ホーム> 政策について> 審議会・研究会等> 過労死等防止対策推進協議会(過労死等防止対策推進協議会)> 第3回過労死等防止対策推進協議会 議事録(2015年4月6日)
2015年4月6日 第3回過労死等防止対策推進協議会 議事録
労働基準局 総務課(過労死等防止対策推進室)
○日時
平成27年4月6日(月) 15:00~17:00
○場所
厚生労働省 省議室(中央合同庁舎第5号館9階)
(東京都千代田区霞が関1-2-2)
○出席者
〈専門家委員〉
岩城穣委員、岩村正彦委員、川人博委員、木下潮音委員 |
堤明純委員、宮本俊明委員、森岡孝二委員、山崎喜比古委員 |
〈当事者代表委員〉
寺西笑子委員、中野淑子委員、中原のり子委員、西垣迪世委員 |
〈労働者代表委員〉
岸真紀子委員、新谷信幸委員、冨田珠代委員、八野正一委員 |
〈使用者代表委員〉
小林信委員、山鼻恵子委員、輪島忍委員 |
○議題
過労死等の防止のための対策に関する大綱(案)骨子について
○議事
○岩村会長 定刻よりは早いのですけれども、本日御出席予定の委員の皆様全てお揃いですので、始めたいと思います。
それでは第3回「過労死等防止対策推進協議会」を開催いたします。委員の皆様におかれましては御多用中にもかかわらず、お集まりいただき誠にありがとうございます。最初に委員の改選がございましたので、御報告をしたいと存じます。参考資料1を御覧ください。使用者代表委員の間部彰成委員に代わりまして、新たに小林治彦委員が、同じく使用者代表委員の川口晶委員に代わりまして、新たに輪島忍委員がそれぞれ本日付で厚生労働大臣から任命されていらっしゃいます。なお、小林治彦委員は本日は御都合により欠席と承っております。それでは輪島委員から一言、御挨拶を頂戴したいと思います。よろしくお願いいたします。
○輪島委員 ただいま御紹介をいただきました経団連の輪島と申します。どうぞよろしくお願いいたします。
○岩村会長 ありがとうございました。よろしくお願いいたします。それではカメラ撮影につきましては、ここまでとさせていただきます。御協力のほどよろしくお願いいたします。
では、お手元の議事次第に沿って進めてまいりたいと思います。本日の議題は、議事次第にございますように、「過労死等の防止のための対策に関する大綱(案)骨子について」となっております。前回、私から、各委員から頂戴した御意見を踏まえて、大綱(案)の骨子の作成を事務局にお願いしておりました。事務局でこれに基づいて資料を本日用意いただいていますので、まず、その説明をお願いいたします。
○総務課長 事務局です。資料の「過労死等の防止のための対策に関する大綱(案)骨子について」を御覧ください。これは同種の法律におけるこういった大綱類似のものの構成、過労死等防止対策推進法に規定している4つの対策の内容、第1回、第2回の本協議会における委員の皆様方の御発言内容等を踏まえ、事務局において会長の御指示の下、議論の素材となる大綱の基本的な骨格を作ったものです。これに基づいて順次、御説明いたします。
まず1ページの第1、「はじめに」です。ここでは今回、過労死等防止対策推進法ができてから最初の大綱ですので、過労死等防止対策推進法の成立や施行の背景、法の基本的考え方、大綱の位置付けなどを記述していただければと考えております。
次に第2の「現状」です。こちらは各種統計資料から、現時点で判明している過労死関係の指標について記述してはいかがかと考えております。項目は4つ書いておりますが、1つ目は労働時間等の状況です。内容としては年間総実労働時間、週の労働時間の推移、年次有給休暇の取得率等々を記述してはいかがかと考えております。2は脳・心臓疾患、精神障害に係る労災補償等の状況について記載をしております。1ページの下、脳・心臓疾患に係る労災補償の状況、下から2行目、精神障害に係る労災補償の状況を記述した上で、2ページ、8行目以降において、前回の第2回で公務員官庁から公務災害の認定の状況について御報告いただきましたので、その数字について引用しております。
2ページの項目の3番目、自殺の状況です。これについては委員の御意見として、過労死の認定における労災認定については、氷山の一角であって、これ以外にも多数の過労死事案が生じているのではないかという御発言があり、その中で自殺については勤務問題を原因、動機の1つとする自殺の数などがその参考になるのではないかという御指摘がありましたので、自殺の状況について記載をしております。
4番目については、職場におけるメンタルヘルス対策の状況です。これについては後ほど御紹介する対策の中の重要な部分を占めるメンタルヘルス対策についての労働者の意識調査、職場における取組等々について数字を記載しております。以上が第2です。
3ページの第3に「過労死等防止対策の基本的考え方」という項目を作っております。この中は大きく2つに分け、「当面の対策の進め方」と「各対策の基本的考え方」です。この対策は過労死等防止対策推進法における4つの対策があり、これが法律の基本的な内容です。この大綱においては、その4つの対策をいかに進めるかがこの大綱の記述内容ですので、それについての記述をここで行ったらどうかという御提案です。
まず、1番目、当面の進め方です。第1回、第2回で委員からいろいろ御指摘がございました。まずはこの法律の構造です。過労死等においては、その発生要因が明らかでない部分が多いので、まずは実態解明のための調査研究を進めていくことが法律の趣旨ではなかろうかというものです。それ以外の啓発、相談体制の整備等、民間団体の活動に対する支援の3つの対策がありますが、これについては第1回目の会議でエビデンスに基づいてやるべしという御指摘があったかと思いますが、この調査研究の成果を踏まえて行うことが効果的という記述をしつつ、ただし同じ第1回目の会議においても、それを待っているだけでは対策が一向に進まないので、並行して進めるべしという御指摘もありましたので、過労死等防止対策については喫緊の課題であるので、調査研究の成果を待つことなく対策を推進すると記載しております。この2つの○について、この対策の進め方の基本を書いたらいかがかというものです。
3つ目の○は、対策を進めるに当たっての目標等をきちんと作るべきであるという御指摘がありました。まずは将来的には過労死等をゼロにするという大目標を掲げた上で、これまでの政府の閣議決定等で規定されている、例えば、2020年までに週労働時間60時間以上の雇用者の割合を5%以下にする、年次有給休暇の取得率を70%以上にする、2017年までにメンタルヘルス対策に取り組んでいる事業場の割合を80%以上とするというような目標をここに例示として挙げております。
4つ目の○は対策の進め方です。長時間労働の削減と健康管理に係る措置を徹底することです。それに合わせて最も重要なこととして、関係法令の遵守の徹底を図る必要があることと並行して、良好な職場環境の形成、心理的負荷の軽減、こういったことを対策の基本に据えたらどうかという御提案です。
3ページの大きな2番です。ここでは4つの対策それぞれにおいて、どういう考え方で進めていくべきかを書いたらどうかという御提案です。(1)については、調査研究等の基本的な考え方で、調査研究については医学・労働分野のみならず、経済学等の関連分野も含めて、実態解明のための調査研究を進めていったらどうかを基本に置き、次に医学面の研究については、過労死等の危険因子の解明や効果的な予防対策の研究を行うことが重要ではないかと考えております。
社会面の研究については、公務員、自営業者も含めて、過労死等の状況、背景の要因を探り、我が国における過労死等の全体像を明らかにすることが必要なのではないかという御提案です。
3つ目の○として、調査研究と並行して、過労死等の実態に関する指標についての検討も行ったらどうかということです。4つ目として、特に過労死等が多い業種、職種がありますので、これについてはこの調査研究の中でより掘り下げて研究を行っていくことが必要ではないかと記述をしております。
4ページの(2)については、啓発の基本的な考え方です。まず1つ目としては過労死等の防止のためには、現行法がありますので、この法令遵守のための啓発指導が重要なのではないか。その後に幾つか○がありますが、職場においては長時間労働の削減や休暇の取得促進のための働き方の見直しを行っていく。その前提として、これまでの労働慣行を変えていくとともに、事業によってはさまざまな取引先との商慣行があり、業種の中だけではなかなか取組が進まない面もありますので、商慣行の見直しなども含めてやっていくとともに、メンタルヘルスなどに取り組んでいる企業については、社会的に評価される仕組みを作っていったらどうかというものです。その下の6つ目以降の○です。職場だけではなかなか改善が進まない面もございましょうということで、職場以外においても周囲の支えが過労死等の防止には重要ではないかという御提案です。具体的には国民全体が働き方の見直しについて理解を深めるとともに、国民一人ひとりが過労死の防止についての重要性を自覚する。それから関係機関と連携して取り組んでいくべきであるということ。この協議会でも御提案がありましたが、若いころから労働条件に関する理解を深めることが重要ですので、教育を通じての啓発も必要であるということです。調査研究の結果を踏まえた啓発を行うとともに、先ほど調査研究で業種、職種についてより掘り下げたということを申し上げましたが、その成果も踏まえて、業種、職種等ごとの重点の啓発もやっていくべきではないかという御提案を書いております。
4ページの(3)については、相談体制の整備等の基本的な考え方です。1つ目は、過労死等についての相談窓口の体制の整備がまずは重要ではなかろうかということです。併せてその窓口に配置する産業医をはじめとする専門スタッフの人材育成等についての充実・強化を図ることを2番目に書いております。窓口を整備するだけではなく、そこに労働者が躊躇なく相談に行けることがまずもって重要だということで、そのためには4つ目の○、職場において上司、同僚も労働者の不調の兆候に気づき、産業保健スタッフ等につなぐことができるような体制の整備が重要なのではないかということ。それから職場以外においても、家族、友人等がこの労働者の不調に気づいてあげる、そして相談に行くことを勧められる、こういった気運が高まっていくことが必要なのではないかということを書いております。
5ページの(4)は民間団体の活動に対する支援の基本的な考え方です。過労死等防止対策の効果を発揮させるためには、国等が主体的に事業を行うわけですが、それ以外のさまざまな主体が協力して連携して取り組むことが重要だと考えております。そのために過労死等防止のための活動を行う民間団体の支援、それから協力、連携が重要なのではないかということを書いております。
5ページの第4以降は各主体が取り組む重点対策で、まず第4では国の重点対策を書いております。これは法律の第4条で国が過労死等の防止のための対策を効果的に推進する責務を有すると書いており、まずは国が一番の責任を有することから、国の重点対策をここに書いております。国が行うべき対策として、調査研究等、啓発、相談体制の整備等、民間団体の活動に対する支援、この4つ全部がありますが、その取組を推進するとともに、国家公務員を任用するいわゆる使用者側の立場にも立っておりますので、その立場からも対策を推進することが必要ということを書いております。
