2023年8月25日 中央社会保険医療協議会費用対効果評価専門組織 第5回議事録

日時

令和5年8月25日 13:00~

場所

オンライン開催

出席者

田倉 智之委員長、齋藤 信也委員長代理、池田 俊也委員、木﨑 孝委員、新谷 歩委員、新保 卓郎委員、中山 健夫委員、野口 晴子委員、花井 十伍委員、飛田 英祐委員、米盛 勧委員、福田 敬専門委員
国立保健医療科学院 保健医療経済評価研究センター 白岩上席主任研究官
<事務局>
木下医療技術評価推進室長 他

議題

○ピヴラッツに係る総合的評価について

議事

議事内容

○費用対効果評価専門組織委員長
 続きまして、ピヴラッツ点滴静注液について、公的分析による再分析結果が提出されておりますので、公的分析からの意見聴取を行った上で、企業分析の内容及び公的分析による再分析結果の審査、並びに費用対効果評価案の策定について先生方に御議論いただきたいと思います。
 では、ピヴラッツ点滴静注液について、まずは事務局から説明をお願いいたします。
(事務局・国立保健医療科学院より説明)
○費用対効果評価専門組織委員長
 ありがとうございました。
 それでは、まず、本品目に係る公的分析の再分析結果に対する企業意見の聴取を行いますので、事務局は企業を入室させてください。
(意見陳述者入室)
○事務局
 委員長、企業の入室が確認できましたので、よろしくお願いいたします。
○費用対効果評価専門組織委員長
 私は費用対効果評価専門組織委員長です。
 早速ですが、10分以内でピヴラッツの総合的評価について御説明をお願いいたします。続いて、質疑応答をさせていただきます。
 では、始めてください。
○意見陳述者
 本日は、ありがとうございます。今回は、企業側の分析に加えまして、公的分析機関からの分析をいただきましたので、それを踏まえて企業側の陳述をさせていただきます。
 まず、企業の陳述を行うに当たりまして、レビュー結果を整理したいと思います。資料の2ページ目から御覧いただけますでしょうか。
 まず、システマティックレビューでございますが、システマティックレビューについて、企業の結果と公的分析機関の結果には違いはございませんでした。
 続きまして、本剤の追加的有用性につきましても、公的分析機関にも認めていただいた状態でございます。この点につきまして感謝申し上げます。
 続きまして、費用対効果分析の本体でございますが、これは海外の臨床試験を使うという話もございましたが、最終的には海外試験ではなく、国内の第3相検証試験であるAC-054-305及びAC-054-306の試験結果を用いて分析を行うことにつきましても、公的分析機関にも理解をいただきました。
 一方で、分析方法について相違がありましたので、次以降のスライドで説明させていただこうと思います。
 3枚目のスライドにお進みいただけますでしょうか。まず、行った費用対効果分析モデルの概略でございます。このモデルにつきましては、急性期の決定樹モデルと慢性期のマルコフモデルを組み合わせたモデルになっておりますが、急性期のモデルにおきまして、Morbidity/Mortalityイベント、臨床試験の中でのイベント評価のデータを使用したのが意見陳述者側のモデルの特徴でございます。
 すなわち、急性期の下の図にあります3か月の評価のところにおきまして、脳動脈瘤によるくも膜下出血後のMorbidity/Mortalityイベントの構成要素といたしました死亡あるいはDIND。DINDというのは、遅発性神経脱落症状の略でございます。及び新規の脳梗塞、これらの発現割合に基づいた患者分布を用いたモデルになっております。なお、これらのイベントが発生しなかった患者につきましては、モデル上では健康というところに分類しまして、それぞれの健康状態にQOL値、費用を当てはめた分析方法でございます。
 慢性期のマルコフモデルにおきましては、modified Rankin Scale別の全生存率のハザード比を用いて、各健康状態の死亡率を設定したというモデルでございます。
 次に、公的分析側にいただきましたモデルを4ページに示しております。企業側の結果と違う点としましては、急性期の決定樹モデルのところにおきまして、modified Rankin Scaleに基づいた患者分布を用いた点でございます。実は、我々が実施しました臨床試験の中でも、Morbidity/Mortalityイベントのほかにmodified Rankin Scaleの評価も行っておりまして、これの患者分布のデータがございますので、これを用いて急性期の評価を行ったというモデルでございます。この点が違う点でございますが、これ以外の点について相違はございませんでした。
