2025年3月11日 第195回労働政策審議会労働条件分科会 議事録

労働基準局労働条件政策課

日時

令和7年3月11日(火) 14:00~16:00

場所

厚生労働省省議室
(東京都千代田区霞が関1-2-2 中央合同庁舎5号館9階)

出席者

公益代表委員
荒木委員、安藤委員、川田委員、神吉委員、黒田委員、佐藤(厚)委員、藤村委員、水島委員
労働者代表委員
川野委員、櫻田委員、冨髙委員、藤川委員、古川委員、松田委員、水野委員、世永委員
使用者代表委員
佐久間委員、鈴木委員、田中委員、鳥澤委員、兵藤委員、松永委員
事務局
岸本労働基準局長、尾田審議官(労働条件政策、働き方改革担当)、佐々木総務課長、澁谷労働条件政策課長、田上労働条件確保改善対策室長、中島企画調整専門官、小嶋労働条件企画専門官

議題

(1)2023 年度 年度評価について
(2)労働基準関係法制について 

議事

議事内容

○荒木分科会長 それでは、定刻になりましたので、ただいまから第195回「労働政策審議会労働条件分科会」を開催いたします。
 なお、本日の分科会は会場からの御参加とオンラインでの御参加の双方の方式で実施いたします。
 本日の委員の出席状況ですが、使用者代表の鬼村洋平委員、佐藤晴子委員、松永恭興委員が御欠席と伺っております。
 それでは、カメラ撮りはここまでということでお願いします。
 議事に入ります。本日の議題1は「2023年度年度評価について」です。では、事務局から資料№1について説明をお願いいたします。
○労働条件企画専門官 事務局でございます。
 2023年度の年度評価につきまして、資料№1及び参考資料に基づきまして御説明をいたします。
 まず初めに資料№1の1ページ目を御覧ください。労働条件分科会におきましては、2025年までの目標を2つ設定してございます。1つ目は年次有給休暇取得率を70%以上とするもの。2つ目が週労働時間40時間以上の雇用者のうち、週労働時間60時間以上の雇用者の割合を5%以下とするものでございます。本日は、この目標の2023年度における進捗状況や今後の方針等について御説明を申し上げます。
 まず、1つ目の目標である年次有給休暇の取得率につきまして、2023年度の実績は、表の右側、65.3%となってございます。次に、2つ目の目標である週労働時間40時間以上の雇用者のうち、週労働時間60時間以上の雇用者の割合につきましては8.4%となってございます。
 続きまして、1ページ目の真ん中少し下の部分から施策の実施状況でございます。2023年度に実施した取組といたしまして主な取組を御紹介いたします。働き方改革関連法の周知ということで、時間外労働の上限規制や年次有給休暇の年5日の取得義務等、幅広い周知を実施してまいりました。
 2ページ目でございます。働き方改革に関する相談・支援ということで、働き方改革推進支援センター、働き方・休み方改善コンサルタント等の支援を実施してきたところでございます。加えて、長時間労働の是正に向けた監督指導、年次有給休暇の取得促進に向けた取組を進めてまいりました。
 3ページ目でございます。2023年度の実施状況に係る分析でございます。こちらにつきましては、参考資料に基づきまして御説明をいたします。参考資料1ページ目を御覧ください。まず目標1、年次有給休暇の取得率につきまして65.3%となり、目標である70%とは乖離があるものの、労使の皆様の御尽力もございまして昭和59年以降最も高い数値となったところでございます。
 参考資料3ページ目を御覧ください。こちらに企業規模別の年次有給休暇の取得率の経年変化を掲載してございます。2023年の取得率は、前年と比較しまして、いずれの区分においても増加してございます。一方で、企業規模が小さい30~99人、100~299人の区分で取得率が低いという状況になっておりますので、引き続き中小企業に対する支援に取り組む必要があると考えてございます。
 同じ3ページ目の真ん中の下、参考の部分でございます。令和5年度の「仕事と生活の調和」の実現及び特別な休暇制度の普及促進に関する意識調査によりますと、年次有給休暇取得について、「ためらいを感じる」「ややためらいを感じる」を合わせると39.4%となってございます。この割合は、令和3年調査では45.5%、令和4年調査では41.4%と年々減少してきておりますが、依然として約4割の方がためらいを感じるといった結果となってございます。ためらいを感じる理由といたしまして、「周囲に迷惑がかかると感じる」「後で多忙になる」「休むための仕事の調整が手間」等が上位になってございます。引き続き年次有給休暇を取得しやすい職場の環境づくりが必要であると考えてございます。
 続きまして、参考資料5ページでございます。週労働時間40時間以上の雇用者のうち、週労働時間60時間以上の雇用者の割合でございます。右上を見ていただきますと、2023年の実績は8.4%となってございます。目標の5%と乖離があるものの、長期的には緩やかに減少傾向となってございます。なお、先日発表された労働力調査の結果によりますと、参考値として載せてございますが、2024年は8.0%となってございます。
 労働時間の状況につきましては、今後の動向を十分に注視しつつ、引き続き取組を進めていく必要がございます。
 2023年の業種別に見てみますと、「運輸業、郵便業」や、「宿泊業、飲食サービス業」、「教育、学習支援業」といったところが長くなってございます。
 続いて、資料№1にお戻りいただきまして、4ページ目でございます。今、年次有給休暇の取得及び労働時間の状況について御説明を申し上げましたが、この状況を踏まえた評価、今後の方針という欄でございます。まず、①年次有給休暇につきまして、先ほど御説明を申し上げましたとおり、労使の皆様の御尽力もあり、着実に増加している状況でございます。引き続き丁寧な相談支援の実施、各施策の周知を行うということに加えまして、病気やけがに備えた取得控えを抑制するため、事例集、就業規則の規定例を記載したリーフレットの作成、配布、働き方・休み方改善ポータルサイト上での周知等により、病気休暇制度等の特別休暇制度の普及促進に努めてまいります。
 ②労働時間につきまして、緩やかではあるものの、長期的には減少傾向でございます。
 昨年4月から時間外労働の上限規制の適用が建設の事業、自動車運転の業務等についても開始されました。これら業種については、長時間労働の背景に取引慣行上の課題があり、時間外労働の上限規制の適用に当たっては、取引関係者、ひいては国民の皆様の全体の理解を得ることが重要でございます。こうした状況を踏まえまして、厚生労働省においては取組関係者や国民全体に向けて、国土交通省とも連携しながら、働き方改革の重要性や業界が抱える課題について周知広報を行っております。さらに、特にトラックドライバーに関しましては、長時間の恒常的な荷待ち時間を発生させないことなどに係る労働基準監督署による荷主要請や、国土交通省のトラック・物流Gメンの協力等の取組を行っております。
 加えまして、医業に従事する医師に関しましては、他の職種との業務分担(タスクシフト/タスクシェア)等医療機関の勤務環境改善に向けた取組を支援するということで、医療勤務環境改善支援センターで相談対応、助言等の事業を実施しております。
 さらに、働き方改革推進支援助成金でございますが、今申し上げた建設業、自動車運転の業務、医業に従事する医師などについて、労働時間の短縮等に向けた環境整備に取り組む中小企業を支援するためのコースを設置し、助成金の支給を行ってまいりました。こうした取組を令和7年度も引き続き実施することで、さらなる長時間労働の削減を図ってまいります。また、今、申し上げた上限規制の適用が猶予されていた業種以外においても目標に対して実績が低調なものが認められる状況でございます。目標の達成に向けまして、令和7年度から新たに働き方改革推進支援助成金において、「過労死等の防止のための対策に関する大綱」で長時間労働が指摘されている情報通信業、宿泊業を「業種別課題対応コース」の新たな対象として追加しまして、支援を実施していく予定でございます。
 加えまして、働き方改革推進支援センターの事業においても、時間外労働の削減や年次有給休暇の取得促進といったところを今、申し上げたような業種に対して、セミナーを全国各地で行うことを予定してございます。
 今は業種別特化の御説明をさせていただきましたが、引き続き全業種横断的に中小企業を中心として、労働時間相談・支援班や働き方改革推進支援センター等での丁寧な相談対応や助成金等、各種支援制度の周知を実施するということに加えまして、各業種における年次有給休暇取得促進や労働時間削減に向けた取組の好事例を、働き方・休み方改善ポータルサイトを利用しまして情報発信していくことなどにより、企業における働き方・休み方の見直しに向けた自主的な取組を推進してまいります。
