2024年3月5日 薬事・食品衛生審議会 指定薬物部会 議事録
日時
令和6年3月5日(火)10:00~
出席者
- 出席委員(7名)五十音順
-
- ○池田和隆
- 北中純一
- ◎関野祐子
- 髙野博德
- 田中理恵
- 舩田俊彦
- 丸井一弘
(注)◎部会長 ○部会長代理
- 欠席委員(4名)五十音順
-
- 合川勇三
- 青山久美
- 出水庸介
- 松本俊彦
- 行政機関出席者
-
- 城克文(医薬局長)
- 吉田易範(大臣官房審議官)
- 佐藤大作(監視指導・麻薬対策課長) 他
議事
○監視指導・麻薬対策課長 定刻より若干早いのですが、ただいまから「令和5年度第8回薬事・食品衛生審議会指定薬物部会」を開催させていただきます。委員の先生の皆様には、大変御多用のところ御出席いただき、誠にありがとうございます。本日は、Web形式併用での開催です。関野部会長、田中委員、舩田委員には、会場の方にお越しいただいております。当部会の委員11名のうち、出水委員、松本委員から御欠席の連絡を頂いております。高野委員、合川委員、青山委員が遅れての参加との御連絡を頂いております。現時点で6名の先生方の御出席を頂いておりますので、定足数に達しておりますことを、まず御報告いたします。
続いて、部会を開催する前に、本部会の公開・非公開の取扱いについて、御説明いたします。審議会総会における議論の結果、会議を公開することにより、委員の自由な発言が制限され、公正かつ中立な審議に著しい支障を及ぼすおそれがあると判断されたことから、非公開とされております。また、会議の議事録の公開については、発言者氏名を公にすることで、発言者等に対して外部からの圧力や干渉、危害が及ぶおそれが生じることから、発言者氏名を除いた議事録を公開することとされておりますので、あらかじめ御了承いただきたいと存じます。
それでは、以降の進行は、関野部会長にお願いいたします。よろしくお願いいたします。
○関野部会長 それでは、本日の部会資料の確認及び注意点について、事務局からお願いします。
○事務局 本日の部会資料に関しましては事前に各委員宛てに送付しております。また、会場出席の委員の先生方には紙資料にて御確認をお願いいたします。まず、資料ですが、資料No.1、2-1、2-2、2-3、そして資料No.3があります。その後に、文献1~12、参考資料として、No.1~3を配付しております。また、当日資料としまして、本日は資料No.4を別に配付しております。こちらに関しましては、後ほど画面共有にて説明させていただきたいと思っております。部会資料についての説明は以上です。
また、審議物質の説明中は、画面上に資料を共有いたしますので、併せて御覧ください。以上です。
○関野部会長 ありがとうございました。本日の議題は、指定薬物の指定についてです。それでは、審議に入りたいと思います。審議物質について、事務局より説明をお願いいたします。
○事務局 では、まず資料を御覧ください。資料No.1は、本日審議いただく3物質の名称、構造式、通称名等を記載しております。資料No.2は、御審議いただく3物質のほか、構造が類似する指定薬物などについて、それぞれ一覧表としてまとめております。資料No.3は、審議物質の動物実験の結果等について取りまとめたものです。まず初めに、ニタゼン系である物質マル1について説明いたします。
それでは、物質1について説明いたしますので、資料No.2-1を御覧ください。資料No.2-1は、ニタゼン系(合成オピオイド系)である物質、通称名Butonitazene及び、これに構造が類似する麻薬、指定薬物について、オピオイド受容体活性、中枢神経系への作用、マイクロダイアリシス試験のデータ等をまとめております。
Butonitazeneは、マイクロダイアリシス試験でモノアミンを有意に増加させており、オピオイド受容体への影響も過去に指定した指定薬物と同程度有することを確認しております。資料No.2-1は以上です。
続いて、資料No.3について説明いたします。資料No.3の1ページを御覧ください。Butonitazeneは、指定薬物であるProtonitazeneと構造が類似する化合物です。2ページの(1)行動及び中数・自律神経症状の観察を御覧ください。マウスにButonitazeneを0.2、1.0、10mg/kgを腹腔内投与し、投与後30、60、120分の行動及び中枢・自律神経症状を観察し、用量ごとに観察された症状を記載しております。また、3ページ、4ページの表1~表3に、Butonitazeneに対する行動及び中数・自律神経症状観察における評価値を載せております。数値は各群マウス5匹のスコアの平均値です。また、観察された特徴的な症状を示した写真を5ページに載せております。ここで写真と併せて実際の動画も御確認ください。動画は三つあります。
これは、1.0mg/kg投与群の投与後30分を経過したマウスですが、指間離開、よろめきながらの歩行が見られることが確認されました。
これは、10.0mg/kg投与群の投与後30分経過したマウスですが、挙尾反応、指間離開、よろめきながらの旋回歩行が見られることが確認されました。
これは、10.0mg/kg投与群の投与後120分経過したマウスですが、腰高歩行が見られることが確認されました。動画は以上になります。
続いて、6ページ(2)を御覧ください。自発運動における運動量について、マウスにButonitazeneを1.0mg/kgを腹腔内投与し、投与後3時間までの10分ごとの自発運動量を測定しております。各群マウス4匹を使用し、総運動量、大きい運動量、立ち上がり回数、総移動距離について測定しました。いずれの項目でも測定期間中、対照群と比べ有意な差は見られませんでした。
続いて、7ページ(3)マイクロダイアリシス試験によるモノアミンの経時変化を御覧ください。Butonitazene約4mg/kg腹腔内投与群マウス5匹、コントロール群6匹を用いて、モノアミンの増加率の有意差を、ウェルチのt検定で求めたところ、セロトニン、ドパミン、ノルアドレナリンのいずれも有意に増加することが確認されております。
続いて、8ページ(4)を御覧ください。Butonitazeneのヒトオピオイド受容体に対するアゴニスト活性を明らかにするため、EC50を算出しております。μ受容体のEC50は1.86×10-8mol/L、κ受容体のEC50は算出されませんでした。
以上の結果から、Butonitazeneは、動物による行動観察の結果、モノアミン類の経時的変化及びμオピオイド受容体に対するアゴニスト活性の結果において有意な影響が認められていることから、中枢神経系への作用を科学的に類推でき、その強さは既に医薬品医療機器等法に基づき指定薬物として指定されている指定薬物と比較して同等であると考えられることから、本化合物を医薬品医療機器等法第2条第15項に規定する指定薬物に指定することが相当であると考えております。
