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第29回厚生科学審議会がん登録部会(議事録)
健康・生活衛生局 がん・疾病対策課
日時
令和6年10月7日(月)15:00~17:00
場所
オンライン開催
議題
- (1)法第 20 条に基づいて提供された情報の取扱いの見直し
- (2)全国がん登録情報の国外提供に係るルールの整理
- (3)全国がん登録データベースの状況について
議事
- 議事内容
- ○石川専門官 定刻となりましたので、ただいまより第29回「厚生科学審議会がん登録部会」を開催いたします。
委員の皆様方におかれましては、お忙しい中、お集まりいただきましてありがとうございます。
本日の検討会につきましては、YouTubeにおいて配信しております。委員の皆様方におかれましては、参加中、基本的にマイクをミュートにしていただき、御発言の際には挙手ボタンで挙手いただきまして、事務局から、もしくは部会長から指名がございましたら初めにお名前をいただいてから御意見、御発言いただくようお願いいたします。
続いて委員の出席状況でございますが、本日は佐藤好美委員、中村康彦委員、橋本美穂委員より御欠席の連絡をいただいております。
また、東尚弘委員、松前恵環委員からは、途中退席の旨の御連絡をそれぞれ頂戴してございます。
なお、黒瀨巌委員は遅れての御出席と伺っております。
本日のがん登録部会における委員及び議事に関係のある臨時委員定数13名に対しまして、現在11名が参加されています。厚生科学審議会令にある、議事運営に必要な「委員及び議事に関係のある臨時委員の過半数」を満たしていることを御報告申し上げます。
本日、3名の参考人に御出席をいただいております。
国立がん研究センターがん対策研究所がん登録センターセンター長、松田智大参考人です。
大阪大学大学院医学系研究科呼吸器外科学教室教授、新谷康参考人です。
「全国がん登録情報提供等審議委員会」委員も務めておられます渥美坂井法律事務所・外国法共同事業プロトタイプ政策研究所所長・シニアパートナー弁護士、落合孝文参考人です。本日、遅れての御出席と伺っております。
それでは、以後の議事進行を中山部会長にお願いいたします。
○中山部会長 皆さん、お忙しい中、お集まりいただきましてどうもありがとうございます。京都大学の中山です。本日もどうぞよろしくお願いいたします。
では、まずは事務局から資料の確認をお願いいたします。
○石川専門官 事務局でございます。
それでは、資料の確認をいたします。資料は委員の皆様方に事前にメールでお送りしておりますが、厚生労働省のウェブサイトにも掲載しております。
議事次第、資料1から7、参考資料1から7がございますので御確認ください。資料の不足等がございましたら、事務局までお申し出ください。
事務局からは以上です。
それでは、中山部会長、議題をよろしくお願いします。
○中山部会長 ありがとうございました。
それでは、資料等に問題がなければ議事に入りたいと思います。皆様、よろしいでしょうか。
それでは、議題の1「法第20条に基づいて提供された情報の取扱いの見直し」に入ります。
まずは、事務局から資料の説明をお願いいたします。
○石川専門官 事務局でございます。
資料1「法第20条に基づいて提供された情報の取扱いの見直し」を御説明いたします。
2ページを御覧ください。
法第20条提供情報については、前回の部会において現状の法第20条の規定を維持しつつ、運用の見直しによる対応方針を議論していくこととなったことを踏まえ、本日は委員や参考人の方々より具体的な研究ニーズや情報の保護について御提案いただくこととしております。
3ページ以降は、参考として前回の部会資料のうち、法第20条提供情報に関係する部分を抜粋したものでございます。
事務局からは以上です。
○中山部会長 ありがとうございました。
それでは、続きまして松前委員から資料の御説明をお願いいたします。
○松前委員 駒澤大学の松前と申します。どうぞよろしくお願いいたします。
本日は、「法20条に基づいて提供された情報の取扱いについて-個人情報保護の観点から-」というお題をいただいておりますので、こちらについて報告をさせていただきたいと思います。
次のページをお願いします。
本日の報告の流れですけれども、まず法20条に基づいて提供された情報の取扱いに関する法の現状について確認をさせていただいた上で、法20条提供情報をめぐってはとりわけカルテ転記や第三者提供等についてこれまでの部会でも様々な議論があったかと思いますので、これらを基に法的な論点の整理をさせていただきたいと考えております。
この点について最初に皆様に御理解いただきたいのですが、今回の報告は各論点に関する私の考えを申し上げるというようなものではなく、あくまでもこれまでの部会での議論を踏まえて、今後の検討に資するように法的論点の整理をさせていただくものになるというところを御理解賜れますと幸いでございます。
最後に、今後の検討に向けて留意すべき点について少しお話をさせていただきたいと思います。
次のスライドをお願いします。
まず、法20条に基づいて提供された情報の取扱いに関する法の現状についてです。
次のスライドをお願いします。
まず前提として、最初にがん登録情報の特殊性というものについて確認をしたいと思いますけれども、皆様御案内のとおり、がん登録情報というものはがん罹患者の氏名、生年月日、住所、がんの種類・進行度・発見の経緯、治療内容といった情報を含む極めて機敏性、センシティブ性の高い情報でありまして、特に個人情報保護法上は病歴として要配慮個人情報に当たるような情報になります。
個人情報保護法上は、要配慮個人情報というものは収集の際に原則として本人同意の取得が義務づけられるような厳格な取扱いが必要とされているとされている情報になります。こういった情報をがん登録制度というのはある意味では強制的に本人の同意なくして収集・登録しているということで、こうした極めて機微性、センシティブ性の高い情報を本人同意なく収集するというところにがん登録情報の特殊性があるものと考えられます。
こういったがん登録情報の特殊性ないし特徴ゆえに、がん登録法ではがん登録データベースから提供される情報について、その受領者に対して20条提供情報を含む提供情報一般に関して、特別な保護措置というふうに差し当たり呼ばせていただきましたが、30条から34条の保護措置を義務づけているというのが、20条提供情報の取扱いに関する規定の位置づけとなるかと思います。
次のスライドをお願いします。
こういった20条提供情報についてこれらの保護措置をどのように確保するのかということにつきましては、事務局の資料にもございますけれども、これまで第12回部会で示された運用ルールにのっとった対応がなされてきたというところでございます。こちらは事務局資料にもございますので読み上げませんけれども、こういった運用ルールについてはこれまで利活用の観点から様々な意見、とりわけ疑義であるとか反対意見といったものが示されてきたというのがこれまでの部会での議論であったかと思います。
こうした議論の根底には、法的には、個人情報の取扱い根拠というのが基本的に患者さんから同意に基づいて収集している診療録に載っているようなものか、それとも先ほど申し上げたとおり、同意なく収集され、がん登録データベースに登録されるようなものかという観点から法的な取扱いが異なってくるというのは十分にあり得る位置づけの差異なのですけれども、一方で病院における実務上は同一の患者さんについての個人情報になりますので、これを区別して扱うのは不合理なのではないかということで、法的な位置づけと実務とのずれというものがこれらの議論の根底にあるものというふうに理解をしております。
次のスライドをお願いいたします。
次は、20条提供情報の利用提供についての法的論点の整理をさせていただきたいと思います。
次のスライドをお願いします。
具体的なカルテ転記や第三者提供といった個別の論点を検討していく前に、まず最初に重要なポイントとして申し上げたいのが「根拠条文の明確化と個別の検討の必要」というところでございます。先ほど言及しました30条から34条の保護措置について、今までの部会の議事録等々を拝見しますと、これらをまとめて検討するといったような議論も多かったのですけれども、やはりこれらの保護措置というのはそれぞれ個人情報保護の観点から見ますと趣旨が異なるものがいろいろと含まれているものになります。
例えば30条、32条といった辺りはどちらかと言えば安全管理のようなお話、そして31条のほうは利用提供ができるかどうか、つまり利用提供自体の可否とか、その条件といったものが定められる規定になります。そして、33条、34条というのは従事者等の秘密保持義務ということで、それぞれ趣旨が異なりますので、何条のどの文言の解釈によってどのような判断が導かれているのかということを明確にした上で個別に検討していくということが大事かと思います。
こういった意見は過去の部会でも示されていましたので、参考までに資料にも載せてございます。
次のページをお願いします。
このように考えたときに、カルテ転記や第三者提供等について何条が問題になってくるかということですけれども、カルテ転記、第三者提供というのはまずどのように20条提供情報を利用、提供できるのかという話ですので、過去の部会でも指摘されておりますように、31条の利用提供に関する規定というのが最初に検討する必要のある規定ということになるかと思います。
では、法31条がどういう規定をしているのかというと、受領者は「提供を受けた目的以外の目的のために、利用し、提供してはならない」という利用・提供の制限が定められております。そうしますとここでポイントになるのが「提供を受けた目的」とは何かということになります。
20条提供情報の場合の「提供を受けた目的」というのは何かというと「病院等における院内がん登録その他がんにかかる調査研究のため」の提供と書いてありますので、結局はこの「病院等における院内がん登録その他がんに係る調査研究のため」の利用・提供と言えるのかどうかというところの解釈が問題になってくるということになります。
それから、20条提供情報の特に第三者提供についてはもう一つ注意すべき点がございまして、これが法第2条第3節の規定になります。端的に申し上げますと、こちらは病院等を介さずにがん登録データベースから直接に提供を受ける際の様々な提供制限の規定でして、例えば、提供の際の受領者の限定ですとか、本人同意を取るというのは極めて限定された場合ですけれども、ほとんどの場合は審議会等の意見聴取等が求められております。ですので、こういったがん登録データベースから直接に提供する場合の提供規制との整合性ですとかバランスといったところは、ある程度注意して考える必要があるかと思っております。
こういったところを踏まえますと、前回から示されている事務局の対応案、すなわち、病院内の調査研究については引き続き認める、そして、病院以外の第三者への提供については第三者の特定ができず、認めるべきではない、といった整理は、9ページに記載されております第三者提供を認めない理由についてはちょっと留保いたしますけれども、結論としては一定の合理性を有しているのではないかと考えております。
次のスライドと、その次のスライドをお願いします。
そういうことで、事務局の対応案というものを前提として、ここから第三者提供とカルテ転記に関する法的論点の整理をさせていただきたいと思います。