 さらに、企業における働き方や休み方の見直しに向けた取組を促進するためには、労使の皆様のみならず、国民の皆様に対してもこの重要性を理解いただく必要がございます。こういったことから、10月の「年次有給休暇取得促進期間」や11月の「過労死等防止啓発月間」等の機会を通じて周知・啓発に努めてまいります。
 事務局からの説明は以上でございます。
○荒木分科会長 ありがとうございました。
 ただいまの事務局の説明につきまして、御質問・御意見がありましたらお願いいたします。なお、オンラインで参加の委員は、チャットのほうに「発言希望」と書いてお知らせください。いかがでしょうか。世永委員、お願いします。
○世永委員 ありがとうございます。
 長時間労働の是正の取組について発言させていただきます。週労働時間 40 時間以上の雇用者のうち、週労働時間60時間以上の雇用者の割合は8.4%と、確かに前年より減少したものの、2025年までに5%という政府目標との乖離は大きい結果となっています。その上で、参考資料の5ページから6ページを見ますと、運輸業、郵便業や宿泊サービス業などは依然として長時間労働の傾向が強く、業種別によっては濃淡があると思います。
 長時間労働となる大きな要因については、例えば自動車運転従事者の場合ですけれども、賃金体系にあると考えています。厚生労働省のサイトに掲載された統計の2020年の内容ですが、固定給のみが35%、固定給と歩合給の混合が52%、そして完全歩合給が13%となっています。さらに、多くの企業で固定残業代を採用し、ドライバー募集時に固定給部分を多く見せる手法を用いていますが、複雑な給与計算等から未払い問題が多く発生しているというのが実態です。
 以上のことからも、労働時間の適正把握の徹底、そして不払い残業を含む長時間労働の課題解決に向けて、厚生労働省としても全業種横断的に指導監督等を図っていくことはもちろん必要と考えておりますけれども、同時に、支援策につきましては業種別にメリハリをつけていただくようお願いいたします。
 以上です。
○荒木分科会長 ありがとうございました。
 ほかにはいかがでしょうか。櫻田委員。
○櫻田委員 ありがとうございます。
 私からは年次有給休暇について申し上げたいと思います。年次有給休暇の取得率につきましては、全体として上昇傾向が継続しているということは、まさに労使を中心とした取組の結果であると思っておりますが、70%の目標の達成にはなお一段ステージを変えるような取組が求められると思っております。
 参考資料の2ページには業種別の年次有給休暇の取得率が示されております。これを見ましても業種間の差というのはまだ残っていると思っておりますし、私は宿泊業も含まれている産業別労働組合に所属しておりますけれども、「宿泊業、飲食サービス業」はほかと比べて大変低いという状況がございます。現場の実態を踏まえますと、人手不足がやはり大きく影響していると思っておりますが、義務化されております5日の取得すら調整に苦労するという状況も承知しているところであります。また、年次有給休暇を取得するために人員配置が必要になることになりますから、それが長時間労働、時間外労働にもつながっているという実態も見えているところであります。
 ですから、取得率が低い「宿泊業、飲食サービス業」や、「教育、学習支援業」などの業種別の課題や、中小企業における取得率の向上を図るための取組強化は大変重要だと思っております。
 働き方改革推進支援助成金の業種別課題対応コースの追加を予定しているということを先ほど御説明いただきましたが、既存業種を含めて効果的な周知や働きかけをぜひお願いしたいと思います。
 参考資料の1ページを拝見しますと、直近5年間で年次有給休暇の付与日数が減少しているということが見受けられます。この点については、取得率ということにも関わることでありますので、どのような原因があるのか、検証が必要ではないかと考えているところです。
 また、ワーク・ライフ・バランスの取れた働き方を実現していくためには、雇用形態とか企業規模にかかわらず、年次有給休暇を取得しやすい職場環境づくりということを進めていくことが大変重要だと思います。説明にもございましたけれども、病気やけがに備えて年次有給休暇を温存することや、時間単位年休の適用日数を増やさなくてもよいように、社内制度として病気休暇等の特別休暇制度の普及促進を一層進めるなどの環境整備も必要だと思います。
 引き続き厚生労働省におかれましても、労使それぞれに対して効果的な後押しをお願いしたいと思います。
○荒木分科会長 ありがとうございました。
 オンラインから水島委員、お願いいたします。
○水島委員 水島です。オンラインから失礼します。
 年次有給休暇の取得率に関して意見を述べさせていただきます。年次有給休暇の取得率は上昇していますが、頭打ちの状況に近づいているように思います。そのため、休暇の取得控え解消の取組は大変評価できますが、病気休暇制度の普及促進を図るとの記載については、先ほど委員からも御意見がございましたが、私には少し気にかかることがあります。というのは、病気休暇が無給であれば、労働者の年休取得控えは解消しないと思いますし、反対に有給であれば、企業に過重な負担を求めるものであって、簡単に普及促進を言えるものではないと考えるからです。
 以上でございます。
○荒木分科会長 ありがとうございました。
 ほかにはいかがでしょうか。鈴木委員、お願いします。
○鈴木委員 御指名ありがとうございます。
 私からも年度評価について思うところを幾つかお話させていただければと思っております。
 まず、2つの目標のうち、特に週労働時間の60時間以上の雇用者割合の目標に向けた進捗について、減少はしているものの必ずしも十分とは言えないと理解しております。目標の達成に向けては、事務局や労働者側委員からも御指摘がありましたように、長時間労働で働く割合の多い産業に対する、支援をしっかり行っていくことが有効と思っております。
 また、一企業、一産業の取組ではなかなか対応が難しい長時間労働につながる商慣行が、運輸業をはじめ、まだ広く残っています。経団連といたしましても、商慣行の是正に向けて引き続きしっかり取り組んでまいりたいと思っております。
 「過労死等の防止のための対策に関する大綱」でも言及いただいておりますが、長時間労働につながる商慣行は、民間企業だけではなく、国や地方公共団体等行政機関との取組の中でも見られるところです。これまでも厚生労働省にはその是正に向けてお取り組みいただいておりますけれども、引き続き御協力をいただきたいと思っております。
 長時間労働の是正に向けては、業務の効率化等に取り組むことは大変重要ですが、他方で、労働時間の短縮は付加価値の最大化とセットで行っていく必要性を最近、非常に強く感じます。我が国の潜在成長率は1%を切っております。ご案内のとおり、潜在成長率は3つの要素から成っており、1つは就業者の人数に就業時間を乗じた値である労働投入、2つ目がイノベーションの成果とも言うべき全要素生産性、最後に資本ストックで構成されています。この先、長時間労働は労使の取組、政府の取組が進むことで下がっていくと期待されますし、何より労働力人口の減少によって、労働投入は確実かつ大幅に低下し、潜在成長率を押し下げます。
 労働投入の減少を大きく上回るような全要素生産性の向上、つまり、付加価値の最大化を、長時間労働の是正と同時に実現していくことが重要でありますし、そのことが持続的な労働時間削減を可能にすると考えます。さらに、賃金引上げ原資の確保という意味で、構造的な賃金引上げの定着、国内雇用の場の確保にもつながっていくものと思っております。
 事務局から御説明いただきました働き方改革関連の助成金は、比較的業務の効率化に焦点を当てたものが多い印象を受けます。効率化による生産性の向上は、業種や業態によって違うと思いますが、やはり限界もあろうかと思います。その意味では、目標達成に向けて取り組むに当たっても、付加価値の最大化、特に働き手のエンゲージメントを向上させる視点からの支援が大切であり、そうした観点からの議論も必要と考えます。
 私からは以上でございます。
○荒木分科会長 ありがとうございました。
 ほかにはいかがでしょうか。よろしいでしょうか。
 それでは、ほかに御発言がなければ、本分科会における2023年度の年度評価については、ただいま説明があったとおり取りまとめることとし、本日各委員から御発言いただいた内容を踏まえながら、引き続き取り組んでいただくこととしたいと思いますが、よろしいでしょうか。
(委員首肯)
○荒木分科会長 ありがとうございました。
 それでは、議題1は以上ということにしまして、続きまして、資料№2「労働基準法における『労働者』について」。事務局から説明をお願いいたします。
○労働条件確保改善対策室長 それでは、資料№2を御覧ください。資料№2は「労働基準法における『労働者』について」という資料となってございます。
