第84回がん対策推進協議会(議事録)

健康局がん・疾病対策課

日時

令和4年10月27日(木) 10:00~13:00

場所

オンライン開催

議題

  1. (1)がん対策推進基本計画の見直しについて
  2. (2)その他

議事

議事内容
○原澤がん対策推進官 それでは、定刻となりましたので、ただいまより第84回「がん対策推進協議会」を開催いたします。
 委員の皆様方におかれましては、お忙しい中お集まりいただきましてありがとうございます。
 事務局を務めさせていただきます健康局がん・疾病対策課の原澤です。よろしくお願いいたします。
 本協議会はYouTubeにて配信しておりますので、その点も御承知おきください。
 また、健康局長は公務のため欠席とさせていただきますので、御了承いただきますようお願い申し上げます。
 まず、委員の出席状況についてでございます。茂松委員、松田委員より御欠席の御連絡を、また、大賀委員、小原委員、谷口委員より途中で御退席の予定との御連絡を頂戴しております。
 続きまして、資料の確認をさせていただきます。資料は厚生労働省のウェブサイトにも掲載してございます。
 議事次第、資料1から9まで及び参考資料1から11までがございますので、御確認のほど、よろしくお願いいたします。
 また、本日は、参考人として、国立成育医療研究センター小児がんセンターより大隅朋生参考人、国立国際医療研究センター病院患者サポートセンターがん相談支援センター長の清水千佳子参考人、国立がん研究センター中央病院アピアランス支援センター長の藤間勝子参考人、独立行政法人地域医療機能推進機構大阪病院病院長・がんとの共生のあり方に関する検討会座長の西田俊朗参考人、国立がん研究センターがん対策研究所の藤森麻衣子参考人に御出席いただいておりますので、御承知おきください。
 以上をもちまして撮影は終了とさせていただきますので、これ以降の映像等の使用はお控えいただくよう御協力をお願い申し上げます。
 それでは、以降の進行は土岐会長にお願いいたします。よろしくお願いいたします。
○土岐会長 皆様、よろしくお願いいたします。前回に引き続き、皆様の御意見を頂戴する時間をたっぷり取っていきたいと考えております。
 そのために、資料9に事前にいただいた御意見もまとめておりますので、これも踏まえて、できる限り多くの委員の先生方から御意見を頂戴したいと思っておりますので、簡潔に御発言いただきますようによろしくお願いいたします。
 それでは、議題によって進めたいと思います。
 まず、議題の「(1)がんとの共生のあり方に関する検討会からの提言について」でございます。
 こちらにつきまして、西田参考人より御説明をよろしくお願いいたしたいと思います。よろしくお願いします。
○西田参考人 土岐会長、ありがとうございます。
 がんとの共生のあり方に関する検討会の座長をさせていただきました西田でございます。これまでに7回ほど委員の先生方と議論してきたことをできるだけ簡潔にまとめて御報告させていただきたいと思います。
 がんとの共生のあり方は3年ほど前に、2019年3月から議論を始めました。4回目のところで、もう少し緩和ケアに関して深掘りが必要であろうということで、今日参加されている先生も参加していただいていますけれども、緩和ケアに関する部会を設置して、こちらでより深く議論を行いました。それで、第6回、第7回で共生のあり方の検討会と部会とで意見調整をしたものが今回の御報告というふうに御理解いただければ幸いです。
 資料1を御覧ください。今日は時間が限られていますので、提言のところで、座長の私が、これが一つ大事だと思うところだけお話をかいつまんでさせていただきます。
 1枚めくっていただきまして、2ページ目に大きく分けて5つ、最初のところが緩和ケアの推進、2番目が相談支援・情報提供、それから、社会連携、サバイバーシップ、ライフステージに応じたがん対策という、この5つに関してお話をさせていただきます。
 ページを少し飛んでいただきまして、7ページをおめくりください。これまでの患者体験調査並びに中間評価でも指摘されていますように、がん患者さんの身体的・社会的・精神心理学的、スピリチュアルなペインは結構取りくまれるようになってきたのですけれども、まだまだ十分ではないということで、ここの上2つのポツを見ていただければいいのですが、がん拠点病院等、がん診療に関わる医療機関においては、全てのがん患者に対して入院、外来、それから、時期にかかわらずにかかわらず緩和ケアが提供されるようなシステム、あるいは患者さんがいつでも相談に乗ってもらって緩和ケアにつながるような支援体制を整備していく必要があるということが第1点でございます。
 第2点としまして、その下の●にありますように、がん患者さん、さらに家族も含めて、特に診断された直後は非常に衝撃が大きゅうございます。自殺率は2~3倍に上がるということがお分かりになりますし、この時期は非常に重要な時期ですので、精神的な苦痛、社会的な苦痛を適切に対処できるような医療従事者への啓発活動、体制整備が求められるということを述べさせていただいています。
 特に拠点病院におかれましては、外来での緩和ケアは非常に重要でございます。といいますのは、外来に来られるのがいわゆる拠点病院以外のところでがんの治療を受けられている方がいらっしゃいますので、こういった外来の緩和ケアも重要であるのは後で見ていただいて分かります。25ページに書いてございます。
 次のページをめくっていただければ幸いです。8ページにもありますように、ここでぜひ主張しておきたいのは、拠点病院は、ただ院内だけではなく、ともかく関係する医療圏において、地域の医療者・介護者と一緒になって情報をシェアして、役割分担し、そして、彼らあるいは彼女らを支援しながら、がん患者さんの相談、緩和ケアを提供する体制をつくらなければいけないということを書いております。
 それ全体のPDCAを回すために、次の●に書いてありますように、都道府県がん診療連携協議会は、この質の向上のために、緩和ケア、相談支援の実績を共有、分析、評価して、よりよい、実効性のあるものに上げていただきたいという要望がございます。
 少しまたページを飛んでいただきまして、11ページを御覧いただければ幸いです。先ほど申しましたように、がん患者さんはがん拠点病院だけで治療あるいはケアを受けるわけではございません。診断は主には健診センターであったり一般の診療所で受けるわけですので、拠点病院以外における緩和ケアの推進をやっていく必要があるということが、1つ目のポツがございます。
 そのためには、やはり拠点病院が拠点病院以外のところに対しアウトリーチをしていく体制を組み、また、実際どういうことになっているか、拠点病院以外の実態調査をきちんとやっていかなければいけないと思っております。その中には、数量的なものだけではなく、緩和ケアの質を向上させるような実態把握をしなければならないというふうに検討会では議論が出ました。
 次に進ませていただきます。少し飛ばして、21ページを御覧ください。先ほど申しましたように、4つの痛みがあるのですけれども、特にフィジカルな痛みに対してはまだまだ十分ではない。これは患者体験調査でも指摘されていますが、比較的、がん診療拠点病院でのこの痛みに対するいろいろな処置はされているのですけれども、特殊な処置、ここに書いてあるのは腹腔神経叢ブロックとか放射線治療が書いてありますが、こういうものは拠点病院ではやられているのですけれども、やはり地域に戻ったとき、それから、一般病院ではなかなか十分に提供されていないということです。従って、拠点病院を中心とした診療体制において、連携の中で、神経ブロックや緩和的放射線治療等を行い、専門的な疼痛治療が適切に患者さんに届くように、その情報も含めて届くようにやっていかなければいけないということを検討会では述べました。
 これに関しては、ただ単に拠点病院に全て押しつけることは非常に難しゅうございますので、関係団体・自治体との連携は一つ重要になりますし、それから、先ほど言いましたような腹腔神経叢ブロックは全て病院でスペシャリストを持てるわけではございません。人材育成をするとともに、そういった人がいらっしゃる施設と拠点病院同士でもやはり連携することが必要であろうという御意見がございました。
 次に進ませていただきます。28ページで、緩和ケア研修会についてです。これまで緩和ケア研修会は初期の頃には、私どもが受けた頃には2日間かけてやっていたのですけれども、今は1日でe-learningを済ませた後に研修会をやるというふうになったのですが、まだまだ実効性が一つは十分でないということがございます。
 もう一つは、私もそうなのですけれども、受けてから何年かたつと、先ほど申し上げましたように、やはり緩和ケアの質も、お薬とか、その辺も変わってきます。そういったことを考えますと、学習内容やフォローアップ研修に関してどういうふうにやっていくのがいいのかという見直しが必要なのではないかとなのではないかと思います。
 現場の人間としては、もう一つ言えば少し、第1世代、第2世代のこういった緩和ケア研修会に出られる先生方は非常に熱心でした。それに比べて、今は少し熱意といいますか、温度が少し下がっているかなと思いますので、そういった皆さんが意識を持って参加できるような形に変えていく必要もあるのではないかなというふうに個人的には思います。あくまで今のは個人的な意見でございます。
 次に、少し飛ばさせていただきます。緩和ケアのところは終わらせていただいて、2番目の相談支援・情報提供に関して、40ページを御覧ください。一つは、情報はがん患者さんにとって非常に命につながるものであるということで、情報と相談支援は特に重要になるかと思います。
 相談支援に関しては、いろいろなところから出されているのですけれども、3つ目のポツを御覧ください。今、患者さんの相談支援のニーズや内容が非常に複雑になってきています。ゲノムのことであったり希少がんのことであったり、いろいろなものがございます。そういったところで十分に対応できるように、あるいは次のところにつなげるような、がん相談支援センターの質とか連携、持続可能な体制を考えていかなければいけないと思います。特に結構、相談支援センターに相談に行けば皆さん、がん患者さんが満足されて、十分に情報が得られるのですが、まずそこへつなぐことと、それから、先ほどのように、特殊な領域に関しては専門の領域の人につなぐ体制をつくっていく、ネットワークをつくっていくことが重要ではないかと思います。
 その下のポツが3つほどありますけれども、就労関係が書いてありますが、一つは就労支援も含めて離職後の調査とか、その辺もやっていかなければいけないと思います。
 下から2番目のポツを御覧ください。そうなりますと、がん相談支援センターだけで全てが解決するとは思いませんし、逆に言えば相談支援センターに全てがつながっているわけでもないので、民間団体やピア・サポーター、それから、社会にあるリソース。例えば地域緩和ケア連携調整員であったりナビゲーターがつくられていますけれども、そういった人たちが協働して患者さんを支えるような体制が必要であろうというふうに検討会では考えました。
 特に拠点病院の相談支援センターは医療的なところ。ピア・サポーターはまたちょっと違った視点で相談ができると思いますし、先ほど言いました社会的な人材ですが、それはまた別の視点からもサポートできると思いますので、一部は互いにかぶりながら、また別々なものを提供できると、サポートとして一番いいと思います。
 それで、現在のピア・サポーターは、ある程度の人には認知されているのですけれども、ピア・サポーターにしても、先ほど言ったナビゲーターのような人たちに対しても、患者さんがそこにつながることがなかなかできないので、やはりつながるような仕組みも考えていかなければいけないという御意見がございました。
 よろしいでしょうか。次々飛んで申し訳ございませんが、次の41ページをお願いします。もう一つのほうは情報でございます。先ほど申しましたように、がん患者さんにとって情報は命だと言われています。これを皆さんがどこでもいつでも正しい情報を得られるようなことをやらなければいけないというのを提言のところでは挙げております。
 ただ、国立がんセンターでこれを全てやるのは現実的に、私もそこで働いておりましたけれども、仕事量を考えますと非常に難しくなっています。そうしますと、関連学会であったりほかの社会的なリソース、企業等も含めて、やはり全てを総活用して、なおかつおかつ内容がいかに適正かを評価しながら、協働して正しい情報を提供できるような体制が求められるというふうにくくっております。
 特にこの時代、今回もウェブでカンファレンスをやっていますけれども、ITで、デジタルで情報提供するのはアクセシビリティーについても非常に重要でございますので、その場合には正しい情報がきちんと、最初に分かるような場所に来るような仕組みを含めて普及していかなければいけないかなと思います。
 次に進ませていただきます。次は45ページを御覧いただけますでしょうか。45ページは社会連携に基づくがん対策・がん患者の支援というものがございますけれども、ポツが4つあって、下2つを見ていただければ幸いです。
 下から2つ目は、拠点病院等は、地域の医療機関や在宅療養支援診療所等、要するに地域の団体と連携して緩和ケアを提供し、患者さんが望んだ場所で療養できるようにやっていかなければいけない。そのためにはお互いの情報交換、現場での情報交換だけではなくて、それぞれの代表者がちゃんと意見交換して、そういうシステムをつくるのだという意識でやっていただければ非常にいいかなと思っています。
 その下も同じようなことが書いていますけれども、やはり関係者のネットワークをつくって、その中で地域~がん診療拠点病院の地域と、それから、地域包括ケアの地域は微妙に違いますが~それをうまく連携・調整する仕組みをつくっていく必要があるかなと思います。
 次に、50ページの就労及びアピアランス等についてお話をさせていただきたいと思います。現在、両立支援が行われていますけれども、この普及啓発が非常に重要になってきています。それぞれのがん患者さんの就労状況、体力、治療状況をシェアしながら、事業主、患者、それから、産業医等を含めて、就労が継続できるように、場合によっては、必要に応じリハビリ等も入れながら、やはり元の仕事に戻れる状況は非常に重要になってくるだろうと考えます。
 仕事というものは、一つは生きがいにもなりますし、それから、がん治療は非常にお金がかかるようになってきていますので経済的にも重要で、ぜひ、がんになったら辞めることがないようにしたいものです。また、たとえ辞めたとしても、次にまた再就職できるようなシステムをつくっていくことも重要だという意見をいただいております。その中には産業保健総合支援センターとか公的機関を巻き込んでの支援等が必要になってくるであろうと考えております。
 現在は大企業のいわゆる産業医がいる分野に関してはこういった支援が届くようになっていますけれども、中小企業、産業医が常に常駐するわけではない施設に対して、あるいはそこで働いている人に対して両立支援ができるような仕組みをつくっていくことが今後重要ではないかという御意見をいただいております。
 では、次に1ページめくってください。51ページは主にアピアランス、自殺のことが書かれております。自殺は、先ほど申し上げましたように、がんと診断された前後あるいは予後を通告された前後に非常に多いことが分かっています。これは日本人、韓国人、東洋系の人は自殺率が非常に高いのですけれども、こういった自殺を何とか防ぐ必要があります。その為には、一つは自殺の高い人を絞り込むような研究も必要であろうと思いますし、実際にそれが見つかったときに、それを止めるゲートキーパーという人材を育成していくことも重要であると考えます。
 それから、提言の上から2番目のポツにありますように、アピアランスケアです。これは今日、非常に重要になってきます。アピアランスケアはただ単なる外見のケアではありません。これはがん患者さんがアピアランスケアをすることによって社会と接触していく窓口になるということで、人生を生きていく上で非常に重要なファクターです。拠点病院においてこういった体制、情報提供、相談支援をやっていくことが望ましいのではないかと考えております。
 最後は、ライフステージに応じたがん対策について、大きく分けて小児AYA世代と高齢者のがんに関してです。55ページは主に小児・AYA世代です。今日は文部科学省の方もいらっしゃいますが、非常に文部科学省の協力で今、学校以外でも病院でもICTを利用して勉強できるようになりましたし、単位も認定されるようになりました。ただ、拠点病院はほぼできるようになったのですけれども、一般病院に何かで入院したときに情報シェアとか、そこで勉強ができるかどうかが一つ大きな問題と思っています。
 それと、こういった若い世代、小児・AYA世代に関しては高齢者等と違ったニーズあるいは課題がございます。一つは将来であったり就職であったり、そういったニーズにいかに応えるか、あるいはそれを生かしていくかということも重要です。
 もう一つは、今、小児がんは、85%は治るがんになってきていますけれども、その長期のフォローが残念ながら日本からは出ておりません。これを明確にする必要があります。例えば二次がんがどうなのか。それから、ほかの病気になる確率はどうなのか。これらのデータは結構、今、海外から出てきています。それを見ると、全員を調べることはなくて、ある程度、ゲノムでサブフラクショネーションできるというデータも出始めています。ですから、こういったことを日本でも明確にしていく必要がある。つまり、長期フォローや移行期医療などをやはりデータに基づききちんと前に進めていかなければいけないということが2ポツ目に書いてあります。