まず第三者提供です。先ほど法31条との関係で申し上げた通り、事務局の対応案としては病院以外の者への提供は認めるべきではないという結論になっておりますので、これを前提といたしますと、20条提供情報そのものを第三者に提供することはできないという結論が導かれることになります。
しかしながら、この点に関してはこれまでの部会で生存確認情報の一部、死亡情報ですとか、あるいは加工したもの等については利用提供を認めてよいのではないかといったような考え方も何度か示されていたところかと思います。
ですので、仮にこうした考え方を取るのであればということで、その場合の論点を下に書かせていただきました。生存確認情報の一部や加工したもの等の利用・提供を認めるという考えに立った場合の論点ですが、最初がまず法の趣旨に照らして認めるべきかどうかというところで、これはある種、20条提供情報については特別にこういった扱いを認めるということになりますので、そもそもそういった取扱いが法の趣旨に照らして認めてよいものなのかどうかという点については一度検討が必要かと思います。
次のところは、20条提供情報をどのように加工するか、どのような一部を使うか、あるいはどのように利用・提供するかでいろいろと変わってはきますけれども、いずれにしましてもがん登録情報の特殊性ですとか、本人等への権利利益の配慮というのがそれぞれのケースで具体的に十分になされているのかというところも検討の課題になるかと思います。
それから、30条、32条から34条の保護措置についてどう考えるか。これについては過去の部会で、20条提供情報については、30条、32条から34条の保護措置に関しては代替的な少し緩やかな保護措置でよいのではないかといった議論もありましたけれども、そういった緩やかなものでいいのか、それとも通常の保護措置を要求すべきか、この辺りも論点になるかと思います。
最後のところですが、第三者提供に関しては先ほど申し上げましたとおり、がん登録情報一般の提供を規制する法第2条第3節の規定に鑑みますと、20条提供情報を病院から第三者に提供する具体的なニーズ等を慎重に検討するだけでなく、第三者の範囲をどう考えるのかといったところについても十分に検討すべきと考えております。
次のページをお願いします。
次にカルテ転記ですけれども、法31条との関係では先ほどの事務局対応案では、カルテ転記について明記はされていませんでしたが、病院内の調査研究については20条提供情報の利用を引き続き認めるとされておりますので、病院内の調査研究の目的の範囲内であれば認められる可能性もあるというふうに理論的には解釈できると思います。
ただし、これも過去の部会で指摘されていたことですけれども、二次利用や第三者提供の可能性がありますとまた別のリスクが出てきますので、カルテ転記した場合はその後の使い方なども見越した議論が必要になるかと思います。
なお、カルテ転記についても生存確認情報の一部や加工したものについては認めるという考え方が、これも過去の部会で出ておりましたので、その場合は前のページで御紹介したような論点が問題になるかと思います。
仮に先ほどの法31条について、病院内の調査研究の目的の範囲であればカルテ転記を認めるという考え方に立つ場合は、次に法32条との関係も検討する必要が出てきます。これはどういうことかと申しますと、過去の部会でカルテ転記については32条の保有期間制限というものが障壁になっているためこれを見直すべきであるとか、あるいは政令の改正をすべきであるといったような議論がございました。ですので、もし仮にそういった考え方を取るとすればですけれども、そもそもカルテ転記の場合に保有期間制限の例外を認めるということをしていいのかどうか、仮にそれが認められるのであれば、延長なのか、制限撤廃なのかといったところが論点になり得るかと思います。
それから、残りの30条、それから33条、34条ですけれども、先ほどの第三者提供の場合と同様に、やはりこれらの保護措置をどのように確保するのかという点が検討の課題になってくるかと思います。
次のページをお願いします。
次のページをお願いします。
最後に「今後の検討に向けて」ということで、極めて一般的なところにはなりますけれども、今後の検討に向けて留意すべき点を3つ書かせていただいております。
一番上ですけれども、こちらはがん登録制度における個人情報保護の意義に関するものになります。がん登録制度というのは冒頭に申し上げましたとおり、要配慮個人情報を言わば強制的に収集することで成り立っているものですので、制度全体の信頼性確保のためにも個人情報保護が重要になってくるということは改めて申し上げさせていただければと思います。
2つ目と3つ目は、今回のように新しい利活用を進めていく場合の留意点ということで御理解いただければと思いますけれども、まず新しい利活用のニーズというのが時代の変遷に伴っていろいろと出てくると思いますが、こういった新しい利活用を法の解釈、運用によって進めていく場合には、決してなし崩し的な利用の拡大というものが起きないように都度、都度、法の趣旨に照らして慎重に検討していくことが必要であるというのが2つ目の点になります。
それからもう一つ、こちらも新しい情報の利活用に関してですけれども、新たな利活用を認めていく際には個人情報保護のルールについても具体的なケースに応じて、例えば具体化したり調整したりといった必要が出てくることも考えられますので、そういった場合には個人情報保護のための明確かつ十分なルールに基づいた利活用が必要であると考えております。
それでは、私からの報告は以上とさせていただきます。御清聴どうもありがとうございました。
○中山部会長 松前委員、どうも御説明ありがとうございました。
御質問は最後にまとめて議論させていただきます。どうもありがとうございました。
それでは、続いて西野委員から資料の説明をお願いいたします。
○西野委員 それでは、よろしくお願いいたします。
私からは、「法20条に基づいて提供された情報の研究への利用」についてお話をさせていただきます。
次のスライドをお願いいたします。
こちらは皆様御承知の推進法第20条の条文を示しております。御承知のとおり、都道府県は赤字で示しましたように生存確認情報等の提供を病院に対して行う、院内がん登録及び調査研究のために病院に提供することができるというのがこの20条でございます。
次のスライドをお願いいたします。
具体的にこの「生存確認情報」ですが、生存しているか、死亡しているかの別、生死区分、最終生存確認日、あるいは死亡を確認した場合にあっては死亡日及びその原死因といったものが相当します。
次のスライドをお願いいたします。
実際にこの生存確認情報として提供されている内容は、ここに挙げられている死亡日、原死因、最終生存確認日というものが項目として提供されています。
次のスライドをお願いいたします。
実際、研究者はこれらの情報、最終生存確認日、あるいは死亡日の情報の提供を受けて、個々の研究に応じた起算日から生存期間を算出して研究に利用しています。実際、どこから生存期間を計算するかという起算日をこのスライドの下に示しています、がんの症状が出てから亡くなるまでの経過のうち、どの時点に着目して研究を行うかによって起算日を変えて、目的に応じて計算をしています。従って、死亡日そのものの情報から生存期間を研究者は実際に計算しています。
次のスライドをお願いたいします。
診断日から死亡日を生存期間にするのが一般的な研究かと思いますが、例えば近年、診断から治療に入るまでの期間が長くなると、予後に影響するのではないかという研究が幾つか行われています。ここでお示ししているものは、非小細胞肺癌について診断から手術が行われるまでの待機期間と再発及び死亡のリスクとの関連を検討したアメリカの研究でございます。この場合は、治療が開始された日を起算日として、死亡日までの期間を生存期間として計算を行っています。
次のスライドをお願いいたします。
また、臨床研究においては再発した症例についての治療効果を検証するという研究も数多く行われています。これは、乳がん治療の2つの薬剤についてその効果を比較した臨床研究になります。この場合には、再発症例では、再発した時点を起算日として、死亡日までの期間を生存期間として研究を行っています。
次のスライドをお願いいたします。
ここからは、「臓器別がん登録への生存確認情報の提供」についてお話をさせていただきます。
次のスライドをお願いします。
初めに、「臓器別がん登録」の御説明を簡単に申し上げます。
学会や研究会などが主体となって、協力医療機関からデータを収集して、臓器別に全国規模で腫瘍登録を行うがん登録が臓器別がん登録といわれているものです。専門医のいる医療機関が対象になります。
全国がん登録情報よりは詳細な臨床情報が収集されていて、がんの病理学的な特徴及び病期を正確に把握して、それに基づく治療指針を確立するであるとか、診断時、あるいは病理学的な所見に基づいた病期の在り方などを検討することに、臓器別がん登録は利用されています。
実際の臓器別がん登録は、手術症例のデータベースであるNational Clinical Database(NCD)との連携で実施されるタイプ、以降、NCD連携型というふうにお話させていただきますが、このNCD連携型と、それ以外の学会が独立して実施しているものというように分けられます。
次のスライドをお願いいたします。
このうちNCD、National Clinical Databaseと連携して行っている臓器別がん登録というという点に関して、NCDについての御説明を示しています。
2010年に外科系の10の学会が参画して設立された手術症例のデータベースで、現在は14の学会が参加しています。全国がん登録よりも非常に詳しい、数十項目から数百項目の登録を実施しています。
消化器外科、呼吸器外科あるいは乳がんについては外科手術レジストリとして、該当領域の手術のほとんどを登録しており、その領域のがんに関する情報というのもそこに含まれています。専門医の制度と連携していますので、悉皆性も高いということです。
ただ、このうち消化器外科や呼吸器外科については90日以内の死亡といった短期予後の把握に限られており、長期予後の把握は行っていないというところです。
また、この外科手術レジストリ以外のがん登録データベースもNCD連携という形で行われていますが、全ての施設が登録を行っているわけではなく、悉皆性が高いもの、そうでないものというふうに分かれているという現状です。
次のスライドをお願いします。
この臓器別がん登録で予後情報がどのように使われているかですけれども、先ほどお話しした学会が独自でやっているもの、あるいはNCDと連携しているものの中で乳癌学会が長期予後の登録の把握を行っていますが、長期予後は、5年以上の予後の把握を行っている学会のデータベースにおきましても、大体7割から8割程度の把握にとどまっているのが現状と聞いています。
それで、長期の予後の把握が十分できていない医療機関、これは医療機関ごとに把握できているところと、できていないところに分かれている場合が多いのですが、予後の把握が十分できていない医療機関は生存率の分析対象から外すことが行われておりますので、実際の真の地域における生存率と値が外れているという可能性が考えられるかと思います。
これに対して、全国がん登録からの生存確認情報の提供を受けることができれば、臓器別がん登録全体の長期予後の精度が大きく改善することが期待できるかと思います。
次のスライドをお願いいたします。
実際にこれは乳癌学会の乳癌登録を利用した臨床研究の例で、乳癌の2つの組織タイプについてその薬剤の効果を比べたという研究です。