 おめくりいただきまして、1ページからです。先般の労働基準関係法制研究会の報告書におきまして、この課題についてまとめた部分の抜粋でございます。労働基準法における「労働者」でございますが、現代におけるいわゆる労働者性の課題ということで、新しい働き方の対応、実態として「労働者」である方に対して労働基準法を確実に適用しなければならない。このようなことから、労働者性の判断について予見可能性を高めていくということが求められていると御指摘をいただいております。
 その中で、労働者について定めている労働基準法第9条、そして第9条を基に判断の基準となっている昭和60年の労働基準法研究会報告について論じていただいております。
 まず、労働基準法第9条につきましては、これ自体は、「職業の種類を問わず、事業又は事務所に使用される者」という抽象的な定義規定となっておりますが、これについての改正というよりは、この労働基準法第9条の規定の下で、具体的な労働者性判断が適正に、予見可能性を高めた形で行われるために、どのような対応が必要か検討すべきとされております。
 そうしますと、昭和60年の労働基準法研究会報告についてということになりますが、今、使っておりますこの研究会報告によって示された判断基準については、制定から40年が経っているということで、40年間積み重ねられた事例や裁判例といったものをしっかり分析・研究をし、学説も踏まえながら、修正すべき点がないかという点を含めて見直しの必要性を検討する必要があると御指摘をいただいているものでございます。
 その下のところですが、特に近年拡大しております、いわゆるプラットフォームワーカーの方々の労務管理や評価にAIやアルゴリズムなどといったものが使われている場合も含みますが、こういったものについての予見可能性を高めていくこと、法的安定性を高めていくことの必要性についても御指摘をいただいているところでございます。
 このプラットフォームワーカーに関しましては、今年のILOの総会においても新しい国際労働基準の策定に向けた議論が開始される予定となっておりまして、こういった国際的な動きも踏まえて検討していく必要があるのではないかと御指摘をいただいたところでございます。
 それを踏まえまして今後の研究をどうしていくかということに関して、昭和60年にまとめた際に、学識の方々、幅広い専門家の方々に集まっていただいて研究をしたということと同様に、労働者性の判断基準に関する知見を有する専門家の方を幅広く集めて分析・研究をしていく。そのために厚生労働省にその研究を行う体制を整えるということが必要ではないかと御指摘をいただいたところでございます。ここまでが一般的な労働者性について、報告書で御指摘をいただいたところでございます。
 最後に1つ個別の論点として、家事使用人の課題についても触れられております。家事使用人の方々、いわゆる一般家庭に雇用されて家事に携わるような方々で、昔で言うところの女中や家政婦(夫)の方に当たりますが、こういった方々に関しては、現行の労働基準法については適用除外とされているところでございます。
 家事使用人の労働基準法適用に関しまして、労働基準法を全面的に適用除外する現行の規定を見直し、公法的規制については、雇用主が私家庭になりますので、その実態に合わせて検討していくべきではないかというような御指摘をいただいたというものでございます。
 これが労働基準関係法制研究会の報告によってまとめられた労働者性に関する部分の問題でございます。
 これを検討していくに当たりまして、以下、資料を御用意しております。
 2ページは、各法律において「労働者」の定義をどのように置いているかというものを一覧表にしたものでございます。労働基準法に関しましては、先ほど申し上げましたとおり、「職業の種類を問わず、事業又は事務所に使用される者で、賃金を支払われる者」というのが第9条に規定されております。
 その次の労働者災害補償保険法、いわゆる労災保険法ですが、こちらについては明文の規定はございません。一方で、この労災保険法に関しては、労働基準法に定められている使用者の災害補償責任について保険でもって担保するという法律でございますので、法律の目的・趣旨に照らして、当然に労働基準法の「労働者」と同じと解されております。
 次に、労働安全衛生法でございますが、これに関しては第2条に「労働基準法第9条に規定する労働者」と定義が置かれております。
 この3つの法律に関しましては、明確に労働基準法の「労働者」と同じ範囲ということで扱われております。
 次の労働契約法でございますが、こちらは第2条に「使用者に使用されて労働し、賃金を支払われる者」と定義が置かれております。労働基準法の書き方と少し書きぶりが異なっておりますけれども、現行の取扱いとしましては、労働基準法における「労働者」とほぼ同じであるというふうに解されております。
 一方で、最後の労働組合法に関しましては、「職業の種類を問わず、賃金、給料その他これに準ずる収入によって生活する者」と定義されております。労働基準法と異なりまして、「使用される」という要件が入っておりませんので、失業者も含まれる概念となっております。こういったことから、労働組合法と労働基準法では若干対象範囲が異なるということで、一番下の判断基準のところにおきましても、労働基準法に関しましては、昭和60年の研究会報告が現在の判断基準であり、労働組合法に関しましては、平成23年に労使関係法研究会報告でまとめられたものが判断基準となっているという違いがございます。
 今回は労働基準法の「労働者」の判断基準が課題となっていくということで、3ページ、4ページ目はそちらをまとめたものでございます。3ページは、委員の先生方は御案内のことと思いますが、昭和60年の研究会報告でまとめられた判断基準について抜粋したものでございます。
 この基準に従いまして判断をしていくフローチャートが4ページでございますが、下から順番に上がっていきます。発注者との関係性を踏まえて、「指揮監督下」の労働であるかどうかというものを判断し、また、支払われる報酬の性格について「労務対償性」があるかどうかということを判断し、それらを総合して「使用従属性」が認められるかどうかを判断して、労働者性を判断していくというような総合判断方式をとっているというものでございます。これは我が国だけではなくて、どこの国でも同じように総合的に判断をしているという形となっております。
 5ページ目、6ページ目が私どものほうで示しております働き方の自己診断チェックリストでございます。主にフリーランスとして働く方々向けに、自分の働き方について労働者性があるかどうかをチェックできるようなものとしてまとめております。
 6ページがそのチェックリストでございますが、先ほど申し上げた判断基準に沿ってチェックリストを設けておりまして、Bに該当するものが多ければ労働者性を肯定する方向に働くということが分かるようにしております。
 ただ、これもBが幾つだったから必ず労働者というものではなくて、こういったものを基に、最終的にはその方の働き方を個別に見て総合判断をしていくというのが現行の取扱いとなっております。
 7ページ目からは国際的な動きでございます。特にプラットフォーム労働者の方々に関する動きでございます。まず、ヨーロッパでございます。EUの欧州委員会におきまして、2021年12月にプラットフォーム労働における労働条件を改善して、EUのデジタル労働プラットフォームの持続可能な成長を支援するための新たな指令案というのが提案されました。かなり長い間議論されましたが、2024年10月に正式に採択されております。
 この採択内容でございますが、具体的には8ページに詳述しております。ポイントといたしましては、いわゆるデジタルプラットフォームで働く方々に関しまして、プラットフォーマーとプラットフォーム労働者の間の契約関係が雇用に当たるのか、そうでないのかということに関しては、各国の国内法労働協約等々に詳細は任せるが、支配と指揮を含む要素が見出される場合には、法的に雇用関係であるというふうに推定すると。まず、労働者であると推定し、それに対して異議がある場合には、プラットフォーム側がそれに対して挙証責任を負うという形で、国内法制を整備してくださいという指令が出ております。これに沿いまして、加盟国は2026年12月までにこの指令を遵守するために必要な法律を発効することが求められるという形となっております。ヨーロッパはこういった形で推定方式を導入しようということで進んでいるというものでございます。
 9ページでございます。アメリカに関しましては連邦法と州法で異なりますし、州法に関しては、各州によって大きく異なるという事情がございますが、ここでは一例としてカリフォルニア州の例を引いてきております。カリフォルニア州におきましては、2018年にダイナメックス事件の判決がありまして、それを基にABCテストというものを2019年に立法化しております。これは、箱の中にありますようなA、B、Cの要件を使用者が全て立証しない限りは、被用者、すなわち労働者であると判断するというものでございます。