 もう一つは、高齢者も、AYA世代もそうなのですけれども、在宅であったり地元での療養体制がまだ拠点病院以外のところは十分に把握されていないという課題がございます。ぜひ、次のがん対策ではこの体制を整備するとともに情報整理をしていただければ幸いかなと思います。
 最後、56ページを御覧ください。ここは高齢者のところでございますが、高齢者、特に終末期、望んだところで過ごせるようにする、いわゆる地域包括ケアの中でどうやっていくかという課題です。地域の医療リソースとコラボレーションすることも重要ですけれども、もう一つは高齢者、私も60半ばを過ぎてしまいましたが、がんになるとこの後のサバイバーシップがどうなっているかという明確なデータがまだ日本ではございません。サバイバーシップが抱える問題~例えば、QOL、あるいは二次がんも含めて、サバイバーの課題や健康管理を明確にしていかなければいけません。これは地域と一緒になってデータを取ってやっていかなければいけないという御意見をいただいております。
 以上、駆け足ではございますけれども、共生の検討会で意見をいただきました、特に私が重要だと思われたことをかいつまんでお話をさせていただきました。
 以上でございます。
○土岐会長 西田参考人、ありがとうございます。7回にわたる多くのことを共生の検討会で検討していただきました。こちらのほうを今日は提言も含めて紹介していただきました。
 引き続きまして、議題の「(2)がん対策推進基本計画の見直しについて」に移りたいと思います。
 前回からお伝えしていますように、今日は、今、西田参考人からもお話がありましたように、共生の部分について重点的に行っていきたいと思います。
 まず、最初に委員や参考人からの御発表をお聞きして、そして、事務局の資料8を交えてまた説明していただいて、その後で皆様の意見を頂戴したいと考えております。
 それでは、1番目としまして、資料2を用いまして文部科学省より「教育支援」に関する取組を紹介していただこうと思います。文部科学省の方、よろしくお願いいたします。
○文部科学省初等中等教育局特別支援教育課 文部科学省特別支援教育課でございます。「教育支援」の文部科学省の取組ということで「高等学校段階の病気療養中等の生徒に対するICTを活用した遠隔教育の調査研究事業について」を御説明させていただきたいと思います。
 次をお願いします。
 まず、病気療養中の児童生徒の学びの場につきましては、入院している児童生徒さんに対しましては、病院内の特別支援学校の分校や分教室。それから、小中学校の特別支援学級などのこういった教室で授業を受けることができたり、また、転学せずに在籍校から指導・支援を受けることもできます。こういった学びの場においては、ICT機器を活用した遠隔教育などが行われておりまして、退院後の自宅療養にあっても、遠隔教育などを受けることができます。また、一方で高等学校段階の生徒につきましては、病院の中に特別支援学校の高等部がない場合もございまして、教育の機会の保障については不十分ではないかという課題がございました。
 次をお願いします。
 第3期がん対策推進基本計画におきまして、小児・AYA世代のがん対策の課題として、高等学校段階の教育支援の取組が遅れていること。ICTを活用した高等学校段階の遠隔教育など、療養中においても適切な教育を受けることのできる環境整備。復学・就学支援など、療養中の生徒などに対する特別支援教育の充実が取り組むべき施策として示されまして、文部科学省でも令和元年度から体制整備の事業に取り組んでいるところでございます。現在は赤枠の「ICTを活用した障害のある児童生徒等に対する指導の充実」の中で事業を実施しておりますので、その取組をお話しさせていただきたいと思います。
 次をお願いします。
 令和3・4年度の2年で実施しております「高等学校段階の病気療養中等の生徒に対するICTを活用した遠隔教育の調査研究事業」につきましては、6つの教育委員会に参画いただいております。病気療養中の生徒の教育機会や復学支援などの実態調査、保護者・医療機関・教育機関等が連携した遠隔教育の教育環境の整備、効果的な遠隔教育の活用方法などについて取り組んでいただいているところでございます。
 次をお願いします。
 取組の1年目であります令和3年度におきましては中間成果報告会を実施しまして、事業実施自治体の報告に対して医療・教育の有識者から事業に対する御助言をいただいて今年度の改善につなげております。また、この報告会に学校・医療・福祉関係者にも参加いただくことで、入院生徒に対する教育保障についての理解を促すことも目的として行っております。中間報告会の資料はホームページに掲載するとともに、ほかの自治体が参照できるように、令和3年度の成果報告書や周知のリーフレットをホームページに掲載しております。
 次をお願いします。
 2つの教育委員会の令和3年度の成果報告書を御紹介いたします。こちらはホームページで公開しています、北海道教育委員会の事業の概要図になっております。調査研究を進めるに当たって、大学教員などの学識経験者、医療関係者、学校及び行政で構成する、左の青の枠のところになりますが、教育保障体制検討会議を設置しまして、事業の充実に向けた御助言を教育委員会に対していただいたりしております。また、実際の支援の流れにつきましては、教育委員会は入院生徒が在籍している高等学校へのタブレット等の貸出し、それから、遠隔教育の実施に向けた連絡調整を行いまして、そして、在籍校では入院している病院の生徒に対して同時双方向授業を行う流れで事業を行っております。
 それとともに、教育委員会では、次のページにありますリーフレットを用いて、道内の高等学校や道内の市町村教育委員会に対しまして、遠隔教育ができることについての周知、普及啓発を行いまして、教育保障体制の整備を行っている事例になります。
 次をお願いします。
 すみません。1個戻ってください。
 イメージといたしまして、こちらの写真にありますように、授業を行いまして、活用した生徒さんからは、オンラインで同級生とのコミュニケーションが取れたことが闘病・学習意欲の向上につながったなどの声も聞かれております。
 次をお願いします。
 もう一つ、宮城県につきましては、コーディネーターが入院中の生徒の相談やデバイスの調整を行ったり、病院に訪問して学校との連絡調整を行ったり、10ページのリーフレットなどを活用しまして、ICTを活用した学習支援の重要性を高等学校や病院関係者に理解啓発を行っている事例になります。
 次をお願いします。
 こちらは入院先の生徒が見ている画面、左側と、右側が学校側の画面のイメージでございます。
 次をお願いします。
 今回御紹介した自治体以外の取組も含めまして、それぞれ特徴のある取組を2年間の成果としてまとめて、全国のほかの自治体が参考とできるようにお示しして、病気療養中の生徒等において、教育保障の取組の充実、体制整備に努めていく予定でございます。
 次をお願いします。
 また、令和5年度につきましては、オンデマンド型の授業も含めて、効果的な実施方法や評価方法等についての調査研究事業を実施しまして、療養中の児童生徒に対する教育保障の体制整備に努めていく予定でございます。
 以上になります。
○土岐会長 文部科学省の方、どうもありがとうございました。
 それでは、続きまして「在宅医療」に関しまして、鶴岡委員より資料3を用いまして7分程度で御発表をお願いいたします。
○鶴岡委員 ありがとうございます。つるかめ診療所の鶴岡です。現場からがん患者さんの在宅医療の現状と課題についてお話をさせていただきます。次をお願いします。
 在宅医療は非常に個別性の高い医療であり、患者さんのお宅、または施設において提供される保健医療サービスで、計画的に予定を組んでいく訪問診療と、呼ばれて出掛ける往診を合わせて「在宅医療」といっています。
 訪問診療に対応する診療所は全体の約20%で、在宅療養支援診療所が看取りや24時間対応することをお約束している診療所であり、数は増加傾向にありましたが、今、伸び悩んでいるところです。一方、在宅療養支援病院は順調に増えてきています。
 次をお願いします。
 がん患者さんの在宅医療を、病の軌跡と一緒に考えてみたいと思います。横軸に時間経過、縦軸にADL日常生活動作を置いてみています。
 例えば心不全・呼吸不全の患者さんの場合は、肺炎などで入院したときに、通院が難しいから車椅子を頼むために介護保険を申請しようとか、次の入院のときに訪問看護師さんに来てもらおうかという形で、急性増悪で気づきを得て、それから、在宅チームが形成していくパターンになります。
 一方、がん患者さんの場合はADLが非常に保たれていて、仕事も生活もしっかりできていて、急激な病状の変化があって、急に通院ができないということもあります。そうしたときに急遽在宅チームをつくらなければいけないことになるのです。在宅医療の始まり方が疾患によって違う状況があります。
 次をお願いします。
 当院のがん患者さんの在宅医療について御報告させていただきたいと思います。当院は栃木県の在宅療養診療所で、非常に小さい診療所で、全て外の訪問看護ステーションさん、ケアマネジャーさん、リハビリ職さん、薬局さんとチームを組んで、地域での在宅医療チームを形成しています。担当している患者さんの半分位ががんの患者さんになります。認知症と診断される高齢患者さんも増えています。
 年齢別で患者さんの割合を調べてみました。50代の患者さんの多くはがんの患者さん
でした。70代だと半々ぐらい、80代・90代ではほかのプロブレムが多い状況になります。
 在宅療養で担当できた時間も調べてみました。一番短かった患者さんは2時間、最長の方は14年以上で、がん患者さんに限ると最長が4年。平均すると、がんの患者さんは54日。その内訳を見てみたのですけれど、担当できたのが1か月以内という患者さんが約半数なのです。がん患者さんと共有できる時間が想像以上に短い時間であることがわかりました。2時間の患者さんはどんな患者さんだったかといいますと、40代の男性でした。病状が厳しいという説明を受けた翌朝、帰りたい、子供に伝えたいことがある、ということで急遽退院になりました。しかし退院できた昼頃にはもう下顎呼吸が始まっていた、お子さんには会えたのですけれども、伝えることはできなかった、という状況になります。
 一方、受け持ち期間4年というがん患者さんの中で一番担当が長かった患者さんです。この方は90代後半の男性で、もともと認知症と診断されていてデイサービスなどを利用されていた方です。血尿が出現し泌尿器系のがんということが分かり、本当に穏やかな経過で、最後の数か月だけ緩和ケアを受けて旅立ったという経過になります。当院での在宅の看取り率は80%弱になります。
 次をお願いします。
 在宅医療と看取りは非常に関係があり、いろいろな資料が出ています。スライド左側の資資資
料がいつも厚生労働省さんから頂く、一番提供されている資料かなと思うのですけれ
ども、人生の最期を迎えるときの生活したい場所は自宅が約3割になっています。これは国民といってもいろいろな国民がいるので、何歳の誰に聞いたのかということで、非常に変わってくるのではないかと思っているので、もう少し突っ込んだ調査が必要なのではないかと思っています。そして、一番右側の資料も非常に大切な資料で、がん患者さんの看取りの場という資料ですけれども、平成26年度のものなのです。4分の3が拠点病院等以外で看取られているという見方もできますし、9.9%、約1割の方が自宅で看取られたことになります。これは平成26年から大分変化しているという印象を持っておりますので、さらに調べていく必要があると思います。
 次をお願いします。
 地域ではスピード感を持ってチームをつくらなくてはいけないので、さまざま工夫しています。それぞれの価値観、専門職の価値観も分かり合ってチームをつくるようにしています。勉強会を月に1回、今はオンラインでやっていますけれども、2011年の東日本大震災を契機に「つるカフェ」という勉強会を開いています。年に一度は市民講座を開催し、その市民講座を運営することでチーム力をさらに高め、現在も続けているところです。
 次をお願いします。
 ICTも活用しています。栃木県では医療介護専用SNSを、「どこでも連絡帳」という愛称をつけて、統一して使っています。ベースに先ほどの「つるカフェ」という顔の見える関係があってこそのICTだと思うのですけれども、非常に役に立っています。
 24時間365日、いろいろな情報が行き交います。当日のバイタルサインであったり、診察の結果であったり、薬を変えましたということであったり、皮膚の状態や褥瘡の写真も載りますし、思い出のアルバムというか、20年前の写真、社会で活躍されていた若い時の写真などというものも載ってくるのです。
 昨日の夜も看取りが23時にあったのですけれども、直前にはいろいろな情報が飛び交いました。どうしよう、息子さんがまだ出張中だけど間に合うかなとか、そういう話がタイムリーに載ってきて、22時半頃には呼吸が停止して訪問看護が呼ばれましたというものも全部ICTに載ってきます。私も訪問して死亡確認するのですが、日をまたいで帰宅したらその様子をどこ連に書き込みます。穏やかな顔での旅立ちでした、とか息子さんも揃って家族3人で見送れた、とか。そして支援者の皆さんにお礼の言葉を書き込みます。その後の訪問看護でのエンゼルケアがあり、最後はいい時間が過ごせてよかった、と奥さんとお子さん達が言われていたという情報も記載されるのです。24時間365日、負担も責任もすごく重いのですけれども、それをシェアできている実感があります。悲しみも喜びもシェアできているという感覚です。
 次をお願いします。
 コロナ禍でいろいろなことが在宅医療の周りでも変化しました。今までの協議会で何回か御指摘いただいていることですが、病院での面会の制限があることで在宅医療に流れているのではないかということ。実際、そういう事例も経験しております。でも、流れているのがあまりネガティブなイメージではなくて、在宅医療は大変だと思って敬遠してきたけれども、仕事もリモートワークになったので、思い切ってやってみたらよかったというご家族の意見も多く頂戴しています。在宅医療を始める勇気の一押しになった感じはあるのかなと思います。
 教育の機会も含め、コミュニケーションの方法もいろいろ変わっておりまして、コロナ禍も悪いことばかりではないと感じています。日本在宅医療連合学会では人材育成のための動画を作成しましたし、日本在宅ケアアライアンスでは緊急行動宣言が出て、医療提供のプロトコールをすごいスピードで改訂していて、今、6版まで出ています。
 次をお願いします。
 最後のスライドになります。在宅医療はがん患者さんの特に緩和ケアを担うことが期待されていて、個別性高くアプローチを考えなくてはいけません。高齢者のがんの患者さんであれば<拡がり>というか、全国のどの開業医さんでも担当ができるように、もともと受け持っていたかかりつけ医が緩和ケアができるようにしていく方向がいいと思いますし、若年者のがん患者さんではより<スピード感>を持って集中的にやっていく必要があるのではないかと思いました。
 そして、地域のチーム医療に関してはよくタスクシフトが話題に上がりますけれども、医師がしていた仕事を他の専門職にシフトという視点と同時にタスクシェアを考えたら良いのではないかと思います。そういう中で、2人主治医制、複数主治医制に関して非常に大きな可能性を感じております。がん治療を担当している専門医とかかりつけ医、また、緩和医療の専門医と在宅医が一緒に診ていくことができれば良いと思います。ずっと一緒に併走しなくてもよくて、役割分担の重みづけがあって良いかと考えます。例えば、メインをがん治療の先生が診ていてくださって時期は、かかりつけ医も数か月に一度、もしものときにはという話合いができているとか、かかりつけ医が在宅医療をやるような時期には、緩和ケアの専門医にすぐにご相談ができるというシステムもあってもいいのではないかと思います。そのためには全体を見渡せる地域緩和ケアネットワークケアネットワークケアネットワークの見える化が重要だと思いました。
 また、これまで、先ほどの西田先生のお話にもありましたけれども「地域の実情」に合わせてということで来ましたが、今後は在宅ケアそのもの、の見える化を進めていって、もっと患者さん・市民のニーズを丁寧に探って人材育成につなげてはどうかと思いました。
 以上になります。ありがとうございます。○土岐会長 鶴岡委員、ありがとうございます。
 それでは、続きまして「アピアランスケア」に関しまして、藤間参考人より資料4を用いて7分程度で御発表をよろしくお願いいたします。
○藤間参考人 それでは、資料を共有いたします。
 御覧いただけていますでしょうか。
○土岐会長 大丈夫です。
○藤間参考人 「アピアランスケアの現状と課題」について、御報告させていただきます。
 アピアランスケアとはがん治療に伴う外見の変化に対するケアを指しており、私たちは医学的・整容的・心理社会的支援を用いて、外見の変化に起因するがん患者の苦痛を軽減するケアと定義しています。このアピアランスケアでは見た目の問題を扱っていますが、それは美しくなるためではなく、外見が変化しても自分らしく円滑に社会生活が送れることを目指しています。
 そのために、直接的に外見に介入していくだけではなく、心理的な負荷を軽減するための介入や、安心して社会生活を営むための対人関係やコミュニケーションへの助言なども行い、総合的に患者さんのQOLの改善を行っています。
 では、なぜアピアランスケアが単純な美容や整容の問題のケアではないのか。その理由について、こちらのグラフをお示ししています。
 患者さんがケアを求めているのは「美しさ」からの問題ではなく「自分らしさ」や「社会の中で今まで通り過ごせるか」の問題からです。だからこそ、アピアランスケアは単純に外見だけではなく、心理や社会の問題にも関わっていくわけです。