 最後に、5ページ目で企業の意見を述べさせていただこうと思います。
 公的分析側からいただきましたmodified Rankin Scaleに基づいた分析でございますが、modified Rankin Scaleといいますのは、スコアごとの定義に従って、そのときの患者さんの症状に基づいた状態を担当医が主観的に判定したものでございます。臨床試験の中では、副次的評価項目として位置づけておりました。
 これに対して、企業側が用いたMorbidity/Mortalityイベント評価は、この試験の中での主要評価項目でございまして、審査の過程におきましても、その主たる根拠となった評価方法でございます。また、本剤の作用であります血管拡張作用に基づいた、そこから派生する臨床的な指標を捉えた評価であること。また、評価に当たっては、画像等を用いて詳細に評価を行っていること。また、評価者も担当医ではなく、専門家による第三者委員会の評価を行っているという結果でございます。
 したがいまして、このMorbidity/Mortalityイベント評価というのは、くも膜下出血患者の状態を最も適切に表した指標と我々は考えております。しかしながら、公的分析側からいただきましたmodified Rankin Scaleの評価につきましても、この評価方法自体は広く知られているものでございますので、これを用いることの妥当性につきまして、我々も理解しているところでございます。
 以上でございます。ありがとうございました。
○費用対効果評価専門組織委員長
 では、委員の方々及び企業から御意見ございますでしょうか。いかがでしょうか。
 では、私から1点、瑣末な御質問で恐縮なのですけれども、海外での販売もしくは薬事承認の状況についてなのですが、これはないという理解でよろしいでしょうか。
○意見陳述者
 海外では予定しておりません。
○費用対効果評価専門組織委員長
 なるほど。ちなみに、その理由というものは何か御説明できることはございますでしょうか。
○意見陳述者
 海外では、同じようなデザインに基づいた臨床試験を進めておりましたが、第3相試験は日本のスタディーとは別の形で実施されまして、この試験結果が、一番最後の試験ではプライマリー・エンド・ポイントをメット[A1] [A2] しておりませんので、今、再考している状況でございます。
○費用対効果評価専門組織委員長
 ありがとうございます。
 その他の先生、いかがでしょうか。
 では、○○委員、お願いします。
○○○委員
 説明ありがとうございました。
 1点、先ほどのモデルのところでMMイベントの評価データを使ったというところで質問があるのですけれども、今回、急性期の3か月時点での健康状態を臨床試験の主要評価項目に設定しているMMイベント評価データを使っているというお話だったかと思うのですが、実際に臨床試験、305試験、306試験、両方とも主要評価項目の評価時点が、発症後6週時点のデータのような気がするのですけれども、6週後と3か月時点というのが時点がずれているような気がするのですが、その辺り、どのように使われているのかなということをお聞きしたいのですが、いかがでしょうか。
○意見陳述者
 モデルにおきまして、3か月、6か月へのある程度まとまったところでの評価をするというのが妥当と考えましたので、その6週のところを3か月の健康状態に当てはめたところでございます。
 また、少し説明を省いてしまったのですけれども、6か月までの健康状態を予想するところにおきまして、3か月から6か月への健康状態の遷移といいますか、変化を報告した論文がございましたので、それとの兼ね合いもございまして、3か月のところに当てはめたという経緯でございます。
○○○委員
 その6週から3か月のところの状態の予測といいますか、そこの状況が今の御説明ではちょっと理解できなかったのですけれども、3か月の時点のMMイベント評価データから、6か月時点のmodified Rankin Scaleの予測というか、遷移というものはほかの文献が利用できたという話だと思うのですが、実際に試験の段階で行われた主要評価項目の評価時点と、今回のモデルで使った評価時点がちょっとずれているというところが、本当に妥当なのかどうなのかというところを確認させていただきたかったのですけれども、今すぐに分からなければ大丈夫です。
