2024年7月17日 第192回労働政策審議会労働条件分科会 議事録

労働基準局労働条件政策課

日時

令和6年7月17日(水) 14:00~16:00

場所

厚生労働省省議室
(東京都千代田区霞が関1-2-2 中央合同庁舎5号館9階)

出席者

公益代表委員
荒木委員、川田委員、黒田委員、藤村委員、両角委員
労働者代表委員
大崎委員、川野委員、櫻田委員、冨髙委員、水野委員、世永委員
使用者代表委員
鬼村委員、佐久間委員、佐藤(晴)委員、鈴木委員、田中委員、鳥澤委員、兵藤委員、松永委員
事務局
岸本労働基準局長、尾田審議官(労働条件政策、働き方改革担当)、佐々木総務課長、澁谷労働条件政策課長、村野監督課長、五百旗頭労働関係法課長、大野賃金課賃金支払制度業務室長室長、萬場金融庁信用制度企画室長、池邉労働関係法課課長補佐、水谷金融庁企画市場局総務課課長補佐、小嶋労働条件企画専門官

議題

  1. 「経済財政運営と改革の基本方針2024」等について(報告事項)
  2. 「事業性融資の推進等に関する法律」の成立について(報告事項)

議事

議事内容
 
○荒木分科会長 それでは、ほぼ定刻でございますので、ただいまから第192回「労働政策審議会労働条件分科会」を開催いたします。
 本日の分科会は会場からの御参加とオンラインでの御参加、双方で実施ということになります。
 本日の委員の出席状況ですが、公益代表の安藤至大委員、佐藤厚委員、水島郁子委員、労働者代表の西尾多聞委員、藤川大輔委員が欠席と承っております。
 議事に入ります前に、事務局の異動について紹介をお願いいたします。
○労働条件企画専門官 事務局でございます。
 本年7月5日付けで事務局の異動がございましたので、紹介させていただきます。
 大臣官房審議官(労働条件政策、働き方改革担当)の尾田でございます。
 総務課長の佐々木でございます。
 監督課長の村野でございます。
 労働関係法課長の五百籏頭でございます。
 賃金課賃金支払制度業務室長の大野でございます。
 なお、労働基準局長の岸本でございますが、遅れての出席予定となっております。
 事務局からは以上です。
○荒木分科会長 ありがとうございました。
 カメラ撮りはここまでということでお願いいたします。
 本日の議題に入ります。まず、本日の議題1は「『経済財政運営と改革の基本方針2024』等について」です。事務局から説明をお願いいたします。
○総務課長 それでは、資料について御説明させていただきます。
 資料1「『経済財政運営と改革の基本方針2024』等について」という資料をお手元に御用意いただければと思います。表紙に書かれておりますが、今年の6月21日に目次にある「経済財政運営と改革の基本方針2024」「新しい資本主義のグランドデザイン及び実行計画」「規制改革実施計画」、こちらの3つが閣議決定されております。それぞれの内容のうち、労働条件分科会に関係する部分について御説明させていただきたいと思います。
 資料をおめくりいただきまして、まずは骨太方針2024についてです。資料の2ページ目は経済財政諮問会議について書かれております。
資料3ページをお開きいただければと思います。いろいろ書かれておりますが、1つ目、ジョブ型人事(職務給)の導入についての記載がございます。三位一体の労働市場改革を進める上で、個々の企業の実態に応じたジョブ型人事(職務給)の導入を促進することとされており、既に導入している多様な企業の事例を掲載したジョブ型人事指針を今夏に公表することとされております。下のほうは、賃上げの促進部分になります。非正規雇用労働者について、都道府県労働局・労働基準監督署による同一労働・同一賃金のさらなる徹底を進めることとされております。
 資料4ページ上段、勤務間インターバル制度の導入促進ということで、多様な人材が安心して働き続けられる環境の整備として、勤務間インターバル制度の導入促進に取り組むこととされております。
 その下、外国人材の受入れの部分になりますが、外国人労働者について、「最低賃金及び同一労働・同一賃金の遵守の徹底等を通じて、適正な労働環境を確保する」とされております。
 おめくりいただきますと、「新しい資本主義のグランドデザイン及び実行計画」の部分になります。
 6ページは会議の概要などについて書かれておりますので、7ページを御覧いただければと思います。資料の上段「副業・兼業における割増賃金の支払に係る労働時間の通算管理の見直し」の部分になります。労働者が副業・兼業を行う場合の割増賃金の支払に係る労働時間の通算管理の在り方について、労働基準法等の関係法令における解釈の変更を含めて検討し、結論を得ることとされております。こちらについては後ほど規制改革実施計画の中でも御説明させていただきます。
 下の「非正規雇用労働者に対する同一労働・同一賃金制の施行強化」の部分になりますが、非正規雇用労働者の処遇改善のため、同一労働・同一賃金制の施行に向けて、労働基準監督署が施行の徹底を図っていくこととされております。
 資料の8ページ、ジョブ型人事指針の策定の部分になります。骨太の方針の中でも触れておりますけれども、今年の夏にジョブ型人事指針を公表することとされております。当該指針の策定に当たりましては、各企業の等級制度、報酬制度、人事異動等の雇用管理制度、労使コミュニケーション等の導入プロセスなどについて提供いただくよう取り組むこととされております。
 資料の9ページ上段、「スタートアップ等に関する裁量労働制等の運用明確化」の部分になります。「スタートアップ等の労働者や新技術・新商品の研究開発等に従事する労働者に対する裁量労働制等の運用明確化等を図る」とされております。
 下の「解雇無効等の金銭救済制度の検討」の部分になります。「労働者が裁判で勝訴し、無効な解雇であると認められた場合に、労働者の請求によって使用者が一定の金銭を支払い、当該支払によって労働契約が終了する仕組みについて、検討を進める」とされております。
 次のページから規制改革実施計画になります。
 11ページは会議の委員名簿などになりますので、後ほど御覧いただければと思います。
 12ページ上の段「賃金の『デジタル払い』の実現」の部分になります。特に実施時期の辺りに関係する部分になりますが、資金移動業者の口座への賃金支払制度について、資金移動業者の申請件数及び審査状況については既に公表し、措置済みとなっております。
 また、本年度中に制度の課題の有無の検証として、制度利用状況の把握を開始するとともに、本年度上半期までに資金移動業者向けのQ&Aの作成、公表することとされています。
 下の段「行政手続の英語対応」になります。こちらは資産運用特区における要望事項になります。本年度下半期に雇用保険や労働保険に係る法人設立に伴う届出手続の英語での申請書の作成・提出が可能となるよう、所要の措置を講ずることとされております。