1番目の調査研究、まずは労災の認定事案の蓄積がありますので、第1回目で御紹介いたしました独立行政法人労働安全衛生総合研究所に設置されている過労死等調査研究センターにおいて、この労災認定事案の分析などを行うことが重要なのではなかろうか。また、その場合には適用されている労働時間制度、労働時間の把握の状況等々についても留意の上、分析をする必要があるのではなかろうか。それから自殺の件については、自殺予防総合対策センターとの連携も必要なのではないかということを書いております。それだけではなく、(2)の疫学研究等として、これまでの事案だけではなく、例えば勤労者集団を捕まえてそれを追跡調査することにより、疫学的な研究も長期的にやっていくべきではなかろうかと。それから職場環境の改善対策を行った場合には、過労死等の防止にどのような影響があるのかということを比較分析でやるべきではなかろうか。それから過労死等の健康管理の指標を作成するために、これまでの循環器疾患での死亡との関連性が指摘されている医学的指標なども含めて、研究を進めていくことが必要なのではないかということを書いております。
6ページの(3)は、社会面の調査分析です。まずはこれまでの幾つかの過労死等に関するデータがありますので、それを再整理して過労死等についての分析等を行うべきということが1点目。それから各種統計により得ることができないデータ等については、実態調査を実施し、独自のデータを得ることが必要ではないか。それからこういったことで全体像が明らかになった後には、業種、職種等重点の調査の分野を絞り、さらに、詳細な調査分析を行う必要があるのではないかと書いております。
6ページの大きな2番目は啓発についてです。啓発については11月が過労死等防止啓発月間になっておりますので、これを中心にさまざまなシンポジウムの開催等々によって啓発を図ることを、まず一番に書いております。(2)~(6)にいろいろ書いておりますが、長時間労働削減のための周知・啓発の実施については、既存の法律の徹底を図る監督指導の徹底などについても書いております。(3)については、いわゆる過重労働による健康障害の防止対策について、さまざまな取組を行う必要があるのではないか。(4)については、こういった指導面だけではなく、働き方の見直しについて、企業等に働きかけをして、啓発をしていく必要があるのではないかということを書いております。
(5)では、メンタルヘルス対策、心の健康対策ということで、いろいろな事業を展開していくべきではなかろうか。(6)はパワハラもいわゆる心理的な要因になりえますので、そういったものについての予防解決のための対策も行うべしと書いております。
(7)からは若干毛色が変わりまして、(7)については総論で申し上げましたとおり、教育段階における啓発も必要だということで、まずは大学・高校生等の若年者を対象とする各種セミナーを行うべきではないかということです。現在、総合学習等の題材に登録しておくと、これは学校での選択によることになりますが、総合学習の時間で取り上げていただけることもあるというようなことを聞いておりますので、そういった題材として過労死等に関しての事項の選択ができるような環境整備も図るべきではないかということを書いております。(8)については、業界だけではなかなか対応できない事項について、それのいわゆる川上、川下、こういった所における商慣行も踏まえて、いろいろな取引関係者に対する啓発等も行って、長時間労働の削減、過労死等防止対策といったところの働きかけをやっていくべきではないかというようなことを書いております。
8ページの大きな3番は相談体制の整備等についてです。まずは労働条件、メンタルヘルスケアに関する窓口の設置についてです。これは電話相談窓口、メール等を活用した窓口等々がありますが、こういったものを整備するとともに、(2)ですが、そこに配置する産業医の方等々、それから保健師さんなどに対する研修、授業を実施するべきではないかというものです。(3)については、今度は職場側ですが、衛生管理者、労働衛生コンサルタント等々に対してのセミナーなども開催したらどうかというものです。
9ページの大きな4番目は民間団体の活動に対する支援です。11月を中心に現在、各種のシンポジウムを開催しておりますが、こういったものに対して国として支援を行う。これについて、現在は全都道府県でやっておりませんが、おおむね3年を目処に全ての都道府県で開催できるように順次整備を図っていったらどうかというものです。
9ページの第5は、国以外の主体が取り組む重点対策で、まず1つ目については地方公共団体を記述しております。地方公共団体については国の施策に協力して、対策に取り組む形になっており、それと併せて地方公務員を任用する立場からの対策も推進いただいたらどうかというものです。(1)は啓発については、地域における働き方の見直しに向けた気運の醸成を図っていただくということです。それから学校教育には、かなり国よりも近い立場にあると思いますので、こういった若者に対する知識の付与等にも御協力いただく等々を記述しております。(2)は相談体制の整備についてですが、地方公共団体で窓口を設けている場合には、他の窓口との連携をお願いしたいというものです。民間団体の活動に対する支援については、民間団体が取り組むシンポジウム等々についても、協力や後援などをお願いしたいというものです。
2つ目として、事業主等の責務の項目です。まず、事業主については、労働者を雇用する者ですので、雇用主としての責任をもって取り組んでいただきたいということです。その際には企業の最高責任者等々が関与し、産業保健スタッフに適切な役割を果たしていただくということが重要なのではなかろうかと。職場においては、いわゆる事業主側だけではなく、労使共同の取組も必要になってまいりますので、そういったことも進めていこうというものです。
3つ目は民間団体です。過労死等に関する相談の対応等に取り組んでいただき、他の主体との協力、連携をお願いしたいということです。
4 つ目は、国民です。一人ひとりが自覚をもってこの過労死問題に取り組んでいただきたいというものです。
最後に第6として推進上の留意点です。まず1つ目は推進状況のフォローアップです。過労死等防止対策推進法においては第6条で毎年国会にこの取組の状況について、報告書を提出することになっており、その際にこの過労死等防止対策推進協議会に対して、その内容についての御説明をしたいと思っております。こういったことを踏まえて、この過労死等防止対策推進協議会において、この大綱の推進状況を毎年チェックいただけたらと考えております。2つ目は大綱の見直しです。過労死等防止対策推進法の附則ですが、法施行後3年を目途として、法律の施行状況を勘案し、検討するという規定があります。その際にこの大綱についても、この検討を踏まえて見直すものと考えられますので、3年を目途に必要なときには見直しをすることを記述しております。
事務局からの説明は以上でございます。
○岩村会長 本日は、今、事務局から説明いただきました大綱(案)の骨子も参照していただきながら、委員の皆様方の御意見を頂戴したいと考えております。進め方ですが、このようにさせていただきたいと思います。御意見を頂戴するとしても、今、御説明いただいた大綱(案)の内容自体がかなりのものになっておりますので、全体を少しずつ分けて、順次、御意見を伺うことにさせていただきます。最後に、全体を通じた御意見を頂戴するという形で進めさせていただければと思います。
具体的な分け方ですが、1番目として第1の「はじめに」と第2の「現状」、2番目として第3の「過労死等防止対策の基本的考え方」という大きな項目のうちの1の「当面の対策の進め方」にします。3番目は同じく第3「過労死等防止対策の基本的考え方」の2項目、「各対策の基本的考え方」にします。4番目は、第4「国が取り組む重点対策」にします。5番目は、第5の「国以外の主体が取り組む重点対策」と第6の「推進上の留意事項」とします。その上で、先ほど申し上げたように、最後に全体を通じた御意見を頂きます。まず、1番目である第1の「はじめに」と第2の「現状」、3ページの上3分の1ぐらいまでの所について、御意見を頂きたいと思います。どなたでも結構ですので、お願いいたします。寺西委員どうぞ。
○寺西委員 御指名くださりありがとうございます。「はじめに」ですが、この過労死等防止対策推進法が成立するに当たって、過労死家族の会の活動の歴史とか、過労死問題全体の歴史などは奥深いものがありますので、その辺りを補充説明させていただきます。
まず、過労死が大きな社会問題になったのは、1980年代の後半であること、そうした前からの問題であること、そしてまた日本の「Karoshi」は国際語としても通用しているところです。こうした四半世紀も前から過労死は繰り返されており、毎年多くの尊い命が奪われている現状です。この過労死等防止対策推進法は、長期にわたり多くの尊い命が犠牲になって成立した法律であることを重んじていただきたいと考えます。
施行の背景には、私たちは昨年から過労死等防止啓発シンポジウムを実施したいという考えがありました。過労死は他人事ではなく、また誰にでも起こり得ること。そうした過労死の防止への思いを一刻も早く法律に魂を入れて、実効性のあるものにして、今にも倒れそうな労働者を死なせずに救いたいと思ったからです。遺族は深い悲しみと喪失感の中ですが、過労死の労災認定のために、死亡と業務との因果関係を証明しなければならないのです。ですから、企業の協力が得られないために、過労死の労災認定は労働行政の厚い壁に阻まれて、そうしたことが原因として泣き寝入りが多いということがあります。実際の数字は分からないのが現実で、救済の手が本当に必要な人に届かないという実情があります。
こうして超党派議員連盟の先生方に、私たちは立法を作るに当たって理解を得るために、被災者の実態と遺族の実情を訴えてまいりました。何年もかかった末に、議員の方から過労死等防止対策推進法の成立に当たって、「過労死はあってはならない」として、全会一致の反対ゼロということで成立にこぎつけたわけです。この大綱の位置付けとしては、異常な働き方の職場が放置されているということで、過労死を繰り返さないために過労死を防ぐ観点で、例えば過労死ラインとか、健康を守るに当たって、そういった数字ではなくて、原因となる調査研究を実効性のあるものにするためには、過労死防止という観点で考えていただきたいと思っております。今後、法改正とか、これからまたそうした新たな法律が提起されると思いますが、その節には過労死等防止対策推進法の理念に則った形で、過労死をゼロにすることのワークライフバランスを大事にした形で拡充していきたいと思っておりますので、くれぐれも慎重に論議していっていただきたいと思っているところです。以上です。
