- ホーム >
- 政策について >
- 審議会・研究会等 >
- 労働基準局が実施する検討会等 >
- デジタル撮影によるじん肺標準エックス線画像に関する検討会 >
- 2010年10月22日 第1回デジタル撮影によるじん肺標準エックス線画像に関する検討会議事録
2010年10月22日 第1回デジタル撮影によるじん肺標準エックス線画像に関する検討会議事録
日時
場所
議事
○中央じん肺診査医 本日は大変お忙しい中をお集まりいただきまして、誠にありがとうございます。ただいまより、「第1回デジタル撮影によるじん肺標準エックス線画像に関する検討会」を開催いたします。はじめに、厚生労働省安全衛生部労働衛生課長の鈴木幸雄から、ご挨拶を申し上げます。
○労働衛生課長 本来ですと安全衛生部長の平野から、ご挨拶を申し上げるところでございますが、本日は所用のために、代わってご挨拶申し上げます。委員の皆様方におかれましては大変お忙しい中、デジタル撮影によるじん肺標準エックス線画像に関する検討会の委員をお引受けいただき、本日ご参集いただきましてありがとうございます。さらに、日ごろから労働安全衛生行政の推進にご理解とご協力をいただきまして、ありがとうございます。
昭和35年に制定されたじん肺法におきましては、じん肺に対し、適正な予防及び健康管理などを行うことにより、労働者の健康の保持に寄与してきたところであり、粉じん作業に従事する労働者に対するじん肺健康診断は定着していると考えております。そうした中、現在使われておりますじん肺の所見を判断するための標準エックス線フィルムは、昭和53年に作成された写真であり、すでに30年以上が経過しております。その間、医療技術の進歩に伴いまして、エックス線写真の撮影もデジタル方式が主流になりつつあります。
このような状況を踏まえて、村田先生に主任研究者として厚生科学研究をお願いしてきたところですが、そうした成果を取りまとめて、デジタル撮影によるじん肺の標準写真についてご検討いただき、取りまとめをお願いしたいと考えております。我々といたしましてもこの検討会の成果を基に、じん肺に関する健康管理がより充実されるよう、鋭意努めてまいりたいと思いますので、よろしくお願い申し上げます。
○中央じん肺診査医 次に、参集者をご紹介いたします。資料1の2頁に名簿がありますので、この順でご紹介いたします。まず、長崎大学医学部・歯学部附属病院がん診療センター長の芦澤和人委員です。岡山労災病院副院長の岸本卓巳委員です。北海道中央労災病院院長の木村清延委員です。旭労災病院嘱託医の五藤雅博委員ですが、本日は都合により欠席されております。東京女子医科大学教授の坂井修二委員です。最後に、滋賀医科大学教授の村田喜代史委員です。
また、今回はこの名簿に載っている委員の方々とは別に、エックス線撮影機器メーカーを代表して、キヤノンマーケティングジャパン株式会社の西田省三さん、及び富士フィルム株式会社の岩木健さんのお2人を参考人としてお呼びして、撮影技術等の助言をいただくこととしております。カメラの撮影はここまでとしておりますので、以後の撮影はご遠慮願います。
次に、配付資料を確認いたします。まず表紙に「議事次第」と書かれている紙が1枚あります。その後に資料1から資料4と5頁にわたって続きます。その裏側に参考資料1があり、参考資料2の「じん肺診査ハンドブック」の抜粋が4頁あり、11頁に参考資料3、12頁に参考資料4までとなっております。
本検討会には座長を置くことになっております。座長は、今回の候補となっている写真を収集した、厚生労働科学研究の主任研究者でもある滋賀医科大学の村田先生にお願いしています。よろしくお願いいたします。
○村田座長 それでは司会を努めさせていただきます。円滑な議事の進行に、どうぞよろしくご協力をお願いいたします。本日の議題の最初として、今回の検討の趣旨について、事務局よりご説明をお願いいたします。
○中央じん肺診査医 資料1をご覧ください。1頁の「デジタル撮影によるじん肺標準エックス線画像に関する検討会開催要綱」です。まず「趣旨」です。じん肺管理区分の判定においては、申請者から提出された胸部エックス線写真を昭和53年に作られた「じん肺標準エックス線写真フィルム」(以下「標準フィルム」)と比較することとしております。この標準フィルムはアナログ写真であるため、年月の経過に伴う劣化が避けられず、複製によっても画質が低下します。さらに、作成から30年以上経過しており、代替が急務となっております。