下のほうの赤で丸を囲った部分に示しておりますけれども、この研究を行う際に長期予後の把握ができていないため、全体の2割から3割の症例が研究の対象から除外されて分析が行われていますので、その点についてこの研究の妥当性について多少限界があることが示されています。
次のスライドをお願いいたします。
このように臓器別がん登録で全国がん登録情報を利用する形としては、1つは死亡日の情報が得られれば臓器別がん登録が保有している起算日、多くは治療開始日とか手術日を起算日としている場合が多いかと思いますが、診断日を起算日とする場合も含めて生存期間の算出に利用できるかと思います。
また、死因につきましては、まずは臨床研究で、がんで亡くなったか、それ以外の病気で亡くなったかの識別ができれば疾患特異的な生存率、cause-specific survivalの算出が可能と思います。
それとともに、他疾患による死亡の影響を考慮した当該疾患、当該がんの生存率を出すことができることになるかと思います。
また、詳細な疾病コード、死因に関するコード、国際疾病分類のICD-10のコードが得られれば、がん以外で亡くなった死亡自体の影響を検討することができると考えられます。
次のスライドをお願いいたします。
これらの20条によって提供された死亡情報がカルテに転記することができることになると、従来、臓器別がん登録の情報は各診療科から入力して提供されているため、診療録に転記された死亡情報が提供されることにより、全国がん登録では得ることができない詳細な臨床情報と、死亡情報、予後情報が整いました臓器別がん登録のデータによって正確な生存率の把握が可能になるかと思います。
それによって、予後に応じて適切な病期が決められるということがありますけれども、そのような病期が正確に把握できるということがありますし、また、治療法についての評価も正確性が高まりますので、患者の方の状況に応じた適切な医療の提供が可能になるかと思います。
また、各施設間や地域間の医療の質の評価も行うことができるようになり、がん医療の均てん化に貢献することができるのではと考えます。
次のスライドをお願いいたします。
また、各医療機関での活用ですと、医療機関は診療内容や様々なQOL等の内容も含むアウトカムを持っています。それと、予後情報が合わさることにより、診療の質の評価を行えるデータベースの構築が可能になると思います。
さらに、その情報が仮に都道府県のがん対策推進協議会等に提供されることによって、医療の質評価、あるいはがんとの共生に関する指標の評価を行うことができるかと思います。
それで、誰一人取り残されないがん対策の実現に寄与できると考えます。
次のスライドをお願いいたします。
また、さらに20条の情報を活用することによって今お話しした臓器別がん登録、あるいは医療機関の診療情報にある情報と予後情報を持つデータベース、今はリアルワールドデータと申しますけれども、そのようなものを用いることによって新たな治療の開発、例えば希少がんの治療開発において臨床研究を行うに当たってどれくらいの症例数、薬の開発を行うに当たってどれくらいの患者さんに投与すればその効果が判定できるかというサンプルサイズの設計であるとか、あるいは治療効果を判定する上で、その治療群と比較する場合の従来の治療効果の対照群としてヒストリカルコホートという形で活用できるかと考えております。
これによって、開発が今まで遅れがちであった希少がん、再発や進行したがんに対する新たな治療、あるいは難治性のがんといったものの治療法を、促進、スピードアップができる形になって、全体的ながんの死亡率の改善に寄与し、この20条によりにより提供した情報が広く活用されることによって医療が進んで患者さんの方々にも大きな利益が生じると考えております。
私からは以上です。ありがとうございます。
○中山部会長 西野委員、御説明どうもありがとうございました。
それでは、続きまして東委員から資料の御説明をお願いいたします。
○東委員 よろしくお願いします。東京大学医学系研究科公衆衛生学の東と申します。
私からは、少し西野委員の内容と重なるところはあるのですけれども、なぜがん登録提供の生存確認情報を多施設分析することが重要なのかということについてお話をさせていただければと思います。
次のスライドをお願いします。
端的に、結論から申し上げまして2つあります。1つは正確な予後情報がないと生存率を計算してもそれが不正確になるからということ、もう一つは施設ごとの分析結果ではそれが十分な科学的知見にはならないということが挙げられます。それぞれについて少し補足して説明させていただきます。
次をお願いします。
まず「正確な予後情報が無いと、生存率が不正確」ということで、西野委員から既に学会のがん登録等では予後情報の成績が不完全なものについては除外して解析するというお話がありましたけれども、この理由を検証した研究というものが少し前になりますが、存在します。
2000年に行われたものではあるのですが、その一部をグラフ化して持ってまいりました。スライドに示しましたのは、ある病院で肺がんの術後生存率というものを1年後、3年後、5年後と、5年まで計算したものですけれども、青い線のほうが院内に存在したデータで、80%くらいは5年後に生存確認ができているというもので、それをそのまま計算した生存率で、赤いほうが役場照会を行って追跡を完璧にして予後が100%判明した場合の生存率というものです。
この研究は肺がんだけではなくて、ほかのがんでも幅広く行われておりますけれども、肺がんが典型的だと思ったので持ってきました。実に5年生存率のところを見ていただきますと、院内のデータだけで計算したものが76%となっているのに対して、真の生存率というのは61%と、実に15%の差、しかも過大評価をしているというようなことになります。院内のデータだけで予後追跡が不十分な状態では、こういった過大評価のリスクがあるということがこういった研究から分かっておりますし、広く疫学、がん登録の関係者には知られているところです。
なお、この結果を受けまして、院内がん登録では生存率を全国集計ということで、全国の病院からデータを提供されて生存率の報告書をつくっておりますけれども、予後判明率が90%未満の場合はその施設は計算から除外する。そもそもその生存率が過大評価をしている可能性が高いということで、除外するということをしております。
次をお願いします。
ただ、一方で、現状では施設自身で追跡を十分に行うというのは非常に困難であります。患者さんは地域との診療連携ということで、一定の治療が終わった後は他施設でフォローされるということは多いでしょうし、また終末期になるとさらに転院して専門的なケアができる施設に行かれるということもあります。こういった施設を移られた患者さんをそれぞれ調査して追跡をするというのは、普通の病院にとっては人手不足でほぼ不可能ということになります。
そこで、がん登録推進法20条による生存確認情報が提供されるというのは画期的なことでありまして、施設ごとの生存率を正確に計算できるということになりますので、それで施設が自ら治療を振り返って改善していこうという機会が提供されるということになります。これは非常に重要な効果であると考えられます。
次のスライドをお願いします。
ただ、施設ごとの分析のみを行っていたということでは、これは施設ごとの知見にはなっても十分な科学的知見にはなり得ないということが言えるかと思います。科学的知見というのは、一般化可能性がある。要するに、その病院の患者さんだけに当てはまるのではなくて、一般的な患者さんに広く当てはまるということが重要ですので、施設ごとの分析をしただけでは施設ごとの個別性の強い集団を対象に見えているものであるということでしかないと思います。
また、対象数というのはどうしても施設ごとだと限られます。生存率の計算をするにしても、数値が、対象数が少ないと不安定になりますし、さらに重要な要素、年齢であるとか併存症の有無といったようなことで切って、それを調整して計算しよう、比較をしようとしますと、さらに対象症例数が必要ということになるわけですが、施設ごとでは十分な対象数を確保できないということで、このままでは我が国の研究力が阻害される、または国際的な競争力が低下するということになると思いますし、そうなってくると本邦で検討した科学的知見による医療の質の向上というものが患者さんたちは享受できないということが問題かと思われます。
次をお願いします。
参考までに、小さな分母だと数値が不安定になるというのはどういうことなのかということで、大学の授業みたいで申し訳ないのですが、少し解説をさせていただきたいと思います。
例えば1つの割合、57.1%というものがあったとして、これは右に書いてある分数でそれぞれ計算がされるわけです。7分の4かもしれないし、14分の8かもしれない。21分の12とか、もっと大きくなると315分の180かもしれないということなのですが、その中で、こうやって対象を集めて解析をしますと、たまたま1人変動するというようなことは往々にしてあるということになります。
それで、その1人変動したことの影響がどの程度なのかということを見ますと、7分の4が7分の3になりますと、これが42.9%になりますので14.2%下がる。14の分母があっても、14分の7になると50%ですので7%下がる。このようにがんがんと数値の割合が減ってしまうということになります。
ですので、数値の分母が小さい値による割合というのは非常に不安定であるということで、これは再び院内がん登録の生存率公表ルールでありますが、分母が30例ないと数値が不安定であるということで、その部分については生存率をマスクして公表しないということが行われております。
次のスライドをお願いします。
現実に、では施設ごとの患者数というのはどの程度あるのかということを検証してみたのがこのスライドになっております。
これは大腸がんで、ステージごとで施設別の症例数というのを分布で見たものであります。各棒が各施設の症例数ということで、分布を少ない順に左から並べているわけなのですけれども、30例未満という施設数を数えてみると、かなりたくさんの施設がそれに該当してしまうということが見て取れるかと思います。これは大腸がんですから、かなり数の多いがんでこういうことが起きているので、より少ないがんですとこういったものはいっぱいあるということになりまして、施設ごとの中だけで分析をするというのはこの施設にとってはいいのかもしれませんけれども、科学的知見と言うには少し足りないことになってしまいます。
次のスライドをお願いします。
そういうことで、他施設で正確な情報が集積されるということができますと、これは対象症例数というのが十分に確保できるということになりますので、一般化可能な信頼できる知見ができて、医療の進歩、治療成績の向上に資することになるかと思います。
次のスライドをお願いします。
最後でありますが、「まとめ」といたしまして、生存確認情報を多施設共同研究で利用できないという現状では分析が不完全な状況を余儀なくされているということで、医療の質の向上というのは各関係者の努力はあるのですけれども、限定的であると言わざるを得ないと私は思います。
ですので、がんに係る調査研究を推進するというがん登録推進法の理念に合うためには、この予後情報の匿名加工を行うなど、提供の道を開いて多施設で共同で利用していくということは急務であると申し上げたいと思います。
私からの報告は以上です。
○中山部会長 東先生、御説明どうもありがとうございました。
それでは、続きまして新谷参考人から資料の御説明をお願いいたします。
○新谷参考人 皆様こんにちは、大阪大学の呼吸器外科の新谷と申します。