 また、こちらですけれども、がんの治療による外見変化についてのイメージの問題について資料を上げています。
 こちらのスライドの左側では、がんではない健康な方を対象に、がん治療による外見の変化についてどのように思っているかを調査した結果を示しています。がんに罹患していない方々は、がん治療によって外見変化することにより、自分自身や生活が大きく変化すると捉えていることがお分かりいただけるかと思います。
 それに対して、右側が実際にがんになって外見変化を体験した方々に対する調査の結果です。このように外見変化について、がん罹患前には実際と異なるイメージを持ち、非常に不安を持っている方が多いのです。
 患者さんが安心して治療を受けるためには、外見変化について様々な誤解を解くことが重要です。そのための適時適切な情報を得る必要があり、それを行えるのは治療に携わる私たち医療者だと考えています。また、頭頸部の手術など、変化が大きく、対処や受入れが難しいケースも多々あります。このような場合に、心理的社会的に介入しケアを提供していくのも医療機関の役割だと考えております。
 外見変化への対応は、単純に外見を繕うことだけではありません。治療のプロセスに沿った情報提供と心理社会的支援が重要になります。実際に患者さんの側も医療機関にアピアランスケアの提供を期待されていることがグラフからもお分かりいただけるかと思います。
 こちらのグラフは外見が変化した患者さんが実際に得られた支援についてまとめたものですが、まだまだ対処方法に対する説明が不足している面があります。この点についても情報提供を強化していく必要があります。
 さて、では、具体的にどのようなアピアランスケアの展開が必要とされているのか。そちらを研究の結果から検討いたしました。
 多くの患者さんは、簡単な情報提供があれば御自身で、あるいは周囲のサポートを得て対処することができると想定されました。しかし、複数のアピアランス変化を体験したり外見以外でも問題を抱えている方には専門支援が必要となります。
 アピアランスケアでは、この2つのニーズ、自己対処するための情報提供と困ったときに専門支援につなげる仕組みが医療機関の中に必要だと考えます。
 実際に医療機関でアピアランスケアを行うときの問題点なのですが、まず一つ、今まではアピアランスケアの相談窓口が医療機関の中でどこかが定まっておりませんでした。そのため、どこに相談すればいいのか分からない、誰に相談すれば分からない患者さんも多くいらっしゃいました。必要な人に必要なケアを届けるためには、どこに相談すればよいのか、相談先の周知が必要となります。
 また、医療機関内でアピアランスケアを展開していく上ではそれが行える人材が必要ですけれども、その人材は非常に不足しています。私どもの開催しておりますアピアランスケアの研修会を修了した人たちの状況を図にまとめています。まだまだ人数が少ないこと、それから、地域や施設によってばらつきがあることがこちらから御確認いただけるかと思います。必要な医療者が必要なときに研修を受けられ、患者さんにケアを提供できる仕組みをつくっていくことが必要です。
 さて、ここで1つエピソードを御紹介したいと思います。この春に私が関わった中学生になる女の子3人の話です。
 このお嬢さんたちは、それぞれが治療で脱毛するにもかかわらずウイッグなしで過ごす選択をしました。理由として、みんな、自分が脱毛しているのを知っているから、別に隠すことでもないから、私は私だからなどと話していました。多様な外見が認められる時代になり、昔のように脱毛イコールウイッグではなくなったと実感させられた事例です。
 また、グラフでは、がんになる前の外見についての関心があったかどうかで、ケアのニーズが異なることを示しています。こちらは外見への関心という一例ですが、それ以外にも対人関係や経済的状況などでもニーズは異なってきます。多様性や個別性に合ったケアの展開が求められていることがお分かりいただけるかと思います。
 このアピアランスケアについて、具体的にどのように医療機関で展開すべきかを検討しました。
 まず、初期には基本の情報提供を全ての人になされること、そのための体制づくりが必要だと考えています。次の段階では、さらに個別性に沿った質の高いケアが全国どこでも受けられるようにし、最終的には、外見が変化しても、個人に適した方法で、安心して社会生活が送れるようになることを目指すとしています。
 こちらの展開案を図に表してみました。外見が変化する患者さんには、受診時に一般的な副作用対策としてガイドライン等に基づいた情報やケアを提供させるのはもちろん、御本人が困ったときにいつでも相談できるよう相談窓口を明確にします。また、高度の悩みや専門的な相談が必要な場合には、研修を修了した医療者が相談に応じることが行える体制を目指せればと考えます。
 将来的には、デジタルを活用し、患者さんが院外でも医療機関が作成したエビデンスに基づいた情報やケアを得られるようにするとともに、高度な美容等の情報やケアについては関連業種とも役割を分担しながら行えるような体制が築いていければよいのではないかと考えております。
 まとめとして、繰り返しになりますが、アピアランスケアは単なる美容の問題ではありません。「医学的・整容的・心理社会的支援を用いて、外見の変化に起因するがん患者の苦痛を軽減するケア」です。外見を繕うことではなく、心理社会的なケアを用いて、患者さん一人一人が安心して社会生活を送りながら治療することを目指します。
 そのためには、外見変化が予想される治療をする患者さん全てが、治療のプロセスに沿った適切な時期に適切な情報を得られ、また、困ったときに相談支援にアクセスできることが必要ですし、それを行うためには、単純な美容・整容ではない、心理社会的なケアを含めた支援がアピアランスケアであるという視点とその知識を持ったケア提供者の育成が必要です。
 上記を実現するための体制づくりが急務であり、課題であると私どもでは考えております。
 以上です。御清聴ありがとうございました。
○土岐会長 藤間参考人、どうもありがとうございました。
 それでは、続きまして「自殺対策」に関しまして、藤森参考人より資料5を用いて7分程度で御発表をお願いいたします。
○藤森参考人 国立がん研究センターの藤森と申します。よろしくお願いいたします。
 次をお願いいたします。
 がん患者さんの自殺対策につきましては、自殺対策基本法及びがん対策基本法にてがん患者さんの自殺対策が盛り込まれ、厚労科研等で自殺の研究班が立ちまして、それぞれ進めているところでございます。
 次をお願いいたします。
 6月に発表されました第3期がん対策推進基本計画中間評価におきましても、実数ですとかリスクが報告されております。
 次をお願いいたします。
 8月に公表されましたがん診療連携拠点病院等の整備に関する指針におきましても、病院内での自殺対策について盛り込まれております。
 次をお願いいたします。
 このように、がんの患者さんの自殺対策が必要な背景について少し御紹介させていただきますと、がんと診断されますと、一様に皆様、気持ちが落ち込むことを経験されます。一部の患者さん、うつ病ですとか適応障害といった精神疾患を有する方も報告されております。
 スライド左の下のグラフを見ていただきますと、赤い四角で囲んでいるところですが、がんの診断がゼロなのですけれども、その前の10か月のあたりから精神疾患の有病率が高くなることが、こちらは北欧のナショナルデータで示されております。そして、0のポイント、がんの診断をされますと一様に精神疾患の有病率が高くなりまして、その後も高いまま推移することが報告されています。このように、がんの診断は悪い知らせと言われますが、このような悪い知らせをがんの経過の中で多く患者さん方は経験されます。
 右に図を示しておりますけれども、診断だけではなくて、下に行きますと、進行再発期ですとか積極的な抗がん治療の中止ですとか終末期、それぞれつらい体験をされたり、あるいはサバイバーシップ期におきましても妊孕性の問題や就労の問題など、ストレスを抱えることがあります。
 次をお願いいたします。
 こういった左上の図を見ておりますけれども、がんですとかリストラ、離婚、死別、喪失といったライフイベントが組み合わされて経験することによって、そして、そのサポートが不足することによって、主にうつ状態、特にうつ病など、精神疾患が加速して自殺に至ってしまうことがモデルとして提示されております。
 自殺の動機につきましては、半数が健康問題と言われておりまして、その3分の1が身体の病気と言われております。この半数ががんとなっております。病院内での自殺の内訳を見てみましても、がんの患者さんが約半数を占めているということで、がんの患者さんはやはり精神的なインパクトが非常に大きいということで、自殺対策の重要性がこういったところからも考えられるかと思います。
 次をお願いいたします。
 こういった背景を踏まえまして、厚労科研の一部として、がん医療における自殺対策のための提言を関連学会の代表の方々、病院管理者ですとか患者・市民代表の方を踏まえたステークホルダー、皆さんでディスカッションして提言を公表しております。
 右にお示しした5つが提言として挙げられております。がん医療における自殺対策の啓発・教育、サーベイランス体制の整備とモニタリングの継続、危険因子・保護因子の解明、エビデンスに基づく介入法の検討と臨床実装、そして、御遺族の支援や医療従事者等の支援となっております。
 次をお願いいたします。
 サーベイランス体制等につきまして御報告いたしますと、2016年よりデータが利活用可能になりました全国がん登録情報を用いて、2016年以降を検討しますと、1年間で400人以上の方が自殺でお亡くなりになっている実態が明らかになっております。
 また、この右下の棒グラフを見ていただきますと、濃いバーが自殺でお亡くなりになった方のリスクですが、一般人口と比較して、一番左の棒ですけれども、1か月以内で4倍以上、1年以上2年まで経過しても有意に高いことが示されております。
 また、左の4点目に示しておりますように、がんの進展度が高いほどリスクが高いことも示されておりますが、今後、さらに長期的なモニタリングですとか関連要因の検討が必要ですので、データの蓄積をして分析したいと考えております。
 次をお願いいたします。
 こちらは東京都監察医務院でのデータを分析しております。真ん中の四角で囲んだバーを見ていただきますと、水色が消化器がんになっております。がんの罹患や死亡に比べて自殺の割合が高い。緑色が頭頸部がんですけれども、こちらを見てみますと、機能障害の多いがんと考えられますので、こういったところはリスクであろうと考えております。
 また、右に示しておりますように、自殺場所で見ますと、病院内だけではなくて自宅/敷地内が7割以上を占めておりますので、病院だけではなくて病院の外での対策も必要と考えております。
 次をお願いいたします。
 こういったものを踏まえて、過去の文献レビューを行っております。四角で囲んでいるそれぞれについて、リスクがマル1、マル2、マル3、全体とお示ししております。
 このリスクを踏まえまして、次をお願いいたします。
 このような対策案を提示しております。事前対応としましては、やはり最初に医療者のコミュニケーション・スキルを高めること。また、病院内での自殺対策をしっかりと取り組んで、スクリーニングを行うこと。危機介入としまして、アセスメントとケースマネジメント。事後対応として、遺族支援、医療者支援を挙げております。こちらはその他の学会等で出されている手引等と内容も大体同じとなっております。
 次をお願いいたします。
 一例を御紹介しますと、コミュニケーション・スキル・トレーニングに関しましては、これまで調査を踏まえてプログラムをつくり、ガイドラインもこの7月に発刊しておりますので、ますますこういった取組が普及することが必要であろうと考えております。
 このプログラムに関しましては、無作為化比較試験によってしっかりと医療者、医師の行動が患者さんの気持ちのつらさに対して望ましいコミュニケーションが増えること。そして、対応された患者さんの抑うつが低いことが示されております。
 次をお願いいたします。
 WHOでも出されております手引ですけれども、病院でのやはり介入できる課題としましては、医療アクセスを容易にし、アセスメントとマネジメントを行うものになっております。
 次をお願いいたします。
 アメリカの病院でのプロジェクトをお示ししますと、Zero Suicideというものがありまして、やはりスクリーニング、ケースマネジメントでよい結果が報告されております。
 地域に目を向けますと、ゲートキーパーなどがよく使われておりまして、効果が示されております。
 次をお願いいたします。
 ゲートキーパーにおきましては、内閣府や厚労省でやはり自殺対策のほうで研修等が行われております。
 次をお願いいたします。
 御遺族支援に関しましては7月にガイドラインが発刊されておりまして、抑うつや悲嘆に対しましては認知行動療法を中心とした非薬物療法が提案されております。抑うつ症状に関しましては抗うつ薬が提案されております。こういったものを踏まえて普及できればと考えております。
 次をお願いいたします。
 医療者の支援に関しましてはまだ取組が少ないところですが、右にお示ししましたように、看護師さんが第1発見者となる割合が高いのですけれども、左にお示ししましたように、自殺等の研修に参加している割合は看護師さんでは18%と非常に低くなっておりますので、病院内での研修などをしっかり取り組む必要があると考えております。
 次をお願いいたします。
 以上をまとめますと、今後の課題としましては、提言に基づきまして研究をしっかり進めて、なかなか数が少ないのでエビデンスを示すことが難しい領域ですけれども、工夫しながらしっかりとエビデンスを示し、エビデンスに基づいた介入を行い、情報発信、研修等を進めていきたいと考えております。
 以上となります。
○土岐会長 藤森参考人、ありがとうございます。
 続きまして「AYA世代への支援」につきまして、清水参考人より資料6を用いてやはり7分程度で御発表をよろしくお願いいたします。
○清水参考人 国立国際医療研究センターの清水でございます。今日はこのような機会をいただきましてありがとうございます。
 共有できておりますでしょうか。
○土岐会長 大丈夫です。
○清水参考人 私ども、厚労科研の研究班、あるいは現場での取組の現状から、樋口委員と共に要望を4つの点で提出させていただきました。その背景をこの機会に御説明させていただければと思います。
 年間に約2万人の方がAYA世代で胃がんと診断されておりますが、AYA世代のがんはがん種が多様ですし、ライフステージ特有のニーズがあり、また、患者のニーズに個別性が高いことが特徴です。多職種連携が必要なことは言うまでもないのですけれども、患者が少ないこと、患者さん自身が成長され、変化し、また、物理的な移動も伴うこと。そして、患者さんが地域・施設・診療科に分散していること。そして、施設や地域のリソースが偏在していることなどを考慮に入れてケアデリバリーを工夫していくことが必要と思われます。
 8月にがん診療連携拠点病院等の整備の指針が出ましたけれども、AYAに関連して、がん生殖医療ネットワークを構築されるところにがん診療連携拠点病院が参画することが求められ、また、就労、就学、妊孕性、アピアランスケア等、がん相談支援センターで対応できる体制を整備し、また、多職種から成るAYA世代支援チームを設置することが望ましいということが示され、非常に踏み込んだ指針を示していただいたことはありがたいことだと考えております。
 研究班では、平成30年度から3年間にわたってAYA支援チームづくりの教育プログラムを行ってまいりました。日本地図に書かれておりますのは参加施設なのですけれども、御覧いただいて分かるように、やはり若年人口が多い地域の施設ほど教育プログラムへの関心が高いことが分かります。また、拠点病院に対して行った、チームをつくる予定はありますかという質問をさせていただいたのですが、3分の2近くがチームとして支援する予定はないということで、拠点病院におけるAYA支援チームづくりの負担感がここに表れているかと思います。
 若い世代の患者さんが多い病院においても、必ずしもAYA世代の支援に必要なリソースが全てそろっているわけではないことを先行研究でもお示ししております。例えば小児血液腫瘍の専門医の先生、生殖医療の医師、それから、サイコオンコロジー、あるいは子供のケアに係るチャイルドライフスペシャリストの充足率は、A世代の患者さんが多い施設、ひいてはAYA世代の患者さんが多い施設でもあるのですけれども、このように割合が低いことが分かっています。
 ただ、病院の役割とか機能を考えたときに、全ての病院に「フルセット」の専門家を配置することは非現実的なのではないかと考え、研究班では院内のリソースを使ってAYA支援チームをつくっていただくとともに、地域のアウトリーチでそれを補っていく、地域のネットワークを構築してくださいということをお願いいたしました。
 こちらが2019年度を中心に、モデルのAYA支援チームをつくっていただいた分担研究の先生方がやってくださったネットワーク構築のプログラム、ネットワーキングのプログラムになります。特徴としては、やはりがん生殖が非常に大きな要素になっていることと、自治体の参加があることであります。そうしたネットワーキングの会に私も参加させていただきましたけれども、生殖だけでなく、そのほかのAYAのテーマについて話し合うことで、包括的なケアを地域でどう育ててやっていくのかという議論が芽生え、連携も芽生えていったと認識しております。なので、がん生殖医療ネットワークがせっかく構築されているということでございますので、それをぜひAYA支援のネットワークにより広げていっていただくようなことを推し進めていただけないかと考えます。