また、近年デジタル方式のエックス線撮影装置の普及が進んでおり、今後はデジタル撮影による画像を標準として用いる必要性が高まっております。このため、厚生労働省労働基準局安全衛生部長の下に有識者の参集を求め、標準フィルムの後継となるデジタル撮影によるじん肺標準エックス線画像について検討するというのが、本検討会の趣旨です。「検討項目」は割愛いたします。
3番が「構成」です。(1)本検討会は、学識経験者、検討項目に係る関係者をもって構成する。(2)本検討会には座長を置き、座長は検討会の議事を整理する。(3)本検討会の参集者は、必要に応じて追加することができる。(4)本検討会は、参集者以外の者に出席を求めることができるということで、今回、参考人をお2人お呼びしております。
4番が「その他」です。(1)本検討会は原則として公開する。ただし個人情報、企業秘密情報を取り扱うなどの場合においては、非公開とすることができる。ここに関連して、本日、途中から個別の写真の検討が入ります。ここでは個人や企業などが特定され得る情報が扱われる関係で、その部分に関しては非公開とさせていただきます。(2)本検討会の事務は、厚生労働省労働基準局安全衛生部労働衛生課において行うこととしております。
○村田座長 思うに、資料1は検討会の構成と開催趣旨についての資料です。
何かご質問等はありますか。最初の趣旨については次の資料等でも、もう一度検討させていただきますのでよろしいでしょうか。
(意見なし)
○村田座長 それでは引き続き資料2及び資料3に沿って、この検討会の問題点、背景、進め方等について確認をしていきたいと思いますので、事務局からご説明をよろしくお願いいたします。
○中央じん肺診査医 3頁の資料2、「じん肺標準エックス線画像の現状と問題点等について」からご説明いたします。資料2というのは本検討会の背景を説明したものです。まず1の「現状と問題点」です。じん肺管理区分の判定においては、申請者から提出されたエックス線写真を「標準フィルム」と比較することとしています。次の段落は先ほどと同じですので割愛いたします。
3つ目の段落ですが、一方、エックス線写真を撮影する医療機関においては、近年、コンピューテッド・ラジオグラフィ(CR)、デジタル・ラジオグラフィ(DR)といったデジタル撮影装置の普及が進んでいます。現在、CRと半導体平面検出器(FPD)を用いたDRに関しては、一定の撮影表示条件を満たす場合に限って、じん肺健康診断に用いることが可能です。ただし、この一定の条件というのは、あくまでも従来の標準フィルムと比較するための写真が得られるように設定しております。ですから標準フィルムの劣化等の問題の対策にはなっていないということです。これらの状況を踏まえて、今後利用される標準フィルムの後継としては、標準写真そのものをデジタル撮影によるものとして用いる必要性が高まっているという状況です。
2番は「厚生労働研究における画像の収集と選定」についてです。デジタル撮影によるじん肺標準画像の作成に向けて、平成19年度~21年度の厚生労働科学研究「じん肺健康診断におけるエックス線デジタル撮影画像の活用に関する研究」、平成22年度厚生労働科学研究「じん肺健康診断等におけるデジタル画像の標準化ならびにモニター診断及び比較読影方法の確立に関する研究」ということで、いずれも本検討会の座長である村田先生が主任研究者を務められております。これらの研究において、候補となる画像の収集と選定が進められているところです。ここまでが背景です。
資料3が「標準画像の選定に関する論点について(案)」です。これが本検討会の進め方に関する案です。1つ目が「標準画像の必要要件」に関する確認です。現時点での案としては、厚生労働科学研究における画像の選定過程を踏まえて、3つの要件を掲げております。
