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2010年10月1日 第8回厚生科学審議会感染症分科会感染症部会議事録
健康局結核感染症課
○日時
平成22年10月1日(金)10:00~12:00
○場所
中央合同庁舎5号館 厚生労働省17階 専用第18-20会議室
○出席者
【出席委員(五十音順)】
味澤委員 | 岡部委員 | 小野寺委員 | 神谷委員 | 北村委員 |
木村委員 | 相楽委員 | 澁谷委員 | 東海林委員 | 竹内委員 |
丹野委員 | 林委員 | 深山委員 | 蒔田委員 | 南委員 |
山川委員 | 渡邉委員 |
【参考人(五十音順)】
荒川参考人 (国立感染症研究所細菌第二部長) |
倉根参考人 (国立感染症研究所副所長) |
【行政関係出席者】
岡本厚生労働大臣政務官 | 外山健康局長 | 篠田大臣官房審議官 |
松岡健康局総務課長 | 亀井健康局結核感染症課長 | 新村医政局指導課長 |
中嶋健康局結核感染症課感染症情報管理室長 | 林健康局結核感染症課長補佐 |
○議題
(1)多剤耐性菌について
(2)その他(チクングニア熱、新たに確認された一種病原体の取扱等について)
○議事
○事務局(亀井課長) 定刻となりましたので、厚生科学審議会感染症分科会感染症部会を開催させていただきたいと思います。開催するに当たりまして、定数に達しておりますことを、まずもって御報告させていただきます。
それでは、開催に当たりまして、岡本政務官より御挨拶をお願いいたします。
○岡本政務官 おはようございます。今日は皆様、大変御多用のところ、厚生科学審議会感染症部会の御出席、ありがとうございます。
私は9月21日に厚生労働大臣政務官に着任させていただきました、衆議院議員の岡本充功でございます。今日は皆様方に御挨拶をする最初となるわけでありますが、それぞれの皆様方におかれましては、日本における感染症対策に日ごろより御尽力をいただいておりますことを、まずもって御礼を申し上げたいと思います。
皆様方の知見をもってしても、多様な感染症が、まだ日本に、また世界各国にはあるわけであります。そういった感染症対策を皆様方にとっていただくということは、国民の皆様方にとって、公衆衛生上も、そして保健衛生上も大変重要な課題だというふうに考えております。そういった意味で今日は皆様方の真摯な御議論をいただきながら、その結果をもって、私たち厚生労働省側もその行政の推進に当たっていきたいと考えております。
本日の部会におきましては、多剤耐性菌の対策を議論していただきたいと思っておりますし、また、チクングニア熱や新たに確認された病原体の取り扱い等につきましても、御議論いただく予定でございます。委員の皆様方には、重ねて、真摯で活発な御議論をいただきますことをお願い申し上げまして、私の御挨拶とさせていただきます。どうぞよろしくお願いいたします。
○事務局(亀井課長) ありがとうございました。大変恐縮でございますが、頭取りはここまでとさせていただきたいと思います。これ以降は、宮村感染症部会長に会の進行をお願いいたします。よろしくお願いいたします。
○宮村部会長 おはようございます。皆さん、本日はどうぞよろしくお願いいたします。
早速ですが、本日の会議を進めていきたいと思います。まず、お手元の議事次第をごらんください。本日は、資料確認の後に、主に多剤耐性菌対策につきまして御議論をいただきます。そのほか、チクングニア熱、新たに確認された病原体、特定感染症予防指針につきましてそれぞれ御議論いただくことになっております。
また、今回は多剤耐性菌につきましての参考人として、国立感染症研究所細菌第二部の荒川参考人、チクングニア熱についての参考人として、国立感染症研究所の倉根一郎副所長にお越しいただいております。どうぞよろしくお願いいたします。
委員の皆様方には円滑な議事進行に御協力をよろしくお願いいたします。
まず、資料の確認につきまして、事務局からお願いいたします。
○事務局(林補佐) それでは、お手元にお配りしております資料の確認をさせていただきます。
「議事次第」「委員名簿」「配布資料一覧」に続きまして、お手元の資料1-1「多剤耐性菌対策について」、資料1-2「我が国における新たな多剤耐性菌の実態調査等について」という通知、その他、一連の資料がセットになってございます。資料1-3「感染症及び省令における届出の関連条文」、資料1-4「国際的に注目されている主な薬剤耐性菌」、荒川参考人の資料でございます。
資料2-1「チクングニア熱の4類感染症への追加等について」、資料2-2「チクングニア熱の検疫感染症への追加」、資料2-3「チクングニア熱について」、倉根参考人の資料でございます。
資料3「新たに確認された一類感染症の原因病原体の一種病原体等への追加について」でございます。
資料4「感染症部会『エイズ・性感染症ワーキンググループ』における『特定感染症予防指針』の検討について(案)」でございます。
資料5として、政策評価に関連しまして、「平成22年度実績評価書」を御用意いたしております。
不足等がございましたら、事務局までお知らせください。
以上でございます。
○宮村部会長 ありがとうございました。
それでは、早速、「多剤耐性菌対策」について審議していきたいと思います。なお、御質問等は、事務局の説明と荒川参考人の説明の後で、一括して受けることにいたしますので、よろしくお願いいたします。
まず、事務局から御説明ください。
○事務局(林補佐) それでは、多剤耐性菌対策について、資料1-1をもとに御説明をさせていただきます。時間に限りがございますので、かいつまんで概要のみ御説明をさせていただきたいと思います。
2ページ、「多剤耐性アシネトバクターについて」でございます。多剤耐性アシネトバクターは、複数の抗菌薬に対する各種の耐性遺伝子を同時に保有しており、ほとんどの抗菌薬に耐性を示すというものでございまして、カルバペネムという切り札的抗菌薬を分解する特殊な酵素を産生するものでございます。2000年ごろから欧米で広がり始め、臨床関係者の間で警戒され始めました。我が国でも、海外から帰国した患者さんからの分離などが報告されておりまして、院内感染症の原因ともなっております。国内では、2009年のサーベイランスの事業では、32名の患者さんから多剤耐性アシネトバクターが見つかっております。
3ページ、帝京大学医学部附属病院の院内感染の経緯について、概要を掲載しております。経緯については省略させていただきますけれども、9月2日に帝京大学病院からの報告がございまして、現在、累計59例の報告が出ております。
4ページ、「NDM-1(ニューデリーメタロ-β-ラクタマーゼ-1)を産生する多剤耐性菌について」でございます。こちらも同様に、複数の耐性遺伝子を同時に保有して、カルバペネムを含むほとんどの抗菌薬に耐性を示すものでございます。大腸菌、肺炎桿菌などの「腸内細菌科」の菌に見られるものでございます。2009年に初めて報告されまして、その後、インドやパキスタン地域で医療行為を受けて、英国、米国等へ帰国し、感染症を呈した旅行者から多数分離をされて問題となっております。我が国では、2010年9月に、過去の患者さんの検体から検出されたのが最初でございます。
5ページに、これまでの世界での報告状況を載せております。インド、米国、英国等での発見について、学会誌に掲載されておりますし、このほか、ベルギーでの報道、カナダ、ケニアでも発見されたとの学会発表がございます。
6ページが、国内での発生に関する経過でございます。21年4月にインドから帰国された50歳代の男性の患者さんが入院されていまして、このとき、多剤耐性大腸菌が検出されていましたけれども、原因がわからないままその検体が保存されておりました。今年の8月11日に『The Lancet Infectious Diseases』の電子版に欧州での発生についての報告が掲載されたこと、そして、厚生労働省からも注意喚起の事務連絡を都道府県経由で各医療機関に発出させていただいたことを受けまして、獨協大学病院の方で改めて詳細な検査を実施したところ、NDM-1産生多剤耐性大腸菌であるという結果が判明したということでございます。
7ページは、こういったことが9月にいろいろございまして、厚生労働省として対応をしてまいりました。まず、サーベイランスの強化につきまして、感染症法上の届出対象範囲の検討をするということで、後ほど論点を改めてお話ししたいと思いますが、本会において感染症法上の届出義務を、新たに発生している耐性菌を含めてどういう対象の範囲で行うかということについて、御検討いただきたいと考えております。これ以外に、NDM-1産生多剤耐性大腸菌等についての実態調査を9月10日に通知を発出して、実施いたしております。
また、院内感染対策の徹底についての注意喚起の文書の発出、院内感染の在り方に関する検討につきましては、今後、有識者の意見を踏まえつつ行うこととしております。
8ページにございますが、帝京大学医学部附属病院における事案への対応としては、これまで事実の確認を行った上、更に国立感染症研究所所属の専門家チームの派遣を行っているところでございます。
これまでの経緯の報告を終えまして、次に、今日の論点に移りたいと思います。感染症法の対象となる感染症として、1類感染症から5類感染症というものがございます。ここに疾病の名前を列挙しておりますけれども、その趣旨といたしましては、次の10ページに書かせていただいております。
1類感染症は、危険性が総合的に極めて高い感染症。2類感染症は、危険性が高い感染症。3類感染症は、危険性がそれほどでもございませんが、特定の職業への就業によって感染症の集団発生を起こし得る感染症。4類感染症は、人から人への感染はほとんどないが、動物、飲食物等の物件を介して感染するため、物件や動物の消毒、廃棄などの措置が必要となる感染症でございます。5類感染症は、感染症発生動向調査を行って、その結果等に基づいて必要な情報を一般国民や医療関係者に提供・公開していくことによって、発生・拡大を防止すべき感染症という類型でございまして、41の感染症がこの5類感染症に指定をされております。
この感染症法で定める感染症につきましては医師等が届出を行うことになっておりまして、11ページにございますが、この中で全数把握対象の疾患につきましては医師が届け出ることになっております。また、一部の医療機関にお願いをして、そこが届け出るということになっている指定届出機関(14条)、こういったものにつきましては医療機関に義務を課しまして、保健所への届出をするということとなっております。その情報につきましては、都道府県を通じて厚生労働省が集約して、情報を国民や医療関係者に提供する形になってございます。
12ページですが、5類感染症の中を更に詳しく見てまいりますと、診断した医師に届出を義務づけて全数を把握する疾患として、ここに掲げるようなものがございます。耐性菌の中ではバンコマイシン耐性黄色ブドウ球菌、バンコマイシン耐性腸球菌感染症といったように、基本的には極めてまれなものが耐性菌としてはこちらのカテゴリーになっております。
