2024年9月2日 第3回労働政策審議会労働条件分科会電気事業及び石炭鉱業における争議行為の方法の規制に関する法律の在り方に関する部会 議事録

労働基準局労働関係法課

日時

令和6年9月2日(月) 14:00~16:00

場所

厚生労働省共用第8会議室(中央合同庁舎5号館19階)
(東京都千代田区霞が関1丁目2番2号)

出席者

公益代表委員
中窪部会長、戎野委員、原委員、水島委員
労働者代表委員
石橋委員、河野委員、冨髙委員、松元委員
使用者代表委員
井上委員、坂下委員、高垣委員、山口委員
参考人
全国電力関連産業労働組合総連合 片山事務局長
オブザーバー
筑紫電力基盤整備課長(経済産業省資源エネルギー庁)
事務局
岸本労働基準局長、尾田大臣官房審議官(労働条件政策、働き方改革担当)、五百籏頭労働関係法課長、八木労働関係法課長補佐

議題

  1. (1)電気事業の労使関係について
  2. (2)令和5年度事務局ヒアリングの結果報告について
  3. (3)諸外国における争議行為規制等について

議事

議事内容
○中窪部会長 定刻になりましたので、ただいまより「労働政策審議会労働条件分科会電気事業及び石炭鉱業における争議行為の方法の規制に関する法律の在り方に関する部会」の第3回の会議を開催いたします。
 委員の皆様におかれましては、大変御多忙の中、お集まりいただきまして、誠にありがとうございます。
 本日の部会につきましても会場からの御参加とオンラインでの御参加の双方で実施いたします。
 本日は、公益代表委員の藤村博之委員が御欠席と伺っております。
 それから、今回もオブザーバーとして、経済産業省資源エネルギー庁電気・ガス事業部の筑紫正宏電力基盤整備課長に御参加いただいております。
 また、本日の議事に関する参考人として、全国電力関連産業労働組合総連合の事務局長 片山修様に御出席いただいております。
 それでは、事務局より定足数等について御報告をお願いします。
○労働関係法課長補佐 事務局でございます。
 本日の出席委員は12名となっており、労働政策審議会令第9条では、委員全体の3分の2以上の出席または公労使各側委員の3分の1以上の出席が必要とされているところ、定足数は満たしておりますことを御報告申し上げます。
 本日のカメラ撮りは以上とさせていただきます。
 事務局からは以上でございます。
○中窪部会長 ありがとうございました。
 それでは、議事に入ります。本日の議題は「電気事業の労使関係について」「令和5年度事務局ヒアリングの結果報告について」「諸外国における争議行為規制等について」の3点となっております。
 最初の「電気事業の労使関係」につきましては、電気事業連合会様及び送配電網協議会様の状況について、山口委員よりお話をいただきます。それから、全国電力関連産業労働組合総連合様の状況について、片山参考人より御説明をいただきます。その後で、事務局より残りの2つの議題について御説明いただく予定です。
 質疑応答につきましては、最初の「電気事業の労使関係について」及び「令和5年度事務局ヒアリングの結果報告について」の2つの御説明が終わった後と、それから3つ目の「諸外国の争議行為規制等について」の後と、2回に分けて時間を取る予定にしております。
 それでは、まず電気事業連合会様及び送配電網協議会様の状況につきまして御説明をお願いいたします。
○山口委員 それでは、電気事業連合会の山口から、使用者の立場として電気事業の労使関係について御説明させていただきます。
 資料1を御参照いただきたいと思います。表紙記載のとおり、電気事業連合会及び送配電網協議会から一括して使用者側としての労使関係についての御説明をさせていただきます。
 目次、飛ばしていただきまして、右肩3番のスライドを御参照ください。こちらでは、国レベル、産業レベル、企業レベルということで、それぞれのレイヤーごとの対応関係、使用者側・労働者側ということで図式として表してございます。産業レベルにおきましては、本日参加いたしております電気事業連合会と送配電網協議会が全国電力総連様との対応関係にあるという状況になってございます。
 4番のスライドを御参照ください。ここからは電気事業連合会の概要ということで御紹介してございます。詳細は割愛いたしますが、目的、事業、代表者、会員企業、組織、沿革ということで記載してございます。記載のとおりでございます。
 5番のスライドを御覧ください。引き続き、電気事業連合会の概要ということでございますが、こちらでは会員企業の概要ということで、全10社の概要、資本金、従業員数、そして発電事業中心のお話になりますので、発電実績ということで各社の状況を記載してございます。
 なお、発電実績でございますが、東京電力ホールディングス、ゼロとなってございます。東京電力グループにつきましては、火力関係はJERAに移管し、また再生エネルギー関係はリニューアブルパワーという別会社のほうの計上となりますので、原子力、今、稼動してございませんので、発電実績、23年度はゼロという表記になっているというところを補足させていただきます。
 なお、中部電力につきましても、従来の火力事業についてはJERAに移管してございますので、こちらはJERAのほうに計上されているというところで御理解いただければと思います。
 6番のスライドにお進みください。こちらでは電事連の会員以外のスト規制法の対象となる発電事業者の発電実績ということで記載してございまして、先ほど申し上げたJERAの発電実績はこちらで計上してございます。
 また、中段、北海道電力ネットワークから九州電力送配電までございますけれども、こちらについては主に離島供給を送配電事業者が担っているというところから、発電実績、こちらに計上しているところでございます。
 おめくりいただきまして、7番のスライドからが送配電網協議会の概要というところでございまして、7番は送配電網協議会の目的、事業、代表者等々について記載してございます。こちらは記載のとおりでございます。
 8番のスライドにお進みいただきたいと思います。こちらは送配電網協議会の会員企業の概要ということでございまして、諸元としては資本金、従業員数に加えまして、地域エリア独占という形態になりますので、供給地域とその面積ということで表記させていただきました。
 なお、沖縄電力でございますが、こちらについては送配電会社を別会社に分離してございません。対象外ということでございますので、こちら記載の資本金及び従業員数につきましては、先ほど御紹介しました電気事業連合会会員のところでお示しした数字と同じものを再掲してございます。補足でございます。
 9番のスライドにお進みください。こちらは私どものカウンターパートでございます全国電力総連様の概要でございますが、こちらについては、この後、総連様から御説明がございますので、内容は割愛させていただきます。
 10番のスライドにお進みください。ここからは産業レベルにおける労使関係ということで、主に私ども電気事業連合会、送配電網協議会と全国電力総連様との関係性といったところの御説明になります。
 まず、10番のスライドでは、産業レベルでは大きな会議体を2つ設けて労使協議を行っておりまして、そのうちの電気事業労使会議について概要を記載してございます。沿革記載のとおり、この会議は昭和52年7月のスト規制法調査会の提言に基づきまして、昭和52年から開催してございます。当初、年2回、途中から年1回開催ということで、これが必ず11月頃に例年開催しているというところでございまして、今年も11月14日開催予定になってございます。
