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2012年7月24日 第20回ヒト幹細胞を用いる臨床研究に関する指針の見直しに関する専門委員会 議事録

医政局

○日時

平成24年7月24日(火)15:30~17:25


○場所

厚生労働省(18階)専用第22会議室


○出席者

永井委員長、位田委員、伊藤委員、高坂委員、斎藤委員、佐多委員、佐藤(陽)委員、直江委員、中畑委員、西川委員、本田委員、松山委員、森尾委員
青井参考人、岡野参考人
佐原課長、谷室長、岡田補佐、原専門官

○議題

1)ヒトiPS細胞に係る医学・生物学的安全性について
  京都大学iPS細胞研究所規制科学部門
   教授 青井貴之先生
2)その他

○議事

○谷室長 定刻になりましたので、ただいまから第20回厚生科学審議会科学技術部会ヒト幹細胞を用いる臨床研究に関する指針の見直しに関する専門委員会を開催いたします。先生方には、お忙しい中ご出席いただきまして、本当にありがとうございました。
 本日は、東京学芸大学教育学部准教授の佐藤雄一郎委員、大阪大学大学院医学系研究科教授の澤芳樹委員、(独)医薬品医療機器総合機構の鹿野真弓委員、慶應義塾大学医学部教授の須田年生委員、近畿大学薬学総合研究所長の早川堯夫委員、東京大学医科学研究所准教授の武藤香織委員からご欠席の連絡をいただいております。西川委員は少し遅れて来られるとのご連絡をいただいております。町野委員と直江委員も少し遅れているという現状です。まだいらしていない方を含めてですが、20名の委員のうち14名のご出席をいただいておりますので、本会議は成立することをご報告いたします。
 本日は、参考人として2人の先生にご出席いただいております。京都大学iPS細胞研究所規制科学部門教授の青井貴之先生、慶應義塾大学医学部生理学教授の岡野栄之先生です。議事の円滑な進行のために、頭撮りはここまでとさせていただきますので、よろしくお願いします。ここからは、座長の永井委員長に司会をお願いします。
○永井委員長 それでは、事務局から本日の資料の説明をお願いします。
○谷室長 お配りした資料をご覧ください。議事次第、座席表、委員名簿、参考人名簿があり、続けて資料となります。資料は、資料1「ヒトiPS細胞に係る医学・生物学的安全性について」、資料2「ヒトiPS細胞の品質及び安全性確保について(案)」、資料3「前回までの専門委員会における主な意見」です。また、参考資料1~17を紙ファイルで配付しております。参考資料については、委員会終了後も卓上に放置のままお帰りいただければと思います。過不足、落丁等ありましたら事務局までお申し出ください。
○永井委員長 それでは、議事に入ります。最初に、青井先生から「ヒトiPSに係る医学・生物学的安全性について」のご説明をお願いします。
○青井参考人 京都大学から参りました青井と申します。私からは、ヒトiPS細胞に係る医学・生物学的安全性についていくつかお話します。漠とした広いテーマを与えていただきましたが、本年度の当委員会でご議論いただいていることにできるだけ沿う形でと思って考えてきました。どういう形に沿うかというと、私の理解によると、昨年度までのここまでの議論の中で、iPS細胞を用いた臨床研究はヒト幹指針上で扱われるようになっておりました。それは、iPS細胞の樹立から実際の臨床研究が行われるところまでが一気通貫につながっている研究を想定した指針になっていると理解しております。今年度はこのiPS細胞の樹立・分配と、この時点では、いかなる病気に使われるかは確定していない状態でiPSが作られ、分配されると。それを使ってiPSからの分化誘導及び臨床研究が可能になるようなスキームをご議論いただいていると理解しております。つまり、右側の四角は、いままではドナーが出発点だったわけですが、出発材料がiPS細胞から始まるというスキームです。その中で、左側の樹立や分配に主眼を置いて、安全性の問題をどう考えるかということが本日の私のテーマです。
 「iPS細胞の位置付けと本議論の範囲」です。念のために改めて振り返っておきますが、一言で言うとiPS細胞を再生医療に使うということになりますが、少し中身を見ていくと、ドナーの方がいて、そこから細胞を取る。その間には、細胞を採取する、あるいは場合によっては保存や運搬が行われるかもしれません。そして、iPS細胞を樹立するという過程があります。iPSは1つの細胞から増殖した株を使うので、培養あるいは増幅という過程は必ず経ることになります。ある程度のところで一旦保存するということは行われるでしょう。今回議論するスキームでは、たくさん保存した中から、あるものを研究機関に運んで、これを出発として解凍・再培養してiPSを作り、分化誘導して、それを患者に移植あるいは投与するという臨床研究を行うものです。
 ときどき「iPS細胞の安全性」という言葉が使われることがありますが、安全性の問題は常に最後の段階に存在するものです。もちろん、これがいちばん大事なわけですが、ここの安全性を確保するために、分化細胞の移植又は投与を受ける患者の安全性の確保のために、iPS細胞の樹立や分配の段階、緑の点線の四角で囲んだプロセスで取るべき方策はいかなるものかということを考えていく必要があります。
 iPSを用いた再生医療の医学・生物学的「安全性確保」の点から見た懸念事項とその要因、リスクとリスクファクターにはいかなるものがあるかということで、ざっと主なものを挙げてみました。懸念事項としては、感染というものが1つあります。既知の感染もありますし、未知の感染もあります。それらの要因としては、ドナー細胞ですでにウイルスが入っているというドナー細胞への感染、また、調整工程が非常に長いのはiPSを用いた再生医療の特徴で、従来の体性幹細胞等を用いたそれと比べた特徴ですので、調整工程での混入も要因になるだろうと思います。
 また、重要な関心事項である「造腫瘍性」、これはメカニズムが多くのものはわかっておりませんが、一部、少なくとも移植される細胞集団に未分化細胞が混入していれば、これは腫瘍を作る元になるだろうと、未分化細胞残存による腫瘍が1つあるだろうと。しかし、それ以外のメカニズムによる造腫瘍も、懸念事項としてはあります。
 それが、再生医療一般に言えることですが、目的外の細胞の生着。つまり、神経細胞を作って移植したつもりが、図らずも、ほかの種類の細胞になって、それが生着して何か有害事象を起こすということです。あるいは、目的外部位へ流れていって、狙った所以外の所に流れていって生着してしまうということ。ある場所に存在していれば問題がない細胞でも、別の場所、好ましくない場所に存在していれば何か有害なことにつながる可能性があります。
 目的外物質の混入。細胞以外のもので、製造関連物質で目的としないものが混じってしまうこと。これらが主なものとして挙げられると思います。
 要因について、先ほど感染と言いましたが、造腫瘍性、目的外細胞の生着、あるいは目的外部位への生着に関しては、ゲノムの異常かもしれません。これはドナー由来のものや調整工程で生じるものがあります。また、エピゲノムの異常であることも可能性としては考えられます。不十分・不適切な分化、初期化のための導入因子の残存、不適切な投与や移植法といったものが要因として挙げられると思います。(?)をあえて付けているのは、理論的にはこうだと考え得るという一文を表しております。目的外物質の混入に関しては、原材料中に存在する、あるいは調整工程での混入だと、比較的明確に定義することができると考えられております。
 繰り返しますが、とにかく安全性確保はここに存在しているものですが、その中でiPSの樹立・分配の段階における対策が有用と考えられるものはどれなのかということです。パッと見て明確なのは、ドナー細胞の感染は、最初のところでそのリスクをコントロールすべきものであるということがわかります。ほかのものについてどう考えていくのかということです。
 次に、iPS細胞を用いる細胞移植治療の安全性上の特徴ですが、細胞治療の従来の化学的な薬の治療と比べた特徴も一部含んでおりますし、ほかの細胞治療と比べてiPSを用いるということの特徴も少し混同して含まれている内容であることをお詫びしますが、いくつか思いつくことを書きました。1つ目は、先ほどの懸念事項のうち、細胞の生物学的振る舞いに関するもの、すなわち造腫瘍や目的外細胞の生着、目的外部位への生着といった生物学的振る舞いに関するものの多くは、その原因や発生機構が現時点では明らかになっておりません。細胞というものは、一般に極めて多くの情報を持っております。ケミカルですと、例えば生理食塩水についてはナトリウムの構造式は我々も知っておりますし、濃度がわかって純度がわかれば、それについてのほぼすべての情報を記述したと言えるかもしれませんが、細胞には非常に多くの‘情報’が潜在的に含まれています。その中で測定可能な‘情報’、‘性質’、あるいは特性も、非常に多くのものを調べることができます。しかし、それらの性質のうち何が‘品質’となるかについては、多くが明らかになっておりません。
 「品質」という言葉の定義ですが、意図した用途への‘適切さ’のこと、あるいは「製品等において性質の組合せが‘要求事項を満たす程度’のこと」と定義されています。すなわち、特性あるいは性質のすべてが品質に含まれるわけではないということです。特性あるいは性質評価の技術は、大きく進歩を続けています。将来には、より多くの情報を得ることができるようになる。これは、なると考えられるというよりほぼ確実に、昨今の技術の進歩を見ていると、将来的には、いまよりも多くの技術を得ることができるでしょう。
 一方で、iPSの性質を見ると、iPS細胞は高い増殖能を持っており、臨床研究に用いるものと本番で用いるものと同等と考えられるサンプルを充分量確保することが比較的容易です。これは他の種類の細胞との比較で述べております。また、細胞の凍結による長期保存も可能であるという特徴があります。