本日は、このような発表の機会を頂戴いたしましてありがとうございます。西野先生、あるいは東先生のほうから詳細をお示しいただきましたので、私のほうはかなり各論的な話になってしまって恐縮なのですが、少しお付き合いいただければと思います。
肺癌登録合同委員会は一つの臓器がん登録と考えておりますが、その活動と課題についてお示ししたいと思います。
次のスライドをお願いします。
肺がん登録というのは結構古くから行っておりまして、学会が主体となっております。具体的には1998年に肺癌登録合同委員会というものを学会が設立しまして、その後、事務局がいろいろ転々としておりますが、継続して肺がんの登録事業を行っているという団体であります。
次のスライドをお願いします。
現在、関わっていただいている学会というのは、呼吸器に関する主要な学会を主に「現在の構成学会」と書いていますが、5つの主要な学会と研究会、学会が入って運営をしているということになります。
委員については各学会から出していただいて、事業を実施するところも御支援いただいているというようなことになっております。
次のスライドをお願いします。
ホームページもこのようにありまして、次のページをお願いします。
実際に患者さん方にも見ていただけるようにこのホームページをつくってあるのですが、その目的としましては肺がんを中心とする胸部悪性腫瘍の全国の症例登録と解析事業によりまして、診断と治療の向上に貢献するということを目的に活動しているというふうにうたっております。
次のスライドをお願いいたします。
実際にこれまでの登録事業の実績ですけれども、現在12個にわたる事業を行っておりまして、ちょっと上のほうを御覧いただきますと、最初は外科症例を集めていたのですが、ところどころ内科の症例、非切除症例とありますけれども、このような登録事業を行ってきました。
外科に関しましては、大体5年ごとにその症例登録を行っていただくような事業を行っております。
現在進行中の事業につきましては、上に書いてあります事業の続きとしまして、第10次事業というのが2017年の外科症例の後ろ向き登録というのを今年開始する予定にしております。
それから、第8次は希少疾患ですけれども、胸腺腫瘍の前向き登録、あるいは第9次事業としましては悪性胸膜中皮腫の前向き登録というものを開始しております。
そのほか、11次事業、12次事業というのは先ほど西野教授からもありましたけれども、NCDデータを用いて何かそういった登録事業に展開できないかということで、NCDのデータに予後、あるいは治療情報を付け加えるというような登録事業を開始しております。
大体、症例数を見ていただいたら、例えば第11次事業というのはNCDのデータを使って参加登録を募って登録を行っておりまして、2万件くらい前向きにNCDのデータを登録していただいているのですが、実際に肺がんの症例というのは恐らく外科症例は年間4万5000から5万件くらいありますので、我々が行っている登録事業というのはその一部を集めているというような理解になるかと思います。
つまり、これは参加していただけないとその登録ができませんので、日本全国、全部の症例を登録できているわけではないということは御理解いただければと思います。
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最近いろいろ解析が終わりましたので、これは2010年の外科症例、第7次事業でちょっと古いデータですけれども、これを例にして御説明したいと思います。
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2010年の登録事業というのはどういうものかといいますと、2010年に外科手術が行われた肺がんの症例についてデータを集めますということを学会がうたいまして、参加登録していただきます。各参加登録した施設から医師がそのデータを登録していくということになりますので、要は2010年の外科手術症例を集めてその予後を解析したり、あるいは予後因子を見たり、そういうことを目的にした事業になります。
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まず呼吸器外科という領域では、日本呼吸器外科学会を通じて修練施設に、現在はメールで行っていますが、当時は案内状を送りまして参加の可否を問い合わせております。その上で、参加してくださる場合には各施設で倫理審査を通していただいて、その上で登録事業が始まるというところになりますので、実際にこれは先ほども言いましたけれども、大体全国の肺がん手術の半分くらいが登録されてくるのではないかと考えています。
それから、これは後方視的な登録になりますので、例えば前向きに登録する場合などは患者の同意書、文書で同意を得てから行うということになりますが、第7次事業に関しましては2010年のデータを2016年に集めるという後方視的な研究、登録事業になりますので、この場合はオプトアウトで行っておりました。
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実際に登録内容はスライドが細かくて恐縮ですけれども、このようなページからウェブで登録するようになっているのですが、大体これは14ページか15ページくらいの内容を登録することになっておりまして、要はかなりの診療情報を、カルテ情報からこれに入力していただくというような事業になりますので、かなり手間はかかっているということになります。
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実際にこれらのデータを集めまして、まず1つは論文の発表ということで、これらのデータを国際誌であったり、あるいは日本の先生方にも還元できるように日本語で主論文として執筆し、このデータの解析をまず学会等を通じて発表するというのが一つの使命になっています。この事業では、大体2010年で1万9000件くらいデータを集めておりますが、これらの成績を発表するということになります。
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先ほどもありましたけれども、例えば病気別にどのくらいの生存率があるのかというのを日本のデータとしてこのように国際誌に発表していくというのがあるのと、それから定期的にこの肺がんの事業で外科症例が登録されていますので、年代をまたいでどのような変化があるかというのも解析したりすることができます。右にありますように、だんだんと術式が変わってきていますということをこのデータを用いて調べることができるということになります。
ただ、何度も申しますが、全症例を集めているわけではありませんので、この辺りはリミテーションとして考えておかないといけません。
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そして、現在までに14件の国際誌に対して論文発表等を行いまして、我々のデータから様々な予防因子であったり、こうした治療法がよいとか、使えるのではないかというような論文発表を行っているという状況になります。大体1つの事業からこのような論文発表ができるというところになります。これはアカデミアの話になりますが、このような活動を行っています。
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もう一つ、我々の事業で非常に重要なのは、このデータを国際的に使っていただくというのが非常に大きな仕事の一部になっておりまして、集めたデータを世界肺癌学会というのがあるのですけれども、そこの統計データとして使っていただくというように、世界肺癌学会にこのデータを提供するというのが一つの事業の重要なポイントになっております。
例えば、このデータはちょっと以前のものですけれども、TNM分類の改定に我々のデータを使っていただいて、要は国際貢献していくということになります。その中でも左下にありますように、アジアで、特に日本からはたくさんのデータをもらったというような謝辞が書かれることが多いのですけれども、このようなデータ提供を行っております。
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専門的なところになるのですけれども、TNM分類が来年大きく変更されるようになっているのですが、その際の改定にもこの第6次事業、7次事業のデータを世界肺癌学会に提供して使っていただいて、そのデータを基にこのバージョンを改定していくことに使っていただいているということになります。やはりその中でも日本からのデータというのが一番多いというのが、この下の括弧の中に書いてあるという状況です。これは、世界各地からそのデータを世界肺癌学会に提供されまして、世界的なデータを解析してこのTNM分類の改定が行われるのですが、そのうち非常に多くのデータが日本から出されているというのが現状だと考えております。
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そういうことで、我々の登録事業の貢献ということでまとめてみましたけれども、1つは論文ですね。これはアカデミアの話になりますが、世界に向けて発信するということ。
それから、2番目にありますようにTNM分類の改定に用いるということ。
これらは我々の仕事の一部と考えておりますが、この続きとしてどういうことが起こるかというと、やはり肺がんとか胸部悪性疾患の診療ガイドラインに反映されたり、それから先ほどもありましたけれども、臨床研究の基礎データ、リアルワールドデータとして臨床研究の立案等にこのデータを用いられて診療に還元されていくということになりますので、最終的にこの事業の目標としましてはやはり胸部悪性腫瘍の予防、診断、治療の向上ということで、患者さんに還元していくというのが大きな目標になっているところになります。
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課題として我々が現在考えているのが、1つはやはり外科系の登録事業がどうしても多くなってしまいまして、内科系の登録事業というのがなかなか難しいという現状があります。ちょっとこれは後で説明しますけれども、このような偏りがあるということ。
それから、先ほど国民の患者さんへの還元と申しましたけれども、やはり情報提供としては不十分だと考えておりまして、どのように我々の成果を一般の方々に分かっていただけるか。これは我々の工夫がちょっと足らないところでありまして、市民公開講座とか学会を通じてこの重要性というのを皆様に説明しないといけないなと考えております。
それから、先ほどもありましたが、登録率で、半分くらいしかデータが集められないということ、これは大きな問題の一つなのですけれども、専門的な呼吸器外科の修練施設に限って参加登録をお願いしているというところもありますし、やはり参加するとしましてもかなりの手間がかかるんですね。だから、なかなか参加に手を挙げていただけない施設も多くあるというのは一つリミテーションになると考えております。
それから、何とか登録の負担を軽減しようとしまして、先ほどありましたけれども、外科症例に関しましてはNCDを使えると考えておりますが、ここにはやはりNCDというデータベースの使い道といいますか、使い方にも制限がかなりかかっているのは事実でありまして、これを一概に全部データをいただいて解析することはできないというのは一つの大きなリミテーションになっています。