そして定点把握となっているもの、これは、指定届出機関、全国に現在470の医療機関が指定されておりますが、その中では耐性菌にかかわるものとしては、ペニシリン耐性の肺炎球菌感染症、メチシリン耐性黄色ブドウ球菌感染症、薬剤耐性緑膿菌感染症の3つが含まれてございます。
13ページに、耐性菌に関するサーベイランスの仕組みとして、感染症法による報告と、JANISという国の事業での報告を対比した概要を掲げさせていただいております。感染症法による報告につきましては、今、申し上げたとおりでございまして、目的、根拠、方法についてはお話ししてきたとおりでございます。情報の集計・公表としては、結核感染症課及び国立感染症研究所が全国の報告を集計して、傾向等の分析評価を加えたものを、週報、月報等としてホームページ等で公開するということを行っております。
JANISは院内感染のサーベイランスのシステムでございます。目的といたしまして、薬剤耐性菌による感染症の発生状況を調査して、我が国の院内感染の概況の把握を行うこともさることながら、各医療機関において実施される院内感染対策の改善の支援を行うことを目的としている仕組みでございます。以下のうち、医療機関が希望するものを報告することになっておりまして、例えば細菌検査における全検査データを、検査装置からそのままのデータを提出するといったようなことができる形になっております。
報告の主体としては、任意に参加を希望する医療機関でありまして、現在847の医療機関が参加されております。情報の還元といたしましては、事務局から各医療機関ごとの解析した情報を医療機関に還元するということが主なことでございまして、全国の概況につきましても、年次の報告書等を作成してホームページで公開しております。
したがいまして、感染症法の方は、全国の概況を把握することを主な目的としている一方、JANISのサーベイランスは、各医療機関が解析評価情報を、院内感染対策の評価、推進、改善等に利用するということが主な目的ということでございます。
14ページ、5類感染症、感染症法のデータに戻りますけれども、全数把握の疾患につきましては、2009年でVRSAは0件、バンコマイシン耐性腸球菌は116件という報告がございました。定点把握の報告数につきましては、470の医療機関で何件あったかということでございますが、ごらんのような件数が定点の医療機関だけで報告されているということでございます。
この情報につきましては、15ページにありますように、週報あるいは月報で報告しております。国立感染症研究所のホームページでも、一般にごらんいただけるように掲載をさせていただいております。
16ページ、JANISの概要につきましては、先ほどと重複しますので割愛させていただきますが、17ページにJANISの事業の在り方についても、所管が医政局指導課で行われている事業でございますので、今後、検討していくということで聞いております。
本事業は、各医療機関の院内感染対策の自主的な取り組みを支援する仕組みとして重要な役割を果たしていますけれども、医療機関の更なる取り組みを促進するため、今後、院内感染対策中央会議という医政局の会議、院内感染対策サーベイランス運営委員会での議論を踏まえつつ、その充実について検討していくことが必要だというふうにとらえてございます。
検討項目として、参加医療機関をどうやって増やしていくか、参加医療機関に対する支援の強化、地方自治体やJANISに参加していない医療機関との連携、こういったことについて医政局の方で、今後、検討するということになっております。
18ページは、いろいろな言葉が出てきましたので、全体を整理させていただくと、国の対策としては、院内感染対策や医療安全に重点を置いた対策がございます。サーベイランスについても、JANISによるサーベイランスはむしろこういったことに重点を置いたものでございます。国の検討の場としては、院内感染対策中央会議、その他の会議で検討をするということでございます。一方で、耐性菌そのものの疾病対策に重点を置いたものとして、感染症法による報告があったり、また、感染症部会での検討をお願いしたいと考えております。
この論点につきまして、9月10日に、この部会の先生方も何名か御意見を伺いましたけれども、有識者の意見交換会を行わせていただいて、いろいろ御指導をいただきました。そのときに出た論点として、把握の目的をどう考えるか、把握の対象や方法についてどういうふうに考えるか、データの活用についてどのように考えるか、制度の運用についてどのように考えるか、医療現場への影響、こういったさまざまな観点での御議論をいただきましたので、その概要をこの資料で御紹介させていただいております。
把握の目的としては、全体の動向を把握するためか、現場の改善に結びつけるためか。感染症法に位置づけることによって普及啓発の効果もあるのではないか、といった御議論がございました。把握の対象・方法としては、患者の発生数、菌の発生状況、集団発生のいずれを把握するのがよいか。また、菌種ごとに把握するか、耐性の状況ごとに把握するか、といった御議論がございました。データの活用についても、各医療機関で活用をするためにはどのようなデータがよいか。あるいは、関係者にわかりやすいデータというのはどういうものか、といった御議論がございました。制度の運用については、発生数の数、すごく少ないとき、そして多いときのそれぞれの把握の在り方をどう考えるか、といった御議論がございました。医療現場への影響についても、届出対象疾患や件数が増加すると負担が増えるのではないか、また、医療機関への支援が必要ではないか、といった御議論がございました。
こういった状況を受けまして、今日、本会で御検討いただきたい事項を最後のページにまとめさせていただいております。国民の関心が高く、諸外国の状況からも増加の懸念される「多剤耐性アシネトバクター感染症」について、その動向を把握し、情報提供することで、全国的な対策を促す観点から5類感染症に指定することとしてはどうかということを、事務局から御提案をさせていただきます。その際、多剤耐性アシネトバクターは既にある程度の医療機関で検出されておりまして、今後の傾向を把握することが必要であることから、定点把握の対象疾病としてはどうかというふうに御提案させていただき、御議論いただければと思います。
事務局からは以上でございます。
○宮村部会長 ありがとうございました。
引き続きまして、本日の参考人、荒川部長に院内感染対策サーベイランス事業と、新たな多剤耐性菌の実態調査をやっておられますので、その進捗状況の御説明をお願いいたします。
○荒川参考人 資料1-2をごらんください。これは9月10日付で結核感染症課長名で出された通知でございます。全国の医療機関に対しまして、特定の形質を示す菌が分離された場合、特に腸内細菌、それに属する菌が出た場合は、感染研の方に送って検査をしてくださいという通知でございます。
別添1は、お願いの内容であります。詳細は省略いたしますけれども、調査の対象となる菌種は、大腸菌、肺炎桿菌、セラチア、エンテロバクターなどの腸内細菌。カルバペネム系、フルオロキノロン系、アミノ配糖体系の3系統のすべての抗菌薬に「R」と判定されたものについて、感染研に送っていただいて解析をいたしますということでございます。
様式の方は、基本的には医療機関情報ということと、菌株の背景情報、菌株情報を記載していただいて、ファックスあるいはEメールの添付で感染症研究所にお送りいただくということで、こちらの方からご返事を差し上げて、菌株を送っていただいて検査をするということでございます。
別添2は、アシネトバクター、NDM-1産生多剤耐性菌についての一般的な情報でありまして、一般の方もわかりやすい形で解説がつくられております。
次の事務連絡は、特にNDM-1についての事務連絡でございます。8月18日に『ランセット』の報道を受けまして厚労省から出されたものでございます。別添の方には、その株の特徴とかそういうことが紹介されております。
資料1-2は以上でございます。
○宮村部会長 ありがとうございました。
それでは、事務局の御説明の中に、最後にありましたけれども、多剤耐性アシネトバクター感染症を感染症法上の5類感染症に位置づける、それを定点把握の対象疾病とするという一つの提案がありました。これにつきまして、御質問をどうぞ。
○事務局(林補佐) 申し訳ありません。続いて荒川先生から、資料1-4も含めて御紹介いただいた上で御議論いただけたらと思います。
それから、資料1-2の中では、7ページに、新たな多剤耐性菌の実態調査について現在の進捗状況を御報告いたしております。9月29日現在、6つの検体が到着しておりまして、このうち2件、結果が判明しておりますけれども、NDM-1、KPCといった我が国ではごくまれなものについては、いまのところ、検出されていないということでございますので、併せて報告させていただきます。
○宮村部会長 失礼しました。それでは、荒川先生、ひき続きお願いいたします。
○荒川参考人 引き続きまして、1-4をごらんください。最初のページに、今、国際的に海外で注目されている主な耐性菌を5つ御紹介させていただきました。
2ページは、そのようなものの発生状況、分離状況について文献的に少し整理したものでございますけれども、地域によって分離率の差等がございます。ただ、世界じゅうにいろいろ地域でこういった耐性菌が、低いところ、高いところがございますけれども、広く分離されるようになっているということでございます。
3ページは、経年的な耐性菌の出現とか、特に種類等を紹介したものでございますけれども、最近は、線の下の方にありますように、グラム陰性菌の多剤耐性菌が非常に増えてきているということでございます。
4ページは、耐性菌の増加と相まって抗菌薬の開発が非常に滞ってきている。これは日本だけではなく、国際的にもそのような傾向が見られるということでございます。
5ページは、多剤耐性アシネトバクターについてでございます。これはアメリカのニューヨーク地域で出現し始めまして、それが経年的に増えてきている。アメリカ全体でもそういう傾向が見られるということでございます。右の方の緑は、クレブシエラ・ニューモニエでカルバペネム耐性が増えておりますけれども、これもKPC型のカルバペネマーゼをつくる株の増加ということでございます。多剤耐性アシネトバクターにつきましては、世界じゅうにいろんな地域で見つかってきております。非常に分離頻度の高いところも出てきております。
7ページは、なぜ多剤耐性アシネトバクターが問題となるかということでございますけれども、市販されて承認されている抗菌薬ほぼすべてに耐性を獲得している。海外ではコリスチン等注射薬が使われることが多いのでありますけれども、一部の地域では、コリスチン耐性株も出現してきているということでございます。特にアシネトバクターについては、以前から日本国内でもときどき分離されてきましたけれども、そういった在来型のアシネトバクターと比べまして、今回、国内で少し見つかっている、あるいは海外で広く広がっているようなアシネトバクターは、遺伝的な性質が違います。広がっているものはclonal complex 92という遺伝子の型に含まれるものが非常に世界各地に広がっているということでありまして、在来型のアシネトバクターとはかなり違うものが世界的に広がっているということでございます。