 基本的には労働者であると推定して動くということが2019年に立法化されましたが、これに対して逆方向のものとして、10ページ、「Proposition22」というものがございます。これはABCテストが2020年1月1日に発効したのに対して、2020年11月に、「アプリに基づき稼動する運転手とサービスの保護法・提案22」というものが出ました。要するに、これはアプリに基づいて自動車サービスを行っているライドシェアやフードデリバリーといったものが対象となっております。
 これに関しましては、下の箱に書いてあるような要件、高い時給を払うとか、アプリをオフにしない限り、労働時間の上限を定めるといったような措置を設ければ、こうした方々に関しては被用者、労働者ではなく独立契約者、日本で言うところの請負事業者に当たるものであると位置づけるというものが賛成多数で承認されたと。これに関して訴訟も続いておりましたが、2024年7月にはこれが合憲であるという判断が下っているというものでございます。労働者側とするか、独立事業者とするかというものに関しては揺れ動いているという状況であります。
 11ページ、連邦法のほうでございますが、アメリカ公正労働基準法における労働者と個人事業主の区別というものがございます。こちらも経緯がございまして、一番下の参考のところに規則の制定経緯を書いておりますが、もともと2021年の共和党政権下におきまして、労働者の判断基準、この法律における被用者の判断基準において、どちらかといえば独立の契約者であると判断されやすい判断方法に置き換えられました。それに対して、2024年に民主党政権の下で、伝統的な判断基準のほうに戻すということで、また規定が変えられるということとなっております。こちらは我が国で言うところの省令ぐらいのレベルの法令でございます。このように、アメリカにおきましてもその時々によって判断基準というものに関しては若干揺れ動きながら模索をしているという状況であるという事情はあるかと思います。
 こうした点を踏まえまして、先ほど申し上げた研究会での御提案にありましたような「労働基準法における『労働者』に関する研究会」というものを開催したいと考えてございます。12ページです。まだたたき台でございますが、こういった形で労働基準法上の労働者性に関する事例、判例を分析し、労働者性の判断基準の在り方や、新しい働き方への対応も含めた方策を研究する研究会を立ち上げたいと考えているところでございます。
 以上が包括的な労働者、全体の労働者概念に関する部分でございます。
 13ページ、14ページから家事使用人についての資料でございます。13ページは、これまで家事使用人が労働基準法の適用除外となっていた理由につきまして、書籍等々でこういった説明がされているというものをまとめたものでございます。端的に言えば、家事使用人の方々は家庭の中で働いているので、そのほかの事業の労働とは相当異なったものであるということで、適用除外とされてきたという歴史的な経緯がございます。
 14ページは、このような労働基準法が適用されない方、フリーランスですとか家内労働者と比較してどのような保護がなされているかを比較したものでございます。フリーランスに関しましては、先般フリーランス法が施行されました。この中で報酬や契約明示といったことに関しての規定が設けられております。家内労働者に関しては、もともと家内労働法がございまして、工賃の支払い等に関して規定が置かれているものでございます。
 一方で、右端の家事使用人ですが、労働基準法の適用除外がなされている一方で、特別立法はありませんので、就業時間や報酬といったものに関して法令上の規制がありません。労働契約法に関しては適用がされています。
 15ページはILOにおける扱いでございます。ILO第189号条約で「家事労働者の適切な仕事に関する条約」というものがございます。こちらに関しては、我が国は批准はしておりません。
 この内容につきましては、総合して言いますと、労働者と遜色のない保護をきちんと与えましょうということになっております。
 こうしたことを踏まえまして、16ページでございますが、昨年の2月に私どものほうで「家事使用人の雇用ガイドライン」を作成し、家事使用人の方々や家事使用人を雇う家庭の方々に向けて周知をしているところでございます。ガイドラインの内容といたしましては、適用される法律、適用されない法律がございますけれども、実際に契約するに当たっては、例えば最低基準を下回らない水準の報酬にしてくださいとか、就業時間に関しては1日8時間、週40時間が基本といったこと、労働基準法に相当するような契約等をしてくださいということをお願いするようなものでございます。
 以上、今回用意した資料でございます。今後の労働者性の検討に関しましての研究会の設置や、家事使用人に関しましては論点としてこういうものがございますということをまず提示をさせていただきました。よろしくお願いいたします。
○荒木分科会長 ありがとうございました。
 ただいまの事務局の説明について御質問・御意見があれば。
 では、事務局、続けてお願いします。
○労働条件政策課長 大変申し訳ございません。順番が前後して恐縮ですが、先ほどの議題1の中で各委員からいただきました御意見に少し統計的な実態の補足などをさせていただければと思うのですが、御発言させていただいてよろしいでしょうか。
○荒木分科会長 お願いします。
○労働条件政策課長 複数の委員からいただきました御意見のうち、少し実情につきまして補足説明を申し上げたいと思います。まず、年次有給休暇の取得状況につきまして、付与日数が減っているということについて検証が必要ではないかという御意見をいただいたかと存じます。就労条件総合調査で業種別の付与日数を見ますと、確かに業種全体を通じて減少傾向にあるところでございまして、中でも「製造業」、「卸売業、小売業」、「宿泊業、飲食サービス業」などで減少している実態がございます。この統計からはなかなか実情が分かりにくいところではございますが、例えば雇用動向調査を見ますと、コロナ禍からの経済の回復もありまして、入職者数や転職・入職者数が増加しております。特に「卸売業、小売業」ですと、転職・入職者数が100万人ほど増加しておりまして、年次有給休暇は制度上、同じ会社で継続雇用すると付与日数が増えていくという構造でございますので、転職されてリセットされると最初の6か月10日からということで、付与日数が減る。一定程度、転職の増加ということが影響しているのではないかと見ているところでございます。
 また、病気休暇の関係につきまして、確かに御指摘のように、無給では年次有給休暇自体の取得機会にならないのではないか、また、有給が企業にとって過重なのではないかという御意見をいただきましたが、令和5年度の「仕事と生活の調和」の実現及び特別な休暇制度の普及促進に関する意識調査では、導入企業の7割以上が有給での導入となっております。制度の導入促進に取り組むということで、有給での導入に実際踏み切っておられる企業さんも少なくないということは補足させていただければと存じます。
 そのほか、労働時間の適正把握の徹底ですとか、業種別の課題の取組についての御意見、また、商慣行の問題にも切り込んだ対応の必要性など、様々いただきました御意見を踏まえながら、年次有給休暇取得促進、時間外労働の削減に厚生労働省として取り組んでまいりたいと思います。
 以上、補足させていただきます。
○荒木分科会長 ありがとうございました。
 それでは、労働基準法上の労働者性の問題ですけれども、これについて御質問・御意見等ございましょうか。佐久間委員、お願いします。
○佐久間委員 ありがとうございます。
 新たに労働者性研究会を設けるということについて御説明を賜ったのですけれども、この1年かけて、労働法、労働経済の学識の先生方にお願いをして労働基準関係法制研究会が開催されてきました。本研究会では、全般的な労働法制に関わる専門的な課題を協議して、その中で「労働者性」や「事業」についても議論をされてきたと思います。こちらの資料でも4ページから7ページの辺りに労働者性を判断する一つの判断基準が示されています。これは昭和60年のときの研究会からも議論されてきて、結構時間をかけて議論を進めてきたと思います。新しい経済プラットフォームの関係もあると思うのですけれども、労働者性を判断するといっても、今回の労働基準関係法制研究会での議論以上には進まず、結局は最終的に裁判になるということになってしまうと、新たに労働者性研究会を設けても、同じことの繰り返しをしてしまうのではないか、と考えるところがあります。
 例えばこの研究会を開催することには特段異議はないのですけれども、構成されるメンバーとか、実際に労働者性の具体的な判断をどこまでをやられるか。その判断基準について、新たな研究会によって明確なもの、例えば7割を占めていれば、これは事業者性なのだ、労働者性なのだということの判断をいただけるところまで持っていけるものなのか。その辺を事務局にお伺いしたいと思います。
 以上です。
○荒木分科会長 事務局にお尋ねですが、いかがでしょうか。
