかと思いますが、いかがでしょうか。大西委員。

○大西委員

 今のお話を補強する意味でもお尋ねしたいのですが、収入が安定的にずっと上がってきているということが大きいと思うのですけれども、こういうところを工夫してやっておられるということを1つ、2つ、挙げていただくとしたら、特に何がございますか。

○国立がん研究センター中釜理事長

 一つには、研究による収益を上げるということ、企業との連携等ですね。それから、治験を含めた臨床試験を強化するということがあります。医業収入に関しては、やはり無駄をなくすということが第一かなと思いますけれども、それはまだまだこれからさらに検討の余地があると認識しています。いろいろ複合的な効果で現在、収支率が100%を超えているということだと思います。

○永井部会長

 ほかにいかがでしょうか。

 今回、私のほうから、外来患者さんの待ち時間とICUの状況についてデータを出していただきました。外来の待ち患者さんは30分以内の方が80%、これもナショナルセンターの中で圧倒的によろしいと思うのですが、しかし、よく見ると1時間以上の方が合わせて10%ぐらいおられるのですね。恐らくこれは特定のドクターの問題なのだろうと思いますが、これを改善する方策というのは何か考えていらっしゃいますか。

○国立がん研究センター西田中央病院長

 御指摘のように、大体、特定のドクターに固まっていまして、以前から、それが分かった時点で本人たちにフィードバックしています。外来は曜日が決まっていますので、火、水、木曜が長くなりやすいのです。例えば月曜日、どうしても連休があったりして休みが多いのですけれども、そちらのほうに振っていただくとか、適宜少しずつ改善していっています。

○永井部会長

 別に、予約したとおりに診なさいと言っているのではなくて、診ているように予約しなさいということです。つまり、いつも1時間延びるのなら1時間延ばして予約をとればいいではないかと思うのですけれども、その辺がなかなかうまくいかない。

○国立がん研究センター西田中央病院長

 もちろんそれもやっております。私も実は外来をやっているのですけれども、私は午後からなのですが、明日も4時まで外来が入っています。そういう形で、遅い時間までずらすようにはしています。ただ、患者さんのニーズもあって、どうしても午前中にということもありますので、全部が全部、満たせるわけではないということです。

○永井部会長

 ただ、患者さんの要望で午前中たくさん入れると、ほかの患者さんが迷惑するわけですね。それで競争するわけです。それはやはり不都合のように思います。

○国立がん研究センター西田中央病院長

 もう一つ、中央病院では特に外来のブースのリミットがありましたので、今年になりまして新しいブースが開きました。もう少し状況は緩和しているのではないかと現在、考えております。

○永井部会長

 もう一つは、ICUの看護師さんの勤務体制です。おおむね良好なのですけれども、ちょっと気になるのは、中央病院は8床、ICUがあって、1日平均7.4人の患者さんで、日勤帯は12人勤務されていますね。つまり、7人の患者さんに日勤帯12人というのは本当に必要なのでしょうか。

○国立がん研究センター西田中央病院長

ICUですけれども、確かに先生がおっしゃるように、がんセンターのICUというのは、術後ICUが多うございますので、ほかの救命救急よりは正直申しまして少し重症度が落ちます。ただ、やはりそれなりのインテンシブケアを必要とする患者さんが入っておりますので、基準上も2対1ですし、この程度の人数がいないと十分には回らない。私自身、見ていても、入れ替えが非常に激しく、8床あって1日のうち3床以上が入れ替わりますので、その程度は要るかなと思っています。

○永井部会長

 集中治療体制を強化すると、日勤帯の勤務のあり方が問題になってくるわけですね。2対1といっても、実は看護師さん2人に患者さん1人というような状況も生まれかねないわけです。そのあたり、例えばもっとほかの忙しいところへ応援に行くとか、機動的な勤務体制をつくる必要があるのではと思います。

○国立がん研究センター西田中央病院長

ICUはそれをやっていませんけれども、各病棟に関してはやっています。各病棟に関しては、忙しい病棟に別の病棟から行く、あるいは病棟から外来のほうへ応援に行くというのは、その日の状況を見ながら判断を師長クラスがやっています。

○永井部会長

 祖父江委員。

○祖父江委員

 1つだけお聞きできたらと思うのですが、先ほども話題に出ました外部資金の獲得のところで共同研究費が非常に伸びておりますね。表を見ると、総合大学全体の共同研究よりも更にというか、それに伍してがん研究センターがどんどん伸びているという感じがします。多分、先ほど来おっしゃっている企業との創薬開発みたいなのが一番大きいのだろうと思いますが、具体的にどういった内容なのか、少し教えていただけるとありがたいと思います。

○国立がん研究センター間野理事・研究所長

 研究所でも、製薬会社との共同研究を非常に積極的に行おうというふうに動いています。実際に薬を使った患者さんで効いた人と効かない人で腫瘍のゲノム解析をやって、あるいはオプジーボを使った人で効いた人と効かない人で患者さんのMHCを調べるとか、非常にお金もかかるのだけれども、臨床上とても役に立つ研究に関しては、製薬会社は比較的大きな金額でも出してくれるところがありますので、それを一生懸命、獲りにいっているというのが実情であります。

○国立がん研究センター西田中央病院長

 少し補足します。私は、製薬会社にスクリーニングというか、ヒアリングしたのですけれども、やはりTR研究に関しては垣根が一番少ない施設に持っていきたいということで、日本の中でもがん研究センターは研究所あるいは病院との間の垣根が少ないということで、TR研究のお金が落ちて来やすい状況にあると思います。特に「SCRUM」と「MASTER KEYプロジェクト」が動き始めたことは非常に大きなインパクトを持っているかなと思っております。