 資料の13ページを御覧いただければと思います。「フリーランス・ギグワーカーの労働者性及び保護の在り方」の部分になります。昭和60年の労働基準法研究会報告に基づく労働基準法上の労働者性の判断基準について、現行の判断基準を引き続き基礎としつつ、昭和60年当時は想定されていなかったAIやアルゴリズムなどのデジタル技術の活用等を踏まえた判断基準の明確化について、本年度検討を開始し、結論を得次第、その結果を踏まえ、就業者・事業者双方にとって分かりやすく解説するなどの周知を行うこととされております。
 資料の14ページを御覧いただければと思います。引き続き「フリーランス・ギグワーカーの労働者性及び保護の在り方」になりますが、業務委託の発注者が安全管理または健康確保のために取引相手に対して行う「指示」「推奨」その他の連絡が就業者の労働者性を肯定する要素である「指揮命令」や「拘束」に該当するのではないかとの懸念から、発注者が当該就業者自身及び顧客のための安全管理または健康確保に資する連絡を躊躇するおそれがあるとの指摘を踏まえ、本年度中に判断基準における「指揮命令」や「拘束」として労働者性を肯定する方向に働くものとそうでないものを整理し、発注者及び就業者に周知することとされております。
 おめくりいただきまして、資料15ページ、同じく「フリーランス・ギグワーカーの労働者性及び保護の在り方」の部分になります。①などのところになりますが、労働者性の有無の判断について、自らを労働基準法上の労働者と考える者から労働基準関係法令違反に関する相談を受ける窓口を整備する、労働基準監督署は、自らを労働基準法上の労働者だと考える者からの申告に対して、関係者から資料が収集できないなどの特段の事情がない限り、原則として、労働者性の有無の判断を行うことを就業者に対して明確化するなど、労働者性の有無の判断が適切に行われるよう、本年度必要な措置についての検討を開始することとされています。
 16ページを御覧ください。「労使双方が納得する雇用終了の在り方」の部分になります。
 解雇無効の金銭救済制度について、本年度実施予定の一般労働者に対するアンケートによる実態調査において、調査対象者に十分な数の中小企業及び労働組合に非加入の労働者その他同分科会における議論のために必要と考えられる労働者も含めることとし、併せて労働審判等の現行の解雇に関する紛争解決制度や、解雇無効時の金銭救済制度によって職場復帰を前提としない選択肢が与えられること等に係る労働者自身の声を幅広く把握し、当該制度ができることで救われる人が存在するか否かについて定量的に示すこととされており、当該調査の結果を得て、速やかに労働条件分科会において議論を再開することとされています。
 また、当該調査、解雇等無効判決後における復職状況等に関する調査、個別労働関係紛争事案における雇用終了事案の内容分析及び海外における解雇の金銭救済制度に関する有識者に対するヒアリング調査について、終了予定時期を明示し、着実に実施することとされております。
 17ページ、「『自爆営業』の根絶」になります。使用者が、労働者に対し、労働者の自由な意思に反して当該使用者の商品・サービスを購入させる自爆営業について、本年度4つの取組を行うこととされております。左側のほうに小さくaと書かれておりますが、1つ目になります。法令上の論点を整理した上で、労働基準法、労働契約法、民法上違法となり得る類型や、パワーハラスメントに該当し得る使用者の言動の例について、パンフレット等を作成し、周知することとされております。
 その下、cの部分になりますが、労働者から相談が寄せられた場合、必要と認められるときは、パワハラ防止指針に定める事業主の雇用管理上講ずべき措置について、必要な方策を講ずるよう、労働施策総合推進法に基づく助言・指導を行うこととされております。
 その下のdになります。自爆営業の発生原因が業界等の風習や慣習にある場合があることや、事業所管府省が自爆営業の実態について直接的に把握することが必ずしも容易ではないことを踏まえ、厚生労働省は、自爆営業に関連して生じた労働問題の相談について、その件数や相談内容を業界別に整理し、事業所管府省に情報共有することとされています。
 その下のeになります。その上のdの情報共有を受けた事業所管府省は、必要に応じて自爆営業を抑止するための取組を府省横断的に推進することとされています。
 次の18ページ、「副業・兼業の円滑化」になります。これも小さい英数字を見ていただければと思います。1つ目のaですが、割増賃金の支払に係る労働時間の通算管理の在り方について、本年1月から学識者を参集して開催している労働基準関係法制研究会において御議論いただいておりまして、本年度結論を得ることとされています。
 その下のbになります。本年度、副業・兼業に関し、施策の立案に資するよう、その実施形態や割増賃金の支払方法等の実態を把握し、結果を公表することとされております。
 3つ目、cになります。本年度、副業・兼業を実施する場合において、使用者と競業する業務を行ってはならないという競業避止義務について、資料19ページの①になりますが、「副業・兼業の促進に関するガイドライン」に記載されている「競業により自社の利益が害される場合」及びモデル就業規則に記載されている「競業により、企業の利益を害する場合」の内容について、副業・兼業を円滑化する観点から、営業秘密の保護の要請及び裁判例も踏まえつつ、競業避止義務として適切でないと判断され得る場合を示し、労使への周知を行うとともに、②の部分になりますが、各企業において、保護の必要がある正当な利益やそれを踏まえた競業行為の範囲等について十分に協議して、双方が納得感を持った上で、個別の申請に対する諾否の判断が行われること等が重要である旨を明確にすることとされています。
 ただいま御説明申し上げた閣議決定の内容を踏まえた個別の対応状況として、労働基準法等に基づく届出等に係る電子申請の状況、それから解雇無効時の金銭救済制度については、それぞれ担当課から引き続いて御説明させていただきます。
○監督課長 続きまして、監督課になります。
 労働基準法等に基づく届出等に係る電子申請の状況を説明させていただきます。資料は21ページを御覧ください。労働基準法等に基づく届出等については、令和3年の規制改革実施計画に基づき作成された厚生労働省の「基本計画」において、年間10万件以上の時間外・休日労働に関する協定届、いわゆる36協定、就業規則届及び1年単位の変形労働時間制に関する協定届、この3つの届出を対象として、令和5年度までに20%まで引き上げることを目標に電子申請利用率の向上を図ってまいりました。
 令和5年の実績については、資料22ページを御確認いただければと思いますが、3手続の合計の電子申請利用率は、令和5年の実績において31.4%であり、目標を達成したところでございます。今後は電子申請利用率を令和8年度までに50%まで引き上げることを目標として進めていきたいと考えております。
 今年度においては、21ページの下のところに書いておりますが、令和5年の規制改革実施計画に基づき、36協定届について、届出の内容が各事業場で異なる場合でも本社一括届出ができるよう、労働条件ポータルサイト内にある申請様式作成支援ツールを改修し、e-Govとの連携による電子申請機能を設ける予定としております。今後も引き続き電子申請利用率の向上を図ってまいりたいと考えております。