○労働条件政策課長 佐久間委員の御質問について、現時点の考えをお話しさせていただきます。1月まで御議論いただきました労働基準関係法制研究会におきましては、労働者性の判断基準として、昭和60年の労働基準法研究会で出された報告につきまして、この資料の3ページ、4ページにあるような要素で、これまで行政も使い、また、司法もこれを一定程度参酌しながら判断がなされてきたという実情にあると。そういう蓄積は十分に踏まえつつも、ただ、働き方の変化の中でこれらの要素が具体的な事案の中でどのように重みづけをされて実際に判断されているのかといったことなどについては、改めて最近の事例の蓄積を見ながら、本当にこのままの要素でいいのかといったことなどについて詰める必要があるのではないかという趣旨の御議論をいただいていたものと認識しております。
 今ほど佐久間委員が言われたように、これらの要素について、幾つあればとか、何%あればというところまで明確にできるかというと、やはり個別の事案ごとの判断になるので、そこまで数量的な基準になるかどうかということについては、正直難しい部分もあるのかなと思いますけれども、まずは昭和60年当時の基準そのままで行けるところ、行けないところということにつきまして、実際の裁判例や行政で行っている判断の事例などに基づいて、学識の目を通じて検討いただき、それを具体的な判断基準、要素という形で、どのようにこの時代に適合するものとしてまとめられるかということについて御議論をいただければと考えております。
○荒木分科会長 佐久間委員、よろしいでしょうか。
○佐久間委員 ありがとうございます。
 今回のメンバー構成というのは、労働基準関係法制研究会の学識の先生方にまた入っていただくということで、他に実務家というか、例えばこれが入ってくると、労働者側の意見、使用者側の意見を聴取しやすいとか、そういう形になってくると思うのですけれども、メンバーというのは、今回も学識の先生方だけにお願いをするということになるのでしょうか。
○荒木分科会長 事務局からいかがでしょうか。
○労働条件政策課長 事務局の考えといたしましては、まず裁判例等、極めてアカデミックな事案の分析にもなりますので、学識の方々に一定程度整理をいただくことが必要なことかと考えておりました。それを踏まえた上で、また検討の経過などは、例えばこの労働条件分科会に報告をさせていただき、公労使の皆様の御意見も踏まえながら、最終的な形に整理をしていければと考えているところでございます。
○荒木分科会長 よろしいでしょうか。
○佐久間委員 ありがとうございました。概ね意味は分かるのですけれども、そうすると、今回、労働基準関係法制研究会の報告が出てきて、これから労働条件分科会でいろんな項目を議論していく可能性があるというときに、「労働者性」に関わる点については、新たな研究会を設けていただいて、結論はその意見を参酌することになりますので、今回の労働条件分科会ではこの辺は触れていかないということの議論で進めていくと理解していいでしょうか。
○荒木分科会長 いかがでしょうか。
○労働条件政策課長 
 労働条件分科会における労働時間制度や労働者、事業、その他の御議論と、この研究会の議論の進め方の進度のすり合わせという観点からの御疑問であったかと受け止めております。ここはまた委員の皆様方の御意見も踏まえながらと思っておりますが、裁判例や行政における判断事例の分析等については、かなりの時間を要する作業になるのではないかと考えておりまして、私どもの現在の考えといたしましては、しばらくの間は研究会における分析とこの労働条件分科会における労働時間制度をはじめとした様々な論点の議論につきましては、並行して進めさせていただければと思っております。
 労働者性につきましては、資料の説明の中でもありましたように、かつ労働基準関係法制研究会の報告でも触れられておりますように、今、ILOでプラットフォームワーカーに関する新たな国際労働基準の策定に向けた議論が開始されることが既に明らかとなっておりまして、この議論が本年と来年のILO総会で、2年かけてやるものであるというふうにILOの資料などに示されている状況がございます。そうした国際的な動きも踏まえますと、具体的な新しい基準というものにつきましては、年内に無理してまとめるというよりは、そうした国際的な動きの状況も見ながら、令和7年度、8年度をかけてきちんと整理をさせていただくぐらいのペースで進めるべき案件ではないかと考えておりまして、そちらの進み具合と労働条件分科会におけるほかの議論の進み具合とが、それぞれ適切なタイミングで報告を受けながら、また研究会でどう進めるかということについても、審議会の御意見を踏まえつつ、整理を来年度にかけて進めていければと考えております。
○荒木分科会長 よろしいでしょうか。
○佐久間委員 はい。ありがとうございます。
○荒木分科会長 それでは、ほかにはいかがでしょうか。冨髙委員、お願いします。
○冨髙委員 ありがとうございます。
 まず、この研究会の設置と、専門的な見地から労働者性の課題について分析と研究を行っていただくことは重要だと思っておりますので、異論はございません。
 今、佐久間委員から若干懐疑的な御意見もございましたが、現在と労働者性の判断基準が示された40年前とでは、働き方などの状況が非常に変わっております。40年前には想定し得なかったようなプラットフォーム労働の登場、働き方としては労働者に近いにもかかわらず、契約形態が請負や業務委託とされている、いわゆる曖昧な雇用といったように、労働法の保護を受けることができない働き方が増えているというのは非常に問題だと思っております。この研究会ではこうした実態をしっかりと検証していただきたいと思います。先ほど、海外の法制化の事例でも、揺れ動いているという話がございましたが、より多くの方が労働法の保護を享受できるような観点から議論を行っていただきたいということをぜひお願いしたいと考えています。
 先ほども御説明にはあったのですが、労働基準法研究会報告を前提に、この間積み上げた裁判例などを踏まえて議論することは重要だと思っておりますが、決して微修正とかマイナーチェンジではなくて、どういった方たちを労働者として保護するべきなのか、また、その判断基準はどうあるべきなのかについて、じっくりと幅広く検討を進めていただきたいと考えています。
 労働条件分科会と本研究会との関係性でございますが、研究会で検討する事項は、分科会では全く議論しないというように取り扱う必要はないと思っております。適宜必要に応じて分科会でもぜひ議論させていただければと思っておりますので、その旨をお伝えしておきたいと思います。
 また、検討に当たっては、就業者の労務提供等の実態も踏まえて、使用者、発注元企業等が負うべき雇用・使用者責任の明確化というところも議論していただけるといいのではないかと思います。加えまして、これは本分科会だけで議論できる話ではないと思うのですけれども、労働者概念を拡大しても、なお労働者性が認められない就業者というのは存在すると思いますので、そうしたグラデーションを踏まえた一定の保護策というのも考えていくべきだと思っております。この点につきましては、ぜひこの研究会の中でも御議論いただければと思います。
 以上でございます。
○荒木分科会長 ありがとうございました。
 ほかにはいかがでしょうか。鈴木委員、お願いします。
○鈴木委員 御指名ありがとうございます。
 まず、労働者性の問題を検討する上での大前提として、契約上は業務委託契約であるにもかかわらず、実態は労働契約である場合に、労働者としての保護をしっかりと受けられるようにすることが重要であり、この点は皆様とも認識を共有できるかと思います。そうした観点から、先ほど御紹介いただいたチェックリストなど、労働者性の判断の明確化に加えて、フリーランスの方々が、もしかしたら自分は労働者かもしれないと考えてもらえるようにすることや、疑問に思ったときにどこに相談すればよいか分かるようにすることも大切です。フリーランス新法によって書面等による取引条件の明示が義務化されましたので、例えば行政のモデル契約書の最後に、相談先をQRコードで示すことも含めて、周知していくことも重要ではないかと思います。
 このテーマに限られるものではありませんが、我が国の労働者の人数比の監督官の数は、諸外国に比べてかなり少ない状況にあります。厚生労働省はこれまでも、監督官の増員に取り組まれていると承知しておりますが、労働者性の判断も含めて適正な監督が行えるよう、一層の取組をお願いできればと思います。
 次に、労働者性の定義の見直しについて申し上げます。働き方の多様化が進む中、労働関係法令が適用されない働き手の保護の在り方を検討することは、大変重要な課題だと認識しております。労働者性をめぐる立法論としては、様々なアプローチが考えられ、例えば労働者性の要件を拡大してフリーランスに適用するアプローチもあり得るところですが、そうしたゼロイチのアプローチが我が国のフリーランスの多様な働き方のニーズに果たして合致するのかどうかは、極めて慎重に議論しなければならないと考えます。