○永井部会長

 よろしいでしょうか。ありがとうございます。

 では、続きまして、法人の監事より業務の監査結果等を取りまとめた監査報告について御説明いただくとともに、監査等を踏まえた現在の法人の業務運営の状況、今後の課題、改善方針についてコメントをお願いいたします。

○国立がん研究センター増田監事

 監事の増田でございます。私から、監事監査の内容について簡略にお話をさせていただきます。

 お手元にございます監事監査報告書に記載のとおりでございますけれども、監事としまいて、理事会、病院の運営会議等々、主要な会議に陪席いたしまして、センター全体の運営状況を業務監査の視点より検証しております。一方、会計監査に関しましては、財務及び企画部署より適宜報告、それから解説、説明を受けるとともに、会計監査人とも協議を重ねて監査を執行いたしました。

 その結果としまして、業務監査並びに会計監査に関して監事監査意見として適正意見を表明させていただいております。

 それと監事の立場からということで若干お話をさせていただきますと、やはり平成22年の法人化以降、経常収益、これは研究収益と医業収益になりますけれども、およそ1.5倍の経営規模になっております。そのために、やはり組織体制もしっかりと構築をしていかなければならないのかなと考えております。築地と柏の2病院、そして研究所を維持かつ運営していくために財源を継続的に確保するというのも大きな課題になっております。そういった経営的な観点を十分に備えて今後経営に臨むべきではないか、そのように考えております。

 以上でございます。

○永井部会長

 ありがとうございます。

 続きまして、法人の理事長より、日々のマネジメントを踏まえて、現在の業務運営の状況、今後の課題、改善方針等についてコメントをお願いいたします、

○国立がん研究センター中釜理事長

 本日、各研究・開発あるいは医療の担当の者から現状の報告をさせて頂きましたが、皆さん御存じのように、がんの医療提供に関しては、昨今の医療技術の急速な進歩によって医療提供体制も大きく変わろうとしているのが現状だと思います。

 例えば、本日説明のあったゲノム医療という視点からの新しい診療科横断的な取り組みというのは、恐らく今後のがん医療を大きく変えていくものだろうと思います。このような新しい取り組みにも迅速に対応できるような体制を急ピッチで整えていくことが重要です。また、新たな医療の提供に資するようなシーズを継続的に出していくためには、診療側と基礎研究側が連携しながら、シームレスかつスムーズに開発研究を続けていく必要があると思います。そういう点では、これまでの取り組みで大きな前進は見られていますが、まだまだ改善の余地があろうかと認識しています。

 加えて、そのようなシームレスな仕組みを機能的に回すためには、やはり事務機能の効率化、充実・強化というのは必須だと考えています。このような観点からも、現在、事務機能の一層の効率化に向けて課題点を整理している状況であります。

 これらの点を踏まえて、がん医療・がん研究の領域においては、今後も日本をリードするような成果を出し、さらにはアジア地域を中心とするグローバルな視点からも大きな貢献ができることを目指せるような確固たる仕組みをつくっていきたいと考えています。そのためにも、その土台となる財政基盤を確固たるものとすることは非常に重要でありまして、継続性のある体制を維持するためにも、今日御質問がありましたけれども、どういう形で財政を安定的に保つか、そのために外的な研究費あるいは共同研究費の獲得をどのように戦略的に進めていくかということが問題になるかと思います。そのためにも、今、説明しました診療と研究のシームレスな連携が非常に重要であり、それらを支える人材の育成がやはり必須と考えています。それが今後の課題であり、展望と理解しています。

 私からは以上です。

○永井部会長

 ありがとうございます。

 質問、御意見はございますでしょうか。よろしいでしょうか。ありがとうございます。

 よろしければ、以上で国立がん研究センター平成28年度業務実績評価を終了いたします。

 議事は以上でございます。事務局から今後の流れについて御説明をお願いします。

○医政局医療経営支援課江口課長補佐

 長時間、どうもありがとうございました。

 今後の流れでございますが、本日御議論いただきました2センター分の平成28年度業務実績評価につきましては、この後、お手元に記入用紙を置いておりますが、本部会における御意見や本日の監事及び理事長のコメント等を踏まえまして、厚生労働大臣より評価を行いまして、その評価結果につきまして、法人に通知するとともに公表いたします。決定した内容につきましては、後日、委員の皆様にもお送りいたしたいと思います。

 また、次回の開催でございますが、次回は8月7日(月)の1430分から、次は循環器病研究センターと国際医療研究センターの2センターの評価を予定しております。会場につきましては、厚生労働省の17階にございます専用第21会議室になっております。

 最後に、本日配付した資料でございますが、ボリュームもございますので、送付を希望される方はそのまま机上に置いていただければ所属のところに郵送させていただきます。

 評定の用紙でございますが、本日、2センター分を評価していただいて机の上に置いていただくことも可能ですし、後日、6センターが終わってから全部まとめて書きたいという方もいらっしゃるかもしれませんが、いずれにしろ、8月10日までの期限を設けておりますので、いかようにも対応できます。本日でも構いませんし、後日でも構いません。さらに、8月8日に終わりますから、その後、8月10日の午前中までにお送りいただければ結構でございますので、どうぞよろしくお願いいたします。

 事務局からは以上でございます。

○永井部会長

 ありがとうございました。よろしいでしょうか。

 それでは、これで終了いたします。どうもありがとうございました。

 


(了)

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