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2012年12月19日 第24回ヒト幹細胞を用いる臨床研究に関する指針の見直しに関する専門委員会 議事録

医政局

○日時

平成24年12月19日(水)15:00~17:00


○場所

航空会館(7階)702・703会議室


○出席者

永井委員長、位田委員、伊藤委員、高坂委員、佐多委員、佐藤(陽)委員、澤委員、直江委員、中畑委員、西川委員、早川委員、町野委員、松山委員、武藤委員、森尾委員
山中参考人
原医政局長、神田審議官、佐原課長、荒木室長、原専門官

○議題

1)見直し案について
2)その他

○議事

○原専門官 ただ今から、第24回「ヒト幹細胞を用いる臨床研究に関する指針の見直しに関する専門委員会」を開催させていただきます。先生方には、お忙しい中をお集まりくださいましてありがとうございます。本日は、(独)国立成育医療研究センター斎藤博久委員、東京学芸大学教育学部の佐藤雄一郎委員、(独)医薬品医療機器総合機構の鹿野真弓委員、慶應義塾大学医学部の須田年生委員、読売新聞社の本田麻由美委員から御欠席の御連絡をいただいております。20名の委員のうち、15名の委員に御出席いただいており、本会議は成立しておりますことを申し上げます。本日は、参考人として1名の先生に御出席をいただいております。京都大学iPS細胞研究所の山中伸弥先生です。
 頭撮りはここまでとさせていただきます。ここからは、座長の永井委員長に司会をお願いいたします。
○永井委員長 事務局から、本日の資料の説明をお願いいたします。
○原専門官 資料の確認をさせていただきます。議事次第、座席表、委員名簿・参考人名簿があり、続けて資料となります。資料1「iPS細胞ストック構築の概要について」、資料2「ヒト幹細胞を用いる臨床研究に関する指針改正イメージ案」、資料3「前回までの専門委員会における主な意見」です。そして参考資料1から17を紙ファイルで配付しております。参考資料については、委員会終了後、机上に置いたままで、お持ち帰りにならないようお願いいたします。以上です。過不足、落丁等がございましたら事務局までお申し出ください。
○永井委員長 本日の議事を始めさせていただきます。最初に、山中先生からiPS細胞ストック構築の概要について御説明いただきます。山中先生よろしくお願いいたします。
○山中参考人 京都大学iPS細胞研究所の山中伸弥です。本日は、貴重な時間を頂きましてありがとうございます。また、この場をお借りいたしまして、多くの方の御支援によって、今回ノーベル賞受賞に至りましたことを心より御礼申し上げます。
 本日は、今、私たちiPS細胞研究所で計画をしております、再生医療用のiPS細胞ストックの構想について、また、間もなく開始いたします準備研究について、そして最後にその上での私たちからのお願いについて簡単に説明させていただきます。iPS細胞の医学・創薬への応用としては、ここにあるとおり、患者さんにiPS細胞由来の細胞を移植する再生医療と、それから病態モデルを作って治療薬を開発するという二つの大きなアプリケーションが考えられます。この再生医療について本日はお話いたします。
 この再生医療に関しては、iPS細胞とES細胞は似ているのは間違いないのですけれども、本当にiPS細胞がES細胞と同等の細胞か、ES細胞に将来置き換わることができるかということに関しては、この数年間大きな議論になっております。iPS細胞には、初期化の過程で何らかのゲノムの異常や、エピゲノムの異常が入るのではないかという報告もこの数年あります。しかし、同時に必ずしもそうではないと。初期化に新たなゲノムの損傷というのは必須ではないという報告も、例えばつい最近出た『Nature』にも報告されておりますし、また私たちが今投稿中ですが、11ラインのES細胞と、49ラインのiPS細胞を比較した結果、エピゲノムの明確な違いというのは存在しないことも分かってきております。少なくとも、選択された良いiPS細胞株とES細胞株の間には明確な差はないと私たちは考えております。
 こういった科学的な根拠を受け、実際にiPS細胞を使った再生医療の臨床研究・臨床試験が幾つか始まろうとしております。我が国においては、理化学研究所の高橋政代先生を中心とした加齢黄斑変性症に対する再生医療が、理研の倫理委員会では承認され、現在、先端医療センター病院の審査委員会で審議を受けているところです。来年度中の開始が期待されています。国外において、これは海外のメディアの発表ですので、それ以上の情報はありませんが、ACT社が、FDAにIND申請を既にしているという報道がありました。iPS細胞から分化誘導した血小板を用いた臨床研究・臨床試験が米国でも計画されているようです。このように、iPS細胞を使った再生医療というのは、決して遠い話ではなくて、もうこの数年以内に世界各国で臨床試験が始まると考えられます。
 今、御紹介いたしました二つ、少なくとも高橋政代先生のほうの計画については当面自家、患者さん御本人のiPS細胞を使う計画であると理解しております。自家iPS細胞は倫理的な問題とか、拒絶反応を回避できる利点はありますが、しかしCPC占有等に伴う莫大な費用と、数か月間の時間がかかってしまうという、実用面から考えると非常に大きな問題があり、将来、一般的な治療となるには、やはり現実性が少ないのではないかと考えています。そのために、私たちは他家移植である、iPS細胞ストックの構築も必要ではないかと考えております。他家になりますので、拒絶反応を軽減させるために、HLAホモドナーの方からiPS細胞を樹立し、HLAがマッチしたiPS細胞のストックを近い将来に供給したいと計画を立てております。
 そのための準備試験、フィージビリティスタディを間もなく開始したいと思っています。これは本番と同じ体制で、実際にiPS細胞を作ります。HLAホモドナーの方から、GMP規格でCPC内でiPS細胞を樹立し、その品質評価を徹底的に行う、また動物での安全性・有効性の検証を行うとともに、HLAホモドナーの免疫学的な有効性を検証しようというのがこの準備試験です。こちらについては、本年9月に京都大学の医の倫理委員会にて承認を既に受けております。
 まず、ドナーのリクルート、HLAホモの方をどうリクルートするかであります。今後5年ぐらいの短期目標は、HLAホモドナーの方を、日本人の頻度の高い順に、パプロタイプ5から10種類ぐらいのドナーを集めようと。それによって日本人の30~50%がHLAに関しては適合したiPS細胞を供給できるという計算になります。具体的には、京都大学医学部附属病院で、過去にHLA検査をした方の中で、この準備研究に自発的に同意を頂ける方から採取する。こちらは、先ほど申しましたように、京都大学の医の倫理委員会で既に承認を受けており、現在、実際にドナーのリクルートを進めているところです。
 もう一つは臍帯血バンクと連携し、例えば10年保存期間が過ぎて、臍帯血移植としては使用しなくなったサンプルの中から、HLAホモのものを、iPS細胞作製に転用させていただけないかということを、現在、臍帯血バンクや厚生労働省の担当者と相談しているところです。更に長期の、これから10年、若しくはそれ以降の目標は、HLAホモドナーを150種類ぐらいにハプロタイプを拡大し、それにより日本人の90%以上をカバーするストックを作っていきたいと考えております。これだけのHLAホモの方を見つけるためには、数十万人の方のサンプルが必要ですので、ゼロからスタートするわけにはいきませんので、日赤の様々な事業や、臍帯血バンクとの本格的な連携を、今後お願いしていきたいと考えております。
 次に作製方法です。GMP規格でiPS細胞の樹立方法を既に確立しております。現在、二つの方法で樹立の準備をしております。一つはフィーダー細胞を用いた、いわゆる従来法といいますか、初めてのiPS細胞の論文を2007年に報告しましたが、その中で用いている方法と基本的に同じ方法です。こちらは、フィーダー細胞を用いますが、このフィーダー細胞については、既にマスターセルバンク化が完了していて、CPC内への持ち込みが終了しております。また、使用する培地等についても、PMDAと相談して、GMPに準拠することを確認しつつ準備をしております。
 もう一つは、フィーダーフリー法、ゼノフリー法です。こちらは、国内の大手企業と共同研究していて、国産の培地を既に開発しておりますので、こちらを使ってフィーダーフリー法、また、マトリックスも国内の技術を用いたマトリックスを用いることにしています。これら二つの方法で、私たちの研究所の中のCPCが既にバリデーションも完了し稼働しておりますので、こちらで、それぞれのドナーから各30クローンを樹立しようというのが、この準備研究の戦略です。
 こうやって1人のドナーから二つの方法で各30クローンずつのiPS細胞を樹立し、ここに示したような徹底的な品質の評価、ホールゲノムシーケンスを含む評価を行います。また、サイラ内外で再生医療を目指している様々の共同研究者に、このiPS細胞を配布し、それぞれの細胞への分化能の評価や、また動物を使った前臨床試験で、安全性や有効性の評価を行っていただく予定です。
 同時に、このiPS細胞とヘテロで一致している方のリンパ球を採取し、それとiPS細胞由来の分化細胞とを混合培養することによって反応試験を行い、HLAホモドナーの免疫学的にどれほど実際に有効なのかという評価も行っていく予定です。
 国内外の研究者に配布すると申しましたが、具体的には京都大学では高橋淳先生がパーキンソン病をされていますが、あとは江藤先生の血小板の計画があります。慶應大学の脊髄損傷、理研の網膜変性疾患、慶應や阪大の重症心不全、阪大や慶應の角膜疾患といった、多くは文部科学省のハイウェイで既に前臨床研究が進んでいる所と連携し、このiPS細胞の評価を行っていく予定です。