アシネトバクターは、一般的に湿潤環境で長期間生息して乾燥にも強いということで、院内感染対策上、少し手こずったりする事例が多いというふうに聞いております。ただ、アシネトバクターは多剤耐性株であっても、腸内に持っているだけでは無症状でありまして、発見が遅れて対策の遅れにつながるということで、問題視されているものであります。
こういったものを把握するために、先ほど御紹介がありましたように、厚生労働省の方で院内感染対策サーベイランス事業を2000年から進めておりまして、この中で、いろいろな耐性菌について、あるいは、それによる感染症の患者さんの発生動向が把握できるようになっております。
ちなみに、9ページはその還元情報の一例でございます。検査部門の還元情報として、11種類の重立った多剤耐性菌の情報が各医療機関に返されております。下から2番目には、多剤耐性アシネトバクターがございます。この返し方は、このグラフの施設の全体の分布の中での、それぞれの施設の位置が赤いマークでわかるような形でお返ししておりまして、下から2番目の赤いポツ、アシネトバクターはほとんど0ですので、もしこの赤いマルが線からずれていれば、その病院では少し変なことが起きているということが、視覚的にもわかるような形で結果をお返ししているということでございます。
続きまして、セフォタキシム等、第3世代セファロスポリン耐性大腸菌、これも国際的にいろいろなタイプのものが広がってきておりまして、臨床現場で高い関心事になってきております。
国内では、JANISのデータの一般公開分を見ますと、上から4つめのカラムにございますように、国内の分離株の約1割ぐらいがセフォタキシム耐性株ということになっております。更に下の方を見ていただきますと、フルオロキノロンの一つでありますレボフロキサシンについても、約2割から3割ぐらいは、今、大腸菌において耐性になっているということが把握されております。
13ページは、2000年以降、セフォタキシム耐性の大腸菌が急激に増えてきております。これは、血清型のO25とかO86、遺伝子タイプで言いますと、ST131とかST38というグループは、どうもセフォタキシム耐性の株の増加に関与しているということが明らかになってきておりまして、特にST131はフルオロキノロン耐性を獲得しているということで、臨床の現場でも最近非常に注目されているものでございます。
JANISで把握された国内における傾向は、イミペネム耐性のアシネトバクターは2%程度見られますけれども、多剤耐性アシネトバクターは非常にまれである。イミペネム耐性の大腸菌、肺炎桿菌は非常にまれである。一方、セフォタキシム耐性大腸菌は10%程度、フルオロキノロン耐性の大腸菌は30%程度に到達しているということでございます。その背景には、特定のセロタイプの株の増加があるということがわかっています。
15ページを見ていただきますと、アシネトバクターは約2%ぐらいはイミペネム耐性ということでございますけれども、まだ頻度は低い。更に多剤耐性の株はこれよりもかなり少ないということで、青い色は感性、薬が効くということでありますけれども、まだ日本の医療環境には比較的多くの薬が効く在来型のアシネトバクターが広く分布している。外来種の多剤耐性はまだまれであるということですので、そういったものが発見された医療機関では早期対策が必要であるということでございます。
NDM-1でございますけれども、これも多剤耐性アシネトバクター、あるいはそういうものと同じように使える薬が限られてきておりまして、特にNDM-1を産生するということで、カルバペネムを分解するということで問題となっております。更に、この株はCMY-4とかCTX-M-15というセファマイシンとか、第3世代セファロスポリンを分解する、別のタイプのβラクタマーゼを同時に産生する。更に、アミノグリコシドに対して高度耐性を与える16SリボゾーマルRNAメチレースを産生する株も存在しております。
こういったことで染色体上の変異によるフルオロキノロン耐性に加えて、カルバペネム、セファマイシン、第3世代セファロスポリン耐性、更にアミノグリコシド耐性と、多剤耐性を獲得しているものでありますけれども、この大腸菌とか肺炎桿菌というのは腸内細菌ですので、人の腸内や環境中に定着して生残しやすい。ただ、健康な者でも尿路感染症などを起こすことがあるということで、そういった場合、治療薬が非常に限られてくるということで注目されているものであります。更にこの大腸菌から、病原大腸菌、サルモネラ、あるいは赤痢菌、こういった同じ仲間の菌に耐性遺伝子がうつる可能性もあって、公衆衛生上も注目されているものであります。
9月の11、12日にアメリカのボストンでICAACという国際会議が行われました。そこではNDM-1に関する報告が更に幾つかされまして、これまで以上にいろんな地域に広がりつつあると。菌種についても、腸内細菌以外にも緑膿菌とかアシネトバクターなどの一部にもそういうものを産生する菌がもう出現しているということであります。今、詳細を確認中ですけれども、インドで、サルモネラの仲間からこの酵素をつくるものが見つかっているということも報告されておりました。更に、NDM-1を担うプラスミドは非常に宿主域が広いプラスミドになっておりまして、いろんな腸内細菌科の菌、ほかのグラム陰性菌に広がる可能性があるということでございます。繰り返しになりますけれども、NDM-1以外のいろいろな耐性メカニズムを持っておりまして、マルチプル耐性になっていくということでございます。
この状況でございますけれども、日本では大腸菌につきましては、イミペネム耐性は現在、検出限界以下、1%以下ということでございます。すべて感性。肺炎桿菌につきましても、99年に1%ぐらい耐性、あるいは中間というのがありますけれども、2000年は1%以下ということで、日本においてはイミペネム耐性の大腸菌や肺炎桿菌は非常にまれであるということが、この結果からも御確認いただけると思います。
最後に、KPC型のカルバペネマーゼを産生するクレブシエラでございます。これもカルバペネムに対して耐性を獲得している、更に、ほかの抗菌薬に対しても耐性を獲得した多剤耐性であるということで、海外で問題となっています。1990年代の後半ぐらいから出現してきていまして、10年ぐらいですけれども、いろいろなタイプのものが出現してきております。
ただ、一番多いのはKPC-3型でありまして、これは先般、報告されましたように、KPC-3型のものが日本でも見つかっているということでございます。特に、遺伝子型、シーケンスタイプ258というものが、海外で広く広がるということがわかってきておりまして、どんなクレブシエラでも広がるということではなく、特定の遺伝子型のものが世界じゅうに広がってきているということが、今、報告されております。
その地域でございますけれども、アメリカから、関連性はわかりませんけれども、イスラエルとかギリシャ、中国の一部にかなり広がっているところがあるということが現在の状況でございます。
KPC型については、最近承認されましたピペラシリンとタゾバクタムの合剤に対して高い耐性を示す。MICが256μg/ML以上になるということで注目されております。クレブシエラにつきましては、特にカルバペネム耐性は複雑になっておりまして、従来のIMP型に加えまして、先ほどのKPC型のカルバペネマーゼ、更に、まだ珍しいのですけれども、NDM-1型も産生するものがあるということで、クレブシエラにおけるカルバペネム耐性というのは非常に複雑な状況になってきておりますので、一般の検査室等で解析をするのはかなり難しい状況がございます。特にこの株は多剤耐性になる傾向が強いということで、臨床的にも注目されているということでございます。
CTX-M-型のスペインのデータですけれども、例えば大腸菌が急に2000年以降増えてきている。特にその中でCTX-M-9とか14がスペインでは増えてきている。日本でも同様に9とか14が増えてきておりますけれども、欧米一般的には、CTX-M-15というタイプが国際的に広がっているということが言われております。
25ページは、いろいろな耐性菌が出現してきておりまして、現在、マルをつけたものが国内では注目を集めておりますけれども、それ以外にもこの先、いろいろなものが院内感染等の原因として注目される可能性があるということでございます。
こういった事態を受けまして、8月20日にWHOは各国政府機関に対しまして、「薬剤耐性菌対策を推進するように」という呼びかけを出しております。2011年のWHOの世界保健デーのテーマが薬剤耐性になる予定ということですので、まだ決定ではないとは思いますけれども、WHOもこの問題に対して注目しているということでございます。
以上でございます。
○宮村部会長 ありがとうございました。今、荒川部長より、非常に複雑な耐性菌の状況について御説明がありましたけれども、事務局から、多剤耐性アシネトバクター感染症をまず感染症法上の5類感染症に位置づける、しかも、定点把握対象疾病とするという提案があったわけであります。
これにつきまして、これから審議をしたいと思いますので、御質問、御意見を伺いたいと思います。よろしくお願いします。
○事務局(林補佐) 今、たくさんの耐性菌が出てきましたので、提案の趣旨をもう一度整理させていただくと、NDM-1、KPC、こういった型の耐性菌というのは、大腸菌、肺炎桿菌などの腸内細菌の中で一部あるわけでございますけれども、これは各医療機関で検出できるというものではございませんので、現在、資料1-2にあるように、国立感染症研究所の方でそれを同定するという形で実態の把握をしたいと考えております。
一方で、多剤耐性アシネトバクター感染症については、各医療機関でその耐性があるかどうかということはわかるものでございますので、感染症法上の把握について御提案させていただいているという趣旨でございます。
○渡邉委員 私は先ほどの検討委員会のメンバーだったので、私から先に言うのは何かと思いますけれども、皆さんから余り質問等がないので口火を切らせていただきます。
確かにアシネトバクターは非常に重要な菌で、恐らく今後、院内感染として日本でも増加してくることは予想されます。その例はアメリカ等で起こっているのと同じように、頻度が非常に高くなっているということがありますので、日本でも当然、少なからず数年後には同じような状況になることが予想されるわけです。そういう予想される過程において、それをどういうふうに防いでいくかというのが一番本来的なメッセージだと思います。そのために、一つは、感染症法という法律の下でそれを把握しようということだと思うのですれども、国民に周知させるという意味では非常に的確なものだと思います。
ただ、感染症法ではMRSA等いろいろなものが報告対象になっていますけれども、実際に先ほどのデータを見ると、報告数が減っているわけではないです。依然として同じような状況だということだと、感染症法で把握するということがどれだけ事例数を減らすという意味で効果的であるかということは、もう一つ考えなければならない問題だと思います。