ここで11頁の参考資料3をご覧ください。こちらが、村田先生が主任をされている研究において、画像の収集と選定の過程を示した図です。最初は全国7施設から1,209例の症例の写真を集めて、滋賀医科大学の中での症例選択とか、複数の施設の医師が集まっての判定会議を何回か経て、だんだん絞られてきております。1番下にありますように、現在28例というところまできております。この28例が、この検討会の候補として挙げられているものです。
その過程では、例えば第1次症例選択の所に四角い枠がありますが、標準画像として不適切な所見を示すものを外します。例えば胸郭の変形が強いとか、病変の分布が右と左の肺で差が強いもの、じん肺以外の病変があるもの、もしくは写真そのものの画質が不良であるものを外すという基準で選ばれております。第2次症例選択等では、じん肺として典型的な所見を示す画像を残すようにしています。最後のいちばん下のほうに、第3回判定会議の所に四角い枠があります。ここでは単純写真だけではなく、同じ患者さんのCT写真等も集めて、それと見比べながらの検討を経て進められております。
資料3に戻ってください。4頁目です。いまご紹介したような画像の選定過程を基に、標準画像としての必要要件に関して、まず確認させていただきます。現時点での案としては、(1)から(3)の3つを挙げております。(1)がじん肺として典型的な所見を示し、読影に影響をきたすような他の所見の混在がないことというのを挙げております。(2)が同一人における胸部エックス線写真以外の情報ということで、粉じん作業歴や胸部CT写真等を勘案して、じん肺の程度として妥当と認められることというのを挙げております。(3)が判定会議等を念頭に置いて、医師間で読影結果のばらつきが小さいことというのを挙げております。
ここまでが標準画像の要件に関する案です。
この要件を確認した後で、2番の「候補画像の個別検討」に入ります。これは実際の候補となる画像それぞれについて、先ほど設定した要件に照らし合わせて、標準として用いることの適否を検討します。資料に載せている写真は、基本的に厚労科研で絞り込まれた28例ではあるのですが、この施設とは別に複数の労災病院から出された最近の典型的なじん肺症例の候補もあります。厚労科研のものは2、3年前に撮影されたものですので、最近になって見つかった症例に関するご提案を、岸本先生たちからいただいています。こちらも本日は間に合わないので、第2回に候補として追加して、検討させていただくこととしております。ここまでが候補画像の個別検討の項です。
3番が「全体の構成の検討」です。このように候補写真それぞれの検討と従来の標準フィルムの構成等を踏まえて、全体としてどういう構成にするかということです。あと、従来の標準フィルムには0型から3型のけい肺の組合せ写真等もありますので、そういうことも含めた標準画像の全体像に関するご議論をしていただきたいと思います。
4番が「撮影条件等に関する技術的検討」です。エックス線写真の撮影、画像情報の保存及び出力の各段階において、使用する機器や技術に関する要件を検討していただきたいということです。
5番が「その他」です。今のところ具体的にはありませんが、もしあれば挙げていただければと思っております。
○村田座長 これまでの症例を集めてきた経過とか、今後、検討会でどういう方向でさらに精度を上げて標準写真を選んでいくか、その方向やステップをかなり詳しくご説明いただきました。個別に質問などはありますか。よろしいでしょうか。
いちばんのポイントは厚労科研で絞り込んできた28例、及び来週、岸本先生のほうから提示していただける何例かの症例も含めて、最終的にこの検討会でさらに絞り込んで、標準写真というものを作っていくことになるわけです。それには基準となるものが必要です。それが資料3の論点としてまとめていただき、1番に挙げられているものです。ここの議論から始めたいと思います。まず標準画像を選んでいくときの必要条件については、事務局を中心に、一応この3つのポイントを挙げてはどうかという提案をしていただいています。これについて議論を進めたいと思います。3つあるうちの(1)に関しては、じん肺として典型的な所見を示し、読影に影響をきたすような他の所見の混在がないことということで、結核の合併などがないということです。これはある意味で当然ではないかと思います。この(1)で何かご意見はありますか。