続いて、(5)海外での流通事例についてですが、欧州、カナダ、シンガポール、アメリカで流通が確認されております。また、(6)海外での規制状況については、アメリカ、スウェーデン、シンガポールで規制されていることを確認しております。物質マル1については以上です。御審議のほど、よろしくお願いいたします。
○関野部会長 ありがとうございました。それでは、委員の先生方から御意見を頂きたいと思います。最初に、流通実態について、□□委員、お願いいたします。
○□□委員 本化合物について、□□□□での検出事例はありませんでした。以上です。
○関野部会長 □□委員、ありがとうございました。それでは、委員の先生方に改めまして御意見を頂きたいと思います。いかがでしょうか。挙手を、そのマークを上げていただきたいと思います。よろしいでしょうか。
ありがとうございました。それでは、審議をまとめます。ただいま御審議いただいた物質は、医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律第2条第15項に規定する指定薬物として指定することが適当であると決議してよろしいでしょうか。挙手をお願いします。
○事務局 □□先生、いかがでしょうか。□□先生、聞こえておりますか。
○□□委員 はい、聞こえています。挙手でお願いします。賛成です。
○事務局 ありがとうございます。
○関野部会長 では、会場の先生方、いかがでしょうか。
ありがとうございました。それでは、異議なしということです。それでは、引き続き事務局より説明をお願いします。
○事務局 続いて、LSD系化合物である物質2について説明いたします。資料No.2-2を御覧ください。資料No.2-2はLSD系である物質、通称名MiPLA及び、これに構造が類似する指定薬物について、行動観察結果、首振り反応試験結果、セロトニン受容体への影響等のデータをまとめております。MiPLAは、セロトニン受容体に対するアゴニスト活性を有しており、過去に指定した指定薬物と同等の作用を有することを確認しております。資料No.2-2は以上です。
続いて、資料No.3について説明いたします。資料No.3の9ページを御覧ください。MiPLAは、指定薬物であるEPH-LADと構造が類似する化合物です。10ページの(1)行動及び中枢・自律神経症状の観察を御覧ください。マウスにMiPLAを0.2、1.0、10mg/kgを腹腔内投与し、投与後30分、60分、120分の行動及び中枢・自律神経症状を観察し、用量ごとに観察された症状を記載しております。11ページ、12ページの表1~表3には、MiPLAに対する行動及び中枢・自律神経症状観察における評価値を載せております。数値は、各群マウス5匹のスコアの平均値です。また、観察された特徴的な症状を示した写真を13ページに載せております。
ここで写真と併せて、実際の動画も御確認ください。動画は三つあります。これは1.0mg/kg投与群の投与後30分を経過したマウスで、伏臥位姿勢、小刻みな震え、横転が見られることが確認されました。
これは10.0mg/kg投与群の投与後30分を経過したマウスですが、伏臥位姿勢、小刻みな震え、指間離開、眼裂の拡大が見られることが確認されました。
これは10.0mg/kg投与群の投与後60分を経過したマウスで、30分経過時と同様に伏臥位姿勢、小刻みな震え、指間離開、眼裂の拡大が見られることが確認されました。動画は以上です。
14ページの(2)自発運動における運動量の測定結果を御覧ください。総運動量、大きい運動量及び総移動距離は、投与後10分でやや増加傾向が見られましたが、測定期間を通して対照群と比べて有意な差は見られませんでした。
15ページの(3)マイクロダイアリシス試験によるモノアミンの経時変化を御覧ください。MiPLA約8mg/kg腹腔内投与群のマウス5匹、コントロール群6匹を用いて、モノアミンの増加率の有意差を、ウェルチのt検定で求めたところ、セロトニン、ドパミンでは減少作用、ノルアドレナリンでは増加作用が確認されました。
16ページの(4)には、首振り反応試験における首振り回数の経時変化と累積首振り回数の結果を示しております。首振り反応数の経時変化は全ての投与群において、投与後5分までの間に首振り反応数が増加、以降は15分まで減少し、その後はほぼ認められませんでした。累積首振り反応数は、全ての投与群で全ての時間においてコントロール群と比較して有意に増加しております。
17ページの(5)ヒトセロトニン受容体(2A及び2C)に対するアゴニスト活性EC50を算出した結果を御覧ください。MiPLAはヒトセロトニン2A受容体で2.69×10-8mol/L、セロトニン2C受容体で1.6×10-7mol/Lでした。
以上から、MiPLAは動物に対する行動観察、首振り反応試験の結果及び受容体親和性評価、マイクロダイアリシス試験の結果において有意な影響が認められていることから、中枢神経系への作用を科学的に類推でき、その強さは医薬品医療機器等法に基づき指定薬物として指定されている指定薬物と比較して同等であると考えられることから、本化合物を医薬品医療機器等法第2条第15項に規定する指定薬物に指定することが相当であると考えております。
(6)は海外での流通事例についてです。カナダ、キプロス、アメリカで流通が確認されております。また、(7)海外での規制状況については、フランスで規制されていることを確認しております。物質2については以上です。御審議のほど、よろしくお願いいたします。
○関野部会長 それでは、委員の先生方に御意見を頂きたいと思いますが、最初に流通実態について、□□委員からお願いいたします。
○□□委員 本化合物については、検出事例が1例あります。2019年9月に、白い紙片として検出されております。以上です。
○関野部会長 それでは委員の先生方に、改めて御意見を頂きたいと思います。いかがでしょうか。先ほどの紙片というのはどのようなものでしょうか。
○□□委員 切り取り線のようなものが、大体0.9mm四方に入っている感じで、多分、それを切り取って使うような感じだと思うのですが、そういうものが出ています。
○関野部会長 LSDの関係というのは、結構、紙で出ているものが多いのですか。
○□□委員 そうですね。
○関野部会長 ほとんどでしょうか。
○□□委員 これまでの指定薬物になったLSD誘導体も、ほぼ紙で検出されています。
○関野部会長 ありがとうございました。先生方、いかがでしょうか。御意見や御質問はありませんね。
それでは、審議をまとめます。ただいま御審議いただいた物質は、医薬品医療機器等の品質有効性及び安全性の確保等に関する法律第2条第15項に規定する指定薬物として指定することが適当であると決議してよろしいでしょうか。
ありがとうございました。異議なしということでしたので、次にいきたいと思います。引き続き、事務局より説明をお願いします。