もう一つ、JANISで同じような情報を集めているわけですけれども、こちらは、各医療機関の現状がどういう程度であるかという情報も入るということで、医療機関にとっては自分のところの位置がわかるということでは、役に立つのではないかと思います。
整理しますと、感染症法という法律で国民に周知させるという意味では意義があると思います。全数把握でやると、恐らくこれからどんどん増えていくので、医療機関にとって非常に負担がかかるだろうと思いますので、定点把握というのが一つの在り方かなと思います。ただ、それをやったということですべて終わったという意識ではなく、やはり大きな目的は院内感染が起こる頻度を減らしていくことであるとするならば、そちらの対策、この対策は恐らく医政局指導課が持つのかなと思いますけれども、そちらの方でどういうふうなアプローチでやるのかという大きな方針を示していただければ、より一層効果が上がるのではないかというふうに考えております。
以上です。
○宮村部会長 もう既にうまくまとめていただいているような御意見ですけれども、澁谷委員、どうぞ。
○澁谷委員 保健所では医療法第25条で医療機関に立ち入りをします。医療法の中で院内感染対策をしているわけです。今、先生がおっしゃったように、そこのところの感染症法と医療法との連携がうまくとれていないと、なかなか実効を上げられないというふうに考えておりますので、事務局は、医療法の院内感染の届出の問題との関連をどういうふうに考えていらっしゃるのか。
もう一つ、今回はこういう状況なのでこれ一つということなんでしょうけれども、本来ならば、サーベイランスの在り方そのもの、どんな耐性菌を今後どんな仕組みで届出をしてもらうようにするのかとか、そういうサーベイランスの在り方全体の見直しもどこかに考えておかないといけないような気がします。意見です。
○宮村部会長 まず、最初の方について厚労省から何かレスポンスはありますか。
○新村医政局指導課長 院内感染対策という意味で、取り決めなり対策について、御説明いたします。
まず、医療法あるいはその下の施行規則の中で、病院に対しては、院内感染対策の指針の策定なり、委員会の設置なり、発生の院内での報告なり、そういった体制をとるように求めております。特定機能病院、すなわち大学病院については、少なくとも専任1名の担当者の設置を求めております。大学病院などは、病院の中で専門家もおられますので対応できると思いますが、中小病院などその病院の中で対応しきれない場合には、病院外の地域の専門家の助言を求めるというようなことも通知の中で規定されております。
そういうことが規則等で決まっているわけでございますので、特に院内感染について、どういう場合には行政に報告すべきだというようなことを規則上、決めているわけではございません。2年ほど前に福岡大学で、多剤耐性アシネトバクターの院内感染事例が報告されたので、それを受けて院内感染対策中央会議も開きまして、昨年1月に事務連絡という形で周知徹底、注意喚起をし、行政が把握した場合には速やかに報告を求めておりました。そして、先日の帝京大学の事例を受けまして、改めて注意喚起をして、病院に対しても多剤耐性アシネトバクターについて院内感染と疑われる事例があった場合には、報告をいただけるようにお願いをしておりますが、これは医療法あるいはその規則ということで、法律的な意味で決められたものではございません。
○宮村部会長 局長、引き続いてお願いいたします。
○外山健康局長 感染症サーベイランスの在り方全体をどう考えるのかという話ですけれども、このたびの5類にアシネトバクターを位置づけするのは、まさに感染症法の精神にのっとって発生状況を把握して、広く国民あるいは関係者に情報提供をすることが、法律の精神から必要だという立場に立って追加しようとするものであります。先ほど説明がありましたように、JANISの方は数は多いですけれども、必ずしも二次医療圏単位に分布しているものではありませんので、そういった観点から、安定した感染症法に基づくサーベイランスの精神にのっとって国民に情報を提供するという観点で、今回、提案しているわけです。
ただ、ほかの多剤耐性菌についても、今後、議論する必要があると思っていますけれども、それについては今後また検討したいと思っております。
では、感染症法におけるサーベイランスの仕組みをどう考えるのかということですけれども、今のところ、こういった仕組みについて全般的に見直す必要はないと思っております。ただ、一連のこの過程の中で特に一般の方々から指摘されたのは、こういったサーベイランスで情報収集しても、フィードバックといいますか、情報提供の仕組みが少しわかりにくいのではないかと。今日の資料の中でも1-1の15ページで、我が方としてはホームページで週報や月報でいろいろやっているつもりではいますけれども、そこのところが、JANISといった閉じた系の中ではいろいろ活用できるけれども、一般の、その他もっと広い医療関係者、あるいは国民の方々にとって、この仕組みの中で状況を早くわかるようなことについて、もう少し改善すべきではないかと言われています。
その辺についてはもう少し検討する必要があると思っておりますけれども、今回のアシネトバクターの5類を加えることによって、直ちに今の感染症法の精神、あるいは感染症サーベイランスの仕組みそのものの見直しは必要ないのではないかと思っております。
○竹内委員 ちょうど感染研の先生方がいらっしゃるのでお聞きしたいのだけれども、今、局長が言われた感染症は、私の理解ではディジーズサーベイランスですね。要するに病院の方としては、患者さんが出て原因菌、かかわっている菌を究明したらアシネトバクターが出た、患者が出たから報告する。しかし、先ほど荒川先生がいみじくも繰り返し説明されたように、これは実はいろんなところで広がっていて、免疫不全とか何らかの基礎的な条件があって初めて発症していく。
そうすると、こういう菌の場合、ディジーズサーベイランスというのは、局長が繰り返しおっしゃったように、国民に周知せしめる以外に実効性のあるものはあるのかなと。それよりは、例えば院内感染のサーベイランスがあれば、患者さんだけではなく、病棟あるいは環境中、いろんなところを常にモニタリングしているわけです。結局、先ほどの意見のように、感染症と、医政局でやっている院内感染のモニタリングをどうやってうまくドッキングさせるかというところに戻ってしまいますが、感染症でPRするのは差し支えないと思いますが、ディジーズサーベイランスの中にこれをぶち込んで、今までのとはちょっと毛色が違うなというニュアンスがありまして、渡邉先生でもちょっと御説明いただければと思います。
○渡邉委員 最初に薬剤耐性緑膿菌感染症を入れ込んだときにも、多分同じような議論だったと思います。緑膿菌は、病原性から言うとアシネトバクターより少し高いかもしれないですけれども、一つそういうものが問題となってきたときに、どれだけそこに注目を持たせるかということで、バンコマイシン腸球菌感染症とか、黄色ブドウ球菌、ペニシリン、この辺がみんな2001年ぐらいに入ったというふうに私は記憶しています。
ですから、先生がおっしゃるように、社会的に問題となるような感染症、特に公衆衛生学的に重要な、健康な人に主に起こる病気とは位置づけが少し違ったと思うのです。そういう考えを維持するとしたら、今回のアシネトバクターも一つかなと思います。ただ、それは感染症法の中ではなく、もっと別な法律の下でやるのだというふうなことだったら、また少し考えは違うのかなというふうに思います。
○竹内委員 先ほどの荒川先生の説明で、非常に多種多様な耐性機構を持った、また、多種多様な細菌が出てきている。それを、今後問題になるからといって、感染症ディジーズサーベイランスを旨とした感染症法の中で全部一括と。もうそろそろ考え方を変えることを厚労省の内部では検討するべきではないかと前から思っていましたもので、中嶋さん辺りが。
○北村委員 家族計画協会の北村です。実地臨床医の立場で、この議論と少し外れるかもしれませんけれども、事件が発生したときのサーベイランス、あるいは5類に入れる、入れないということについては、全く異存はございません。
ただ、常識的にというか、一般の人たちからしてみれば多剤耐性菌の出現というのは、間違いなく我が国における抗生物質の乱雑な使用というか、これは医者側の問題でしょうけれども、そういうものが影響していることは言うまでもないわけです。そういう根本的な部分での対策をこういう場できちっと明示して、抗菌剤の使用についてはこういう点について十分配慮しようと、この文言がないと何とも説得力がない感じがしてなりません。私はやや門外漢的な立場で、こんな発言をさせていただきました。
○宮村部会長 どうぞ、神谷委員。
○神谷委員 先ほど竹内先生が言われたような話は、日本全体でやることはなかなか難しいけれども、例えばアメリカでやっているABCサーベイランスのように、ある地域をきちっと決めて、全数把握をきちっとやるという方式を取り入れないと、環境状況から全部を把握することはできないのではないかと思います。これは日本では今までやっていないけれども、専門家の間ではそういうデータが欲しいということになるし、それは全体のことがわかりますので、竹内先生の御意見等を入れて、厚労省として、今後、感染研なりどこかやるにしても、そういうことがやれるかどうかということは検討すべき問題ではないかと思います。
もう一つ、渡邉先生がおまとめになったやり方で全く賛成ですけれども、定点把握をやった場合、定点以外のところで、先ほど荒川先生がお示しになった調査対象となる菌、腸内細菌であって、かつRという判定がされたものをほかの病院が見つけたときには、5類に入れた場合には、例えば保健所へ届け出て、地衛研に行って感染研に行くというようなルートは、これを実行すれば確保されることになりますでしょうか。その点について教えてください。
○荒川参考人 定点報告の、例えば多剤耐性緑膿菌については、現在、その株が感染研の方にすべて届いているわけではございません。感染症法によるサーベイランスは患者さんの情報に関するサーベイランスでして、菌株の解析のサーベイランスというのは実施されておりませんので、こういうものの中で、特に病院側の御依頼で調べてほしいという検査依頼が来たときに、個別に対応しているというのが現状でございます。
○宮村部会長 局長、何か意見がありますか。
○外山健康局長 感染症法におけるサーベイランス全体の在り方というのは、確かに全く見直さなくてもいいということではないわけで、今、いただいたような御意見を踏まえて、多剤耐性菌が入った経緯であるとか、その目的であるとか、実効性であるとか、不断に検討すべきだと思っております。ですから、いただいた意見も念頭に置きながら、制度改正に直ちに行くのか、それとも研究事業のところで着手するのか、いろいろ検討してみたいと思っておりますけれども、一方で、この段階で、我が国のサーベイランス制度を改正するという答弁にはなかなかならないものですから、今日のところは、御意見を拝聴しておくというところにとどめたいと思っております。
○宮村部会長 澁谷委員、お願いします。
