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あさコラム vol.53
感染症エクスプレス@厚労省 2017年5月12日
虎・虎・虎
こんにちは、厚生労働省健康局結核感染症課長の浅沼一成です。
今年の春の大型連休、ゴールデンウィークが終わりました。
海外に渡航された方々も多かったと思いますが、入国時や帰国後に体調に
不安がある方や動物に咬まれたり、蚊に刺されたなど、健康上心配なことが
ありましたら、厚生労働省WEBサイトの感染症情報「ゴールデンウィークに
おける海外での感染症予防について」という特集をぜひご参考にしていただ
きたいと思います。
また、帰国後に自宅等で体調が悪くなり医療機関を受診される時には、適
切な診断治療のためにも、医師に渡航歴を必ずお伝え下さい。
さて、このゴールデンウィーク、私は万が一に備え、在京待機していまし
た。
そのため、この連休中はTVやラジオがお友達でしたが、色々な番組を観て
いると、「虎」の活躍が目につきました。
まずは、NHK大河ドラマ「おんな城主 直虎」。
このゴールデンウィークで、土曜日の再放送も含めて、第16~18回と総集
編の第一章を鑑賞。
毎週観ているドラマですが、最近はますます面白くなってきましたね。
直近では、高橋一生さん演じる幼なじみの筆頭家老・小野但馬守政次の
「本意」がようやくわかった、柴咲コウさん演じる主人公・井伊直虎。
しかし、今川家、武田家、松平家に囲まれた厳しい戦国の世において、直
虎がどのように井伊家を守っていくのか、今後も楽しみです。
武力ではなく、知恵と決断と人の輪で、様々な難局を切り抜けていく直虎
の姿を描く森下佳子さんの脚本は、仕事に対するヒントも与えてくれていま
す。
※下のイラストは浜松マスコットキャラクター「出世法師直虎ちゃん」
プロ野球に目をやれば、絶好調だったのは阪神タイガース。
ゴールデンウィーク中、こちらの虎は破竹の5連勝でセントラル・リーグ
の首位を快走。
特に圧巻だったのは、5月6日の甲子園球場での広島東洋カープ戦。
5回表時点で0-9の劣勢から猛攻開始、12-9と歴史的な大逆転勝利を収め
ました。
今年の阪神タイガースはFAで加入した糸井嘉男選手をはじめ、福留孝介
選手や鳥谷敬選手などのベテラン選手と、高山俊選手や北條史也選手、梅
野隆太郎選手などの成長著しい若手選手が融合。
鉄人・金本知憲監督の熱血指導が、ようやくチーム成績に反映されてき
たのではないか、と感じています。
課題は先発投手陣。
メッセンジャー投手、藤浪晋太郎投手、能見篤史投手、岩貞祐太投手に
続く5番手、6番手の先発投手がどれだけ安定してくれるのか、です。
猛虎復活に向け、期待の秋山拓巳投手や青柳晃洋投手がどこまで伸びて
くるのか、注目しています。
また、芸能ニュースに耳を傾けると、女性ダンス&ボーカルグループの
グループ・MAXが、2010年12月以来となるオリジナルメンバー4人でのライ
ブを東京・品川で開催しました。
3児の母となり育休のため、活動休止中だったメンバーのREINAさんが6年
半ぶりにステージに戻り、今後は3人から4人のMAXとして再び活動を開始す
るそうです。
デビュー22年目。
ママになっても、いくつになっても、キレキレのダンス&ミュージック、
そしてトークで盛り上げてくれるMAXの皆さんですが、数あるヒット曲の
ひとつは「TORA TORA TORA」。
ここにも、虎の文字が潜んでいました。
さて、感染症の世界で虎と言えば、コレラ。
漢字で「虎列剌」あるいは「虎烈刺」「虎列拉」と書きます。
また、「ころりと死ぬ」ということから、コロリ(虎狼痢)とも記述さ
れることもあります。
コレラ菌(Vibrio cholerae)が原因で、激しい水様性下痢を引き起こす
この経口感染症がわが国に入ってきたのは19世紀。
文政、安政、文久の時代から明治、大正、昭和にかけて、幾度か流行を
起こしています。
現在では経口補水液(ORS)や輸液、抗菌薬により治療ができますが、
例えば、明治12年(1879年)の流行では、約16万人の感染者が発生し、約
10万人の方が死亡、明治19年(1886年)の流行でも約15万人の感染者が発
生し、約10万人の方が死亡されたと記録されています。
まさに虎の恐怖、高い感染率と死亡率だったことが伺えます。
明治19年(1886)の「虎列刺退治」という錦絵によりますと、コレラに見立
てた怪獣は、頭が虎、胴体は狼、そして、なぜか睾丸が狸という、3獣が合
体したものとなっています。
続けて読むと、虎(コ)、狼(ロ)、狸(リ)、つまりコロリとなるん
です。
この怪獣は消毒薬も予防薬も効かない強敵ですが、水からうつるから飲
み水には気をつけた方がよい、食物にも気をつけた方が良い、トイレはよ
く掃除して清潔を保つようにと、予防の留意事項について、当時から広報
されています。
ちなみに、コレラ感染者の行政への届出制度が規定された明治10年
(1877年)の「虎列刺病予防法心得」は、現在の感染症法の原点のひとつ
であります。
近年、わが国では年間、数例程度の届出数のコレラですが、世界では、
毎年、推定で130万人から400万人の患者が発生し、21,000人から143,000人
の方が亡くなっています。
今年(2017年)は、ソマリアにおいてコレラが急増中。
WHO(世界保健機関)によると、現在、31,764名(うち、死者618名)が
罹患しているとのことです。
未だ公衆衛生上の脅威ですが、安全な水と衛生環境を確保することによ
り、この虎を制圧することができます。
「コレラは衛生の母なり」加藤清正公さながらの虎退治、ぜひとも各国
で期待したいところです。
浜松マスコットキャラクター「出世法師直虎ちゃん」
コレラの錦絵/流行虎列剌病予防の心得(提供:内藤記念くすり博物館)
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