 ということを鑑みて、どういった方策を取るべきかです。?出荷規格として設定する項目と、出荷規格の他にも充分な情報をとにかく記録しておこうということです。充分なというのは、試験結果、判定結果だけではなくて、解析方法の詳細や生データの保管が重要であろうと考えております。?将来の技術による特性評価に備えて、サンプル(検体)の保管を系統的に行っておくことも極めて重要なことです。?将来、移植後の臨床情報の蓄積と照らし合わせて、当該治療の安全性確保に?や?の内容を充分に活用することができるような管理体制を構築し、それを維持していくことが、いま研究段階であるiPSを用いる細胞移植治療をやっていく上で、その研究を前に進めていく我々の再生医療を前進させていく上では現実的であり、最も重要・確実な方策はこの3つであると考えております。これをまとめて言うと、「トレーサビリティ」の確保に尽きるのではないかと思います。つまり、どの時点で何が起こったのか、我々はいまの時点でわからないことが多いわけです、あとから振り返ってわかるように、明らかにしていけるような仕組みを作っておくことが重要だと思っております。
 冗長になりますが、このコンセプトをもう一度別の形で表したのがこの図です。ドナーがいて、細胞があって、これもiPSで、一部保管できるでしょう。iPSはたくさん増やすことができます。これを使って、やがて臨床研究につながっていくということがあります。たくさんあるので、将来の技術による解析のために置いておけるということです。細胞はとても多くの情報を含んでいます。しかし、その多くが現時点では観察、測定が不可能なものが多いのです。その一部が青で示してあるもので、観察は可能、測定して評価することはできるのですが、安全性における意義は不明なものはたくさんあります。また、一部のものは、赤の部分で測定・観察可能で、意義が明らかであるという性質はあります、例えば、この細胞は病原性があることがわかっているウイルスを含んでいるということは、意義も明らかで測定が可能です。あるいは、何らかの非常に重大ながん抑制遺伝子の欠損なども、比較的意義は明らかであろうと。それとて、がん抑制遺伝子の欠損があったら必ずiPS由来の組織やがんができるかどうかはわかっていないものが多いのですが、そういったことです。こういう構造である中で、我々の知識は、この研究を通じて今後なるべく青い部分が増えていくだろうと、そして、赤の部分を時間をかけて広げていくことが重要な取組みであるということです。
 いままでの話の根拠となるいくつかのデータをご紹介します。参考として持ってきました。1つは、ヒトiPS細胞からの肝分化特性とマイクロアレイによる遺伝子発現の評価、未分化状態での遺伝子発現の評価です。iPS細胞のAとBという2つの株があって、肝臓の分化誘導を同じプロトコールでやって、アルブミン、肝臓のマーカーですが、それに対する免疫染色を行うと、Aの株は非常に染まるけれども、Bの株はちらほらしか染まらない。非常に成績が違うわけです。肝臓になりやすい株となりにくい株は、いまマイクロアレイを非常に容易にできます。マイクロアレイは、同時に3万5,000個ぐらいのプローブがあって、その発現レベルを調べることができます。これは実際のデータですが、3万5,000もありますから、少しはばらついて見えるところもあります。ぴったり一致しているところもあります。ここに名前を載せている遺伝子は、肝臓分化に、肝臓を作る上で重要であるといままで言われていた遺伝子ですが、この遺伝子の発現量などが分化能力の高いものと低いもので大きく違えば、確かにこれは意味のある違いであると、意義がわかっている違いと言えるのですが、残念ながらこれらは両所の株で同じでした。ほかは若干ばらついているものもあるのですが、果たして意味があるかどうかは、1株ずつを比べたところでわかりません。真ん中からそれている遺伝子が、発現量がずれていることによって分化特性の違いを持っているのか、偶然ずれているだけなのかは、非常に多くの今後の情報や経験の蓄積がないと、意義付けはしていけないと思います。一方で、我々は遺伝子の発現量の情報だけは得て、将来に備えて置いておくことができます。
 また、もう1つはSNPアレイという網羅的な、ゲノムワイドな、ゲノムコピー数を見るためのアッセイで、昨今技術的にも確立してきているものです。これは先ほどの説明の中で生データやいろいろな方法の詳細を置いておかなければいけないと、判定基準や結果だけでは駄目だということの基ですが、一つひとつのプロットがSNPアレイの各プローブに対する信号です。非常にばらついて分布しているのですが、それを隠れマルコフモデルという数学的な処理を施して、ゲノムのコピー数を評価するものです。
 2つ図があります。この2つは、同一の生データを同一のアルゴリズムで解析したもので、そのアルゴリズムの中でいくつか調整するパラメーターがあるのですが、その一部のみの数値を入れ替えました。そうすると、ここにある青の線、この高さが正常なコピー数2つということですが、ここはゲインがあって、ここもコピー数の増加があると、この上の図では判定されるわけですが、同じデータからでもパラメーターを少し変えるだけで、下の基線からずれている場所が、数箇所もコピー数の増加があるとして検出されるという結果になります。
 これはどちらが正しいかは、議論は非常に難しいというか、ある種不可能なことなのですが、途中の解析の詳細等を記述していなければ、この結果だけ見て、ここは駄目だけれども、この辺は全部よかったと言ってしまうと、誤った情報になる可能性があります。こちらだと正しいのかというと、それもわからないのですが、とにかくすべてを記述して、きちんと置いておいて、そういった情報を使えるようにしておくということです。
 もう1つはDNAシーケンス技術の進歩ということで、2009年のNatureのレビューから取ってきました。DNAシーケンス、ゲノムの変異がどうかというのは、細胞を扱う上で重大な関心事項なわけですが、1980年には1日で読めるベースペアが10ぐらいだったそうです。1995年ぐらいに100ベースぐらい読めるようになって、これは2009年に書かれたものですが、指数関数的な増加を示しております。今日、出てくる前にこれを専門にやっている研究者に聞いてみたのですが、「この2009年の図は若干古いけど、どうなんだ」と言ったら、「あの線よりも上回っているようなスピードが、むしろさらに加速しているような印象である」と言っておりました。そのように、将来的には、シーケンスに関してはより多くの情報を得られます。コストもおそらく下がるでしょう。現時点では評価しきれない部分を、あと何年かしたら評価できるかもしれない。だから、それに備えてきちんとサンプルを置いておきましょうということです。
 そういったことが、私の考えの根本にあります。それに基づいて、中身ですが、指針等を考えていく上でどういうことが中身になるかを思いつくままに挙げました。例えば、「原材料」について、ドナーの選択基準、適格性、インフォームド・コンセント、情報管理。細胞・組織に関しては採取実施期間、運搬・保管の方法。その他の原材料では、特に生物由来原材料には注意して、遡及性の確保が必要であるということ。「調整工程」に関しては、ロット構成の有無、この場合は有無と言っても、おそらく分配されるようなiPSはロット構成をする場合がほとんどだと思います。少なくとも現状の技術ではそうだろうと思っています。原材料の受入れ試験、製造方法、これは調整方法のことです。それから、環境もどんな所へやったかというのも、どんな所でしなければならないと、すべての過程を定めるのは、個人的にそこまでするのは適切ではないように思っていますが、少なくともどういう所へやったのかがきちんと記述されていなければならないと考えております。調整段階における特性解析と検体保管は、先ほどから強調している点について明らかにすべきだろうと。「品質管理」ということでは、品質管理の方法、試験方法、安定性の問題は樹立・分配ですので、保存や運搬、あるいは再培養といったプロセスでの安定性を示す必要がある。普通に置いておくだけの、賞味期限というか、何箇月置いておいて大丈夫という話だけではなく、それはそぐわないので、こういった処置をした場合にどうなのかということが示されなければならないと考えています。
 ドナーに関する事項、例えば選択基準や適格性に関して言うと、ヒト(同種)iPS指針は、いまはまだ(案)の状態で施行されておりませんが、パブコメも終わって、行政手続きに回っている段階と考えております。13145通知から派生した5つの指針のうちの1つです。また、生物由来原料基準と整合した内容であればよいだろうと思います。何か薬事のものを持ってくると厳しすぎるという声がときどき聞かれるのですが、資料の19頁に「ドナースクリーニング(案)」というものがあります。これは私が勝手に作ったものですが、ある枠組みを使ってPMDAの方にも目を通していただいて、ご助言いただいたものでもあります。問診のやり取りに若干時間がかかりますが、不可能なことではなく、樹立・分配で多くの方に影響を与え得る、つまり公衆衛生学的影響の大きいiPSを作るならば、これぐらいのことはしておいても良いかと、不可能なことでもないかと思っております。
 もう1つは、iPS細胞の場合、調整工程に多くの時間を要するために、ウインドーピリオドをまたいだ再検によって危険性の可能性を提言することが可能です。これはフローiPSという、作るのに時間のかかる細胞を使った治療、あるいは臨床研究の大きなメリットですので、もちろんiPSならではの懸念や心配事は多いのですが、逆に手堅くいけるところは、普通の細胞移植よりもウインドーピリオドをまたげることがメリットの1つですので、それはきちんとできることですし、やっていったらいいのではないかと思っています。
 基本的にはドナースクリーニングによって感染の否定を行うことが好ましい。こちらがベターであることは間違いないという定義は、認識が指針の中でも文言に表れればいいかと思っています。ただし、その一部あるいは全部を行うことができない場合には、その理由を記載した上で、調整工程のいずれの段階で感染の危険性を排除するかを明らかにするという道も残しておく。つまり、最終調整物がヒトの体に投与される、最終調整物までの過程のどこかでそれが否定されればいいということではありますので、ただ出たのはこちらだということにしておいてはどうかと思っています。最初のドナースクリーニングの作り始めのほうはどうでもいいからと言っていて、最後まで見ると言って、最終調整物に近いところになると、細胞を保管しておけないからとかサンプルが少ないからという理由で、少し内容が少なくなってしまうと、被験者の安全性の確保という面では下がってしまうと思うので、あくまでもベターは、こうだと。