○事務局 続いて、カチノン系である物質3について説明いたします。資料No.2-3を御覧ください。資料No.2-3はカチノン系である物質マル3通称名N-Propylbutylone並びに、これらに構造が類似する指定薬物について、自発運動への影響、マイクロダイアリシス試験、モノアミントランスポーター阻害活性等のデータをまとめております。N-Propylbutyloneは、マイクロダイアリシス試験ではモノアミンを有意に増加させており、モノアミントランスポーターへの影響についても、過去に指定した指定薬物と同程度の活性を有することを確認しております。資料No.2-3の説明は以上です。
それでは、資料No.3の18ページを御覧ください。N-Propylbutyloneですが、指定薬物であるN-Butylbutyloneと構造が類似する化合物です。19ページの(1)行動及び中枢・自律神経症状の観察を御覧ください。マウスにN-Propylbutyloneを2、20、100mg/kg経口投与し、投与後30、60、120分の行動及び中枢・自律神経症状を観察し、用量ごとに観察された症状を記載しております。また、20ページ、21ページの表1~表3に、N-Propylbutyloneに関する行動及び中枢・自律神経症状観察における評価値を載せており、数値は各群マウス5匹のスコアの平均値です。22ページには、観察された特徴的な症状を示した写真を載せております。
ここで写真と併せて、実際の動画とともに御確認ください。動画は三つあります。これは20mg/kg投与群の投与後、約30分を経過したマウスですが、忙しい自発運動、腰高歩行が見られることが確認されました。
これは100mg/kg投与群の投与後約30分経過したマウスですが、小刻みな震え、後ろに下がる異常行動が確認されました。
これは100mg/kg投与群の投与後約60分を経過したマウスですが、けいれん、後ろに下がる異常行動が確認されました。動画は以上です。
23ページ、(2)自発運動における運動量の測定結果を御覧ください。いずれの項目においても、測定期間を通して対照群と比べて有意な差は見られませんでした。
24ページ、(3)マイクロダイアリシス試験によるモノアミンの経時変化を御覧ください。N-Propylbutyloneの約23mg/kg経口投与群を6匹、コントロール群を6匹用いて、マウス線条体内神経シナプス間隙のモノアミンの増加率の有意差を、ウェルチのt検定で求めたところ、セロトニン、ドパミン、ノルアドレナリンで有意に増加することが確認されました。
25ページ、(4)では、N-Propylbutyloneのモノアミントランスポーターに対する阻害作用を評価するため、ノルアドレナリン、ドパミン、セロトニントランスポーターに対するIC50を算出しました。結果は表4及び26ページの図3のとおり、N-Propylbutyloneのノルアドレナリントランスポーターに対するIC50は2.0×10-5mol/Lでコカイン塩酸塩の約4.8倍。ドパミントランスポーターに対するIC50は1.7×10-6mol/Lでコカイン塩酸塩の約0.89倍。セロトニントランスポーターに対するIC50は4.2×10-5molでコカイン塩酸塩の約9.8倍でした。
29ページ、(6)ヒトセロトニン受容体(2A及び2C)に対するアゴニスト活性EC50についてですが、算出されませんでした。以上の結果から、N-Propylbutyloneは動物による行動観察の結果及びマイクロダイアシス試験、モノアミントランスポーターに対する機能影響評価試験において有意な影響が認められていることから、中枢神経系への作用を科学的に類推でき、その強さは既に医薬品医療機器等法に基づき指定薬物として指定されている指定薬物と比較して同等であると考えられることから、本化合物を医薬品医療機器等法第2条第15項に規定する指定薬物に指定することが相当であると考えております。
(7)海外での流通状況についてですが、カナダ、中国で流通が確認されております。(8)海外での規制状況については、ドイツ、アメリカ・バージニア州で規制されていることを確認しております。物質3の説明は以上です。御審議のほど、よろしくお願いいたします。
○関野部会長 それでは、委員の先生方に御意見を頂きたいと思います。流通実態について、□□委員からお願いいたします。
○□□委員 本化合物について、□□□□での検出事例はありませんでした。以上です。
○関野部会長 それでは、委員の先生方に改めましてご意見を頂きたいと思います。いかがでしょうか。
では、少し確認をお願いしたいところがあります。22ページの「忙しい自発運動」という表現をされた所と、自発運動の測定では有意差がないという所で、動いている量というか、移動距離などはそんなに変わらないけれど忙しい感じという、行動上は変化が認められる表現というように理解したのです。それでよろしいのでしょうか。そういうものが具体的にちょっと分かりにくいかなと。
○事務局 そういう形で出しているデータと、1匹の行動観察というところが、若干違うようになっているのかと。
○関野部会長 そうですね。そのうち1匹だけがそういうものでも個体的には観察できるけれども、全部の値を見ておく必要があると思います。
○事務局 平均値というように見ると、有意差が出てこないところがあります。
○関野部会長 一応、確認させていただきました。ありがとうございました。ほかに先生方から御質問等はありませんか。大丈夫ですか。会場の先生方も大丈夫でしょうか。
ありがとうございました。それでは審議をまとめます。ただいま御審議いただいた物質は、医薬品医療機器等の品質有効性及び安全性の確保等に関する法律第2条第15項に規定する指定薬物として指定することが適当であると決議してよろしいでしょうか。
ありがとうございました。それでは、続いて当日配布資料4について御説明をお願いいたします。
○事務局 それでは、当日配布資料に基づいて御説明申し上げます。お手元に、資料4を御準備いただければと思います。「代謝試験に基づく指定薬物の指定について」です。1番として、指定薬物制度の概要としてまとめております。まず、指定薬物については、医薬品医療機器等法の規定に基づいて、マル1中枢神経系の興奮若しくは抑制又は幻覚の作用を有する蓋然性、マル2人の身体に使用された場合に保健衛生上の危害が発生するおそれを規定の要件としています。二つ目の○にあるとおり、この二つの要件に該当するための御判断を頂くにあたり、先ほど個別の物質でも御審議いただいたとおり、行動観察試験をはじめとするin vitro試験、作用発現に関与すると考えられる受容体結合試験等に基づいて御判断を頂いています。
次のページを御覧ください。また、危険ドラッグについては、“いたちごっこ”という状況が続いているところがありますので、科学的類推に係る合理性及び明確性の確保を担保しつつ化学構造が類似している特定の物質群を包括的に指定する制度として、包括指定制度が導入されています。