○森岡委員 1ページの第2の「現状」の労働時間等の状況について、発言をお許しください。この説明では、毎月勤労統計調査の時間数が真っ先に挙がっております。参考資料3の(10)のカラー印刷の部分にも、年平均労働時間と長時間労働者の各国比較となって資料が挙がって、その左側は毎月勤労統計調査の日本の数字が挙がっております。継続的に労働時間把握ができる唯一の国の全国統計ではありますが、過労死を生み出す過重労働の現状を毎月勤労統計調査で説明するのは妥当性を欠くのではないかと思います。毎月勤労統計調査の2014年結果によりますと、男女平均の非正規も含めた総平均は1,740時間となっており、これは20年間に170時間余り短縮した、減少したという数字です。もしこの減少と1,700時間台の労働時間がフルタイム労働者について言えるのであれば、それは過労死、過労死者数が大きく減っているはずなのですが、現実はそうなっていません。減少は主に短時間労働者が拡大した、増加した。その比率がもたらした平均の結果ですが、問題はそれだけではありません。御承知のように毎月勤労統計調査は企業調査で、事業所の賃金台帳に記載された支払い労働時間を集計してあります。したがって、いわゆるサービス残業と言われる賃金不払い残業を含んでおりません。比較、参照されてきた総務省の労働力調査は月末1週間のデータではありますが、早出、居残りを含めて、実際に労働者が就業した時間を集計しています。それの2014年結果を見ると、男性だけですと2,340時間に達し、毎勤の男性の平均よりも400時間余り長いという数字になります。その多くは賃金不払い残業と考えられますが、この毎月の労働調査の数字だけでなくて、ほかの就業構造基本調査を見ても、社会生活基本調査を見ても、最新調査結果は5年に1度ですが、随分長い労働時間の割合が高くなって、就業構造基本調査では最新結果、2012年結果は年間200日以上、勤務した男性に限っていうと17%。そのうち、30歳から45歳についていうと、20%は週60時間以上働いています。数字は細かくなりますが、社会生活基本調査では、2011年結果は男性は1日で455分で、1週間に直すと53時間働いていることになります。この数字は総平均で、「行動者平均」だけを見ると、男性は1日572分、週に67時間働いている。また、そのうち「現在より就業時間を減らしたい」と考えている人の数字でいうと、1日当たり598分、週に70時間ほど働いて、余りにも働いているという数字で、毎月勤労統計調査の総平均で示される数字とは随分違った数字が浮かび上がってきます。こういう調査の問題と、もう1つ、先ほど示した年平均労働時間の国際比較です。これはアメリカよりも短くて、今こういう数字になっているのですが、これでは日本が過労死大国であることは到底説明できない数字で、フルタイム労働者について、厳密な意味の国際比較ができにくいのですが、社会生活基本調査の正規の従業員で見ると、年間少なくとも500時間、長くて600数十時間、欧米主要先進国よりも働いているというデータが出てきます。女性も結構長い。フルタイム労働者の国際比較では、日本で男性よりも著しく短いはずの女性が国際的に見ると、世界で一番働いているという数字があります。そういう意味で、統計の前提を考えてみる必要があるのではないかと。それはまた後で違う項目で発言をさせていただきますが、とりあえず発言させてください。
○中野委員 全国過労死を考える家族の会の公務災害を担当しております中野淑子でございます。私はこの骨子についての追加事項の要望をさせていただきたいと思います。まず、第2の「現状」の2ページの上段ですが、脳・心臓疾患、精神障害に関わる公務災害の認定の状況が2項目書かれておりますが、その後に追加していただきたいと思います。その内容は、1点目は公務災害の認定率が労災の認定率に比較して極めて低いということです。本協議会に示された資料によれば、過去5年間のデータを見ると、労災の場合は脳・心がほぼ40%台、精神疾患が30%台を推移しているのに比べて、公務災害では国・地方公務員の脳・心が30%台、精神疾患が20%台を推移して、労災補償との差が多少縮まってはきていますが、まだ約10%の開きがあります。種々の資料により数値を精査の上、認定率の低い状況を追加していただきたいと思います。
2点目は、職種別認定者において、国家公務員は医療職の精神疾患等が23.3%、地方公務員のうち教育公務員は脳・心臓疾患が38.5%、精神疾患等が30.3%、ともに3割強を占めております。ということは、他の職種に比べて非常に高い被災率を占めていることになります。このような状況も、是非付記していただきたいと思います。以上です。
○八野委員 こちらで「現状」が出ていて、次の段階で第3として「基本的な考え方」といくわけですが、現状から見たときの課題はどういうものがあるのかを、ここで明確にしておく必要があるのではないかと思います。そういう課題認識の下で、対策としての基本的な考え方として、こういうものをやっていくというように大綱自体を組み立てていく必要があるのではないでしょうか。現状と課題認識はすごく似ているところはあるわけですが、現状から出てくる課題を明確にすることによって、過労死等防止対策推進法の大綱の対策としてこういうものをやっていくということで、骨子の中で明確にしていく必要があるのではないかと思います。現状と対策をつなぐ「課題認識」の追加を提案したいと思います。以上です。
○岩村会長 今までの御意見の部分について、事務局で何かコメント等ありますでしょうか。
○総務課長 全体の話、それから統計の話、幾つかありましたが、各種の統計については調べ方とか、まとめ方がありまして、それぞれの性格に応じてどこで使うかということもあります。最終的にはこの調査研究の中でそれも含めて分析をすることになろうかと思いますが、この大綱の中でどういう表現をするかについては、実際の大綱の案を作る際にまた工夫させていただきます。
公務の点については、また公務員官庁とも御相談させていただいて、実情の確認をしつつ、入れられるべきものは入れたいと思います。課題についても、今いろいろな現状だけ書いてありますが、気が付いたものがあれば、また御指摘いただければ書くことについての検討もさせていただきたいと思います。よろしくお願いします。
○岩村会長 課題については、この大綱の構造やこの法律の構成から言っても、考えられている対策が4つあるので、もし整理するとすれば、それに対応する課題という形で整理することになるかと思いますので、またそこは検討させていただきたいと思います。
○森岡委員 今、大綱の事務局案を作成いただくときに考慮されるということでしたが、あえて一言申します。1980年代末から1990年代初めにかけて、働きすぎの状況が大きく問題になって、1990年代初めに出た内閣府の前の経済企画庁の国民生活審議会での幾つかの委員会があって、その文書があります。そこでは、先ほど言いました労働力調査も用いられて、労働時間の実態がかなり現実に近い形でリアルに捉えられた文書もあります。サービス残業という言葉も、それらの文書で初めて用いられました。当時の厚生労働省の文書には全くそういうのはないのです。ですから、大きく議論がずれていて、その後だんだん厚生労働省でも並行的な資料が出るようになってきた感もありますが、そこは今回踏み切ってはっきりさせていただきたいと思います。
○岩村会長 よろしければ2つ目に移りたいと思います。先ほど申し上げましたように、2つ目は3ページの第3の「過労死等防止対策の基本的考え方」のうち、1の「当面の対策の進め方」です。3ページの中ほどになります。それほど量はありませんが、ある意味では全体を貫く1つの基本的な考え方を述べているところでもあろうかと思いますので、御意見がありましたらお願いします。川人委員どうぞ。
○川人委員 この事務局の文章の3ページの第3の1の一番最後に、「調査研究の成果が得られ次第、それを逐時、対策に反映」という文章があります。これに関連して、私のほうで1点強調したいことがあります。労働時間の規制の例外を拡大する労働基準法改定が、御承知のように現在大きな焦点になっております。そういう中で、この労働時間規制の例外を拡大することと過労死との関係についての調査分析は極めて重要であると考えております。
本来、過労死等防止対策推進法の趣旨に鑑みれば、労働時間の規制の例外が過労死発生とどのような関係にあるのかを十分に調査、議論した上で、法改定の提案がなされるべきであり、この点においては、先日、過労死等防止対策推進法による調査が何ら実施されていない段階で、労働基準法の改定の閣議決定がなされて、国会に上程されたと。このことは国会の満場一致で成立した過労死等防止対策推進法の趣旨から見て、誠に遺憾であると率直に申し上げたいと思います。
したがって、法案審議の大前提としても、この労働時間規制の撤廃ないしは例外の拡大と過労死との関係の問題については、至急に十分な調査研究を行うべきであると考えます。すなわち裁量労働制、変形労働時間制等と過労死発生との関係について、速やかな調査分析が必要であり、その結果が様々な対策に反映されるべきであると。このことを強調したいと思います。以上です。
○木下委員 弁護士の木下です。私は今の川人委員の御意見とはちょっと違う意見を持っておりまして、3ページの「当面の対策の進め方」の3つ目の○、2020年までの週労働時間60時間以上の割合、雇用者の割合5%以下というこの数字には、全ての労働者を含んで、この数字ができていると考えております。管理・監督の地位にある者、あるいは裁量労働や事業場がみなし労働時間などの適用のある者も含めて、実労働時間として週60時間雇用者の割合を5%以下にする。つまり、賃金時間としての労働時間管理ではなくて、実労働時間としての管理の面を過労死防止対策としては取り得るものと考えておりますので、この点は過労死防止対策として重要な考え方であり、これが目標にここに当面の対策として載せられたということは、意義があることだと思っております。
どのような働き方であっても、結果としての実働時間を記録に基づいて把握することは可能だと思っております。その点から言えば、むしろこの3つ目の○は、国としても、あるいは企業に対しても、あるいは労働者自身に対しても非常に高い目標を掲げるものだと思っておりまして、この数字が挙がったことは評価すべきだと思っております。現在、労働基準法改正で言われておりますのは、裁量労働などの拡大ですが、これは賃金時間との関係のものと思っておりますので、ここでいう実労働時間の問題とは別と認識しております。以上です。
○西垣委員 先ほどの木下委員の御意見とも幾つか関連するかもしれませんが、「当面の対策の進め方」の2項、4項に関連して、3項目ほど付け加えをお願いしたいと思います。その2項、4項には、調査研究の成果を待つことなく対策を推進すること。また、長時間労働を削減するとともに、労働者の健康管理に関わる措置を徹底すること。そして、そのための法令の遵守の徹底を図るというように書いてくださっております。これは大変大事なことです。
そのために、1番目、先ほどおっしゃいました実労働時間の適正な管理が行われているかという問題です。この管理が行われているかについての実態調査と労使双方への啓発を行いつつ、適正な時間管理を徹底させ報告させるということを入れていただきたいと思います。労働基準法並びに平成13年4月6日の厚生労働省通達において、労働時間の適正な把握のために、使用者が講ずべき措置に関する基準が出されているようです。そして、これが出されているにもかかわらず、労働時間の適正な管理が十分に行われていない。このために、過重な長時間労働等の問題が解決せず、過労疾病、過労死の多発に結び付き、息子のような若者までが過労死するという現状があるのだと思います。したがって、早急にこのコンプライアンスを徹底することを今年度、同時に進めるべきだと思います。その中には教員、公務員等、又は裁量労働制対象者、管理・監督者についても同様、徹底させるべきだと思います。また、労働安全衛生法により時間外労働100時間を超える場合は、医師による面談・指導が行われるというように義務付けられておりますが、これも実労働時間がきっちり管理されていなければ、意味を失うと思います。