 主な出席者、記載のとおり、各電力会社のトップ・社長と、労働組合側の各電力労組の委員長さん、それぞれ企業レベルのトップが参画し会議を行っているところでございまして、近年の主な意見交換のテーマとしては、安定供給や燃料費高騰の関係、あるいは人材確保や労働環境整備の関係。これは例えば安全衛生といった関係がございますが、ここでは個社、各企業レベルでの労使協議、例えば賃金といったお話はしないという取決めの中で、産業レベルでの意見交換を行ってございます。
 おめくりいただきまして、11番のスライドになりまして、こちらがもう一つの大きな会議体、電力中央労使会でございます。こちらは沿革記載のとおり、昭和43年以降、開催してございまして、年に2回、上期・下期で開催しているところでございます。直近では、この7月25日に第109回ということで開催し、次回、来年1月末頃になりますが、第110回を予定してございます。
 ここの主な出席者は、先ほどの電気事業労使会議とは異なりまして、電気事業連合会の役員及び各部長、また送配協の関係部長というところ。そして、組合側は電力総連の三役以下ということで、ここでは企業レベルの参加者ではなく、産業レベルの参加者で会議体を持っているところでございます。
 「5.3 その他の取組」として、大きな会議体とは別に、安全衛生の関係、あるいは春季労使交渉、春闘の際の申入れ対応を産業レベルでカウンターパートとして行う。また、政策に関する情報連携といったことを逐次行っているという状況でございます。
 12スライドを御覧ください。ここからは企業レベルでの労使関係というところでございまして、各電力会社における労使関係についても、組織のレイヤーごとに協議を行い、全社に関わるものは本店・本部間での協議から、次第に事業所・業務機関のほうに交渉が下りていくといった形でございます。
 13スライド以降は、各電力会社・企業レベルでの労使関係のうち、協議の方法別に記載してございます。内容、細かくなりますので、ざっと御紹介いたしますが、1つは「6.2 団体交渉」というところ。ここでは具体的事例記載のとおり、労働協約の改定とか、賃金、給与・処遇制度、諸手当といったところを団体交渉で協議を行っています。
 「6.3 労使協議」についても、具体的事例記載のとおり、経営方針や決算、要員の関係、システム関係、あるいは業務運営体制の見直しといったところの協議を行うという内容になってございます。
 14スライド、続きでございまして、「6.4 労使懇談会」については、各社によって異なりますが、年1回ないし2回程度、会社側は社長をトップに役員クラス、また組合側も委員長さんをトップとして、役員クラス、局長クラスが参画し、中期経営方針とか経営に関わる大きな議題の意見交換を交わすといった会議体でございます。
 「6.5 労働協約の締結状況」ということで記載してございますが、会員企業各社とも、各電力の労働組合と労働協約を締結し、有効期間については、おおむね2年というところで更新しているところでございます。締結事項の区分については、記載のとおり、人事、服務、給与、安全衛生等々というところで、幅広く労使で協約を結んでいるという状況でございます。
 その他の取組として、労働時間とか、あるいは記載はございませんが、安全関係とか、特に労使で重要というものについては、特別な委員会を設置しまして密に連携・協議を行っているところでございます。
 15スライドにお進みください。電力システム改革による変化というところで、主に送配電部門の法的分離による影響について、ここでは記載してございまして、御承知のとおり、2020年の4月までに、沖縄電力以外の旧一般電気事業者については、送配電会社を別会社として分離いたしました。
 一方で、労働組合は引き続き1つの組合ということで体制を維持してございますので、下の図で記載しましたとおり、発電・小売会社、送配電会社。会社側は2つの会社がございますけれども、個社ごとの案件については、1つの組合と労使協議をそれぞれ行う。これは黄色の矢印で表記した部分でございます。
 一方で、労働協約のベースとなる部分、これは例えば給与あるいは福利厚生、処遇、手当といったところについては、発電・小売会社と送配電会社は同一の内容を維持しているところでございますので、こういったことに関わる労使協議は全社的な案件として一括して対応している。この図で言うところの緑のラインで御確認いただければと思います。
 最後の16スライドを御覧ください。争議実績ということで、大規模なスト行為がありました最後となるのが昭和49年のストかと思いますけれども、これ以降はそれぞれ記載の3つの労働組合においてスト行為があったというところですが、ここに記載の昭和57年を最後にスト実績はないという状況でございます。
 私どもからの御説明は以上でございます。
○中窪部会長 ありがとうございました。
 続いて、全国電力関連産業労働組合総連合様の状況について御説明をお願いいたします。
○片山参考人 全国電力関連産業労働組合総連合(電力総連)事務局長 片山でございます。どうぞよろしくお願いいたします。
 資料に沿って説明させていただきます。1スライド目の目次は省略させていただきます。
 2スライド目、電力総連の概要からになりますけれども、構成総連は地域別に12あります。それから、部会組織と言いまして、業種別も含めて記載の内容となります。そして、部会組織のひとつとして、電力部会があります。
 下の※にもありますとおり、送配電部門の法的分離による分社化以降におきましても、この電力部会の加盟組合は単一の労働組合を維持している状況でございます。
 次、3スライド目でございます。電力総連の過去の結成の歴史です。こちらの詳細はお読み取りをいただきたいと思いますが、平成8年(1996年)に、最終的な電力総連と全電力の統一大会をしまして、現行の体制となっています。
 続いて、4スライド目、「3.産業レベルにおける労使関係」でございます。先ほども使用者側から説明がありましたとおり、電力中央労使会、電気事業労使会議という2つの会議体を持ちまして労使でのコミュニケーションを図っているところでございます。説明は重複しますので、割愛させていただきたいと思います。
 「3-3 その他の取り組み」でございますけれども、安全衛生に関する要請や、電力関連産業の政策に関する情報連携等も図っているところでございます。
 5スライド目は、「4.各加盟組合における労使関係」でございまして、こちらも先ほどの使用者側の説明と重複しますが、それぞれのカウンターパートにおきまして、会社側、それから労働組合側と、それぞれのセクションで労使関係を持っています。
 6スライド目を御参照ください。引き続き、「4.各加盟組合における労使関係」でございます。まず、団体交渉でございますけれども、交渉事項につきましては記載の内容となってございまして、労働条件が主となるところでございます。具体的事例についても記載のとおりでございます。ちなみに、A労働組合における令和5年度の交渉実績は37件となっています。
 次の7スライド目を御覧いただきたいと思います。労使協議でございますけれども、付議事項としましては、業務運営の企画改善に関する事項、それから、その他記載する事項でございまして、具体的な事例としましては、経営計画とか決算、採用計画、組織・業務運営体制の見直し等の中身が中心となってございます。参考でございますけれども、B労働組合における令和5年度の協議実績は231件という状況となってございます。
