IDESコラム vol. 41「番外編:2020年に向けて」

感染症エクスプレス@厚労省 2019年4月19日

結核感染症課長:日下英司

 4月から結核感染症課長を拝命しました日下英司(ひのしたえいじ)です。よろしくお願い致します。直近9年間にわたり国際関係の仕事に携わっておりました。国際保健の歴史は、まさに感染症との戦いの歴史であり、私自身、感染症対策は重要なことと考えております。結核感染症課長として身が引き締まる思いです。
 
 さて、最近では、現在コンゴ民主共和国(コンゴ民)で発生しているエボラ出血熱が国際保健の分野で話題となっています。エボラ出血熱のような感染症に国際社会としてどう対応すべきか、現在もなお議論されています。
 
 私が留学していたロンドン大学衛生・熱帯医学大学院(LSHTM)の学長であるピーター・ピオット博士が、1976年にザイール(現在のコンゴ民)でエボラ出血熱ウイルスを発見したこと、そしてその後ご一緒にお仕事をさせていただく機会があったことは、偶然とはいえ感染症とピオット博士には深いご縁を感じています。
 
 エボラ出血熱について言えば、40年以上前に発見されたにも拘わらず、治療薬・ワクチンが開発されたのはつい最近のことです。せっかく治療薬やワクチンが開発されても、エボラ出血熱の蔓延国ではその購入能力が乏しいこともあります。それに伴い、開発企業にとってのインセンティブが削られることも生じます。このように、国際的な感染症対策では、日本国内にはない問題が生じます。
 
 これまでの仕事で分かったことですが、発展途上国では、感染症を封じ込める能力に課題を抱えている国が少なくなく、医療提供体制、サーベイランス能力、検査能力にも、解決すべき課題があります。こうした国で感染症が蔓延すると、近年の経済発展、交通手段の発達に伴い、簡単に他国に感染拡大するようになっています。発展途上国の感染症は、たとえ海を挟んでも各国にとって、もはや対岸の火事ではないのです。
 
 2020年の東京オリンピック・パラリンピックを控え、国内における感染症対策の重要性は益々増大しておりますが、この感染症対策においては、グローバルな視点での取り組みが必要不可欠です。有事・平時問わず、状況に応じてどの様な対策をとるべきか、常に自問自答しております。日本国民が感染症から安心して暮らしてゆくため、ベストを尽くす所存です。
(編集:成瀨浩史)

●当コラムの見解は執筆者の個人的な意見であり、厚生労働省の見解を示すものではありません。
●IDES(Infectious Disease Emergency Specialist)は、厚生労働省で3年前の平成27年度からはじまったプログラムの中で養成される「感染症危機管理専門家」のことをいいます。
 
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