2番ですが、指定薬物の現状ということで御紹介します。昨年も、本部会において御審議いただきましたが、いわゆる大麻グミに代表されるようなテトラヒドロカンナビノール類似化合物など、国内においても危険ドラッグの流通が続いていることとともに、路面店舗の復活等、危険ドラッグの再燃の兆しが認められている状況があります。また、二つ目の○にありますが、海外の方に目を向けてみると、毎年多くのNPS(新規精神活性物質)、いわゆる危険ドラッグとお考えいただければと存じますが、その出現が毎年報告されており、2020年には77物質が新たに特定された状況が続いている状況があります。三つ目の○ですが、このような状況を鑑みて、危険ドラッグによる保健衛生上の危害を防止する観点から、今回、代謝試験に基づく指定薬物への指定について、3に記載している形で指定することについて御意見をお伺いするものです。
3に基づき、具体的な内容をご説明させていただきます。1で御説明したように、指定薬物への要件の該当性については、in vitro試験、in vivo試験の知見を収集するとともに、知見がない場合については、その試験を自ら実施するとか、蓋然性の類推が可能な場合には構造活性相関等の手法を用いた予測結果も含めて御判断いただいています。ただ、二つの●に記載しておりますように、一定の時間を要するところが現状としてありますので、必ずしも速やかに指定薬物への指定ができないことが課題として挙げられております。
他方、昨年既に指定薬物として指定しましたΔ9-THC analogとしてΔ9-THCOを挙げておりますが、こちらについては、一番最後のページにありますが、厚生労働科学研究の検討において、摂取後、生体内で酵素化学的加水分解を受け、麻薬として規制されているΔ9-THCが生成されている可能性が示唆されたということで、Δ9-THCについてはΔ9-THCのプロドラッグとして生体内で機能している可能性が示唆されています。
次のページ、次の○ですが、同様に、危険ドラッグに含まれる未規制の物質のうち、生体内での酵素化学的加水分解を受けることにより麻薬や指定薬物等の指定薬物に変換する可能性が示唆される場合、代謝後の規制薬物については、既に規制されている薬物ですので、指定薬物の要件に合致していることは明らかであると考えております。
このため、危険ドラッグに含まれている成分について、in vitroの代謝試験等の結果に基づいて、生体内での酵素化学的加水分解を受けることにより、規制薬物に変換する可能性が示唆されている未規制の物質については、その結果に基づいて指定薬物の要件を満たすものとして指定薬物への指定を可能としてはどうかを、ご提案申し上げるするものです。なお、この指定薬物部会での御審議を踏まえまして、代謝試験の結果だけでは判断ができないという場合は、従来と同様に、当該物質の中枢神経系への影響等に関する知見を集めて、改めて御審議をお願いするものです。
なお、代謝試験の結果については、先ほど御紹介した包括指定やQSARによる予測の基礎資料としても並行して活用していきたいと考えております。説明は以上です。御審議のほど、よろしくお願いいたします。
○関野部会長 ただいまの説明に関して、委員の先生方、御意見はありますか。これは今後の検討をすることに対しての許可というか、了承でよろしいですか。
○事務局 今回、この方向性について御了承いただきましたら、この方向性に基づく指定ということを個別の物質で御検討いただくということになります。
○関野部会長 皆さん、資料を御覧になっていらっしゃるかもしれませんが、代謝試験の例が後ろに載っておりますので、このような代謝試験のデータに基づいて、既に指定薬物等になっているものであれば、そのまま規制にかけられるというやり方になります。
非常に重要な決断ですので、先生方の御了承は非常に重要ですので。まず、御意見を頂きたいと思います。御懸念な点とか、何かありますか。
○□□委員 すみません。今、問題になっているTHCのanalog以外の化合物についても、適用する可能性があるということなのですよね。
○事務局 はい。おっしゃるとおりです。あくまでもTHCのanalogは1例として挙げたものですので、ほかにも代謝試験の結果、同様の知見が得られた場合は指定薬物に指定することを考えております。
○□□委員 分かりました。ありがとうございます。
○関野部会長 それは全く、人体に影響がありそうだというような、巷の、例えばWebの書き込みとか、実際の流通が確認されたものについてですよね。代謝試験で、代謝がありそうだということをあらかじめ調べて、先に規制するとか、そういうことではないですよね。
○事務局 その部分は、国内での流通状況もそうですし、海外では流通状況を確認して指定薬物の候補を考えておりますので、国内で流通していなくても海外でありそうだと分かれば、そういった知見に基づいて代謝試験を実施して、指定することはあるかと思います。
○関野部会長 そうすると、水際対策にもなるわけですね。
○事務局 そうです。
○□□委員 それって、何となくパーッと読んだとき、拝見させているときに、包括指定が、ある意味でやりやすくなってくるのかなと思ったのですが、そういう仕掛けでなくて、あくまで個別の特質ということで、この指定を行っていく方針でしょうか。
○事務局 今、考えておりますのは、個別の指定というのを考えておりますが、知見が集まれば包括指定も、検討の俎上には乗るかと思います。
○□□委員 ありがとうございます。
○□□委員 プロドラッグの濫用問題に対する解決法のアイデアと理解しました。その中で、代謝後に出てくる代謝物を見つける方法を引き続き共通のフォーマットとして利用できる評価系を、今後も考えていただければ、より迅速かつ正確な判断ができるかと思います。その辺りも引き続きこの方向性で、研究等もバックアップしていただければいいかと思います。以上です。
○事務局 ありがとうございます。
○関野部会長 それでは、Webで参加の先生方も御意見があれば是非、この機会に。今後の方向性に関わることですので、是非御意見を頂きたいと思いますが、いかがでしょうか。よろしいでしょうか。
それでは、今後、このような方向性で検討を進めていただくということで異議はないということですね。それでは、これで皆様の了承を得られたということで、次に進めさせていただきます。それでは、事務局から今後の手続について御説明をお願いいたします。
○事務局 今後のスケジュール等について御説明いたします。本件の結果につきましては、次回開催の薬事分科会で報告させていだだく予定です。本日の結果を受け、指定薬物を指定するための省令改正の手続を進める予定です。また、本日御審議いただいた物質に関する、いわゆる正規用途については、今のところ確認されておりません。いずれにしても、可能な限り適正使用に支障をきたさないように対応いたします。以上です。