 以上になります。
○労働関係法課長 続けて資料23ページを御覧ください。労使双方が納得する雇用終了の在り方に関し、現在の対応状況及び今後の予定について御説明をいたします。厚生労働省としましては、令和4年12月の労働条件分科会長の総括を踏まえ、本制度に係る今後の議論に資するよう実態調査を実施しているところです。
 なお、規制改革実施計画においては、各調査の終了予定時期を明示することも実施事項とされておりますので、こちらの資料でその点も併せて記載をさせていただいております。
 まず、令和5年度において、解雇等無効判決後における復職状況等に関する調査を実施いたしました。こちらは裁判で解雇無効と判断された事案における復職状況や、労使間で和解できずに判決に至った理由等を明らかにするため、弁護士団体に所属する弁護士の方々を対象としたアンケート調査となります。本調査につきましては、後ほど御紹介をさせていただきます。
 次に、今後の実態調査としまして、令和6年度に3件の調査を実施したいと考えております。まず、個別労働関係紛争処理事案における雇用終了事案の内容分析になります。こちらは裁判に至っていない解雇紛争に係る実態等を明らかにするため、都道府県労働局が実施する個別労働紛争解決制度におけるあっせん事案の分析・調査を行う予定です。
 2つ目の調査は、海外における解雇の金銭救済制度に関する有識者に対するヒアリング調査を考えております。こちらは諸外国における制度の運用実態、社会的影響等を明らかにするため、諸外国の制度に見識のある法曹関係者や労使団体に対してヒアリング調査を行う予定です。
 3つ目の調査ですが、解雇事案等に対する労働者の対応実態等を明らかにするため、一般の労働者の方々に対するアンケート調査も実施したいと考えております。
 続いて、24ページを御覧ください。こちらは令和5年度に実施し、先週7月12日(金)に公表されました解雇等無効判決後における復職状況等に関する調査の概要資料となります。独立行政法人労働政策研究・研修機構が主体となって行った調査で、日本労働弁護団、経営法曹会議等の弁護士団体に所属されている弁護士の方1,655名に対し、平成30年9月から令和5年8月までの5年間に終局した解雇・雇止めに係る訴訟事件についてアンケートを行ったものであり、結果の概要を一部掲載させていただいております。
 25ページを御覧ください。こちらは解雇無効判決後の復職状況と復職しなかった理由の調査結果です。解雇無効判決となった99名の労働者のうち54.5%が「復職していない」との回答があり、その理由については、「復職後の人間関係に懸念」「訴訟で争ううちに退職する気になった」「労働者の復職に対する使用者の拒否が強い」が上位となっています。
 続いて、26ページを御覧ください。こちらは復職後の就労状況と復職後に退職した理由の調査結果です。「復職した」と回答のあった労働者37名のうち8割強が継続就業、2割弱が復職後に退職となっており、母数が少ないことに留意が必要となりますが、労働者が復職後に退職した理由は、「使用者からの嫌がらせ」が85.7%、「職場に居づらくなった」が42.9%となっております。
 続いて、27ページを御覧ください。こちらは裁判所の和解案を拒絶した当事者が労使のどちらなのかと、拒絶した理由を調査した結果です。労働者側から和解案を拒絶した割合は45%で最も多く、次いで労使双方から拒絶、使用者側から拒絶となっております。労働者が拒絶した理由は、「『合意退職』の和解案だったが、労働者が復職を希望」が最も多く、34.7%で、次いで「『合意退職』の和解案だったが、解決金額が低かった」が30.6%となっています。
 使用者が和解案を拒絶した理由は、「『合意退職』の和解案だったが、使用者が金銭支払を希望せず」が19.4%、「『地位確認』の和解案だったが、使用者が復職を希望せず」が15.3%となっております。
 次に、28ページから30ページは労働者が解雇等訴訟を提起した理由をまとめておりまして、強肯定、強く当てはまるという回答、円グラフの青色の部分に当たりますが、ここの理由といたしましては、28ページ右上の「給与収入など経済的利益を守りたかった」63.2%や、28ページ右下の「事実関係や解雇の有効性の有無をはっきりさせ、公正な解決を得たかった」47.1%などとなっております。
 続きまして、31ページ、32ページを御覧ください。使用者が解雇等訴訟に期待したことをまとめておりまして、強肯定、強く当てはまるという回答、円グラフの青色部分ですけれども、この理由といたしましては、31ページ左下の「会社の権利を実現し(あるいは守り)たかった」35.3%や、31ページ右下の「事実関係や解雇の有効性の有無をはっきりさせ、公正な解決を得たかった」28.1%などとなっております。
 御説明は以上です。
○荒木分科会長 ありがとうございました。
 ただいま資料1について事務局から御説明をいただきました。
 ただいまの説明につきまして、御質問、御意見があればお願いいたします。
 なお、オンライン参加の皆様におかれましては、発言の希望がある旨をチャットのほうに書き込んでお知らせください。いかがでしょうか。櫻田委員、お願いします。
○櫻田委員 ありがとうございます。
 私は、新しい資本主義のグランドデザイン及び実行計画について意見を申し上げたいと思います。9ページの③、「スタートアップ等に関する裁量労働制等の運用明確化」ということが掲げられていますが、現時点で、スタートアップについて確立された定義はないと認識しております。そうした状況の中で、スタートアップという企業カテゴリーに特化して行政が何らかの考え方などを示すということが果たして適当なのかということは疑問に思っております。例えば形式的に新会社を設立し、その会社を利用して労働時間規制の適用除外等の範囲を拡大する動きを助長しかねないと思っておりますので、このような規制緩和の方向での運用の明確化は行うべきではないと考えております。
 そもそも管理監督者については、労働基準関係法制研究会の中でも要件の明確化等の意見も上がっていると認識しております。裁量労働制や、いわゆる名ばかり管理職などの使用者による恣意的かつ不適切な運用を是正するということ自体が必要なことであると思いますし、それはスタートアップか否かということにかかわらず、現行制度についての正しい理解を促進する方向で社会全体への周知を図るべきではないかと考えます。
 ありがとうございます。
○荒木分科会長 ありがとうございました。
 では、オンラインから使用者側の佐藤委員、お願いいたします。
○佐藤(晴)委員 ありがとうございます。
 私からは「規制改革実施計画について」の中の解雇無効時の金銭救済制度について意見を申し上げたいと思っております。先ほど資料の御説明がありましたけれども、25ページ、解雇等無効判決後の復職状況等に関する調査の結果として復職の有無をお示しいただきました。令和4年12月の第184回分科会で質問させていただきましたが、そこの事項に対する御回答でありまして、まずは御礼申し上げます。ありがとうございます。