 例えばフリーランス協会の調査によれば、回答者の約7割が働き方全般に満足しており、満足度が最も高い項目は、働く時間・場所などの「就業環境」となっています。また、同協会のフードデリバリー配達員向けの実態調査では、配達員を始めた理由として、「時間の制約なく働けるため」や「自分の裁量で働くことができるため」といった項目が上位に並んでいます。労働者として指揮命令を受けたり、労働時間を管理されたりすることを望まない働き手も少なくないことがうかがえます。労働者性の判断基準を見直すよりも、むしろ、我が国のフリーランスにとって保護すべき具体的な内容を特定した上で、必要な手当てを行うアプローチが現実的であり、適当と考えます。
 これまでもそうしたアプローチに基づき、労災保険の特別加入制度の対象を広げたり、フリーランス新法を通じて発注事業者に取引の適正化やハラスメント対策を求めたりするなど、必要な環境整備を進めてきました。今通常国会には個人事業者等の安全衛生対策の推進を含む、労働安全衛生法の改正法案が提出される予定とも承知しております。
 御提案のありました、労働者性に関する専門的な研究会を開催することについては、賛成をいたします。その上で、とりわけ、本日事務局からも海外の事例として御紹介がありました、立証責任の転換の仕組みを仮に議論するのであれば、慎重な検討をお願いしたいと思います。男女雇用機会均等法には立証責任の転換規定がございますけれども、こちらは強い立法事実に基づき措置されたもので、安易に広げるべきではないと考えます。
 また、御紹介のありましたEU指令においても、立証責任を転換する要件自体はコンセンサスを得られず、最終的には指令から落ちた経緯があると承知しております。判例、裁判例の蓄積が十分でない我が国で立証責任の転換制度の前提となる要件をつくれるかどうかも含めて、慎重な議論をお願いしたいと思います。
 長くなり申し訳ございません。私からは以上です。
○荒木分科会長 ありがとうございました。
 ほかにはいかがでしょうか。藤川委員、お願いします。
○藤川委員 ありがとうございます。藤川でございます。
 私からも労働者性について発言をさせていただきたいと思います。先ほど冨髙委員も発言いたしましたが、この労働者性について専門的な研究会で論議を行っていくことは、私も異論はございません。
 その上で、要望と質問をさせていただきたいと思います。労働者性の問題につきましては研究会で議論ということでございましたが、その議論状況について、適宜必要に応じてこの場で議論もいいと思いますし、内容によっては御報告を逐一いただいて共有をしていただければと思いますので、よろしくお願いいたします。
 なぜなら、資料3の1ページにもありますとおり、新しい研究会では労働者性だけでなく、事業の概念との関係も含めて議論を行うとされておりまして、これは本分科会での大きな議論のテーマである労使コミュニケーションにも密接に関連するものと考えております。その点、要望としてお伝えをさせていただきたいと思います。
 その上で、労働者性についての質問をさせていただきます。昨年11月のフリーランス法の施行に合わせて、全国の労働基準監督署に労働者性に疑義がある方の労働基準法等違反相談窓口が設置されましたが、そこではどのような相談がどの程度来ているのかお伺いしたいと思います。例えば、フリーランス・トラブル110番でも労働者性に関する相談が一定数寄せられていると認識しており、労働基準監督署での相談においても、判断が迷うようなケースもあるのではないかと思っております。「労働者と同じような働き方の実態があるのに自分は労働者と認められないのか」と相談に来たような方も労働者保護の観点から救われるような見直しに向けた議論を期待したいと考えているところでございます。
 以上です。
○荒木分科会長 御質問がありましたので、事務局からお願いします。
○労働条件確保改善対策室長 ただいま御質問がありました労働基準監督署におきます労働者性相談窓口の実績でございます。昨年11月1日のフリーランス事業者間取引適正化等法の施行に合わせまして労働基準監督署に窓口を設置したところでございます。あくまで速報値ではございますが、11月1日から2月末までで相談件数は252件となっております。相談内容は様々でございますけれども、例えば報酬・賃金の不払いとか割増賃金の不払い、契約解除に伴う解雇予告手当の不払い、仕事中にけがをしたけれども補償がされないといったようなものが寄せられているという状況でございます。
○荒木分科会長 よろしいでしょうか。
○藤川委員 はい。
○荒木分科会長 ほかには。古川委員、お願いします。
○古川委員 ありがとうございます。
 私からは家事使用人に対する労働基準法の適用について御意見を申し上げたいと思います。家事使用人につきましては、労働基準関係法制研究会の報告でも御指摘をされていますとおり、労働基準法の制定時と比べますと住み込みで働く方が減少し、実質的な働き方が日々就業場所に赴いて、決められた時間業務を遂行する、こうした一般的な労働者とほとんど変わらなくなってきているということなど、働き方が変化をしてきていると考えております。
 また、資料2の13ページにもございますとおり、ILOの報告書によりますと、国際的に見ても家事使用者を労働法の適用除外としている国が2020年には8.3%まで減少しているということでございます。こうした実態などを踏まえますと、家事使用人に関する適用除外の規定を廃止すべき時期に来ていると考えております。
 さらに、労働基準関係法制研究会報告書の結論では、資料2の1ページにありますとおり、「家事使用人に対して労働基準法を全面的に適用除外する現行規定の見直しを検討する」とありますが、報告書取りまとめ前に素案として示されたものにおきましては、「家事使用人に対して労働基準法が適用するよう検討する」という表現でございました。
 どのように規制を適用し、また履行確保を図っていくかという点につきましては、個別具体的な論点を丁寧に議論していく必要があると考えますが、適用除外を一部見直すというよりは、まずは労働基準法をしっかりと適用していくという観点で議論をしていくべきと考えております。
 私からは以上でございます。
○荒木分科会長 ありがとうございました。
 ほかにはいかがでしょうか。鈴木委員、お願いします。
○鈴木委員 私からも家事使用人について発言させていただきます。過去の労働条件分科会で御報告がございました実態調査によりますと、古川委員からも御指摘がございましたとおり、通勤、泊まり込みの別のうち、主に通勤して働く家事使用人が83.8%に上ります。また、普段の業務内容を見ますと、高齢者介護・認知症介護のうち32.6%が介護保険に基づき業務を行っており、介護保険の事業所の雇用者としても働く家事使用人が存在することがうかがわれます。昨年9月には家政婦と訪問介護ヘルパーを兼ねる形で個人家庭で就労されていた方が勤務後に亡くなられるという痛ましい事案について、労災保険給付の不支給決定を取り消すという司法判断もあったところです。
 家事使用人をめぐるこのような実態の変化を踏まえれば、通常の労働関係とは異なった特徴を有するという適用除外規定の趣旨・目的が今なお妥当するとは言いがたく、労働基準法を適用する方向性を示した労働基準関係法制研究会の報告書の方向性に私も賛同いたします。
 一方で、先ほど古川委員からも御指摘がありました、丁寧な議論は私も必要だと感じており、家事使用人に労働基準法を適用する場合、実効性を確保する上での課題も少なくないと考えます。個人家庭でも家事使用人の労働時間の把握や管理は、勤怠管理アプリ等を使えば恐らくできるのではないかと思います。しかしながら、例えば労働安全衛生法上の事業者として、安全衛生教育や一般健康診断の実施を徹底できるのか。また、今通常国会へ提出が予定されている改正労働安全衛生法の成立が前提となりますが、ストレスチェックの実施義務の対象拡大にも対応できるのか。さらには、労働保険徴収法上の事業主として、労働保険料を年度当初に概算で申告・納付し、翌年度の当初に確定申告の上で精算する「年度更新」の手続を円滑に行えるのか。事業者であれば当然できることも、私人ができるかという点は、目線を下げて議論する必要があろうかと思います。
 労働基準法第116条第2項の適用除外規定を単に削除するのではなく、行政による監督・指導のあり方、個人家庭に家事使用人を紹介する事業者が果たすべき役割も含めて、どうすれば実効性のある保護が可能になるのかという観点から議論することが大切と考えます。
 私からは以上です。
○荒木分科会長 ありがとうございました。
 ほかにはいかがでしょうか。古川委員、お願いします。
○古川委員 ありがとうございます。