 また、AYA支援のそういったネットワークの「ハブ」になるような人材においては、やはりAYAに関して多様なテーマについて、ある程度、しっかりとした知識があり、それをつなぐことができる必要があるかと思います。手前みそにはなりますが、私どもがやっておりますAYAがんの医療と支援のあり方研究会ではそういった人材の育成の教育プログラムをやっておりまして、オンラインでやっていることもあり、全国からの御参加をいただいているところであります。
 また、AYA支援チームづくりに関してですけれども、チームがあり、ネットワークができても、支援が患者さんに届くことが非常に重要です。モデルの支援チームをつくっていただいた施設、特にがん以外の疾病の方が多く通われている大学病院ですとか総合病院においては、AYA世代のがんの患者さんがそこにいることを把握すること、あるいは患者さんのニーズを誰がどうやってスクリーニングをして、どう支援につなぐのか、その最初の部分がケアデリバリーのボトルネックになっていることが分かっております。
 中にはきちんとケアをコーディネートできる施設が出てきておりますが、ただ、モデルは一つのではなく、それぞれの施設でプロセスに工夫を凝らして実現していることもあり、ぜひ国として拠点病院のAYA支援チームの機能を評価される際には、海外の団体あるいは取組がありますように、PDCAを回すための評価指標を策定していただき、その中でAYAのプロセス、きちんとAYAの患者さんに支援が届けられるシステムとなっているか、そのプロセスを把握していただきたいと考えます。
 また、2つ目の点としては、AYA世代の医療・療養等に関わる費用助成の地域間格差について触れさせていただきたいと思います。終末期、在宅で過ごしたいと考えておられるAYA世代の方は比較的多いことが分かっておりますが、地方自治体、市町村の中でそういった訪問介護の費用助成を行っているような取組も散見されるのですけれども、全国で見ますと10%程度にすぎない現状があり、そういった地域間格差の是正に向けた対策をお願いしたい。
 具体的には、そういった地域の好事例を共有していくこと。なかなか、地域にそういう患者さんは少ないですので、地域の住民から自治体に声を上げていくことが難しいこともありますので、国からそういった課題の周知と事例の共有などを進めていただきたいと考えております。
 それから、AYA世代のがん経験者の方のがん以外の要因による死亡リスクについてお話をしたいと思います。がん自体の予後に関してはそれぞれの領域での治療開発が進められているところでございまして、臨床試験のアクセスを向上していくとか、あるいは小児と成人の連携を進めていくところががんの予後を向上させるところにつながるかと思うのです。
 注目したいのは、やはり晩期合併症が、がんを患っておられないAYA世代に比べて有意にそのリスクが高いことです。実際にアメリカからの報告ではがんによる死亡は減少しているのですけれども、がん以外による死亡に関しては変わっていないということで、予後をさらによくするためにも、ここにアプローチしていくことは重要だと考えております。
 海外のリアルワールドデータの解析から、AYA世代の晩期合併症のどんなものがあるかというデータが示されておりますけれども、小児に比べますと成人の御年配の方の慢性的な疾患に近いようなものが多いこともありまして、やはり急性期の治療を終了したあとの健康管理が大事になってくるのかなと思います。国内でもリアルワールドデータを用いてデータベース研究の結果があります。まだ学会報告でしかできていないのですが、やはりAYA世代の患者さんは非がんのAYA世代に比べてCVDの発症リスクですとか死亡リスクが有意に高いことを示しております。より精度の高い疾病の発生状況や死因などのデータを分析していく必要があるかと思います。
 患者さんの側においては健康管理の必要性を認識されておりますが、半数以上の方はどんな合併症があるのか、後遺症があるのかを御自身で説明できない現状があります。患者教育が充実することが必要だと思いますが、まずはがん治療医の側に晩期合併症に関する意識づけをしていく取組が必要だと思います。
 また、急性期の治療の終わった後は地域で見ていくモデルが成人医療の中では示されているところではございますが、やはり医師会の調査では、診療経験の不足や晩期合併症の長期フォローアップについての知識の不足が負担感の原因として挙げられております。国立がん研究センターや関連学会等でサバイバーシップに関連するガイドラインが少しずつつくられる取組が進んでいるとは伺っておりますが、ぜひそういったものを推し進めていただき、ワンストップの相談窓口なども用意していただくと、患者さんや関わりになられる地域の先生方にも役立つのではないかと考えます。
 最後になりますが、ピア・サポートです。患者さんにとって、やはり数が少ないですので、似たような経験をされているAYAの先輩に会えることは非常に大事なケアになります。
 ただ、研究班ではAYA世代の支援に関わられている団体を調査させていただいたのですけれども、団体の財政の基盤が脆弱であったり、あるいはボランティアベースでの取り組みが多く、仕事や生活をしながら継続していくことの困難さであったり、あるいはがん治療もどんどん進歩していくので、だんだん年を取ってくると新しいがん治療についていけなくて患者さんのニーズに応えられなかったりという声を聞いております。AYA世代でがんを経験して、その経験を次の患者さんに生かしたいAYAの患者さんは大勢いらっしゃいますので、そういった方が交代で、負担のない形でAYAのピア・サポートに取り組めるような枠組みみたいなものが御用意いただけるとありがたいと思っております。
 AYAがんの医療と支援のあり方研究会では、既存のピア・サポートの研修会と連携させていただいて、AYA世代特有のニーズも含めて、AYA世代のピア・サポートの養成研修会などを開催させていただいていますし、各地に点在しているピア・サポートの情報を集約して、直接、患者さんに届けるような取組もしております。こういったものと連動しながら、この持続可能なAYAのピア・サポートの基盤を構築できればと考えている次第であります。
 駆け足ですが、4点。AYA世代支援チームの質を担保し、ニーズのある患者さんを相談支援に確実につなぐ取組を推進していただくこと。それから、特に終末期の在宅医療等における費用助成に係る地域間格差を是正する施策を推進していただくこと。AYA世代のがん経験者の包括的な健康管理とサバイバーシップケアに係る体制を構築していただくこと。そして、AYA世代のピア・サポーターの確保とピア・サポート活動の継続を支援する施策をぜひ推進していただきたいと思います。
 以上です。ありがとうございました。
○土岐会長 清水参考人、ありがとうございます。
 続きまして「小児の在宅医療」に関して、大隅参考人より資料7を用いて7分程度で御発表をよろしくお願いいたします。
○大隅参考人 よろしくお願いいたします。国立成育医療研究センター、あおぞら診療所の大隅と申します。現在、私は成育の所属になっておりますが、メインはあおぞら診療所という終末期在宅医療を行っている在宅医でございます。
 近年、小児がんの死亡率は著しく下がっておりますが、現在でも小児がんが主要な死亡原因であることはよく知られています。死亡統計で見てみますと、全年齢でどこで亡くなっているかを見てみると、御自宅で亡くなる患者さんが緩やかに上昇傾向にある部分に対して、意外なことに、14歳以下の小児は2020年時点で31%と、比較的多い数が自宅で亡くなっている事実があります。
 これを地域的に見てみますと、視覚的に見られるようにしたのですけれども、白いところは低いというふうに理解していただいていいと思いますが、このように地域間格差が非常に大きいことが見てとれるかと思います。ただ、気をつけなければいけないのは、小児がんは発生率が非常に低いですので、死亡する患者さんも非常に少ないことがあるので、パーセンテージには注意が必要かなとは思います。
 このような背景の下、私は2つの研究班をさせていただき、小児がん在宅医療の充実に取り組んでまいりました。
 大きな目標として、小児がんの子供たちが、あるいは家族がちゃんと選択肢を公正に提示された上で、その人らしく過ごす場所が選べる。そういう世界、そういう未来を目指すことを最初から掲げて研究班をやらせていただいております。
 大隅班の取組は、そうは言っても非常に多岐にわたっておりまして、今回、全てに触れることは難しいですけれども、小児がん在宅医療に関するモデルケースをなるべく提示すること、さらに患者さん・家族に、意思決定支援につながるような資料をつくっていきたいということを目標として置いております。
 全国の小児がん診療施設で亡くなった患者さんに関する実態調査でございます。全部で670名の患者さんにつきまして実態調査を行った上で、どこでどのようなプロセスを経て、どこで亡くなったかという調査を行わせていただきました。
 重要なデータとして、右側ですけれども、どういう患者さんで亡くなることができるかをデータを用いて解析したところ、これはよく言われていることでありますが、小児で多い白血病リンパ腫、造血器腫瘍においては、下にも関連するのですけれども、輸血や抗菌薬、抗真菌薬などの寄与度の高い治療が在宅で必要だということもあり、自宅で亡くなることに対してはネガティブに働き、一方で終末期に比較的穏やかに過ごすことができる脳腫瘍に関しては自宅で亡くなることを促進する様子であることが分かります。
 さらに、先ほどの地域差にもつながりますが、人口の多い都市部においては自宅で亡くなることが多いことが分かり、やはりこれは様々なリソースが充実していることと関連しているものと思われます。このような現状調査を行った上で、これをどう解決していくかに取り組んでおります。
 私の勤めているあおぞら診療所で、成人と小児における在宅医療の比較を行ったデータになります。17例ずつと、すごく多い数字ではありませんが、成人と小児においては全然違って、小児においては脳腫瘍が多いのが明らかに言われております。
 右側ですけれども、新生児と小児の在宅看取り率を単一施設で見てみますと、実は小児が在宅看取り率が9割近くと、御自宅で最期までお過ごしになる方が多い傾向がありました。一つの要因として、成人と小児で初診から亡くなるまでの期間での中央値を比較してみますと小児が長く、亡くなるまで関わらせていただくことが多いことが要素に関わっているかと考えました。
 さらに重要な要素として、在宅で行われる代表的な医療として静注麻薬を使うかどうかがあると思うのですけれども、その量を単純に一人当たりで、平均でしてみたところ、成人と小児ではその量が著しく違うということがあります。さらに、造血器腫瘍だけではなく、固形腫瘍でも寄与度の高い化学療法が行われた後などではどうしても在宅輸血のニーズがありますので、それも比較しますと明らかに違います。
 そういうことで、小児では在宅医療においても静注オピオイドや輸血などのかなり専門性の高いような在宅緩和ケアが必要であることが分かり、私どもの研究班としては、その中で重要な要素である在宅輸血を安全に行うための指針、ガイドラインのようなものを整備することに向けて現状調査を行って、現在、解析・公表中でございます。
 さらに、在宅医療の最終的なアウトカムとしては御本人あるいは御家族がどういうふうに思って満足したかということになるかと思いますので、その方々を対象にインタビュー調査を行うことで課題の抽出に取り組みました。
 やはりインタビューに答えてくださった親御さんたちは、自分たちの経験をほかのお子さんたちにも生かしたいという思いや、ほかの地域にも小児がんの在宅医療が広まってほしいという思いを基にインタビューに答えてくださっておりました。
 一方で、病院から在宅医療の御提案を受けたときのお気持ちは、やはりかなり受け入れることが難しかったし、さらに、家に帰ってから、いろいろな人が支えてくれたけれども、それをケアしていくことは非常に大変だということを様々お話ししてくださいました。自宅に帰ってからの時間、いろいろなイベントやすばらしい時間があった一方で、一番大事だったのは御家族と過ごした時間でしたというお話をされていたのが印象的でした。
 私どもの研究班としては、病院からの在宅移行を少しでもスムーズなものにするためのパンフレットを作成し、近日中に運用を開始する予定としておりまして、さらに在宅以外で御家族と御本人を支えるような、近年広がっている子どもホスピスのような取組や、あるいはほかの選択肢としての緩和ケア病室などの広がりについて現状調査も行っております。
 全く違う取組として、在宅看取り後の病理解剖の検討にも取り組んでおります。そもそも、お子さんが亡くなった後に病理解剖のニーズがあるのかに関しては、これは別のインタビューですけれども、御遺族から、私の経験した患者さんなのですが、お二人の方からお話を聞いています。お二人とも共通して、同じ病気の子供たちの治療開発に役立ててほしいという思いがあったことをちゃんとお話ししてくださり、お一人の患者さんはおなかの大きながんだったのですけれども、その子供を天国に送る前に子供の大きな塊を取ってあげたかったという切実な思いを語ってくださいました。そのような、一部ではあるかもしれませんが、ニーズがあるということで、それに応えていくことは十分に意義があるのではないかと思います。
 さらに、医学的な意義としましては、難治例で亡くなる小児がん患者の腫瘍検体が、ゲノム解析が可能になり、濃厚な臨床情報とひもづきますので、それは将来の治療開発に十分役に立つと思いますし、さらに在宅医療は閉鎖空間で行われ、ほかの人の目が入ることは非常にないですので、それを病理解剖という形で患者さんのお体を調べさせていただくことで質的評価にもつながると考えております。さらに、先ほどのお子さんが生きたあかし。それが、その方が将来に役立つという思いは御遺族のグリーフケアにもつながると考えております。
 それらの背景を基に、我々は現在、その課題を抽出し、モデルケースとして東京と埼玉で運用を始める準備段階にありまして、大きな課題としては病理解剖の費用負担をどうするかという問題があります。それに関しては当然、医療保険で賄うことは難しいですし、病院でそれを負担するのも難しいし、ましてや患者さんに負担いただくのも難しい。非常にここは重要な問題かと思っています。
 まとめになりますが、小児がん終末期に対応する在宅医療は都市部を中心に発展しておりますが、現在、要するに地域の子供は帰れるけれども、帰れない子供たちはたくさんいる現状かと思います。それをさらに広げていくためには、成人を対象とした在宅医療機関の枠組みの先生方にいかにお力をお貸しいただくかということがあります。それには若年がんを対象とした診療報酬上の課題があるかと思いますし、安全な在宅輸血を行っていく仕組みづくりも重要と思います。
 病院-在宅医療機関の密な連携は言うまでもありませんが、子供と家族を地域でさらに支えていくような場の整備も重要かと思います。治療開発や在宅医療の質の担保、グリーフケアにもつながるような在宅看取り後の病理解剖の仕組みづくりも重要と考え、それに取り組んでいきたいと考えております。
 以上です。ありがとうございます。
○土岐会長 大隅参考人、ありがとうございました。
 それでは、若干休憩が短いのですけれども、4分ほど置きまして、11時半からまた再開させていただきます。よろしくお願いいたします。
 
(休  憩)
 
○土岐会長 それでは、再開させていただきます。
 これまでの委員や参考人の御発表を踏まえた議論をしていくわけでございますけれども、その前に、まずは事務局から資料8を簡潔に御説明いただきたいと思います。それでは、事務局、よろしくお願いします。
○原澤がん対策推進官 事務局でございます。それでは、資料8「『がんとの共生』分野に係るがん対策推進基本計画の見直しについて」を御覧ください。資料をかいつまんで御説明させていただきます。
 まず、2ページ目から緩和ケアのセクションとなります。
 資料の御説明を省かせていただいて、7ページ目の検討の視点のところを御覧いただければと思います。こちらについて、がんとの共生のあり方に関する検討会からの提言並びに第3期中間評価及びこれまでの議論を踏まえ、どのように考えるかということでお示ししております。
 1つ目の●から、緩和ケアについて、こちらは基本計画の記載の書き方に関する論点でございますが、基本的には、引き続き「がんとの共生」分野において記載することとした上で、緩和ケアの提供体制の整備を推進する観点から「がん医療の充実」分野においても、緩和ケアの提供等に係る記載を加えることとしてはどうかとお示ししております。
 2つ目の●は、緩和ケアの一層の充実に向けて、身体的苦痛や精神心理的苦痛、社会的な問題等の把握及びその対応を診断時から一貫して経時的に行われるよう、引き続き、拠点病院等を中心に取組を進めることとしてはどうかという御提案でございます。
 3つ目の●は、緩和ケア提供体制に関する実態把握のための調査は引き続き実施することとしてはどうかということでございます。
 続いて、8ページ目を御覧ください。検討の視点のマル2でございます。
 がん医療に携わる全ての医療従事者が基本的な緩和ケアを実施できるようにという観点、また、その技能を維持・向上できるようにするという観点で、緩和ケア研修会の学習内容や、フォローアップ研修等について検討することとしてはどうかとしております。
 2つ目の●は、緩和ケアに関する正しい知識やその必要性等の普及のため、国民に対する普及啓発を引き続き推進することとしてはどうかということでございます。
 3つ目の●は、前段は拠点病院等以外の医療機関における緩和ケアの実態や課題等について把握することとしてはどうかということ。後段は拠点病院等については特に入院だけではなく外来等における充実に向けて検討してはどうかということでございます。