 拝見しますと、先ほど御説明にもありましたとおり、解雇等が無効であるとの判決が出たにもかかわらず、ここに記載の「復職後の人間関係に懸念」であったり、「訴訟で争ううちに退職する気になった」、または「労働者の復職に対する使用者の拒否が強い」などの理由で、半数以上、54.5%のケースで復職をしていないということが分かります。
 さらに、次の26ページを拝見しますと、復職をした場合でも2割弱、18.9%ということで、母数が少ないということは承知してございますが、2割弱のケースで退職をしているということが分かります。
 このような実態を踏まえますと、現行の地位確認請求に加えて、解雇無効時の金銭救済制度、当分科会でも検討しておりますけれども、これを導入して、使用者、労働者の間の紛争解決の選択肢を増やすことの意義は、実態を踏まえましても極めて大きいと改めて認識したところでございます。
 資料で申し上げますと、16ページに規制改革実施計画の内容が書いてございますが、この内容に従って必要な調査を行っていただいて、速やかに当分科会での議論が再開されることを期待いたします。
 以上、私の意見でございます。
○荒木分科会長 ありがとうございました。
 オンラインから大崎委員、お願いいたします。
○大崎委員 大崎です。
 私からは、新しい資本主義実行計画の中で、人への投資に向けた中小・小規模企業等で働く労働者の賃上げ定着に関して、2点意見を申し上げます。
 1点目は非正規雇用労働者の処遇改善についてです。実行計画ではいわゆる同一労働・同一賃金の徹底が掲げられています。これに関しては、地裁ではありますが下級審の裁判例も出ています。具体的には桜美林学園事件や紫雲会事件などです。これらはあくまで個別の裁判例だと思いますが、いわゆる同一労働・同一賃金に関する法規定の趣旨を踏まえ、改めて厚労省として検証を行うことが必要ではないかと思っております。
 2点目は、副業・兼業についてです。18ページで御説明があった労働時間の通算管理の在り方について、「労働基準法等の関係法令における解釈の変更も含めて検討」という記載がありますが、そもそも副業・兼業を合わせた上で長時間、過重労働が生じないよう、労働時間通算管理を厳格に行うことが不可欠であると思っております。
 副業・兼業を促進することを目的として、制度が複雑であるといったことを理由に、割増賃金規制を適用しないといった、労働者の命と健康を危険にさらすような解釈の変更による緩和は行うべきではないと考えております。
 副業・兼業はあくまで個別労使の判断で行うものでありまして、政府が推進すべきではないと考えますし、まずは本業だけでも生活できるよう処遇の改善、格差是正を進めていくことが重要であると考えています。
 以上です。
○荒木分科会長 ありがとうございました。
 続いて、兵藤委員、お願いいたします。
○兵藤委員 兵藤でございます。御指名ありがとうございます。
 私からは規制改革実施計画の中の解雇無効時の金銭救済制度について申し上げたいと思います。解雇等無効判決後における復職状況等に関する調査の結果として、27ページに和解案を拒絶した当事者、拒絶理由をお示しいただきました。このうち使用者が拒絶した理由については、私が第184回の分科会のときに御質問させていただきました事項に対する御回答であったと認識しておりまして、御対応にまずは感謝申し上げます。ありがとうございます。
 この回答内容を拝見いたしますと、使用者が拒絶した理由として多いのが「『合意退職』の和解案だったが、使用者が金銭支払を希望せず」というのが19.4%。3番目になりますけれども、「『合意退職』の和解案だったが、解決金額が高かった」13.9%などが上位に来ています。
 労働契約解消金の水準にもよるところだとは思いますが、当分科会で検討している金銭救済制度が創設されれば、使用者の拒絶により紛争の円滑な解決が図られない事案において、これは労働者の保護に資するのではないかと改めてこのような印象を受けたところでございます。
 また、第184回分科会では解雇された労働者が救済機関を利用していない場合についてもお尋ねをいたしましたが、この点については本日の調査結果からも明らかになっておりません。23ページに今後の予定として3件の調査分析の実施が予定されていると記載されておりますので、今後におかれましては、一般労働者に対するアンケート調査の際の設問としてぜひ盛り込んでいただくことを検討いただきたいと思っております。
 私からは以上でございます。
○荒木分科会長 ありがとうございました。
 続いて、鬼村委員、お願いいたします。
○鬼村委員 御指名ありがとうございます。
 私のほうからは新しい資本主義のグランドデザイン及び実行計画の裁量労働制の見直しの部分について意見をしたいと思います。裁量労働制そのものは、企業からいたしますと、働き手の個々の高度な専門性であったり、あるいは業務遂行力をより組織の成果につなげられるようにするものであると思っておりますし、働き手の方々からしますと、自己の能力を最大限に発揮したいとか、あるいはライフステージとの両立をより円滑に進めたいとか、こうした自立的な働き方を求めるニーズにも合致した制度であると思っておりますので、非常に重要なものであると考えております。
 厚生労働省の調査でも、裁量労働制適用者の約8割の方が適用に満足、9割の方が業務の遂行や時間配分などに裁量を持って働いているというデータがあったと思います。しかしながら、対象業務の狭さ、あるいはその解釈、さらに手続の煩雑さなどを背景に、適用率はかなり低いというのが現状ではないかと思います。
 今回、新しい資本主義のグランドデザイン及び実行計画において、裁量労働制等の運用の明確化というものが盛り込まれておりますけれども、裁量労働制の活用拡大のために、運用明確化にとどまらず、さらなる制度そのものの運用の緩和も必要であろうと考えております。
 また、この実行計画の前に公表された自民党の新しい資本主義実行本部経済構造改革委員会の提言では、裁量労働制の運用緩和が盛り込まれております。政府の実行計画でこの表現が後退したというのは非常に残念に感じております。
 今後労働力が減少していく中で、日本の発展に向けてイノベーションを起こして労働の付加価値を高めていくというような変化が求められていくと思いますが、こうした時代において厳格な労働時間規制に縛られない働き方ができる裁量労働制の活用というものは極めて重要であろうと思います。改めまして運用の緩和に向けて大胆な見直しの検討を厚生労働省にはお願いしたいと思っております。
 以上でございます。
○荒木分科会長 ありがとうございました。
 続いて、松永委員、お願いいたします。
○松永委員 松永でございます。
 私のほうから2点コメント、御意見をさせていただきたいと思っています。