○関野部会長 ありがとうございました。以上で本日の議題は終了いたしました。事務局から、次回の予定について連絡をお願いいたします。
○事務局 次回の部会日程につきましては、正式に決まり次第、改めて御連絡いたします。以上です。
○関野部会長 それでは、以上をもちまして、令和5年度第8回指定薬物部会を閉会いたします。
続いて、部会を開催する前に、本部会の公開・非公開の取扱いについて、御説明いたします。審議会総会における議論の結果、会議を公開することにより、委員の自由な発言が制限され、公正かつ中立な審議に著しい支障を及ぼすおそれがあると判断されたことから、非公開とされております。また、会議の議事録の公開については、発言者氏名を公にすることで、発言者等に対して外部からの圧力や干渉、危害が及ぶおそれが生じることから、発言者氏名を除いた議事録を公開することとされておりますので、あらかじめ御了承いただきたいと存じます。
それでは、以降の進行は、関野部会長にお願いいたします。よろしくお願いいたします。
○関野部会長 それでは、本日の部会資料の確認及び注意点について、事務局からお願いします。
○事務局 本日の部会資料に関しましては事前に各委員宛てに送付しております。また、会場出席の委員の先生方には紙資料にて御確認をお願いいたします。まず、資料ですが、資料No.1、2-1、2-2、2-3、そして資料No.3があります。その後に、文献1~12、参考資料として、No.1~3を配付しております。また、当日資料としまして、本日は資料No.4を別に配付しております。こちらに関しましては、後ほど画面共有にて説明させていただきたいと思っております。部会資料についての説明は以上です。
また、審議物質の説明中は、画面上に資料を共有いたしますので、併せて御覧ください。以上です。
○関野部会長 ありがとうございました。本日の議題は、指定薬物の指定についてです。それでは、審議に入りたいと思います。審議物質について、事務局より説明をお願いいたします。
○事務局 では、まず資料を御覧ください。資料No.1は、本日審議いただく3物質の名称、構造式、通称名等を記載しております。資料No.2は、御審議いただく3物質のほか、構造が類似する指定薬物などについて、それぞれ一覧表としてまとめております。資料No.3は、審議物質の動物実験の結果等について取りまとめたものです。まず初めに、ニタゼン系である物質マル1について説明いたします。
それでは、物質1について説明いたしますので、資料No.2-1を御覧ください。資料No.2-1は、ニタゼン系(合成オピオイド系)である物質、通称名Butonitazene及び、これに構造が類似する麻薬、指定薬物について、オピオイド受容体活性、中枢神経系への作用、マイクロダイアリシス試験のデータ等をまとめております。
Butonitazeneは、マイクロダイアリシス試験でモノアミンを有意に増加させており、オピオイド受容体への影響も過去に指定した指定薬物と同程度有することを確認しております。資料No.2-1は以上です。
続いて、資料No.3について説明いたします。資料No.3の1ページを御覧ください。Butonitazeneは、指定薬物であるProtonitazeneと構造が類似する化合物です。2ページの(1)行動及び中数・自律神経症状の観察を御覧ください。マウスにButonitazeneを0.2、1.0、10mg/kgを腹腔内投与し、投与後30、60、120分の行動及び中枢・自律神経症状を観察し、用量ごとに観察された症状を記載しております。また、3ページ、4ページの表1~表3に、Butonitazeneに対する行動及び中数・自律神経症状観察における評価値を載せております。数値は各群マウス5匹のスコアの平均値です。また、観察された特徴的な症状を示した写真を5ページに載せております。ここで写真と併せて実際の動画も御確認ください。動画は三つあります。
これは、1.0mg/kg投与群の投与後30分を経過したマウスですが、指間離開、よろめきながらの歩行が見られることが確認されました。
これは、10.0mg/kg投与群の投与後30分経過したマウスですが、挙尾反応、指間離開、よろめきながらの旋回歩行が見られることが確認されました。
これは、10.0mg/kg投与群の投与後120分経過したマウスですが、腰高歩行が見られることが確認されました。動画は以上になります。
続いて、6ページ(2)を御覧ください。自発運動における運動量について、マウスにButonitazeneを1.0mg/kgを腹腔内投与し、投与後3時間までの10分ごとの自発運動量を測定しております。各群マウス4匹を使用し、総運動量、大きい運動量、立ち上がり回数、総移動距離について測定しました。いずれの項目でも測定期間中、対照群と比べ有意な差は見られませんでした。
続いて、7ページ(3)マイクロダイアリシス試験によるモノアミンの経時変化を御覧ください。Butonitazene約4mg/kg腹腔内投与群マウス5匹、コントロール群6匹を用いて、モノアミンの増加率の有意差を、ウェルチのt検定で求めたところ、セロトニン、ドパミン、ノルアドレナリンのいずれも有意に増加することが確認されております。
続いて、8ページ(4)を御覧ください。Butonitazeneのヒトオピオイド受容体に対するアゴニスト活性を明らかにするため、EC50を算出しております。μ受容体のEC50は1.86×10-8mol/L、κ受容体のEC50は算出されませんでした。
以上の結果から、Butonitazeneは、動物による行動観察の結果、モノアミン類の経時的変化及びμオピオイド受容体に対するアゴニスト活性の結果において有意な影響が認められていることから、中枢神経系への作用を科学的に類推でき、その強さは既に医薬品医療機器等法に基づき指定薬物として指定されている指定薬物と比較して同等であると考えられることから、本化合物を医薬品医療機器等法第2条第15項に規定する指定薬物に指定することが相当であると考えております。
続いて、(5)海外での流通事例についてですが、欧州、カナダ、シンガポール、アメリカで流通が確認されております。また、(6)海外での規制状況については、アメリカ、スウェーデン、シンガポールで規制されていることを確認しております。物質マル1については以上です。御審議のほど、よろしくお願いいたします。
○関野部会長 ありがとうございました。それでは、委員の先生方から御意見を頂きたいと思います。最初に、流通実態について、□□委員、お願いいたします。
○□□委員 本化合物について、□□□□での検出事例はありませんでした。以上です。
○関野部会長 □□委員、ありがとうございました。それでは、委員の先生方に改めまして御意見を頂きたいと思います。いかがでしょうか。挙手を、そのマークを上げていただきたいと思います。よろしいでしょうか。