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内科症例の御紹介になりますが、これは2012年の非切除の内科症例の登録の画面になっておりますが、この下にあります最終生存確認月までしか私たちは集められないのですけれども、これは個人情報というか、匿名化の問題もありましてここまでにしなさいというような指導を倫理委員会からもらって、当時は月まで集めているのですが、その中身を開けてみますと、先ほど東先生からもありましたけれども、転院等で正確な予後追跡は困難であるということで、結局治療されてから1か月、2か月後に転院されてその予後が追えていないというデータがたくさんあるんです。
だから、本当に東先生のおっしゃるとおりで、これが正確なデータベースになっているかと言われると、これは我々の限界であると考えておりまして、いろんな病院にお願いしてお電話していただいたり、いろいろな努力はしていただくのですが、これはやはりボランティアでやっていただいているということもありますし、または患者さん方にとっても何度も電話で予後調査されることに関してはかなりつらい思いをされている方もいらっしゃるはずですので、一概にみんなやってくださいというわけにはいかないというのが現状であります。
そういうことで、やはり外科症例に関しては、我々は手術をしていますので、その後5年間きっちりフォローするということに努めることができるのですけれども、内科症例に関しましてはやはり正確な予後の情報を扱うのは難しいのではないか。これもあって、内科の登録事業はなかなか進まないということもあるのではないかと考えております。
次のスライドをお願いします。
私の知識がないところもありまして、間違っているところもありますが、議論になっている全国がん登録、NCDと肺がん登録のいろいろな長所と、それからある意味データを集めにくいところを表にしたものですけれども、全国がん登録のデータに関しましては継続性、網羅性ということでは非常に優れたデータになっていると伺っておりますし、何よりも予後情報が今回データとして5題あるということを聞いております。
一方で、NCDに関しましては、外科症例はかなりの部分が、専門医とひもづけられておりますので入ってくるはずですけれども、やはり細かなデータ、あるいは予後情報は全くないというのが肺がんの領域、あるいは呼吸器外科の領域ではこのような区別をできると思います。
そして、私たちの行っている肺がん登録に関しましては、継続的ではあるのですけれども、毎年行うのはやはり資金面では難しいと考えておりまして、やはり継続性は十分ではありません。それから、当然ながら全症例ではありませんので、この辺りは非常に大きなリミテーションになっております。
ただ、我々の領域の先生方の御努力もあって、入れていただいたデータは非常に細かく入っておりまして、診療情報としてはかなり詳細に集めることができております。
それから、ここに正確な予後情報が足されることで、かなり正確な日本からのデータとして価値あるものを、より価値あるものにできるのではないかと考えております。
次のスライドをお願いいたします。
ちょっと長くなって恐縮ですけれども、これは個人的なところもあって誤解もあるかもしれませんが、私の理想とする登録事業なのですけれども、当然ながら診療の変化を見るためには継続的であり、かつ網羅的な事業を行う必要があると思います。そして、それを利活用するためには詳細な診療情報というものがどうしても必要になってきますので、この辺りの入力については各病院の先生方の御支援をいただく必要がありますし、正確な予後がないとやはりきっちりとしたデータベースにはならないというのは今までの議論のとおりだと思います。
それから、迅速な情報解析、これはどんなデータベースでもやはり振り返って入力したり、あるいは昨年度までのデータを何とか活用できるとか、そういった情報解析ができると思うのですけれども、どうしても我々の例えば外科の症例でありましたら5年たたないとその結果が出ませんので、5年後に分かってくるということになってしまうのですね。
ところが、外科の手術にしろ、あるいは肺がんの治療にしろ、非常に日進月歩で変わっておりまして、2年くらいでデータを集めてみたいときというのがどうしても出てくるんですね。そうした場合に臨機応変に予後が分かると、迅速に患者さんにデータ、あるいは治療法などの解析結果を還元できるのではないかと考えております。この迅速というのはなかなか難しいかもしれませんが、今後は少しでも早くそのデータ解析につなげていければという願いを込めて記載しております。
それから、当然ながら個人情報を保護した上でこれらをやらないといけないということで、難しい面もありますが、データベースを統合することで、例えば入力の負担を減らしたり、あるいは国際貢献することが我々の一つの役目ではありますので、海外へのデータの提供ができるかどうかというのも一つの大きなポイントになってくるかと思います。
それから、最後に書きましたけれども、これらを我々は委員会とか学会で活用していますが、何かしら例えば学会会員全員が使えるようなデータベースというふうに還元していかないと、現在は一部の先生だけが解析するようなデータの利活用としては行っておりますが、やはりそれらを多くの先生方に使えるようにして日本の研究としてもっともっとスピーディーに解析や発表ができるようにしていきたいと考えているところであります。
すみません。長くなりましたが、以上になります。
○中山部会長 新谷先生、どうも御説明ありがとうございました。
それでは、ただいま事務局、松前委員、西野委員、東委員、そして新谷参考人から御説明いただきました資料の1から5の内容について、委員の皆様から御意見、御質問などをいただきたいと思います。
御意見、御質問がありましたらZoom機能で挙手をお願いいたします。
では、村本委員お願いいたします。
○村本委員 村本です。ありがとうございます。
松前委員から御説明のあった個人情報保護に関連して意見を申し述べます。
昨今、個人情報の漏えい事例が少なからず報道される中、国民は自らの個人情報がどう取り扱われているか、一層敏感になっていると考える一方、がん登録に関しては御説明があったとおり、本人の同意を必要とせずに個人情報の収集、登録が行われています。
その中で、松前委員の資料の最後のページに「がん登録制度への信頼性確保」とありますが、これは重要なことでありながら、患者、国民からすると、信頼があるか、ないか以前の問題として、そもそもがん登録制度を知らないという現実があるように思います。
私は、個人情報保護に厳格に対応しながらも、患者、国民への成果還元に向けてのがん登録情報の利活用を進めるべきだと考えてはおりますが、患者、国民のがん登録制度の周知を置きざりにしてはならないと思います。
本日は、後の議題で国外提供に関しても話が出てきますが、国外提供にまで進めていく前提としてもこれまで何度か申し上げてきたつもりではありますが、国としてがん登録制度の患者、国民の認知向上施策や、認知に関する実態把握をぜひ行っていただきたいと思います。
以上です。
○中山部会長 村本委員、どうもありがとうございました。国民のがん登録の認知状況について、これは実情を把握するというところから重要だということで御意見をいただきました。どうもありがとうございます。
それでは、白井委員よろしいでしょうか。その後、木下委員お願いいたします。
○白井委員 白井です。先によろしいでしょうか。ありがとうございます。
私も、個人情報の保護ということについてはすごく厳格な情報であるということを、松前先生のお話で伺ったと思うのですけれども、やはりがん登録制度における信頼というところについては西野先生から東先生、それから新谷先生にも、がん登録情報によってかなりいろいろなメリットがあって、国民にも還元できる情報が研究によって得られているということは十分お話しいただいたのですが、それが一般の国民の方には理解するチャンスがあまりないなということに残念なところが考えられますし、この信頼をされるということについては一般市民というか、やはりがんに罹患されている方、家族の方にその研究成果を分かりやすく伝えるということが重要かと思っています。
また、がん登録推進法の中で33条、34条のほうは秘密保持とかいろいろ書いてありますけれども、してはならないとか、使用してはならないとか、漏らしてはならないというふうに書いてありますが、これをもし漏らした場合とか、目的以外に使用したといった場合のコンプライアンスを遵守するような対応部門というものがここにあるのかどうか。これは国が設置するとか、法律違反ということで何か制限があるのか、ちょっと確認をする必要があるかと思ったのですけれども、医療者の立場で言うと、この情報の活用というのは本当に性善説でやっていると思うのですが、必ずしも医療者自体が信頼されているかという問題もあると思うのですが、性悪説も考えるとやはりこの辺は慎重に取り扱う必要があるかと思いました。
私は保健所と自治体の立場ではあるのですが、自治体としてもこのような情報を積極的にというか、理解をして出すべきだと思っているのですが、なかなか自治体の個人情報保護条例の中でがん登録に限りませんけれども、そこでいろいろなハードルがあって出せないということがありますので、情報がちゃんと国民、住民に還元されるということの理解ができたらもっと進むのではないかと思っています。
以上です。
○中山部会長 白井委員、どうもありがとうございました。
この法律違反のときに対する罰則規定などで、何かもし事務局のほうからありましたらよろしいでしょうか。
○石川専門官 事務局でございます。
御指摘をどうもありがとうございます。今の罰則に関して言いますと、現状第30条や第34条といったところに関して、例えば第31条、第32条に違反した場合というと、第38条の規定が適用されて、違反を是正するために必要な措置を取るべきといったような勧告、命令といったところは現状規定してございます。
お二方からおっしゃっていただいた周知については我々としても重要なことだと思っておりますので、こちらに関してはどういったことができるかを含めて検討できればと思います。
以上です。
○中山部会長 ありがとうございます。この委員会もYouTubeで配信されておりますので、いろいろな機会に国民に伝える機会を増やしていく必要を強く感じております。どうもありがとうございました。
それでは木下委員、その後、中島委員お願いいたします。
まず、木下委員お願いいたします。
○木下委員 よろしくお願いいたします。
西野委員の御発表の13ページ目くらいだったと思うのですけれども、見ていて感じたことで、少し論点は外れるとは思うのですが、お聞きしたいのですが、「臓器別がん登録における全国がん登録情報の利用」というスライドがあったかと思います。それで、今まで議論してきたことは、全国がん登録をどういう形で利用するかというところだと思いますし、私の認識もそういうふうな形で、方向性としては全国がん登録をどのような形で利用するか、それに対してどういう配慮が必要かということを議論しているとは思いますが、先ほど新谷先生がいろいろ示していただきましたように、全国がん登録と臓器がん登録というのはそれぞれいいところというか、補完しているところと、していないところもあるわけでございまして、例えば臓器がん登録で足りないところを全国がん登録から情報を得ようというときに、それで情報が得られたとします。その情報を、例えば臓器がん登録の登録項目の中に加えていくということで情報は加えられていくと思うのですけれども、その登録の中での情報で終わってしまうのか、これは現状では行っていないことだと思うのですけれども、臓器がん登録で全国がん登録を利用して得られた情報をまた施設のほうに下ろしていったりとか、今たくさんあるいろいろなデータベースを、ある程度一つの項目に関してはこのデータベースは欠落しているけれども、こちらから得られているというところも全部埋めていくような作業というか、そういうシステムができればいいのではないかと思います。利用だけで終わってしまうとデータベースというのはほかのところで埋められていないところが埋められていないまま終わってしまいますので、そのデータベースがたくさん存在するという状況はこれから先も変わらないのかなというふうにちょっと感じました。利用という点ではそういうふうなことまでしかできない限界があるのかもしれませんけれども、データベースはある程度一元化するとか、何かそういうふうな連携できるような考えとかシステムが今後できないのかなというふうにちょっと感じました。これは現実的な話ではないかもしれませんけれども、意見として述べさせていただきます。