 1点目が規制改革実施計画の中の18ページです。副業・兼業の際の労働時間の管理の円滑化という観点ですけれども、副業・兼業に関しましては、従業員の皆さん一人一人のキャリア意識の形成ということにも資する施策だと思っております。当社においても労働組合と長い議論をした結果、一部トライアルを含めて副業・兼業というのを実施してきているという経緯がございます。ですので、先ほどありましたように、従業員の健康管理ということで言いますと、それは一番大事なことだと思っています。ただ、割増賃金の支払に関する労働時間の通算ということに関しましては、この見直しについて早期に実現をしていただければなと思っております。これが1点目でございます。
 2点目が裁量労働。先ほど来いくつかコメントがありましたが、私のほうからはスタートアップ等ではなく、新技術・新商品の開発というところです。対象業務の明確化ということはぜひ進めていただきたいのですけれども、やはり変化のスピードが激しい状況において、対象業務の中身というのを一番よく分かっている労使の議論があって、例えば過半数労働組合があるような場合、そこの労働組合と会社の議論の中で対象業務というのを判断していくということもぜひ視野に入れていただければなと思っております。
 私からは以上でございます。
○荒木分科会長 ありがとうございました。
 続いて、田中委員、お願いいたします。
○田中委員 田中です。
 私からも1点、解雇無効時の金銭救済制度について発言させていただきます。
 先ほど佐藤委員からも発言がございました。解雇無効時であっても復職できないという実態が多い中ですので、この金銭救済制度が選択肢としてあるということはとても有用だと思っております。
 解雇をめぐる事案については、労働審判手続が取られるということもございます。私も関わったことがありますが、この中で金銭解決を模索するということが多々あるのですけれども、その際、解決金の金額、水準の判断が難しいということが問題としてあるというのが実態です。この分科会で検討している金銭救済制度においては、労働契約解消金の上限・下限を設けるという想定もされています。これが予見可能性を高めて、紛争の早期解決に資すること、また、労働審判のような枠組みにおける金銭解決にもよい影響を与えるということが期待されるものだと考えています。早期に議論が再開されることに期待しているというところです。
 私からは以上です。
○荒木分科会長 ありがとうございました。
 続いて、鳥澤委員、お願いいたします。
○鳥澤委員 
 資料の取りまとめ及び御説明、ありがとうございます。
 私も同じく資料9ページの4及び16ページに記載されています解雇無効時の金銭制度について御意見を申し上げます。
 まず、前提として労働力人口の減少が見込まれている中では、人材はこれまで以上に非常に貴重なものとなり、中小企業においては従業員に一層活躍してもらえるよう環境整備をしていく努力が求められておりますし、安易な解雇を行うべきではなく、また行うことがなかなかできないということは前提として申し上げます。一方で、それでも様々な要因から無効な解雇と判断される状況に至り、労働者が職場復帰を検討するに当たって、中小企業では規模の問題から環境を大きく変える措置を講じることが困難なケースが多々あります。その場合、労働者本人が職場復帰を希望しないということも十分に想定されます。
 25ページにありますように、一番多いのが「復職後の人間関係に懸念」とございますが、規模の小さい中小企業においては、職場環境を変える人事配置をすることが不可能という場合も考えられます。職場復帰を望まない労働者が無効な解雇に関する紛争解決の手段の一つとして、金銭救済制度は労働者の多様な救済の選択肢となり得ます。また、解雇無効時の金銭救済制度は、労使双方の予見可能性を高め、迅速な紛争解決への効果も期待できることから、今後も引き続き検討をお願いしたいと思います。
 私からは以上でございます。
○荒木分科会長 ありがとうございました。
 それでは、会場から佐久間委員、お願いいたします。
○佐久間委員 ありがとうございます。
 私からは、今回取りまとめていただいた点と、それから労働基準関係法制研究会が今、開催されておりますけれども、こちらでも非常に多くのテーマを議論していただいています。今回ご説明をいただきました項目について、労働条件分科会での審議事項と労働基準関係法制研究会での課題項目について、例えば重なるところを先に審議していくこととする等、これからの分科会と研究会の方針が分かりにくいので、もっと明確にしていただきたいと思います。どちらを取り上げていくかの観点です。
 例えば、1点目とすれば、「副業・兼業の円滑化」では割増賃金の支払に係る労働時間の通算制度について、主たるところで8時間労働し、次のところで働くとすぐ割増賃金が発生してしまうとなると、労働者側も事業者のほうに遠慮してしまって言わなかったり、割増賃金が通常の賃金に置き換えられてしまったりするということがあると思います。その辺の通算について、より円滑にしていただきたいなと思いますので、取り組んで行く必要があると思います。
 2点目は「フリーランス」の関係ですけれども、フリーランスは事業者という立場に変わりないと思うのですが、そこで実際に労働者性があるのにフリーランスを名乗っているということで、事業者側としてフリーランス自身にとっても不利となる状況が出てきますので、明確にしていく必要があります。また、労働者性、事業者性を判断し決定する機関というか、例えば労働基準監督署、労働局に相談をして、実態に合わせた労働者性を見極める仕組みをつくっていただくのもよろしいのではないかなと思います。
 3点目でございます。今、使用者側のほうから御意見が出ていると思うのですけれども、「解雇無効時の金銭救済制度の導入」について、調査を再度、実施していただいた結果が今回、出ていると思います。私たち中小企業経営にとっては、従業員の解雇というのはあってはならないことだと思うのですけれども、そこで発生してしまった場合、どこまでかかっていくのか。例えば費用面とか時間面とか、中小企業でバックペイの問題とか、それがずっと引き続いてあると、裁判も三審で3回以上やらなければいけないということで、非常に負担感というのも強くなります。ここで一定のルールを設けていただくというのはやはり必要なのではないかと考えます。ぜひこの3点、「副業・兼業の円滑化」、そして「フリーランス」の関係、「解雇無効時の金銭救済制度の導入に向けての取組」というのを再開、審議をしていただきたいと考えております。
 以上でございます。
○荒木分科会長 ありがとうございました。
 それでは、水野委員、お願いします。
○水野委員 ありがとうございます。水野でございます。
 経済財政運営と改革の基本方針2024について、本日の御説明にはない部分ですが、譲渡担保契約や所有権留保契約に関する法制化に向けた準備という記載があります。