2つ目ですが、過労死に関わる時間、影響する時間なのですが、時間外労働が月45時間を超えれば、疲労が蓄積すると厚生労働省が言っておられます。これを超える36協定を定めている企業を調査して明らかにし、労働基準法36条2項に基づく厚生労働大臣の権限により、労働者の福祉に考慮して過労ラインを超えないよう、労働時間の延長の限度について定め、長時間労働の削減を徹底していただきたいと思います。できれば1日の最長労働時間とか、インターバル制度についても検討していただきたい。
3つ目ですが、労働災害が起きた場合に、労災認定が適正に行われるかどうか。これは次なる労働災害を防ぐことができるか、また繰り返すかに大きく影響されると思います。以上の観点から、被災者に立証が課せられている現状を改善し、労働基準局の労働災害調査担当官が十分調査できるように、人員を適切に増員する。また、企業においても過労疾病、過労死が出た場合はその原因解明に努め、その防止策を被災者、遺族、厚生労働省並びに過労死等防止対策推進協議会に報告し、公表するという、以上3つの項目を付け加えていただきたいと思います。以上です。
○八野委員 先ほど1の「当面の対策」の3つ目の○の所でも御意見がありましたが、私どもは見方がちょっと違います。ここは目標を明確化するということで、2020年までに週労働時間60時間以上の雇用者の割合を5%以下にするなどという形で提示されておりますが、これらは過労死等防止対策推進法が成立する以前の2010年に閣議決定された新成長戦略の中で掲げられた目標であります。早期に過労死をゼロとすることということを考えていったときに、この数値目標でいいのかという見方が必要なのではないでしょうか。また、他に目標を掲げるべきではないかと思います。全会派の総意で成立した過労死等防止対策推進法に基づいて、国は過労死等の防止のための対策を効果的に推進すると言われているわけですので、より効果的である対策は何なのかということをきちんと大綱の中で明確にしていく必要があるのではないかと思います。以上です。
○輪島委員 3ページ目の第3の1の3つ目の○の件です。「将来的に過労死をゼロとすることを目指し」ということは非常に重いメッセージだろうと思います。これまで2回のこの協議会でいろいろ議論されたものを、事務局としておまとめいただいて、こういうメッセージが出ていることを重く受け止めるということだろうと思います。そのために、幾つかの指標が並べられていて、それを早期に達成することも記述されていることもメッセージ性としては非常に高いと思っておりますので、私どもとしては大変重く受け止めていきたいと思っているところです。以上です。
○新谷委員 各委員から様々な意見が開陳されたわけですが、先ほど川人委員がおっしゃった、いわゆる法改正とこの協議会との関係ですが、第1回目のときに事務局から、この協議会では法改正事項は扱わないとの説明がありました。法改正事項は労政審で議論するということでしたが、その労政審が労働時間法制に関する建議をまとめて、政府が労働基準法等の改正法案を提出しました。
今回出ていった法案は過重労働という面で非常に危ない項目を幾つか含んでいると思いますし、今求められている過労死等防止のための改正事項としては非常に不十分であると捉えています。過労死等防止対策推進法が立法府の全会派の総意で行政府に対して突き付けた課題に応えるものとして全く不十分であると思います。しかし、そういう中で、この協議会の中で何ができるのかということでいえば、確かに法改正事項は労政審でやるということになりますが、あらゆる政策を総動員して、できること全ての対策を打つべきだと思います。
そのために、現状をどう分析するかということが大事だと思いますが、第1から第2、第3に記述されていく中で、分析したものに対して、今、政府として現状をどのように評価をしているのかというところが抜けているような気がします。いきなり第3で「当面の進め方」と出てくるのですが、それは先ほど森岡先生もおっしゃっていたように、毎月勤労統計調査なのか、労働力調査なのか、すなわち企業調査なのか、本人調査なのかが判然としません。木下先生がおっしゃるように、これは確かに本人調査なので、労働時間管理の対象外の方も含まれているのも事実なのですが、ずれが余りにも大きすぎる。労働力調査は確か約4万世帯、10万人のサンプル調査でやっていると思います。復元してやっているわけですが、適用除外になる人の割合、例えば裁量労働ですと数パーセントしかありませんし、管理・監督者に至っては、統計がなく、多分賃金 構造基本統計調査 のデータでないと取れないと思うのですが、様々なデータを駆使しながら取り上げていくことが必要になってくると思います。確かに労働力調査の数字と毎月勤労統計調査の数字では、前から言われていますように、これは不払い残業を表しているということで、更にそれが今広がっているということもありますので、データの分析をした後に、それに対する評価をどこかに書かないと、対策に当たっての基本的な軸がぶれてくるのではないかと思いますので、そういった記述の工夫を是非やっていただきたいというのが1点です。
今、法改正以外でできることというと、なかなか難しいのですが、先ほども論議になった3つ目の○です。しかし、これは先ほども八野委員が申し上げたように、過労死等防止対策推進法ができる前から、政府として掲げられた数字と変わっておりませんので、過労死等防止対策推進法が成立したことを受けて、何を強化するのだというところが数字的には見えないですね。使用者側委員がおっしゃったように、確かに重い目標ではあるのですが、働きすぎで亡くなる方をゼロにしようというのは、至極当たり前、国民の健康と命を守るのは政府の役割ですから、それをこの協議会の中で大綱として定めていくのは当然だと思っておりますので、政策の総動員を考えるべきであるということを改めて申し上げておきたいと思います。以上です。
○岩村会長 ここで書かれている「当面の対策の進め方」で言っている「対策」は、全体の構造からすると過労死等防止対策推進法に規定されている対策と理解するものだと思っておりますので、その観点から、今頂いた御意見についてはまた検討させていただきたいと思います。時間も限られておりますので、3番目に移りたいと思います。これは今御議論いただいた所の次の「各対策の基本的考え方」になります。5ページの真ん中の所までになります。どなたからでも御意見を頂ければと思います。岩城委員どうぞ。
○岩城委員 私は啓発の基本的考え方についての部分と、相談体制の整備等の基本的考え方の部分について、少し発言させていただきます。4ページの(2)、1番目の○について、「過労死等の防止のためには、法令遵守のための啓発指導が重要」としていただいたことは大変意義があると思っております。ただ、狭い意味の法令にとどまらず、過労死等の防止のために有効な通達の普及啓発も、ここに含めていただきたいと思います。今は非常に大事なものが通達という形で出されておりますので、その普及・啓発も入れていただきたい。
4ページの下から2番目の○に「教育を通じた啓発」とありますが、これは法9条が定めているところですので、広報を通じた啓発と並ぶ2本柱の1つとして、教育も必要だというのではなくて、重要な柱の1つとして、きちんと位置付けた記述にしていただけたらと思っております。
次に相談体制の整備等の基本的考え方について、少し気になったことを申し上げますが、例えばパワーハラスメントなどで鬱病になり相談があった場合に、その方に精神科医の受診を勧めて、それでよしとするのかという問題です。今まではそういう傾向が強かったと思うのですが、長時間労働やパワーハラスメントなどの外的原因がはっきりしているメンタル不調の場合には、本来、外的原因の除去こそが必要なわけですが、この辺りがなかなか見えてこない。その辺りの相談後、せめて既に出されている通達などに基づく指導などを何か入れておかないと、お医者さんの所へ行くだけで終わってしまうのではないかという点の危惧を申し上げたいと思います。以上です。
○森岡委員 調査研究が1本だとして、他の対策等もそうなのですが、検討の余地はありますが、3ページの第3の2の(1)の「調査研究の考え方について」ということに今は仮定して発言いたします。ここで触れるという点で、最低限家事労働時間と睡眠時間について、言及が必要ではないか。日本の男性の非常に長い労働時間は、非常に短い家事労働時間と表裏の関係にあると言われております。社会生活基本調査で、配偶者のいる有業者の平日の家事労働時間を見ますと、家事、介護、看護、育児、買い物の合計時間ですが、男性は23分、女性は4時間となっております。240分です。こういう極端に偏った家事分担は、男性の過労死等の一因になっているだけではなく、女性の社会参加や社会的活躍を妨げる一因ともなっております。それゆえに過労死等の調査研究は家事労働の領域にも踏み込んでなされる必要がある。少なくともこの大綱にも、どこかに簡単にでも触れる必要があると考えます。
それから、過労死のリスクは、労働時間が長く睡眠時間が短いほど大きくなると言われております。これは専門的な厚生労働省の議論でも検討されて、いわゆる過労死ラインのリスクの発生の時間が定められておりますが、近年、睡眠時間がずっと減少傾向になって、長期的に見るとNHKの国民生活時間調査で1970年代から見ると、ほぼ1時間近く減っていて、1970年代には7時間台だったのが2010年の調査では6時間台に減少している、そういうデータもあります。それについても少なくとも触れることが最低限、大綱の状況認識では必要ではないかと思います。あるいは検討課題として触れる、状況認識で触れる、両方あり得ると思いますから、そこは選択に委ねるとしても、どこかで説明を加えていただきたいと考えます。
○宮本委員 非常に多方面にわたる内容を記述していただき、大変有り難いと思っています。基本的な考え方のところですが、やはり過労死に関して医学の面から考えれば、単純に血管が破ける病気と詰まる病気が同じ要素で全部が説明できるとは思っておりませんので、やはり、これが何で起こるのかという医学的な解明は不可欠だと思っております。
また、それに応じて、これが過重労働者に偶然起こった突然死なのか、あるいは過重労働があればこそ発生したものなのかということも、解明は不可欠だろうと思っております。したがいまして、これは本来であれば、労災事例の検討だけではなくて、一般労働者あるいは一般住民の突然死の発症を調べた上で、それと何が違って、どこに過重労働が関わるか、どのようなことが危険因子なのかということを明らかにしないと、予防につながらないと思っております。当面の対策は、まず実態調査で、詳細な調査はその次の手なのかもしれませんが、是非、将来的なところを言及していただければと思っております。