 最後にお願いですが、今回は飽くまでも準備研究です。進捗状況については、現在、ドナーのリクルートを進めているところです。最初のドナーからは、来年中に各方法でiPS細胞30株を樹立し、来年中に評価を少なくとも開始する見込みです。その結果が良い場合、悪い場合のどちらも含め、速やか、かつ真摯に報告していきたいと思います。iPS細胞は使えないということであれば、その旨はきちんと報告したいと考えております。しかし、オプティミスティックな方向に話が行った場合は、もしかすると今回の準備研究で、良好なiPS細胞株が樹立される可能性もあると考えております。
 その場合、先ほどお示ししましたような再生医療を目指している共同研究者が、これらのiPS細胞株を使って、前臨床研究のデータを蓄積されるわけですので、それを踏まえて、今回作製するiPS細胞株に良好な株があった場合ですが、それを用いた臨床研究申請を、各先生方が申請できるという仕組みを何とか御検討いただけないかというのが、私たちからのお願いです。御存じのように、現行ではiPS細胞を作製するところから一括して審査される仕組みが想定されるのですけれども、そうなってしまうと、仮に今回良好なiPS細胞ができても、一から、もう一度iPS細胞を作るところから始めて、もう一度評価から全部やり直すことになってしまいますので、何とかこのような仕組みの御検討をいただきたいと考えております。以上、非常に簡単でありますが、現状の御報告を申し上げました。
○永井委員長 どうもありがとうございました。今の御説明に対し、御質問、御意見等をお伺いいたします。
○佐藤(陽)委員 GMP規格でのiPS細胞樹立というお話だったのですが、本来の医薬品のGMPの意味ということから考えると、最終製品を恒常的に安定的に生産するための体系としてGMPというものがあるわけです。ということは、最終製品というものがまずあって、それを再現性高く生産するための仕組みという形だと思うのです。ご発表にあったGMPというものの定義というのは、いわゆる医薬品のGMPではなくて、京都大学の前川平先生が提唱されているような、Institutional GMPというような形であると考えてよろしいのでしょうか。
○山中参考人 おっしゃるとおりであり、PMDAの方からも、飽くまでも審査というか、評価するのは最終産物であると。iPS細胞というのは、言わば原料であるということは明確に言っていただいておりますので、飽くまでも準拠といいますか、レコードがトラックできるといいますか、そういう意味ですので、GMPというのはちょっと言いすぎかもしれないです。
○早川委員 今のGMP規格のところのスライドに関連しての質問です。フィーダー細胞有りというのと、フィーダーフリーというのを、各30クローンずつという、ここの狙いというか意図はどういうことなのでしょうか。
○山中参考人 これまでの研究で、同一ドナーから同一方法で作ったiPS細胞であっても、ある程度のばらつきがあることが分かってきております。今回は、各方法で30クローンずつ作って、それを評価して、その中でどれだけの割合がES細胞と同等なものがあるのか、どれだけのものが私たちがバッドクローンと仮に呼んでおります、再生医療には使用できないクローンであるのか、そういう評価をきちんと行いたいというのが狙いです。
○早川委員 理想としては、最終的にはフィーダーフリーのほうで良いのが取れれば、そちらに絞り込むと理解してよろしいでしょうか。
○山中参考人 飽くまでも最終目標はフィーダーフリー、ゼノフリーです。しかし、今、フィーダーフリー、ゼノフリーというのはいろいろな方法があり、どの方法が一番良いのか、またその安定性についてもまだまだ確認できていないところでありますので、少なくとも私たちの経験では、常に安定した結果が得られるフィーダー法も、言わばコントロールといいますか、ある意味保障として併用しようと考えております。
○早川委員 フィーダー有り、それからどういう培地を使うかでも非常に大きな影響があると思うのです。どうしてもフィーダーあるいはその培地の中に、多少でも動物由来の製品が混じっていると影響があります。このフィーダー自体は動物由来のものでしょうか。
○山中参考人 マウスの細胞です。また、ウシ由来のアルブミンが培地に含まれております。
○早川委員 今、一番問題になっているのは、動物由来の製造関連物質が入っている場合に、例えば大事な糖鎖構造が、かなり動物の糖鎖構造に置き換わってしまうことが明らかになっています。もし、これを評価系に使うのであれば、動物抗原が入っていても入っていなくても、できた分化細胞の機能ということでいいと思うのです。一方、ヒトに投与することを前提にした場合には、最初から免疫原性を避けたい。ここでアロを使うということは、抗原性の問題があるわけです。それを避けるために、こういうホモのストックを作っていくという趣旨ですから、動物抗原の入っている、つまりヒトiPS細胞ではなくて、ゼノiPS細胞になってしまう培養方法は、もともとのホモのストックを作っていく趣旨からは離れていくことになるかと思います。そこは、是非フィーダーフリーのほうで確立をしていただくことが、非常に長い目で見たときに大事なことかと思います。
 それから、アロでやることの一番大きな目的、自己でないものでやるときの一番大きな目標は、非常に多くの患者さんに普及していくことにあるかと思います。最初から問題があるような材料からのスタートは、できるだけ避ける方向で御検討いただければと思います。
○山中参考人 iPS細胞のリスクの面は、今、御指摘のあった感染症のリスクと、それから腫瘍を作るという大きなリスクが二つ考えられています。感染症の面からは、ゼノフリー、フィーダーフリーが間違いなく優れておりますので、私たちもその方向で考えております。腫瘍のほうについては、完全な初期化が得られたものが、腫瘍の可能性は減っていきますので、その完全な初期化を達成するために、フィーダー法では、ある程度今まで実績があるのですが、フィーダーフリー法がそれに匹敵するかどうかという観点を今回は調べようと思っています。腫瘍原性という観点からも、フィーダーフリー法が上回ることが確認できましたら、そちらのほうに全て移っていきたいと考えております。
○早川委員 申し訳ないのですが、抗原性の問題があって、こういうストックを作ろうということでありますので、抗原性の原因になるゼノを使った培養、あるいはフィーダーということも考慮していただきたいという意味です。
○山中参考人 分かりました、ありがとうございます。
○西川委員 山中さんが考えているのは、このハイウェイなどのように、医師主導の臨床研究とは違って、PMDAと、基本的にはもう少し治験レベルの臨床研究という意味ですか。ハイウェイだと、基本的にES細胞のほうもOKにしているし、これはほとんど問題はないわけですよね。
○山中参考人 当初は、医師主導の臨床研究でも使われることを念頭に置いておりますが、最終的にはより一般的な治療の際に、自家ではどうしようもないということが前提ですので、治験を経て、将来的にはより大きな治療にしたいと。そのために特許面等も、例えばベクター一つを取っても、できるだけ特許の制約のないベクターを今はあえて使っていますので、飽くまでも最終目標は大きいものになります。
○西川委員 そうだとすると、日本の場合はちゃんと二本立てで、医師主導で、今日議論されているヒト幹というのがあってというスキームに関して、私は余り問題は起こってこないだろうと思います。次の問題になると、これはちょっと違う仕組みで議論しないと難しいかなという感じがします。ここで皆で決めて、PMDAの人、聞いてくださいという話にはなかなかならないと思います。
○早川委員 これ、飽くまで最終的にはできるだけ多くの人に製品を普及するということです。それが一番理想的な形は、治験の段階が医師主導であれ何であれ、最終的にはある企業がちゃんと製品を作って、それを恒常的に患者さんの元に届ける。これが基本中の基本だと思います。恒常的に製品を届けるための、もう一つの基本は、その会社なら会社ごとに、自分たちの製品のライフサイクル、いつまで使うのか、10年か20年か分かりませんけれども、ライフサイクルを通じて、その製品が恒常的に生産されることがとても大事なことです。医薬品の場合、まず、有効性・安全性が証明された製品として評価され、それを品質的に担保するという形で承認されるわけです。
 そのときに、品質的な面で見たときの一番大事なところはもちろん最終製品になるのですが、こういう場合にはプロセスがプロダクトと言われている側面もありまして、プロセスの恒常性が非常に大事なわけです。プロダクトだけで全てのキャラクタリゼイションをいちいちやれません。そのプロセスの中で最も大事なのは、マスターセルバンクと呼ばれるもので、それが動くとプロセスも変えなければならないし、新たな製法由来の製品を旧の最終製品に合わせようとすると非常に大変です。
 そういう意味でのマスターセルバンクというのが一番大事なわけです。そのマスターセルバンクは、個々の、例えばメーカーであればメーカーが、自ら全ての責任を持ってこの製品を販売している間中管理するというのが鉄則です。これを外れると、つまりその会社自体はその商品を失うという話になります。会社がそれを存続したいと思っている間中はそういうことです。
 そのマスターセルバンクは会社が管理しなければいけないものです。その会社が管理するマスターセルバンクの素材は、例えば原材料として山中先生のストックから取ってくるということは当然ありです。取ってきて、マスターセルバンクにした以上は変えられない。変えるとすると、相当厳密な試験をもう一度やり直ししなければいけないということです。