 情報管理に関して、ドナースクリーニングによって得られた情報から、ドナーとしての適格性を判断する基準を明らかにしておくこと。これも、いろいろな既応歴を聞きますが、何か1つあったら必ず駄目とするかというと、そういうものではなくて、ある一定の基準を設けてそれを明らかにしておくことがいいのだと思います。既往歴や家族歴など、ドナーの除外基準とするに足る根拠には乏しいものの、将来的にiPS細胞を用いた治療の安全性とかかわりがある可能性が考えられる情報も、できる限り得ておくべきであると。参考情報としていろいろなものを置いておく。これら詳細な情報を、匿名化後の細胞・組織に付随させることは、個人が特定される可能性が高いため好ましくないと。こんな病歴があって、こんな家族歴があってというと、全部を満たす人は1人しかいないとなると、匿名化の意味があまりないので、ドナーの個人情報が保護され、かつドナーに関する情報が有効に活用されるための管理体制を整備すること。具体的には、個人情報管理者等の匿名化番号を付ける対照表を、管理される方のところにいろいろな情報が置いてある状態が好ましいのではないかと思います。
 インフォームド・コンセントの範囲について、これも具体的な話として、是非委員の先生方にはご議論をいただいて、委員会としての何らかの結論を明示していただきたいと思っております。その前提として、現在の技術では臨床用iPSを作るには多くの時間や費用を要します。また、別個に作られたiPS細胞株間の同等性を検証する方法は確立しておりません。したがって、臨床研究を経て、将来的には治験や医薬品・医療機器の製造販売へと開発が進む際には、臨床研究に用いたのと同じiPS細胞株を用いることが再生医療の開発の迅速な推進のためにはいちばん好ましいのではないかと、いまの技術では。将来、ある株間の同等性を保証するような、担保するような方法がもっと確立すればいいのですが。平たく言うと、臨床研究をやってその結果が出たと、また治験だ何だといったときに、株を作り直してやり直さなければいけないようなことは、費用としても非常に無駄ですし、時間的も大きなデメリットがあるので、最初からある程度無理のない範囲で、のちのプロセスまで使えるような状態にしておくほうがいいのではないかと考えています。
 ここで線を引いたところは、私自身もどう考えるべきかわかっていないというか、もちろんこれは私が判断することではなく、委員の先生方のご判断によるものですが、将来的な商業利用の可能性も含めて、IC取得時点では未確定な内容に関してもきちんとICに含んでおかないといけないのか、おくべきか。あるいは、段階的な同意取得を可とするか。すなわち、まずは臨床研究等に使うと、商業利用はいまは何も言っていないと。でも、ひょっとしたら、また別にお願いするかもしれない場合は、もう一度連絡して説明して、何らかの同意を得るようなことをしていいですかと、そこだけ押さえておくという方策も、1つの手としてあるとは思います。ただ、段階的な同意取得を可とすることの問題としては、具体的な状況を考えると、開発が途中まで進んで、臨床研究で、折角良い結果が出て、このままこの株を使えばスムーズにいくし、費用も大きく節約できるという状況がドナーへの圧力になる可能性も、段階的同意取得にはあるのではないかと思っております。これも、どちらが正しいのかは私にはわかりませんが、何か論点として、少しお心に留めていただければと思っております。
 ロット構成についてですが、これはおそらくなされるだろうと思います。原材料の受入れは試験項目と判定基準を定めること。繰り返しになりますが、生物由来原料については、その一部を保管し、やがて解析できるように保管を重視してはどうかと。調整が行われる各段階において、実施される環境について明らかにするとともに、最終的に分配されるiPS細胞の品質確保という視点から各調整段階における環境の妥当性について説明する。いわゆるガチガチのCGMP施設ですべての段階をしないといけないのかどうかに関しては、いろいろなご意見を耳にします。結局は最終調整物に対してどうかということが問題になるわけですので、その全体の流れの中で、どの段階ではどうすればいいのかをそれぞれのプロジェクトで明らかにしていただくというぐらいの緩い形にしておいたらどうかということです。
 特性解析と検体保管。調整工程において、最終的に分配されることになるiPS細胞株の選抜等のために行われる特性解析について、その項目と方法の詳細、判定基準の有無と基準値およびその妥当性について明らかにすること。マイクロアレイ等の網羅的方法においては、データ解析のアルゴリズムや用いられるリファレンスサンプル、あるいはコントロールサンプルについて明示すること。これも、リファレンスが違えば全然違う結果になりますし、どういう結果であれば正常とみなす、どういう結果であれば異常とみなすという範囲、コントロールをどうするかということも重要なことです。将来新たに可能になる技術による特性解析に供するために、調整の各段階における検体の保存を行い、この内容と管理体制について明らかにすべきであろうと。
 品質管理に関しては、ロットの内容やロット内の均一性に関するデータを示しましょうと。例えば、100本のロットを作ったら、そのうち生存率等はどれぐらいのばらつきがあるのかというのを抜取検査などでやるといったことは大事かと思います。
 試験方法は一般的なことを書いております。導入因子の残存については、重大な関心事項なので必要であろうと。また、分化特性ですが、これは前回、高坂先生からコメントがあって、iPSの分化とか、ESの話でしたが、そういうことについては調べて記述して明らかにしておかなくていいのだろうかというコメントがあったと思います。これは私見ですが、株ごとの分化特性については、少なくともiPSと称して扱うのが相応しい細胞であることを、3胚葉系への分化誘導によって示すことは意味があると。つまり、iPSと全く違う種類の細胞を同じ枠で議論していると、何か見落とす可能性がありますので、iPSと呼んでもいいということを示しておくことは意味があるだろうということです。
 一方で、高坂先生がおっしゃった特定細胞への分化特性については、参考情報としてのみ、例えばこういう分化誘導法をやったらこうだったということが、参考として付いていてもいいかなというぐらいのものだと思っています。というのは、少なくともいままで我々が経験した中では、同じ細胞株でも、分化誘導法が変われば成績が変わります。何々細胞になりやすい、なりにくいというのは変わります。これは実際のデータで最近パブリッシュしたものですが、ヒトiPS細胞から肝臓の細胞の分化誘導を行いました。縦軸はアルブミン分泌量で、上にいくほど成績が良いということですが、0~6の7つの分化誘導条件で行っています。そうすると、「条件0」で分化誘導が行われたら、細胞AのほうがBよりも良い成績だということになりますが、「条件4」で分化誘導が行われれば、Bのほうがいいということになります。樹立・分配されるiPS細胞は、それぞれのプロジェクトによって、分化誘導の先生方がそれぞれの方法でなさるでしょうから、未分化の段階でこのことを評価して、ある程度の幅で分化誘導の特性を評価することは、あまり大きな意味はないのではないかと思っています。これは我々自身のデータですので、今日、肝臓分化でお出ししましたが、例えばゴードン・エム・ケラーらのグループは、心筋の分化誘導ではアクチビンのBMPの濃度がそれぞれ株によってベストなものが違うと。その条件の違いによっては株同士の成績が逆転することも、すでに示しております。ほかにも、こういうことはいろいろあると思っております。
 「品質管理」で、安定性ということですが、保存や運搬について、方法とその根拠となるデータを示すこと。この際、保存・運搬後に再培養を行った際の細胞の特性に関する検討を行う。保存安定性については、先ほどの賞味期限の話ですが、定期的に検査を実施しても、iPSは1回作るのが大変で、何回も作り直さず、ワンロットで相当長いこと使うことになると思います。ですから、定期的な検査をしても、調整から実際に使用されるまでの期間を試験までの期間が超えることはない。したがって、保存期間よりもむしろ、運搬の距離や時間を実際の臨床研究に供されると考えるよりも、大きく設定した検討や、実際の使用における想定を超えた培養期間、あるいは継代数での特性解析が優先されるべきであろうと考えております。スライドは以上です。スライドの内容が18頁まであって、19~20頁がドナースクリーニングで、このぐらいのことをしてはどうかということを載せています。
 次の資料2は、スライドの内容を文章の形にというご指示をいただきましたので書きました。13145通知等を参考にしながら、文字どおりたたき台で、しっかりと叩いていただかないと、これでは駄目だと思っておりますが、文章の形にしております。会議資料ということで、文体を指針では「○○すること」と書かれるところを、「○○することが望ましい」という文体になっていて、指針案として読むと少し違和感があるかもしれませんが、案としては「○○すること」と思っております。以上です。
○永井委員長 それでは、ご意見をお伺いします。今日は岡野先生に参考人としておいでいただいているので、ご一緒にご発言いただければと思います。
○岡野参考人 青井先生のプレゼンは非常にわかりやすかったと思います。これはiPS細胞を用いた細胞治療で、明らかに他家移植を考えた移植だと思いますが、ヒト幹指針においては自家移植です。これは神戸の先端医療振興財団の高橋さん辺りがおそらく申請してくると思いますが、基準はかなり変わらざるを得ないと思うのですが、自家移植の場合はどのようにお考えになっていらっしゃるのでしょうか。
○青井参考人 私は、自家移植は現行指針で随分カバーできていると思います。自家移植で想定されるのは、当然最初から終わりまで何々疾患に何々細胞を使ってどういった患者に移植するということが、この樹立が始まる時点から計画されていると思います。とにかく、ここの品質安全性確保があって、もちろんiPSの段階で行っておいたほうが好ましいこともありますが、そんなに堅くここをソリッドにしていかなくても、ここでの品質安全性確保までの見通しが立ちやすい、全体像が見やすいと思います。その中身は、いま言った現行指針で大体カバーできるだろうと思います。他家移植の最初のスキームですと、ここからが遠いし、この緑の枠内とそれ以降を行う研究機関、あるいは先生方が違うので、責任の所在がどこにあるかわからないような危険因子が残ってしまうことは恐れるべきことですし、最終製品、調整物がよければいいという大原則は間違いないのですが、この緑のところをあまりにもいい加減にやると、いわゆるしわ寄せが、後でしなければいけないことが増えてきます。その負担が、実際に現実的にも多いし、費用等の無駄にもなりますし、日本全体の研究の進捗の点では好ましくない。こちらでカバーしたほうがよいことが、おそらく多いだろうということで、割と厳しい形で提案しております。
