第12回 日中韓少子高齢化セミナーについて

 2024年10月31日(木)から11月1日(金)にかけて、第12回日中韓少子高齢化セミナーを日本(東京)にて開催しました。

1 経緯

 高齢化対策に関する経験交流を目的として2010年から「日中韓高齢化セミナー」を開催してきました。2018年の第8回セミナーにおいて、内閣府参加のもと少子化対策も含めて交流を続けることに合意し、本年はこども家庭庁参加のもと「日中韓少子高齢化セミナー」として第12回を実施することとなりました。

2 これまでの実績

 日中韓3か国が持ち回りで開催し、第8回以降は少子高齢化対策に係るセミナーを行っています。テーマは開催毎に3か国間で協議して決定しています。

  1. 第9回2021年12月 オンライン開催「少子化の状況と対応」「介護の担い手の確保」
  2. 第10回2022年7月 オンライン開催「結婚・出産に関するイデオロギーの変化と少子化」「高齢者向けケアサービスへのスマート・デジタル技術の活用」
  3. 第11回2023年7月 韓国(ソウル)開催「少子化政策の評価と効果的なフィードバックシステム及び司令塔について」「高齢者の社会参画及び健康管理政策」

3 第12回日中韓少子高齢化セミナーの概要

(1)プログラム

  • 開会挨拶
  • 日本、中国、韓国代表による基調講演
  • セッション1「少未婚化と少子化対策」
  • セッション2「地域包括ケア(医療・介護の連携と高齢者の健康づくり)」
  • 閉会挨拶

(2)出席者

 日本側は、厚生労働省から吉田修大臣官房審議官(老健、障害保健福祉担当)ほか、こども家庭庁から中村英正長官官房長ほかが参加しました。中国側は、ジョウ・ウェイ中国人口開発研究センター副所長ほか、韓国側は、キム・サンヒ韓国保健福祉部人口政策調整局長ほかが参加しました。

(3)概要

■基調講演
 日本の中村英正こども家庭庁長官官房長による開会挨拶の後、3か国の代表による基調講演が行われました。
 日本の髙橋宏治こども家庭庁長官官房審議官(総合政策等担当)からは、少子化や結婚をめぐる現状や、「こども・子育て支援加速化プラン」などについて説明がありました。
 また、増加が予想される認知症高齢者を支えるため、団塊の世代が住み慣れた地域で安心して暮らし続けられるよう、医療・介護・予防・生活支援を一体化した「地域包括ケアシステム」の構築について説明がありました。
 中国のジョウ・ウェイ中国人口開発研究センター副所長からは、中国での出生人口の大幅な減少や総人口の20%を上回る急速な高齢化などの問題を紹介した上で、「乳幼児をして保育あり」「老をして介護あり」「病をして診療あり」という理念に基づき、政府による支援施策やこどもと高齢者にフレンドリーな地域コミュニティの構築などを行った成果について発表がありました。
 韓国のキム・サンヒ韓国保健福祉部人口政策調整局長からは、韓国の合計特殊出生率がOECD加盟国で最下位であることや、結婚・出産に対する価値観が変化している現状について紹介があった上で、今年度新たに発表された、2030年までに合計特殊出生率1.0を目指す少子化傾向反転対策についての発表がありました。

 

■セッション1「未婚化と少子化対策」
 日本は、天野馨南子ニッセイ基礎研究所人口動態シニアリサーチャーから、少子化の主な要因は初婚同士の結婚が減っていることであると説明があった上で、「共稼ぎ、共家事、共育児」「経済的に一生支えあえる2人の結婚」が実現できるための「雇用改革(経営者のマインドリセット)」が未婚化解消に対して統計的に最も効果があると発表がありました。
 中国は、リュウ・ドンメイ中国人口開発研究センター人口研究部研究員から、中国の保育サービスの現状(法整備・経費投入の多元化・乳幼児保育士の人材育成制度・保育サービスの全国的な統計調査等)に関する説明がありました。
 韓国は、イ・ガンホKAIST未来戦略大学院教授から、韓国の出生率・婚姻率の低下に関する現状及び原因(政策の失敗・国民の結婚と出産に関する意識の変化等)を説明した上で、人口戦略企画部の早期設置による人口政策の体系の確立やAI技術の活用による生産年齢人口減少へ対応の必要性などについて言及がありました。

 


■セッション2「地域包括ケア(医療・介護の連携と高齢者の健康づくり)」
 日本は、江口満厚生労働省老健局総務課長より、日本の高齢化の進展と医療と介護の複合ニーズを持つ高齢者の増加を背景に重度の要介護者になっても自分らしい暮らしが出来るように医療・住まい・生活支援等が包括的に確保される体制である地域包括ケアシステムの構築や住民主体の通いの場の推進などについて発表がありました。
 中国は、フ・ポンフェイ中国人口開発研究センターデータ情報ネットワーク部門シニアエンジニアより、中国における人口の高齢化のデータに基づき、「身体機能障害者」数の現状と今後の見込みについて説明がありました。また、国によるデジタル技術を運用したサービスの提供や全国への展開が見込まれている介護保険計画についても発表がありました。
 韓国は、ユ・エジョン韓国医療保険総合研究所 社会福祉学准研究員・博士より、今後、療養型病院で長期療養が必要となるハイリスク群の支援を目的に医療とケアの連携を強化する「医療・ケア統合支援事業」に関する説明がありました。更に、自治体の責任性強化や在宅医療・ケアサービスの拡充、関連インフラの再構築など、今後の事業推進にあたる課題についても言及がありました。