 もう一つは西川先生がおっしゃったように、例えばヒト幹の中での話で、臨床研究でやるという場合の方策は少し違ってもいいかも知れません。臨床研究でやるという、ここのスライドに研究推進のための協力体制というのがあります。この各チームが正に今京大のサイラでエスタブリッシュしたこのバンクを、変わらず最後まで臨床研究をやり続ける間中、それはそれとしてキープして、それをベースにしてやることにおいては、理屈に合っているというか、科学的にもそのとおり大丈夫だと思うので、最後の、先生の共同研究者によるというのがありましたが、これは別に定めたストックが出発点ということがはっきり分かっていればいいことのように思います。そういう区別をしておかなければいけないということです。
○西川委員 山中さんの話を聞いていると、もう少し違うマスターセルバンクは将来的なものを考えているとすると、これは我が国で初めてのことをやるわけです。誰も、教科書も経験もない状況で新しいものを作るときに何をすればいいのかという知恵は要ると思います。たぶん山中さんの所でも、最初からPMDAの事前相談レベルではなくて、もっとジョイントプロジェクトとして最初からやっていく。そこの物の見せ方。それから、山中さんが基本的に自信のある細胞が作れるというのは分かるわけなのですから、それがほかの人間にどうコンビニエンシングなものになっていくかということが一番のキーです。
 しかも、日本の場合きちんとした規制を持っているわけですから、ここだけちょっと規制を外してくださいではなくて、要するに新たなものをきちんと作り上げていくのだと、それも迅速にやるのだという、何か知恵を結集しないと、という感じはちょっと受けます。
○中畑委員 確かにiPSを使った臨床研究なり、臨床治験というのは初めてのことですので、従来の仕組みではなかなかうまくいかないと思うということで、特に治験ということになると、PMDAが一緒に新たな仕組みを作っていかないと、恐らくこれからは成り立たないと思います。幸いPMDAの中に、御存じのような科学委員会ができて、その中に再生医療の部会ができて、現在そこで検討が始まっています。早川先生がおっしゃるように、従来は最終製品が、例えばGMP基準でしっかり作られていることが一番基本なわけですけれども、それだけでいいかというと、やはり作るときからGMP基準にできるだけ沿ったような形で作らないとまずいだろうということもあります。
 現在、PMDAの方がサイラに既に30人ぐらい来られています。一緒にiPSを作るところからPMDAと検討していきたいという形で、PMDA側も今は非常に積極的で、既に30人ぐらいの方が見学に来て一緒に問題点を指摘し合っていく形で進んでいます。iPSを使った臨床研究という場合は、PMDAの仕組み自身も、今回新たに一緒に作っていく形でいかないと、従来の方法だとなかなかそういう医療には最終的にならないのではないかということを考えております。
○早川委員 今、従来の方法ということをおっしゃったけれども、従来の方法で対応できないという意味が私にはよく分からないのです。どなたがどう考えようが、ヒトに投与するのはiPS細胞ではなく最終製品であって、その製造用細胞基材のゴールデンスタンダードとしてマスターセルバンクがなければいけないという従来からの方策は世界の常識ですので、これから誰かが、その方策の是非を論ずるというような話では全くありません。
 その従来の考え方の中で、先ほど西川先生がおっしゃったように、それではそういうゴールデンスタンダードに、例えばサイラのものを、場合によっては採用するかもしれないということですよね。それは採用した途端に、その企業なり、言わば製造販売業者が責任を持つべきことであると。これは、日本の中では変わりようのない話ですので、従来も今回も何もなくて、全く科学的にもそうしなければ、患者さんに一定の製品は届けられないということであります。知恵を絞るとすれば、サイラのストックがどれだけ良い物ができるか、それを、例えば製品を開発したいと思っているメーカーなりが利用しようと思うか、これは企業化ということを考えた場合の話ですが。研究者のレベルはそれで取りあえず自分たちのグループ内での研究期間の範囲でいいということであれば、それでいいと思うのです。その代わり、使用の間、サイラのストックは変わらないということが前提でないといけないと思います。
 それから企業化の場合は、企業がそれをよしとして、自分たちでゴールデンスタンダードにする、そう決めるかどうかというだけの話です。従来も今回も特別なことは何もなくて、これは素材提供としてのアイディアの一つなのだと思っています。
○高坂委員 山中先生の最後のお願いのところなのですが、申請が可能となる仕組みということです。今までにある指針でも、これは駄目だということを言っているわけではないのです。平成18年に中畑委員長の主査の下で作ったものについては、例えば樹立機関と使用機関と分かれて、樹立したものを貰って使用機関でやるということは、一応可能とする仕組みとしては、そこで研究代表者、申請される研究代表者が、例えば樹立機関で細胞を樹立するところに深く関わるというような、責任を持ってその樹立をされているということを見るか、あるいは自分も手を出して樹立に関与するか、直接的に関わっているような場合には、使用機関と樹立機関が分かれていても問題ないという理解で、この指針が作られていると思うのです。それを運用上少し文言を訂正するなりすれば、先生がおっしゃったことは十分可能になるのだろうと思います。
○山中参考人 ありがとうございます。私たちが懸念というか、心配しておりますのは、今言っていただいたように、二つの機関に跨るということは何とかお認めいただけるのかと思っています。もう一つの問題は、既にできている細胞を使うというところが、今の指針で認めていただけるのか。従来の指針でしたら、これからA機関で作って、B機関で移植しますということであれば、恐らく認めていただけるのではないかと思うのです。そうではなくて、過去にA機関で作ったものを使って、これを移植に使いますという申請が認められるかどうかというところが、現行の指針では駄目なのではないかと。
○高坂委員 松山さんが詳しいと思いますけれども、そこは運用上うまくできると思うのです。それがES細胞の場合には、正しく先生がおっしゃったような運用をしないと、これはそれぞれの機関でES樹立ということは不可能なので、現実的には先生がおっしゃるように運用上はなっていくのだろうと思っています。
○松山委員 高坂先生のお話を受けてなのですが、マインドとして方向性としてはエスタブリッシュされたiPS細胞株を使えるというのは、本来指針の方向性であろうと。ただ、見ていると臨床研究というのは飽くまでも一つの研究機関で一気通貫という前提で作られていた指針なので、なかなか文面上では読み切れないところと、実際難しいところがあります。
 それから、原材料としてのiPSストックの利用という形を、例えば一文入れていただくような形であれば十分であろうと。そのときに、早川先生がおっしゃるような、将来的に薬事法に通すのであれば、実際に製造販売する所が、受入基準としてiPS細胞ストックの基準を設ければいいわけです。将来的にそういう一文を入れていただければかなり明確になるし、これはヒト幹の指針のマインドを全く変えるものではないと思います。
○早川委員 枠組み検討会のときに、多施設でいいという話がもともとありました。それで、そこがコンセンサスになって、序文に、このヒト幹の中に書いているかどうかは別にして、例えば共同研究者であっても、従来作ったものであっても、その中身が明確であって、そこから出てきた製品で斯く斯く然々の臨床研究をやりますということであれば全然問題ないのではないかと思います。
○永井委員長 そろそろ次の事項がありますので、手短かに発言をお願いいたします。
○佐多委員 リスクのところで感染症のところなのですが、今のドナースクリーニングのところは、輸血とか、細胞の移植とか、そういうものをベースにこれは考えられていて、iPSで皮膚を材料にするという場合だと、今度はそこに引っ掛かってこないポリオーマだとかパピローマだとかそういうのが入ってきて、そこを最後にスクリーニングしていただいて、そういうものがないということのデータを是非積み上げていっていただきたいというのが希望です。今どれぐらいのデータがあるのですか。
○山中参考人 私の説明不足だったのですが、いろいろなオリジンを比較した結果、末梢血由来のiPS細胞は非常に品質が高いというデータが得られております。また、侵襲の少なさからも、この研究では末梢血と臍帯血を用いる計画になっております。
○町野委員 高坂委員と松山委員がおっしゃられたとおりだと思うのです。これは臨床研究の指針ですから、もともとは植えるほうといいますか、使う側についての指針なのです。ただ、最初にできたときには、こういうことは余り考えていなかったので、あるヒトから細胞を獲得して植えるという一連の過程をやったにすぎないので、むしろこちらのほうといいますか、植えるほうが中心のはずなのです。
 その限りで問題はないと思うのですけれども、今拝見いたしますと、指針の第5章以下が非常に簡単な部分しかないのです。それでインフォームド・コンセントの内容としては、こういうことで作られた幹細胞であるということを告げなければいけないので、その点の整備は最低限必要ではないかと思います。
○永井委員長 レトロウイルスは除外するということでよろしいのでしょうか。
○山中参考人 インテグレーションのない、プラスミドを用いて作ります。エピソーマのプラスミド、また、完成したiPS細胞については、プラスミドの混入がないということも確かめます。