それから、もう1つは、ちょっと話が飛んでしまいますが、5ページの(4)にあった民間団体の活動に対する支援の所なのですが、いろいろな民間団体が活動していく上で、各種相談あるいは様々なシンポジウムの開催などに耐え得る団体かどうかという意味で、言葉が適切かどうかは分かりませんが、言ってみればマル適マークのような、その団体が適しているという認証を、どこかでやるというようなことも必要かもしれないと思っております。
メンタルヘルス、心の健康問題に関しまして、そういった対策ができるという機関の認定を、例えば産業医科大学がやっているというようなこともありますので、どこかで当該民間団体がそのような適した所であるといったことを認証し、そして、そこに国民や住民、あるいは労働者・経営者・産業医等が相談に行けるというような体制作りも必要になってくるかと思う次第でございます。以上です。
○中原委員 先ほど宮本委員のほうからも御紹介がございましたけれども、こういう産業医、それから医学会との連携は重要な案件ではないかと思っております。特に今は精神医学学会や脳神経学会、循環器内科学会そのほかにも呼吸器系の疾患や糖尿病、悪性疾患などの過重労働からの増悪の事例等、そうしたものがフィードバックして、それ以外の全ての医学会にも、こういった過重労働があって、こういう疾患があったというような、そういった報告を受け付けられるような機関を設置していただきたいと思っています。
元文部科学所管の労働科学研究所という所があるのですが、そちらの労働科学研究所は文部科学省というと、また厚生労働省と別立てになって、また連携がうまく取れないということも困るので、是非そういった調査研究ということに関しては、厚生労働省も文部科学省も同じ連携機関として、充実した研究ができるように、研究員の増員や充実した、こういうことを研究してほしいというような、そういった問題の投げ方、投げ掛け方ということもできるようになってほしいと思っております。
それから、最近、医療現場や教育現場などにおいて、家族が死亡してしまった事案や、仕事ができなくなってしまったような重篤なメンタルヘルスの問題などが生じたときには、是非、第三者委員会の設置なども考慮していただきたいと思います。もちろん企業側の委員、それから社労士や産業医、労働基準監督署の職員や研究者など、あるいは弁護士など様々な観点から、やはり被災者だけにこういう問題を預けるのではなく、そこは会社にも責任というか協力を求めて、もし被災者の方が倒れられたときに、会社のほうはパソコンのデータとか出退勤の労働時間管理など、そういった資料を速やかに確保して提供するということに関しては、会社責任ということを、そこは明記していただきたいと思っております。以上です。
○西垣委員 ページ4の上から3つ目の○、特に過労死等が多い業種・職種についての掘り下げた研究に関連して発言させていただきます。まずIT業界の過労死の多発が問題になっております。IT業界の長時間労働の実態並びに、長時間労働になりやすい原因、鬱病等の精神疾患その他の健康障害、過労死の発生状況とその原因、離職率、そして離職の原因等について調べる必要があるとともに、早急に対策を取る必要があると思います。
また、その調査、対策に関しては、この専門分野の過労を経験した者の意見を取り入れていただきたいと思います。それからもう1件、この業種、職種ではないのですが、最近同じく20代、30代の若者の過労死が問題になっております。この原因究明を早急に行い、対策を急ぐ必要があると考えます。と同時に過労疾病に陥っている若者、既にその状況にある者に対する対策も欠かすことができないのではないかと思います。この若者対策は少子化や労働力の減少が問題になっている日本において、労使に関わらず国民的な課題だと言えると思います。以上です。
○山鼻委員 相談体制の整備のところで1点。こちらのほうでは労働者や産業保健スタッフへの相談体制ということは書いてあるのですけれども、中小企業や零細企業ですと、社内で産業保健スタッフを抱えている企業というのは非常に少なく、と言うか、ほとんどおりません。事業主が産業保健スタッフが常駐していない中小企業や、そのような方たちも相談できる産業保健総合支援センターや、地域の産業保健センターとの充実なども、こちらのほうに盛り込んでいただくと非常に有り難いと思っております。以上です。
○輪島委員 4ページの(2)啓発の基本的考え方の下から3つ目の○でございますけれども、非常に重要な指摘だと考えておりまして、先ほど岩城委員も御指摘になりましたけれども、過労死等防止対策推進法の9条、国及び地方公共団体は教育活動、広報活動等を通じて、という記述があって、啓発の基本的な考え方というのは非常に大事だと思っておりますし、その方向は、第一には国民全体への啓発ということが非常に大事なのではないかと思っています。
その点で、この法令遵守の啓発ということも含めて、下から3つ目の○が、このポジションでいいのかという気がいたしております。できるだけ前のほうに置いていただけないかと思いました。そういうことで国民一人ひとりが自身にも関わることとして、過労死を防止することの重要性を自覚すれば、5ページ目の2つ目の○にあるような相談窓口には必要な場合には躊躇なく相談に行けるような雰囲気ができるのではないかと思っております。大変重要な指摘だと思っておりますので、御検討いただければと思っております。
○岩村会長 ありがとうございました。ほかにはいかがでございましょうか。それでは次に4番目に移らせていただきたいと思います。5ページの真ん中から下の所でありますが、第4で「国が取り組む重点対策」という所になります。これにつきましても、どなたからでも結構ですので、御意見を頂ければと思います。
○中野委員 それでは5ページの第4、国が取り組む重点対策の1、調査研究等の(1)、(2)の疫学研究等の間に挿入をお願いできたらと思い、発言いたします。(1)労災認定等事案の分析と書いてありますが、そこに公務災害の事案の分析も是非お願いしたいと思います。分析する所が「独立行政法人労働安全衛生総合研究所に設置されている過労死等調査研究センター」となっていますが、公務災害の場合でもそこでやっていただけるのかどうか。そして、もし、なければ適当、適切な機関で是非、公務災害認定等事案も集約分析をしてほしいと思います。
あと、2、3の○に準じて、同じようなことを書いていただきたいと思いますが、特に2つ目の○の所で「労災認定等の事案の多い業種等の特性」を踏まえて、なされると思いますけれども、この特性の所を十分に先ほど、実態でも申し上げましたけれども、国家公務員の場合には医療職、地方公務員の場合には教員や警察官が非常に災害が多いということですので、その業種に沿った適切な項目で調査をしていただきたいと思います。特に教員の場合には、持ち帰り残業ということが非常に重くのし掛かっていて、このことが非常に公務災害をもたらす原因の一つになっているようにも思いますので、よろしくお願いしたいと思います。
続けて関連することなのですが、6ページの結果の発信のところなのですけれども、今まで公務災害の公務員関係の補償状況について、情報は余り公表されていなかったように、私は認識しております。今回の資料に大分出されてはおりますけれども、厚生労働省から毎年6月に出ているような大変詳しいものを是非、公務災害にも、それに準じて調査結果を定期的に公表することをお願いしたいということです。以上です。
○岩村会長 ありがとうございました。公務災害のほうはどうですか。事務局、いかがですか。
○総務課長 今、公務災害について何点か御指摘ありましたけれども、例えば先ほどの労働安全衛生総合研究所の中の過労死等調査研究センターにおきましては、いわゆる所管上は公務災害の分析も受け付けることは可能です。また、予算措置等があるかないかということも含めて、先ほどお話があった公務災害の取りまとめ、発表についても公務員官庁と御相談させていただきたいと思います。
○中野委員 ありがとうございます。
○川人委員 5ページの第4の1、(1)労災認定等事案の分析についてでありますが、この中で2番目の○の所に、分析に当たってはということで幾つかの点が指摘されております。これは大変重要な内容だと思います。このうち、「適用されている労働時間制度」と書かれておりますが、この点は、より具体的に調査をしていく必要があるだろうと思います。幾つかの過労死に至る労働時間制度のパターンがあります。大きくいって3通りあるわけです。1つは36協定自体が極めて長時間労働を容認しているというパターンです。2つ目には36協定自体は告示のように週45時間程度にされているけれども、実際にはサービス残業が極めて多いというパターンです。それから3番目に、そもそも特別な労働時間法制で、例えば裁量労働制などによって、特殊な労働時間制が適用されているというパターンです。大別しまして、この3通りがあろうかと思います。これらについて、できるだけきめの細かい分析をして、そのことが過労死を発生させないためには、どのような労働時間法制が適切かという議論にも、大変に重要な資料になると思いますので、是非よろしくお願いしたいと考えます。
もう1点、疫学研究の所ですが、今回の過労死等防止対策推進法の過労死の定義の段階では、脳・心臓疾患と精神疾患、自殺ということに限定されました。しかしながら、過労死等防止対策推進法制定に至る議論の過程でも明確にされましたが、調査研究の対象としては、これらの脳・心臓疾患や精神疾患には限らないと。その他のあらゆる疾病も調査の対象になるという確認です。とりわけ私は、喘息に関しましては、是非、具体的に明記をしていただきたいと。なぜならば年間喘息で亡くなる方が現在も1,000名以上を超え、そのうち過労死と疑われる数も相当数に上ると。かつ、労災認定も喘息の案件については、これまで相当件数が労災認定として認められているわけです。したがいまして、是非、疫学研究においては、喘息については明記をして、具体的な調査分析を行っていただきたいと考えます。以上です。
○木下委員 私はこの過労死防止対策の中心は、この啓発にあると考えております。もちろん調査も重要なのですが、広く国民、あるいは企業、全体に啓発をしていくことが重要だと思っております。6ページの2の(1)で、「啓発月間を中心」としたとなっております。もちろん法律には、これが決まっておりますけれども、やはり年間を通して啓発に取り組んでいくべきですし、「特に」、この「啓発月間」ということで表記していただきたいと思います。
そして、啓発の内容は、多方面にわたることが重要だと思います。つまり、法令遵守の啓発だけでしたら、労働基準法の遵守の啓発と変わるところがありません。むしろ、この過労死等防止対策推進法はソフトローとして、取締りから離れて各企業や各労働者、あるいは家族、地域、全ての人が目標に向かって、自らの目標に対する対応を考えていくというのが考え方だと思いますので、幅広い啓発を考えていただきたいと思います。
その点から言いますと、例えば(4)の「働き方」の見直し。これは自主的な見直しや、それから8ページになりますが、(8)商習慣等も踏まえた取組。この商習慣等も踏まえた取組というのは、今回、今まで、どの法律にも出てこなかったのですが、今回の大綱に上がることによって、非常に重要な意味があると思います。労働者はイコール消費者です。消費者として求める行動が他の労働者に過労を強いていないかということを考えていくことも重要ではないかと思います。以上です。