○岡野参考人 そのご提案にはもちろん賛成ですが、13頁に「臨床研究を経て、将来的に治験や医薬品・開発に進む場合には、臨床研究に用いたのと同じiPS細胞株を用いることが再生医療の開発の迅速な推進のためには好ましい」とあります。これはインフォームド・コンセントのところで出てくる文言ですが、コンセプト的には私もアグリーなので、そういったコンセプトに基づいてこの案が作られていることはそうなのですが、ヒト幹指針としては、ヒトiPS細胞を用いた自家移植に関してはこういった方法に基づくものとするというのは、章を1つ加えてやらないと、そもそも免疫学的拒絶反応はないというのはiPS細胞の2006年ぐらいのころの売りですので、自家移植を完全に否定するものではないので、そこは章立てを変えて作られたらどうでしょうか。
○青井参考人 例えば、今日の話は樹立・分配指針を作るならばということで、つまり樹立・分配指針ですから、たぶん自家ではあまりないというイメージだったのですが、もう少し広くiPSに係る云々という指針とすると、先生がおっしゃったように自家のことも意識して章立てを変えるという形もあるのかもしれません。
○岡野参考人 ご存じのとおり、iPS細胞技術は非常に進化のスピードが速いので、あまりにもディテールに縛りを付けると、技術が進歩したとき指針が適用しづらくなるおそれがあります。その辺はかなり意識されて、一般的な文言で書かれているというご努力はだいぶ伺えました。ただし、これは駄目だという、例えばiPS細胞の樹立においてインテグレーションフリーにすべきだとか、その辺まで踏み込むかどうかはどのようにお考えですか。
○青井参考人 いまインテグレーションフリーとおっしゃったのは、初期化因子の導入方法で染色体に入るかどうかということで、それについては、この方法は良いとか駄目ということを指針で規定すべきではないと思っています。ただ、何でやったかがわかるようにきちんと残しておかないといけないしという、そこだけであって、どの方法は良い、駄目というと、想像もできない方法ができるかもしれないので、そこは何でもいいということになると思います。
○岡野参考人 最後ですが、最終産物が移植細胞だとすると、これは多能性の幹細胞をそのまま移植するわけではないので、最終製品が移植細胞としてのクオリティをチェックするということですが、リプログラミング技術を使ってそういった細胞を作るということなのか、iPS細胞を介さない直接誘導法もいま議論に上ってきているので、その辺りは今回の指針に盛り込むのは難しいですか。
○青井参考人 同じ文脈の中に、全く別の章立てで1-1から始まるのだったら可能かもしれませんが、少なくとも同等の文脈で平行して論を進めていくのは相当難しいと思っています。ダイレクト・リプログラミングの場合は、途中でダイレクト・リプログラミングしたものが分配されるとしても、出口の細胞の種類が何かということが当然決まっていると思われます。iPS細胞がここでいろいろなものに使われる可能性があるというスキームを意識して、逆にダイレクト・リプログラミングだと、例えばファイルのBLASTを置いておく指針みたいな、それに使うための基の組織をどうプロセシングしておくかということは、ひょっとしたら一般化できる可能性があるのかもしれません。
○岡野参考人 章立てを変えれば、不可能ではないですね。
○青井参考人 なるほど、すみません。ちょっと考えられませんでした。
○岡野参考人 はい、以上です。
○斎藤委員 私も岡野先生の意見と同じで、あまり細かい条件を指針で設定するよりも、むしろ最終プロダクトの安全性というか、製品情報がすべて患者に伝わるような方式を取ればいいのかなと考えております。
 この場所でお聞きするようなことではないのですが、細かいことで少し引っかかってしまったので、教えていただきたいと思います。スライドの7番と17番の細胞ですが、ドナーは同じなのですか。
○青井参考人 ドナーは同じです。
○斎藤委員 継代数も同じですか。
○青井参考人 ぴたりと同じかどうかはわかりませんが、おおむね似たようなところです。
○斎藤委員 かなり経っているということですね。樹立初期はエピゲノムの異常が出やすいという話もあるのですが。
○青井参考人 しばらく経っています。
○斎藤委員 そうすると、17で分化誘導条件でゼロで駄目だったときに、次に4を試してみるとか、そういうことをしたらいいのかなと思ったのですが、そういうわけにはいかないのですね。0と4と試して、その次にやると。
○青井参考人 実際には分化誘導条件の振り方というか、いろいろな可能性の広がりはいくらでも条件が設定できますから。
○斎藤委員 変わるわけですね。
○青井参考人 ユーザー側からしたら、樹立・分配を受けて使っていただく先生の立場に立てば、いくらでもいろいろな条件があり得ると。
○斎藤委員 最終的には全部分化するわけですね。要するに、エピゲノムの異常で絶対分化しないとか、そういうことはないわけですね。
○青井参考人 私が理解しているとすれば、ある株があらゆる分化誘導の方法で、どんな手を尽くしてもうまくいかないような株があるのかどうかは、まだわかっていません。ただ、これは肝臓にどれだけなったかというポジティブな指標ですが、分化抵抗性と呼んでいるような分化し残りが残るという成績に関しても、株によって違いはあるのですが、分化誘導法が変わると、そのことも変わってくる。あるいはセレクションをうまくプロセスに挟むということもありますので、そこに関してはすべてiPSの段階だけではなかなか担保はできない。
 しかし、一方でロットを形成して分化誘導を始めようというときに、iPSのストックが100本なら100本あって、その100本が均質で、そこまで戻れば同じ方法を使えば大体同じところにいくということは、相当管理をしっかりすれば、これもエラーは小さく収まっていますが、担保できますので、そういうばらつきに関する保証は、iPSの部分での技術で結構できるだろうと。ただ、どこまでいくかについては、分化誘導技術に追うところが大きいと理解しています。
○西川委員 この前、造血幹細胞移植の委員会でもiPSの話が出て、具体的に樹立をして分配するというスキームが結構できてきて、いろいろなことが起こる可能性がある場合に、樹立・分配といったときにどのぐらいのストックが必要とか、より具体的なものを提案側が明瞭にする時期が来ているのではないかと思うのです。何となくたくさんやるというイメージがあるのですが、実際に岡野先生が脊損の方を治療するときに、どのぐらいのストックが必要なのかとか、そういうことの上で、例えば商業利用のICや安全性といったことがより具体的になっていくはずなので、何となく抽象的に樹立・分配という話ではなくなってきているのではないかと思います。もう少し、量やロットの数を具体的にして、是非ここに関して議論していただきたいと思います。
 オートの場合はそういう問題はないのですが、安全性の問題でハイウェイのPDとして言うと、いまいちばん重視しているのは、がんになるかならないかを絶対的に予測することはできませんが、がんになって、それが治療できるということが大事なのです。それを主にしてほしいという話でいくのと同じで、それぞれの治療を実際に視野に入れたときに考えられる量といったものがあるので、是非そこをそろそろ議論してほしいと思います。
○青井参考人 いまの点に関しては、おっしゃるとおりです。それについては、ちゃんとしたデータもないのにという話にはなりますが、現実的な技術的現状でいくと、いま培養方法はいろいろ開発しておりますが、ある培養及び凍結・融解のプロトコールを作ると、例えば10?の皿2枚から100本のストックが作れるのです。その100本のうちの20数本を起こして生存率や細胞数を見たら、次にそれを起こして使うのに十分な生存率と数が確保できていたというデータが出てきつつあります。そういう技術的な現状をきちんと報告して、これを100本作ろうと思ったら皿が100枚ないといけないという状況なのか、たった2枚でいいのか、100本あるいは1万本というのが非現実的なのか現実的なのかというのは。
○西川委員 私が言っているのは、ニーズ側の調査がもう少し必要で、技術側の調査でこのぐらい可能ですよというのが、実際の予想されるニーズにどのぐらい、新しいiPSを常に作り続けなければならないのかという問題もあると思うので、是非ニーズ側の調査というのが、意外とまだ同種移植の部分に関してはしっかりとしたニーズ側の具体的な数字はまだ出ていない感じがするのです。岡野先生、その辺りはどうですか。
○岡野参考人 青井さんの資料1で、樹立期間と、下が分配されて移植まで持っていく分化誘導する期間と、分けて考えることができるのですが、凍らせたiPS細胞を分化するわけですから、それを解凍すると、またiPS細胞として増やさないといけないわけです。そこでどれだけ増やすか、何継代していいかによって、もともと配っていただくもののスケールが当然変わってくるわけで、そこは考えなければいけないところですね。
○青井参考人 最初に品質評価として品質のデータを示すときに、いまお配りするのはPassageいくつですと、それを起こしてプラス10継代のデータはこうです、プラス5継代はこうですというプラスアルファの、それがこの培養法なら継代率が1対3なので、5継代だったらこれぐらいの数です、あるいはこの方法だと1対50とか100の方法もありますので、これぐらいですというのを段階的に、ですからこの継代数までの品質は大体担保できるので、それまで使ってくださいとか、そういう話をしていくことになると思います。
○岡野参考人 凍結・融解して、どれぐらい増えてバイアビリティがあるかも踏まえて、考えなければいけない。
○青井参考人 分配する側が情報を提示しておく。