○木村委員 典型的な所見というのが難しいと思うのです。やはり画像は、できればp・q・rがそれぞれ含まれているような例を提示できるようにしたい。各プロフュージョンで全部出せるかどうかは難しいかもしれませんけれども、標準写真がほとんどpやqで終わっているのでは問題ではないかと思います。
○村田座長 ですから現在集まっている症例でp・q・rも含めて検討して、それを割り振って、足りないところが何かというのを明らかにし、それをまた次に追加するなら追加するということですね。
○木村委員 はい。
○村田座長 わかりました。全部の症例を揃えるというのは、なかなか難しいことだと思うのですけれども、ある程度標準となるべきものですから、偏りのない組合せが是非必要だと思います。この後の症例検討のときにその大きさと言いますか、p・q・rについても決めていって、何が足りないのかというところを明らかにしていくような検討をしていきたいと思います。
前回の昭和53年のときには、標準写真はエックス線写真だけで並べて、順に1型、2型等を決められたというようにお聞きしています。今回、私どもの研究班のプロセスでは、もちろんエックス線写真での個人判定、主観的な判定も重要視しましたけれども、同時に現在ではCTという、形態診断に関してはより客観的な情報を提供してくれるモダリティーがあるわけです。もちろん法律上、それを含めることはたぶんできないのでしょうけれども、標準写真を決めると
きの参考にはできるのではないかと考えました。
そこで2番目にありますように、エックス線写真以外の情報、粉じん歴をもう一度しっかりと洗い直すことと、CTも可能な限り参考にします。できれば全症例を参考にしたいのです。CTでのじん肺所見として認められている所見があって、かつ、その密度がどのぐらいかという何らかの基準が、たぶん本当は必要なのでしょう。それをもってエックス線写真の密度もこういうものではないかというように決めていき、標準写真の中でそれがどのぐらいかというのを決めていく。そういう方法を取りたいと思います。ご意見はいかがでしょうか。
○岸本委員 粉じん作業歴というのは、p・q・rにも関係があるかもしれませんが、粉じん作業の内容によってじん肺の陰影の質も違いますので、日本において現在も含めて可能な限り、過去にじん肺症を起こすような職業として、バラエティーに富んだものがいいのではないかと思います。昭和53年のときには、かなりいろいろな職業があったのです。またいいものがあれば典型例をつくっておいて、できればこういうものを保管していくということだと思います。
実は私が追加しようとしているのは、不整形陰影です。石綿肺です。昭和53年のときには石綿製品製造ですべて1から3まで取ってきております。1975年に石綿吹付けが禁じられて以降、もう30年以上経っていて、実際に日本で石綿製品製造というのはほとんど行われていません。石綿製品製造が韓国のほうに行ってしまったので、なかなか得ることは難しいのです。現在デジタル等で持っておかないと、これを未来にデジタル等で表すことができないと思いました。過去に石綿の高濃度ばく露が明らかで、なおかつ生きていらっしゃる方に来ていただいて、皆さんに一度見てもらおうというのが追加症例です。実はほかの職業はないのですけれども、そういうものもこういう機会に集めておけばということです。時間はかかるかもしれませんけれども、是非この機会に皆さん方にご議論いただきたいと私は思っていますので、ご意見をいただければと思い
ます。
○村田座長 これも先ほどのp・q・rと同じで、いろいろなバラエティーのある、職業ごとの所見というのは、なかなか難しいと思うのです。今回の研究班でも、粒状影をつくるようなタイプと、アスベストのような不整形陰影をつくるタイプと、粒状影をしっかりつくらない溶接工肺みたいなタイプなど、どちらかと言うと影のほうから3つぐらいの部分に分けたのです。そうしないと、職業ごとというのはほとんど不可能に近いと思います。できるだけバラエティーに富んだ職業を集めたいのですが、職業もだいぶ絞られてきていることもあって、標準写真に向けて粒状影、不整形陰影、その他の特殊なじん肺と言いますか、ちょっと違ったじん肺というようにきているのです。その方向性に関して、ご意見はいかがでしょうか。そのような方向でよろしいですか。岸本先生は、できるだけ多くのバラエティーがあったほうがよろしいですか。