 一番下の評価については御覧いただいたとおりでございます。
 続いて、9ページ目以降の相談支援及び情報提供のセクションでございます。
 資料をお進めいただいて、同様に検討の視点の御紹介をさせていただきます。20ページ目までお進みください。
 20ページ目の1つ目の●からでございます。効率的・効果的な体制を構築する観点から、持続的な相談支援体制のあり方について検討することとしてはどうか。
 2つ目の●は、がん相談支援センターやピア・サポートに関する認知度を向上させるため、拠点病院等を中心に、患者さん及び家族等へ適時に周知することについて、引き続き取り組むこととしてはどうか。
 3つ目の●は、相談支援の質の確保という観点で、がん相談員研修やピア・サポート育成事業等について、引き続き関係団体等と連携し取り組むこととしてはどうか。
 一番下の●は、必要な方の相談支援体制のアクセスを改善するという観点で、オンラインの活用など、そういった体制整備等についても検討してはどうかということでございます。
 続いて、21ページ目を御覧ください。検討の視点のマル2でございます。
 一番上の●から「情報の均てん化」という観点で、患者及び家族等が必要なときに正しい情報を入手し、適切な医療・生活等に関する選択ができるように、その課題等に関する把握と適切な情報提供のあり方についての検討を進めてはどうかということです。
 2つ目の●は、正しい情報提供を推進する観点で、インターネット等を通じて行われる情報提供について、科学的根拠に基づいているとは言えない情報もあることについて国民に注意喚起等を行い、引き続き、国立がん研究センターや関係団体等と連携して正しい情報の普及に取り組むこととしたらどうかということでございます。
 3つ目の●は、障害等によりコミュニケーションに配慮が必要な者や日本語を母国語としていない者の情報や医療へのアクセスを確保する観点で、課題等を把握し、提供体制のあり方について検討することとしてはどうかということです。
 評価についてはお示しのとおりです。
 続いて、22ページ目以降、社会連携に関するポイントでございます。
 資料をお進めいただいて、28ページ目に検討の視点をお示ししております。
 1つ目の●から、患者及び家族等への情報提供の充実という観点で、セカンドオピニオンに関する情報提供及び利用状況等の実態把握と、適切な情報提供のあり方の検討を進めてはどうかということです。
 2つ目の●は、地域の実情に応じた体制を構築する観点で、都道府県がん診療連携協議会において、都道府県内でのセカンドオピニオンを受けられる医療機関や、緩和ケア及び在宅医療等へのアクセスに関する情報提供のあり方について検討いただくこととしてはどうかということです。
 3つ目の●は、がん患者が望んだ場所で過ごすことができるよう、拠点病院等を中心に、在宅を含めた地域における緩和ケア提供体制について検討することとしてはどうかということです。
 4つ目の●は、地域の実情に応じた患者支援体制の充実という観点で、拠点病院等が中心となって、関係機関との連携体制や困難事例等への対応について協議することとしてはどうか。また後段は、地域の関係者間の連携体制の構築や地域における課題の解決に向けて、そういった施設間の連携・調整を担う者の育成について引き続き取り組むこととしてはどうかというものです。
 評価についてはお示しのとおりです。
 続いて、4つ目のセクションです。29ページ目以降、サバイバーシップ支援ということでお示ししております。
 38ページ目までお進みください。サバイバーシップ支援分野の見直しの検討の視点でございます。
 一番上の●から、がん患者・経験者及び家族等の生活の質を向上できるよう、既存の両立支援の効果及び課題を明らかにし、施策の強化や産業保健との連携、普及啓発等について検討することとしてはどうか。また後段は、就労支援に携わる者は、必要に応じて産業医等と連携し、患者と事業主との間で治療と仕事の両立に向けた調整を支援することとしてはどうかということです。
 2つ目の●は、就労支援という観点で、特に再就職支援を推進する観点で、拠点病院等とハローワークとの連携する事業に引き続き取り組むこととしてはどうかということをお示ししております。
 3つ目のポツは、就労支援のさらなる充実に向けて、治療に関連する離職の実態を把握し、それを踏まえた就労支援の提供体制について検討することとしてはどうかということをお示ししております。
 4つ目の●は、中小企業も含めて、治療と仕事の両立という取組が進むように、企業における支援体制等の環境整備を推進するため、産業保健総合支援センター等のさらなる活用や助成金等による支援について検討することとしてはどうかということをお示ししております。
 一番下の●は、両立支援コーディネーターのさらなる活用という観点で、その活動状況の把握や、より効果的な配置について検討することとしてはどうかということをお示ししております。
 続いて、39ページ目を御覧ください。同分野の検討の視点マル2でございます。
 一番上の●から、アピアランスケアや自殺対策について、医療従事者等が正しい知識を身につけられるよう、研修等の開催や相談支援及び情報提供のあり方について検討することとしてはどうかとお示ししております。
 2つ目の●で、アピアランスケアの充実という観点で、拠点病院等を中心としたアピアランスケアに係る相談支援・情報提供体制の構築に向けた検討を進めることとしてはどうかということです。
 3つ目の●は、がん診断後の自殺対策を充実させるため、がん患者における自殺リスクやその背景等についての実態把握を行い、その上で必要な対応について検討することとしてはどうかとお示ししております。
 4つ目の●は、がん患者・経験者、その家族等の生活の質を向上させるため、経済的な課題等を明らかにし、利用可能な施策に関する周知や課題解決に向けた施策について検討することとしてはどうかとお示ししております。
 評価については御覧いただいているとおりです。
 最後のセクションで、40ページ目以降、ライフステージに応じたがん対策で、検討の視点を45ページ目からお示ししております。
 45ページ目の1つ目の●を御覧ください。教育支援を充実する観点から、医療従事者と教育関係者との連携に努めるとともに、療養中に適切な教育を受けることのできる環境の整備、就学・復学支援等の体制整備を行うこととしてはどうか。また、後段は情報技術を活用した遠隔教育について、課題等を明らかにするための実態把握を進めることとしてはどうかとしております。
 2つ目の●です。長期フォローアップや移行期支援など、成人診療科と連携した切れ目ない支援体制が構築できるよう、医療・支援のあり方について検討することとしてはどうかとしております。
 3つ目の●です。がん経験者の就労における課題の克服に向けて、ハローワークや地域若者サポートステーション等を含む就労支援に関係する機関や患者団体と引き続き連携して取り組むこととしてはどうかとお示ししております。
 続いて、46ページ目を御覧ください。検討の視点マル2でございます。
 小児・AYA世代のがん患者の療養環境の充実に向けて、課題等について実態把握を行い、緩和ケア提供体制や在宅療養環境等の体制整備について検討することとしてはどうかとしております。
 2つ目の●から少し対象が変わりまして、高齢がん患者への支援を充実させる観点から、拠点病院等は、地域の医療機関や在宅療養支援診療所等の医療・介護を担う機関、関係団体、自治体等と連携し、患者及び家族等の療養生活を支えるための体制を整備するとともに、地域における課題について検討することとしてはどうかとしております。
 3つ目の●でございます。高齢がんサバイバーのQOL向上を目指し、高齢がん患者が抱える課題についての実態把握を行い、長期療養の中で生じる有害事象などに対応ができるよう健康管理や、地域における再発・二次がんへのフォローアップ体制等について検討することとしてはどうかとしております。
 評価についてはお示しのとおりです。
 簡単ではございますが、事務局からの資料8の御説明は以上でございます。よろしくお願いいたします。
○土岐会長 それでは、委員の皆様から御意見を頂戴したいと思います。また、今日発表いただいた委員や参考人への御質問でもよろしいです。
 また、資料9に事前に御意見を頂戴していまして、こちらも参照いただけたらと思います。
 今日は共生ということで、緩和ケア、相談支援及び情報提供、そして、社会連携、サバイバーシップ、最後にはライフステージとなっていますけれども、できる限り、この順番で御意見を頂戴していただきたいとは思いますが、もちろん、領域が重なっていますので、必ずしもそこにこだわらなくても結構なのですけれども、その順番でもし御意見があれば、その方向で頂戴したいと思います。
 まず、緩和ケアに関しまして御質問のある方は、よろしいですか。緩和ケアまで行きたいと思います。
 それでは、黒瀨委員、どうぞよろしくお願いします。
○黒瀨委員 ありがとうございます。
 御丁寧な説明もありがとうございました。緩和ケア分野に関しまして、全体的には本当にすばらしくまとめていただいていますので、この方向性を支持したいと思います。
 検討の視点に関して幾つか意見を述べさせていただきたいと思いますけれども、7ページの2つ目の●のところ、緩和ケアの一層の充実に向けてということで、拠点病院等を中心に地域の実情に応じた取組を進めてはどうかという点、あるいは28ページにも緩和ケアの提供体制に関して、3つ目の●、4つ目の●の辺りに書かれていると思いますが、このあたりはやはり、先ほど鶴岡委員の御説明にもあったように、地域の包括的な緩和ケアネットワークをきちんと構築して拡充していくことが大切だという点で私も支持いたします。
 それはまた、地域包括ケアの一部として、あるいは地域包括ケアと連携する形で進めていくことが必要だと思いますし、そのためにはやはり多職種連携のネットワークを、ICTを十分に利活用すること。それだけではなく、例えばオンライン資格確認によるPHRの機能、あるいは今、既にある地域連携の医療ネットワーク。こういったEHR機能。こういったものが、それぞれが独立してあるものではなく、情報をきちんと共有しながら同じ土俵の上で連携していくということで、情報の共有や連携のあり方について、しっかりと認識していただいて共有していくことが必要ではないかと思っています。
 以上でございます。
○土岐会長 ありがとうございます。また後ほど検討させていただきます。
 それでは、続きまして、久村委員、どうぞ。
○久村委員 久村です。私からの意見は、緩和ケア分野の中でも特に精神心理的ケアの均てん化や質向上のための取組についてです。
 参考資料10の日本サイコオンコロジー学会からの要望書にございますように、次期計画では次の6点について要望いたします。
 まず、1点目は、全てのがん診療連携拠点病院に公認心理師を配置して、研修の場を設置していただくこと。
 2点目は、緩和ケアチームの精神心理的ケアの知識・技術の向上のための研修の場を設置していただくこと。
 3点目は、拠点病院におけるピア・サポーターの活用を推進していただくこと。
 4点目は、医療機関内での自殺対策を推進していただくこと。
 5点目は、遺族ケアを推進していただくこと。
 6点目は、障害者におけるがん予防・医療格差への対策を推進していただくことを要望いたします。
 以上の内容につきましては、複数の委員の皆様から事前の御意見において御賛同いただきましたことを感謝申し上げます。
 以上です。
○土岐会長 多数のポイントを指摘いただきありがとうございます。これもまた後ほど事務局と相談してお返事したいと思います。
 それでは、続きまして、谷島委員、どうぞ。
○谷島委員 ありがとうございます。私からは、少し患者視点で情緒的な言い方になってしまうかもしれませんが、緩和ケアを知っていても知らなくても、必要とする全ての患者に適切に届くことを重視していただきたいと思っております。
 AYA世代を御説明いただいた清水参考人のお話にもありましたけれども、患者に届くことが大事で、そこがボトルネックになっているというお話がありましたので、これは緩和ケアだけではなく、アピアランスケアやAYA世代支援等、今回協議している全ての項目に言えることですが、それを必要としている多様な患者全てにこれらの多様な医療やサポートが確実に届くようにしていただきたいと思っております。
 患者からは、そんなものがあるなど知らなかったとか、または希望しているのにうまくつながれないという話が聞かれますので、知らないからつながれない、知っていてもつながれないのではなくて、知らなくても知っていてもつながれることが必要であると考えておりますので、2点要望させてください。
 1点目は、緩和ケアに患者が自動的につながれるような仕組みを検討し、つくっていただきたいと思っております。診断と同時に、患者が自動的に緩和ケアを知ってつながれる仕組みやルールをつくっていただきたいと考えております。
 2点目は、それに伴って、適切なスクリーニングとアセスメントを行っていただきたいと思っております。緩和ケアが必要とされる患者さんを取りこぼさないために、診断時から治療ステージ、終末期等、適切なタイミングでスクリーニングを行って、かつ患者に届いているかどうかの評価を高い精度で実施していただきたいと思っております。
 私からは以上です。
○土岐会長 まずは3名の御意見を頂戴しました。黒瀨委員からは、情報の連携について、診療連携を地域で行うときに情報をどのように連携していくのかという御質問でございました。久村委員からは多数、心理ケア、ピア・サポーターにつなげてほしい、自殺、御遺族、障害者で御意見を頂戴しています。そして、谷島委員からは、情報の格差はあるのだけれども、それを踏まえて、自動的にできる限りそういうケアにつながるようなシステム、また、スクリーニングももっと積極的にやってほしいという御要望でございました。
 事務局から何か追加することはございますか。よろしいですか。
○原澤がん対策推進官 事務局からは特段ございません。ありがとうございます。
○土岐会長 では、御意見をお伺いしておきます。
 それでは、続いての御質問、谷口委員、どうぞ。
○谷口委員 島根県の谷口です。私からは2点発言をさせていただこうと思います。
 緩和ケアについて、まだまだ苦痛を抱える患者さんの割合がなかなか減っていない実態があります。その一つに、意見書の中にも書かせていただきましたけれども、それぞれの病院が実際やったことで患者さんがどういう状態になっているのかをフィードバックする必要があるのではないか。
 各病院がフィードバックを受ければ何か解決しないといけないというふうに普通は思うと思うのですよ。だから、今、例えば患者調査とか遺族調査とかをしていらっしゃいますけれども、これをもう少し細かくフィードバックすることで質を上げていくという、何かそういったことにつながるといいのかなと思って、一つは緩和ケアの質の向上で工夫がないかということでの意見でした。
 それから、もう一つ、これは緩和ケアだけではなくて、がんの治療にしても相談にしても全てのことで言えると思うのですが、先ほどの谷島委員との発言とも関係あるのですが、誰かに相談したら、そのことが、例えば地域拠点病院、都道府県拠点病院、国の拠点病院、何らかの形でその答えが手に入るようなネットワークが必要ではないか。
 往々にして、都道府県のがん拠点のネットワークがよく、今日も議題で出ておりますけれども、そういうところに参加する先生方はどちらかというと大きな病院の先生方が多くて、もう少し、例えば一般病院とか地域の診療所などをターゲットにしたネットワークをつくるために地域の拠点病院の役割が重要になってくるのではないかと考えておりますので、地域のがん拠点病院の役割の中にそういったネットワークをつくるという項目を要件として挙げることはいかがでしょうかということで提案させていただきたいと思います。
 私からは以上です。
○土岐会長 ありがとうございます。
 それでは、続きまして、小原委員、どうぞ。
○小原委員 ありがとうございます。
 まず、参考人の方々の御説明、非常に分かりやすくて、とても参考になりました。ありがとうございます。
 私からは、緩和ケアに関しまして3点申し上げたいと思います。
 1点目は、先ほど鶴岡委員からもお話がありましたけれども、拠点病院以外のいわゆる非拠点病院と言われる医療機関における緩和ケアの具体的体制整備の推進を申し上げます。
 先ほどありましたけれども、看取りの全体で拠点病院が占めるのは2割程度で、看取りまでの対応できる仕組みには拠点病院に加えて、いわゆる非拠点病院と言われる拠点病院以外の緩和ケアの充実を求められると思います。その中で、緩和ケアの専門家による連携の体制の検討というふうに書いてありますが、それだけではなくて、拠点病院以外の医療機関でも診断時から一貫して経時的に緩和ケアが提供できる具体的な仕組みの整備を要望いたします。
 2点目が、それに加えてですけれども、緩和ケアは、先ほどお話もありましたが、特に療養生活をする患者は、医療だけではなくて、福祉・介護サービスの活用も非常に重要になってきます。
 これに関しましては、当然、連携という話があるのですけれども、全国的に見ては、やはり自治体、行政と医療機関、医療の推進するところとのなかなか連携が取れないということなども見受けられておりますので、そういったところでの医療・介護・福祉機関を含めた専門的支援体制の構築に向けた具体的な方策として、各機関の役割、いわゆる先ほどの話でタスクシェアというふうにありましたが、そういった意味では役割をきちんと明確にした上で、例えばグッドプラクティスの蓄積であったりとか、それから、支援フローやガイドラインの作成等といった具体的な検討を盛り込んでいただきたいと思います。