○西川委員 しかし、そういう議論をいくらやっても、あまりよくないと思うのです。実際日本としてどのぐらい、こういうことがアイディアルにできたらいいということのニーズ側の要求がしっかり出された上で技術要因を考えていかないと、いまある技術でも到底到達できない、不可能なニーズなのかもしれないのです。そこをそろそろマッチングさせていかないと、いまある技術でここまでできますという話だけをしていていい段階ではないのではないですかと。岡野先生がおっしゃっているように、すべての人にこの技術を利用できるようにするとしたらどういうことが必要なのかということを、ここでやる理由はないけれども、そういうことも必ず議論すべき時期が来たのではないかと思います。
○佐藤(陽)委員 いまのご発言に関係するのですが、本日の青井先生のお話に関して言うと、最終的な製品を想定しないで、品質管理という話でもiPS細胞の品質管理の話であって、必要本数などに関しても最終製品がわからないと、それはいくつ要るのかということはわからない。岡野先生がおっしゃっていたように、例えば京都大学で作ったiPS細胞のストックを開発するサイトで増やして、それをiPSセルのセルバンクとしてバンクを構築して、そこから製品を作っていくので、それについてもどこまで増幅するか全くわからないということで、その辺の最終的なニーズは推測するのは非常に難しいのではないかという気はします。
 今回の品質管理といった話でも、最終製品を想定した細胞器材としてではなくて、iPS細胞としての品質管理ということなので、資料2の案の中でも、例えば定義の中に「ヒトiPS細胞とは」というのはあるのですが、開発する側が自分たちがこういったものをiPS細胞と呼ぶのだということについての記述をすることが絶対に必要だと思うのです。そういった章立てがあっていいと思うのです。
 iPS細胞としての品質管理となると、iPS細胞であるかないかということが問題で、iPS細胞としてどれぐらい安定か、iPS細胞としてどれぐらい純度が高いかがまず問題です。安全上の懸念としては、ウイルスや不純物の混入ということ。それが必要最低限の規格なので、それ以上の規格に関しては最終製品が見えてこないと、青井先生の3枚目のスライドにありましたが、分配の段階における対策で有用としてあるのはどれかということについて絞って、皆さんでどれが絶対に要るかという議論に収束していったら、指針として非常に使い勝手のいいものになるのではないかと思います。
 続けて、16頁の品質管理の方法なのですが、これはロット内だけでいいのですか。ロット間という話ではないのですか。
○青井参考人 ロット間の均一性については、例えば解かしたときの生存率といったことに関して、ロットごとに生存率はこれぐらいの幅ですよというのが示されることは必須ですが、どのロットでもこの幅でなければいけないということではないと思っています。それをすると、相当難しいことが出てくる可能性があると思っていますので、その後の開発のスキームを考えると、それと同等と考えられるもので同じ出発点から同じことをやれば、同じところにたどり着くということを、本当はドナーのところから行ければいちばんいいのですが、それはいまは難しそうなので、iPS細胞のところまで、ロットまで戻れば、同じところに大体いくだろうということを保証すればいいのではないかと思っております。
○高坂委員 「ヒトiPSに係る医学・生物学的安全性について」ということで、青井先生も非常によくまとめてくださっていると思います。特に、もし指針を作ることになると、こういったことが盛り込まれなければいけないということで、たたき台としては非常に良いものができているのではないかと思っています。
 その上での発言です。話を元に戻してしまうようで恐縮なのですが、この委員会で進め方として決めていないことがいくつかあると思うのです。それは、当初のESに限るのか、要するに対象細胞としてESに限るのか、あるいはiPS細胞も入れるのかといった問題がまだ残っています。特に体性幹細胞を入れるかという問題も残っているわけです。
 もう1つは、ESに関連して樹立・分配・使用といったものを臨床研究に使用できるようなものを独立して作ると。本体はあまり触らないということにするのか、その先には文科省とのES指針との整合性をどうするかという問題が出てくるのですが、その辺りはまだはっきり議論の中では、これから決めるという形で決まっていないのです。ですから、いまここで別の章立てにしたほうがいいとか、それはまだ非常に早い議論で、そういった方針が決まれば、ここで全体会議をやるよりは、WGを作ってしっかりとしたたたき台を作っていくのがいいと思っています。ですから、これはこれで非常に良いたたき台を作っていただいたということで、ありがたいと思っているのです。
 これは事務局にお願いしたほうがいいのかもしれませんが、方向性をそろそろ決めていっていただけないかと思うのです。いつもこういった大事な問題で、一つひとつ勉強していくことは非常にありがたいことなのですが、あと1年ぐらいでしっかりまとめていかなければいけないというタイムコースを考えると、先ほど申し上げた全体の指針の改正にあたっての方向性をきちんと決めていただかないと、少し分散しているような気がしますので、意見を申し上げました。
○永井委員長 当然、スコープには入っていると言えると思いますが、いまの点について事務局はどうですか。
○谷室長 方向性について、まさに高坂委員がおっしゃるように、ある程度の方向性があると議論の収束は楽ではありますが、実際にどこまで何ができるのかということと、何が共通項目なのかに基づいて、もう1つ体性幹細胞については次回ご議論いただいた上で、事務局とWGで、ES、iPS、体性幹でどこが共通項目で、どこがそれぞれの細胞によって特異的なのか、それに基づいて、実際にどこまでのバンキング、要するにアログラフトにおけるバンキングができる細胞であるのかということについて、まさに委員会の中で、ある程度生物学的に、まず決めていただくということを次々回に予定をさせていただいています。
 それに基づいたあとに、ではどの細胞が対象になるかに基づいて、どういうトレーサビリティの確保であるとか、あとはどういうICが必要なのかということを詰めていかないと、医学的根拠がないものに基づいて議論というのも難しゅうございますので、そういったステップを踏みながら最終的には決めさせていただきたいと思っているところです。
○岡野参考人 前回、中畑先生が委員長のときに、私は委員でしたが、私の理解では、体性幹細胞を用いたものに関しては、その時点でのアップデイトした知識に基づいて、2006年9月1日に施行された指針が作られたと思っております。ですから、いまのご議論は、その後いろいろな生物学的にチェックしなければいけない項目が出てきた場合に関しては、体性幹細胞については適宜補足あるいは修正すべきものであって、当時ES細胞に関しては、議論がまだ尚早であるので対象外とするという議論がありました。しかしながら、国際的な事情を鑑みまして、今回対象とすべきことを踏まえてご議論されているものと理解しております。
 iPS細胞に関しては、2006年9月、もともとその論文が出たのは8月26日ですから、すでに施行される5日前に出た論文ですので当然対象になっていないわけですが、この5年の間で急速に研究が進展しましたので、今回、十分対象となる候補として議論してきたということで、もしそれを対象とするならどのようなことが必要かということで、私と青井委員が呼ばれて、iPS細胞をヒト幹指針の遡上するならどういうことが必要か、ということを申し上げていることだと理解していますので、当然我々としては、ES、iPSに関して、十分科学的な根拠に基づき行けるだろうと思って、そのために何をするかということについて、私はプレゼンしているつもりですので、参考人としましては、そのような立場でお話をさせていただいているということです。
○位田委員 2点ほどお尋ねします。1つは、10頁ですが、樹立・分配において求められる主な事項ということで、ドナーのさまざまな情報を当然付けて使うわけですね。そのときにドナーとの連結はずっと維持するということなのでしょうか。特にバンキングするという話が出ておりますので、その辺はどうなのかなと。
○青井参考人 その問題について、私自身の考えは連結可能であるべきであると考えています。委員会としても、連結可能という線は、昨年度の最後にはと理解して、その前提で話をしてきました。つまり、連結が残っている形での管理と。
○位田委員 その場合に、数日前でしたでしょうか、日赤の血液を使ってiPSを作るというときに、HLAタイプを合わせれば使えるという見込みがあるときにも、連結可能でバンキングをするということなのでしょうか。
○青井参考人 つまり先生の意図は、もうHLAが合っていることがわかっていれば、ほかの情報は切ってもいいのではないかというお話でしょうか。
○位田委員 ええ。もちろん感染症とか、いろいろなほかの問題はあり得るかと思いますが、原則的な形として。
○青井参考人 私の考えでは、HLAの一致如何にかかわらず、連結可能であることは維持したほうが、医学の発展のためにいいだろうと。と言いますのは、再三強調いたしましたが、我々生物、あるいは固体というのは、我々がまだわかっていない情報が山ほどありますので、それを後から突き合わせてやると。医学の一般の発展というのは、患者の病歴を取って、個人のパーソナルヒストリーを詳細に見て、最後は病理解剖させていただいて、それを照らし合わせて鑑定だといって、いまの医学があると思っていますので、そういう形が幹細胞の研究でも出来る形を置いておくことは重要ではないかと私自身は考えています。
○位田委員 もう1点です。13頁のインフォームド・コンセントに関する部分です。インフォームド・コンセントを、いつ、どこまでやるかというのは非常に難しい問題だと思うのですが、例えばゲノムの最初の指針などでも議論したのですが、具体的にこの細胞もしくはこの検体はこういう研究に使いますと、これは第1段階です。そのうえで、予想ができる範囲において、今後こういうことにも使いますよという説明をする。そこまでお話しているのであれば、そこの部分までは研究できますと。しかし、あまりにも一般的にゲノムの研究をやりますというのは駄目ですという話になっていたと思います。
 青井先生のおっしゃった、将来的にiPS細胞を作って、それを臨床研究なり現実に治療に応用するというときに、例えばどういう細胞もしくはどういう組織であればiPS細胞の研究なり治療に使えるのかということは、あらかじめ必ずしもわからないですよね。そうすると、将来的にどこまで予測してインフォームド・コンセントを受けるかというのは、非常に難しいと思うのです。全く関係ないところで、けれども細胞が保存されている。そこにあるからそれを使って、例えば治療するなり、研究をするなりということになると、結局iPS細胞というのも体細胞であればどこからでもできるというのが原則だと思いますので、その辺の将来的にどこまで予測して同意を求めるかというのが、おそらくこのインフォームド・コンセントのいちばん重要な部分かなと思うのです。