○永井委員長 腫瘍性の検定をどこまでされるかという点についてはいかがでしょうか。○山中参考人 それは疾患によっても違うと思うのですが、基本的には各疾患で実際に移植する細胞を各先生に作っていただいて、前臨床研究で見ると。
○永井委員長 まず、そこで確認するということでよろしいわけですね。
○山中参考人 はい。ただ、動物で見るといっても1年、2年が限界ですので、リスクはゼロにはなりません。万が一腫瘍等が発生したときに、迅速に対応できるという、そういうことが担保されているものから、実際は応用されるべきだと考えています。
○早川委員 iPS細胞で、造腫瘍性の、臨床上の強さ弱さを判定しようとしているわけではありませんね。
○山中参考人 最終産物で判定いたしますが、iPS細胞の段階でも、明らかにこれは駄目だということは予想できるものがありますので、それは弾いてしまいます。その上で、最終産物で検討していただきます。
○位田委員 現在、iPSを作るもとの体細胞の提供者とは、連結がずうっと続いているのでしょうか。
○山中参考人 今回の申請では、最終的には連結が可能な形でしております。なぜかというと、今回の準備研究では臨床応用はしませんと明確に言っております。将来臨床応用する場合は、再び連絡させて頂く可能性がありますということですので、連結する形になっています。
○位田委員 今の臨床研究の指針の建前は、先ほど町野委員がおっしゃいましたが、どなたかから頂いてきた幹細胞を使って、それを自分若しくは他人に移植する。樹立そのものを規制するという部分は条文上はないと思うのです。ただ、インフォームド・コンセントがないと、研究用だと言って貰ったものを臨床には使えないのでということですから、もし連結できるとすると、研究用に作ったのだけれども、非常に良い細胞ができたので、もう一度ドナーに戻って同意を取り直すということが、今の話だと可能になると思うのです。それができれば、あとは安全性・有効性の基準で、この臨床研究指針でもクリアできるのかなと思うのです。
○山中参考人 指針等で再同意が要求された場合に、連絡が取れる形で今は進めております。
○武藤委員 京大で過去にHLA検査をされた方、あるいは臍帯血バンクのいずれにしても、提供された当時というのは別の目的でそこにサンプルを収められています。既にご検討中かとは思いますが、久しぶりに連絡があり、それでiPS細胞樹立への協力依頼の話を持ちかけられることになる点についての十分な御配慮を是非お願いいたします。
○山中参考人 その点については、研究所の中でも中畑先生を中心にかなり慎重に検討し、いかなるプレッシャーもドナー候補にかけることは避けなければいけないという点から、アプローチの仕方としては該当する人は複数いるのですが、そういう方々にこういう計画がありますと。もしこういう計画に参加・協力していただける可能性がある場合はこちらまで御連絡をくださいという形にしてあります。そこで、もし連絡がなかったら一切。今ちょっと言葉足らずでしたが、私たちはドナー候補から連絡がない限り、ドナー候補の情報は全くありません。最初にそういう連絡をされるのは、過去にそのドナー候補を実際に診療されて、HLA検査された診療科の、移植コーディネーターがいる場合は移植コーディネーターが、複数の方に個人を特定せずに、こういう研究があるので、もし協力していただける場合は御連絡くださいという形にしています。それで連絡があった場合のみ、私たちからその方に連絡をして、京都大学のiPS外来に来ていただいて、説明をして同意を取るという二段階で今は進めています。
○西川委員 御心配なく。基本的には直江先生もおられますけれども、骨移植の委員会、特にドナーの人というのはインセンティブが無茶苦茶高いと。
○永井委員長 この辺りの議論は今後も続くと思いますので、いずれ改めてお伺いしたいと思います。山中先生におかれましては、お忙しいところを本当にありがとうございました。
○山中参考人 どうもありがとうございました。
○永井委員長 事務局から見直し案についての説明をお願いいたします。
○原専門官 資料2です。資料2の構成を簡単に説明させていただきます。左側に指針改正イメージ案、右側には現行指針を示しています。アンダーラインは、これまでの本専門委員会で委員の先生方よりいただいた御意見を踏まえ、修正又は追加をした部分です。今回の主な改正点は中間報告にもありましたとおり、ES細胞を指針の適用範囲としたこと、そして幹細胞の樹立、分配等の過程における品質安全性等の確保といったことでした。これからは、これらの改正点、及びこれらに伴い修正又は追加した関連部分を中心に、順に述べさせていただきます。
 7ページです。ここから第1章の「総則」になっていまして、第2に「用語の定義」があります。
 8ページです。ES細胞を取り扱うに当たりまして、クローン技術規制法や、現在の文部科学省のES樹立分配指針を引用し、(2)にヒト受精胚の定義を置きました。
 9ページです。(7)研究機関ですが、ヒト幹細胞臨床研究を実施する機関(ヒト幹細胞若しくは採取時に既に分化しているヒト細胞を採取する、ヒト受精胚の提供を受ける、又はヒト幹細胞等を調製する機関を含む)としています。また、(11)提供者では、ヒト受精胚を提供する者を追記しています。
 11ページです。臨床研究に関する倫理指針を引用し、(22)に匿名化、(23)に連結可能匿名化の定義を設けました。これまでの御議論により、個人情報の保護及び提供者から被験者までの安全性を確保することを目的に、原則連結可能匿名化することを後に規定するためです。
 13ページです。第5の「対象となるヒト幹細胞等」については、現行指針では、細則にヒトES細胞を用いる臨床研究は実施しないこととされておりましたが、修正案では細則を削除し、ヒトES細胞を用いた臨床研究も対象としました。
 14ページです。第6「基本原則」の4、インフォームド・コンセントの部分です。現行では、説明者は原則医師でなければならないとされていましたが、修正案では、説明者は研究責任者又は研究責任者の指示を受けた者で、職務上、守秘義務を負う者と規定しました。また、修正案での細則では、説明者は適切な教育又は研修を受け、当該臨床研究を熟知した者としています。
 5のヒト幹細胞臨床研究に用いるヒト受精胚です。文部科学省のヒトES細胞の樹立及び分配に関する指針の該当箇所を引用し、ヒト幹細胞臨床研究に用いるヒト受精胚は、生殖補助医療に用いる目的で作製されたヒト受精胚であって、当該目的に用いる予定がないもののうち、提供する者による当該ヒト受精胚を滅失させることについての意思が確認されているものであることを規定いたしました。
 33ページです。この部分は第2章「研究の体制等」の第1「研究の体制」における研究機関の長の責務に該当する部分になります。責務の1つとして、(2)倫理審査委員会の設置を規定しているところですが、研究機関の長は、倫理審査委員会の委員に対して、恒常的に教育及び研修を行わなければならないことを規定いたしました。
 これに関連しまして、42ページです。同じく「研究の体制」における8の倫理審査委員会の要件に該当する部分です。倫理審査委員会の業務の一つとして、ヒト幹細胞臨床研究が適正に実施されるために、恒常的に適切な教育又は研修を受け、情報収集に努めることを追加いたしました。
 44ページです。ここからは第3章「ヒト幹細胞又はヒト分化細胞の採取」に関する部分となります。改正案では、ヒト受精胚の提供を追記しています。第1「提供者の人権保護」の2、インフォームド・コンセントの部分では、ヒト幹細胞等の提供を受ける場合は、原則として文書によるインフォームド・コンセントを受けることを規定いたしました。ただし、以下の細則で規定する場合を例外として認める案としています。具体的には、臨床研究に関する倫理指針の第5「資料等の保存及びほかの機関等の資料等の利用」の(2)人体から採取された試料等の利用から引用した内容です。細則の文章として、2のただし書に規定する場合は、次に掲げる要件のいずれかを満たしていること。また、倫理審査委員会の承認を得て、研究機関の長の許可を得ていること。(1)当該ヒト幹細胞等が匿名化されていること。(2)当該ヒト幹細胞が(1)に該当しない場合において、ヒト幹細胞等の提供時に当該臨床研究における利用が明示されていない研究についての同意のみが与えられている場合は、次に掲げる要件の全てを満たしていること。ア、当該臨床研究の実施について、ヒト幹細胞等の利用目的を含む情報を公開していること。イ、その同意が当該臨床研究の目的と相当の関連性があると合理的に認められること。(3)当該ヒト幹細胞等が(1)又は(2)に該当しない場合において、次に掲げる要件の全てを満たしていること。ア、当該臨床研究の実施について、ヒト幹細胞等の利用目的を含む情報を公開していること。イ、提供者又は代諾者が、それぞれ当該臨床研究でのヒト幹細胞等の提供者となることを拒否できるようにすること。ウ、公衆衛生の向上のために特に必要がある場合であって、提供者の同意を得ることが困難であること。以上が、細則に規定した例外事項です。
 45ページの3、提供者の個人情報の保護についてです。(1)で、提供者の保有個人情報については、匿名化を行った上で取り扱うものと規定しております。また、提供者の安全性を確保するため、原則として、匿名化は連結可能としました。ただし、ここでも細則で規定する場合を除く例外を認める案としております。
 細則として、(1)のただし書に規定する場合は、次に掲げる要件の全てを満たしていること。また、倫理審査委員会の承認を得て、研究機関の長の許可を得ていること。(1)第4章に掲げる品質管理の項目を満たしており、被験者等に被害が及ばないこと。(2)被験者の人命を保護する上で極めて重要かつ緊急性を有するものであって、難治性疾患の治療等、公共の福祉の追求の上で特に重要であること。以上を細則として挙げております。