ありがとうございました。それでは、審議をまとめます。ただいま御審議いただいた物質は、医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律第2条第15項に規定する指定薬物として指定することが適当であると決議してよろしいでしょうか。挙手をお願いします。
○事務局 □□先生、いかがでしょうか。□□先生、聞こえておりますか。
○□□委員 はい、聞こえています。挙手でお願いします。賛成です。
○事務局 ありがとうございます。
○関野部会長 では、会場の先生方、いかがでしょうか。
ありがとうございました。それでは、異議なしということです。それでは、引き続き事務局より説明をお願いします。
○事務局 続いて、LSD系化合物である物質2について説明いたします。資料No.2-2を御覧ください。資料No.2-2はLSD系である物質、通称名MiPLA及び、これに構造が類似する指定薬物について、行動観察結果、首振り反応試験結果、セロトニン受容体への影響等のデータをまとめております。MiPLAは、セロトニン受容体に対するアゴニスト活性を有しており、過去に指定した指定薬物と同等の作用を有することを確認しております。資料No.2-2は以上です。
続いて、資料No.3について説明いたします。資料No.3の9ページを御覧ください。MiPLAは、指定薬物であるEPH-LADと構造が類似する化合物です。10ページの(1)行動及び中枢・自律神経症状の観察を御覧ください。マウスにMiPLAを0.2、1.0、10mg/kgを腹腔内投与し、投与後30分、60分、120分の行動及び中枢・自律神経症状を観察し、用量ごとに観察された症状を記載しております。11ページ、12ページの表1~表3には、MiPLAに対する行動及び中枢・自律神経症状観察における評価値を載せております。数値は、各群マウス5匹のスコアの平均値です。また、観察された特徴的な症状を示した写真を13ページに載せております。
ここで写真と併せて、実際の動画も御確認ください。動画は三つあります。これは1.0mg/kg投与群の投与後30分を経過したマウスで、伏臥位姿勢、小刻みな震え、横転が見られることが確認されました。
これは10.0mg/kg投与群の投与後30分を経過したマウスですが、伏臥位姿勢、小刻みな震え、指間離開、眼裂の拡大が見られることが確認されました。
これは10.0mg/kg投与群の投与後60分を経過したマウスで、30分経過時と同様に伏臥位姿勢、小刻みな震え、指間離開、眼裂の拡大が見られることが確認されました。動画は以上です。
14ページの(2)自発運動における運動量の測定結果を御覧ください。総運動量、大きい運動量及び総移動距離は、投与後10分でやや増加傾向が見られましたが、測定期間を通して対照群と比べて有意な差は見られませんでした。
15ページの(3)マイクロダイアリシス試験によるモノアミンの経時変化を御覧ください。MiPLA約8mg/kg腹腔内投与群のマウス5匹、コントロール群6匹を用いて、モノアミンの増加率の有意差を、ウェルチのt検定で求めたところ、セロトニン、ドパミンでは減少作用、ノルアドレナリンでは増加作用が確認されました。
16ページの(4)には、首振り反応試験における首振り回数の経時変化と累積首振り回数の結果を示しております。首振り反応数の経時変化は全ての投与群において、投与後5分までの間に首振り反応数が増加、以降は15分まで減少し、その後はほぼ認められませんでした。累積首振り反応数は、全ての投与群で全ての時間においてコントロール群と比較して有意に増加しております。
17ページの(5)ヒトセロトニン受容体(2A及び2C)に対するアゴニスト活性EC50を算出した結果を御覧ください。MiPLAはヒトセロトニン2A受容体で2.69×10-8mol/L、セロトニン2C受容体で1.6×10-7mol/Lでした。
以上から、MiPLAは動物に対する行動観察、首振り反応試験の結果及び受容体親和性評価、マイクロダイアリシス試験の結果において有意な影響が認められていることから、中枢神経系への作用を科学的に類推でき、その強さは医薬品医療機器等法に基づき指定薬物として指定されている指定薬物と比較して同等であると考えられることから、本化合物を医薬品医療機器等法第2条第15項に規定する指定薬物に指定することが相当であると考えております。
(6)は海外での流通事例についてです。カナダ、キプロス、アメリカで流通が確認されております。また、(7)海外での規制状況については、フランスで規制されていることを確認しております。物質2については以上です。御審議のほど、よろしくお願いいたします。
○関野部会長 それでは、委員の先生方に御意見を頂きたいと思いますが、最初に流通実態について、□□委員からお願いいたします。
○□□委員 本化合物については、検出事例が1例あります。2019年9月に、白い紙片として検出されております。以上です。
○関野部会長 それでは委員の先生方に、改めて御意見を頂きたいと思います。いかがでしょうか。先ほどの紙片というのはどのようなものでしょうか。
○□□委員 切り取り線のようなものが、大体0.9mm四方に入っている感じで、多分、それを切り取って使うような感じだと思うのですが、そういうものが出ています。
○関野部会長 LSDの関係というのは、結構、紙で出ているものが多いのですか。
○□□委員 そうですね。
○関野部会長 ほとんどでしょうか。
○□□委員 これまでの指定薬物になったLSD誘導体も、ほぼ紙で検出されています。
○関野部会長 ありがとうございました。先生方、いかがでしょうか。御意見や御質問はありませんね。
それでは、審議をまとめます。ただいま御審議いただいた物質は、医薬品医療機器等の品質有効性及び安全性の確保等に関する法律第2条第15項に規定する指定薬物として指定することが適当であると決議してよろしいでしょうか。
ありがとうございました。異議なしということでしたので、次にいきたいと思います。引き続き、事務局より説明をお願いします。
○事務局 続いて、カチノン系である物質3について説明いたします。資料No.2-3を御覧ください。資料No.2-3はカチノン系である物質マル3通称名N-Propylbutylone並びに、これらに構造が類似する指定薬物について、自発運動への影響、マイクロダイアリシス試験、モノアミントランスポーター阻害活性等のデータをまとめております。N-Propylbutyloneは、マイクロダイアリシス試験ではモノアミンを有意に増加させており、モノアミントランスポーターへの影響についても、過去に指定した指定薬物と同程度の活性を有することを確認しております。資料No.2-3の説明は以上です。