 それから、3つ目ですけれども、第3期のところで、緩和ケアに身体的・精神的に加えて、社会的苦痛という文言がありました。これに関しましては、実際に何をもって社会的苦痛なのかが非常に不明確であるということがあります。
 それに関しましては、経済的な課題を含めた社会的苦痛に対する実態調査を行っていただき、これは患者体験調査等に加えていただくことになるかと思いますけれども、がん相談支援を含む支援策にこれが反映できて、今回、ロジックモデルを活用するという話もありましたので、そういった意味ではプロセス評価、アウトカム評価のところにぜひ盛り込んでいただき、実効性のある、それから、エビデンスに基づく支援体制というか、支援のあり方を検討していただきたいと思います。
 以上です。
○土岐会長 ありがとうございます。
 続きまして、石岡委員、どうぞ。
○石岡委員 7ページの緩和ケア分野の見直しの検討の視点マル1の最初の●のところですが、これは以前から話が出ました「がんとの共生」分野だけではなくて「がん医療の充実」分野の記載を入れる。これまで、第3期まではそういう形にはなっていなかったわけですけれども、これはもちろん賛成です。今まで各委員や参考人の御発言、御質問等を見て、非常に緩和医療分野が、たくさんの対応を盛り込まなければいけないのはよく理解できますが、医療を提供する側、医療機関や医療従事者の視点に立つと、この「がん医療の充実」のところに記載すべきところと「がんとの共生」のところに書くべきことはやはり明確に区別しないといけないと私は感じました。
 というのは、一般の医療従事者にとって、今日、委員の先生方がいろいろお話しになられたことはあまりにも高度過ぎて、実際にケアギバーがどういう目標を持って行うかはもう少しシンプルにほかの、例えばがんの手術療法とか放射線治療とか薬物療法。そういったところに書かれていることはもう少し、今やるべきことは何かということが今までは書かれています。ですから、医療を提供する医療従事者が何をやるべきかというのは「がん医療の充実」にきちんと書いて、今、いろいろな視点で検討が必要だというふうにおっしゃられたことはかなり高度なことですので、これは医療の共生のほうとしっかり厚労のほうで分けた書きようを私はやっていただく必要があるのかなと感じました。
 以上です。
○土岐会長 ありがとうございます。
 続きまして、樋口委員、どうぞ。
○樋口委員 ありがとうございます。
 患者さんにどう届けるかという視点はほかの委員の方が話された視点に全く同意なのですが、今までなかった視点として、遺族調査では約30%の遺族が最近1か月で悲嘆の症状を訴えているとあります。日本における遺族に対するグリーフケアの体制は、通常の訪問や診療の合間を縫って各施設が自主的に行っているのが現状です。ほかの国では約半年間、持続的に行うような体制が取られていたり定義されていたりもします。今度は家族の視点も含めて、持続可能な活動となるように、実態を調査して、診療報酬などを含めた体制を整えていただきたいと思っております。
 以上です。
○土岐会長 ありがとうございます。
 ここで一旦まとめますと、谷口委員から、フィードバックをするシステム、それから、ネットワークの強化。小原委員からは、これは多くの方から頂戴しました、拠点以外の要因も診断時からケアに関わっていくという話ですね。それから、介護・福祉との連携、社会的苦痛への対応。そして、石岡委員からは、医療と共生をもっと明確に区別できるのではないか。区別すべきところは区別すべきではないかという御意見も頂戴しました。最後、樋口委員からは、遺族調査、グリーフケアについても御意見を頂戴しています。
 事務局から何かございますでしょうか。
○原澤がん対策推進官 事務局でございます。
 石岡委員から頂戴いたしました御意見としては、「がんとの共生」分野に引き続き記載するべき事項と「がん医療の充実」分野においても記載するべき事項をしっかり整理するようにということと、それに加えて、現時点において、ある程度、対応が明確になっていて、取組そのものがしっかり書けるところと、今後、検討が必要なところや、より踏み込んだ対策が必要なところについては、そういった観点も含めてしっかり整理してほしいといった御指摘かと思いましたので、そのように認識いたしました。
 事務局から以上でございます。
○土岐会長 ほかはございましょうか。
 私からも1点、緩和ケアの医療に関して、専門医の不足、前回、木澤委員もおっしゃっていましたけれども、もちろん、その前提として、この緩和医療に関わる医療者全員が緩和ケア講習会を受けるのですが、やはりそこと専門医の間のギャップがすごく幅が大きくて、我々も外科医で、がんの患者さんをある程度まではケアするのですけれども、専門性が追いついていないところがありますので、その溝を埋めるように、これは緩和医療の学会等にももっと頑張っていただいて、ぜひ、今日はタスクシェアという話も出ましたが、そういうものも通じて緩和医療に関わっていきたいと思っております。
 こちらは私からの意見でございます。
 それでは、2つ目のポイント、これは多分3つ目も関係するかもしれませんけれども、相談支援、患者さんへの情報提供、そして、社会連携。このあたりについて、御意見、御質問がある先生はぜひ挙手をよろしくお願いしたいと思います。
 よろしいでしょうか。
 すみません。大井委員、どうぞよろしくお願いします。
○大井委員 相談支援と情報提供で意見をさせていただきます。
 がん診療拠点病院において、がん相談支援センターの設置を要件とされていますけれども、実際にがん診療拠点病院とその他の病院に患者さんがかかられている比率のことが昨年9月3日の第2回がんの緩和ケアに係る部会で厚生労働省から出された資料2の記載の中で、院内がん登録におけるがんの登録割合ががん診療拠点病院51.6%、それから、その他は48.4%ということになると、がん診療拠点病院に初期の治療でかかられた51.6%の方たちはそういった相談支援センターにかかるところに接する機会は高くなる。でも、実際にはその他のところにかかられた48.4%の方たちがいて、そういった機会がない可能性がある実態があって、そちらに対しては現状においてはそういう情報提供はなかなかなされていないのではないかと思います。
 そして、多くのがんを冠するような国立がん研究センターのような病院では専門的にサポートされているかと思いますけれども、他の疾患もサポートされているような病院の場合は地域連携と両方の機能を併せ持っている。その場合には診療報酬の点数上、入退院支援加算とか、そういったインセンティブが働いている部分に関しては非常に力を入れやすくなりますが、がん相談支援に関してはなかなかそこにインセンティブが働かないので、それに力を入れようということには働きづらいこともあるかと思います。
 ですから、実際にがん相談支援を充実していくことと広めることにおいて、かかられている患者さんが実際的に拠点病院以外にも半数近い方がいらっしゃることの実態を認識した上での広報の方法。それと、その中で取り組まれている支援者に関してインセンティブが働いて、それに対応していこうという行動に移すような仕組みが必要なのではないかと考えます。
 そして、情報に関してもですけれども、正しい情報といったときに、どれが正しい情報かが非常に患者さんや国民からはなかなか理解できない、判断できない。国立がん研究センターの情報が正しいことは理解するのですが、恐らくいろいろなところに患者さんはアクセスしていく実態があります。例えば米国ではHONコードのような形で医療情報サイトの信頼性を示す認証コードを発行していますので、そういった情報の発信に関してHONコードを取得してくださいとサイト運営者に求めていくことも必要なのではないかと考えます。
 あと、実態的なものなのですけれども、評価というところで、ロジックモデルということで非常に今回こだわっていこうということでスタートしています。その評価で数字を見たときに、評価の基準の一つとして患者実態調査が書かれていますけれども、それが実態を正しく反映しているかどうかという検証をぜひしていただきたい。
 例えば患者体験調査報告、平成30年度調査を見てみますと、回答者の特性の中で21%は家族が回答となっているのです。0.2%は代理人が回答となっています。20%ちょっとは患者ではない方が回答していることになると、それがすなわち患者の声なのであるということが果たして言えるのかどうかとか、そういったものも評価した上でそれを指標として用いるのだということを検討いただきたいと考えます。
 以上です。
○土岐会長 ありがとうございます。
 それでは、黒瀨委員、よろしくお願いします。
○黒瀨委員 ありがとうございます。
 正しい情報に対するアクセスを確保するための提供体制、あるいは正しい情報を正しく提供する、正しいものと正しくないものを分けるのは非常に難しい判断ではあるかと思いますけれども、そこは十分に検討の余地があるのかなと思います。
 ただ、その中で一番大切なのは、正しい情報を提供するだけではなく、それを実際に患者さんが理解していただく。正しい情報を間違って理解してしまったら全く意味がないので、正しい情報を得て、かつそれを正しく理解し、正しく活用していただく。その仕組みが大切だと僕は思います。
 ですので、例えば相談員の方ですとか、あるいはもちろん、かかりつけ医とか、そういった者としっかりと情報の連携をしていただいて、理解を深めていただき、それを正しく活用していただく。そういった取組についてもお考えいただければと思います。
 以上でございます。
○土岐会長 ありがとうございます。
 続きまして、樋口委員、どうぞ。
○樋口委員 ありがとうございます。
 心のつらさがあるときに、すぐに医療スタッフに相談できると感じている患者の割合は32.8%と、まだ低くなっています。患者さんからの声を待つのではなくて、患者さんの支援のニーズを医療者側から拾い上げるために、自分自身の状況を振り返るような自己記入式のツールの使用であったり、何に困っているのかも分からないほど患者さんは混乱していることも多いので、患者自身の状況を見える化するように、医療者サイドで一つ一つリストで確認するなど、毎回ではなくても、診断時や治療の変更時、再発時、例えば機能の低下が見られたとき、治療中止時など、タイミングを決めて、変化があるときに、体の症状や心理状況に加えて、時に仕事の側面や経済や生殖やアピアランスなど、自殺予防の側面も含めてスクリーニングを行い、必要時は緩和ケアの外来であったり生殖であったり、アピアランスなどの関連部門につなぐような体制を強化していただきたいです。スクリーニングの結果を掘り下げて広めることも結構、技術だったりとか経験が要ることもあるので、ただ、一般の外来の看護師もできないわけではないので、そのような体制が整えられるように、看護師を育成していくことが重要だと考えています。
 また、社会連携の側面に関しては、在宅や拠点病院以外の病院であったりとか施設で亡くなる患者さんも半数以上を占めていることが今日の資料でもありました。終末期の緩和ケアの均てん化のためにも、地域でも対応できる人材を増やすことが大切だと考えます。その人材を育成して、拠点病院の緩和ケアセンターなどが中心となって、地域の関連機関と連携を取り、今ではオンラインも活用できるので、気軽にコンサルテーションできる環境であったり日頃から事例を共有できるような体制づくりが必要と考えます。
 以上です。
○土岐会長 ありがとうございます。お三方から御意見を頂戴いたしました。
 事務局からいかがですか。
○原澤がん対策推進官 ありがとうございます。
 1点、大井委員に確認のための質問でございます。御提案いただいた中で、情報の確からしさを一定、規定する仕組みが海外にて実装されているお話を頂戴したかと思います。こちらについては、医療関係の情報に限らず、ウェブ上に公開されている情報の確度を一定程度、整理する仕組みがあるという認識でよろしかったでしょうか。あまり詳細な内容になるようであれば後ほど教えていただければ結構ですので、今、お答えいただける範囲で教えていただければと思います。
○土岐会長 大井委員、いかがでしょうか。
○大井委員 医療に関わる情報になります。あと、社会的な問題であるアピアランスも含めて、いろいろな医療に関わっていることの確からしさを認証しているコード、Health On the Net Foundationが認証しているHONコードというものであります。
 詳細が必要であれば、またお知らせします。
○土岐会長 今回、科学的根拠に基づいているとは言えない情報もあることについて、国民に注意喚起を行いたいという文言がございますと、何が科学的でないのか。そこを調べていくようなシステムが必要かと思います。
 ほかの委員の先生方、よろしいでしょうか。
 それでは、引き続いて、御意見を頂戴していきたいと思います。
 齋藤委員、どうぞ。
○齋藤委員 皆様、ありがとうございました。
 相談支援センターの活用についてなのですが、弊社、またはほかの企業さんからもお聞きするところ、その存在自体を知らないことが多いです。かかりつけ以外の相談支援センターを使うことができることも知らない方が多いですので、ぜひそういったところを何かしらの周知できること、それから、相談支援センターに何を相談したらいいのかという遠慮の塊である部分もあるようです。
 なので、どんな質問をしてもいいのかというところの開示もしていただきたい。患者側の視点からすると、先ほど樋口委員がおっしゃったように、アンケートを取って、どうやったら使いやすいのかとか使ってみてよかったみたいなところも非常にあると、より支援センターの使い勝手がよくなるのではないかと思っています。
 以上です。
○土岐会長 ありがとうございます。
 それでは、引き続きまして、阿久津委員、どうぞ。
○阿久津委員 今日はありがとうございます。私から相談支援へのアクセスの件でお話しさせていただきます。
 ひとえに、最初の診断の時点でのインフォメーションの問題が一番大きいのではないかと、先ほど谷島委員等もおっしゃっていましたけれども、そのときにきちんとそういったところにつながれるフローはまず必要なのではないかと思うので、そのフローをつくるためのきっかけといいますか、フローをつくるようにということが明記できないのかと感じております。
 北海道にもちろん、がん拠点病院がございまして、そちらに相談支援センターがあるのですけれども、定期的にいらっしゃらないときとか、あと、人数が足りていないとかという実情が物すごくありますので、行きたいときに行ったところで相談できる人がいない状態になっている現実。これは多分、費用感の問題ですとか設置の問題ですとか、あとはそういったピア・サポーターの方のボランティアといいますか、その気持ちにかかっている部分が非常に大きいので、こちらを何とか費用的に援助していただくとかという体制を、まずそこの拠点病院では整えてほしい。
 それプラス、乳がんの患者さんの場合は、拠点病院で治療していたとしても、その後、クリニックに行くと言って、その病院から離れてしまう方が非常に多いです。そういった方も含めて、継続的にきちんとタッチができるようにということで、それを使ってもいいのだということをより強くコーディネートしていただけるようなことにならないかと思います。
 あとは、現実問題、自分が行くとがんであることを知られるので行けないという声もあることから、やはりオンラインでのサービスの拡充も非常に求められるところかなと感じております。そうした取組を行う正しい団体への援助というか、そういったサポートがない限りは広がっていかないのではないかと考えておりますので、そちらも含めて御検討いただきたいと思います。
 以上です。
○土岐会長 ありがとうございます。
 続きまして、谷島委員、どうぞ。
○谷島委員 ありがとうございます。私からは1点だけです。
 この資料の10ページ、11ページにありますように、がん診療連携拠点病院のがん相談支援センターや小児がん拠点病院の相談支援センターのように、相談支援の機能は本当に日々アップデートし、患者を支えていただいており、本当に感謝しております。そこで今後、全国でネットワーク化されていく希少がんセンターにおいても同様に相談支援センターの充実を図っていただきたいと思います。
 私からは以上です。
○土岐会長 ありがとうございます。
 それでは、続きまして、前田委員、どうぞ。
○前田委員 ありがとうございます。私はピア・サポートについて1点述べさせていただきます。
 まず、ピア・サポーターについて知っているがん患者の割合は27.3%とありますが、医療者の方が知っている割合はもっと低いのではないかと思います。医療者の理解が広がらないと患者には届かないと感じていますので、まず医療者の方々に、ピア・サポーターがどういったことができるのかを知っていただきたいです。
 例えば孤独感の解消であったり生活の情報であったり、支え合いというところはやはり医療者の方ではなかなか難しいところがあると思います。こうしたところがピア・サポートのできる大きなメリットですので、このようなことができることを医療者の方にもっと理解していただいてつなげていただく。そのようなことが大事かなと思います。
 今、コロナで院内サロンがストップしている状況のままです。今後の連携について、医療者の方がどのような支援をしてくださるのか意識調査などしていただき、支援していただきたいと思います。
 以上です。
○土岐会長 ありがとうございます。
 続きまして、小原委員、どうでしょうか。
○小原委員 ありがとうございます。私からはがん相談支援センターに関しまして2点意見を述べさせていただきたいと思います。