○岸本委員 その辺りは私もどれがいいのか、正直なところよくわかりません。
○芦澤委員 資料4と参考資料1を見ますと、以前の標準写真はけい肺、石綿肺、その他となっていますが、資料4は陰影別ですね。これが全体の構成の検討にもかかわると思います。将来的な標準写真は、陰影の種類で出すのですか。先生はいま、そちらのほうで考えておられるということですね。
○村田座長 エックス線判定のときの粒状影、あるいは不整形陰影に対して1型、2型、3型というのが、参考資料4にあります。法律的に、じん肺法ではエックス線病型の判定をするときに、1型は「両肺野にじん肺による粒状影又は不整形陰影が少数あり」云々と書いてあります。ですからエックス線陰影を判定するときに、一応基本的には粒状影と不整形陰影で判定すると考えられるので、標準写真もそういう形でいいのではないかということできたのです。その辺りで先生方のご意見はどうでしょうか。
○岸本委員 いま我々は、芦澤先生と検討会を行っていますが、粉じん吸入によって慢性間質性肺炎が出ますね。基本的な考え方は、私も村田先生の考え方でいいのですが、結節影、特にけい肺の陰影はほかの疾患ではまずないのです。石綿肺の診断のところで、例えば高濃度のアスベストは吸っていないけれども、レントゲンで見ると不整形陰影のある方は、石綿肺なのか慢性間質性肺炎なのかの判別が大変難しいので、粉じんを吸っていて不整形陰影があるからこれはじん肺だという診断に短絡しなければよいなと思っています。
結節影はまずじん肺で間違いないだろうと思います。それから今回、黒鉛やい草などがありましたね。こういう陰影も非常に微妙ですけれども、これもまず間違いないだろうと思います。いちばん問題なのが石綿肺だと思っています。石綿肺の診断は簡単だと言っていらっしゃる方もいますが、これは非常に難しいのです。過去に石綿をある程度吸っていて不整形陰影がある者が、じん肺法の石綿肺であると簡単に診断されると困るなというところだけ、私はいちばんこだわっています。
○村田座長 中央じん肺診査医会でもいちばん議論になるのが、不整形陰影があって、アスベストの軽い既往があったときに、その不整形陰影をどう判断するかです。ただ、間質性肺炎の画像にもいろいろなバラエティーがありますし、アスベストの画像にもいろいろなバラエティーがあるので、絶対に違うともなかなか言い切れない。典型的な間質性肺炎だったら問題ないだろうと思うのです。今のところ十分なアスベスト肺のときには、ばく露がかなり強くないといけないので、アスベスト肺で記載されているようなもの、本当のことを言うとCTみたいな条件で、CTでドットが見えるとか線状影が見えるものプラス、しっかりとしたばく露歴があるものを一応選んで、標準写真にしていくべきだろうと思うのです。アスベストと間質性肺炎について、何かありますか。
○木村委員 確かに岸本先生が言うように、「不整形陰影」と言うといろいろなものが混じってくる可能性があるかもしれないのです。以前のような分類で、粒状影に対して「けい肺」と言ってしまっているのは、病理学的には必ずしも正しくないものがたくさん入っていました。特にpというのは、たぶんマキュールですよね。いわゆるシリコテクノドルとは違いますし、炭坑夫さんの場合、炭けい肺というのは両方が合わさったようなコールダストノドルみたいなものが混じっていたと思いますので、やはり「けい肺」という表現は正しくなくて、先生のおっしゃる粒状影で統一するのがいいのです。ですから、それに倣ってどう解説するかはあるにしても、私は粒状影、不整形陰影という形で写真を作るのがいいのではないかと思います。
○村田座長 不整形陰影を選ぶときには、やはりアスベスト肺というある程度の確信が持てるようなCTの所見なり、ばく露歴なりがしっかりあるようなものを選んでいくしかないですね。
○木村委員 そう思います。炭坑夫さんでも15%は、不整形陰影を伴うものがあるというのは常識になっています。ただ、その辺りを解説か何かで加えていくような形にする。全部満遍なく載せることは絶対に無理です。なるべく典型例を挙げて、分類は先生が提案されている粒状影、不整形陰影というのが、私はいいのではないかと考えます。