 次に、8スライド目となります。労働協約の締結状況でございます。法的分離以降、労働協約につきましては、各加盟組合が分社化後の個々の会社と締結しているところでございます。有効期間は2年としている加盟組合が多い状況です。
 参考として、C労働組合の労働協約の抜粋を掲載してございますけれども、加盟組織の労働協約にはおおむねこういった記載が一番最初の条文に載っているところでございまして、具体的には電気事業の公益性や国民生活の安定に寄与するというような文言について書かれているのが特徴的な部分となっております。
 その他の取組としまして、各労使の共通の重要事項については、労使委員会等の場を設置し、適宜意見交換を図ってございまして、例えば労働時間の問題とか休暇取得の問題等が、そこで意見交換がされています。
 次に、9スライド目、「5.春季生活闘争の流れ」でございます。要求案の決定から妥結に至る流れでございます。まず1つ目として、要求案決定から要求まで、職場オルグ、職場説明会を開催し、機関手続を行います。次に、労組法に基づくスト権の確立について組合員の直接無記名投票を行います。そして、要求から妥結まで約1か月にわたり交渉を行っております。ヤマ場の前に労調法に基づくスト予告の実施を図っているところでございます。
 なお、2024春季生活闘争におけるスト賛否投票結果につきましては、電力部会全体で賛成率が95.1%という状況となっております。記載にはございませんが、当然、スト投票をする前段においては、このスト投票の目的等について組合員にしっかりと説明しています。
 10スライド目は、春季生活闘争時におけるスト権確立の状況等についてでございます。春季生活闘争においては、基本的には労働組合法並びに労働関係調整法、労調法に基づいてスト権の確立を行っておりますけれども、社会的な影響や職場実態などの取り巻く情勢を見極めた上で、このスト権の確立を適宜判断している実態にございます。
 至近の春季生活闘争における特筆すべき状況について、この場で共有させていただきたいと思います。
 2022春季生活闘争におきましては、福島県沖地震が発生しましたので、災害復旧を優先すべく、労使における相互理解の下で、東北電力労働組合は交渉を一時中断するといった判断をした実績がございます。
 それから、2024春季生活闘争、今回でございますけれども、能登半島地震の発生に伴い、災害復旧を最優先するために、北陸電力労働組合は、労働関係調整法に基づく公益事業のスト予告を実施せず、スト権は確立しませんでした。
 次に、11スライド目は、至近のストライキの実績でございます。使用者側の報告にもあるとおり、昭和57年が最後という状況となってございまして、記載の内容での実績があるということでございます。
 次に、12スライド目を御覧いただきたいと思います。争議行為のルールでございます。スト規制法の対象となっている全ての労働組合で、争議行為に関して労働協約や覚書等で定めている状況でございます。
 ここはC労働組合の労働協約を一例として挙げておりますが、表現の若干の差異はあるものの、平和主義、事前通知、争議不参加についての記載、それに類する記載が他組合の労働協約にもあります。平和主義においては、双方誠意を尽くして、あらゆる平和的な手段により、その解決に努めるというニュアンスが記載されております。また、事前通知についても記載の内容等が記載されているという状況でございます。
 13スライド目を御参照ください。「7.電力の安定供給に対する取り組み」でございまして、近年の電力総連の大会議案書、運動方針、あるいは電力部会に所属する労働組合の定時大会議案書に記載されている活動方針等を少し抜粋して掲載させていただきました。いずれも使命感とか責任感は電力システム改革以降も不変であるということを、この一文としてお示しさせていただきたいと思っております。
 14スライド目、最後となります。電力の労使は、いかなる環境にあっても、国民の生命と暮らしを支える電力の安定供給や自然災害時の迅速な復旧など日夜懸命に取り組んでおります。
 また、電力の労使におきましては、対等の立場に立ち、健全な労使関係を築いている状況にございます。
 電力の関係労使の労働協約では、この争議行為において電気の供給に支障を生じさせない措置を講じております。
 こうした状況に鑑みても、労働関係調整法の公益事業の規制に服することで十分であり、このスト規制法は速やかに廃止をし、電力労働者の労働基本権を回復していくべきであると考えているところでございます。
 最後、15スライド目以降は、能登半島地震における復旧の状況につきまして、各地域における応援の取組等について写真でまとめさせていただきましたので、後ほど御覧いただきたいと思います。
 以上で説明を終了させていただきます。御清聴ありがとうございました。
○中窪部会長 どうもありがとうございました。
 続きまして、「令和5年度事務局ヒアリングの結果報告について」、事務局より御説明をお願いいたします。
○労働関係法課長 労働関係法課長の五百籏頭でございます。
 それでは、資料3に基づきまして、令和5年度に事務局で実施いたしましたヒアリングについて御報告させていただきます。
 お手元の資料をおめくりいただきまして、2ページ目を御覧ください。このヒアリングは、平成27年度の部会から、この10年間でどのような変化があったかなどについて実態把握を行うために、事務局が実施したものでございます。ヒアリングは4社の労使の皆様に御協力いただいておりまして、主に平成27年の部会報告書で言及があった項目4点、資料に書いておりますが、基本事項、業務内容の自動化・高度化の状況、電力の安定供給確保に向けた取組、労使関係、この辺りを中心に行っております。
 おめくりいただきまして、東北電力株式会社原町火力発電所についてです。こちらは東北電力内で最大級の出力を誇る石炭火力発電所です。
 次のページを御覧ください。
 業務の自動化・高度化については、発電・送配電ともに、東日本大震災の頃と比べまして設備の自動化が進展しておりまして、現場作業立会いやミーティングのオンライン化等によって効率化が推進されていました。また、当直課長に当直業務経験者を配置することで、いざというときに代わりに現場に出ることも可能な体制を構築していると伺いました。
 電力の安定供給確保については、再生可能エネルギーの拡大で業務が複雑化する中、脱炭素政策の推進は石炭火力として将来的な不安があるものの、安定供給に対する使命感は変わっておらず、大規模災害の発生時には、早期復旧に向けて労使一致して対応されているとお伺いいたしました。
 おめくりいただきまして、次の5ページでございます。こちらは労使関係についてです。労働協約では、争議行為を行う場合、日時・場所・争議の方法を事前に通知するよう規定しており、紛争の早期解決のために組合員が争議を行う場合には、労使で協議の上、争議を行う際に争議行為に参加しない労働者の職種や人員数を決定することとされていました。また、電力システム改革以降も労使関係に変化はなく、労使間できちんとコミュニケーションを取っておられると伺っております。
 次に、6ページ、関西電力株式会社美浜発電所についてでございます。現在稼動しているのは3号機のみということです。原子力発電所の体制は、保安規定を作成し、原子力規制庁の認可を受ける必要があり、それに沿った体制で業務が行われております。
 おめくりいただきまして、次のページに自動化・高度化の状況を記載しております。機械の更新、技術の進歩で自動化された部分もありますが、完全自動化できるわけではないとのことで、特に原子力発電所には安全に高い信頼性を持った設備でなければ導入できないという面もあり、AI化などへの対応はまだ先になる見通しと伺いました。