 46ページ、4の提供者等に対する説明事項の?です。提供者に対する同意の撤回については、いつでも可能とされている現行指針内容から、これまでの御意見を踏まえ、ヒト幹細胞等が採取若しくは提供される機関より調製機関に移送されるまでとしています。 
 47ページ、提供者等に対する説明事項の?です。これまでの御意見や文部科学省の指針を踏まえ、ヒト幹細胞から有用な成果が得られた場合には、その成果から特許権、著作権その他の無体財産権又は経済的利益が生ずる可能性があること及びこれらが細胞の提供者に帰属しないことを規定いたしました。
 49ページ、ヒト幹細胞等の採取又は提供段階における安全対策等のうち、1の提供者の選択基準及び適格性に関する部分です。(2)に規定する感染症関連項目については、参考資料17のヒト組織を利用する医療行為の安全性確保、保存、使用に関するガイドラインにおけるスクリーニング項目を参考に、今回クラミジアは削除しております。
 今回の修正案での追加項目として、次の50ページの?に重篤な遺伝性疾患があります。
 51ページ、第3「提供を受けたヒト幹細胞等の移送」に関する規定です。(1)樹立を含む調製機関への移送に当たっては、幹細胞等の取り違えや交差感染の防止策を含む、手順書及び記録を作成して保管することを規定いたしました。また、(2)提供機関及び調製機関は、幹細胞等の移送に当たり、本指針への適合性について、文書により互いに確認することとしました。
 55ページです。こちらは第4章「ヒト幹細胞等の調製段階における安全対策等」の第1「調製段階における安全対策等」の部分です。7の配送については、その間のヒト幹細胞等の品質を保つために必要な措置を講ずることとしていますが、具体的措置の例については、御覧のように細則に設けることとしています。
 58ページです。こちらは第5章「ヒト幹細胞等の移植又は投与」の段階における「被験者の人権保護」のうち、被験者となるべき者に対する説明事項のリストになります。?の予期される危険性に加えて、?で、予期されない危険が生じる可能性があることを説明するように規定しました。
 60ページです。「移植又は投与段階における安全対策等」に関する部分です。4のリスク最小化を追加しました。ヒト幹細胞臨床研究が被験者に与えるリスクを最小化することに配慮して、研究計画を作成することを規定しました。これまでの御意見として、「リスクマネジメントプランの考えが重要ではないか」というものがございまして、それを踏まえたものです。主な変更、修正箇所については以上です。
○永井委員長 どこの部分でも結構ですので、御質問、御意見をお伺いしたいと思います。いかがでしょうか。
○高坂委員 大分まとめていただきまして、ありがとうございました。最も大事なのは44ページだと思うのですが、今の細則のところで1つ疑問があるのは、(1)で、「当該ヒト幹細胞等が匿名化されていること」と。その場合に「連結不可能匿名化又は連結可能匿名化であって対応表を有していない」というのは、おかしいですよね。対応表を有していない場合は連結不可能なので、連結可能というのは必ず対応表はないといけないわけです。これはどういう意味ですか。
○原専門官 法人として、研究に直接関与しない、第三者が保管管理している場合を想定しているものです。
○高坂委員 今のゲノム指針で。それはもう決まったのですか。法人という意味なのですね、分かりました。
 それから、(2)です。研究に使っていいですというものを、この臨床研究に使うことを想定しているのではないかと思うのですが、この場合に、「ヒト幹細胞等の提供時に当該臨床研究における利用が明示されていない研究についての同意のみが与えられている場合は、次に挙げる要件の全てを満たしていること」の中で、(3)のイに、「提供者又は代諾者が、それぞれ当該臨床研究でのヒト幹細胞等の提供者となることを拒否できるようにすること」と書いてあります。ところが、これは最初の段階は連結不可能匿名化でやっているのです。したがって、これは当人が駄目だと言いたくても、どの樹立したものがそうだと、該当が分からなくなってしまっているので、現実問題としては、これは不可能なのです。そこは考慮しなくてはいけないと思います。
 それから、前回議論した同意の撤回は、樹立するところまでだというのを早川先生も含めて、相当議論させていただいたのですが、そこがまだ反映されていないですね。そこら辺について、疑問に思いました。
○原専門官 後半部分の同意の撤回については、今ほど申し上げた主な改正事項に少し触れさせていただきまして、これまではいつでもということでしたが、46ページの?の部分ですが、この度、「調製機関に移送される前まで」と書かせていただきました。
○高坂委員 いずれにしても、前回も議論したとおり、最初は研究にだけ使っていいということで同意を得ているものについて、臨床にまで使っていいということを認めていただくには、相当に高いハードルが必要なのです。それをこういった形で細則で規定して、この全てを満たした場合には使っていいというのは、そういう結論であればいいのですが、ここは非常に丁寧に議論しておく必要があると思います。
○松山委員 高坂委員がおっしゃったことは、正におっしゃるとおりです。ただ、こういうところですと、完全に扉を閉めるかというと、そうでもないところがあって、特にベーシックリサーチで使われてきたES細胞というのは、非常に多くのサイエンティフィックな知見が積み上げられていて、一方で考えると、非常にセーフティネス、ディフィカシーに関しても信頼できるという発想もある。そこはトレードオフだと思うのです。
 こういうところは、これだったらイエス、ノーとどこまで具体的にいうのかというのは、非常に難しいところがあって、先生方の見識が問われるとは思うのですが、これは正に各IRBで認める。ここのところで、例えば先生がおっしゃった、最初の提供者、代諾者が拒否できるようにする。例えば墓地の改葬公告であれば三大紙に出せばいいとか、大体そういうような方向性があるので、そういうことを倫理委員会の先生が、こうこうこうだったら大丈夫だと。それを、例えば国の委員会に上がってきて、それでいいかどうかと二重審査するという考え方でもよろしいのかなと思います。いかがでしょうか。
○位田委員 倫理委員会にたくさん役割を投げないほうがいいと思います。つまり、指針でこういう基準を作っているから、倫理委員会はそれを適用して、指針に合致しているかどうかという話なので、倫理委員会に裁量を広く与えてしまうと、倫理委員会のほうが困りますし、恐らく機関ごとに基準が違ってしまって、審査の通りやすい委員会に行ってしまうことは、日本だけではなく、今まであちこちであります。指針は明確に決められるところは決めておいて、裁量を要する場合には倫理委員会に投げるのであれば、裁量の基準を決めておくことが必要かなと思います。
 42ページの一番下の?ですが、これは倫理委員会が行う業務ですので、「恒常的に適切な教育又は研修を受け」というのは、倫理委員会が受けるという意味になってしまうのですが、倫理委員会の委員が受けるということですよね。
○原専門官 はい。
○位田委員 それを倫理委員会の業務というべきかどうかというのは、概念的には少しずれるかなと思わないでもありません。「情報収集に努める」というのは、確かにそうだと思います。
 それと、他方で、例えば倫理委員会が適切な教育又は研修を行うということも考えられるかなと思います。つまり、研究者に対して、倫理委員会の業務としてという意味ですが、それも考えられるかなと思います。
 それから、50ページの?で「重篤な遺伝性疾患」が加えられましたが、これを入れるということは、ホールゲノムで解析するところもあると思うので、そちらはゲノム指針がカバーすると理解してよろしいのでしょうか。
 もう一つですが、45ページの3の(1)で、「匿名化を行った上で取り扱う」と。「原則として連結可能匿名化とする」とあります。「ただし、細則で規定する場合を除く」というのは、何に対して除くのかがよく分からなくて、つまり例外を決めるわけですよね。この条文だと、三つぐらいの可能性があって、匿名化に対する例外なのか、連結可能に対する例外なのか、連結可能匿名化という形を取るのか、どれを除いて細則のただし書が適用されるのか。これを読んだだけではよく分からないのですが。
○永井委員長 今の点についていかがでしょうか。
○原専門官 1点目の倫理審査委員会の件ですが、機関の長の責務の部分で、倫理審査委員会の委員に、教育や研修などの適切な措置を取るように、研究機関の長に対して、そういった規定を今回設けたという追加点があります。
 2点目の、50ページの?「重篤な遺伝性疾患」については、49ページにもございますが、詳しくホールゲノムの解析まではこちらでは求めておりませんで、既往歴の確認を行うとともに、問診などで、提供者としての適格性を判断する範囲のものになっています。
 三つ目の45ページの細則で規定する場合の例外ですが、こちらで書かせていただきました意図としましては、これまでの御議論より、連結可能性に対する除外規定と考えていただければと思います。匿名化は必ず匿名化で、個人情報は保護していただきまして、連結可能性に対して除外規定を設定しました。
○位田委員 ということは、連結不可能にしてもいいという趣旨ですか。
○原専門官 そうです。