○村田座長 今回も不整形陰影の症例を集めるのはなかなか厳しくて、症例数があまり多くならなかったので、中には本当に間質性肺炎みたいな症例も含まれています。実際の症例をまたもう1回検討していただいて、岸本先生の症例ももう一度、全員の皆さんに見ていただいて検討していくことになりますか。
○岸本委員 はい、次回までに10例ほど検討します。レントゲン、CTがアスベストでほぼ間違いないということで、すべてPR1/0以上になっていますが、これも石綿肺と診断してよいかどうか判りませんので。
○村田座長 特にアスベストの1/0、0/1というところが、たぶん議論になりますね。
○岸本委員 ですから、なるべくCRとCTを両方見ていただいて決定しましょう。
○村田座長 決める段には、それをしっかり参考にしようということでよろしいですね。わかりました。(3)の医師間で読影結果のばらつきの小さいことというのは、当然だろうと思います。全国で地方じん肺診査医をされている先生方は100何名かおられるのですが、今回の厚生労働研究でお願いしたところ、そのうち40名に、もう個別に読影をしていただいております。ですからある意味で、現在の日本の現場で判定しておられる判断が表されていると思うのです。それで集約している症例というのは、そのタイプの標準写真という方向で持っていって間違いないのではないかと思います。そのデータもまた後で個々の症例を見るときに検討させていただこうと思います。これはこれでよろしいですね。
あと、私自身がずっと考えていたのは、今回、厚生労働科学研究と岸本先生の症例などを合わせて、歯抜けはあるかもしれないけれども、今の時点での標準写真的なものを作ったときに、今あるアナログの標準写真との整合性というところを合わせておかないと。特に1/1、2/2、3/3です。1/0がどうかというのは難しい問題があるかもしれないのですが、必要条件プラス十分条件だと思うのです。やはり整合性を入れないといけないのではないかと思うのですが、いかがでしょうか。
○岸本委員 村田先生のおっしゃるとおりだと思います。じん肺の患者さんにとっては、じん肺と認められるかどうかというのは、昭和53年の標準フィルムが最も重要です。患者さんの同盟の方々もいつも言われているのです。「じん肺があるものを見落とさないでくれ」ということを、患者さん側はいつも言われていますので、是非それは整合性を取っていただきたいと思います。
○村田座長 ですから選ぶ段階で、例えば1型を決めるときには、いまの標準写真の1型も並べて、判断としてはたぶん同じ判断になるだろう症例を選ぶということでよろしいですか。そうしたら、これは一応必要条件の中に入れさせてもらってよろしいですか。
○岸本委員 そうですね。
○村田座長 では、現在現存する標準写真との整合性を持つことというのを、(4)に加えさせていただきます。大まかな必要条件に関する議論について、全体にわたって何かご質問やご意見はありますか。
○木村委員 あと1つ。先ほど岸本先生が不整形陰影のお話をしたのですけれども、できれば今、じん肺として日本にある貴重な症例を入れたいというのは、レアなケースではなくて、ポピュラーな職種が入っているかどうかということです。例えば溶接工肺などです。要するに、今回選ばれて候補になっている、村田先生が班長になってやられた職種を見ると、耐火レンガなどがあります。これが本当にいまの日本のじん肺の主体を成している職種なのか。そういう比率からいけば、溶接工肺とか、いまでも残っている金属鉱山とか、炭坑夫さんなどがちょっと足りないのではないかという感じがありますので、典型的なp・q・r辺りでその辺を加えていただく時間があればと思います。私たちが前に集めたもので、適当な症例が少し。もちろん前に集めたものは最近の症例で、たぶん今も全部生きている人ばかりだと思いますから、時間的な余裕があれば、その辺を加えることも検討していただければありがたいと思います。
○村田座長 今回、研究班でやらせていただいたときに考えたのは、生データを保存しようということをずっと考えました。なぜかというと、デジタル写真というのはちょっと変数が変われば、どうにでも画像が作れますので。特にじん肺のように微妙な変化を見ようとするときに、パラメータが変えられないような画像だと、どうしようもなくなるのです。ですから一定のパラメータで揃えることをしなければならないので、DRにせよCRにせよ、それが触れるような元データを、今回は研究班のいくつかの施設で保存していただいてやってきたという関係があります。ですから少しは施設の偏りがありますので、十分なバラエティーは、たぶん抜けていると思います。