○岩城委員 6ページから7、8ページにかけて啓発、それから相談体制の整備と民間団体の活動に対しての支援について、それぞれ何点かずつ意見を申し上げます。
まず啓発についてですが、ここでいう(2)と(3)ですね。長時間労働削減のための周知・啓発の実施。それから過重労働による健康障害の防止に関する周知・啓発の実施とありますが、その前提として労働時間の適切な管理と、今、何時間働いているのかということが、適切に把握されていることが前提にならなければいけないと思います。
その点は、基本的な考え方の所にもあったと思いますけれども、是非、適切な労働時間管理というのを、(1)の次に入れていただきたいと思います。その啓発を入れていただきたい。それから、その内容自体は、これまで平成13年4月6日の通達などがありますので、それを周知徹底するということが中身になるかなと思います。
2つ目に7~8ページにかけて、(6)職場のパワーハラスメントの予防・解決のための周知・啓発の実施とありますけれども、ここの(6)の次に、過重労働対策やメンタルヘルス対策に取り組んでいる企業、更には自治体などが社会的に評価されるような顕彰制度や賞などを作って、キャンペーンを行うということを入れていただきたいと思います。これは4ページの基本的な考え方の○の5つ目に、そのことが書かれておりますけれども、当面の重点対策の中にも、それを入れていただきたいと、連動させていただきたいと思います。
次に、教育の関係ですが、(7)になるのですけれども、「大学・高校等における労働条件に関する啓発の実施」、この記述は、やや射程範囲が狭いように感じます。中学校、高校、大学、専門学校等の全ての段階の学校において、過労死の実態と防止対策を効果的に教える機会を作るということを入れていただきたいと思います。とりわけ中高等教育の段階では、過労死に関する基本的な知識、健康に働くことの大切さ、過労死防止のための対策、ワークルールの基本的な知識を教えることが重要だろうと思います。とりわけワークルールの中でも、働く者の命と健康に直結するルール、例えば労働時間、休息、休日、有給休暇などです。それから入社したときの労働条件の明示、労働契約、退職の自由、健康診断などの健康管理に関するルールなどを、きちんと教えていただきたい。私たちが相談する中では、退職をさせないと、退職を認めないということで、認められないと思って、過労死するまで働いてしまう例というのが頻繁にあるんですね。そういった意味で、今まで労働法の基本的な教育が不十分だという部分がありますので、そこをできるだけ具体的に入れていただきたい。
それから、これらの教育活動を推進するために、専門家や過労死防止活動を行っている民間団体と協力して、教育段階に則した分かりやすい教材を作ることが効果的であろうと思います。これらの教育活動全般を推進するため、厚生労働省、文部科学省など関係省庁の連携、国・地方自治体と民間団体、過労死家族、専門家などが協力、連携していくといったことも入れていただきたいと思います。
次に、第4の3、相談体制の整備についてでありますが、この部分の記述は先ほどの第3の2の(3)を受けるものだと認識しておりますが、そうだとすると3つに分かれます。1つは相談窓口の整備、2つ目が相談対応者の育成と配置、3つ目が相談に行きやすくする環境整備となると思います。その点を意識した記述にしていただきたいと思います。
それで、8ページの(1)の相談窓口の設置について言えば、多彩な相談窓口の開設というのを挙げていただきたい。具体的には労働局や労働基準監督署、ハローワークといったものだけではなく、地方自治体、労政事務所、業界団体、事業者団体、裁判所、弁護士会、社労士会など多彩な相談窓口を開設していただきたい。それからケアとしては、法的ケアと医学的ケアの2つがあると思うのですが、それぞれについて関係団体や専門家との連携というのを挙げていただきたいと思います。
8ページから9ページにかけての研修の実施に関する部分ですが、一つ御提案をしたいのは過労死等についての相談対応者の認定資格、私は、仮称「健康労働コンサルタント」といった名称がいいのではないかと思うのですが、そういった認定資格を創設して、従業員数に応じた資格取得者の目安を決めて、例えば50人に1人など、そういった資格取得を奨励するといったことも目標ができて、励みになるのではないかと思います。
最後に、これらの重点政策は国だけで十分になし得るものではないので、(4)として関係専門家団体や民間団体との連携を挙げていただきたいと思います。例えば、過労死を考える家族の会が全国に12か所ありますけれども、そういった家族会やこれから幾つかできてきていますけれども、過労死防止地方センターという任意団体がこれから作られていくと思いますが、そういった所と連携をしていくと。どこまでをここに書き込められるかという問題はあると思いますけれども、そういう具体的な民間団体との連携を入れていただきたいと思います。
最後に4の民間団体の活動に対する支援という所についてですけれども、ここでは過労死等防止対策推進シンポジウムの開催としか、(1)しか入っておりません。やや寂しいように思います。法の11条は「国及び地方公共団体は、民間の団体が行う過労死等の防止に関する活動を支援するために必要な施策を講ずるものとする」としております。したがって、民間団体の過労死等の防止に関する活動自体を支援する。それを積極的に打ち出していただけたらと思います。例えば、今申し上げました過労死を考える家族の会は、経済事情が大変な中で、寺西さんなどは今日、こういったところは交通費は出ますけれども、それ以外は全て自費でやっております。その辺りの活動に対する支援、例えば、その主催するシンポジウムや学習交流活動に対する支援をしていただきたい。
また、私も参加しておりますが、過労死弁護団全国連絡会議などが過労死の防止に関して行うシンポジウムなどについても、支援を頂けたらと思っております。その他民間団体がその活動の一環として、過労死等の防止に関するイベントを行う場合には、国や地方公共団体の後援はもちろん、経済的な支援も行われるべきであろうと思います。
最後に、マル適マークの話が先ほど出ました。この点は過労死防止活動団体ということで、一定の審査をして、そこがそれに適応しているということになりますと、そういう公の認定を頂いて、その活動についても一定の支援をしていくといった仕組みができないかと思っております。長くなりましたが、以上です。
○新谷委員 5ページの第4の書き出しが、「国が重点的に取り組まなければならない対策として、法第三章に規定されている」となっており、過労死等防止対策推進法第三章を受けての記述です。この法律は、過労死家族の会の皆様方を中心とする方々の御尽力で成立したわけですが、もともと、霞ケ関の中で労働者の健康と命を守るというのは厚生労働省がその任に当たるということで、この法律がなくても、当然のこととしてこの働き過ぎ防止には取り組むべきだと思います。ここの書きぶりも少し工夫されたらいかがかと思います。
その文脈から言えば、6ページの2ポツの(2)ですが「労働基準監督署の体制整備をしつつ監督指導」、これも当たり前といえば当たり前なのですが、この書きぶりで違和感があるのは最初の○の、「過重労働の疑いのある企業に対して」監督指導を行うという記述です。労働基準法改正の論議の中でも申し上げましたが、何に基づいて指導を行うのでしょうか。瑕疵なく36協定が締結されていて、その範囲内で時間外労働をして第37条の割増賃金を払っていれば、幾ら長時間であったとしても、これは監督指導ができないのではないかと思います。ここの書きぶりも、現実の法律でできることとできないことを踏まえて書くべきだと思います。
ただ、体制を整備するということには賛成です。労働基準法というのは、世の中で言われている非常に違反の多い法律で、一般刑法犯だと、多分信じられないような違反率です。定期監督指導で入ると、7割近くで違反が見つかるという法律で、使用者は、見つかったら仕方がないけれども、どうせ監督指導に来ないや、捕まったって大したことないしというような意識で法律が守られないという現状です。
一般刑法犯ですと、司法警察職員の警察官は全国で29万人も配置されているのに、特別司法警察職員の労働基準監督官は全国で3,200人弱しか配置されていないわけで、それで421万事業所を監督指導するということなのです。これはILOの基準から言っても、労働者1万人当たり1人という水準が示されていますが、我が国には、残念ながら0.53人しかない。ドイツの1.78人に比べてもはるかに少ないということで、やはり労働基準監督官の増員を厚生労働省としても、予算の分配もあるでしょうけれども、本当にこれは考えてもらわないといけないと思います。
それと、監督指導をやると、大体9万件前後の違反が摘発されるのですが、送検される件数が1,000件程度しかないのです。ですから、先ほど言いましたように見つからないということと、見つかっても送検されない、刑事罰を科されない、というのが労働基準法の世界ではないかと思います。ですから、一罰百戒ではないですが、労働基準監督官の数が少ないのであれば、今ある刑事罰をフルに適用することが必要だと思います。労働時間の関係ですと、懲役6月以内又は罰金30万円以下という量刑が決まっているわけですので、厳罰主義で臨むべきだと思います。労働基準監督官は非常に忙しいと思いますが期待されるところは非常に大きいと思いますので、是非取組を強化していただきたいと思います。先ほど申し上げたように、法改正以外でできることは、やはり政策を総動員していただくことだと思います。
それと、周知という問題が6ページの2つ目の○に出ています。先ほど皆様方からも御発言があったわけですが、平成25年に労働時間法制の検討をする際に労働基準局で調査的監督というのをやられて、労働時間総合調査をやられていたと思います。あれで見ますと、実は36協定を結んでいない事業所が40数パーセントあって、しかも、その40数パーセントを100とすると、30数パーセントで労使協定の存在を知らなかったという使用者がいるわけです。つまり、引き戻しますと、使用者のうちの15%程度が36協定を知らないという状況なのです。その啓発をするにしても、もともとその法律を知らない、労働者を8時間を超えて、あるいは週40時間を超えて働かせるのに36協定すら知らないというのが現状なのです。ですから、啓発をどうするのか。これは集団指導で経済団体を通じてやるという手もあるでしょうけれども、それにカバーされない事業所も幾つもあるわけです。それを考えていくと、非常に息の長い取組になるかもしれません。