 また、当直課長は、運転責任者の資格取得によって当直課長業務に従事可能になるため、発電室の当直課長以外の特別管理職は、当直主任以下の業務を代替することはできず、代替は難しい旨、伺っております。
 次、8ページを御覧ください。原子力は、いわゆるベースロード電源であり、電力需給が逼迫している中、電力供給に支障を生じさせないという高い緊張感を持ってやっておられまして、忙しい中での安全確保、安定供給のバランスを考えて電力供給を行うため、負担増・緊張感については懸念をなさっているとのことでした。
 また、発電が止まったときの影響が大きいことから、トラブルを未然に防ぎ、小さなトラブルは早めに対処することが必要となり、労働者が近くにいるといった現場の体制が確保されていなければ難しいというお話も伺っております。
 大規模災害時も、地震であれば、震度によって誰がどの事業場に出社するか決めて、体制を取っておられると伺いました。
 次に、9ページの労使関係についてです。労働協約上は、争議不参加者を、守衛、運転手、タイピストなど、早期解決のために必要な特定の従業員としていますが、各所の認識を確認し、争議不参加者は、電気の正常な供給に障害を生じさせるおそれのある者ということで、労使確認済みと伺っております。また、労使協議を綿密にやっておられ、近年は争議行為に及ぶことなく、労使関係は安定していると伺っております。
 次に、11ページを御覧ください。こちらは一般送配電事業者の東京電力パワーグリッド株式会社でございます。こちらでは、周波数を常に一定に保つ役割を担う中央給電指令所にお伺いさせていただきました。
 12ページを御覧ください。地方給電指令所や系統給電指令所を地域で大括りにすることで、交替勤務従事者自体は減少傾向にあり、配電業務の省力化、ドローンやAIの活用などを進めておられますが、需給自動制御システムの出力調整やシステム異常などの非常時対応では、自動化できていない部分も残っておられるとのことです。
 中央給電指令所当直長や系統給電指令所当直長には、一定以上の知識を有する者や実際の勤務経験がある方を配置しておられました。
 また、コロナ禍では、BCPとして経験者を戻して対応することも考慮されたということですが、業務運営やシステムは頻繁に更新されていることもあり、1~2か月は学び直す必要がある状況だと伺っております。
 次に、13ページから14ページにかけてでございます。
 まず、1つ目として、再生可能エネルギーが増加したことで、保全の面でも課題があること。
 2つ目として、電力システム改革後、公益機関へ提供する資料やデータを用意する手間は増えたものの、もともとの業務としてはそれほど変わっていないこと。
 3つ目として、電力システム改革により電力市場が増えたことで、対応に多くの人や時間がかかっていること。
 4つ目として、レベニューキャップ制度の下での資材高騰の影響など、電力システム改革の影響がありつつも、労使関係は変わらず安定供給に努められていると伺っております。
 次に、15ページです。労働協約では、紛議が生じたら、誠意をもって交渉するとともに、労働委員会のあっせん・調停・仲裁といった平和的手段を尽くして積極的に解決に努めること。組合が争議行為を行おうとする場合、または行っている最中でも、紛争解決促進のために特定の従業員が働くことを会社が申し出た場合は、組合は、その職種・人員について誠意をもって協議に応じることと定めてあります。
 また、労使コミュニケーションが確立されており、20年以上、争議行為は行われていない旨を伺っております。
 最後に、九州電力送配電株式会社です。概要は16ページのとおりで、送配電設備の建設・運用・管理、離島供給などを担っておられます。
 17ページを御覧ください。変電所業務でのカメラの活用やロボットによる遠隔対応のほか、ドローンやAIなどの新技術を活用した設備保全業務の高度化に取り組み始めているものの、巡視などについては人による最終的な判断が必要であると伺いました。また、送配電自動制御システムにより、停電事故発生時の事故区間特定までは自動で実施しているものの、柱の上での停電復旧作業など、業務の性質上、機械化できない業務もあると伺っています。
 加えて、当直業務については、業務処理方法やシステム使用方法などが都度変わっており、直近での業務経験が少ない、または長期間従事していない従業員による代替は困難とのことでした。
 次に、18ページです。災害時は、他事業場への応援業務も含めて、労使連携して対応しており、全社的に対応を行っていると伺いました。
 電力システム改革や再生可能エネルギー導入により、新たな業務運営対応やシステム構築が必要となり、対応に時間を要したり、トラブル対応などが発生したりするものの、徐々に収束していると伺っています。
 業務量増加に当たっては、事前に組合に情報共有するなど適切に対応し、各部門の事業計画などに基づき、十分なコミュニケーションを取りながら準備や実務の業務を行っているため、ストライキにつながるような影響はないと思っていると伺いました。
 次に、19ページ及び20ページでございます。
 労使関係は安定しており、対等かつ良好な関係を構築しているとのことです。
 労働協約では、団体交渉がまとまらない場合でも、双方誠意をもって交渉に努め、平和手段で解決に当たること。守衛等の労使で協議して定めた従業員は争議に参加させないことを取り決めており、争議不参加者について、現状、ストライキをしていないので、細かい部分は実際に行う段階で労使協議することになると伺っております。
 また、分社化で事業間の関係が希薄化しているが、労働組合としては、一定の交渉力をもって、1つの大きな固まりでやっていきたいと考えていること。電気の安定供給に障害を生じるような考えは持っていないし、電気の安定供給に障害を生じさせるようなストライキは、電産スト以来、一度も起こっていないということを伺いました。
 ヒアリングの結果報告は以上となります。最後になりましたが、御協力をいただきました各社労使の皆様に、この場を借りてお礼を申し上げます。ありがとうございました。
○中窪部会長 ありがとうございました。
 それでは、ただいまの3つの御説明につきまして御意見、御質問がございましたらお願いいたします。オンライン参加の委員におかれましては、御発言の希望がある場合にはチャットで発言希望と書いてお知らせください。
 では、戎野委員、お願いします。
○戎野委員 御丁寧な御説明ありがとうございました。労使双方から昨今の労使関係について、また事務局のほうから実際のヒアリング結果ということで、体系的に近年の状況が分かったのではないかと思っております。
 その中で、もう少し労使協議なり、労使懇談会なりのコミュニケーションの部分についてお伺いしたいのですけれども、昨今、天災も非常に多く、災害の規模が想定を超えるようなことがよくある中で、安定的に電力を供給するという事業がこれまで以上に大変な部分もあるのではないかと推察するところです。
 そういった中で、どのように尽力されているのか。労使コミュニケーションが非常に大きな役割を果たしているのではないかと思うのですけれども、産業レベルあるいは個社レベルの労使協議の中で、昨今、どういった内容が特に重視されて議論が活発化しているのでしょうか。近年の主なテーマ、いろいろピックアップしていただいていますけれども、その中でも特に今、大きな課題になっている、あるいは今後大きな課題になるだろうということで、労使で取り組まれているようなところを、少し生々しくお話しいただけたらなというのが1点です。