 1点目が、今回、がん診療連携拠点病院等の整備の改定に、外来診断時から治療開始までをめどに、がん患者及びその家族が一度はがん相談支援センターを訪問することができる体制の整備が記載されました。これに対しまして、がん相談支援センターの相談員からは、本当にこれが対応できるのだろうかという不安の声も一方では聞かれております。それを考えますと、一方ではこちらに書いています持続可能な支援体制ということを考えますと、ぜひ持続可能な支援体制を見据えた実態調査をしていただいた上で、非常に相談はこれまでもいろいろな委員からも話がありましたけれども、非常に多様性、それから、個別性が多岐にわたっておりますし、その質の問題、それから、量に応えられるのかといったこともあります。そういったことも含めて、適切な人員配置、それから、どういう職種の方を配置したらいいのか。こういったことも含めて、ぜひ体制の整備をお願いしたい。
 それから、先ほど阿久津委員からも話がありましたけれども、活用促進のための取組も非常に重要だと思います。多分、周知が進めばそこは上がるとは思いますが、実際にはやはり課題がある患者さんが即、そこに行けるかということと、待たせない相談支援体制。それから、行って快適だったということなども非常に重要になってくるかなと思います。そういったことを考えると、やはり院内フローを含めた具体的なアクション、それから、そういう方策をぜひ検討していただいて、適時適切に患者・家族が質の高い相談サービスが利用できるような体制整備をお願いしたいと思います。
 以上です。
○土岐会長 ありがとうございます。
 かなり相談支援センターへの要望が多いようでございます。特に、一度は必ず相談支援センターに行くような次の拠点病院の基準で求めていますけれども、相談支援へのフローをどうするかとか、また、逆にクリニックとか、外から相談支援センターを活用できないか、オンラインでどうかとか、様々なリクエストがございました。
 あとは、それ以外としては、ピア・サポートの活用ができていないのは、まずは医療関係者がピア・サポートの存在をまだ知らないのではないかという、そのあたりの問題を指摘しております。
 事務局、いかがでしょうか。
○原澤がん対策推進官 事務局でございます。
 今、いろいろいただいている御意見を踏まえまして、引き続き対応について検討していきたいと思います。よろしくお願いいたします。
○土岐会長 私からは1点、相談支援センターに対する要望・希望がすごく多いのですけれども、先ほどの北海道の事例のように、なかなかまだまだマンパワーが追いついていないところもございます。少なくともフェース・ツー・フェースの相談には非常に有効だと思うのですが、情報提供という点で、もっと学会とか関係団体とか、できる限り、そういうところも含めて活用して、相談支援センターの負担を減らすと言ったらなんなのですけれども、より患者さんに近い形で活動できるように、そういう情報提供の面でのサポートも今後していくべきではないかとは考えております。
 これも私からの意見でございます。ありがとうございます。
 それでは、引き続きまして、社会連携も含めてなのですけれども、社会連携、サバイバーシップ、ライフステージ。このあたりで、ライフステージ、サバイバーシップもそこに関連しておりますので、最後のところまで含めて御質問等があればお受けしたいと思います。
 いかがでしょうか。サバイバーシップ、ライフステージ、小児・AYAとか、いろいろな問題を含んでおりますけれども、御質問があればお受けしていきたいと思います。
 それでは、まず、前田委員、どうぞよろしくお願いします。
○前田委員 ありがとうございます。私からは3点、サバイバーシップや社会連携についてお話しさせていただきます。
 1点目は、小児がんの就学についてです。前回もお話しして、今回も説明がありましたが、入院中の子供がまだまだ在籍校でオンライン授業をしてくれない問題やコロナでオンライン授業があっても病気では認められない、一方通行の授業を聞くだけ。そのようなお話を聞きます。こうした在籍校の範囲では校長先生の裁量が大きく、また、公立や私学においても差がある状況ですので、この支援や説明を受けた数値は出ていますけれども、それが満足のいく学びにつながったのかという検証のほうが大事かなと思います。配慮ではなくて制度として学びを保障する仕組みをつくっていただきたいです。
 それから、私学は院内学級に在籍すると元には戻れないという場合もありますので、二重学籍を認めてほしいという声もあります。また、高校生の学習についてのお話がありましたが、高校生で国公立を目指す生徒と工業高校で技術を学ぶ生徒は目的も内容も違いますので、在籍校のまま学べるサポートが必要です。
 それから、ICTの活用のお話もありましたが、病院のWi-Fi環境は脆弱なところもあって、なかなか何回も切れたりというトラブルも報告されています。Wi-FiがないところはポケットWi-Fiの貸出しなどがありますけれども、授業に限定されていたりしますので、入院中の子供はネットが社会とのつながりなので、病院のWi-Fi環境の整備を早急に進めていただきたいと思います。
 2つ目は、サバイバーシップについてです。がんを経験すると、この先、少しでもがんを遠ざけたいと思うのですが、初期治療終了後に社会に出たとき、何に注意して生活していけば分からない。そういった不安があります。そのため、自己流で偏った食事制限をされたり、そういった方もいらっしゃいます。がん治療後、生きていく上で、課題や困り事、その対応など、いわゆるサバイバーシップ全般についての患者向けのガイドラインなどがあるといいと思います。
 就労やアピアランスにとどまらず、晩期合併症や二次がんの予防とスクリーニング、治療の後遺症や合併症のフォロー、それから、食事や飲酒について、具体的な運動の推奨など、エビデンスのある生活習慣の理解が必要ではないでしょうか。その上で、小児・AYA、高齢者などは個別にライフプランの提供をしてもらえる枠組みがあればと思います。
 3つ目、最後ですが、これは治療と仕事の両立支援です。私は働く世代のがん患者支援の活動をしておりますが、いまだに両立が難しいと感じることがあります。それは中小企業や非正規雇用の問題です。企業側に余力がないからがん治療を行う職員を抱え切れなくて両立ができない場合があります。例えば、企業は職員が休んでいる間も保険料を半分負担し続けなくてはなりません。
 また、その間の代替要員を短期間だけ雇用することも難しいです。1,000人で1人を支援するのと10人で1人を支援するのとでは違い、このような中小企業には具体的な経済支援が必要です。がん罹患による労働損失は1.1兆円と推計されています。そのためのお金をここにかけていただけないでしょうか。
 中小企業の経済支援のためには、社会保険料の減免や東京都が行っているような雇用継続の助成金、雇入奨励金などは有益だと思います。しかし、私の暮らす京都のように助成金がストップしている地域もあります。国からは地域の助成金をバックアップする支援をしてほしいです。
 今のトライアングル型支援は、企業に配慮をお願いする形となっています。患者の立場では、これ以上、職場に負担をかけたくないと、連携の申出をしないことから、診療報酬の加算が取れていないのではないかと思いますので、連携や両立が企業の負担ばかりではない状況の整理と理解を周知していただけたらと思います。
 また、ステージが進んで、今後、治療が切り離せない患者などの就労は、例えば障害者雇用として、0.3とか0.2とかでもカウントできるようなみなし障害者制度のような仕組みがあれば雇用が促進されないでしょうか。小児がんの晩期後遺症についても、障害者認定を取りやすくして雇用につながる支援もしてほしいです。
 最後に、一番大事なことなのですが、こういった仕組みをつくったとしても、支援につなげるためには診断時に関わる医療職がスクリーニングで患者の問題点をキャッチしなければ始まりません。多様なニーズを取りこぼさないためには、頭が真っ白になった患者を放置せずに、外来医療職のナビゲートが必要です。積極的な関わりで専門窓口に繋げてほしいと思います。
 以上です。
○土岐会長 ありがとうございます。
 続きまして、谷島委員、どうぞ。
○谷島委員 まず、サバイバーシップの就労の部分で2点ございます。
 1点目は、今の前田委員のお話と重複するのですが、38ページの4つ目の●にあるように、中小企業に関しては産業保健総合支援センター等のさらなる活用や助成金等による支援を行っていただきたいところなのですが、既に各自治体でもいろいろなものが出てきているので、国としてもそれらを評価して、よいものはアップデートして取り入れていく方向で動いていただければと思います。
 2点目は、非正規雇用や自営業、フリーランスの方について、言及がほとんどされていないところが気になっております。非正規雇用や自営業、フリーランスの方々への支援がかなり手薄になっていますので、ここをぜひ取りこぼさないようにしていただきたいと思います。
 もう一点、サバイバーシップ支援とライフステージに応じたがん対策にまたがる部分として、39ページの最下段にあるように、患者の経済的課題等について明らかにし、具体的解決策についての検討を進めることをぜひやっていただきたいと思っています。
 特に、これはライフステージに応じたがん対策になりますが、46ページの最初にあるように、AYA世代のがん患者の療養環境の充実の部分に対して、AYA世代の在宅療養支援制度の策定を進めていただきたいと思っております。ここは財源とか、国と自治体、どっちがやるのだとか、そういう難しい課題があるのは重々承知しているのですが、今、苦しんでいる患者さんにフォーカスして、誰がいつどうするのかについて具体的に議論していっていただきたいと思っております。
 以上です。
○土岐会長 ありがとうございます。
 引き続きまして、森内委員、よろしくお願いします。
○森内委員 森内でございます。皆様の御発表、大変参考になりました。ありがとうございます。
 私からは、「ライフステージに応じたがん対策」で、特に46ページの1つ目のポツになります。清水参考人から御説明いただいたAYA世代のがん医療と支援については、いずれも重要なことだと認識しております。
 AYA世代の医療や終末期の在宅医療につきましては、もしも病状が進んで通院が難しくなったときに自宅で過ごすことをAYA世代のがん患者の6割以上が希望しているとのことでありまして、こうした患者と家族に対しては、医療ニーズへの対応だけではなく、生活への支援も不可欠であり、心身及び社会的な側面を含めたケアを行う看護職が果たす役割は大変大きいと認識しています。
 以前も発言させていただきましたけれども、住み慣れた場所で、夜間や臨時的な対応を含めて、その人の生活に寄り添いながら療養を継続するためには、訪問看護が大きな役割を果たしております。そして、末期のがん患者さんに対しては、年代に関係なく、医療保険からの給付が行われています。さらに、今日も御発表いただきましたが、患者の状態に応じて、訪問看護だけではなくて地域間の格差がなく、患者・家族が希望する様々な場面で、必要となる個別的な支援を受けることができれば、より安心して過ごすことが可能になります。
 今回、AYA世代のがん患者が介護保険を使えないことが課題に挙げられています。これまでも挙げられていたと思います。それらの御意見を踏まえますと、AYA世代を含む全世代のための新たなサービスの形があってもいいのではないかと考えております。
 以上でございます。
○土岐会長 ありがとうございます。
 もうお一方、久村委員、どうぞ。
○久村委員 私からは2点ございます。
 まず、1点目は社会連携についてです。がんの患者さんが最後まで望んだ場所で過ごすためには、地域の医療あるいは介護関係者の連携だけでは困難なケースがございまして、そういったケースに関しては行政機関による協力とか連携が不可欠と考えています。特に身寄りのない独居のがんの患者さんが最後まで在宅療養を希望して在宅医療や介護の従事者からは協力が得られるにもかかわらず例えば公営住宅の場合、家屋管理人である自治体から最終段階で入院を求められるケースもあります。また、身寄りのない患者さんの場合は、ADLが低下して介護施設への入所を希望したとしても、家族がいない、あるいは身元保証人がいないと、これは介護施設への入所を断られるケースもございます。
 今後は、身寄りがいても、高齢あるいは遠方であるという事情のために親族から協力が得られないがんの患者さんは増加することも予想されますので、各拠点病院は、当該がん医療圏の行政担当者を含めて、関係する医療機関あるいは介護関連施設などと困難事例あるいは課題を共有して、地域連携のあり方について協議する必要があると考えています。
 2点目の意見ですけれども、がんサバイバーシップ分野の中の就労支援と経済的問題についてです。就労支援とか両立支援については、患者さんだけではなくて家族についても重要だと考えております。家族の介護離職は患者さんの経済的な問題に直結する問題でもあるからです。特に小児がん患者の御家族の中には医療者の側から付き添いを強制されることで離職を余儀なくされている方もいらっしゃいますので、今後のがん対策における就労支援については家族の介護離職の実態把握や離職予防策も含めて検討する必要があると考えています。
 また、経済的問題については、患者さんが利用可能な社会保障制度の周知とともに、申請手続の簡略化や一部の制度の運用を見直す必要もあると考えています。例えば障害年金については、この制度の存在自体を知っていても、どんな患者さんがどんなタイミングで利用できるものなのかは実は医療者でも正確に理解している人はとても少ないです。さらに、この制度の申請については、患者さんが障害状態になったときに、複数の医療機関から書類を取り寄せたり、障害状態になるに至った経緯を詳細に説明する文章を患者さん自らが作成する必要があります。申請すること自体に相当な体力と思考力と気力を要しますので、申請に至らなかった患者さんも少なくないと推測しています。
 また、若年世代のがんのサバイバーの経済的な自立をサポートするためには、障害年金のほかに、障害者手帳の制度や難病認定も含めて、一部の制度の運用を見直していく必要もあると考えます。この必要性につきましては、第82回の協議会に提出された小児がん患者・家族からの要望書にも具体的に非常によく記載されていると思います。
 社会保障制度は本来、国民が一番困っているときにその生活の安定を支えるセーフティーネットとしての機能を果たすべきものなのですけれども、一部のがんの患者さんにはこれがうまく機能していない部分がございます。そこで、次期の基本計画の中では、がん患者の社会保障制度の捕捉率や制度の活用に当たってのバリアに関する実態把握、そして、様々な制度の申請方法や一部の制度の運用の見直しに向けた具体的な取組が必要と考えております。
 以上です。
○土岐会長 ありがとうございます。
 では、一旦まとめますが、結構、就労支援に関しましてかなり様々なリクエスト等がございました。企業への支援等々、国の支援等がございました。
 今のところ、事務局から何かございますか。特によろしいですか。
○原澤がん対策推進官 事務局でございます。
 事務局から補足等は特段ございませんので、御意見として承りました。ありがとうございます。
○土岐会長 非常に重要なポイントも指摘していただいておりますので、参考にさせていただきたいと思います。
 それでは、続きまして、大井委員、どうぞよろしくお願いします。
○大井委員 2点あります。
 社会連携のところでセカンドオピニオンの記述があったかと思いますけれども、実際にセカンドオピニオンを紹介する機関をリスト化するとの記載がありますが、セカンドオピニオンの実態がどうなっているのかが全く表されていないので、一つ目は、例えば平成18年診療報酬改定で診療情報提供料2が設定されて、セカンドオピニオンが明文化されました。それはその後、ずっと上昇してきて、現在、プラトーではないか。全部ウオッチしていないので分からないのですけれども、実態としてセカンドオピニオンがどれぐらいの状況になっているのでしょうか。
 それと、地域によって、例えば東京のようにたくさんの医療機関がある場合はたくさんの相談する機会とか場所がありますけれども、地方に行くと大きな病院は少なくなってきます。そうすると、患者さんたちが実は県をまたいで移動しているとか、あるいはある特定の大学に依存するような病院が多い場合には違う県に移動しているとかという、患者の動線はどうなっているかによって紹介される場所は変わってくるのではないか。そういった実態の数字をぜひ示していただきたいと思います。
 二つ目は、サバイバーシップの支援になりますが、先ほど緩和ケアのところで石岡委員から御発言がありましたけれども、医療の分野と「がんとの共生」の分野で書き分けをどうするのだということと同様に、階層の問題があるような気がして、書きぶりを今回見てみますと、仕事、アピアランス、自殺とか、文章化されてくるとそれしかないのかというイメージになるような気がします。
 それは、各論に反対する気もないし、それぞれは重要なことだと思いますけれども、例えば米国のギャラップ社ギャラップ社がウェルビーイングな状態をどんな状態かという5つの要件を挙げていますが、その中で仕事、人間関係、経済的、身体的、地域社会的ということを挙げています。その仕事の中には子育てとか勉強も含まれています。要するに、一日の中でどれだけ多く、その人が要するものを仕事として割り当てることになると、先ほどの子供の学習もそこに入ってくることになってきますし、大きな幹を育てていただかないと枝が伸びていかない。枝ばかりが指摘されて、枝は重要ですけれども、幹は何なのかをこのサバイバーシップが一つの例ですが、そのほかの分野も示していただくときに、非常に枝葉がいっぱい示されていて、これは一体、どこを目指しているのかがよく分からないのです。