それでは、資料No.3の18ページを御覧ください。N-Propylbutyloneですが、指定薬物であるN-Butylbutyloneと構造が類似する化合物です。19ページの(1)行動及び中枢・自律神経症状の観察を御覧ください。マウスにN-Propylbutyloneを2、20、100mg/kg経口投与し、投与後30、60、120分の行動及び中枢・自律神経症状を観察し、用量ごとに観察された症状を記載しております。また、20ページ、21ページの表1~表3に、N-Propylbutyloneに関する行動及び中枢・自律神経症状観察における評価値を載せており、数値は各群マウス5匹のスコアの平均値です。22ページには、観察された特徴的な症状を示した写真を載せております。
ここで写真と併せて、実際の動画とともに御確認ください。動画は三つあります。これは20mg/kg投与群の投与後、約30分を経過したマウスですが、忙しい自発運動、腰高歩行が見られることが確認されました。
これは100mg/kg投与群の投与後約30分経過したマウスですが、小刻みな震え、後ろに下がる異常行動が確認されました。
これは100mg/kg投与群の投与後約60分を経過したマウスですが、けいれん、後ろに下がる異常行動が確認されました。動画は以上です。
23ページ、(2)自発運動における運動量の測定結果を御覧ください。いずれの項目においても、測定期間を通して対照群と比べて有意な差は見られませんでした。
24ページ、(3)マイクロダイアリシス試験によるモノアミンの経時変化を御覧ください。N-Propylbutyloneの約23mg/kg経口投与群を6匹、コントロール群を6匹用いて、マウス線条体内神経シナプス間隙のモノアミンの増加率の有意差を、ウェルチのt検定で求めたところ、セロトニン、ドパミン、ノルアドレナリンで有意に増加することが確認されました。
25ページ、(4)では、N-Propylbutyloneのモノアミントランスポーターに対する阻害作用を評価するため、ノルアドレナリン、ドパミン、セロトニントランスポーターに対するIC50を算出しました。結果は表4及び26ページの図3のとおり、N-Propylbutyloneのノルアドレナリントランスポーターに対するIC50は2.0×10-5mol/Lでコカイン塩酸塩の約4.8倍。ドパミントランスポーターに対するIC50は1.7×10-6mol/Lでコカイン塩酸塩の約0.89倍。セロトニントランスポーターに対するIC50は4.2×10-5molでコカイン塩酸塩の約9.8倍でした。
29ページ、(6)ヒトセロトニン受容体(2A及び2C)に対するアゴニスト活性EC50についてですが、算出されませんでした。以上の結果から、N-Propylbutyloneは動物による行動観察の結果及びマイクロダイアシス試験、モノアミントランスポーターに対する機能影響評価試験において有意な影響が認められていることから、中枢神経系への作用を科学的に類推でき、その強さは既に医薬品医療機器等法に基づき指定薬物として指定されている指定薬物と比較して同等であると考えられることから、本化合物を医薬品医療機器等法第2条第15項に規定する指定薬物に指定することが相当であると考えております。
(7)海外での流通状況についてですが、カナダ、中国で流通が確認されております。(8)海外での規制状況については、ドイツ、アメリカ・バージニア州で規制されていることを確認しております。物質3の説明は以上です。御審議のほど、よろしくお願いいたします。
○関野部会長 それでは、委員の先生方に御意見を頂きたいと思います。流通実態について、□□委員からお願いいたします。
○□□委員 本化合物について、□□□□での検出事例はありませんでした。以上です。
○関野部会長 それでは、委員の先生方に改めましてご意見を頂きたいと思います。いかがでしょうか。
では、少し確認をお願いしたいところがあります。22ページの「忙しい自発運動」という表現をされた所と、自発運動の測定では有意差がないという所で、動いている量というか、移動距離などはそんなに変わらないけれど忙しい感じという、行動上は変化が認められる表現というように理解したのです。それでよろしいのでしょうか。そういうものが具体的にちょっと分かりにくいかなと。
○事務局 そういう形で出しているデータと、1匹の行動観察というところが、若干違うようになっているのかと。
○関野部会長 そうですね。そのうち1匹だけがそういうものでも個体的には観察できるけれども、全部の値を見ておく必要があると思います。
○事務局 平均値というように見ると、有意差が出てこないところがあります。
○関野部会長 一応、確認させていただきました。ありがとうございました。ほかに先生方から御質問等はありませんか。大丈夫ですか。会場の先生方も大丈夫でしょうか。
ありがとうございました。それでは審議をまとめます。ただいま御審議いただいた物質は、医薬品医療機器等の品質有効性及び安全性の確保等に関する法律第2条第15項に規定する指定薬物として指定することが適当であると決議してよろしいでしょうか。
ありがとうございました。それでは、続いて当日配布資料4について御説明をお願いいたします。
○事務局 それでは、当日配布資料に基づいて御説明申し上げます。お手元に、資料4を御準備いただければと思います。「代謝試験に基づく指定薬物の指定について」です。1番として、指定薬物制度の概要としてまとめております。まず、指定薬物については、医薬品医療機器等法の規定に基づいて、マル1中枢神経系の興奮若しくは抑制又は幻覚の作用を有する蓋然性、マル2人の身体に使用された場合に保健衛生上の危害が発生するおそれを規定の要件としています。二つ目の○にあるとおり、この二つの要件に該当するための御判断を頂くにあたり、先ほど個別の物質でも御審議いただいたとおり、行動観察試験をはじめとするin vitro試験、作用発現に関与すると考えられる受容体結合試験等に基づいて御判断を頂いています。
次のページを御覧ください。また、危険ドラッグについては、“いたちごっこ”という状況が続いているところがありますので、科学的類推に係る合理性及び明確性の確保を担保しつつ化学構造が類似している特定の物質群を包括的に指定する制度として、包括指定制度が導入されています。
2番ですが、指定薬物の現状ということで御紹介します。昨年も、本部会において御審議いただきましたが、いわゆる大麻グミに代表されるようなテトラヒドロカンナビノール類似化合物など、国内においても危険ドラッグの流通が続いていることとともに、路面店舗の復活等、危険ドラッグの再燃の兆しが認められている状況があります。また、二つ目の○にありますが、海外の方に目を向けてみると、毎年多くのNPS(新規精神活性物質)、いわゆる危険ドラッグとお考えいただければと存じますが、その出現が毎年報告されており、2020年には77物質が新たに特定された状況が続いている状況があります。三つ目の○ですが、このような状況を鑑みて、危険ドラッグによる保健衛生上の危害を防止する観点から、今回、代謝試験に基づく指定薬物への指定について、3に記載している形で指定することについて御意見をお伺いするものです。