 それから、もう1点目は、組合側の資料に昨今の争議実績などが挙がっています。B労働組合とかあるのですけれども、この実績というのは、近年の状況から見たときに多いのか少ないのか。全体的な中での位置づけを御説明していただけたらと思います。
 以上です。
○中窪部会長 山口委員、お願いいたします。
○山口委員 御質問ありがとうございます。
 1点目、産業レベルでどういったテーマで協議、課題認識をしながら意見交換等、行っているかということでございますが、私どもの説明資料でいきますと、10スライドとか11スライドに、大きな会議体の中でどういうテーマで意見交換したかというところを記載してございます。例えば、10スライドであれば、近年の主な意見交換テーマとして安定供給というところ。これが労使共通の最大のテーマということになります。そういう意味で、関連として、近年であれば、ロシアのウクライナ侵攻に伴っての燃料費高騰の問題にどう対応するのか。あるいは、経営側としては、国に対してどういう働きかけ、確認をしていくのかといったところが労使協議の意見交換のテーマに上がってございました。
 また、ちょうど今、電力システム改革の検証とか、あるいは、この後のエネルギー政策の背骨となるようなエネルギー基本計画の策定などが進んでございますので、こういった政府における今後のエネルギー政策、電力政策に関しての動向をしっかりと労使で共有し、これに対して使用者側、経営側がどういう対応をしていくかといったところは、組合側の関心事項でもあろうかと思いますので、こういったところを議論する。この辺りが生々しいところかなというところは思ってございます。
 加えて、災害の激甚化といったところがございまして、本日、電力総連さんの資料にもございましたように、直近では能登半島の地震がございました。こういった災害対応は、まさにオンタイムで意見交換、情報連携するというところがございますので、産業レベルにおきましても、先週末ありました台風10号の対応状況といったところは、電気事業連合会で把握した内容を逐次、電力総連さんに土日であってもメール等で連携するといった形で、災害に関してはタイムリーな情報連携、迅速な情報連携に努めているところでございます。
 私からは以上でございます。
○中窪部会長 では、片山参考人、お願いいたします。
○片山参考人 御質問ありがとうございます。
 まず、1つ目のコミュニケーションの関係につきましては、電力総連と電事連との関係等について使用者側からも御説明があったので、私のほうからは「生々しい」というお話もありましたけれども、いろいろな個社の状況について、代表的なものも交えて紹介させていただきたいと思います。
 まず、1つ目は、どの産業にもありますけれども、職場の負担感、効率化と要員規模というものについて、労使でコミュニケーションをはかっています。また、電気事業においては、ほかのインフラ関係もそうかと思いますけれども、少子化の影響もある中で、新しい人材の採用が難しい実態があります。そうした中で、自分たちの技術をどのように維持・継承していったらいいのかについて議論しているところです。職場のまさに技術を持って仕事をしている現有の人たちが、これから10年、20年、どのように技術を維持・継承させていくことができるかといった議論を会社側と交わしているところでございます。
 そういった意味では、人材確保のほか、自分たちの働き方の中で、災害時には一生懸命に対応をはかるため時間外労働が増えることもありますが、平常時の長時間労働の是正や、あるいは休暇取得といった議論がコミュニケーションの中で主立った議論となっています。
 それから、協議の数については、例えば、新しい仕事が入った場合などに協議数の増減があります。あるいは近年で言いますと、コロナ禍でリモートワークの導入など業務運営体制を大きく変えざるを得なかったときに協議数が必然的に多くなるという状況もございます。ただ、長い目で見ますと、おおむね協議件数は平均化しており、年々の課題はある程度決まっているところもございます。
○中窪部会長 ありがとうございました。
 よろしいでしょうか。
○戎野委員 ありがとうございます。
○中窪部会長 それでは、ほかに御質問、御意見等ございますでしょうか。
 では、冨髙委員、お願いします。
○冨髙委員 御説明ありがとうございました。
 本日、御説明を伺いまして、電気事業ではナショナルセンターレベル、産業レベル、企業レベルといったそれぞれの階層で、労使協議や意見交換の枠組みが整理、構築されているということを実感しました。こうした枠組みというのは、労使双方が努力を積み重ねてきて、長い年月をかけて安定・成熟してきて今日の労使関係を築いてきたことの結果であろうと、我々としては受け止めているところです。
 その上で、電事連様と送配電網協議会様に質問させていただきたいと思うのですけれども、現在の電気事業における労使関係について、どのような認識に立っていらっしゃるのか。今までの説明の中でも触れていただいたかと思いますけれども、具体的には、スト規制法が制定されたときは、労使対立が先鋭化していた時代背景がありましたが、当時から相当程度、先ほども申し上げたように労使双方が努力を積み重ねて変化してきているとお見受けしております。そうした中、スト規制法制定当初からどのような変化があって、現在、どのような労使関係を構築されてきていると受け止められているかという、御認識をお聞かせいただければと思います。
 また、スライド15で、電力システム改革による変化について説明いただき、その中で法的分離以降によって労使協議の枠組みに一定の変化があったということを記載されております。この労使協議の枠組みの一定の変化によって労使関係の受け止めについて何か変化があったかといったところについても、もしあればお聞かせいただければと思います。お願いします。
○中窪部会長 では、山口委員、お願いします。
○山口委員 冨髙委員、御質問ありがとうございます。
 まず、御質問の中で、使用者側として、これまでの経緯も含めて、現状の労使関係をどう評価しているかという御質問かと思います。御承知のとおり、スト規制法の発端となりました電産のストがあったわけでございますが、それ以降、労働組合側は、ある意味労働組合としての反省に立って、電産という形の労働組合ではなく、これとは違った平和的な労使関係を志向した中で、今日御説明にもあったとおり、現状の電力総連という大きな枠組みの中で、各企業別の労使協議を中心とした労使関係を築いてきたと。
 そこに加えて、電事連、また送配電網協議会、そして全国電力総連という産業レベルでも密な連携をする中で、まさにおっしゃったように長年の先人の積み上げによって、今の大変良好な労使関係を築いてきたということで、この辺りは使用者側としても全く同じ認識でございます。
 それから、もう一つの御質問のシステム改革、これは送配電会社が分離されたというところでございますが、本日も御説明したとおり、発電・小売会社、送配電会社の個々の事案については、会社としては、それぞれの会社が一体となった労働組合と個別に協議するわけでございますけれども、基本的なベースとなる労働条件については、共通の労働協約を組合さんと結んだ中での協議ということでございますので、全体としては、このシステム改革、送配電部門の法的分離が労使関係、労使協議に少なくとも大きな悪影響を及ぼしたというふうには認識してございません。
 私からは以上でございます。
○高垣委員 送配電網協議会の高垣でございます。