 全く予想されていないけれども、特に商業利用などを考えても—最終的に商業利用のところまでいかないと、iPS細胞による治療はおそらく私はできないと思っているのですが—そうすると、10年、20年後、いつのことになるかわからないけれども、そこまでは説明しておいて同意を受けるというのは、強ち不合理ではないと思うのです。その辺の見極めが、いま言えるのはどこまでだ、将来的に確実にここまでいくのだということがわかっていれば、それを最初の同意のところに含ませておいて、iPSと全く関係ない研究なり治療や検査なりで細胞組織をいただくのだけれども、ひょっとしてiPS細胞を作ることになるかもしれませんよ、というのを含める形でないと、なかなかインフォームド・コンセントはできないのではないかという気がするのです。
○青井参考人 なるべく一般論としてのプレゼンテーションになるように心掛けているのですが、私自身は商業利用の可能性まで最初に言っておいたほうが、むしろトラブルは少ないのではないかとは思っていたところです。
 先生方に特に教えていただきたいのは、段階的同意ということのデメリットです。つまり、ここまでできているのだけれども、次もできているからOKしてくれませんかという言い方というのは、私は大きな引っかかりがあるような気がして、一方で、最初だと見込みが少しわかりにくいので、何々を使うといっても、それは海のものとも山のものともわからない状態で、イエスともノーとも言えませんというのはあるかもしれません。それはバランスの問題だと思うのですが、その前者の段階的同意のデメリットというのは圧力になり得るという考え方は、一般的にはどう考えたらいいのでしょうか。
○位田委員 段階的同意の取り方というのは、最初に同意を取った人に本当に行きつけるかというのが、まず難しい場合があると思います。最初に同意をいただいたときには、例えば病院に来ていた患者であると。あとでiPS細胞の研究が進んで、例えば2年後に同意を取りたいと思ったら、どこにいるかわからなくなるという、取る相手がいなくなる、もしくは相手とのコンタクトが非常に難しいというのが、技術的にいちばん大きな問題であると思うのです。
 他方で、ドナーへの圧力になるかどうかというのは、なるとも言えるし、ならないとも言えると思うのです。というのは、ドナーの圧力になる、つまり、いまここまで進んでいるから是非くださいという形で受け取る方もあるでしょうし、逆に、ここまで進んでいるのだったら、もっと使っていいですよという、ある意味ではインセンティブになる可能性もあるので、圧力になるかならないかというと、なるかもしれないし、ならないかもしれないです。そこは説明の仕方とか、全体の状況がどうなっているか、それを同意する人がどこまで理解しているかにもよるのではないかと思います。そういう意味では、きちんと説明をしていただいて、一般に対して、いまここまでiPSが進んでいるということを、常に情報を開示するというか、そういうことを前提にすれば、段階的な同意でもいけるかなと思います。
○青井参考人 いまインフォームド・コンセントの話になりましたので、プレゼンテーションのときに忘れていたことに気づいた点がありますので、申し上げます。資料2の5頁の上のほうですが、先ほど西川先生から「臍帯血」という言葉があったので思い出したのですが、(コメント)というところで、臨床用のこういった、いま議論している目的でのiPSに関する積極的な同意のないものは不可であるということを、指針に明記すべきかどうかという議論は、是非この委員会として議論いただけたらと思います。すなわち、例えばいま話のあった臍帯血は、もちろん本人から「iPS」という言葉も含んで、積極的に同意となっていないですし、海外から入ってきた株のときに、国によっては駄目とは言っていないとか、研究一般に使うとか、移植一般に使うとか、iPSとは言っていないけれども、駄目とは読み取れないというものはOKにするのか、やはりこういう始まりの段階ですので、より慎重な形で、積極的にiPSで臨床に使うと言っていないということを書き込むべきなのかというのは、これは本当に私はわかりませんし、私が判断すべき立場のものでもありませんので、この点はどこかの段階でご議論いただきたいなと思います。
○岡野参考人 やはり他家移植をする部位においては、健康な方のiPS細胞とそれ由来の細胞が移植されるというのが、治療を受けられる方にとっての前提になろうかと思います。したがいまして、ドナーの情報が極めて乏しいような細胞というのはあまり望ましくないのではないかと思っています。臍帯血にせよ、その道を閉ざすわけではないのですが、その臍帯を取った方がどれだけ健康かというエビデンスは科学的には非常に乏しいですよね。それから、例えば201B7などを作った36歳の白人女性がどれだけ健康なのか、50歳になって糖尿病を発症したのかはわからないわけです。
 ですから、そういった連結不能匿名化になっている、あるいはトレースができないような方というのは、どちらかというと望ましくないと。禁止するかどうかは議論のあるところなのですが、そこはよく考えてICを取るべきだと思っています。ですから、連結は可能にしておきながら、私としては、一方で、位田先生がおっしゃいましたように、そのドナーの方に行きつけなくなる可能性もありますので、段階的なインフォームド・コンセントというよりは、最初から商業利用も含めてICを取っていくという戦略がいいのではないかと思っている次第です。
○中畑委員 段階的なICを取り直していくというのは、実際問題としては非常に難しいのではないかと思いますので、最初からできるだけ幅広い同意を取っていくと。当然、以前からの体細胞を用いた指針のときにも問題になったように、遡及調査もしっかりできて、こういう新しい治療の今後ずっと日本の中でフォローアップできる体制ということを考えますと、当然のことながら、連結可能匿名化という形で進めていくことが基本的なことではないかと思います。
 段階的でなくて、包括的に、最初からICはしっかりと取っておくということであれば、先ほど少し議論になった、作ったiPS細胞が将来何に使われるかを最初から提示するのは、いまの時点では非常に難しいということになると思うのですが、患者の中には、こういう臓器には使っていいけれども、例えば神経には使っては嫌だという方も、中にはいらっしゃるかもしれません。その辺のところも、最初からのICの中に多少含めるのかどうか。
 もし含めないとすると、iPS細胞から分化させた細胞を再生医療に使うことに当たっては、この国あるいはその施設の倫理委員会の中で、しっかりそれが倫理性を持っているかどうかということが議論されて使われるのだということを、かなり明確に謳っておく。それによって最初から使う目的が、ある疾患に限定されなくても、そういう形で使えるようなICを取れるのではないかという気もしますので、そういった方向を考えていったらどうかと思うのです。
○位田委員 インフォームド・コンセントというのが、暫々All or Nothingで考えられてしまっているのではないかと思うのです。つまり、同意をする側が条件を付けるという形のインフォームド・コンセントもあり得るのではないか。こちらとしてはいろいろな研究なり、治療に使いたいという説明をして、使わせていただいていいですかと。同意をする側が、例えば私は神経細胞系にiPS細胞を分化させる研究にだけ使ってほしい、そこだけだったら同意をするという条件を出してきたときに、それも認めるような形でないと難しい。そういう条件付き、もしくは部分的な同意では困ると言われると、やはり同意をする側は嫌がるのだろうと思うのです。
 ですから、それは例えばイギリスのバイオバンクでも同じで、いろいろな条件を付けても同意を得たことには間違いはないので、ただ、その条件の中であれば使える。もちろんバンクに入れるときに、こういう条件付き、こういう条件付きと、いくつか条件によってカテゴライズする必要があるので、手間暇はかかると思いますが、All or Nothingでしか駄目だという形だと、ある意味では同意をする側の同意権も侵害されることになりますし、倫理委員会で使っていいのだと言われると、そしたら最初から同意などなくてできるのではないかというところにまでいってしまいますので、やはり条件付きの同意というものをいくつか類型で考える必要があるのではないかと私は思っています。
○中畑委員 もう1つ、先ほどの岡野先生の話の中に、できるだけ健康な人から作ったiPS細胞を再生医療に使うということがありました。基本的なところは私も全く同感なのですが、臍帯血が少し議論に出てきました。臍帯血の場合には、あれも一応家族歴を取って、6カ月の時点で、少なくともそこで明らかになるような病気は全くないということを、アンケートを取って確認できたものだけを、臍帯血として保存しているわけです。だから、そこでできるだけ健康な臍帯血を医療に使うという当初の目的は全く同じ考えでしたので、臍帯血に何か病気を持った細胞が混入しているということは、かなり誤解を与えますので、現時点でできる健康な臍帯血は保存すると。
 今回、このiPS細胞を作るということも、現時点で健康なことが確認されて、保存されている臍帯血を使ってiPSを作るということですので、一応考え方としては、ある程度合致していると思いますので、その点は一応言っておきたいと思います。
○岡野参考人 もちろんセレクションが掛かっていれば、私としては否定するものではありませんので。
○谷室長 インフォームド・コンセントと海外からの輸入の件については、安全性の後に、議論の会を設けることとしています。今回、特にiPS細胞として特異的な部分についての必要な要件について、議論を深めていただければと思います。