以上です。
○中山部会長 木下委員、どうもありがとうございました。
西野委員、今の点についていかがでしょうか。お願いいたします。
○西野委員 御指摘ありがとうございます。
確かに全国がん登録、臓器別がん登録、あるいは院内がん登録という形で今複数のデータベースがあることがございまして、それについて整合性を取って今後どのようにデータベースを整備していくかというところは課題かと考えております。
ただ、御承知のように、全国がん登録は全数登録といいますか、悉皆性を重視するということで、限られた項目だけを登録することで行っていますし、臓器別のがん登録は今お話ししたように詳細な臨床項目を収集していますので、今、公的データベースについてはリンケージという形で連結して活用していこうというところがございまして、臓器別がん登録については今すぐ連結まではいかないと考えておりますが、中長期的な課題としてそういうデータベースの在り方をどう考えていくかというところは検討課題と考えています。
以上です。
○中山部会長 どうもありがとうございました。
それでは、中島委員お願いいたします。
○中島委員 よろしくお願いします。
臨床の立場からは、やはりカルテ転記を許していただきたいという立場です。御質問は、全く違う厚生労働省の今まさに西野先生が言われた公的データベースの突合の話ですね。これが進んでいると思いますので、その辺りの質問をさせていただきたいと思います。
ナショナルデータベースは、既に介護データベースですね。介護情報データベース、それから死亡情報と突合ができますし、この4月からは次世代医療基盤法のデータベース、これは公的なデータベースではなくて民間のデータベースですね。これも、匿名加工データ情報として突合ができるという法改正が行われてできるようになりました。HICというふうにそのプロジェクトはたしか言っていると思うのですけれども、そちらから言うと、次は難病データベース、それから予防接種データベースですね。それから、がん登録データベースという言葉も上がっていますので、もちろん法改正が必要でかなり大変かもしれないのですけれども、その辺りがどこまで進んでいるのか、あるいは話だけで全然進んでいないのか。これが解決されると、先ほどの先生方の御懸念の全部ではないのですけれども、かなり解決される可能性がある。
さらにその先でもう一つの質問は、ナショナル・クリニカル・データベースというのは学会データベースなので民間のデータベースに入ると思うのですが、準公的なデータベースとしてこのHICといいますか、公的データベースの突合の中に候補として入るということはないのか。それもあれば、かなり立体的なデータベース解析ができるのではないかという気がします。
また、次世代医療基盤法には既に全ての国立病院機構が参加していますし、かなりの国立大学病院なども参加しているので、電子カルテ情報などもそこで突合することができれば、先ほど西野先生、それから新谷先生も言われていた、より詳細な病歴との突合というのもできますし、残念ながらそこまでいっても、恐らく東先生が言われた施設ごとの分析というのは匿名加工情報ではできない可能性があるのですけれども、多くの解決があるのではないかと思うのですが、まず1つはがん登録が公的データベースの突合に入れるかどうかですね。どういう状況かというのと、もう一つはナショナル・クリニカル・データベースがそういうふうに同じように突合する可能性がないかどうか、その2点をよろしくお願いします。
○中山部会長 中島先生、ありがとうございます。
それでは、これは事務局のほうでいかがでしょうか。お願いいたします。
○事務局 事務局でございます。
御質問1点目の全国がん登録データベースとNDB等の公的データベースの連結に関しては、前回先生方に御議論いただいたとおりでございますけれども、連結が可能となる方向で我々としても対応させていただきたいと考えてございます。
また、もう一点のNCDとの連結の可能性に関しては、まずこういった公的データベースの連結というのが始まったところというふうに認識しておりますので、それらがどのように進んでいくのかということも踏まえて、そういったことが検討されるものと理解しております。
以上です。
○中山部会長 ありがとうございます。
中島先生、現時点ではよろしいでしょうか。
○中島委員 はい、ありがとうございました。
○中山部会長 どうもありがとうございます。
では、坂元委員、その後に藤田委員お願いいたします。
まず、坂元委員お願いいたします。
○坂元委員 川崎市の坂元です。
ちょっと分からないところで教えていただきたいのですけれども、このいわゆる秘密の漏えいというのは法律を読むと、がん登録情報に従事する者、国の職員等というふうに書かれて、その場合、刑罰としては懲役刑も含むかなり重い刑罰があるのですが、この場合、例えば医師ががん登録情報からカルテに転記した場合もこういう重い刑罰というのが想定されるのか。このがん登録情報に従事するというのは具体的にどこまで含まれるのか、この辺の解釈についてお教えいただければと思います。
私からは以上です。
○中山部会長 ありがとうございます。
それでは、事務局、今の点いかがでしょうか。
○石川専門官 ありがとうございます。
秘密の漏えいに関してですが、確かに罰則として漏えいした場合の刑罰といったところも定めてございますけれども、そちらについては今カルテの転記といったお話がございましたが、カルテの転記はそもそも目的外利用なのかとか、いろいろなところも踏まえて、実際にそれに反したら秘密を漏らしたということもあり得るかもしれませんけれども、それはあくまでも外部に漏らしたかどうかといったところかと思いますし、カルテの厳重な取扱いは既に病院とかでもされていると思いますので、そこは一概に言うことではないかと思います。
そういった範囲といったところはございますけれども、この条文上では委託されている、委託に係る業務に従事する者といったところも含めてありますので、そういったところも含めてこの秘密の保持に関する条文は対象とされているものであるというところでございます。
以上です。
○中山部会長 御説明ありがとうございました。
それでは、続きまして藤田委員、落合参考人、それからその後、松田参考人、大沢委員で御発言いただければと思います。
では、藤田委員お願いいたします。
○藤田委員 沖縄病院の藤田です。
先ほど西野先生の御説明でもありましたように、国際疾病分類のICDを使って、NCDでもICDも含めて登録されていますけれども、がん患者がどのような合併症を生じていたかなど、死因も、原死因によるものか、合併症による死因によるものかということが、ICDがあるとより詳細に分かります。
手術など、院内がん登録では初回治療情報を重点的に登録されていますけれども、内科では二次治療、三次治療や、さらに治療に伴う合併症の情報もかなり多く扱いますので、そういった疾病が正確に登録されることが非常に大切だと思います。次世代医療基盤法に関してデータベースの連結、分析について、前回の部会でもお話がありましたが、レセプトのデータベースに載っている病名だけではがん患者のがん以外の病名がたまたま合併していただけか、がんの治療、特に免疫療法などによって後に生じた病名なのかというのは、なかなか分かりにくい状態があります。
DPCのデータベースですと、ドットナインに留意するなど、精度がある程度保たれていると思いますけれども、それ以外のデータベースでは病名を信頼することが難しいところがございます。
その点で、新谷先生がお示しになられました臓器別がん登録では医師が症例登録するということで、かなり精度が高い情報が得られますので、この精度の情報が還元されて、正確に臓器別の登録も行われて、(データベースの連結分析の際は)より大きなメリットが得られると思いまして、こちらで発言しました。
精度の高い臓器別がん登録から得られる情報と、他の精度管理されていないデータベースと連結した情報を比較することで、登録内容の傷病名の精度に関するフィードバックも行えるようになると思います。
以上です。ありがとうございました。
○中山部会長 どうも御意見ありがとうございました。これは特に御質問ということではなく、御意見ということでどうもありがとうございました。
それでは、落合参考人お願いいたします。
○落合参考人 厚生労働省のほうから御説明と、あとは御発表の先生方の御説明を聞いて、非常に分かりやすい御説明だったと思いました。
私のほうは今回個人情報に関する観点についてコメントをするようにということで、臨時的に参加させていただいているものでございます。私のほうでは、二次利活用に関する検討会のほうにも参加をさせていただいていたこともございますので、そちらの議論も踏まえて少しコメントさせていただきたいと思っております。
1つが、やはりがん登録法の中で取り扱っているデータというのは個人情報の中でも極めて機微性が高い情報であるということは間違いがない一方で、この研究活動などを通じて、続く患者さんの予後をよくしたり、様々な形での公益性に資する利用が主に目的とされていると認識しております。
そういった中で、二次利活用の検討会の中でも、一般的に仮名加工情報を利用する場面、これはつまり本日議論されている中で言いますと、一度匿名加工情報をつくってしまうとそれ以上情報が連結し難いという部分について、もう少し加工の程度を押さえた情報を準備し、特に厚労省の所管DBなどを中心に、どう利用できるようにしていくかという議論を、先般議論させていただいていたことがございました。
その中で議論していたところを踏まえましても、特に利用の必要性が高いといいますか、公益性が高いことや、研究上の必要性が高いことがあることは非常に重要な点だと思います。そういう中で、利活用を進めながら、一方で個人情報自体の保護を図っていくことも重要と思っております。
特に今回、松前先生、西野先生、東先生、新谷先生などから御紹介いただいた内容は具体的な研究のニーズや、また公益性に関する意義を御説明いただいたと思っております。こういった情報の利用についてしっかり考えていくことは極めて大事だと思っております。
一方で、どういう形で情報を保護していくのかも大事なポイントになってくると思います。
ただ、一つございますのは、医療分野における二次利活用を特に着目した場合について申し上げますと、例えば個人情報保護法の3年見直しの議論がなされておりまして、個人情報保護委員会においても、その中間整理が出されております。そういった中で、必ずしも同意によるガバナンスのみが適切なのかは論点の一部に提起されております。その中で特に言及されているのは、医療分野における二次利活用に関する部分です。