○澁谷委員 もう一つ、定点で把握するということだと、470の医療機関ということだと思いますが、現在、耐性菌の中でも全数届出ということになっている耐性菌があるわけです。全数届出にするのか、あるいは基幹定点だけにするのかということですが、今回初めから基幹定点だけということですが、例えば一定の期間を区切って全数届出にし、その後は基幹定点でもいいですとか、そういうような考えはどうなのでしょうか。
○宮村部会長 これはどなたが答えられますか?局長、どうぞ。
○外山健康局長 今回のアシネトバクターというのは、まさに全数把握というのが非常にまれで、全数を各医師に必ず届けてもらわないと発生状況がわからないというものについては全数把握で法律上、位置づけてあるわけです。定点の問題につきましては、ある程度我が国で発生していることがわかっている、それの発生状況のサーベイランスを見るという趣旨でありまして、違うものでございます。
今回のアシネトバクターにつきましては、御案内のように、ついこの間出たというわけではなく、前から出ているわけで、ある程度の発生が予想される。JANISの調査でもわかっているわけです。したがってものの考え方としては、各医師に即、全数把握として届けさせる法第12条に基づくものではなく、むしろ法第14条に基づく定点把握の方が適切ではないかというふうに思っております。
○宮村部会長 専門家の方の御意見はいかがですか。
○荒川参考人 一部、参考人としてお答えいたします。アシネトバクターは緑膿菌とよく似た菌で、似たような感染症を起こすわけですけれども、感染症法で定点に緑膿菌が入っておりまして、厚労省の方の資料1-1の14ページを見ていただきますと、多剤耐性緑膿菌が非常に増えた2002年、2003年の時期に比べますと、国内の医療機関の方々はこの菌に対して警戒感を持ってきちっと対応しておられます。そういうこともあってか、最近は少しずつ数が減ってきているということで、感染症法にこういう特定の耐性菌を入れることについては若干の効果があることは私も認めます。ただ、実際届けていただくときに、手間とかいろいろなことを考慮しなければいけませんので、その点は考慮しなければいけない。
もう一つ、検討しなければいけないのは、感染症法では感染症患者さんについての報告を求めているということで、保菌例といいますか、発症していない事例については報告義務がないということもありまして、VREで見ていただきますと非常に件数は少ないです。JANISでは実際この10倍ぐらい把握しておりますので、感染症の患者さんを届けていただくということですと、十分な実態がどの程度把握できるかというところについては検討の余地がある。アシネトバクターにつきましてはVREよりは感染症を起こすリスクは高いと思いますけれども、多剤耐性アシネトバクター感染症の患者さんについての届出ということになりますと、保菌例については届出をされませんので、そういったものをどうやって把握していくか、その検討は感染症法の中でしていただく必要があるのではないかという気がします。
○宮村部会長 木村委員、どうぞ。
○木村委員 東京逓信病院の木村ですけれども、第一義的に大事なのは、耐性菌の動向を正確に把握していくことだと思いますし、それにはやはりJANISによる耐性菌サーベイランスというのは非常に大事だと思います。そういう観点から言うと、感染症法の中で、法律というか、省令で指定することによってJANISの充実が図られるのではないか、そこに参加する施設も増やしていくことにもつながって、そういうプラスのメリットがあるのではないかと思います。逆に今回は指定しないということになると、一気に関心が薄れて、JANISのサーベイランスの充実にとってもむしろデメリットになってしまうのではないかという気がしております。
○宮村部会長 どうぞ、味澤委員。
○味澤委員 駒込病院感染症科の味澤です。私は、耐性菌はこれからも多数出てくるので、そういったものを全部感染症法に一つひとつにのせていくのはどうかと、思っていたのですけれども、病院に戻って院内感染対策室でいろいろ話していると、感染対策室にはいろんな医療従事者がおりますので、やはり法律に入っていた方がいろいろ便利な点も多いと言われました。MDRPが感染症法の定点に入っていますので、アシネトバクターが入るのもやむを得ないかなというふうに考えを変えました。
以上です。
○小野寺委員 富士市立中央病院の小野寺です。先日まで大学にいて、今、地方の基幹
病院にいますが、感染症に対する考え方の地域格差というのは非常に大きいような気がします。例えば26万人の人口がいる市でありながら、残念ながらICNが一人もいないという現状があります。そういうことを考えますと、私は大学にいたときはそんなことは余り感じていなかったのですけれども、こういった法律に規定して全体に関心を集めさせることが一つ重要だと思います。
もう一つは、届出といいますか、届出は恐らく保健所にはすると思いますが、院内感染の場合に、公表の基準というのがどうも明確ではない。恐らく国立病院の場合、ある程度公表の基準というのはあると思いますが、民間の病院の場合には、どういった院内感染が起きたときにそれを公表するべきか、ということは決まっていないと思います。私どもはノロウイルスのアウトブレイクがあったとき、勿論、保健所に相談していろいろと指導を受けたことがありますけれども、公表するかどうかという基準は何も決まったものはないと思うのです。ですから、ある程度公表の基準の基礎的なものを示していただいた方が、それも情報としては提供しやすいのではないかというふうに思っております。
○宮村部会長 ほかに御意見は。
相楽委員、どうぞ。
○相楽委員 私も前回は、法律に規定することはどうかと思ったのですけれども、先生方のお話を伺っておりまして、感染症の認識の格差もあるということですので、定点に入れるのもやむを得ないかなと思います。しかし、それでは発症した人だけしか出てきませんので、やはりJANISでサーベイランスをきちんと行うことを是非進めていただきたいと思います。
○宮村部会長 ほかに御意見はありませんでしょうか。
ただいままでいろいろな御意見が出ましたけれども、まとめてみると、事務局の提案でありますが、多剤耐性アシネトバクターについて5類感染症に追加することについては大きな反対はない。けれども、これについてのサーベイランスを強化して、実際の院内感染の対応に資するためにJANISとの連携を強化する条件が付く。これからももっと出てくるに違いない多剤耐性菌の感染症法への編入に関する長期的な考え方を持っておくことで、要は多剤耐性菌をきちんと把握して、日本の感染症対応に資するという点で、今回は5類感染症に入れるということで大きな反対はなかったと私は理解しました。、御確認をいただきたいと思います。
それでは、私が申し上げたことを確認していただいて、次のトピックに移りたいと思います。
○竹内委員 ちょっとその前に。
○宮村部会長 どうぞ。
○竹内委員 今の結論は別に私は異論はございませんけれども、先ほど局長が言われていたと記憶していますのは、サーベイランスシステムの根幹を、感染研の方がいかに苦労してやっておられるか、そばで見ていて重々把握しているつもりですが、いつまでもディジーズサーベイランスにしがみついて、言い方は悪いですが、基本的にはディジーズサーベイランスしかやらないというのも、世界の趨勢にキャッチアップしていくには、もうそろそろあれなのかなと思っております。特に先進国ではシンドロームミックス・サーベイランスとか、その他の、もう少し広くカバーできるサーベイランスのシステムの検討をずっとやっているし、実施しているところがあるわけです。その辺のところは、研究事業であれ、感染研の内部の検討であれ、何らかの方向づけを、行政側としてはイニシアチブをとって発揮していただきたいと思っております。
○外山健康局長 貴重な御意見をどうもありがとうございました。これからも、そういった点についてまた議論していただきたいと思っております。現行の感染症法というのは、こういうふうに患者が出た場合、本当は法律では保菌者も範囲に入れていますが、省令上は患者に限定しているわけです。こういった報告で、国民というか、多くは医療関係者ですけれども、義務というか、負荷をかけるということですので、それはそれで、法律がそういう権利義務というか、侵すということで成立しているものですから、一方で、感染症の流行なりサーベイランスをどういう手段で把握するかということは、全部感染症法によるのか、それとも有効な事業に着目してやるのかというのは、いろいろ議論があるところだと思っておりまして、これから、いろいろまた検討させていただきたいと思います。
○宮村部会長 それでは、次の議題に移りたいと思います。
チクングニア熱の4類感染症への追加に関する議題を進めるに当たりまして、チクングニア熱という病気は日本ではまだ余り知られていない点があります。まず、この病気を専門にしておられる国立感染症研究所の倉根参考人から、チクングニア熱について、5分程度でもよろしいですが、説明していただきます。
○倉根参考人 資料2-3をごらんください。チクングニヤなのか、チクングニアなのか、私も実は振り返ってみると、アを使ったり、ヤを使ったりしております。いずれ名前はきちんと決まることにはなるのでしょうが、余りこだわらずに聞いていただければと思います。
2ページをごらんください。チクングニア熱は1952年に初めて分離報告されたウイルスですので、それほど新しいウイルスではありません。ウイルス学的には、トガウイルス科、アルファウイルス属のウイルスです。血清型としてはセムリキ森林熱ウイルスに分類されているRNAウイルスです。3つの遺伝子型に分類されます。Central/East African、Asian、West Africanということです。
左に電顕の写真がありますが、これは日本にお戻りになった患者さんから我々が分離したものです。こういうウイルスです。症状は、急性熱性疾患というのが一番当たるのかと思いますが、ヒトにおける潜伏期間は2-12日、つまり蚊に刺されて2日から12日ぐらいの間に症状が出てくるということです。1週間前後ということかと思います。
発熱、全身倦怠、リンパ節腫脹、浮腫、頭痛、筋肉痛、一過性の発疹、亜急性の関節炎ですが、関節炎を除けば多くのウイルス性疾患で出てくるものですので、関節炎を除けば特徴的なものは特にないということであります。出血傾向も出てくることもある。関節炎は特に指・手根関節、趾関節、足関節に多発する。関節痛が数日から数か月持続する場合、あるいは激しい関節痛及び多発性腱滑膜炎を伴う慢性末梢性リウマチ様症状を呈し、日常生活に困難を伴う。主な血液所見はリンパ球減少及び血小板減少。近年の死亡列では呼吸器不全、心代償不全、脳髄膜炎、劇症肝炎、腎不全等が報告されています。
以前は「チクングニアは死なない」というふうに教科書にも書かれておりまして、チクングニアで死ぬことはほとんどないという病気でしたが、その後、チクングニアでも亡くなる人がいるというのが2005~2006年からの特徴であろうと思います。