 担保制度の活用に関しては、資金調達の促進をはかる取り組みの一環であると思いますが、特に倒産時において、労働債権には一般先取特権があるものの、担保権などには劣後しているわけです。不動産や工場の機械など、会社の財産に担保が設定されている場合、担保が実行されてしまうと、労働債権を含め他の債権額を確保することが非常に難しく、結果的に労働者の未払いの賃金や退職金を得られなくなってしまう可能性もあると思っています。
 倒産となれば、当然労働者にとっても職を失い、非常に厳しい状況に陥るということになりますので、そういう場合でも労働者がしっかりと未払賃金などを確保できるように、労働債権を担保権に優先させるような仕組みが必要ではないかと思っています。
 譲渡担保契約や所有権留保契約に関する論議は、現在法制審で進められていると伺っておりますが、ぜひ厚生労働省におかれましても実効性ある労働者保護の仕組みがしっかり整備されるよう、法務省との連携を含めて取組の強化をお願いしたいと思います。
 私からは以上です。
○荒木分科会長 ありがとうございました。
 川野委員、お願いします。
○川野委員 御指名ありがとうございます。
 先ほど来、使用者側の委員から解雇等の無効判決後の復職状況等の調査結果に関わる様々な発言があったと存じますが、データの読み方について、やはり労使の隔たりがあると改めて感じたところでございます。
 例えば25ページの前提には、司法において解雇無効の判断が下された後に「復職しなかった」理由を記載いただいていますけれども、これは「復職できなかった」と読み取るべきだと思っています。復職できなかった理由として一番多いのは職場の人間関係であり、使用者からの拒否、さらには訴訟中に様々なやり取りで復職しても幸せになれないことを感じ取った結果が数字として現れているのだと思います。
 26ページ、復職したけれども退職した理由に「使用者からの嫌がらせ」や「職場に居づらい」ということが挙がっていることを踏まえると、司法で解雇無効が認められ、本人も復職を希望しているにもかかわらず、職場の環境が整っていないことで復職できない、あるいは早期退職が起こっているという実態を重く受け止めるべきではないかと思っています。
 以上です。
○荒木分科会長 ありがとうございました。
 ほかにはいかがでしょうか。冨髙委員、お願いします。
○冨髙委員 
 御説明いただきありがとうございました。
 まず、規制改革実施計画の中でフリーランスについて触れていただいております。今、政府全体でフリーランスに対する保護強化に向けて一歩踏み出したというところで、これから様々な保護策の強化が図られると思いますが、現段階では、形式的には業務委託であっても、実態としては労働者であるケースもまだ見受けられると考えております。既に取り組んでいただいておりますが、少なくとも現行の判断基準に照らして労働者性が認められる方々に対しては、相談窓口の整備などにとどまらずに、確実に労働関係法令が適用されるよう、一層の対応強化をいただきたいと思っております。
 現在、労働基準関係法制研究会において労働者性の見直しもテーマのひとつになっています。現行の労働者性の判断基準が示されてから40年近く経過している中で、労働者概念の早急な見直しを行い、労働者の範囲を広げていくことも含めて、曖昧な雇用で働く方たちの法的な保護の強化を図っていく格好の機会ではないかと思いますので、意見として申し上げておきたいと思います。
 それから、川野委員からもございました解雇の無効時の金銭救済制度の検討でございます。先ほど事務局から調査結果については、母数が極めて限られている点は留意が必要との説明がございました。その前提で結果を見てみますと、復職していない労働者が半数以上というデータもありますが、その理由の中では、「使用者からの嫌がらせ」や「職場に居づらくなった」等の理由で退職された方もいらっしゃるという実態が示されています。そうした点も踏まえると、監督指導を一層強化することで、不当解雇や労働関係法令違反が生じる職場をなくしていくことが何よりも重要ではないかと改めて考えたところです。
 先ほど鳥澤委員から中小企業では配置転換もなかなか難しいという発言もありましたが、そのような状態で新たな金銭救済制度をつくれば、不当な解雇が起こるような職場でも金銭解決をすれば済むということになり、職場環境の改善に取り組まない企業を放任するような制度となりかねないと思います。職場環境が改善されなければ、第二、第三の被害者を生じさせてしまうことを強く懸念しております。本日、使用者側委員の御発言をお伺いし、改めて新たな仕組みを検討する必要はないとの思いを強くもったところでございます。
 最後に、今回の議題と直接的には関係ないのですけれども、報道等でも出ておりますが、内閣府において「賃上げを幅広く実現するための政策アイデアコンテスト」が行われ、その中で定時までは労働者として、退勤後は個人事業主として働くことで賃上げを実現するというアイデアが優勝したと伺っております。これは社会保険制度の意義や労働時間規制の趣旨からしても大いに問題があると考えております。内閣府の取り組みではありますけれども、まさに労働基準法の見直し議論をこれから本審議会でもスタートしていくという重要なタイミングということを踏まえれば、政府全体で労働関係法令に対する規範意識を高めるような取組も必要ではないかと考えます。
 以上でございます。
○荒木分科会長 ありがとうございました。
 鈴木委員、お願いします。
○鈴木委員 御指名ありがとうございます。
 私からも解雇無効時の金銭救済制度について一言述べさせていただきたいと思います。先ほど兵藤委員、佐藤委員からも言及がありましたが、本件について前回議論したのが1年半以上前ということで、大分時間が経ったなという印象を受けております。また、先ほど事務局からも御紹介がありましたとおり、規制改革実施計画では「令和6年度に調査完了、結果を得て速やかに議論再開」とされております。分科会における本格的な議論にはなお時間を要するため、私としては少々残念な気持ちになるところもございます。
 その上で、解雇等無効判決後における復職状況等に関する調査の結果を紹介した28ページを見ますと、労働者が解雇等訴訟を提起した理由として、「給与収入など経済的利益を守りたかった」ということを肯定する回答が84.5%に上り、訴訟を通じて得られる金銭が労働者の重要な関心事であることを示唆していると受け止めました。
 また、弁護士の中にも労働審判の新受件数が大都市圏を中心に近年減少している背景・理由として、金銭解決の水準が低いことの可能性を示唆する先生もいらっしゃいます。
 23ページに今後の予定として3つ調査・分析の実施が記載されています。いずれも重要な内容だと認識しておりますが、私はとりわけ一般労働者に対するアンケート調査に関心を持っているところです。規制改革実施計画によれば、この調査を通じて、金銭救済制度ができることで救われる人が存在するか否かについて定量的に示すとあります。第184回分科会で公益の川田先生が御指摘になられたように、違法な解雇に対する救済の在り方について、労働者側の選択肢を増やすものと言えるのかどうか、この点を客観的に確認する作業に今後つなげていただきたいと思っております。