3に基づき、具体的な内容をご説明させていただきます。1で御説明したように、指定薬物への要件の該当性については、in vitro試験、in vivo試験の知見を収集するとともに、知見がない場合については、その試験を自ら実施するとか、蓋然性の類推が可能な場合には構造活性相関等の手法を用いた予測結果も含めて御判断いただいています。ただ、二つの●に記載しておりますように、一定の時間を要するところが現状としてありますので、必ずしも速やかに指定薬物への指定ができないことが課題として挙げられております。
他方、昨年既に指定薬物として指定しましたΔ9-THC analogとしてΔ9-THCOを挙げておりますが、こちらについては、一番最後のページにありますが、厚生労働科学研究の検討において、摂取後、生体内で酵素化学的加水分解を受け、麻薬として規制されているΔ9-THCが生成されている可能性が示唆されたということで、Δ9-THCについてはΔ9-THCのプロドラッグとして生体内で機能している可能性が示唆されています。
次のページ、次の○ですが、同様に、危険ドラッグに含まれる未規制の物質のうち、生体内での酵素化学的加水分解を受けることにより麻薬や指定薬物等の指定薬物に変換する可能性が示唆される場合、代謝後の規制薬物については、既に規制されている薬物ですので、指定薬物の要件に合致していることは明らかであると考えております。
このため、危険ドラッグに含まれている成分について、in vitroの代謝試験等の結果に基づいて、生体内での酵素化学的加水分解を受けることにより、規制薬物に変換する可能性が示唆されている未規制の物質については、その結果に基づいて指定薬物の要件を満たすものとして指定薬物への指定を可能としてはどうかを、ご提案申し上げるするものです。なお、この指定薬物部会での御審議を踏まえまして、代謝試験の結果だけでは判断ができないという場合は、従来と同様に、当該物質の中枢神経系への影響等に関する知見を集めて、改めて御審議をお願いするものです。
なお、代謝試験の結果については、先ほど御紹介した包括指定やQSARによる予測の基礎資料としても並行して活用していきたいと考えております。説明は以上です。御審議のほど、よろしくお願いいたします。
○関野部会長 ただいまの説明に関して、委員の先生方、御意見はありますか。これは今後の検討をすることに対しての許可というか、了承でよろしいですか。
○事務局 今回、この方向性について御了承いただきましたら、この方向性に基づく指定ということを個別の物質で御検討いただくということになります。
○関野部会長 皆さん、資料を御覧になっていらっしゃるかもしれませんが、代謝試験の例が後ろに載っておりますので、このような代謝試験のデータに基づいて、既に指定薬物等になっているものであれば、そのまま規制にかけられるというやり方になります。
非常に重要な決断ですので、先生方の御了承は非常に重要ですので。まず、御意見を頂きたいと思います。御懸念な点とか、何かありますか。
○□□委員 すみません。今、問題になっているTHCのanalog以外の化合物についても、適用する可能性があるということなのですよね。
○事務局 はい。おっしゃるとおりです。あくまでもTHCのanalogは1例として挙げたものですので、ほかにも代謝試験の結果、同様の知見が得られた場合は指定薬物に指定することを考えております。
○□□委員 分かりました。ありがとうございます。
○関野部会長 それは全く、人体に影響がありそうだというような、巷の、例えばWebの書き込みとか、実際の流通が確認されたものについてですよね。代謝試験で、代謝がありそうだということをあらかじめ調べて、先に規制するとか、そういうことではないですよね。
○事務局 その部分は、国内での流通状況もそうですし、海外では流通状況を確認して指定薬物の候補を考えておりますので、国内で流通していなくても海外でありそうだと分かれば、そういった知見に基づいて代謝試験を実施して、指定することはあるかと思います。
○関野部会長 そうすると、水際対策にもなるわけですね。
○事務局 そうです。
○□□委員 それって、何となくパーッと読んだとき、拝見させているときに、包括指定が、ある意味でやりやすくなってくるのかなと思ったのですが、そういう仕掛けでなくて、あくまで個別の特質ということで、この指定を行っていく方針でしょうか。
○事務局 今、考えておりますのは、個別の指定というのを考えておりますが、知見が集まれば包括指定も、検討の俎上には乗るかと思います。
○□□委員 ありがとうございます。
○□□委員 プロドラッグの濫用問題に対する解決法のアイデアと理解しました。その中で、代謝後に出てくる代謝物を見つける方法を引き続き共通のフォーマットとして利用できる評価系を、今後も考えていただければ、より迅速かつ正確な判断ができるかと思います。その辺りも引き続きこの方向性で、研究等もバックアップしていただければいいかと思います。以上です。
○事務局 ありがとうございます。
○関野部会長 それでは、Webで参加の先生方も御意見があれば是非、この機会に。今後の方向性に関わることですので、是非御意見を頂きたいと思いますが、いかがでしょうか。よろしいでしょうか。
それでは、今後、このような方向性で検討を進めていただくということで異議はないということですね。それでは、これで皆様の了承を得られたということで、次に進めさせていただきます。それでは、事務局から今後の手続について御説明をお願いいたします。
○事務局 今後のスケジュール等について御説明いたします。本件の結果につきましては、次回開催の薬事分科会で報告させていだだく予定です。本日の結果を受け、指定薬物を指定するための省令改正の手続を進める予定です。また、本日御審議いただいた物質に関する、いわゆる正規用途については、今のところ確認されておりません。いずれにしても、可能な限り適正使用に支障をきたさないように対応いたします。以上です。
○関野部会長 ありがとうございました。以上で本日の議題は終了いたしました。事務局から、次回の予定について連絡をお願いいたします。
○事務局 次回の部会日程につきましては、正式に決まり次第、改めて御連絡いたします。以上です。
○関野部会長 それでは、以上をもちまして、令和5年度第8回指定薬物部会を閉会いたします。
( 了 )
- 備考
- 本部会は、公開することにより、委員の自由な発言が制限され公正かつ中立な審議に著しい支障をおよぼすおそれがあるため、非公開で開催された。
照会先
医薬局
監視指導・麻薬対策課 課長補佐 竹内(2779)