 今ほど鈴木委員からもありましたとおり、ビジネスモデルによって様々な契約形態、また指揮命令関係もあって、その中で実効性を高めていくことがなかなか難しいような案件も生じる可能性はあります。しかしながら、家事使用人の働き方の実態が労働者とほとんど同等になっているということを踏まえますと、まずは労働基準法を適用するという方向性を明確にしていくということが重要だと考えています。その上で、実効性を高めていくための個別の論点について丁寧に議論を深めていく方向で検討していくべきではないかと考えております。
 以上です。
○荒木分科会長 ありがとうございました。
 冨髙委員、お願いします。
○冨髙委員 ありがとうございます。
 先ほど鈴木委員がおっしゃったきめ細やかに検討していく点は非常に重要だと思っておりまして、支援もなく単に適用させるということだけでは場合によっては違法な状況を生み出すことにもつながりかねないため、個別の課題についてどのように対応していくかについてはしっかり考えていく必要があると思っております。先ほど提起いただいたような労働時間の把握やストレスチェックなども含めて、厚生労働省などでツールを作成して提供いただくことも考えられると思っておりますし、海外の事例も含めたデータを提供いただきながら検討することも重要と思いますので、よろしくお願いいたします。
○荒木分科会長 ほかにはいかがでしょうか。よろしいでしょうか。
 それでは、労働者関連については論点が2つございまして、1つは労働者概念について今後どう検討していくべきかというのがございました。これについては、事務局から説明があったとおりに、労働基準法における労働者について、厚生労働省労働基準局長が参集する専門の研究会において検討を進めるということにしてよろしいかどうか。いかがでしょうか。よろしいでしょうか。
(委員首肯)
○荒木分科会長 ありがとうございました。
 それでは、そのようにいたします。
 事務局におかれましては、労働者の専門家の研究会については、本日御意見もありましたので、議論の途中経過等について適切なタイミングで本分科会にも報告をいただきながら検討を進めていただくようにお願いしたいと思います。
 2点目は家事使用人についてでありますけれども、これは本日の御意見も踏まえて、引き続きこの分科会で議論することとしたいと思いますが、よろしいでしょうか。
(委員首肯)
○荒木分科会長 それでは、そのように取り扱うことといたします。
 続きまして、資料№3「労働基準法における『事業』について」。事務局から説明をお願いします。
○労働条件確保改善対策室長 それでは、資料№3を御覧ください。資料№3は「労働基準法における『事業』について」でございます。1ページでございます。先ほどと同様に、労働基準関係法制研究会の報告書の概要でございます。まず、事業の概念に関しまして、労働基準法の適用単位としての「事業」というもの。もともとは労働基準法には第8条として「事業」が列挙されておりまして、事業ごとに適用内容が異なっていたという経緯がございます。これがもう既に削除されておりまして、包括適用となっておりますが、そうなった今におきましても、第9条、先ほどの労働者の定義のところにも「事業に使用される」とありますように、引き継がれて今日も存続しているということで、重要な意議を持ち続けています。
 労働基準法の適用の単位でございますが、事業(場)単位の適用を原則として設計されているということで、労働基準法の地域的な適用範囲を画定していて、監督・指導の有効性を担保するに当たっての単位であるということで、引き続き事業場というものが場所的概念として有効であると。このようなことを踏まえますと、現時点では引き続き事業場単位を原則として維持しつつ、一方で、企業単位とか複数事業場単位といったところでまとめてコミュニケーション等々が行われているケースもありますので、そういった場合には、労使の合意により、手続を企業単位や複数事業場単位で行うことも選択肢になり得るのではないかということを明らかにするというのが示されたものでございます。
 一番下の項目に関しては、少し将来的な話ということでございまして、法制度の実効的な適用を確保するという観点から、「事業」の概念について、将来的な労使コミュニケーションの在り方も含めて検討していく必要がある。例えば、先ほど出ました労働者性の研究を継続的に行う場において議論をするなど、検討に着手することが必要と考える。こういうことも示されたところでございます。
 事業の概念、場所的概念として提示されておりますけれども、「場所」というものと「仕事」というものが、近年様々な技術革新によって離れてきているという面もありますので、そういったことも含めた御指摘であったと捉えているところでございます。
 2ページでございます。1ページの中で出てきました複数事業場単位あるいは企業単位の部分に関してのものでございます。こちらも労働基準関係法制研究会報告書の中に出てきている図と表現でございます。この図に示しますように、労使協定ですとか労使委員会、就業規則の意見聴取といった各手続におきましては、原則事業場単位となっております。上の段が事業場単位という形で、おのおのの事業場に使用者がいて、過半数組合ないし過半数代表者がいて、話をするという格好となっておりますけれども、ここで言う使用者というものが、労働基準法上ではざっくりと規定されておりますし、各事業場の人でなければならないということは必ずしも書かれていないということがございます。
 こういうことで考えますと、下の段の図にありますように、協定そのものとか意見聴取そのものの手続自体はおのおのの事業場単位でやらなければなりませんが、その内容が共通しているとき等々に、実際に複数の事業場で集まって、本社の人も集まって話をした上で協定の締結等を行うということは可能であるというのがここで示されたものでございます。
 このような複数事業場をまとめて手続を行うことは現行法上許容されている。そして、使用者はそういった提案をするということは許容されるであろうということ。ただ、一方で、その提案を使用者が行ったとしても、おのおのの事業場の過半数代表が、自分たちはそれぞれの事業場単位で協議したいといった場合、複数事業場単位を拒否した場合に関しては、原則どおり事業場単位で話し合いをするということになるということが示されております。こういったことができること、その場合にどういう条件がつくのかということの明確化と周知徹底が必要であるとお示しいただいたものでございます。
 3ページ目以降ですが、やや概念的な事業に関しての御議論で出てきたものでございます。3ページは、「事業」の概念がどのような扱いをされているかというものでございます。①が今ほどお話を申し上げてきました適用単位としての事業ということで、事業場が労働基準法の適用単位となっているというのが1つ目でございます。
 2つ目として、「労働者」の定義というものの中に登場してくるということで、「事業又は事務所に使用される者」というのが労働基準法第9条に書かれているわけでございますが、適用除外とする場合には、同居の親族のみを使用する事業に関しては適用しないといった適用除外規定が設けられてているということで、「事業」に使用されているということは、労働者としての重要な要素であろうと。
 3つ目としまして、こちらは実務的なものでございますが、労働基準監督署がどこを管轄するのかということも、その「事業」の所在地で定められていると。そういう機能があるということです。
 4つ目として、国際的に見たときの法の適用ということで、「事業」が日本に存在しない場合には、日本の法律の適用が及ばないと。こういう仕組みになっているということが概念として示されております。
 4ページは書籍をまとめたものでございますけれども、労働基準法第9条に規定する「事業又は事務所」に関して、それが何なのかという問題、適用単位はどうなのかということをまとめたものでございます。これは書籍の抜粋でございますので、後ほど御覧いただければと思います。
 5ページでございます。実務上の問題でございますが、実際に労働基準監督署が指導を行う際の取扱いについてでございます。原則として労働基準監督署はそれぞれの管轄する場における事業場を指導しているということでございますけれども、下の箱に書いているように、一部のものに関しましては、本社一括や企業単位での指導も行っております。
 典型例を3つ挙げさせていただいておりますが、1つは就業規則の本社一括届出があった場合に、その手続に関する指導は本社にしているというような場合があります。
 また、違法な長時間労働が複数の事業場で認められた企業ですとか、あるいは長時間労働を原因とする過労死等を繰り返し発生させた企業に対する指導は、事業場単位でやっていても仕方ないということで、企業単位でしっかりと指導、公表をさせていただくという取扱いをしております。
 このような形で事業場単位での指導と企業単位での指導というものを使い分けて労働基準監督署としては職務を実行しているというものになります。
 6ページは企業における届出に関するものでございます。36協定の届出ですとか就業規則の届出に関しましては、電子申請で行えるということを今、進めております。その中で、電子申請をしていただく際には、本社一括で同じ内容のものに関しては届出をしていただくということもやっているというものでございます。