 今、電事連様からお話ありましたとおり、我々、分社化によりまして送配電事業が分かれたわけでございますけれども、電力の安定供給という使命は変わっていないと考えてございます。これまで築かせていただきました良好な労使関係については、業務内容等が変化していくかもしれませんけれども、継続して良好な関係、コミュニケーションをさせていただきたいと考えてございます。
 以上でございます。
○中窪部会長 山口委員、高垣委員、どうもありがとうございました。
 よろしいですか。
 では、坂下委員、お願いします。
○坂下委員 ありがとうございます。経団連の坂下でございます。
 資料の御説明ありがとうございました。大変勉強になりました。
 今、議論されていたとおり、労使関係について、この法律が施行されたときと現在では状況が大きく変わっており、労使の皆様の努力により安定した労使関係を保たれていることを改めて確認させていただきました。
 1点だけコメントをさせていただきたいと思います。今回、事前に各社にヒアリングいただき、労使関係の状況に加えて、業務内容の自動化や高度化、これらにより管理職の方が業務を代替できるかどうかをお聞きいただいておりました。平成27年の議論では、労使で認識が少し違っていた部分もあるようですが、当時の状況は、自動化・高度化が全て行き届いているわけではないとか、代替が難しいという御認識もあったことが、前回の報告書で確認できています。
 今回のヒアリング内容を拝見し、全ての企業に当てはまるものではないと思いますが、高度化や自動化については、限界があるのだと改めて確認いたしました。また、管理職の方が業務を代替できるかどうかについても、検討の余地があると理解いたしました。
 大変貴重な資料を頂いたと思っております。ヒアリングに御協力いただいた労使の皆様に感謝申し上げたいと思います。どうもありがとうございました。
○中窪部会長 ありがとうございました。特に御質問ではなくて、御意見、御感想ということで承りました。
 それでは、オンラインで御参加の原委員、よろしくお願いいたします。
○原委員 御説明ありがとうございました。
 御報告内容から、現在、労使関係は大変うまく行っていると理解いたしました。
 私から2点ほどお尋ねいたします。
 1点目は、既にさきのご回答と内容がダブるものでございますけれども、電力総連様の資料6ページ、7ページで、それぞれ令和5年の争議実績件数をお示しいただいておりますけれども、お聞きしたいところは、実績件数はイコール回数というふうに理解してよいのかどうか。それから、令和5年、特に協議実績については231件と、件数が多いように感じたのですが、例年はどのような実績か、内容についてもお教えいただければと思いました。
 それから、2点目は、実際に現場で働いている方々の従業員満足度についてです。現在、労使ともに電力の安全・安定供給と事業目的のために心を1つにして、使命感をもって進んでいるということは、お二方の御説明から大変よく分かりましたが、実際に従業員の皆さんは御自身の環境をどう感じていらっしゃるのでしょうか。一般的に商品やサービスなどに対する顧客満足度は、よく話題にされますけれども、電気事業に携わっている皆さんの従業員満足度について、何か把握していらっしゃることがあればお聞かせいただきたいと思います。よろしくお願いいたします。
 以上です。
○中窪部会長 すみません、第1点目は資料の何ページになりますでしょうか。
○原委員 7ページでございます。
○中窪部会長 231件というのがちょっと多いのではないかという。
○原委員 多いように感じるということです。内容は分かりません。申し訳ありません。
○中窪部会長 ありがとうございました。
 お願いいたします。
○片山参考人 電力総連の片山でございます。御質問ありがとうございます。
 まず、件数と回数について御質問いただいたと理解しています。まず協議の件数で言えば、同じ内容であっても、協議の回数としては年に何回もやるというケースもあります。たとえば、要員協議に関する案件でも年度の中に内容が異なるものがもう一回あれば、その回数は2度カウントするということです。
 それから、231件が多いのではないかというような御指摘でございますけれども、この事例として挙げましたB労働組合の交渉実績等を見ますと、例えばいろいろな機関への在籍出向に関する協議なども入っているところもあります。また、電気事業において新たな事業展開をするといった場面においては、そういった部分の数もオンされたりします。したがって、労使間でもめて数が多いとか、そういうことではなくて、基本的には経営側のほうでいろいろな事業をやりますとか、やめますとか、そういったものによって、件数に若干の変化が生じるという状況と承知しているところでございます。
 ですので、先ほどの別の御質問からの回答と同じでございますけれども、この協議実績自体は、ここ数年間のトレンドで見れば大きく変化しているものではないと理解しています。若干増えている要素があるとするならば、コロナ禍における事業運営、リモートワーク等の取扱い等についての追加であるとか廃止であるとか、そういったものの変化具合が若干オンされているという認識です。
 次に、組合員の満足度に関する御質問についてです。各電力会社の労働組合におきましては、ほぼ全ての単組で組合員意識調査を何年かに一度実施しており、その中で会社の仕事に対する満足度といった設問を設けておるところが多くございます。そのトレンド等を見た中では、例えば3.11など、大きな災害が起きたときの状況変化なども含めて取っているところもありますが、3.11の影響を受けた地域の労働組合の数値においては、逆に大規模災害時における組合員の使命感、自分の公益に対する責任感から、自分の企業や仕事に対する誇りに関する数字が上がる傾向があったりします。
 一方で、満足度につきましては、先ほどの質問に絡みますけれども、仕事の負担感が強いとか、時間外労働が多いとか、休日の急な出動もあったりしますので、そこに対する不満といった、日常的な業務に対する満足度が若干低いというような傾向はございます。しかし、総じて自身のやっている仕事に対する公益性に対する使命感、責任感というものが高いというような数字の実績が出ている、そんな状況で承知しているところでございます。
 以上でございます。
○中窪部会長 どうもありがとうございました。
 原委員、よろしいでしょうか。
○原委員 ありがとうございました。
○中窪部会長 山口委員、失礼しました。お願いいたします。
○山口委員 申し訳ございません。
 原委員、御質問ありがとうございます。
 1つ目の御質問は、電力総連さん御回答のとおりで、使用者側としても大きな認識の乖離はございません。
 それから、2点目でございまして、会社側も従業員満足度、あるいは最近ではエンゲージメントサーベイというような言い方もございますが、ほとんどの会員企業はこういった調査を毎年行っていると認識してございます。個々の会社の結果の詳細までは把握してございませんけれども、測定結果、ある会社では、従業員としての満足度が他産業の平均を上回るというふうな結果を公表している部分もございまして、おおむね各社とも同様の傾向ではないかというふうに、電気事業連合会、また送配電網協議会としては認識しているところでございます。
 そこの従業員満足度の源泉といったところは、先ほど片山参考人もおっしゃっていたように、安定供給を支えるといったところ、ここのやりがいといったところが、従業員満足度につながっているのではないかと会社側としても考えているところでございます。
 以上でございます。
○中窪部会長 ありがとうございました。
○原委員 ありがとうございました。