 これまでの分科会でも再三申し上げたことで大変恐縮ですが、私どもとしては、解雇無効時の金銭救済制度は、紛争解決の予見可能性を高める。このことに加えて、あっせんや労働審判における解決金の水準にもよい意味で影響を与える可能性があり、労働者保護の観点から必要な制度だと考えております。
 厚生労働省におかれましては、金銭救済制度に対する労働者のニーズを的確に把握できるよう、アンケート調査の設計に当たり十分留意いただくとともに、規制改革実施計画に従って今年度中に確実に調査を完了し、速やかに分科会での議論を再開いただくよう、強くお願い申し上げます。
 もう一点、フリーランス・ギグワーカーの労働者性及び保護の在り方についても少し御発言をお許しいただければと思います。個人事業主に対する保護強化については、就業形態が多様化している中で、しっかりと検討すべき課題だと認識しています。ただし、例えば労災特別加入制度の対象業務を広げたり、このたび成立したフリーランス新法によって契約条件の明確化を図る、あるいはハラスメント防止措置を取ることなど、保護すべき内容を個別具体的に特定、検討しながら手当てしていく視点が重要だと思っております。
 現在、労働安全衛生分科会でも個人事業者に対する安全衛生対策の強化ということで議論しているところです。個人事業者の中には、就業時間などについて自由を享受していると思う方も少なくないという調査結果もあることも踏まえますと、労働者概念そのものを安易に見直すということは慎重に考えるべきだと私自身は思っております。
 他方で、フリーランス・ギグワーカーについては、業務委託契約を締結して就労している方々が、実態を見たときに労働者であるにもかかわらず、そのような扱われ方がされていないことを避けなければいけないことは、本日も複数の方がおっしゃったとおりだと思っております。適切に労働者性が判断されるということ、また、個人事業者がもしかしたら自身が労働者であるかもしれない、その可能性があることの認識を持ってもらうことが大切だと思っております。厚生労働省におかれましては、労働局、監督署をはじめ、各行政機関が連携して適切、丁寧な支援と相談体制の強化をしていただくことを私からもお願い申し上げます。
 私からは以上でございます。
○荒木分科会長 ありがとうございました。
 川野委員、お願いします。
○川野委員 たびたびすみません。
 鈴木委員から発言がありました28ページについて若干確認させていただきたいことがあります。「訴訟によって、給与収入など経済的利益を守りたかった」という読み方に関して、解決金による収入を求めているという趣旨が含まれていたように聞こえました。ご発言の趣旨を確認させてください。
○荒木分科会長 鈴木委員、どうぞ。
○鈴木委員 解決金とは申し上げておりません。あくまでもバックペイを含めた経済的利益を守りたい方が多かったということの確認をさせていただいたものでございます。
○川野委員 ありがとうございます。
 28ページの「経済的利益」というのは、解決金ではなく、あくまでも雇用の維持・継続による安定した給与収入を求めていることを意味していると受け止めています。
 以上です。
○荒木分科会長 鈴木委員、どうぞ。
○鈴木委員 労使の見解の相違があるという意味では、調査が十分でないと私も認識しております。だからこそ、一般労働者に対するアンケート調査の中で、ただ今の、例えば労働審判制度で得られ得る解決金が十分かどうか。解決金に対する労働者の認識やニーズをしっかりと調査していただきたい、このように思うところでございます。
○荒木分科会長 ありがとうございました。
 ほかにはいかがでしょうか。
 多様な御意見、御指摘もいただきましたけれども、事務局からこの場でお答えすべきという点があれば伺いますが、特段よろしいでしょうか。では、事務局からお願いします。
○労働関係法課長 労働関係法課長の五百籏頭でございます。
 本日は様々な御意見を頂戴いたしました。誠にありがとうございます。
 たくさん御意見がございました解雇無効時の金銭救済制度についてでございますが、解雇ルールの在り方については、多くの労働者が賃金によって生計を立てていることなどを踏まえて、企業の雇用慣行や人事労務管理の在り方とも併せながら、公労使で十分に議論が尽くされるべき問題であると私としては認識しております。
 現在は当分科会におけるこれまでの議論及び規制改革実施計画を踏まえまして、解雇や解雇をめぐる紛争の実態等に係る調査を行っているところでございます。本日様々な御意見をいただきましたので、こういったものを踏まえつつ、調査を実施いたしまして、その結果を踏まえ、引き続き公労使の皆様の御意見を伺いながら丁寧に検討を進めてまいりたいと考えております。
 以上でございます。
○労働条件政策課長 労働条件政策課でございます。
 裁量労働制とか副業・兼業時の割増賃金、また労働者性などにつきまして、現在、労働基準関係法制研究会のほうで御議論をいただいているところでございますので、本日、審議会の委員の皆様方からいただきました御意見も踏まえつつ、さらに研究会での検討を進めてまいりたいと存じます。
 なお、スタートアップのところですけれども、新資本グランドデザイン及び実行計画の中で書かれておりますのは、スタートアップについては、創業当初のため、管理監督、機密事務、研究開発を行う者とその他の事務を行う者の業務範囲が曖昧であることから、制度を適用できるのか分かりにくいという御指摘もございましたので、様々な行政解釈はこれまで管理監督者とか専門業務型裁量労働制等につきましても示してまいりましたけれども、一覧性をもって、スタートアップ企業の方々に、どういう方々が制度を適用できるのかということについて改めて周知をするといったことも考えているところでございます。
 以上であります。
○監督課長 監督課長でございます。
 先ほど冨髙委員から内閣府の政策アイデアコンテストについてお話がありました。我々としても内閣府でコンテストが開催されて、様々な提案がなされているということは承知しているところでございます。厚生労働省としては、当該コンテストについて、その趣旨等を現在内閣府に確認しているところでございます。
 以上です。
○荒木分科会長 ありがとうございます。
 ほかに特段御発言がなければ、議題1についてはここまでにしたいと思います。
 続きまして、議題2「『事業性融資の推進等に関する法律』の成立について」、事務局から説明をお願いいたします。
○労働関係法課長 労働関係法課長の五百籏頭でございます。
 資料No.2について御説明を申し上げます。事業性融資の推進等に関する法律でございます。
 おめくりいただきまして、1ページ目を御覧ください。こちらの法律は第213回通常国会で可決成立いたしまして、本年6月14日に公布されました。施行期日は公布の日である本年6月14日から起算して二年六月を超えない範囲内において政令で定める日とされております。金融庁の法律でございますが、労働契約の承継という観点で当省とも関わりがございますので、御報告をさせていただく次第です。