○直江委員 先ほどの議論に戻りますが、44ページです。インフォームド・コンセントですが、この規定はこれから発足した以降に適用されるということになりますと、メッセージとして、過去に取られたものを目的外で使用するときというのは、例外的な規定だと思うのです。だから、これからは連結可能匿名化であって、先ほど山中先生がおっしゃったように、どうしても過去の検体で、研究だけの目的で取ったものを臨床に使うというときには、遡ってインフォームド・コンセントを取るのだと説明があって、納得したと思うのですが、そういうのが原則であって、過去のものをどうしてもという、こういう例外のときに認めるというのは、あくまでも例外だという書きぶりでないと、このままだと方向性がはっきりしないというか、こういうことであれば、例えば研究の方向性が明示されているとか、そういうことは非常に漠然としていると思うのです。
 だから、ここはあくまでも過去の検体に関して、匿名化で遡れない場合、連結不可能の場合には、こういう例外規定を設けて、この場合にはこうしなければいけないということを書いたほうがいいのではないか。こうだったら併記のような感じで、やらなくてもいいのではないかと読めるような気がするのですが、いかがですか。
○原専門官 既存の試料に限って、どうしてもインフォームド・コンセントが取れないといったような場合に限るということで、よろしいでしょうか。
○直江委員 もともと「原則として」と書いてあって、「細則で規定する場合は除く」という書きぶりなので、結局両方のトラックがあると読めるものですから、「過去に連結不可能匿名化で取った検体に関しては」ときちんと書いたほうがいいのではないかというのが、私の意見なのです。
○原専門官 貴重な御意見ありがとうございます。そのように誤解のないような記載にしていきたいと思います。
○武藤委員 先ほど位田委員から御指摘のあった50ページの?の「重篤な遺伝性疾患」の件です。もし先ほどの御説明のように、既往や家族歴を口頭で、あるいは問診で行うことに限定するのであれば、遺伝性疾患の検査を行うことへの誤解が生じないように明記されたほうがよいと思います。しかし、ゲノムの配列も見て、家族歴について確認する必要が今後あり得るということであれば、三省の「ヒトゲノム・遺伝子解析研究に関する倫理指針」や日本医学会「医療における遺伝学的検査・診断に関するガイドライン」との整合性の観点から、もう少し手当てが要るのかと思います。前からこちらで申し上げているように、このドナースクリーニングは、遺伝性疾患の検査の結果の返却における留意点と密接に関わりますので、解析を想定した対応については、ここに1つ項を立てて述べたほうがよいと思います。しかし、私の言っている後者は杞憂であって、想定する必要がないことでしたら、問診での確認と明言していただければと思うのですが、それはいかがでしょうか。
○原専門官 その点については、今後スクリーニングの段階で、ホールゲノムなどの解析も施設によってはされる場合もあるかと思いますので、文章についてはもう一度検討させていただきたいと思います。
○武藤委員 そうであれば、日本医学会のガイドラインの遵守を推奨してはいかがでしょうか。ただし、ゲノムの全体のスクリーニングとなってしまうと、やや手に負えないところが出てくると思います。
 もう1点ありまして、これは私も不勉強なまま臨んでしまったのですが、脳死臓器移植では、ドナーとレシピエントの間で匿名性を担保して、お互いの個人情報はもちろん、どこから来たどういった方なのかとか、お互いに探してはいけないという原則を厳格に運用してきました。今回は臨床研究ですが、将来は臨床に応用され、他家移植に用いることも視野に入れての改正ですので、ドナーとレシピエントのインフォームド・コンセントの中に、匿名性の原則を入れておいたほうがいいのではないかと思います。臨床研究への期待は極めて高くなっておりますなかで、レシピエントにはいろいろな結果が起こりうるということを考えたときに、御本人たちが匿名性の原則を理解した上で、臨床研究に臨まれることが非常に重要だと思いました。
 ほかの指針等で、そういった文言があれば、それを準用していただくことがよろしいかと思いますが、いかがでしょうか。
○原専門官 ほかに記載されている指針などを検索しまして、検討させていただきます。
○松山委員 今までの話と変わるのですが、先ほどiPSストック、原材料としてどうするかという話をさせていただいたときに、指針のマインドとして、患者から一気通貫だけではなくて、出来上がったiPS細胞を使えるようにしたらいいのではないかということで、御同意いただけているのかなと思っています。
 そうすると、指針でつらつらと説明していただいていると、なかなか読み込みにくいところもあるので、第3章ぐらいに、例えばiPS細胞株、ES細胞株を受け入れるという形で、一文入れさせていただいて、ただし、その細胞の品質の担保に関しては、第3章、第4章、第5章の該当部分を参照とするという形で入れさせていただければ、非常にありがたいと思います。この部分は、今すぐに文章が浮かばないので、事務局にお願いすることになるのかなと思います。
○原専門官 分かりました。
○町野委員 私はまだよく理解していないと思うのですが、44ページの細則の部分の趣旨です。細則の(1)というのは、提供を受けるときにこういうものであったとするなら、匿名化されている場合については、インフォームド・コンセントを要しないという趣旨ですか。
○原専門官 そうです。(1)についてはそのように読めるのですが、前提として、倫理審査委員会の承認を得て、研究機関の長の許可がなければいけないので、そのような場合は、臨床研究としては現在の倫理審査委員会では不適切と判断されるのではないかと考えています。
○町野委員 (1)の趣旨がそのような趣旨だとするなら、こういうときはインフォームド・コンセントは要らないから、文書による同意は全然要らないという話になりますが。これは前から申し上げているとおり、個人情報保護についてのインフォームド・コンセントの趣旨と、その人の体に対して何か侵襲を加えることについてのインフォームド・コンセントの、完全な誤解と言いますか、一つで考えているからこういう。これはかなりショッキングなことですよね、これだけを見ますと、連結不可能匿名化にすれば、黙って取っていいという趣旨ですからね。
 これはない話ですから、恐らくそういう趣旨ではないと思いますので、そこら辺をやっていただけたらと思いますが。
○原専門官 承知しました。
○町野委員 (2)以下の点については、確かに問題があるところなのですが、ここで個人情報保護の問題と、事前の承諾がなくてほかに転用できるかという、二つの問題があるわけです。個人情報保護は恐らく問題がないと思いますからよろしいのですが、2番目の、前から予想していたもものと違うところに使われるということについて、裏切られるという点について、これをどうするかということで、先ほど松山委員がおっしゃられたような考え方は、私は十分にあり得るのではないかと思います。
 というのは、倫理委員会に全部譲るのは非常に危険であるというけれども、結局本人の承諾がなければ、明示のそれがなければ絶対に駄目なのかというと、本人はそこまでの意思を持っていないことはかなり多いわけですよね。したがって、本人が恐らく異議を申し述べないだろうと思うわれることを倫理委員会が確認するということであるならば、私は松山委員のおっしゃられることもあり得るだろうと思います。
○永井委員長 先ほどの、対応表を持っていない場合も含めて、ヒト幹細胞を使ってよいということですから、確かに、匿名化ないし対応表を持っていなければ作ってよいという話になるわけですね。
○町野委員 採取についてのインフォームド・コンセントの話ですから、今からあなたの細胞を頂きますということについて、説明と承諾を得なければいけない、それは文書でなければいけない。しかし、匿名化されているときはそれは要らないという趣旨ですから、黙って取ってしまっていいということになってしまうわけです。恐らくその趣旨でないことは明らかなので。
○永井委員長 そこをもう少しきちんと説明していただけますか。
○荒木室長 先ほど直江委員からも御指摘がございましたように、原則は連結可能匿名化にするし、同意もしっかりと取るということなのですが、同意が取れない状況になってしまった既存試料についてということで、そこを明示的に書かないと、誤解を招くと。すり抜けてやろうというのはないとは思いますが、そういうことがあり得るということで。
○町野委員 (1)(2)(3)も、ここから先は全部既存試料の問題なのですね。だから、それはインフォームド・コンセントの例外と書くと、まずいのだと思います。
○永井委員長 むしろ、既存試料の取扱いなど、別の項目に立てたほうがよろしいということですね。
○町野委員 項目と言いますか、そのことを断った上で、明示的に書かないと、これはインフォームド・コンセントの例外の問題ではないですから。
○早川委員 私が理解しているかどうかは分かりませんが、提供者の人権保護と匿名化というのは違う話ですか。それとも、その中にインクルードができる話ですか。もしインクルードできる話だとすると、ちょっと意味が違います。細則の(1)というのは、いずれにしても全般的にこういうふうにしてくださいということですよね。匿名化は、こうしましょうということですよね。別の問題ですよね。多分、インフォームド・コンセントに対する細則で規定したいのは(2)の場合で、それだけを対象にして言わないと、ということです。1の匿名化の話というのは先ほどから御議論があるように、これを除外規定にしてしまったら、インフォームド・コンセントをしなくていいのではないかという話になってしまうから、細則の1の(1)は、別に匿名化の必要性についてきちんとどこかで謳って、インフォームド・コンセントをしていないもので既存の細胞を場合によっては使える道を開くためのアプローチとして、(2)が来るようなロジ構成にしないと、まず(1)がおかしいと思います。
○原専門官 ここは、いままでおっしゃっていただきました既存資料に限ってということで、少し文章を詰めて次回に提示させていただきたいと思います。