4ページをごらんください。感染環ですが、ヒト-蚊で維持されるのが特徴であろうと思います。勿論、森の中には猿-蚊-猿というサイクルもありますが、人と蚊の間で維持されている経路と猿と蚊の間に維持されている経路は、それほど緊密に関係しているのではない。生物学的に言うとこうなりますということであって、実際には感染した人を感染していない蚊が吸って、その蚊の体内で増えて人を刺す。人がまた感染。そういうサイクルですので、人と蚊がいれば維持されるということです。
主な媒介蚊ですが、2種類ありまして、一つはネッタイシマカという蚊。これは日本にはおりません。ヒトスジシマカは日本にはおります。どちらが主な媒介蚊かというと、近年は、ヒトスジシマカの方が主な媒介、大きな流行を東南アジア等で起こしているということであります。ヒトスジシマカは日本にもおります。
次に、世界的にはどのような流行があるかというのを5ページに示してありますが、2004年、2005年ぐらいから西インド諸島のいろいろな島国で流行が起こりました。その後、インドあるいはスリランカにウイルスが侵入し、そこでまた大流行が起こりました。その後、タイ、シンガポール、マレーシア、インドネシアというふうに、東に東に流行が移ってまいりました。日本では、2006年に初めてチクングニア熱の患者さんが診断され、その後、現在まで18例が診断されています。
次をごらんください。我々としては非常に驚いたといいますか、危惧感を抱いたのは、イタリアでチクングニア熱が流行したということです。2007年にインドから一人の患者さんがイタリアに帰っていって、北部のイタリア、緑で示してありますけれども、ここで250人以上の患者が出た。ですから、一人の患者さんが帰ることによってその流行が起こり、それで1人亡くなったということであります。
この流行は一応は2007年で終わっておりますけれども、つい先月の末、2010年9月24日、25日に、ここには載っておりませんが、フランスの南部でも国内発生と思われるものが発生したことが報告されています。今のところ2名ということです。勿論、輸入例はそれまでにもいっぱいあったわけですが、フランスから出たことがない人が感染したというのが大きな話であります。同じ小学校に通っていた2人の子どもが感染したということです。まだフランスは流行とは言いません、2人出たということですけれども、2か国目ということであります。
主な流行国におけるチクングニア熱の患者数の推移を7ページに入れてあります。この数は、その国に失礼ですが、どこまで正しいかというのは注意して見た方がいいと思います。恐らくこれの何倍か、あるいは10倍かもしれません。わかりませんが、傾向として見ていただければいいと思います。そうすると、インド、スリランカ、マレーシア、インドネシア、タイ、シンガポール。イタリアは2007年に0.3(300人弱)ということでここに載せてありますが、南アジアから東南アジアに移ってきているのがごらんいただけるかと思います。
次をごらんください。最後のページですが、日本の輸入チクングニア熱症例の、これはすべて海外で感染した人で、最初の例が2006年、スリランカ。渡航先が書いてありますが、スリランカ、スリランカ、インドと、最初のうちは南アジアでしたが、今、一番多いのはインドネシア、タイです。世界の流行につれて、旅行先で感染したその国も少しずつ動いていくというのが、ラフな言い方ですけれども、見てとれるかと思います。
チクングニア熱で問題になるのは2つかと思います。一つはウイルス血症が高い。つまり、感染した人の血液の中にあるウイルスの量が血液の量で非常に高くなる。通常、チクングニア熱とよく比較されるのがデング熱ですけれども、デング熱より恐らく10倍ぐらい高いだろうということです。10の8乗ぐらいまでいくこともあるだろうと。デング熱の10の7乗感染ユニット/?tぐらいですので、10倍ぐらい高くなる。
それから、ベクターとなる蚊が日本に存在するということであります。先ほども言いましたけれども、現在の流行はヒトスジシマカが主な役割で、ネッタイシマカも当然そうです。デング熱は逆で、デング熱はネッタイシマカが大きな流行を起こし、ヒトスジシマカも小流行ぐらいは起こせるということで、それが逆になっているということでございます。フランス、イタリア、温帯にある国でも国内発生が既に起こっているということ。
感染症研究所の昆虫医科学部の調査によりますと、ヒトスジシマカは現在の北限が青森県の八戸辺りです。ベクターとなるためには蚊の密度がある程度かかわってきますし、季節が問題になってきます。それから、住んでいる人の数、人の密度もやはり問題になろうと思います。ですから、一概に八戸でも起こるのか、青森でも起こるのかと言われると、それはまた違う話ではありますが、しかし、南に行けば行くほど活動も盛んであろう。冬でもある部分では活動するだろうというふうに考えますので、そういう意味では日本国内発生も考えておかなければならないというか、そういうことも危惧しておかなければならない感染症かと思います。
以上でございます。
○宮村部会長 ありがとうございました。このチクングニアの確定診断はどのようになされますか。
○倉根参考人 現在のところ、症例数がそんなに多くないので、我々としては、ウイルス分離をしてさらにPCRで遺伝子を見つけます。ただ、時期によってはウイルスが血液に存在しないということもあり得ますので、通常はIgM ELISA、比較的早期に上がってくるIgMというのを見つけます。それから、急性期と慢性期とできる限りいただくようにして、中和法で最も特異性が高いであろう中和抗体でも確認しております。そういうことで確定しております。
○宮村部会長 ありがとうございました。
引き続きまして、事務局から説明をお願いいたします。
○事務局(中嶋室長) ただいま、倉根先生から科学的なチクングニア熱の知見を御紹介いただきましたので、事務局からは、この新しい感染症に対して感染症法の中でどのように対応すべきかというところで説明させていただき、御意見をいただく予定にしております。資料2-1で御説明させていただきます。
資料2-1「チクングニア熱の4類感染症への追加等について」、チクングニア熱は、今、御紹介いただきましたように、蚊が媒介して感染するウイルス性の疾病です。近年、東南アジアで感染が広がり、流行地からの帰国者での症例が増加傾向にあります。
感染症法では4類感染症という類型は、患者を診断した場合、直ちに医師が届け出る義務がございます。もう一つ、媒介蚊の駆除対策等が法的に可能となるものでございます。すなわち、同様の蚊媒介性の疾病であるウエストナイル熱、デング熱、日本脳炎、このような感染症も現在、4類感染症に分類されているところでございます。
これまでのところ、国内でのチクングニア熱の発生は認められておりません。帰国されて感染していた方はいらっしゃいますが、国内で、人-蚊-人というサイクルでの発生は認められていないということですけれども、本病を媒介する蚊(ヒトスジシマカ)は我が国の多くの地域で分布しており、帰国後の発生を契機とした、すなわち人-蚊-人のサイクルですけれども、この国内での流行が懸念されているところでございます。
このようなことを考えますと、日本では媒介する蚊があって、これが起こる前にやはり危機管理の観点から、チクングニア熱については感染症法に基づいて、発生の状況の把握、必要に応じた媒介蚊対策が可能となる「4類感染症」に位置づける必要があると考えております。
このため、本部会にお願いしたいところとしては、チクングニア熱の国内での発生・まん延対策として、?@発生状況を的確に把握するための医師による届出、?A媒介蚊対策等を行うことができるように、チクングニア熱を感染症法の4類感染症に加えることについて御確認いただきたいというところでございます。
併せて、検疫法に基づいて、帰国時に患者をある程度捕捉できるように、検疫法にこの疾病を位置づけることについても御検討いただければと思います。
参考資料としては、次の2ページ目は、先ほど倉根先生が説明されたところ、3ページ目は、4類感染症に入っていて、発生が過去3年あるものについてここに表せていただきました。4ページ目については、これも倉根先生から御紹介があったところでございます。
それから、2-2の資料でございます。検疫法のところもかいつまんで説明させていただきますと、1番目ですけれども、検疫の対象となる感染症の範囲については、国内に常在しない感染症の病原体が船舶または航空機を介して国内に侵入することを防止することを前提に、水際対策と国内の感染症対策との連携等を踏まえつつ定めているということでございます。感染症法で国内対策、検疫法で輸入時の対策というところでございます。
事務局からの説明は以上でございます。よろしく御審議のほど、お願いします。
○宮村部会長 それでは、これから審議を始めたいと思います。
御質問、御意見、ございますでしょうか。
○神谷委員 倉根先生にお伺いしたいのですけれども、血中にウイルスがいる期間というのは大体どのぐらいでしょうか。
○倉根参考人 なかなか症状の軽い人というのは来ませんので、そこはわかりませんが、恐らく数日、4日、5日だと思います。抗体が上がってくれば大体は下がってくると考えてよろしいかと思います。ただ、関節にいるのかどうか。関節のどこに言われるかと言われると難しい。そこはもう少し長くいるのかもしれません。ただ、多くの人は治りますでしょうから、血中には数日、多くても5日、6日というところではないかと思います。
○宮村部会長 感染症法の類型のところと検疫法がありますが、検疫法でこのウイルスを水際でやるということになると、例えばよく見られる、飛行機の中で蚊を採取してチェックするとか、そういうことも含まれるのですか。
○事務局(中嶋室長) 船舶の衛生対策というところでは、いろいろな蚊の対策等が行われるところですけれども、輸入時の疑いのある方の検査等が行えるというところになります。
○宮村部会長 ほかに御意見は。
○荒川参考人 資料2-3、7ページに、インドで2006年に1,400という数がありますが、1,000人当たり1,400ですか。
○倉根参考人 違います。これは140万ということです。
○荒川参考人 1,000人当たりではなく、10万人当たりということですね。
○倉根参考人 これは実数ですので、単位が千人。ですから、1,400千人というか、140万人ということです。
○荒川参考人 そういうふうに読むわけですね。わかりました。
○渡邉委員 倉根先生、ちょっと教えてほしいのですけれども、イタリアの300人というのはかなりの数だと思います。それの感染ルートとか、広がりぐあい、そのコントロールをどういうふうにしたのか、その辺の情報を教えてください。
○倉根参考人 まず、広がりぐあいというのを、ここの1人からどうやって行ったかというのは、蚊のあれですのでなかなか難しいのですが、もっと調査をしていくとやはりその1人に行き当たる。それでインドからの株である、というということです。
対策ですけれども、結局できるのは啓発と蚊の対策が主なものになりますので、そういうことで対策をとることになります。もう一つは、蚊の活動が落ちてくれば自然に患者数は減ります。地域によって冬がどれくらい厳しいかわかりませんけれども、季節というか、温度のファクターもかなり効いてくるということですので、北の地域であれば、黙っていても冬になればおさまるということにはなろうかと思います。
○宮村部会長 ほかには?