 例えば両立支援のことでも御指摘がたくさんあったかと思いますけれども、両立支援のゴールは一体どこなのか、どの状態で両立支援ができたことになるのかもはっきりしたことがどこにも書かれていないし、示されていない。この両立支援の議論も全てのステークホルダーがそろって議論しているわけではなくて、企業側だとか、様々なステークホルダーの意見も踏まえてこのゴールが決まるのだと思うので、全体像をこの協議会の中で議論していただいて、その枝葉に関してはどうやっていくか手段的な話で、ぜひここでは幹を示していただきたい。計画案の書きぶりとしてもそういうふうに整理していただきたい。そういうふうに考えています。
 以上です。
○土岐会長 ありがとうございます。
 続きまして、齋藤委員、よろしくお願いします。
○齋藤委員 ありがとうございます。
 中小企業の就労支援のあり方なのですが、私の仕事でもそうなのですけれども、やはりワークだけではなくて、ライフとワーク、両方を支援していくのがこれからの企業に求められていることだなと感じておりますので、医療者の方々もぜひ目の前の患者さんに、ライフだけではなく、ワークのところもぜひ聞いていただきたいと思っております。
 就労の悩みを医師から聞かれたことがある人は、24%というデータもあるところからお聞きしていますので、そういったバックグラウンドを把握していただくことがまず一つではないかと思います。
 それから、中小企業の助成金。先ほど前田委員からもお話があったとおり、東京都では実際に採用のときに奨励金、それから、雇用継続の奨励金ということで助成金が実際にありますけれども、ほかの自治体さんにもぜひ広げていただきたいことと、東京都の中でも仕組みが、雇用が6か月継続した場合に助成金が出るような形になっておりますが、がんの種類、病種によってやはり6か月継続は難しいところもあるようですので、そのあたりの見直しもぜひお願いしたいと思っております。
 社会とのつながりを実感することで、患者のQOLが高まり、余命宣告された年齢を超えて生き存えることも実際に見てきておりますので、ぜひそのあたりのことも考えていただきたいと思っています。
 以上です。
○土岐会長 ありがとうございます。
 それでは、続きまして、阿久津委員、どうぞよろしくお願いします。
○阿久津委員 私からは、大くくりなところではあるのですけれども、先ほど谷島委員と前田委員にもおっしゃっていただいて、非常に働く世代、就労支援等々についての問題点を先ほど言っていただいたのでダブるところは割愛させていただこうと思うのです。
 これまでのどういった議論だったのかにもつながるかもしれないですけれども、全体的な一番、高齢者に次ぐボリュームゾーンで働く世代と就労世代なのですが、ライフステージに応じたというところに働く世代ですとか就労世代という言葉が入っていないことに若干、私は気になっておりまして、結局、先ほどの大井委員の幹と枝というところがあると思うのですけれども、枝も物すごく大事なのですが、一本通して皆さんを支援しますという形に見えたほうが使う患者さん側も医療者側も考えやすいのかなと思いました。
 今後、小児・AYA世代の方が成長しますともちろん、働く就労世代になって、それが高齢者でいくということなのですけれども、定年延長もあって、第5期とか次の期になる頃にはかなりの対象者になるゾーンもありますので、ぜひとも標記のライフステージの中に、具体的な案ということではなくて、働く世代というふうに、切れ目なく支援するような表現で入れていただけないものか、御検討いただけないかというのが一つでございます。
 そして、もう一つが、やはり就労支援になるのですが、診断後の産業医の活用などに数値目標とか指標を設けて、その変化が見えるような形にしていただきたいと思います。
 寄せられる声からしますと、産業医と面談したのですけれども、診断書を提出してくださいと言われて主治医に回され、主治医に相談すると、いや、この意見書は書けないから産業医さんと相談してと言ってキックバックで戻される場合も非常に多くありまして、患者さんが途方に暮れる例もございますので、産業医の方のクオリティー、そこで働く方を退職させないようにする仕組みみたいなものは幾つもそこを守れるゾーンがありますので、医療従事者の皆様にはそちらをケアしていただけるような仕組みができるといいなと思います。
 がん治療前に退職された割合は56.8%というデータがあるのですけれども、これは随分前のデータなので、今のデータも知りたいというのがあるのですが、根本的に言うと、患者自身の思い込みと、あとは職場にはびこる思い込みが最大の原因なのではないのかと考えておりますので、就労世代のニーズも酌み取っていただきまして、ぜひ今回のライフステージのところに働く世代という文章を入れていただけないものかというふうに御検討いただければと思います。
 以上です。
○土岐会長 ありがとうございます。大変貴重なポイントでございます。
 それでは、続きまして、樋口委員、いかがでしょうか。
○樋口委員 ありがとうございます。私からは教育についてとAYA世代の支援について発言させていただきます。
 まず、教育についてですが、皆さんもおっしゃっていただいているのですが、授業を受けられるかどうかだけではなくて、キャリア支援に関しても充実をお願いしたいです。子供や思春期のがんの経験者の方は、その経験を踏まえて社会とのつながりを意識したり、どんな将来像を描くのか。それが新規就労につながることもあります。心理社会的な支援に関して、それをトランジションについて意識して関われるような体制を充実してほしいです。
 また、AYA世代に関しては、私と清水参考人から要望書を書かせていただいたと思います。それに関して述べさせていただきたいと思います。
 第3期がん対策推進基本計画に「AYA世代」が明記されてから、AYA世代のがんの医療や支援の課題についての周知が進みました。しかし、自治体や医療機関のAYA世代の患者の医療や支援の取組には温度差があって、患者が得られる情報や支援に質・量ともに差があるのが現状となっています。以上を鑑みて、今回、AYA世代のがんの対策として、4つの要素について要望いたします。
 1つ目は、AYA世代支援チームの質を担保し、ニーズのある患者を確実に相談支援につなぐ取組の推進です。今まで委員の方が相談支援について述べていただいておりますが、がん相談支援センターによるAYA世代の相談支援は十分ではない部分もあります。
 国には、患者のニーズが確実に拾い上げられ、そして適切な支援につながるよう、指針に出たAYA世代支援チームが行うケアプロセスの評価を徹底していただくとともに、スタッフが最新情報と実践的な知識・技術を習得できるような研修や、AYA世代支援チーム構築のための研修を実施するなど、相談・支援の質や数を確保していただくことを要望いたします。
 がんに関する相談に関して、相談支援センターの役割がますます大きくなってきていますが、病院として役割について理解され、人材を手厚く配置し、多様化・複雑化する支援のニーズに合わせて学ぶ機会を支援されているとは言えず、機能が強化されるような体制を構築させていただきたいです。
 また、患者のニーズは医療機関の中だけでは満たされず、がん・生殖医療連携ネットワークを活用するなど、学業の継続、キャリア支援、アピアランスケアなど多岐にわたる患者ニーズに対応できる地域ネットワークの構築の推進を強く要望いたします。
 2つ目は、AYA世代の医療や終末期の在宅療養における費用助成に関わる地域格差を是正する施策の推進です。
 委員の方も述べていただいていましたが、AYA世代の患者の多くは根治不能となった場合に終末期を自宅で過ごすことを希望していますが、年齢のために介護保険制度の対象とはなりません。これに対しAYA世代の終末期の療養負担の軽減に取り組んでいる市町村はあるのですが、1割にすぎません。困難を抱えるAYA世代は少なくなく、また、子供のためなら医療費を使わないでおこうであったり、家族のために残したいと思われて支援を積極的に受けられない患者さんも見受けられます。全国のどこでも、患者の療養に関わる経済的な負担が軽減されるような施策を講じていただくことを切に要望いたします。
 3番目は、AYA世代のがん経験者の包括的な健康管理とサバイバーシップケアに関わる体制の構築です。
 AYA世代がん経験者は、がん経験のないAYA世代と比較して健康の問題を抱えるリスクが高いことが先ほどの清水参考人の話でもあったと思います。がん治療を行う医療機関におけるサバイバーシップケアと晩期合併症に関する患者教育は不足しているのが実態です。国が行っている医療従事者の長期フォローアップ研修を検証するとともに、患者自身が健康管理に取り組めるよう、がん治療医と家庭医・プライマリケア医との連携を推進するなど、診療科、医療機関を超えた安心できる医療体制の構築を切に要望いたします。
 また、最後に、AYA世代のピア・サポーターの確保とピア・サポート活動の継続を支援する対策の推進を要望いたします。
 ピア・サポートはAYA世代の患者・家族を支える重要な取組ですが、若年人口の少ない地域や希少がんの患者、家族・遺族は、自分のニーズに合ったピアに出会うことが困難で、拠点病院等の患者サロンも対応していますが、対応し切れておらず、全国的な連携が必要です。国には、このようなAYA世代の患者数の地域格差、患者の多様性、患者会の運営基盤の脆弱性、ピア・サポーターの更新性などを考慮した上で、AYA世代のピア・サポートの質を確保し、持続可能な活動となるような対策の推進を強く要望いたします。
 お時間をいただきありがとうございました。以上となります。
○土岐会長 樋口委員、どうもありがとうございます。参考資料9に基づいて、AYA世代の医療のあり方について御意見を頂戴いたしました。
 ほか、本日、共生の部分を幅広くディスカッションしたいと思っておりますけれども、御意見はよろしいでしょうか。
 例えば、今日は最初、緩和ケアから共生の話をスタートしたのですけれども、木澤委員、緩和医療の御専門の立場から御意見等を一言頂戴することはできるでしょうか。
○木澤委員 ありがとうございます。皆さんの多くの御意見をいただいて非常に勉強になりました。
 でも、一番重要なところは、すみません。どなたがおっしゃったか、忘れてしまったのですけれども、谷島委員ではないかと思うのですが、意識しなくても緩和ケアが届くのかがやはり理想の社会だと思うのです。それを実現するべく緩和ケア研修を始めたわけですので、それをちゃんと充実させること。そして、基本的な緩和ケアがいつでもどこでもしっかり受けられるような仕組みづくりをさらに進めていくことが非常に重要だなと思いました。
 もうひとつ、スクリーニングのことを度々述べられる方がいらっしゃったのですけれども、大変な労力がかかるのですが、やはりしっかりスクリーニングを通して苦痛や症状のアセスメントさせていただいて、基本的な緩和ケアだけではだけでは十分に苦痛が緩和できない人方にしっかり専門的な緩和ケアを提供できるような体制をつくっていくことも改めて重要だと思いました。人材育成のところでお話がありましたが、専門家の育成はまだ十分ではないところがありますので、力を入れて頂く必要があります。また、これは医師だけではなくて多職種でアプローチできるように、看護師を始めとする専門家の育成も必要です。そして、これら専門家は病院だけではなくて地域の視点を持って地域包括ケア全体で患者さんを支えられるような仕組みづくりを、高齢社会が進んでまいりますので、さらに進めていきたいと思っています。しっかり対策を考えてまいりたいと思います。
 ありがとうございます。
○土岐会長 ありがとうございます。
 どうぞ。大井委員、追加発言してください。
○大井委員 すみません。事務局に1点確認したいのです。
 この協議会の中で、これは私の認識です。私は患者・家族・遺族を代表する者の中の一人だと認識しています。その立場は他の委員の皆さんの、参考人の方々、委員の方々の発表を含めた意見に関して、また、要望書が寄せられたものに関して、それらをそれぞれの立場の視点から是々非々で、それらがこの計画案でどう採用していくかを議論する立場であって、要望書の代弁者として、ここで主張することではないと認識しているのですけれども、この協議会で議論を過去4回やってきている中で、かなりある団体のとか、ある機関のとか、ある病院のとか、ある学会のとかといったところの代弁的な発言になっています。私たちはいろいろな御意見を聞いて、どれが優先順位なのか、どれをどう整理すべきなのか、どれをどういうふうにこの中ふうにふうにのように計画案に盛り込んでいくべきなのかを議論していく立場にあると思うのです。
 そういった立場なのか、何か要望する代弁者としての立場なのか。私たち委員の位置づけは一体、どういうことなのか。一度、確認させていただければと思います。
○土岐会長 まだこれは前半の部分でございまして、まずは皆様の御意見を頂戴しているところで、ここから本当の基本計画の下書きを皆でつくっていく段階だと私は考えておりますので、どうしても前半部分は各団体、各立場の皆さんの御意見を伺うことが中心になってきていると理解していますが、事務局、いかがでしょうか。
○原澤がん対策推進官 事務局でございます。御質問いただきありがとうございます。
 土岐会長より先に御発言いただきましたが、大井委員から御指摘いただいた御所属の団体のお立場からの御発言も一定出てくるものと認識しております。
 ここまでの議論は、土岐会長からも御発言がありましたとおり、それぞれの分野に関して委員のお立場からの御意見を広くお伺いするようなことが中心になってございましたので、今、大井委員からご指摘いただいた、ある所属の団体はあるけれども、そうではない患者・家族の代表、もしくは医療従事者のある領域の代表といった各委員それぞれのお立場からこういう意見が私としてはあるのですという御発言がある一方で、その御所属の団体からこのような参考の文書があって、それと私の意見も一致しているので、このように要望として申し上げますという御発言をされた委員の先生も一定数いらっしゃるという認識でございます。
 あくまで、ここに出された参考資料全てについて細かく拾って計画を立てていくことではなく、先生方から御発言いただき御議論いただいた内容を中心に、これから事務局で基本計画の案文を作成してまいりますので、それをお示しした上で、それを採用するべきかどうかも含めて御議論いただくのがここから先の議論になるという認識でございます。
 十分な回答になっているか、分かりませんが、事務局からは以上でございます。
○大井委員 そうすると、ここまでは様々な立場で発言をしている状況があって、要するに代表性としての担保されるような領域はこれから先の議論という理解なのですね。
○原澤がん対策推進官 ありがとうございます。そういった認識でございます。
○大井委員 ありがとうございます。
○土岐会長 続いて本文が、下書きとかが出てきますので、そこでまた今度はこうすべきだという御意見を頂戴することになると思います。
 前田委員、どうぞ。
○前田委員 ありがとうございます。
 先ほどの御意見、大井委員の枝の意見と似ているかもしれませんが、やはり横のつながりも非常に私は大事だと思っています。先ほどの議論とかぶるかもしれませんけれども、様々な問題点が患者にはありますので、まずはアセスメントシートを初めに取っていただいて、網羅的にいろいろな問題を皆さんに共有していただきたいと思います。
 それから、様々な問題の後につながれる連携が大事かなと思っています。この問題は私の専門だけど、そこは違う専門部署の問題ではなくて、皆さん一人一人が様々な問題があることを知っていただいて確実につなげていく。こういった連携の構築まで議論していただきたいと思いますので、一つ一つの問題ではなく、横串で皆さん一緒につながって患者さんをみんなで支えるという意見でまとめた議論をしていただきたいという意見を補足させていただきます。
 以上です。
○土岐会長 ありがとうございます。
 石岡委員、どうぞ。
○石岡委員 緩和ケアの提供体制について、今日、事務局の説明では省略された資料の3ページで、がん対策基本法では「がん患者の状況に応じて緩和ケアが診断の時から適切に提供されるようにすること」と規定されておりますし、あとは3期までも、緩和ケアを普及させるために、研修の対象者を、がん診療に携わる云々、がん拠点病院、それと連携する在宅療養支援診療所、それから、緩和ケアに従事するその他の医療従事者というふうに定義しているのですけれども、ここに来て、従来、がん診療に関わるような人材に患者さんがかかる。そういう状況は一段と広がってきている。ライフステージの話もそうですし、この前の人材の育成のところでも学際領域、今までは循環器内科の先生は、がんは私は診ませんという人ばかりでしたが、そうは言ってはいられなくなってきている。そういったときに、がんの緩和ケアを提供する医療従事者は一体、誰なのかというものはどこかにやはり明示しておかないと、広く浅くでいいのだと思うのですけれども、基本法ではどういうがんの医療従事者などどこにも書いていないわけです。
 あとは、これはがん対策基本法ですけれども、国の医療政策はこのがん対策だけではなくて、あと、緩和ケアが必要なのは当然、がん患者以外にもたくさんいるわけですよ。そういった施策の中で、この緩和ケアの位置づけを今度の4期の基本計画に入れるときに漏れがないようにするというところの注意を事務局に工夫していただきたいと思います。
 以上です。
○土岐会長 ありがとうございます。
 ほかはよろしいでしょうか。今日発言されていない先生方も特によろしければ、それでは、今日も本当にたくさんの御意見を頂戴しましてありがとうございました。
 では、本日の議事は以上となります。進行を事務局にお返ししたいと思います。よろしくお願いいたします。
○原澤がん対策推進官 ありがとうございます。
 本日は、活発に御議論いただきまして、誠にありがとうございました。次回以降の日程につきましては、追って事務局より御連絡させていただきます。
 本日はどうもありがとうございました。

照会先

健康局がん・疾病対策課

代表03-5253-1111(内線2066)