こういった状況ですので、特にがん登録法の中で法令に書かれていてルールをしっかり定めた上で利活用されることについては、適切な公益性であったり、研究上のニーズなども踏まえて、前向きに考えていただくことが必要だと思っておりますし、それは理解され得るものだと思っております。
一方で、その情報の管理方法や、また情報を連結させることによって御本人に不利益が与えられないようにすることが重要です。例えば、直接働きかけないようにしていただくこともそうでしょうし、先ほど来御議論があったような何らかの場合に是正監督措置があるといった部分を整備していくことは、基本的に一つ同意に変わる方法と考えうるので、しっかり準備していくことが重要な方法ではないかと思います。
この点は、そういった議論をしている場合にはよく出てくる論点だと思います。単純になし崩し的なものはよくないと御説明いただいた先生もおられまして、そのとおりだなと思いますが、しっかりルールを整備して、同意とは別な方法で本人保護や情報の保護を図りつつ、利用できるように整備を進めていけると良いのではないか、と私のほうもお話を伺っていて感じたところでした。
ほぼ感想のような意見になってしまいまして恐縮ですが、私のほうからは以上です。
○中山部会長 ありがとうございました。
関連の状況について情報の御提供、どうもありがとうございました。
それでは、続きまして松田参考人お願いいたします。
○松田参考人 長くならないようにしたいのですけれども、意見というか、感想にも近いのですが、私は現状の解決方法としてあまり選択肢は多くないのではないかと思っています。
1つは、がん登録推進法の今の枠組みの中で何とかしようという話であれば、やはり利用者を拡大していく。病院だけではなくて、共同で何かやるときには登録をすることで利用者を拡大したりとか、あとは指定のNCDですとか、肺がん登録ですとか、そういったところには情報を共有できるようにしていって、かつ利用期間に関しても今は15年マックスでありますけれども、延長していくとか、手続的に解決していくという方法があって、それが一番楽かなというところではあるのですが、もう一つ、がん登録情報ではないということで外出しにするというか、定義づけてしまう方法も確かにあると思いまして、その加工をすることによってがん登録情報ではないから推進法の適用外になるんだという論理はありだとは思います。
そうする場合には、ただ数字にならないようにというふうにおっしゃられていましたけれども、そのとおりで、いただいた生存データだけではなくて、もともとの公表の部分に関して加工することでいろいろな人に使ってもらいたいだったりとか、あとは匿名化を自分の施設ですることによって、よりセキュリティーが厳しくないところで分析したりというニーズもあるので、そういったところにも応用できるように、そちら方向でいくのもありだと思います。
あとは、死亡者情報票というもの自体をがん登録からちょっと外出しにするような形にして、そこの部分についてはアメリカのナショナル・ディスインデックスがごとく、みんなが利用できるものなのだと持っていくのもありかなと思います。
多分、その3つくらいが解決方法かなというところで、今のところ加工することで法の外に出すということをしようとしているのかなと思いましたが、その際にはいろいろ配慮しなければいけない、気をつけなければいけないことがたくさんあるかとは思いました。
もう一つは、中島委員がおっしゃったような最初から壮大なデータベースが存在していれば、それをみんなが使うことができるという未来が来れば、データを提供し合うというふうに巨大なものがあって、そのくっついたものがみんなで使えるという時代が来るかもしれないので、そういった世界を見据えつつ、目の前のニーズを解決する必要があると思いました。
以上です。
○中山部会長 松田先生、どうもありがとうございました。今後の可能性についていろいろ整理していただいたかと思います。ありがとうございます。
それでは、大沢委員お願いいたします。
○大沢委員 東京共済病院の大沢です。よろしくお願いします。手短に感想になります。
最初に勉強し始めたときに本当に知識がなく、カルテ転記というのは一体どういう内容をカルテに転記するんだろうなと思っていましたが、今日委員の先生方の説明を聞いて、よく分かりました。死亡日や、生死区分などがカルテに入ることによってすごく正確な情報になってきますし、新規治療法の開発のスピードアップにもつながるという説明を聞いて、それこそ本当に患者さんの希望する情報がつくられていくことにつながるので、だったら本当に大事なことだなと思いました。
実際、病院で終末期に近くなって訪問診療に移行していった後に、訪問診療のクリニックの先生から、お亡くなりになりましたという連絡をいただくときもあれば、報告のないクリニックもあるし、御家族のほうから連絡をいただくときもあるけれども、ないこともあるので、どうなったのかなと思うままのことも実際多いので、いいデータになっていけばいいなと思いました。
すみません。感想です。ありがとうございます。
○中山部会長 ありがとうございます。でも、そういった理解がだんだん国民の間に広がっていくということがとても大事だなということを感じています。
○大沢委員 そうですね。全然分からなかったので、ありがとうございます。
○中山部会長 また、こういった機会があることはとても大事だと思います。どうもありがとうございました。
それでは、本当にいろいろな視点から貴重な御意見をいただきました。意見をまとめるのはなかなか難しいのですけれども、法の第20条の提供情報については情報の保護に十分に留意しながらも、今回得られた研究のニーズ、そして患者さんへのメリットが十分国民に伝わるという形が大前提だということだと思います。事務局から委員の皆様へ、運用見直しの具体的な案を示していただく方向で進めていきたいと思っております。そのようなことでよろしいでしょうか。
(異議なしの意思表示あり)
○中山部会長 どうもありがとうございます。
それでは、2つ目の議題、「全国がん登録情報の国外提供に係るルールの整備」に入ります。
事務局から、資料の説明をお願いいたします。
○石川専門官 事務局でございます。
資料6「全国がん登録情報の国外提供に係るルールの整備」を御説明いたします。
2ページを御覧ください。国外提供に係る現状・課題を記載しております。
まず現状として、全国がん登録情報については第17回の部会において、法17条に基づき、一定の要件を満たす場合に国外提供を可能とするとの現行の運用が定められました。これにより、CI5、IACRやIARCといった国際機関が主導する国際共同研究や、CONCORDといった国際共同研究へ参加するため、これらの研究機関等と委託契約を結んだ国立がん研究センターが提供依頼申出者となり、国外提供が行われてきました。
また、複数の都道府県より、CI5やCONCORDへの参加のために国外提供を行ったとの報告を受けております。
この現状を踏まえた課題として、法第17条に基づく国外提供について部会で議論の上、一定のルールを整理したものの、マニュアル等において明確化されていないこと、また都道府県がん情報の国外提供について統一的な運用が行われていないことがあります。
3ページを御覧ください。先ほどの課題を受けた対応案をお示ししております。
まず、全国がん登録情報については、法第17条第1項第2号に基づく提供を行うこととし、中間取りまとめを踏まえ、国外の利用者の要件等についてマニュアルに明記することで、提供及び利用のルールを明確化することを考えております。
他方、都道府県がん情報ですが、まずCI5やCONCORDのための国外提供については、法施行後の診断症例に係る情報は国において一括で対応することとし、全国がん登録情報と同様のルールの下で国外提供を行うことを考えております。
一方、CI5やCONCORD以外の研究のための国外提供については、安全管理措置等の観点から、全国がん登録情報のルールと同様に、第18条第1項第2号に該当する委託を受けた者などが外国政府、または日本が加盟している国際機関等の公的機関であって、かつ、委託等を行う都道府県の行政機関もしくは独立行政法人が提供依頼申出者となり、共同で責任を負う場合に国外提供を認めることとすることを考えております。
4ページ目以降につきましては、参考として、ただいま御説明した対応方針案の国、都道府県、それぞれの国外提供のイメージ図、中間取りまとめの該当箇所の抜粋に関する条文、そして最後のページにCI5やCONCORDへ全国がん登録情報を提供することの意義について記載しております。
事務局からは以上です。
○中山部会長 御説明ありがとうございました。
それでは、ただいまの事務局の説明について、委員の皆様から御意見、御質問をいただければと思います。
では、西野委員お願いいたします。
○西野委員 御説明いただき、ありがとうございました。
CONCORDあるいはCI5というのが、日本と外国のデータを比較することによってがん医療の質の向上にも寄与することがあると思いますので、マニュアル等にその方針、基準というものを明記した上で御議論いただければと考えております。
その上で3点、私のほうから意見とコメントということでお願いします。
1点目ですけれども、今後2016年以降のCI5、CONCORDについては「全国がん登録情報の提供を受けて利用を行うものとする」というのが3ページの2番目の項目で書かれているかと思います。そのうち、CONCORD studyについては、次回以降についても2015年以前の症例の収集が行われる可能性があると聞いております。そのときは、全国がん登録開始以前の地域がん登録事業での情報ということで、各県からの提供になるかと思いますけれども、その辺は2015年以前の情報と2016年以降のデータについて整合性が取れる形でデータの提供が行われるように国立がん研究センターとも確認をいただいてマニュアル等の整備をお願いしたいというのが1点目です。
2点目については、一番下の項目の内容について、従来体制については都道府県が国内の機関に委託をして、その国内の委託の機関が海外の例えば国際がん研究機関と共同で責任を持つ形で実際にデータの提供等を行っているかと思いますが、この文章を読む限りでは、都道府県と外国の機関が何か直接契約を結ぶというように読めなくもない。委託契約を結ぶという形に読めなくもない気がしましたので、その辺をもう少し分かりやすく記述いただけるのが望ましいかと考えたのが2点目です。
3点目については、今後マニュアル等で明記するということで検討が行われるかと思いますけれども、その際に我が国と国際的ながん対策に資するものというような研究に関する提供に当たっての条件といいますか、記載があると、都道府県等も該当する研究ということで対応して提供しやすくなるかと考えています。
私からは以上の3点、意見とコメントということでお話をしました。
以上です。
○中山部会長 どうもありがとうございました。
それでは、事務局のほうから今の西野委員の御指摘についていかがでしょうか。
○石川専門官 御指摘いただきましてありがとうございました。
いただいた3点は踏まえながら、今後マニュアルにどう書いていくかを検討していければと思っております。
○中山部会長 ありがとうございます。現時点では、適切にまた反映して対応していただければと思いますが、西野委員いかがでしょうか。
○西野委員 これまでの提供の体制とか事例を踏まえて、実際にマニュアル等でその辺のルール等の明確化をお願いしたいというところです。よろしくお願いいたします。
○中山部会長 どうもありがとうございました。
それでは、村本委員お願いいたします。
○村本委員 村本です。本当にありがとうございます。