○意見陳述者
 分かりました。
○費用対効果評価専門組織委員長
 ○○委員、お願いします。
○○○委員
 御説明ありがとうございました。
 企業のほうはMMをアウトカムとして、でも、公的分析のRankinのほうも了解し得るということだったので、基本的にはよろしいかと思いますけれども、その対応なのですが、MMのほうはDINDや新規の脳梗塞ということで、ユーティリティーにより近いのはmodified Rankin Scale、健康ということはちょっと変ですけれども、0から死亡の6で、その2、3、4、5のところが、おおむねADLに当たってユーティリティーに近いのかなということで、よりmodified Rankinのほうが適切かなと思ったのですけれども、その辺、もうちょっとお考えを聞かせていただければと思いました。
○意見陳述者
 おっしゃるとおりでございます。ユーティリティーに当てはめる際には、modified Rankin Scaleのところからの当てはめが一番フィットする文献等も出ておりますので、そこの当てはめという観点でいけば、modified Rankin Scaleのほうがフィット感はあると理解しております。
○○○委員
 ありがとうございます。了解です。
○費用対効果評価専門組織委員長
 その他、いかがでしょうか。よろしいでしょうか。
 それでは、これで質疑応答を終了いたします。企業の方は御退室ください。お疲れさまでした。
○意見陳述者
 ありがとうございました。
(意見陳述者退室)
○事務局
 企業の退室が確認できました。委員長、よろしくお願いいたします。
○費用対効果評価専門組織委員長
 御議論ありがとうございました。
 それでは、議論に先立ちまして、企業から公的分析についての御意見がございましたので、まずは科学院から何か御意見等ございますでしょうか。
○国立保健医療科学院
 ありがとうございます。
 分析モデルがmodified Rankin Scale間の推移を考えるモデルですので、DINDからわざわざ間接的に推計するよりも、直接modified Rankin Scaleのデータを使ったほうがよいのではないかなと思うところですが、企業側とそんなに大きな違いがないというか、違うやり方をしても同じような分析結果が出たので、分析の頑健性が確認されたのだと御解釈いただけるとよいのかなと感じたところであります。
 以上です。
○費用対効果評価専門組織委員長
 御説明ありがとうございました。
 それでは、当該品目について御議論をお願いいたします。なお、御議論に当たっては、企業分析結果と公的分析の再分析結果のどちらがより科学的により確からしいかを相対的に評価することを踏まえて御議論を進めていただきますようお願い申し上げます。コメント、いかがでしょうか。よろしいですか。
 事前の御意見、先ほど企業さんの御説明を伺っても、公的分析のやり方については、特段大きな問題はないというか、逆に言うと合理的であるというお話だったかと思いますが、先生方もそのようなお考えかなと思って、今、伺っておりましたが。
 それでは、議決に入らせていただきますが、○○委員が関係ありますので、議決に入る前に○○委員におかれましては議決の間、一時御退席をお願いいたします。
(○○委員退席)
○事務局
 ○○委員の退席が確認できました。よろしくお願いいたします。
○費用対効果評価専門組織委員長
 それでは、議決に入らせていただきます。先生方の御意見を参考に、ピヴラッツに関する費用対効果評価については、公的分析による案を費用対効果評価案として決定するということでよろしいでしょうか。
(首肯する委員あり)
○費用対効果評価専門組織委員長
 ありがとうございます。
 それでは、専門組織で決定された総合的評価を費用対効果評価案として中央社会保険医療協議会に報告いたします。なお、企業に対する内示及び中央社会保険医療協議会に提出する資料に関しては、委員長に一任していただくということでよろしいでしょうか。
(首肯する委員あり)
○費用対効果評価専門組織委員長
 ありがとうございます。
 それでは、事務局は○○委員に入室していただいてください。
(○○委員入室)