○竹内委員 Aedes aegiptiというのは日本にはいなかったのですか。
○倉根参考人 ネッタイシマカですね。ネッタイシマカは今はおりません。ただ、1944~45年、つまり第二次世界大戦が終わったころに九州でデング熱の流行が起こっていますけれども、それは一部、ネッタイシマカで起こったのではないかと。ですから、持ち込まれて数年間はどうも維持されたようであります。しかし、現在はどこを探してもネッタイシマカはおりません。
○竹内委員 ベトナムあたりですと、気温上昇に伴って、数年で南部からあっという間に中国の国境までAedes aegiptiの分布域が広がってしまって、Aedes aegiptiを全く頭に入れておかないのはちょっとあれかなと思います。
○倉根参考人 ネッタイシマカは、今、一番日本に近いところで言うと、台湾の高雄と台南の当たりまでです。計算上は、ネッタイシマカが生息する冬の温度の下限というのがあるようでして、それがいつ日本になるかというと、これは小林部長の試算ですが、2100年になると、九州南岸とか四国の南岸は、今のまま行けばその気候になるであろう。だからネッタイシマカも入ってくる可能性はある。ただ、都市部でスポット的に暖かい部分というのはあり得るので、都市のある地域でそういうことも起こり得るかなと思いますけれども、気候から言えばそういうことであります。分布は、今、述べたとおりであります。
○宮村部会長 ありがとうございました。
それでは、時間の関係もありますので、チクングニア熱を4類感染症に追加することについて、部会として了承して差し支えないでしょうか。御確認をいただきます。
また、検疫法関係に関しても同様に、部会として了承してよろしいでしょうか。
○外山健康局長 念のために申し上げますけれども、4類の法律に加えるというのでなく、その法律を踏まえて政令改正をして、政令の中での指定です。それから検疫法も、資料2-2に書いてありますが、検疫法に追加するのではなく、検疫法第2条第3項で定める政令の部分に加えるということ。それを踏まえまして、省令の方で、停留する期間の時間についてもデング熱同様変えるということで、検疫法関係も政令と省令を変えるということでございます。
○宮村部会長 それでは、確認を得まして、本部会といたしまして、チクングニア熱について、感染症法における4類感染症に政令として位置づける、及び水際において、患者への適切な措置を講ずることができるように検疫法関係にも位置づけることが妥当である、ということにいたします。
次の話題でございます。新たに確認された病原体につきまして、事務局から説明をお願いいたします。
○事務局(中嶋室長) それでは、資料3で御説明させていただきます。
資料3「新たに確認された1類感染症の原因病原体の一種病原体等への追加について」でございます。こちらについてもこの資料をもとに御説明をさせていただきます。
1つ目のマル、1類感染症の原因となる病原体のほとんどは、感染症法に基づく「病原体管理制度」において、特に厳重に管理することが必要なものとして、一種病原体等として、その所持、輸入、譲渡等を原則禁止しているところでございます。
※1でございますが、1類感染症。先ほども御説明をさせていただきましたけれども、感染力、罹患した場合の重篤性等に基づく総合的な観点から見た危険性が極めて高い感染症でございます。種類としては、エボラ出血熱、クリミア・コンゴ出血熱、痘そう、南米出血熱、マールブルグ病、ラッサ熱、ペストの7疾病です。後ろの2ページ目の資料、先ほど耐性菌のところでも使わせていただいた資料と同様でございます。
※2で病原体管理制度を簡単に御紹介しております。この制度は、平成16年12月に「テロの未然防止に関する行動計画」というものが政府でとりまとめられまして、これを受けて18年に感染症法が一部改正され、病原体管理制度が創設されたものです。
この制度においては、病原性、国民の生命及び健康に対する影響に応じて、病原体を一種病原体等から四種病原体等まで(毒素等を含む場合がありますので「等」が入っております)、当該分類により所持の禁止等の所要の措置が規定され、平成19年6月から施行されているところでございます。
制度のポンチ絵については、同じ資料の3ページ目の色刷りのもので示してございます。左の上段のところ、一種病原体等から右側の四種病原体等まで、所持等の禁止という非常に厳しい制度から、二種病原体等は所持等の許可、三種病原体等は届出でいい、四種病原体は基準の遵守、このような制度になっているところでございます。
1ページ目にお戻りいただきまして、※3は一種病原体等でございます。一種病原体等については6つの疾病が属と種で規定されております。具体例としては、今回新たなものが出たエボラ出血熱と南米出血熱。現状は、エボラ出血熱はエボラウイルス属、4つの種。1つがアイボリーコーストエボラウイルス、ザイールウイルス、スーダンエボラウイルス、これがアフリカのエボラ出血熱。それからレストンエボラウイルス、これは猿等で見つかっているものです。南米出血熱は、アレナウイルス属でガナリトウイルスという種類、サビアウイルス、フニンウイルス、マチュポウイルスというものがございます。
本制度の施行以降、エボラ出血熱及び南米出血熱の病原体として新たに確認された種があることから、これらについても病原体管理の観点から、一種病原体等として取り扱う必要があると考えております。すなわち新種のウイルス等が確認された場合には、新たにその種を規定しないと、制度上、同じ疾病の病原体であっても、感染症法の病原体管理制度の適用を受けないままとなります。特に先ほど申し述べたように、一種病原体等については、原則所持が禁止されるという厳しい管理を要するものですので、できるだけ早い段階で盛り込んでいく必要があると考えております。
このため、新たに確認されたエボラ出血熱及び南米出血熱の病原体について、法令上に位置づけることの必要性について御確認をいただきたく、御審議をよろしくお願いいたします。
つけ加えるべきものとして、一番下に書いてあります、エボラ出血熱の病原体としては、エボラウイルス属ブンディブギョエボラウイルス、南米出血熱のアレナウイルス属チャパレウイルス、このウイルスの説明については資料の4ページに概要を紹介しております。
エボラウイルス属ブンディブギョエボラウイルスについてはウガンダで見つかったもの、そして、WHOの調査等で新しいウイルスであることがわかってきた。アレナウイルス属のチャパレウイルスについては、これも2003年ぐらいに流行があったところ、いろいろと調査の結果、2008年に論文がまとまり、アメリカの連邦法42CFR(Cord of Federal Regulations)Part73というところで規制がかかる予定で、今、提案がされているところでございます。
この2つの病原体につきまして、どうぞよろしく審議のほど、お願いいたします。
○宮村部会長 倉根参考人、更に補足がございますでしょうか。
○倉根参考人 特にはありませんが、ブンディブギョについては、25%ぐらいの方が亡くなりますので、スーダンとザイールに比べると少し病原性は低いということにはなるでしょうが、それでも致死率25%というのはかなりなものでありまして、ウイルスとしてはコートジボワール型に近い。コートジボワール型というのは、歴史上、まだ1人しか患者さんがいないのですが、そこに比較的近いということであります。ただ、発生地から言うとザイール(今のコンゴ)に近いのかなということですが、ウイルスとしてはコートジボワールに近い。
チャパレウイルスについてはボリビアでありまして、ボリビアにはもう一つ、ボリビア出血熱をおこすマチュポウイルスというのがあります。調べてみると、同じ国での話ではあるけれども、ボリビア出血熱を起こすマチュポウイルスよりは、ブラジル出血熱を起こすサビアウイルスに幾分近いということです。ウイルス学的にはそういうことですが、いずれも重篤な疾患を起こしますので、一種病原体に入れることに私も参考人としては賛成いたします。
○宮村部会長 この二つのウイルスについて、前からわかっているエボラ及び南米出血熱ウイルスときちんと診断区別できるのですか。
○倉根参考人 我々が、ということでしょうか。
○宮村部会長 両方です。
○倉根参考人 分離して調べればそれはできると思います。我々が持っている方法というのは、それぞれのウイルスの一つの株の遺伝子を用いているものですので、我々が持っている方法では、すべてのエボラウイルスが引っかかるわけではありません。それを我々は知っております。
ブンディブギョにつきましては、これを調べたグループが最初はスーダンエボラウイルスでつくった検査系で検査したら、引っかかる検体もあるし、ネガティブに出るものもあるわけです。すべてがネガティブではなくて、一部ポジティブになるので、やはりそこにはエボラがあったということであります。その後、調べていったら、違うウイルスだということを考えますと、スーダンのウイルスを使ってつくったものでさえ見逃すということは、我々が遺伝子組換えで一つの蛋白でつくったものでは見逃す可能性もある。幸運であれば引っかかるかもしれません。数が少ないので、ブンディブギョについては我々の検査法をまだチェックしておりません。
南米出血熱に関しましては、これも検討を進めておりますが、何せ患者数が少ないものですから、我々の検査系を調べるということが非常に難しくて、今、アルゼンチン出血熱を始めたところであり、チャパレについては現在、方法がありません。ですから、今、我々としてはできないということであります。
○宮村部会長 そういう状況下での病原体等に追加する、そういう提案です。更なる御質問、御意見はありませんか。
もう出尽くしたようですので、まとめさせていただきますと、新たに確認されたエボラ出血熱の病原体及び南米出血熱の病原体について、一種病原体等に追加することについて、部会として了承して差し支えないということでございましょうか。御確認をいただきたいと思います。
○渡邉委員 勿論つけ加えることには賛成ですけれども、今、倉根先生から話がありましたように、診断系の確立がなかなか難しいということで、同時に、診断系の確立に向けた研究の促進というところも入れていただければと思います。
○宮村部会長 とても大切なコメントだと思いますので、これを心して追加していただきたいと思います。
第一種の病原体につきましては、今後も同様に新たなウイルスが確認されるとことが当然考えられていくわけですけれども、それを受けて毎回部会を開いて、つけ加えましょう、つけ加えませんと、そういうことも余り効率的ではないように思います。きっちりした考え方を持っておく必要があると思いますけれども、これについて事務局から、今後の対応としての一つの指針といいましょうか、考え方はございますか。
○事務局(中嶋室長) 今回と同様に、非常に厳重な取り扱いが規定されている、一類感染症の病原体として新たなウイルスが出たものについては、我々としては、学会や国立感染症研究所からの科学的な御意見があった場合には、なるべく早く事務手続を開始できたらというふうに考えております。審議会には、もしよろしければ事後的に御報告をさせていただく形で、政令改正というものが必要になってくるのですが、事務手続を進めさせていただくことで、御了解いただければと考えているところでございます。
○宮村部会長 補足して、局長。