御説明いただいた方向性自体には異論ありませんし、患者、国民への一層の成果還元を目的とすることを明記いただいた上で、国外提供のルールの整備を進めていただければと思いますが、前々回の8月のこの部会でも議題となりました都道府県におけるがん情報の利用提供にも関連して2つ申し上げたいと思います。
都道府県がん情報の国外提供に関してルールの策定は必要と考える一方で、これまでの都道府県の国外提供実績を見ても、特定の都道府県でのみ国外提供が行われていると推察いたします。そうなると、ルールの整理という観点とは少しずれてしまいますが、都道府県に関して国外提供のルールを決めたとしても、それだけで国外提供が進むとは限らなかったり、都道府県間の取組にばらつきが出たりするような気もします。
この点に関し、1つ目として各都道府県に対して国外提供を含めたがん登録情報の利活用が進むような国としての働きかけについて、現状と今後の考え方をいま一度お聞かせいただけないでしょうか。
また、2つ目は最初の議題で申し上げたところと関連するのですが、国外提供を行うとするならば、各都道府県の情報提供の審査においても機微な個人情報の取扱いについて厳格な安全管理措置が取られているかなど、なおさら患者、市民の参画、患者、市民が目を通すことが必要なようにも思います。
都道府県における国のがん登録部会的な組織は、各都道府県のがん診療連携協議会といった各医療機関で構成される組織体の中に位置づけられているのではと推測いたします。確かに、がん登録に関する議論は極めて専門性の高い内容であり、私自身も日頃はがん登録に接しない中、この部会に際して患者としての役割を何とか果たすことに努めており、患者、国民、市民にとっては決してハードルが低いものではありませんが、各都道府県のがん登録情報の活用を担当する会議体での患者、市民参画に関し、検討をいただきたいと思います。
私からは以上です。
○中山部会長 ありがとうございました。
それでは、事務局いかがでしょうか。お願いいたします。
○事務局 村本委員、ありがとうございます。
まず1点目の各都道府県での利活用の状況という観点ですけれども、我々の認識としては2015年以前のデータの整備という観点でいうと、各県で地域がん登録事業が始まった時期も異なるために、そういった提供実績というのが各県で異なることもあると認識しておるところです。
一方で、2016年以降の症例に関しては、現状では国の提供のルールに関してがん登録部会で審議したものの、各都道府県においてはどのように対応するのかということについては明確な取決めがなされていなかったことも、一方で都道府県での利活用に少し影響があるのではないかと我々としては考えております。
こういったルールの明確化について今回御提案させていただいたことを、各都道府県にしっかり周知をすることによって利活用を進めていければと思っております。
また、2点目に関しては、村本委員から昨年度のがん登録部会の中間取りまとめの際にもどのように周知広報していくかという点について御意見をいただいていると思います。先ほどと同じになってしまいますけれども、村本委員の御指摘に関して、我々としてもどのように対応していくのかということを今後の部会の中で検討、または御提案できればと思っております。
以上です。
○中山部会長 どうもありがとうございました。
それでは、続きまして落合参考人お願いいたします。
○落合参考人 ありがとうございます。
国外提供ルールについても御議論をいただいているということで、その内容というのがよく分かりました。
今回お示しになられているこの対応の案というところは、最終的には先ほどの議題の部分もそうであったとは思うのですが、がん登録法の法令による例外の根拠規定、個人情報保護法のほうから見ますと、例外規定を整備することによって必ずしも同意を得る形ではなく提供できるようにするという位置づけと理解しております。一応事務局にも御確認いただけるとありがたいと思いますが、ガイドライン自体を整備していくということも重要、個人情報保護法との関係ではがん登録法自体がその例外規定になるように整理をしっかりしていただく中で、国内の移転及び国外の移転も定めつつ、一方で先ほどの議論の際にも申し上げましたが、安全管理についてしっかり行っていくということになると思います。今回は共同での責任を公的部門と何らか負っていただけるような形であったり、そういった対策を整備することも含めて、準備が進められているということだと思います。一定のそういった安全対策につながるような措置をしっかり行っていただく中で、根拠規定も整理しながら進めていっていただければ良いのではないかと思いました。
以上でございます。
○中山部会長 どうもありがとうございました。これは御質問ということではなくて、御意見ということで了解いたしました。ありがとうございます。
それでは、どうもありがとうございました。非常に多くの御意見をいただきました。本日いただいた御意見を十分踏まえた上で、国外提供に係るルールについては事務局からの3ページ目の対応案をマニュアルに明記するなど、きちんとした方向で進めていただきたいと思います。そのような方向でよろしいでしょうか。
(異議なしの意思表示あり)
○中山部会長 どうもありがとうございました。
それでは、3つ目の議題の「全国がん登録データベースの状況について」、資料7について国立がん研究センターのがん対策研究所がん登録センターの松田参考人から御説明をお願いいたします。
○松田参考人 ありがとうございます。
本日は多分、前回3月に現在不具合が生じているということで、今は解消されていますけれども、がん登録システムについての状況の御説明を弊センターの井上からしたと思います。
まず初めに、この問題において都道府県をはじめ病院、様々な皆様方に御迷惑をおかけしていることを深くおわび申し上げます。
今回、初めてこのことについてお聞きになる方に少し「事象と原因」の部分についてお話ししたいと思うのですけれども、2023年、昨年の5、6月くらいに、これでも少し遅れていたのですが、2020年診断症例の確定の際に数値が少しおかしいということが発覚しまして、その段階で作業を止めてデータベースの中を見たところ、直前に行われていた全国がん登録データベースシステムのシステム公開において、システム公開をすると同時にICDのコードの新しいものに入れ替えるという際に作業の不備が生じて数値がおかしいのではないかということが分かりました。
その原因としましては、委託業者ときちんとした理解の共有、コミュニケーションがないままに作業を進めてしまったことですとか、あとはコード更新において本来であれば数年時間を取るような話だったのですが、様々な理由でその時間がきちんと取れず、また検証体制についても時間が取れないという言い訳にはなりますけれども、その中でやったことによってきちんと検証ができなかったということもあります。
それから、がん登録のそもそもの運用方針、先ほどから院内がん登録だ、全国がん登録だというような話がありますけれども、情報源もルールも統一であるはずのところがばらばらになっていたというようなこともありまして、国立がん研究センター内での意思決定のプロセスの不備もあったのではないかと考えております。
これにおいて、再発防止のためにシステム業者とのコミュニケーション不足ということを挙げましたけれども、きちんと会議をするという頻度を増やしまして、私も含めて管理責任者が常時会議に参加することといたしました。
また、これももともとやっておけという話であるとは思うのですけれども、きちんとアプリケーションを用いたプロジェクト管理を導入して、関係者内でどういった作業が今、行われているかということについて理解を共有して、進捗も共有するようにいたしました。
それから、全国がん登録システムを含むがん登録関連のシステム、例えばHos-CanRみたいな病院内で使っているシステムもありますけれども、その全体の仕様ですとか、運用ですとか、そういったところの合理化についても今後図っていきたいと思っております。
さらに、直近でも先ほどからほかのデータベースと連結するような案が出ておりますけれども、そういったことも踏まえて今後システム改修がある場合には十分な工程の機関を確保して、あとは外部有識者も入れた上で検証をしてリリースするというような体制にしております。
それから、先ほどの運用方針の決定のところに関わりますけれども、運用方針の決定についてきちんとその意思決定の方針というものを整理した上で、国立がん研究センター内にもこのがん登録部会のような諮問委員会が幾つかありますが、そこも整理をした上できちんとした構造化した体制をつくりました。
さらに、こういった作業ですね。実際の運用を主体的に担うがん職員というのも補充をして、来年の4月にはきちんとした体制で役割分担した上で作業が継続できるようにしております。
2枚目をお願いいたします。
その復旧の進捗なのですけれども、先ほど申し上げた初夏に問題が発覚してから11月に外部有識者による復旧のためのタスクフォースを構築して原因の究明をしました。それで、方針を決定した上で今年の3月に2020年集計を1年遅れで公表することができました。
その後なのですが、新たにコードを入れ替えて新しいものにするという方針を決定して、不備があったマスター等について更新作業を5月に開始をして、つい先日になりますけれども、8月に都道府県の通常作業というものが開始できるようになりました。
今後の作業ですが、来年の3月には2021年集計を1年遅れで公表予定です。この時点では、少し方針の決定ですとか分析のところに時間がかかりまして遅れを取り戻すことが今年中にはできないという状況になっておりますが、来年度になりますけれども、2025年度の早い段階で11月から再来年の1月にかけて、2022年と2023年の集計を次々と発表していくことによって、来年度の中で1年の遅れを取り戻してこれまでのペースに戻していきたい。
さらには、この後、できるだけ迅速にデータを公表していくという体制をつくっていきたいと思っております。
この2年分を一気にやるということに際して、赤の部分に小さい字で書いたのですけれども、病院への遡り調査ですとか、市町村への住所異動確認調査といったことを名寄せに関して、もしくは指導票で発覚したがん症例について行っているのですけれども、これを2年分同時に行うことによって1年の遅れのキャッチアップをしたいと思っているところです。
以上になります。
○中山部会長 御説明ありがとうございました。
それでは、委員の皆様からこの場で確認が必要な点などございましたら発言をお願いいたします。
特によろしいでしょうか。一応原因も分かって対応されてリカバリーしつつあるということで、それでは松田参考人におかれましてはがん登録の大本、根幹ですので本当に大変だとは思いますけれども、ぜひこの機会にもう一回体制を見直して引き続き御対応を進めていただければと思います。よろしくお願いいたします。
○松田参考人 分かりました。ありがとうございます。
○中山部会長 それでは、審議事項はおかげさまで終了いたしました。
最後に、事務局にお返しをしたいと思います。どうもありがとうございました。
○石川専門官 本日は様々な御意見、御議論をいただきましてありがとうございました。
次回のがん登録部会の詳細につきましては調整の上、御連絡をさせていただきますのでよろしくお願いいたします。
それでは、本日の会議は以上とさせていただきます。お忙しい中、ありがとうございました。
○中山部会長 どうもありがとうございました。お疲れさまでした。
照会先
健康・生活衛生局 がん・疾病対策課
代表03-5253-1111(内線 3825、3826)