 この法律は、企業価値担保権という新しい担保権を創設するものでございます。企業価値担保権とは、有形資産に乏しいスタートアップや、経営者保証により事業承継や思い切った事業展開を躊躇している事業者等の資金調達を円滑化するため、無形資産を含む事業全体を担保とする制度でございます。
 2ページを御覧ください。企業価値担保権の実行手続が開始されますと、裁判所によって事業の経営等を担う管財人が選任されます。管財人は事業を継続しながら、可能な限り高い企業価値を維持し、担保目的財産である事業を譲渡する先を探索いたします。この際、管財人は事業の継続等に必要な商取引債権や労働債権等を優先して弁済することができます。管財人は、裁判所の監督の下、原則として事業譲渡の方法により、事業を解体せず、一体としてスポンサーに承継をさせます。この点、事業を継続しながら事業譲渡をすることにより雇用を維持するものと考えられております。
 また、事業譲渡をする際には、管財人は裁判所の許可を得る必要があり、裁判所は許可時において労働組合や配当を受ける債権者から意見聴取をしなければなりません。
 そして、金融機関等の貸し手は事業譲渡の対価から融資を回収することとなりますが、一般債権者のために、事業譲渡の対価の一部を確保するという制度となっております。
 3ページを御覧ください。企業価値担保制度のイメージとなります。企業価値担保権の対象となる財産は、のれん、労働契約を含む契約上の地位、事実上の利益等を含む会社の総財産となります。企業価値担保制度においては、債権者である金融機関における継続的な事業のモニタリングや支援が念頭に置かれておりますが、債務不履行になった場合には、担保権が実行されます。先ほど御説明しましたとおり、担保権が実行されると、裁判所に選任された管財人が事業を継続しながら、原則として事業譲渡の方法により事業を解体せず、一体として買受人に承継させ、その対価から融資を回収することとなります。実行手続が開始されると、裁判所から労働組合等に対して実行手続開始決定の通知がされ、事業譲渡の前に裁判所が労働組合等の意見を聴取する制度となっています。
 また、管財人は、事業の継続等に必要な労働債権等を優先して弁済することができ、最終的に配当することとなる額の一部を一般債権者のために担保権者に交付して確保する制度が設けられております。
 4ページを御覧ください。この法律に対しては、衆議院財務金融委員会、参議院財政金融委員会においてそれぞれ附帯決議がつけられております。文言としては両者同じ文言でございますが、「事業譲渡又は合併を行うに当たって会社等が留意すべき事項に関する指針」については、政府において専門的な検討の場を設け、新たに企業価値担保権の創設を踏まえて必要な見直し等を行うこと。加えて、合併・事業譲渡をはじめ、企業組織の再編に伴う労働者保護に関する諸問題については、その実態把握を行うとともに、速やかに検討を進め、結論を得た後、必要に応じて立法上の措置を講ずることとされております。今後はこの点に対する対応を行ってまいる所存でございます。
 御報告は以上でございます。
○荒木分科会長 ありがとうございました。
 それでは、ただいまの説明につきまして何か御質問、御意見等があればお願いいたします。川野委員、お願いします。
○川野委員 御指名ありがとうございます。
 「事業性融資推進法の成立」に関して、労働者保護の観点から2点の意見と要望を述べさせていただきたいと思います。
 まず1点目は、企業価値担保権の創設を主な内容とする事業性融資推進法の国会審議において、与野党双方から労働者保護の強化の必要性が多く指摘されたことと承知しております。特に国会答弁の中で企業価値担保権の創設に伴って事業譲渡等指針の見直しを行うことを明言されておりますが、単に指針の見直しにとどまることなく、衆参両院で付された附帯決議の内容を踏まえると、事業再編全般における労働者保護ルールの法制化に向けた検討を早急に開始すべきであることを要望させていただきたいと思います。
 もう一点は、今回設置される事業性融資推進本部には厚生労働大臣も構成員として参画されるようになったと伺っておりますが、関係省庁の中では、労働者保護の立場で物を申せるのは厚生労働大臣、厚生労働省だけであると認識をしております。そのことを踏まえますと、基本方針等の策定においても労働者保護の観点から前向きな対応をぜひともお願いしたいと思います。
 さらに、今後の下位法令や監督指針等の整備に当たっても、金融庁との連携を密にするとともに、労働者保護に関わるルールの実効性が高まるよう、積極的に取り組んでいただくようお願いいたしたいと思います。
 また、法施行後も企業価値担保権の関係者に対する労働関係法令に関わる監督指導はもとより、継続的な実態把握にも努めていただきたいと思います。
 以上、よろしくお願いいたします。
○荒木分科会長 ありがとうございました。
 ほかにはいかがでしょうか。鈴木委員、お願いします。
○鈴木委員 御指名ありがとうございます。
 ただいま川野委員から事業再編全般の労働者保護ルールの見直しの必要性について御意見がございました。企業組織の再編に伴う労働者保護については大変重要な課題だと認識しておりますが、一方で、例えば経営状況が悪化するような状況の中で、スポンサー企業が現れて事業継続や雇用の保障にプラスの側面があるということも十分に留意する必要があると思っております。そのため、今後の検討に当たっては、最新の裁判例、最新の実態の動向に加えて、会社法の会社分割とか事業譲渡の制度趣旨も十分に踏まえた議論をお願いできればと思っておりますので、よろしくお願いいたします。
○荒木分科会長 ありがとうございました。
 ほかにはいかがでしょうか。よろしいでしょうか。
 それでは、これは報告事項ということですので、承ったということになります。
 ほかに特段御発言がなければ、ここまでにしたいと思いますが、よろしいでしょうか。
 それでは、本日の議事はここまでとさせていただきます。
 最後に、次回の日程等について、事務局から説明をお願いいたします。
○労働条件企画専門官 次回の日程等につきましては、調整の上、追ってお知らせいたします。
 なお、事務局の異動につきまして、冒頭に加え紹介をさせていただきます。
 本日遅れての出席となりましたが、7月5日付けで着任しました労働基準局長の岸本でございます。
○労働基準局長 前の会議の予定がありまして遅れてまいりましたことをおわび申し上げます。
 このたびの人事異動で労働基準局長を拝命いたしました岸本でございます。
 労働条件分科会の先生方におかれましては、日頃から真摯な御議論をいただいておりますこと、改めて御礼を申し上げます。この三者構成の場を大切にしながら労働基準行政を進めてまいりたいと考えておりますので、どうかよろしくお願い申し上げます。
○荒木分科会長 ありがとうございました。
 それでは、これをもちまして、第192回「労働条件分科会」を終了といたします。
 本日もお忙しい中、御参加いただきましてどうもありがとうございました。