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あさコラム vol.46
感染症エクスプレス@厚労省 2017年3月17日

レジリエンス

 こんにちは、厚生労働省健康局結核感染症課長の浅沼一成です。

 東日本大震災から6年が経ちました。
 ここに改めて、震災で亡くなられた方々に追悼の意を表し、心よりお悔や
みを申し上げます。
 そして、被害に遭われた多くの皆様に、謹んでお見舞いを申し上げます。

 当時、内閣官房に出向していた私ですが、震災直後から厚生労働省に戻り、
厚生労働省災害対策本部や福島県庁内に移転したオフサイトセンターで、被
災者の方々の支援に努めてまいりました。
 様々な健康や医療、介護の課題に直面する度に、関係者や専門家等と知恵
を出しながら、時には福島の現場(南相馬市、広野町、川内村など)に赴き、
災害対策に取り組んでまいりました。
 その時の経験や教訓などを災害時における感染症対策に活かせるようにと
肝に銘じ、昨年の熊本地震の際にも、避難所における感染症対策に役立てて
きました。

 そうした中、「レジリエンス」という言葉に、触れあう機会が多くなりま
した。
 レジリエンス(resilience)とは、
 「弾力。復元力。また、病気などからの回復力。強靱さ。」(小学館大辞林)
 という意味ですが、この言葉が防災ワードとして「強靱化」と位置づけられ
 「国土強靱化(ナショナル・レジリエンス)」として、政府で取り組んで
いくこととされています。

 内閣官房等によると、「国土強靱化(ナショナル・レジリエンス)」とは
国家のリスクマネジメントであり、今後起こりえる大規模災害などに対して、
 ・人命を守り、
 ・国家及び社会の重要な機能が致命的な障害を受けず、
 ・国民の財産及び公共施設の被害を最小化し、
 ・迅速な復旧・復興を可能とする
 強くてしなやかな国をつくることであり、そのためにはレジリエンス社会
を構築することだそうです。

 この国土強靱化において重点的に取り組むべきプログラムの中に「救助、
救急、医療活動等」があり、その課題の一つに「災害時における感染症対策」
があります。
 レジリエンスの観点から、感染症対策の基本的な考え方は、
 ・平時から感染症の発生やまん延防止に努め、予防接種事業やサーベイラ
ンス事業などに取り組み、
 ・震災等の災害時には、
  ・手洗いなど避難所等での衛生管理の徹底、
  ・感染者の早期発見・早期治療、
  ・感染者の個室管理、
  ・仮設トイレの管理と充実
 などを実施する。
 この際には、市民向けの感染対策マニュアルや医療従事者に向けた指針の
作成や周知を行うとともに、国立感染症研究所や学会等の専門家による現地
支援・現地指導等が求められているところです。

 もちろん災害時には、水道や電気等のライフラインの途絶、避難所におけ
る避難生活の長期化、環境衛生の悪化により、蚊やダニなどの衛生害虫、ネ
ズミなどの媒介動物の発生など、感染症が発生しやすい状況であることを踏
まえて、対応をしていかなければなりません。
 例えば、昨年の熊本地震で、私が現地で把握した限りでは、
 ・水の確保が困難な場合は、流水による手洗いが容易ではないこと
 ・プッシュ型支援で仮設トイレを各地に設置したことでトイレ不足は解消
  されたが、設置場所に偏りがある、清掃等が不十分など、被災地の方々
  が自ら解決していかないとならない課題もあること
 ・土足禁止エリアの考え方やペットの取り扱いなど、避難所毎のルールに
  違いが生じていたこと
 など、具体的な課題があったところです。
 こうした課題を解決し、国土強靱化を進めるためには、平時から感染症対
策を重要な柱として明確に位置づけ、レジリエンスを意識した取り組みを進
めることが重要です。

 とはいえ、「言うは易く行うは難し」。
 具体的課題の解決に向けては悩ましいことばかりですが、実はレジリエン
スには「精神的回復力」、「逆境力」という心理学用語でもあります。
 ストレスが溜まることも多いですが、心折れることなく感情をコントロー
ルしながら、ポジティブに仕事に取り組んでいくためにも、3.11の想いを胸
に、私もレジリエンス(逆境力)を養っていきたいと思います。
 どうぞよろしくお願いいたします。


東日本大震災時に福島の現場でつけていた「がんばろう、ふくしま!」の缶バッチ。 レジリエンスの象徴として、現在も身につけ、励みにしています。

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