○直江委員 ICの問題ではなくて、安全性というところで青井先生にお聞きします。3頁のスライドで、私たちがiPSというと遺伝子を導入しているということもあって、造腫瘍性はどうなのだということが、ESと比較しますと考えられることなのです。それと、先ほどの先生の肝細胞への分化というデータですが、同じドナーを使ってもクローンが違うと、振る舞い方が違うということからいうと、かなり微妙な差がそれぞれのクローンにおいて違うというようなことからすれば、いちばん最後の先生のたたき台を見ますと、例えば感染のほうはエンドトキシンとか、コンタミネーションしているウイルスとか、随分書いてあるのですが、造腫瘍性のことが書いていないのですが、この辺はいまの技術で遺伝子を調べても、それががんになるかどうかということは予測できないということで考えられているのか、それとも、将来的に技術が進めば、ある程度このようなものは扱わないほうがいいという議論になっているのか、その辺はいかがなのですか。
○青井参考人 これは私の考えでありますが、造腫瘍性ということに関して、病態のリスクとしてどのようにして起こっているかということで、唯一明確なのは、未分化細胞の混入による腫瘍は、ひとつiPSに関連したもので言えています。
 実は、それとても実験動物に未分化細胞をいろいろなところに打っても、何も起こらない場合のほうが多いという例もあるのですが、ただ、それは大きなリスクファクターとして排除しないといけない。それ以外のメカニズムによる腫瘍に関しては、ほとんど我々は知らないと考えるべきかと思っています。それはiPSからの腫瘍というだけではなくて、そもそも我々多くの方が罹患する腫瘍の発症機構について、多くのものはわかっていないという現状があります。ただ、明らかな核型異常であったり、そういうものは現実的には技術として調べておいて、また懸念事項として思われるようなことは見ておこうと。ただ、それ以降あまり厳しく、例えばシークエンスを行って何か異常が検出されたら使わないとか、OKなら使うということが指針で定められるのは、技術的には適切な状況ではないと私は考えています。
○岡野参考人 いまの問題は大変大事なところですので、我々もそういった研究をしております。明らかに、ある特定のCopy number variationで、がん遺伝子がすっ飛んでしまったものとか、百発百中で腫瘍化するのは我々はわかっていますので、こういった変異があってはいけないというのは、ある程度は言えるところですけれども、何を満たしたら本当に安全かというところをプレディクションするのはかなり難しいと。ただし、20個ぐらいの遺伝子のリプログラミングの程度が、ある程度完全であると腫瘍化する確率が極めて低いというところまでわかってきています。ただし、これは科学が発展すれば、もっと新しい方法が出てきますので、あまりそこはspecificに書くというよりは、腫瘍原性を予見するようなバイオロジカルなマーカーがないということを、でき得る限りの実験において確認するとか、そのような書き方しか指針としては難しいのではないかと思っています。これこそ、進展のあまりにも激しいところですので、ポイントとしては、そういった腫瘍原性に対して、何らかの科学的な検証をするというのを盛り込むというのはすごく大事なところではありますが、その書きぶりに関しては、今後の研究の発展を見込んだ形での作文が相応しいのではないでしょうか。
○直江委員 ある程度いまでも懸念されているので、どのように書くかというのは非常に微妙な問題ですが、一言もないというのは、まずいのかなと思います。
○岡野参考人 もちろんですよ、書かなければいけないとは思うのですが、書きぶりは少し。ただ明らかに、がん遺伝子が、P53が飛んでしまっているものは絶対にアウトですから、そこは。ただ、そこのディテールを全部書き始めると、指針としては相応しくない文書になるので。明らかな腫瘍原性を疑われるような異常のある細胞は排除すべきであるとか、そういった書き方は可能ではないでしょうかね。
○永井委員長 iPSで、どのくらい変異が起こっているのですか。いくつか論文はあると思うのですが。
○岡野参考人 まず変異が起きているものは最初から除外していまして、発現量の他家移植でも、20個ぐらいの遺伝子でリプログラミングに異常があるものに関しては、それらは使えないというところまでわかってきています。ただ、そこは先ほど申し上げましたように、科学が進展するともっと絞り込めたり、ほかの遺伝子について組合せで考えなければいけなくなる可能性がありますので、結局のところは、がん遺伝子関連のものについてderationや明らかな優勢のpoint mutationが入ったもの、こういったものが使えないというのは。昔から当然考えられるようなものは、明らかに排除できる細胞だということです。
○永井委員長 樹立過程でそういうことは起こり得るわけなのですね。実際、動物実験等で使っているのは、かなりそういうものは除かれたものであるということですか。
○岡野参考人 樹立過程と、分化誘導過程で入ることもあります。ですから、最終商品と未分化のiPS細胞の両方で比べなければいけないと思っています。
○青井参考人 いまのに関連した科学的な知見ですが、我々は数十クローンぐらいのiPSのマイクロアレイの毒性解析と、数十クローンぐらいを神経分化をして、分化抵抗性、つまり神経分化をしたあとでも、なお未分化細胞マーカーでアロ抗原を発現する細胞がどれだけ残るかというアッセイを行いました。そうすると、数十クローンのうちの6か7ぐらい、割合は少なかったのですが、それで分化誘導後も未分化細胞が再現性をもって残ってしまうという株がいることがわかりました。しかし、多くの株はそういうことは観察されていません。
 その一方で、それらの実験をした多くの株において、SNPアレイを用いたCopy number variationの変化も見ております。
 その結果、特に分化抵抗性という点において問題がないと判定されたものに関しましても、いくつかのcopy numberの変化というのは検出されています。ですから、copy numberの変化がどこかしらにあったら必ず除外するとなると、なかなか難しいかなというのが現実であろうと。ですので、岡野先生のおっしゃるように、いままでのoncologyの蓄積の中で、遺伝子は重要だというところに絞って見ていくというのが、現実的な対応かなと思います。
○中畑委員 少なくとも、最終産物を使って、造腫瘍性があるかどうかのチェックは、どこの先生も必ずやると思うのですが、それについて当然書くわけですが、それにプラスして、アディショナルに、いまの時点で危険因子としていくつか挙げて、それをpredictできるようなものを挙げることができるかどうかというのは、現時点では難しいので、その辺は幅広い、将来を見越したような書きぶりにして書くことになるのではないかと思うのです。そういう方向で私はいいのではないかと思いますが、いま実際に行われている、例えば造血幹細胞移植なども、本当の意味で、そういったきちんとしたスタディーというのはやられていないわけですよね。だから、中にはドナー由来の白血病が起こってきたという例も実際に報告されていますので、そういったことを考えますと、現時点でできる造腫瘍性のチェックというのは、免疫不全動物を使ったチェックの体制というのはありますので、その辺をしっかりと織り込んでいくということで、私はいいのではないかと思います。
○岡野参考人 私もそれでよろしいと思います。FDAでの細胞治療の審査というのは、例えばヌードラットで7カ月とか、NOSキッドでその動物が死ぬまでとか言われているところですので、そういったことを実際に書くかどうかは別としまして、考えられる免疫不全動物を使った造腫瘍性を見ていると。
 ただし、先ほど西川委員がおっしゃっていますように、7カ月でいいのかと。人の場合は移植して10年経ったらどうなるかという問題がありますので、これは臨床研究指針ですから、万が一、造腫瘍性試験でネガティブであっても腫瘍が発生する場合がありますので、そういったことが起きた場合、何らかの処置が取れることを考えておくというのは、やはり私は一言要るのではないかと思うのですが、どうでしょうか。
○西川委員 これを書いたからいいというものは全然なくて、直江委員も中畑委員もよくご存じだと思うのですが、フランスのコモンガンマ鎖の免疫不全症の治療が行われて、12例中4例に白血病が出たと。もちろん、そのうちの3例は治るのですが、誰も予想しなかったことは、その4例ともがすべてLMO2という遺伝子の、同じ所に遺伝子が入っていたのです。ですから、こういうことはほとんど考えられないことが、私たちの30億塩基対には起こり得るということを考えておかなければいけないと思います。
 それから、もう1つ具体的なデータで、先ほど永井委員長がおっしゃいましたが、例えば先駆けの若い人にもそういう研究をお願いしたことがあります。そのときわかっているのは本当にES細胞と比べるときにどう比べたらいいのかわかりませんが、ある一定の期間細胞を培養すると、ES細胞だと大体30億のうち700ポイントぐらいに変異があります。その大体2倍から3倍が、iPSではくる。もちろん、やり方とかいろいろなのがありますが、少なくとも5クローンか何かを調べたものでいうと、エクソンには1個もなかったとか、そういうデータがたくさんありますから、これはきりがないです。
 ですから、造腫瘍性をこのように調べるということはあるけれども、患者のインフォームド・コンセントに関しては何が起こるかわからない。それは本当に覚悟して、しっかりとやっていくことが大事だろうと私は思います。
○佐藤(陽)委員 造腫瘍性あるいは、あとの議論に関係するのですが、iPS細胞の青井先生のご発表に関して言いますと、iPS細胞のストックをつくるための安全性品質という話で、結局iPS細胞のストックは何のためにあるのかというと、細胞培養器材、何かの製品をつくるためのCell SubstrateとしてのiPS細胞をつくるためのストックということになります。そうするとCell Substrateを管理するための国際ガイドラインというのが、ICH-Q5Dというのがありまして、そこで造腫瘍性というのをどのように取ったらいいかということが書かれているのです。
 ICH-Q5Dの造腫瘍性というのは、どういう目的で測定するかというと、人での腫瘍原性ではなくて、既知であれ未知であれ、何か感染が起こったり、ストレスがかかることによって、増殖特性がどう変化するかを見るための指標として、造腫瘍性を測ると。品質管理の一環として、造腫瘍性を測るという測り方なのです。
 おそらく、このiPS細胞のストックをつくるときの造腫瘍性の評価というのは、それと同様の形で造腫瘍性を測るなら測る必要があるかと思うので、最終的な製品にどこまでリンクするかというのは、先ほどの脊損に対する神経細胞をつくるときの分化抵抗性あるいは造腫瘍性というのとは、また違った意味でのものだと私は考えています。