○中畑委員 その場合、できるだけインフォームド・コンセントに沿って使用することになりますので、ほかの目的とは違う目的で使用するという、先ほど山中先生が言われたような理由、あらかじめ他の目的に用いる場合は新しい使用目的に向かって、改めてインフォームド・コンセントを取るための接触をすることも最初から入れ込んで。これからは結局そういう形にしたほうが問題はないと思います。そうでないと、例外規定をいろいろ作って、できるだけ例外でやろうという人も出てきますので、インフォームド・コンセントの中にほかの目的を用いる場合には、改めてインフォームド・コンセントを取り直しますのでという文書が最初から入っていることが望ましいのではないかと思います。それをある程度入れたほうがいいと思います。
○高坂委員 個人的な意見としては、既存のサンプルを使って差し上げたいと思います。ただ、こういった議論で、我々はどちらかというと研究者サイドの人間が何人かいますが、そういったところでこのような既存のものを目的外使用してもよろしいということですね。これで例外規定を設けて承認してしまうと、そのあとパブコメとかいろいろな別の考え方を持っていらっしゃる方がいて、全体が非常に難しいことになる可能性があります。ですから、これは別の目的で使用する場合には、もう一遍インフォームド・コンセントを取り直すことがいままでの原則ですよね。それは厳守したほうがいいと思います。いろいろな条件を付けるよりも、以前に申し上げましたが、本当はどなたが受精卵の提供をしてくださったかが分かります。多分5人ぐらいだと思いますが、そういった方にもう一遍インフォームド・コンセントを取り直すことをやってもいいのかなという気持を持ったのです。
 しかし、それは以前文科省で議論したように、そういったことは提供者に対して問題があるからやるべきではないということであれば、原則は原則としてやっておいたほうが、あとからいろいろな方に、やりたいためにこういった指針を作ったのだということを言われなくて済むのではないかという気がします。そういった意味で心配しています。
○早川委員 皆さんの一致している意見は、第3章の第1の2のインフォームド・コンセントは、これ以降は必ずやりましょうということですよね。これに関しては、例外はないと言い切ってもいいだろうと思います。あとは、過去にというものに対する対処法が最初からその議論として出ていますが、そういうふうにまずは整理して、これからすり抜ける話や匿名化云々の話は全部、必ずこれはやるのだということが前提ですよね。それから今度は、過去に樹立されていて、とても有用なものがあって、なんとかそこは患者のために使えるのであれば使いたいということであれば、最大限のインフォームド・コンセントに関する努力はできる範囲でやる。例外の中でのどういうアクションをしなければいけないかということを書いて、ここにアとかイとありますが、ヒト幹等の利用目的を含む情報を公開するとか、元の目的と相当の関連性があったとか、そういういろいろな要件を加味して、例外として過去のものについては認めることはありますよ、と整理していただければいいのではないかと思います。匿名化は、これからはきちんとしていくことは当然のことなので、そこがゴチャゴチャになっている気がします。
○町野委員 いま、早川先生の御意見を受けて、例えば「この指針が発表された日よりも前の既存資料に関しては」と限定してもいいかもしれない。加えて、今後サイエンスとかもかなり進んできますから、それを許すのも、過渡期的な処置として5年間は既存資料を使ってもいいけれども、それ以降はという考え方もあるだろうと。ここは、いろいろな考え方があるだろうと思います。
○高坂委員 例えば文科省の指針で作っているESも、既存のESです。それを使っていいですかという話になったときに、今度は文科省の指針と整合性を図らないと、ここだけで決めていいかどうかという問題はあると思います。何回も申し上げて恐縮ですが、文科省のほうでも以前に議論したことがあって、文科省では現状では再同意を取らない限りは駄目ですよという話になったのです。そこは、なんとか使いたいという気持はよく分かります。
○永井委員長 文科省でも、その改定はされているのですか。されていないのであれば、こちらだけ改定しても動きが取れなくなりますね。
○西川委員 実際には、いまオクさんも来ておられますが、ハイウェイではES細胞のプロジェクトがきちんとあって、基本的にはまだ新しい指針がないわけですから、文科省の指針をある程度遵守した形で作ったものを、しかしヒト幹も通してですが、使えるという。だから、はっきり言うと連結していなくてもいいかということも治療に関しての場合はあり得るシチュエーションもあるので、完全に捨てたものではない。ただし、もちろんユニバーサルユーズになってくると今おっしゃることが必要なので、文科省のほうだから使えないというわけではないと思います。
○位田委員 一応、指針の範囲ははっきり決まっていて、文科省のは基礎研究で、臨床研究も含めて臨床には使わないというのが前提ですが、作るプロセスは一緒なので、あの基準をこちらに使えるかどうかという問題で今まで議論してきたと思います。
 44ページに戻りますが、先ほど既提供試料だけ、つまり今後は2を必ずやらないといけないけれども、過去の分については細則だというお話がありました。細則の(1)のほうは連結可能匿名化ではなくて、連結可能匿名化するのがESにとっても原則で、そういう趣旨の同意を取らなければいけないけれども、連結不可能匿名化にしてしまえば何にでも使えてしまうという趣旨にも読めます。かつ、連結可能匿名化であって対応表を有していない場合というのは、ある種の逃げ道みたいなところがあって、つまり法人は違うけれども隣合せの機関で、こちらで連結はしてあるけれども対応表を渡さないで隣に持っていって、いろいろな研究ができる。余り信頼しないというのは良くないですが、そういう可能性は大いにあって、確かに個人情報保護法ではそれでいけますが、問題は連結したままの部分について、対応表を元の機関で持っていてそれを渡さない以上は、別の機関では連結不可能だから、いろいろな研究に使う、例えばこの臨床研究に使うことが可能であるとすると、絶対に元の対応表には戻らないという保障というか規定がないと、こちらでやったけれども、知りたいから対応表のある所へもう1回戻してということが全くないとは限らない。連結不可能ですよというカテゴリーに入れるわけですよね。
 ただ、それをES細胞なりiPS細胞なり幹細胞なりでそういうことをしてもいいという例外を作った場合に、一般的に連結不可能匿名化のヒューマンマテリアルというのは既提供試料であろうと何であろうと、どういうふうにでも使えるというところまで広がるかどうかを考えておかないといけない。アメリカはそれは可能になっています。けれども、日本では今まで必ずしもそうとは取り扱ってこなかったし、先ほど町野委員の御指摘もありましたが自分の細胞というところもあるので、そこは少し全体の整理と個々の整理をはっきりさせておかないといけないかなと思います。
○町野委員 順番ですが、文科省の指針で作ったES細胞を使えるかという話ですが、あちらのほうは樹立の段階でインフォームド・コンセントというか、内容が基礎研究の目的でということを告げることに一応なっておりますから、そこから明示的に臨床に用いることは排除されていると考えざるを得ないので、今回の場合とはかなり違うだろうと思います。あちらの縛りのほうがきついのではないかと思います。
 2番目の問題が44ページのそれですが、これは位置的な誤りで、このような幹細胞を使えるかどうかの問題です。つまり、本人に事前に言っておかない。そうすると、あるべきところが57ページにある第5章の部分に使える幹細胞の性質についての縛りを、ここでかけなければいけないということだろうと思います。そこに持ってくるのが正しいので、前の手続に従って樹立された、あるいは採取された幹細胞を使うのが原則であると。したがって、インフォームド・コンセントを受けたものを使う。このような内容もそれがある。
 しかし、こういう場合はどのような目的で使うかについて、明示的にインフォームド・コンセントがない場合については、基本的に高坂委員の言われるように再同意が必要だという原則があるだろうと思います。それが再同意が取れないようなときであって、かつ、しかし、これが非常に必要と考えられる場合については、あとは倫理委員会の承諾で、しかも倫理委員会が判断して、恐らく本人はそういうつもりではなかっただろうといったときについては、倫理委員会は拒否するという話だろうと思います。という仕組みではないかと思いますが、いずれにせよ冒頭に申し上げましたとおり、第5章がこれではあまりにも簡単すぎます。本人のインフォームド・コンセントと安全性の確保しかないですから、どのような幹細胞が使われるかについて書いていないというところですから、それはいろいろ整理されたほうがいいように思います。
○永井委員長 基礎研究の場合は、そういう範疇ではないということですね。
○町野委員 それはES指針のほうで全部読みますと、告げるべき内容として研究の目的というのがあって、何の目的でそれをやるかということで、総則のところで、臨床研究で扱うのではなくて基礎研究だけだと書いてあるわけですから、明示的に基礎研究ということでインフォームド・コンセントを取っているということにならざるを得ないだろうと思います。こういうときは、再同意は必要になるのではないかと思います。
○西川委員 いま、新しくどんどん作られているわけですね。その場合に文科省の指針の読み方で、違うICを取ってはいけない。例えば、臨床も含めてICを取ってはいけないという話にはなっていないと私たちは理解していて、新しいものに関しての話であっても既に中辻先生が作られたものとかはそういう形であると理解していて、成育であるとかでいろいろな形でトライされてきていることに関しては、こういう状況を含めて考えていただいている。