8ページにある大学、高等学校における労働条件等の啓発実施について、これは確か、2009年に厚生労働省で労働者教育の研究会もやられたと思うのですが、これは本当に、厚生労働省だけでなくて文部科学省を巻き込んで、それと後に出てくる地方公共団体も巻き込んでやらないと、お題目だけではなかなか進まないです。といいますのも、実は先ほど来出ています労働者の権利の教育がどうなっているかというのを私ども連合で調べたところ、中学の公民の教科書と高校の現代社会と政治経済の教科書の今出ているものを調べたのですが、唯一中学の公民の教科書に、1日8時間週40時間、休日は週に1回だというような記述があるのですが、36協定というのは1つも出てこないです。ですから、将来の労働者はもちろん、先ほど言いましたように、将来の使用者ですら学校教育段階でそういった労使協定が必要だという教育を受けていないのです。学習指導要領にもそんなことは書いていないわけです。だからこの啓発をやるためには地方公共団体はもうちょっと地に足を付けた取り組みが必要です。本当に文部科学省も巻き込んで、教育委員会も巻き込んで教育をやらないと、これはお題目だけではなかなか進まないと思います。
最後に、これは真偽かどうか教えていただきたいのですが。参議院の予算委員会で安倍総理が労働基準法の違反について行政指導をした段階で企業名を公表するということを答弁されたというのが新聞記事に出ておりました、これは事実なのかどうか。あるいは、それを受けて厚生労働省として公表基準等の検討を始めるというのが報道されたところですが、これは非常に良いことだと思うのです、これは我々もずっと求めてきたところですが、労働安全衛生法が改正されてちょうどこれに類する動きが出てきております。労働災害等で繰り返し労働安全衛生法に違反した企業について特別安全衛生計画をやって、それを守らないときには企業名を公表するというロジックが出来たのですが、この対象となるのは労働安全衛生法に違反するものだけです。労働基準法第36条の関係でいくと、有害業務の1日2時間の禁止だけが引っかかりますが、それ以外のところは幾ら長時間であって過労死が出ても企業名の公表をしないというのがその答弁でした。総理自身がこういうことをおっしゃっているのであれば、労働安全衛生法は労働者の健康と命を守る法律ですから、これの適用拡大も含めて検討するべきではないかと思います。今申し上げた最後の点について、事実関係も含めて教えていただければと思います。
○岩村会長 それでは、最後の点は御質問ですので事務局のほうでお願いいたします。
○監督課長 監督課長でございます。今、新谷委員から御質問いただきました最後の点につきまして御説明申し上げたいと思います。
御指摘のとおり、3月27日の参議院の予算委員会の審議におきまして自民党の若林委員から質問がございまして、それに対して安倍総理から違法な長時間労働を繰り返す企業の公表について答弁がありました。総理の答弁の内容につきましては、社会的に影響力の大きい企業が違法な長時間労働を繰り返しているような場合には是正を指導した段階で公表する必要があるのではないかという答弁をされたところです。それを受けて厚生労働大臣に指示をされまして、今、大臣の指示の下に私どもで、どういう基準で、どういうやり方で公表するかという検討を始めたところです。できるだけ速やかに、この総理の御指示を踏まえて枠組みを実行に移したいと思っております。
○岩村会長 ありがとうございます。それではお待たせしました。寺西委員、どうぞ。
○寺西委員 新谷委員と少し関連した内容になりますが、6ページの(2)、長時間労働の削減のための周知・啓発の実施の項目で少し御提案したいと思います。
今、問題になっているのは、企業採用のときに健康を確認した上で採用された若い人が僅か2、3か月で過労死、過労自死されたという実態が多くあります。そうした労働と密接な関係にあるということの観点から、是非事業所においては在職死亡者死因別届出制度というようなことを労働基準監督署で実施していただけないかと御提案したいと思います。これには労働時間の徹底した管理とか、終業から始業までのインターバル休息というような形で、何時に終わって、また朝、何時に来たのかというような、そうした詳細な形の、労働者の健康管理の一環としてこういう在職死亡者死因別届出制度というような項目をここに入れていただきたいと思っているところです。
○岩村会長 ありがとうございました。
○森岡委員 国が取り組む重点対策の啓発2に関わって(2)長時間労働の削減のための周知・啓発の実施の最初にあります、新谷委員も言及されました過重労働の疑いのある企業等に対する指導の徹底に重なるわけですが、ここに包摂される事項ではありますが、近年の状況から特別に記述する必要があると考えまして要望的な発言をいたします。
近年、若者を使い潰すひどい働かせ方をしている企業又はそうした疑いのある企業を広くブラック企業と言っております。ブラック企業という用語を使うかどうかは、配慮のいろいろな余地もありますが、そういう実態について、特に若者の過重労働について特記する必要があります。しかも、この間、厚生労働省は政府の方針を受けて幾つかの施策を実施しています。そういう施策も含めて若者過重労働対策について、どこかで記述する必要があるのではないかと思います。
その点で問題の重要性を私が強調する1つのデータに過ぎませんが、『ブラック企業』という本を書かれた著者がその第二弾で、同じようなテーマを引き続き扱っているのですが、24歳で自殺をした飲食関係の会社の過労自殺の例になります。渋谷労働基準監督署が…。
○岩村会長 時間の関係もありますので簡潔にお願いいたします。
○森岡委員 計算したという形で数字が上がっていまして、驚くほどの長時間労働がここにあります。要するに、162時間から222時間の時間外労働があって、健康障害というよりも、自殺にストレートに至るというようなことが事実としてあったとされています。そういうことも含めてこの記述に生かしていただくことが必要だと思います。
○岩村会長 ありがとうございました。次に、5番目に移りたいと思います。9ページの第5「国以外の主体が取り組む重点対策」です。
○岸委員 私からは5番目について意見を述べたいと思います。
前回の協議会で人事院と総務省のヒアリングを行ったところですが、その中で、公務員の勤務時間の管理が自己申告で行われていることや職種別の勤務実態の把握などがされていないという現状が明らかとなったところです。骨子(案)の1「地方公共団体」の中に「地方公務員を任用する立場からの対策も推進」との記述がございますが、確かに地方公務員の安全衛生対策は任命権者たる地方公共団体が積極性を持って取り組むことが重要となっています。しかし、併せて、関係省庁の取組も重要だと考えております。特に総務省や文部科学省は地方公務員の業務に密接した関係にあります。そういったことからいうと、職員の超過勤務に対する指導など、国、地方公共団体が連携して取り組んでいくことを大綱に書き込むべきではないかと考えております。先ほど来、意見として出されております教職員については、勤務時間の考え方が行政職の職員とは異なることから、勤務時間の管理がされていない実態となっています。その上、衛生委員会の設置などの安全衛生管理体制も、他の公務職場と比べて行き届いていないといったような実態がございます。
そういったことからいうと教職員の超過勤務問題は、これまでの議論でも多くの意見が出されておりますが、勤務時間の管理がされていないことから公務災害の認定すらもされにくいという実情もありまして、表面化しない過労死等の実態があると考えられます。こういったことからいうと、文部科学省と地方公共団体との連携で早急に具体的な対策を講じるべきことを大綱に盛り込んでいただきたいと考えています。
○岩村会長 ありがとうございます。それでは、西垣委員、木下委員、宮本委員ということでお願いいたします。
○西垣委員 9ページの1「地方公共団体」に3つの○を設けてくださっていますが、できれば1つ追加をお願いしたいと思います。「地方自治体は、各地方で過労死等防止対策の推進に当たり、必要な場合においては条例を制定したり地域推進協議会を開催したりするものとする。」以上です。
○岩村会長 ありがとうございます。
○木下委員 10ページの「事業主等の取組」の所で、まず(1)事業主の取組です。2つ目の○で「過労死等防止のためには最高責任者・経営幹部が関与することが重要であり」と。これは非常に重要な観点で、まず、企業トップがこのことについての認識を持つことは当然だと思います。更にそこに「また、産業保健スタッフ等の役割」と続いているのですが、どうもこのつながりは少しバランスが悪いように思います。まず企業組織としての取組、そして、項目を分けてその中に「産業保健スタッフ」を入れるべきではないか。それから、産業保健スタッフだけでなく、安全対策については専門の部署を持つ企業も多くありますので、それを是非述べていただきたいと思います。
その次に(2)ですが、「事業主等」の次が「労使」となっておりまして、なぜか労働団体が主体的になっていないところがちょっと残念です。やはり労働組合も組合員の命と健康を守ることに取り組むために1つの主体として、「労使と」ではなくて「労働組合」という形でお書きいただくほうがバランスがとれるのではないかと思います。今は余り出ませんが、かつては労働組合の要求の1つに時短の要求が随分華々しく行われた時期があります。そういうことを考えると、賃金要求と合わせて組合にも、もう一度時短をお考えいただくような時代ではないかと思います。さらに、労働組合などの団体の持っている、例えばレクリエーションなどの機能は、職場の雰囲気づくりとして大変重要だと思います。従業員が孤立しないための1つの機関として労働組合というものをここでもう少しクローズアップしていいのではないかと思いました。
併せて民間団体。これは、「過労死家族の会」様のような団体もありますが、例えば使用者側の、並んでおります経営者団体などもこの民間団体の1つに当然入ってくるのだろうと思います。
○岩村会長 ありがとうございました。
○宮本委員 木下委員と全く重複してしまうところで恐縮ですが、私も、事業主の取組の所はもうちょっと書ければと思っておりました。
というのは、まずこの問題、過労死は出したくないし、なりたくないという思いがあって当然だと思うのです、そこが原点だと思っております。ただ、どうしたらいいか分からないという場合になって、例えば産業医とか保健師はアドバイザーとして機能するという意味で適度に期待していただくのは、もちろんやっていただきたいと思うのですが、過度に期待されても困るというのがあります。研修も産業医等々だけではなく、まず事業主が過労死を出さないというところの決意を出すというところを強く書いていただけると有り難い、そして、労働者団体あるいは労働者そのものも過労死になりたくないわけですからその努力をするという、双方の立場を明確にしていただければありがたいと思った次第です。その上で産業医や保健師を十分活用していただきたい、こういう構図にしていただければと思いました。
○岩村会長 ありがとうございます。申し訳ありませんが私、失念していまして、10ページの第6「推進上の留意事項」も合わせてということになりますので、お願いしたいと思います。それでは輪島委員、どうぞ。
○輪島委員 10ページの2の事業主等の御指摘を頂きまして、ありがとうございます。御指摘を踏まえて、かつ、現状では事業主団体としても、長時間労働の抑制、有給休暇の取得促進、働き方の改革、休み方の改革についての取組周知については真摯に取り組んでいるつもりですので、御承知置きいただければと思っております。