しかしおっしゃったように、CRもDRも各病院にどんどん入ってきていますので、もし厚労省でサポートしていただけるならば。生データをそのまま保管できる装置もあるでしょうし、何らかの装置を加えなければならないのだったら、それを加えて一定期間、いま集めたものでは足りない症例にターゲットを絞って、データ収集をしてこれに加えていくという方向がいいのではないかと思います。今回はいまある症例でしっかりと、どこが足りないのかということを明確にして、現時点である程度標準になる形を作って、抜けた穴を今後埋めていくという方向で、よりいいものを作っていくということにしたらいいのではないかと考えております。
○岸本委員 私もいま村田先生がおっしゃったとおりだと思います。一応形を作っておいて、何が足りないのかというところを補完する。もうかなりのデータが出ていますので、とりあえずはこの時点で作っていくのがいいと思います。
○村田座長 そうですね。最初から何でもというと大変です。とりあえずは歯抜けではありますけれども、今回、ある程度の骨組みは作れると思います。それプラス、もう少し疾患ごとに多く持っておられる施設にお願いしていくという形にしていく。労災病院のいろいろな所で、違ったタイプのものを持っておられると思うので、それを次のステップにしていけばいいのではないかと思います。厚生労働省としては、その辺りはどのように考えておられるのか、コメントしていただけるとすごくありがたいのですが。
○中央じん肺診査医 具体的にこうしますという形が、現時点ではご紹介しかねるところがあります。ただ従来、研究していただいたところにプラスして、必要があればまた新たな研究での検討というのは、随時やっていただければと思っております。
○村田座長 ほかに技術的なことで、いまのDRなどの生データは、最新の装置だったら大体残っていますか。残っていないのですか。CRはどうですか。
○西田参考人 一緒だと思うのですけれども、使っているコントロール用のパソコンの中に残せる範囲は残っています。ですから撮影枚数が多い所だと、例えば1週間ぐらいですべてのデータが、どんどん過去から消していくという設定になっているはずです。富士さんもおそらく同じことをやられたと思うのですけれども、それを残すことになると、技術者が行ってそれを残せる設定、定期的に吸い上げる作業をしないとできません。
○村田座長 抜いておかないといけない。
○西田参考人 技師さんのレベルで触っていただける所にその設定があるのか、メーカーの技術者が行かないとできないのかというのは、装置によっていろいろあります。
○村田座長 村田班で研究したときには、例えばDVDをCRの横に付けるようなものを作っていただきましたよね。ああいう何らかの準備というのが、少し必要になるわけですね。
○西田参考人 そうです。
○岩木参考人 追加で何か設けるか、ロックを掛けておいてもらうかです。
○村田座長 消えないように。
○岩木参考人 はい。そうすると、それは消えませんのでどちらかだと思います。
○木村委員 画像は、うちは圧縮した形でずっと保存しているのです。うちの技師さんの話では、それをまた解凍というか、元に戻すことができると言っています。圧縮を解くことはできるのですか。
○村田座長 可逆圧縮。
○木村委員 「そういう形の圧縮で保存しているから、元の生データでほしいというのであれば戻せますよ」と言っているのですが、そんなことはできるのですか。
○村田座長 可逆ということですかね。可逆にも、可逆圧縮と非可逆圧縮があって。
○西田参考人 私の理解ではDICOMの可逆圧縮という形で、画像処理がすべて終わったデータを、もう1回圧縮を解除して解凍することはできるのですが、今おっしゃっている生データというのはDICOMにする前の画像ですよね。
○木村委員 そういう形では戻せないということですね。