○外山健康局長 この感染症部会を余り開いていなかったということもありますけれども、開いて間に合えばいろいろ議論をいただくことも必要だと思いますので、原則はなるべく開いて意見を聞かなければいけない。それも間に合わず、国民の健康を守るために早く政令で指定しなければいけないときにはそういう場合もあり得るということで、その場合には、恐らく行政手続法に基づくパブコメも待たずに行政判断でやらなければいけない場合もゼロではない。しかし、我々の考えとしては、できる限り感染症部会の御意見も聞きたいということで、万が一間に合わない場合にはそういう運用もあり得るということで、両方主張したいと思います。
○宮村部会長 今、事務局及び局長からの提案でございますが、いかがでございましょうか。
どうぞ。
○蒔田委員 国民の健康を守るために、制度として順次進めていただくことは大変大事だと思いますけれども、情報の方が先立ってしまって、私ども保健センターに勤務させていただいていますが、そこに市民の方から直接問い合わせで、これは一体どういうことなのか、どういうことが自分の身に迫っているのか、隣の人がこの感染症だったらどうするのかといった、具体的な御意見を市民の方からいただくことが多いです。制度として指定していただいたりするところは順次進めていただきたいと思いますけれども、併せて、的確な情報提供をお願いできたらと思っておりますので、よろしくお願いいたします。
○竹内委員 この手の話になると、いつも私はフラストレーションのかたまりになるのですが、この経過を見れば、CDCが分離して新種だと言ったから日本は一種に指定した。アレナウイルスに至っては、1名の死亡患者の検体でウイルスの遺伝子を解析して、アメリカがリストしたから指定したと。いつものことだけれども、倉根先生と渡邉さんが言ったように、研究投資をやらないで、CDCが言ったから日本も追随しましょうと、それは民主党政権のあれに合わないのではないか。そんなことはいいですが、でも、やはり渡邉さんが言ったことは極めつけ重要なことで、倉根先生も2番目の南米型は診断できないと言ったではないですか。そこは何とか国の機関研究部門ですから、診断できないのを何で一類に指定するのか、アメリカが言ったからかというのは、説得力がない。
○外山健康局長 ちょっと議論が違うと思います。要するにこれは、テロ防止のための病原体の管理制度ということで、法律に基づいて、我々は不作為と言われないようにちゃんと行政手続をやらなければいけない。したがって、この病原体に着目して政令を改正しようということであります。一方で、そういった研究の底力を上げなければいけないのは当たり前の話ですけれども、そういったことがないから、政令で指定するのはおかしいではないかというのは。
○宮村部会長 わかりました。
渡邉委員、何かありますか。
○渡邉委員 感染研も厚労省の一部で同じ責任ですので、これは所を挙げて、これに対する迅速把握・検出をできるシステムは構築したいと思っています。
○宮村部会長 指定をすることによって、逆に研究をエンカレッジしていく最大のサポートになると思います。
もう一つありますか。
○竹内委員 国民の危機管理という観点から事前にというのは、それはそれでわからないではありません。しかし、国民の危機管理でバイオテロに使われる可能性があるから云々というのは、言葉だけがひとり歩きしている。要するに日本独自のエビデンスがないのに、これをいきなりバイオテロに使われる可能性があるから云々というのも、いささかそういう仕事をやっている立場から言えば、先ほどのディジーズサーベイランスでいいのか、それとも、ほかのサーベイランスシステムを動員して総合的に把握するかという話と同様、感染症に対する見方をもう一度内部で検討していただきたいと思います。
○外山健康局長 感染症部会で、今回の政令をストップすべきだというのであれば、御意見をいただきたいと思います。
○宮村部会長 それについては、私がこれからまとめたいと思いますけれども、1類感染症の病原体として、新たなウイルスとしてこれから専門家の間で認知されることについて、学会や国立感染研からの意見があった場合には、それをもって追加する事務手続を進めてよいということについて、審議会には事後的に報告していただく、そういうことが事務局からの提案でしたが、これについて是か非か、お願いいたします。そこで、局長から補足がありましたように、できるだけこの部会を開いてやっていくことは大原則であるけれども、それが間に合わないときはそういうこともあり得る、そういうお話であります。どうですか。
○北村委員 その方向でよろしいのではないでしょうか。
○宮村部会長 よろしいでしょうか。
○山川委員 一つだけ。その場合にも、感染研の意見を聞くということは明示的に定められるのですか。それから、厚労省のプラクティスとして、こういうことをやる場合には必ず感染研の意見を聞くということになっていくわけですか。
○宮村部会長 事務局からの提言では、学会及び国立感染症研究所、そういうふうな提言だったと理解していますけれども、何か更なるコメントはありますか。
○外山健康局長 当然だと思います。
○山川委員 私が伺ったのは、政令の文言上、そういう定めをされるのですか。その辺はどういうふうになりますか。
○外山健康局長 政令で定める要件とまた違いまして、今は行政の在り方の問題です。厚生労働省の一つの機関たる感染症研究所は一体のものですので、当然、そういう政策判断を求めるというか、本来の姿として当然、意見を述べる立場にあるわけです。更には学会の御意見を聞くのは、こういう行政の中で伝統的というか、当たり前のこととして尊重すべきだと思っております。
○山川委員 そういうことであるならば、緊急の場合には、事後報告といいますか、それで結構だと私も思います。
○宮村部会長 ありがとうございました。それでは、そのようにとりまとめ、今回の部会の結論といたします。
最後に、特定感染症予防指針につきまして、事務局から説明があるということでございますので、よろしくお願いします。
○事務局(林補佐) 時間が超過しておりますので、手短に御説明をさせていただきます。
資料4「『エイズ・性感染症ワーキンググループ』における『特定感染症予防指針』の検討について(案)」でございます。感染症法第11条に基づいて、後天性免疫不全症候群、性感染症、その他、幾つかの疾患がございますけれども、「特定感染症予防指針」というのを定めております。いずれも、少なくとも5年ごとに再検討を加えることとなっております。後天性免疫不全症候群については平成18年3月の5年後ですので、今年度末、そして性感染症につきましては、来年の11月にその見直しの時期を迎えます。
これにつきましてワーキンググループを設置して、そこで御検討いただき、その結果を報告いただいて、改正を要する場合には、本部会に事務局から諮問して手続を進める形をとらせていただくことについて、御提案をさせていただきます。また、もしワーキンググループの設置についてお認めいただければ、この部会の中からも何名かそこに御参画いただき、また、当該分野の専門家の方にも入っていただいて検討していただくこととしてはどうかと考えております。
御審議、よろしくお願いいたします。
○宮村部会長 それでは、性感染症と後天性免疫不全症候群の特定感染症予防指針について、ワーキンググループを立ち上げて検討する、次の見直しのときまでに十分時間をかけて行う、そういう提言ですけれども、いかがでしょうか。
どうぞ。
○北村委員 提案のとおりでございまして、私もこの性感染症予防指針などにかかわらせていただき、仲間たち、あるいは周辺の関係者といろいろ議論する機会がありましたけれども、どうも具体的なアクションプランがやや欠けているのではないだろうか。エイズ予防指針と性感染症予防指針がいつまでも分離した形でいいのか、統合できないのか。そういう辺りが現場の中で話題になっておりまして、是非この機会に、改めて議論する機会を持たせていただけたらと思っております。
○宮村部会長 北村委員の御意見も含めて、それらを統合するかどうかは今後の課題として、積極的にこのワーキンググループを速やかに立ち上げていただきたいと思います。それでよろしいでしょうか。
では、了承されたということで、次に移ります。
最後に、政策評価につきまして、事務局から御説明ください。
○事務局(林補佐) 資料5といたしまして、厚生労働省の政策評価の実績評価書を付けさせていただいております。これは何かと申しますと、行政評価法、行政機関が行う政策の評価に関する法律に基づいて、厚生労働省のPDCAサイクルといいますか、行政評価を次の施策に反映させるという取り組みの一つでございます。そのPDCAのCのチェックの部分でございまして、厚生労働省として、施策ごとの自己評価をまとめた文書を配付させていただきました。
これにつきまして、有識者の先生方にごらんいただいて、御意見をいただきたい。そして、このことは国民にも公表させていただいて、随時メール等で御意見をいただくことにしております。いただいた御意見をまた次の施策に反映させていきたいと思っておりますので、この場でという必要はございませんが、後ほどお目通しいただいて、何か御意見があれば事務局の方に、様式は問いませんので、メール、ファックス等、メモにしていただければと思います。
以上でございます。
○宮村部会長 ありがとうございました。
今回は久しぶりの感染症部会で、重要な課題がたくさんディスカッションされました。本日の感染症部会をこれで終了させていただきます。
委員の皆様方には会の運営に御協力いただきまして、ありがとうございました。御礼申し上げます。
この会における幾つかの御意見、積極的な御意見を賜りましたので、これを踏まえまして、当然のことでありますが、エビデンスに基づいた、しかも、正しいグローバルレベルの最新情報の分析に基づいた感染症対策を推進させて参りたいと思います。
最後に、事務局からごあいさつがあるということです。よろしくお願いします。
○外山健康局長 久しぶりの感染症部会ということで、反省もしていますし、どうもありがとうございました。感染症法の5類の定点に省令改正でアシネトバクターが入ったし、それから、若干懸念しておりましたけれども、4類の政令にチクングニア熱、あるいは検疫法の政令の改正、ちょうどフランスでも起こってきたということで、非常にタイムリーだったのではないかと思ってホッとしております。それから、エボラ出血熱、南米出血熱の一種病原体の政令の指定ということで、どうもありがとうございました。
最終的な省の方針を改めて決めた後、行政手続法にのっとって、パブコメ、あるいは十分な周知期間を置いて、国民への周知を整えながら、できるだけ早い実施に向けて手続を進めたいと思っております。
今日の議論の中で、我が国の感染症法の体系というか、ものの考え方に関する意見、それから、研究力というか、底力というか、そういった点に関してもいろいろ御意見をいただきました。それはそれとして心しながら、これからもいろいろ検討したいと思います。ありがとうございました。
○宮村部会長 どうもありがとうございました。
例えば、アシネトバクターを急遽感染症法の中に入れるということで、これで一件落着ということでは全然ありません。感染症対策というのは、本当に地に足をつけて長期的にやっていくことが必要でありますので、これからもどうぞよろしくお願いいたします。
それでは、今日の感染症部会を終わります。
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