 ただし、文科省の指針しかないわけですから、ICを臨床研究を省いて取れという命令的なものであると読み替えなければならないとなると、大変なことになる。
○町野委員 恐らく命令ではないだろうと思いますが、それに従ってやったという話だろうと思います。したがって、もちろん当時から臨床研究にも使えますよと仮に言っていたとするならば、インフォームド・コンセントではクリアできていると言わざるを得ない話です。
○位田委員 非常に極端な発言をします。基礎研究についてはいま指針があるけれども、臨床研究についてES細胞の樹立や使用については指針がないという状況ですよね、ごくごく簡単に言うと。そうなると何でもやっていいという話になるので、そこまでは申し上げませんが、そのときに、文科省の指針は基礎研究だけれども臨床研究でも同じ基準でいきましょうねという、大体の合意というか認識をされて研究者の方は研究されているのではないかなと思います。特に命令とか、そういう問題ではないと思います。
○町野委員 私は今のような規制の範囲のことを言っているのではなくて、インフォームド・コンセントとして何を捉えていたかが重要だという話です。したがって、これは臨床研究の目的でこれからES細胞を樹立しますよ、ということであの指針に従ってやったとすれば指針違反であることは間違いないという話です。私がインフォームド・コンセントについては問題がないと申し上げたのは、そのような趣旨です。
○永井委員長 ほかに御意見はいかがですか。
○中畑委員 こういった議論で特に問題になるのは、ESの問題にかなり限られる感じがして、iPSについてはこれから主に作られるということもあって、ICの問題はそれほどないので、今回の中ではESも全て含めて、全部一緒くたに一つの指針の中に入れ込む形でやっているから、全部臨床の先生方がそれを読み分けて、しっかり理解できるかどうかが問題で、もしかしたらESについては別に分けたほうがいいのか。何か全体の議論を蒸し返すようで申し訳ないですが、そういった考え方もある。ESだけを区別したほうが分かりやすいような気がしますが、どうでしょうか。せっかくここまで全部一緒くたにして指針を作っていただいたのですが、ESは別扱いの形のほうが見やすいという見方もありますが、どうでしょうか。
○永井委員長 いかがでしょうか。
○高坂委員 いま、西川委員がいくつかの施設で樹立化が行われているとおっしゃいましたね。その場合には基礎研究で使えますよプラス、場合によっては臨床研究にも使うことがあり得ますという形で同意を捉えているのが現状では多いのですか。そういったものの例があるのであれば問題ないと思います。
 例えば実名を出して申し訳ないですが、S医療センターで樹立したものが、仮にインフォームド・コンセントを取っていれば全然問題ないです。そこら辺のことの情報をしっかり出していただければ、議論しやすいです。
○西川委員 中畑先生がおっしゃるように、もう一度分けることも有りかもしれません。逆に作る側というのは、本当にこういう問題をしっかり認識して、しかも指針が今こういう形で作られているということを全部理解した上で順番にやっておられるので、それ自身が、分けないと二進も三進もいかないというものではないだろうとは思います。ですから、私たちが考える以上にきちんといろいろな形で考えた上で、指針というか申請を出してこられる印象があります。
○中畑委員 確かに、先生のおっしゃるような臨床にも使うことがあり得る形でインフォームド・コンセントをもし取られているとすれば、そういったものに限ってはいいと思いますが、初代というか過去に作られたES細胞についてはそういったことは全くないので、そこまで遡っていろいろなことをやるというのはインフォームド・コンセントを取り直すというのも、倫理的な問題もあるのではないかという気もしますので、新しい臨床にも使えるという条件でICを取られた受精卵から樹立されたES細胞については、もちろんこの指針の中に含めていただくということで、そこを限定してもらえば問題はなくなるのではないかと思います。
○高坂委員 いずれにしても、これは文科省の指針のほうでも1回議論をしておかないと、今話をしているのは、全部文科省の指針によって樹立されているものですから。
○早川委員 これは議論を最初から伺っていないので分からないことですが、文科省の指針で臨床のことを書いていないのは、当時としてはES細胞を臨床に使うのはよろしくないという趣旨だったのか、当時文科省のテリトリーというか、守備範囲の中で一応想定されるのは基礎研究であるということだったので、基礎研究までと書いてあったのか。もし臨床研究をやってはいけないという非常に大きな倫理的なことも含めたことがないのであれば、今の文科省の指針で西川先生がおっしゃったように、当然これからの動きとしてはES細胞を樹立するときに、提供者に対して臨床研究までも使う可能性がありますよと言えるわけですよね。実際に言っておられる。そうすると、もともとは駄目という話はなくて、町野先生がおっしゃっていたように当時は基礎研究だけだったので、一種の雛形的な感じでインフォームド・コンセントはこう取ると。そこで、基礎研究までしか結果的にはイメージとしてはなかったので、現状に至っている。しかし、現状に至っている既成のいろいろなES細胞がもし有用にいろいろな条件を満たして使えるのであれば使いましょうというのがあるとすれば、そこだけの取扱いをこの中に滑り込ませて書けばいいと思います。これからは、先ほどのようにインフォームド・コンセントは必ず取ってくださいというのは原則中の原則である。そんなクエスチョンですが、それはいかがですか。
○西川委員 今日は町野先生も位田先生もおられますが、基本的には意見がまとまらないというか、あらゆる研究が駄目である。それは受精卵を滅失するからであるという考え方と、医学に利用できるから是非使いましょうよというのとで、どこかでネゴシエーションを得るときに、なぜ臨床研究は外されたのかという合理性に関しては分かりませんが、そこでのネゴシエーションが一応できている。ただ、そのあとで今日は文科省も来ていただいていますが、何十件という審査をしていく中で、豊島先生と私と主査をやった安全委員会で、基本的にそれを使おうという人たちは、懸念されるようなことはほとんど何もなくて、しっかりとやっていかれたということで、今度もう少し指針の厳しさを落とそうという話になったときにiPSも生まれてきたわけです。その中で、文科省も実際にはプロジェクトとして臨床グレードのES細胞を作るということは重要であると考えて、ずっといろいろな形でのサポートをされてきていますから、指針をどんどん変えるわけにはいきませんが、今言ったようなことを念頭に置いて順番にやっていく。最終的には、臨床研究も念頭に置いてやりたいという発想で、今文科省もやっておられると思います。
○位田委員 指針を作った最初のときの考え方だけ簡単に申し上げると、受精卵を壊してES細胞を作っていろいろな細胞に分化させてもいいのは、難病を治療しましょうという大きな目的があって、本来であれば人の生命の萌芽なので潰してはいけないけれども、しかし捨てられるものであれば、つまり余剰胚であればそれを使って難病治療のための研究をしてよろしい。したがって、最後は難病の治療に使うという目的がもともとあります。ですから、たまたま研究してみて良いものができて、これが難病に使えるからという話ではもともとない。
 しかし、2001年にES細胞の指針を作ったときは、まだまだ臨床研究にES細胞を使うことはずっと先の話だろう。まず基礎研究をしましょうという話だったと思います。しかも、その基礎研究というのは、受精卵を潰して何かいろいろなことをやってみましょうということではなくて、常に目標は、例えば肝炎の人への肝臓の組織の移植とか、そういう具体的な疾病なり、具体的な部位の疾患を、今の医療ではできないので、それをES細胞を使ってやりましょうという目的を必ずはっきりしておかないといけない。その上での基礎研究ということでした。10年以上経って基礎研究も随分進んできていますし、先ほど西川委員がおっしゃったように、樹立と使用の指針はもともとは一つでしたから、二つに分けたのは使用の研究がどんどん進んできて、かなりいろいろなことができるようになりましたよね、だから、余り厳しい条件は付けないで緩和しましょうというので分けたわけです。さらにそれが、今度は基礎研究がある程度進んで臨床に使えるようになりましたよというのが今の段階です。これからどうするか。臨床は、管轄的には文部科学省ではなくて厚生労働省なので、文部科学省が勝手に臨床のための指針を作るわけにはいきませんから、そういう位置付けになっていて、そこは二つの省の管轄権の範囲の問題だろうと。
○永井委員長 まだ御意見はおありかと思いますが、とりあえず今日いただいた御意見を事務局でまとめていただいて、次回は更に議論を深めたいと思います。そういうことでよろしいでしょうか。
 連絡事項等について、事務局からお願いいたします。
○原専門官 本年も、活発な御議論の下、貴重な御意見をたくさんいただきましてありがとうございました。次回は来年1月15日(火)に開催の予定です。詳細についてはメール等でお伝えさせていただきますので、どうぞよろしくお願いいたします。
○永井委員長 これで、本日の委員会を終了いたします。どうもありがとうございました。


(了)

照会先
厚生労働省医政局研究開発振興課再生医療研究推進室
TEL  03-5253-1111
内線 2587

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