○村田座長 そうしないとパラメータが触れないのですよね。もうDICOMにしてしまったら、1つの決まったパラメータで画像ができてしまっているので、変数を変えることはできないのです。
○西田参考人 もし先生の所で富士さんの製品をお使いになっているということであれば、富士さんの技術者が行ってその設定をされて、定期的に何らかの技術的サポートをしていかないと、おそらく難しいと思います。
○村田座長 坂井先生は何かコメントはありますか。
○坂井委員 もう1つの問題のいまの生データは、各メーカーのオリジナルのフォーマットです。今日いらしているのは2つのメーカーですけれども、各メーカーのオリジナルですので、10あれば10のローデータ(生データ)のフォーマットがあります。これはやはり各メーカーが全部協力しなければいけないので、いまのことを実現しようとすると、客観性と再現性をなるべく保つ、汎用性のある形を早く模索するほうがいいかと思うのです。
○村田座長 メーカーごとのということですか。
○坂井委員 ええ。逆に言いますと標準の形を決めたら、病院でいつも使っている、一般の診療で使っているものとじん肺用のフォーマットの2つをDICOMで出力して、それを2つずつ保存していくようにすれば、先ほど言った可逆圧縮もかけられますので、そういうものが実際的かなと考えました。やはりローデータを全部。
○村田座長 いえいえ、ローデータというのは、あくまでも標準写真を作るためだけです。ですから最適なパラメータで標準写真セットの画像が出てしまったら、それはDICOMデータだけでいいのです。ローデータは必要ないのです。
あくまでも、これはそれを作るためにやっているだけです。あるいは、もし将来的にILOなどで必要だと言われたときに、それが向こうに提供できる可能性も残しておいてということです。しかし単に日本の中で作るものは、標準写真ができてしまったら、あとはもうDICOMデータだけです。もうちょっといろいろなことを揃えてほしいというのは、メーカーにもだいぶ強くお願いしているのですけれども、パラメータの名前から違うわけです。名前も変わらないですね。いくら言ってもじん肺条件の表というのは、どんどん、どんどん長くなっていくのです。新しい装置を作るたびに、同じメーカーでもどんどん増えていきます。
これはだいぶいろいろな人にお願いしているのですが、企業秘密のところもあるので、キーになる技術の部分はやはり公開できないところがあるのです。ですから生データを交換してその生データを触るときには、やはりそのメーカーの方にお願いしないと、なかなか難しい問題があります。もし次にやるとしたら、木村先生の所とご相談しながら、どの施設にどういう症例というか、じん肺の種類があるかというのをピックアップさせていただいて、そこの施設にはどんなCR、DRが入っているか、それに対してどんなメーカーが入っているかを確認し、そこのメーカーの方にご協力をお願いするという形にならざるを得ないですね。一定期間、症例が集まる間だけ生データを取る道具を置いておいて、きちんとしたDICOMデータを作り上げたら、それ以上は、生データは必要ないという形になりますね。今後はこのような方向でよろしいですね。
○中央じん肺診査医 はい。
○村田座長 この後から個別の症例になります。初めて症例をご覧になる先生もおられるので、症例ごとにフリーディスカッションをしたいと思います。個人情報をだいぶ見たいと思いますので、非公開という形にさせていただきます。
みんなの議論をまとめて集約したものは、第2回の最初の段階で提示して、それを傍聴しておられる方にも見ていただけるチャンスをつくりたいと思います。どうぞよろしくお願いいたします。
○中央じん肺診査医 本日、傍聴の皆様向けにはここまでですので、次回、第2回のご案内をいたします。第2回は10月29日金曜日の10時からで、会場は労働基準局会議室です。よろしくお願いいたします。それでは、ありがとうございました。
(傍聴者退室)
<非公開部分での検討内容概要>
・厚生労働科学研究からの候補28例の個別検討を行い、2例(候補番号12, 17)を候補から除外し、2例(候補番号1,2)を技術的理由で次回再検討とし、1例(候補番号21)の型を変更した。
照会先
労働基準局安全衛生部労働衛生課
電話:03(5253)1111(内線5493)