それから、これは意見ですが、先ほど言った意見と同じ趣旨ですが、10ページ目の4に「国民」と書いてあるのですが、国以外の主体の最後の登場が国民なのかと思うので、ここの順番も適切なポジションにする必要があるのではないかと思っているところです。
それに合わせると、5の国以外の主体が取り組む重点対策と6ページの啓発が全部、啓発の主体がどこになるのかということを平仄を合わせて書いていくほうが大綱を読むときには分かりやすくなるのではないかと思いますので、意見として申し上げておきたいと思います。
○岩村会長 ありがとうございます。多分、事務方としましては法律に書いてある順番でこう並べてあるということだと思いますので、また検討させていただきたいと思います。ほかにはいかがでしょうか。それでは中原委員、どうぞ。
○中原委員 推進状況のフォローアップの所です、年に一度報告ということですが。今までこの法律が出来るためには、私ども、多数回の院内集会などを行って、超党派の議員連盟の議員にお手伝いいただいてこの法律が作られたという経緯もございますので、是非この年に一度の報告会は、議員連盟を主体とする院内集会あるいはこちらの厚生労働省の記者クラブなどを通じて広く国民にこのフォローアップがどうなっているかということをお知らせしていただけるような仕組みにしていただきたいと思っております。
それから、産業医というような話も出てまいりました。先ほども山鼻委員から保健師というような言葉も出てきましたが、やはり、ある程度以上の従業員がいる企業では、産業医が必ず精神科医であるとか循環器内科という、そういう適切な診療、治療ができるかというと、なかなか難しい状況でもありますので、そういう、適切な医療機関などと提携するようなシステムも作っていただきたいです。
それから産業医講習の際には、こういった過労死等防止対策推進法のことはもちろん、こういった、私ども、過労死事案などの知識を深めるために遺族や弁護士の発言を聞く講座なども設置していただけたらと思います。
それから、残念なことに被災者になってしまった場合、行政にいろいろな手続に行くわけですが、そういったときに行政から速やかに心のケアをできる医療機関の受診のこととか、今後のことも考えて様々な相談機関を指導できるようなパンフレットなどを行政窓口に設置していただき、できる限りそういったことが市民に伝わるように、そういう機関の人たちも口頭で説明できるような職員への教育なども進めていただければと思っております。
○岩村会長 ありがとうございます。多分、フォローアップとしての関係行政機関からの報告をこの協議会で伺うという話と、その報告を対外的にどういう形で公表するのかということとは別の問題だという気がいたしますので、そこはまた整理させていただければと思います。最後に全体を通じて御意見があればと思いますが、西垣委員、どうぞ。
○西垣委員 時間の都合で全てをこの時間にお話することはできませんでしたので、後で細かい要望に関して、できれば文書で提出したいと思いますので、その件、御検討ください。
○岩村会長 事務局に文書でお出しいただければいいかと思いますが、それでよろしいでしょうか。
○総務課長 次回の大綱案の作成までにそれを事務局に頂ければ、内容について考慮させていただきます。
○森岡委員 それは委員全部に回覧されるのでしょうか。
○岩村会長 いいえ、事務局で取り扱って検討する、そういう扱いにしたいと思います。
○新谷委員 全体を通してということですが。先ほど10ページの取組主体の記述に対して労働組合も主体的な役割を果たすべきだという貴重な御指摘を頂きました、私どもとしても全然問題ないと考えております。ただ、あくまでも第一義的には、過労死の防止対策は事業主が行うべき責任、要するに、安全配慮義務は契約上の付随義務でもあります。そこが明らかになって労働組合としてもその取組をするという書きぶりであれば問題はなかろうと思っております。
実は、この協議会の初回の11月に設定された過労死等防止啓発月間に、私どもとしての取組ということで、自分たちの職場から過労死を出させないという宣言採択の運動をやりまして、およそ9,000の組織が、機関決定をして宣言を採択したわけです。これのミソは、過労死を「出さない」ではなくて「出させない」という、正しく労使の協議の中で使用者がやるべきことだということに取り組んできたということも御紹介しておきたいと思います。
それともう1つ。前段の論議で、これは調査の所で、5ページに労災認定の事案の分析というのがあって、これは医学的な分析とかその背景の分析になるのですが、1点気になっておりますのは、先ほど家族の会の方もおっしゃっていたように、認定に際しての労働時間の認定が難しい状況が最近増えてきているということです。要するに、ロックアウト解雇のように、「働き過ぎ、しんどい」と言ったら「解雇」と言われて、企業がそのまま直ちにパソコンを回収してしまうとかメールを全部削除してしまうというようなことがあります。昔のようにタイムカードでバチンとやって、紙で証拠が残るというのではなくて、やはり近年は電子的に管理されているケースが多いものですから、労災認定に際して不認定になったけれどもその不認定になっている原因は一体何なのかという調査分析も必要だと思います。証拠保全がうまくいっていなくて、実際に被災労働者や遺族が、これだけ働いていたと言うにもかかわらず証拠がないというようなことで不認定になってしまったというようなケースも少なくないと聞いておりますので、なかなか難しいかもしれませんが、そういった事案についても、どう対処していくのかということを検討するためには実情の把握が必要だと思いますので、是非それも検討していただければ有り難いと思っています。
○岩村会長 それでは、まだ御発言いただいていない小林委員、その後に岩城委員ということでお願いいたします。
○小林(信)委員 全体的なことで御意見を申し上げたいと思います。今、新谷委員から非常に企業側が真実のデータを隠すというようなお話を頂きまして、あってはならないことだと思います。過労死等の未然防止と再発防止は大変重要なことであって、万全を期して対応策を取っていかなければいけないと思っていますし、私どもの中央会としても、会員の中小企業の組合全国団体に対して、これからもしっかり伝えていきたいと思います。
この過労死等防止対策推進法はそもそも、まず、今まで、かつて調査のデータがない、非常に少ないというところに大きな問題があるということで、今回、この大綱に基づいて調査を行うということは非常に重要なことだと考えていますし、ここで真実の過労死の実態を把握するためにも企業の真実データの提供が非常に重要になってくると思います。私どもも企業に対していろいろな形で会員参加、真実のデータの提供を訴えていきたいと思いますし、また、今まで過労死の会の方々から頂いた意見等も踏まえて企業に調査協力をするような形で訴えていきたいと思っております。ただ、前向きに取り組んでいるという姿だけは御承知置きいただきたいと思いますので、よろしくお願いします。
○岩城委員 最初に言うべきだったのかも分かりませんが、この最初の第2の現状のところで2点お話したいと思います。
1つは、認定された件数だけが書かれていますが、申請件数も是非入れてほしいということです。今、新谷委員が言われたこととも関わるのですが。実際には認定基準というハードルに当てはまらないものが、時間が足りないとか、十分な資料がないといったことで認定が得られなかったわけですが、当然、調査対象にはされるべきだろうと思いますし、是非その点は入れていただきたいです。少なくとも遺族の方が大変な思いをして、これは労災だと思って申請しているわけですから、その点をしっかりと受け止める意味でも入れていただきたいというのが1点です。
もう1点が。2ページの真ん中辺りに「自殺の状況」というのがあります。それに対応するものとしてもう1つ、脳・心臓疾患、さらには喘息などもあるわけですが、そちらのほうの状況はどうなのか、というのが本来あるはずなのです。ところがそれについては、データそのものがまだない、在職に関連した死亡、脳・心臓疾患というのが十分な調査がないということが反映していると思うのですが。それだとすれば、そのデータが十分ではないということをきちんと今、指摘する必要がある。少なくとも、先ほどどなたかから話がありましたが、在職死亡といった形での調査はできるわけですし、そういったところから是非、いずれそういう項目が出来ていくようにしていただけたらと思います。
○岩村会長 ありがとうございます。そうしましたら今、御発言をお二人ということですので。では、まず川人委員からお願いします。
○川人委員 一言だけ。川人です。
今の関係では、厚労省の人口動態統計で5年に一度、在職中死亡の死因別統計が出されている、一番新しいものが平成22年度であると理解しておりますが、今後、在職中死亡の死因別統計を充実させるという方向も含めて是非検討をしていく必要があると、その点を指摘しておきます。
○岩村会長 ありがとうございます。それでは中野委員、どうぞ。
○中野委員 調査のことについて要望を申し上げます。一応私としては、公務員関係の調査項目とか、啓発項目とか、たくさん用意してあるのですが時間の関係で言えませんので、実際にこれから調査するに当たって是非、過労死遺族の会とか関係の方もメンバーに入れていただきたいということと、それから、今日、事務の方に調査項目をお渡ししたいと思いますが、御了承いただきたいと思います。
○岩村会長 先ほどと同じでして、個別に事務局にお渡しいただければと思います。
○中野委員 それで調査に当たってはやはり、遺族や関係者の意見を参考にするというような項目も入れていただければと思います。
○岩村会長 そこはどういう調査をするかという調査の性格にもよりますので、またそれは検討させていただきたいと思います。
○中野委員 分かりました。よろしくお願いいたします。
○岩村会長 ありがとうございます。ほかにはいかがでしょうか。よろしいでしょうか。それでは、今日のところはここまでとさせていただきたいと思います。今日、委員の皆様から大変貴重な御意見をお出しいただきまして、ありがとうございました。事務局では、今日、委員の皆様から頂いた御意見も踏まえまして、次回の会合に向けて、今日の大綱案の骨子に肉付けをして素案の御準備をしていただきたいと思っております。先ほど来お話が出ておりますが、時間の関係上、全ての御意見をお出しいただけなかったかとも思いますので、個別に事務局に御連絡を頂いて、できれば書面でお出しいただいたほうが事務局も確実だと思いますので、個別に御意見、御要望がありましたら、そういう形でお出しいただきたいと思います。事務局では、そのようにしてお出しいただきました御意見等も踏まえて大綱の素案の作成をお願いしたいと思いますので、よろしくお願いいたします。それでは最後ですが、次回の日程につきまして事務局から説明を頂きたいと思います。よろしくお願いいたします。
○企画官 次回の開催日時や場所につきましては、ただいま調整中ですので、追って事務局より御連絡させていただきます。
○岩村会長 それでは、第3回過労死等防止対策推進協議会はこれで閉会とさせていただきます。今日はお忙しいところ、ありがとうございました。
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