○中窪部会長 それでは、ほかに御質問等ございますでしょうか。よろしいですか。
 すみません、私のほうから1点だけ。事務局ヒアリングのところで、ユニオンショップ協定が結ばれているという話がありましたけれども、これはどこの電力会社も、あるいは送配電も全部あると考えてよろしいのでしょうか。
 それから、ユニオンショップがあっても、他組合に入っていれば解雇できないと、いつも判例を学生に教えたりしているのですけれども、少数組合は事実としてあるのかないのか、もし分かれば教えていただければと思います。
○山口委員 電事連の山口でございます。
 まず、会員企業につきましては、送配電会社も含めて、全てユニオンショップというところで認識してございます。
 それから、2つ目の御質問、ちょっと聞き取れなかったのですが。
○中窪部会長 ユニオンショップ協定があっても、労働者が別の組合に入った場合は解雇できないという判例がありまして、学生には教えたりしているのですけれども、実際、電力でユニオンショップがあっても、別の少数組合が存在するという例はあるのでしょうか。
○山口委員 電事連・送配協として、実態として、どこの会社で、いわゆる電力総連さん傘下の構成単組以外にも掛け持ちで入っている方がいるかどうかというのは把握してございません。
○片山参考人 電力総連 片山でございます。
 ユニオンショップの件は、使用者側の発言と我々も同じ理解でございます。
 少数組合につきましては、少数組合が団体交渉したというところはございません。我々以外の組合の細かな動きまでは承知できないところもございますが、認識としては、そういった組合としての活動はないと認識してございます。
○中窪部会長 どうもありがとうございました。
 よろしいでしょうか。それでは、次に「諸外国における争議行為規制等について」ということで、事務局より御説明をお願いいたします。
○労働関係法課長 それでは、資料4を御説明いたします。
 おめくりいただきまして、1ページ目を御覧ください。こちらの資料は、JILPTの協力の下で、イギリス、韓国、ドイツ、イタリア、フランス、アメリカ、カナダ、オーストラリアの8か国における争議行為の規制について調査しまして、その概況をまとめたものになります。
 概要としましては、各国ともに電気事業に限定した争議行為の規制は見当たらないものの、電力供給を維持するための何らかのシステムがございます。我が国の労働関係調整法に類似した制度のほかに見られる主立ったものを大別してみますと、丸1としまして、最低限のサービス提供を維持するために労使間の合意または行政規則によって定めた業務の継続実施を求める、いわゆる事前型の規制タイプ。丸2拘束力のある仲裁裁定により紛争を終了させるもの。丸3争議行為に参加している労働者の職場復帰を命じることができるものといった事後的な規制タイプが見受けられるようでございます。
 具体は2ページを御覧ください。
 イギリスでは、ストライキに係る民事免責が認められるに当たりまして、ストライキ実施について組合員の半数以上の者が参加する事前投票で過半数の支持を得る必要があります。つまり、組合員全体の25%の賛成が必要ですが、保健、教育といった公益6分野については、組合員全体の40%相当の賛成が義務づけられています。最近では、これら公益6分野については、最低サービス水準を維持することが法律上義務化されたところです。電気事業は、この公益6分野に含まれていませんが、別途、電気法により電力供給に関わる緊急事態が生じた場合、所管の国務大臣が特定の行為を行うこと、または行わないことを指令できるとされています。
 次に、韓国では、電気を含む国民経済に及ぼす影響が大きい公益事業であって、その業務の停止・廃止が著しく国民の日常生活や国民経済を阻害する必須共益事業のうち、特に大統領令で定める必須維持業務については、業務の正当な維持・運営を停止・廃止・妨害するような争議行為を行うことはできないとされています。争議行為には、調停・仲裁が前置されておりまして、調停・仲裁に付された場合、公益事業は15日間、争議行為が禁止されます。このほか、公益事業については、著しく国民経済を害し、国民の日常生活を危うくするおそれがある場合、雇用労働部長官は緊急調整の決定によって争議行為を禁止することができることとなっています。
 次に、ドイツですが、こちらは判例に準拠して取扱いがなされておりますが、電気を含む公益事業における争議行為は、公共の福祉を顕著に侵害してはならず、個人的、社会的、国家的な需要の充足に必要な最低限の供給が求められており、この対象に電気事業も入っています。公益事業のストライキにおける最重要義務は、「公衆の生活に不可欠なサービスの維持」であり、ストライキ期間中も維持されるべき不可欠の役務及びその水準は、通常、労使当事者間の合意で決定されますが、合意に至らない場合には裁判所により決定されます。
 次に、おめくりいただきまして、3ページ目、イタリアです。市民の権利保護にとって不可欠な公共サービスについて、必要最低限の役務の提供水準を労使間で定める制度がございまして、電気事業も含まれております。役務の提供水準は労使間の合意で決定されますが、当該水準が専門家からなる独立の委員会で審査され、不適当と認める場合、同委員会は修正提案や裁定権限を有しています。
 次に、カナダでは、州法による定めがございます。例えば、ケベック州では、市民の健康、安全、福祉に直接かつ重大な危機をもたらすような争議行為を行うことはできず、これらが損なわれない水準の役務の継続提供を求められており、このような規制を受ける業務に電気事業が含まれています。また、ストライキが公衆の健康・安全を脅かし得る場合、労働審判は不可欠な役務の提供を維持するよう命じることができ、当該命令の日からストライキの実施は差し止められます。労使は維持すべき業務について合意し、これを労働審判が審査することになります。
 これに対してアルバータ州では、市民の健康や財産への損害が生じるような緊急事態のおそれがあるときに、仲裁裁定により争議行為を終結させる制度があり、電気事業も裁定対象業務として規定されています。
 次のオーストラリアも州法による定めがありまして、不可欠なサービスの継続提供を確保するため争議行為が規制されており、この不可欠なサービスとしてエネルギー等を明示する州のほか、州民の生命、安全、健康及び福祉への危害及び州経済への重大な影響といった包括的な規定をする州があります。具体的な規制の手法としては、民事刑事免責を認めず、政府の申請に基づき裁判所または労働委員会が当該争議行為の中止または差止めを命ずるもの、知事が当該サービスの継続提供を命じるものなど、様々です。
 4ページ目を御覧ください。
 フランスでは、フランス電力公社を含む公共サービスを提供する事業所の職員には、公営・民営を問わず、争議権が認められています。ただし、電力供給に関する公共網の安全確保に重大かつ差し迫った危機がある場合、エネルギー担当大臣・県知事は、ストライキ参加者に対して職場復帰を命じることができるとされています。
 次に、アメリカでは、全国労働関係法に基づく排他的交渉単位制度の下で団体交渉が行われており、電気事業者は全て民営で、民間労働者には事業の種類を問わず争議権が認められている状況です。ある産業の全部または相当部分に影響を及ぼし、またはそのおそれがあり、かつ、争議行為により国民の健康・安全を脅かすおそれがあると大統領が判断した場合、調査委員会が置かれ、当該委員会の報告書の提出を受けたとき、大統領は当該ストライキ等の差止命令を請求するよう司法長官に命ずることができるなどの規定がございます。