○永井委員長 ほかにご意見はいかがでしょうか。
○中畑委員 テラトーマまで造腫瘍性の中に含めようとすると、iPS段階で移植をすれば、ES細胞でも100%が腫瘍を造るわけです。だから、見方として、最終製品で移植する細胞を使って、患者に危険を及ぼすかどうかというところで判断すべきではないかと思うのです。ほかの体性幹細胞と違って、非常に異常な増殖性を獲得したということの指標として、動物を使ってみるというのは、今回は当てはまらないのではないかと思うのです。
○佐藤(陽)委員 ICH-Q5Dのガイドラインというのは、そもそも抗体薬をつくるようなCHO細胞とか、ワクチンをつくるような不死化した細胞株の品質管理のためのガイドラインなのです。ですから、中畑先生がおっしゃったように、もちろんiPS細胞も高容量を打てば100%なのですが、10匹中何匹、どのドーズで腫瘍が起きるかというのは、ある一定の範囲内にあるわけで、EC50のようなものがあるわけです。EC50が、例えば極端に下がってしまうような場合ですと、それはバンクとして、あるいは細胞の集団として異常があるということがわかるわけで、それをきちんと評価しなさいというのが、ICH-Q5Dなのです。
 そういうコンセプトの下に書かれていますので、要するにそういうsubstrateをつくるためのiPS細胞のあり方なので、そういったガイドラインを参考にして、造腫瘍性を品質評価の一環として、どのように捉えるべきかということを記述していったほうがいいのではないかと私は考えます。
○青井参考人 佐藤先生のいまのお話ですと、未分化iPSに関して、腫瘍をつくるようなバイオアッセイというか、例えばドーズを減らして何匹中で何匹つくるというようなアッセイをして、その成績が大きく変動したら、何らかの変化が起こっているのではないかというアッセイを盛り込んではどうかというご意見だと理解してよろしいでしょうか。
○佐藤(陽)委員 造腫瘍性を生物substrateとして評価しようとするならば、そういった評価が必要になります。
○青井参考人 私自身の意見としましては、動物もなるべく使わないでおこうという時代の中で、その性質の変化を捉えるという目的で、いまのこのいろいろな技術がある中で、その話はあまり有効ではないのかなという気はいたします。
 それより、おそらく永井先生をはじめ、いろいろコメントをいただいているのは、最終調整物を投与されるものの造腫瘍性に関連したことを、何かiPSの時点でカバーできるかということに絞る、つまり、この樹立・分配の枠の中での造腫瘍性の問題というのは、どこに位置するのだということを明示して、その中で具体的には岡野先生がおっしゃってくださったことをしていくというのでいいかなと。
○佐藤(陽)委員 おそらく最終製品の造腫瘍性というのは、iPS細胞の段階では、目的を規定しない限りはわからないというのが私の感想です。結局、どこまで未分化細胞の存在率を下げることができるかなどによっても、全く結果が変わってきます。要するに、iPS細胞の段階でどこまでというのは目的を決めない限りは評価できないと思います。
○永井委員長 ほかにいかがでしょうか。
○谷室長 導入する遺伝子は、いまは4つとなっているのですが、今後変化があるかということと、導入方法で、ほとんどレトロウイルスは使わないと思いますが、導入方法などについて、ある程度ルール化をすべきなのかとか、途中経過における特異的な操作があると思うのです。ES、iPSは、体性幹とも違います。そういったところについては、何かチェックをしたほうが安全性の担保になるような行為というのは。
○青井参考人 いまも最初の4因子というのは使わない場合が多くて、6個の因子を使ったりしています。これは今後もどんどん変わる可能性はあります。
 因子導入方法もいろいろな方法があるのですが、それは指針の中で規定はしないでいいかなと私自身は思っています。ただ、もちろんそれを明確に記載しておかないといけません。手順に関しても、指針として、あるいは審査の段階で、このやり方でないと駄目とか、この操作をしたら駄目とか、あまりそういうことを書き込むと、なかなか技術の変化に追い付いていかないような気がしますので、とにかくいろいろな手順も、原材料やドナーの情報等も含めて、我々はいろいろな情報をしっかりと残しておいて、あとで活用できるようなことをきちんとやると。つまり、何が行われたかが残るようなことはしっかりと書き込んでおいて、その中身はどうやらなければいけないというのは、あまり規定すべきものではないのではないかと思います。
○西川委員 先ほど直江先生がおっしゃったことに関連しますが、ゲノムに導入遺伝子が組み込まれる場合は、遺伝子治療でわかったような問題もあるので、そういうテクノロジーはやめるとか、除外規定をどこかで設けておかないと、どれでもいいという話はよくないという気はします。いまいろいろな技術がすでにあるわけですから、少なくともゲノムに導入遺伝子が組み込まれない方法とか、そういうことは要件として書いてもおかしくないと思います。実際に、そういうのはみんな使っているわけです。
○青井参考人 関連する話だと思うのですが、資料2の10頁のいちばん下に(コメント)として書いてありますが、方法の変更等に関しては、この指針の中では触れていません。薬事のそれに類似する指針では、方法の変更に触れられているのですが。これは私の意図としては、どんどんいろいろなものが変わっていきますので、臨床に使う出口のところの研究をiPSを使ってやらされる先生が、この指針を満たすようなつくり方をされているiPSを使っていればいいということで、樹立・分配するiPSをいまからこうやってつくりたいと思いますということで審査を受けてというのではなくて、‘後ろ向き審査’を想定していろいろなことを書かせていただいております。その点は、もちろんこの委員会において決定していただくことだと思うのですが、私の意見としましては、いろいろなことに付いていこうと思ったら、後ろ向き審査が好ましいのではないかと考えています。
 それから、恒常性の問題というのは、薬事のほうではGMP製造という繰り返し製造を想定したものですので、先ほど佐藤先生からロット間の同等性、均一性はいいのかという話がありましたが、そういうことは出てくるかと思うのですが、株ごとの特性が、ロット内の均一性が示されれば問題ないとしたので、13145通知や、今回の早川先生の新しい指針案等で述べられている恒常性の項目は入っていないと。
○永井委員長 後ろ向き審査というのはどういうものですか。
○青井参考人 正式な用語ではありません、申し訳ありません。iPSを樹立・分配する、臨床用のiPSをいまから私たちの研究機関が作ろうとしたときに、作りますという研究計画を書いて、その後それを審査いただいて、OKが出たら初めて作ることに着手すると。これは私の中では‘前向き審査’という理解です。
 一方で後ろ向き審査は、振り返って、このiPSはどうやって作っていたのかの作り方の資料を提出しなさいといったら、すべてこれを満たしている内容であったと。それで、それは次の分化誘導をして、臨床的に使えるという。
○位田委員 トレーサビリティのところで、先生の話を聞いているときから気になっていたのですが、指針にはとりあえずのミニマムな基準を入れないと、何を基準にして、これはよい、これは駄目だということになるかは難しいと思うのです。つまり、作って、いろいろな条件をあとからもう1回検証するというのは非常に重要だと思うのですが、何か起こってから、またあとで振り返って、やはりここが悪かったというのですと、実際に臨床研究なり、臨床応用なりを始めるときに、事が起こってからでは遅いわけです。少なくとも、患者には大きなマイナスが出てくるわけなのです。
 そうすると出発の時点で、例えば今年度中に指針を作るとすれば、来年の3月の段階で、ここまでは確保してほしい、そういう科学的な基準というのは置かざるを得ないのではないかと思います。
○青井参考人 私が理解しているかの確認のためにお尋ねします。例えばそれはドナーの適格性ということで言えば、明らかな家族性腫瘍が疑われるような個人歴であるということであったり、ゲノムとかの品質管理ということでいうなら、明らかにいままで発癌との関連が指摘されているがん抑制遺伝子の欠損等を調べて、それがないこととか、そういったことをわかっていることは書いておくということで正しいのでしょうか。
○位田委員 確実にここが駄目だというのは、書いておかないと。そのあといろいろやってみて、あとで振り返ってみると、これは駄目でしたというのは患者の負担になるでしょうし、患者の生死にかかわる可能性があります。やはり、わかっている段階ごとに、ここまでは確保しましょう、例えば1年後になれば、まさにretrospectiveに見た場合に、これも駄目だ、ここはよいというのがわかったときに、1年後にその基準に触るとか、そういう形でないと、最初からあまり詳しく書かないでというのだと基準になりにくいと思います。
○岡野参考人 位田委員のおっしゃるとおり、科学の発展によって変わるとはいえ、駄目なものとか、変わらないものというのはありますから、そこは指針の説得力にかかわるところですから、駄目なものは明記したほうがいいのではないかと思います。この方法が望ましいというのは変わり得るところですので。
○永井委員長 よろしいでしょうか。
 よろしければ、今日のご意見を参考にして、事務局でさらに方向性を出していただきたいと思いますし、また委員の先生方からお気づきの点がありましたら、メール等でお知らせいただければと思います。よろしくお願いします。事務局から連絡事項等をお願いします。
○谷室長 次回の開催は9月12日(水)の15時から17時で予定しています。場所は未定ですが、詳細が決まり次第、メール等でお伝えしますので、よろしくお願いいたします。
○永井委員長 それでは第20回厚生科学審議会科学技術部会ヒト幹細胞を用いる臨床研究に関する指針の見直しに関する専門委員会を終了します。青井先生、岡野先生、ありがとうございました。皆様、ご苦労さまでした。


(了)

照会先
厚生労働省医政局研究開発振興課再生医療研究推進室
TEL  03-5253-1111
内線 2587

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