 その進み具合のデータでございます。令和4年の実績でございますが、36協定に関しては電子申請率が21.62%、就業規則に関しましては38.64%でございました。電子申請で出てきたもののうち本社一括で出てきたものはどれぐらいあったかというのが下の赤字で、36協定に関してはおよそ半分、就業規則に関しては8割弱といった実績となっております。
 7ページ目、8ページ目は、こういった本社一括届出が可能な手続は労働基準法上どういうものがあるかというものを一覧にしたものでございます。
 資料説明は以上でございます。
○荒木分科会長 ありがとうございました。
 ただいまの事務局の説明につきまして御意見・御質問があればお願いいたします。水野委員、お願いします。
○水野委員 ありがとうございます。
 私からは法の適用単位としての事業場について発言させていただければと思っております。労働基準法の適用単位は今後も事業場単位を堅持すべきだと思ってございまして、企業単位化などは行うべきではないと考えております。恐らくコロナ禍などでリモートワークが相当程度進むなど、働き方の変化を捉えた中で、どう事業場を捉えていくのかについての論議であったと思いますが、仮にフルリモートによる勤務などの場合においても、基本的には労働者はいずれかの現実の事業場あるいは部署、組織に所属しているのが実態ですし、適用地域によって労働基準法の基準が異なるわけではございません。
 そもそも現在に至ってもほぼ全ての労働者が場所的概念のある事業場で働いておりますし、私どもは情報産業を中心とした労働組合でございますので、実際にフルリモートで働いている職場もございますが、現状の取扱いで特段支障はないと思ってございます。労使で事業場に出て働く人とフルリモートの人も含めてしっかり勤務管理ができておりますから、そうした状況からも適用単位について見直すことは不要ではないかと思ってございます。
 以上です。
○荒木分科会長 ありがとうございました。
 ほかにはいかがでしょうか。川野委員、お願いします。
○川野委員 ありがとうございます。
 資料№3の2ページでございますが、複数の事業場での労使協定等の締結に当たっての協議について、現行法上許容されているとしても、こうした取扱いが可能であることを示すことで、行政があたかも簡易な手続きを推奨しているかのような誤解につながるメッセージを発信すべきではないと思います。本来的には労使協定は、事業場ごとに協議を重ねた上で、事業場にふさわしい内容を締結し、日常的なモニタリングによって点検・確認されることが重要であり、事務手続が煩雑であることを理由に本来の制度趣旨を歪めるべきではないと強く考えております。職場ごとの実態について丁寧に労働者の声を集約できる事業場単位の原則を徹底していくことが重要であることを申し上げておきたいと思います。
 また、6ページ以降に本社一括届出の状況について記載されておりますが、例えば36協定で時間外・休日労働時間数を締結する場合において、本社一括届出をしたいがために、短絡的に一律で時間外の上限時間数で締結しようとする行為を逆に促す懸念がある点について共有しておく必要があると思います。例外である時間外・休日労働を抑制させるための手続を事務負担軽減のために形骸化させてはならず、本社一括届出の場合であっても、労働基準監督署による牽制機能が低下することのないよう、対策を講じる必要があるのではないかということも申し上げておきたいと思います。
 以上です。
○荒木分科会長 ありがとうございました。
 ほかにはいかがでしょうか。松田委員、お願いします。
○松田委員 私からは事業場単位の労使協議等の締結について発言させていただきます。まず、私も、労使協議等の手続を含めて事業場単位を維持すべきと考えております。現行の法制下においても、一部においては事業場の安易な大ぐくり化など、使用者の恣意的な運用がなされていると認識しております。連合の構成組織においても36協定など労使協定の締結について、使用者が事業場の場所的概念を拡大解釈して、1つの事業場を広範囲化・大規模化した結果、それぞれの現場の声がなかなか反映しづらくなってしまったという具体事例も聞いている状況でございます。
 こうした運用につきましては、現場ごとの声を丁寧に集めるだけではなく、大きな単位の中での過半数代表者の意見を聞けばそれで足りるといった集団的労使関係の形骸化を招きかねないとも考えております。また、労働組合がある職場におきましても、オープンショップである場合、企業が意図的に事業場単位を変更することで、過半数を下回らせることも可能となる懸念もあると考えてございます。仮にそうした企業単位化を積極的に認めるような流れになってしまうことで、さらなる濫用や弊害が生じる懸念も大きいと考えておりますし、企業と労働組合のパワーバランスにも一定影響が出てきてしまうのではないかと思います。また、こうしたことで労働者の生の声が経営や企業に真に届くことがなくなってしまうことで、結果として企業の持続可能性をネガティブな方向に進めてしまうのではないかとも思っております。
 そのため、事業場単位という考え方は今後も維持すべきであり、企業単位化の是非ではなくて、むしろ恣意的な運用を防止するための対策をしっかりと検討いただきたいと思っておりますので、よろしくお願いいたします。
 私からは以上です。
○荒木分科会長 ありがとうございました。
 ほかにはいかがでしょうか。鈴木委員、お願いします。
○鈴木委員 ありがとうございます。
 労働者側から事務の煩雑さを理由に事業場単位の制度趣旨を歪めるべきではないという趣旨からお話があったかと思います。確かに本社一括届出については、純粋に業務効率化のためという話だと思うのですけれども、事業場単位にするか、企業単位にするかという話については、当然各企業によって実態は違うものの、同意とか協議をより実質的なものにするという観点から考えるべきものであり、業務の煩雑さという次元とは異なるものと考えます。
 資料の22ページにあるとおり、今の解釈例規でも出張所、支所、支店等で「直近上位の機構と一括して一の事業として取り扱うこと」という解釈がされているわけですが、この解釈について私なりの理解を申し上げると、例えば就業規則の意見聴取をするにしても、小さい事業場では就業規則に精通した使用者側の人事担当者もいないので、直近上位のそういった担当者がいる事業場で決めるほうが、より法律の実効性を担保できると考えます。
 過半数代表が十分に説明を受けられる環境であれば、労使の同意ということが前提になりますが、事業場単位で縛られる必要はありませんし、現実的な仕組みに見直しを行う必要があると思っております。
 以上です。
○荒木分科会長 ありがとうございました。
 ほかにはいかがでしょうか。川野委員。
○川野委員 恐縮ですが、例えば現在、36協定の本社一括届出においては、各事業場の協定内容が同じである場合に一括申請ができると理解しております。各事業場単位で一つ一つ協議を重ねて届出を行っていない場合には、上限時間に張りついた設定になってしまうような形骸化した36協定の締結の仕方になってしまうことを懸念してございますので、改めて補足をさせていただきます。
○荒木分科会長 ありがとうございました。
 水野委員、お願いします。
○水野委員 私からも鈴木委員の発言に対して少し申し上げておきたいと思います。使用者側の現実的な問題として、しっかりと熟知した企業担当者がお話をしたほうが分かりやすいということもあろうかと思いますけれども、逆に労働者からすれば、日常的な協議、やり取りをしているわけでもない方と対峙して、率直にその現場の意見を出し合えるのかという点について少し疑問に感じているところでございます。個別の手続によってやり方を変えるという御発言もございましたので、何のために労使で協議をし、労使協定を締結しているかという本質を見誤らないように、集団的な労使協議の形骸化につながらないよう、しっかりとした丁寧な協議を行うことが重要だと思ってございます。働き方や業務内容や人員構成など、それぞれ職場で異なってくるかと思いますので、そういったことをしっかりと協議していくことが重要だと思ってございます。
 以上です。
○荒木分科会長 ありがとうございました。
 ほかにはいかがでしょうか。
 特に御意見がないということでしたら、事業については、本日の御意見も踏まえながら本分科会で引き続き議論を進めていきたいと考えております。
 ほかに特段御発言がなければ、本日の議事はここまでとしたいと思いますが、よろしいでしょうか。
 それでは、最後に次回の日程等について、事務局から説明をお願いします。
○労働条件企画専門官 事務局でございます。
次回の日程等につきましては、調整の上、追ってお知らせいたします。
○荒木分科会長 それでは、本日の労働条件分科会は以上で終了といたします。本日もお忙しい中御参集いただきまして、どうもありがとうございました。