 次に、5ページ目は直近の争議事例です。各国ごとに新しい事例を2つほど掲げてございます。右側の停電発生の欄を御覧ください。ほとんどのケースでは停電が発生しておりませんが、2019年のフランスのケースでは停電ありとなっております。年金改革に反対したストライキで、特定の日に数回、局地的な停電が発生したようでございますが、職場復帰命令は出されない程度のものであったとのことでございます。
 以上、簡単ではございますが、8か国の制度概要等について御説明をさしあげました。
○中窪部会長 ありがとうございました。
 それでは、ただいまの事務局からの御説明につきまして御意見、御質問がありましたらお願いいたします。オンラインで御参加の皆さんにつきましては、先ほどと同様、チャットで発言希望と書いてお知らせください。
 石橋委員、お願いいたします。
○石橋委員 資料の説明ありがとうございました。
 第1回部会において私からは、部会の議論に当たりましては、スト規制法が廃止されるとストが起こって電力が止まり、不安だといったようなイメージで議論するのではなく、諸外国の事例なども含め、エビデンスに基づいた議論をしていくべきだという旨の発言をさせていただきました。今回お出しいただきました諸外国の資料を見てみますと、各国で具体的な内容に違いはありますが、電気事業に限定した争議行為規制を設けている国はありません。あくまで公益事業規制の一環としての規制があるということが明らかとなっています。
 その上で御意見でございますが、こうした国際比較からしましても、公益事業の中でも電気事業にのみ特化して屋上屋を重ねる形でスト規制法を適用し、憲法28条が定める労働基本権を制約する必要性を合理的に説明することは不可能であると考えています。
 以上です。
○中窪部会長 ありがとうございました。
 そのほか、御質問、御意見等いかがでしょうか。
 河野委員、お願いします。
○河野委員 ありがとうございます。
 本日は、電気事業連合会、さらには電力総連、厚労省から現状に対する説明をいただきまして、ありがとうございました。その上で私からは労働側委員として発言をさせていただきます。今、御説明いただいたとおり、電力の労使間という部分については、電気の供給に支障を生じさせないといった認識からもしっかりとしたコミュニケーションを図っている現状を、この委員会の中でもしっかりと受け止めていただきたいと思っています。
 こうした現状を踏まえればこそ、電気事業については、労働関係調整法の公益事業の規制に服することで十分であり、スト規制法を廃止して我々の労働基本権を回復していくことは今後必要であろうと強く思っております。この点を労働側からの意見として述べさせていただければと思います。ありがとうございます。
○中窪部会長 ありがとうございました。
 では、坂下委員、お願いいたします。
○坂下委員 ありがとうございます。
 厚生労働省におかれましては、平成27年の議論でも、諸外国の状況について確認をされておられましたが、その国に加えて、イタリア、カナダ、オーストラリア等も追加して調査いただき、その努力に感謝したいと思います。貴重な資料を作成いただき、ありがとうございました。
 今回の資料では、いずれの国も電気事業を含む公益事業について、争議行為の予告や調停等による早期解決を図る我が国の労調法に類似した制度を入れるとともに、それ以外のものとして、資料4の1ページ目の丸1のように事前規制をするような形のものと、丸2と丸3のように事後型で規制する仕組みを導入していることを、改めて確認いたしました。
 この10年間の各国における変更点については、イギリスにおいて、2023年にストライキ法が新たに施行され、原子力施設の廃止及び放射性廃棄物・使用済燃料の管理等を含めた公益6分野について、ストライキの際に最低限のサービス維持を順次義務化している等の変化があるようですが、それ以外について大きな動きはないと理解いたしました。諸外国の10年間の状況変化を確認し、今後我が国においてどう考えるかが、この検討会で求められていることだと理解しております。この資料は、我が国の規制の在り方を考える上で重要なものになると理解しました。ありがとうございます。
○中窪部会長 ありがとうございました。
 そのほか、いかがでしょうか。
 では、井上委員、お願いいたします。
○井上委員 御説明ありがとうございました。
 1つだけ分かったら教えていただきたいと思います。フランスにつきましては、2019年にストライキが実施されて停電が一部で発生したということですが、このときは職場復帰命令がなかったという説明がありました。一方で、説明資料の4ページの最下段のポツの1つ目で、EDFが再度国有化されているとのことなのですが、この辺り、何か関係があるのでしょうか。
 質問は以上です。
○労働関係法課長 御質問ありがとうございます。
 今おっしゃっていただきました2019年のストに際して職場復帰命令が出なかったということと、フランスの電力会社EDFが公営か民営かの違いとの関連性があるかないかについては、すみません、現時点で私どものほうでその関係性を具体的に把握しているところではございません。その点、大変恐縮でございます。
 ただ、職場復帰命令については、資料にございますように、重大かつ差し迫った危機がある場合に出すことができるというような立てつけになっているようですので、むしろ、この事実認識のほうが基本的にはその命令の有無に大きく影響を及ぼしたものと考えております。
 以上でございます。
○井上委員 承知しました。ありがとうございます。
○中窪部会長 ありがとうございました。
 そのほか、いかがでしょうか。チャットでと申しましたけれども、もしオンラインで御質問等ありましたら、直接発言していただいて結構ですが。よろしいですか。
 それでは、御質問等、ほかにないようですので、これくらいにしたいと思います。
 今回は第3回目ということで、電気事業の労使関係、事務局ヒアリングの結果報告、諸外国における争議行為規制等について御説明をいただきました。これで第1回から第3回までで、このスト規制法を取り巻く状況などについて一通りの議論をし、様々な御意見をいただきましたので、次回以降はこれらを踏まえた上で、さらに議論していただくことになるかと思います。
 ただ、前回の部会のときも同様でしたが、これまで議論してきた電気事業の業務、電気供給の仕組みなどについて、10年前からの変化も含めて、さらに詳しく知ることが有益であろうということで、電気事業の現場への視察に行くことも1つのアイデアかと思いますが、事務局としていかがでございましょうか。
○労働関係法課長 事務局でございます。
 事務局といたしましても、現地視察を実施することは今後の議論に大変資するものと考えております。労使の皆様方にお力添えをいただきまして、実施する方向で検討させていただきたいと存じます。
○中窪部会長 ありがとうございました。それでは、特に御反対等なければ、事務局のほうで関係団体の皆様と調整をお願いいたします。
○労働関係法課長 承知いたしました。皆様、どうぞよろしくお願いいたします。
○中窪部会長 最後に、次回の日程につきまして事務局から御説明をお願いいたします。
○労働関係法課長補佐 事務局でございます。
 次回につきましては、現地視察の日程調整等もございますので、日時・場所について調整の上、追って御連絡をさせていただきます。
 以上でございます。
○中窪部会長 ありがとうございました。
 それでは、本日、第3回の部会はこれで終了といたします。お忙しい中、御参集いただき、どうもありがとうございました。