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- 第162回労働政策審議会職業安定分科会雇用保険部会 議事録
第162回労働政策審議会職業安定分科会雇用保険部会 議事録
日時
令和3年12月8日(水) 10:00~11:30
場所
オンラインによる開催
厚生労働省 職業安定局第1会議室
厚生労働省 職業安定局第1会議室
議事
- 議事内容
- ○守島部会長 皆様方、おはようございます。
ただいまより、第162回「雇用保険部会」を開催いたしたいと思います。
本日の出欠状況でございますけれども、全員御出席となっております。
それでは議事に入ります。マスコミの方はいらっしゃいませんね。
まず議題の1「新型コロナウイルス感染症等の影響に対応するための雇用保険法の臨時特例等に関する法律施行規則の一部を改正する省令案要綱について」でございます。
それでは、事務局から資料について御説明をいただいて、その後、委員の皆様に御議論いただきたいと思います。それでは、事務局よろしくお願いいたします。
○山口調査官 それでは、資料の御説明をさしあげます。資料1-2をまず御覧いただければと思います。
本件につきましては、先般11月19日に急遽職業安定分科会と雇用保険部会の合同会議を開催させていただきまして、皆様に御意見をお伺いしたところでございます。それを踏まえまして、本日、省令案の改正の諮問させていただくといったものでございます。
具体的には2ページ目の表を御覧いただければと思います。雇調金と休業支援金を横に並べた表でございますけれども、左側に雇調金の3月までの道行きが記載をされてございます。地域特例、業況特例につきましては、日額上限、助成率ともに3月まで現行を維持するといった一方で、原則的な措置につきましては、助成率を3月まで維持しつつも、日額上限を段階的に見直すといった内容になっております。これに呼応する形で休業支援金につきましても地域特例につきましては助成率、日額上限ともに3月まで現行の内容を維持いたしますが、1月から3月につきまして原則的な措置について、助成率は維持しつつも日額上限を8,265円にするといった内容になっております。
※の6のところを御覧いただきますと、雇用保険の基本手当の日額上限8,265円との均衡を考慮して設定といった記載がございます。こちらはこれまで雇用調整助成金と同じ比率で日額上限を引き下げてまいりましたけれども、今般、基本手当の金額との均衡を考慮して8,265円で1月から3月まで設定をするといった内容にしてございます。
資料1-1を御覧ください。省令案の要綱でございます。
第1、1のところでございますが、休業支援金の支給の対象となる休業の期間を令和4年3月31日まで延長することとし、同年1月1日から同年3月31日までの休業に対する休業支援金の日額上限を8,265円とすることとしております。
2号につきましては、まん延防止重点地域の特例につきまして、1の規定にかかわらず日額の上限を1万1000円とする特例の対象となる休業の期間を令和4年3月31日まで延長することとしております。
3につきましては、緊急事態宣言が出されている地域についての特例でございますが、1の規定にかかわらずとなっておりまして、日額の上限を1万1000円とする特例の対象となる休業の期間を令和4年3月31日まで延長することとしております。
施行期日につきましては、この省令は公布の日から施行することとしておりまして、12月上旬頃の公布を予定しております。
以上でございます。
○守島部会長 ありがとうございました。
それでは、ただいまの説明につきまして、御質問・御意見がございましたらお受けしたいと思います。
杉崎委員、どうぞ。
○杉崎委員 休業支援金、雇用調整助成金等につきましては、1月以降の特例措置の取扱いが公表されておりますが、財源確保のめども立ち妥当であると考えています。特に雇用調整助成金につきましては宿泊・飲食業など、コロナ禍でいまだに厳しい業況の企業から特例措置の延長を希望する声が非常に多い中で、業況・地域特例が現行の内容のまま3月末まで維持されることはありがたく、評価いたしております。
なお、それ以降の取扱いにつきましても、経済の全体的な状況だけでなく、コロナ禍で厳しい状況に置かれている企業の実態も十分に踏まえて判断していく必要があると思います。
以上でございます。
○守島部会長 ありがとうございました。
菱沼委員、お願いいたします。
○菱沼委員 今、杉崎委員から御発言があったかと思いますけれども、同じような発言になることを御容赦いただければと思います。
財源確保が前提ということになっておりますので、この来年3月までの延長ですとか、段階的に平時に戻していくような考え方に異論はございません。御承知のとおり、感染症という先行き不透明な状況にあるということなので、感染症再拡大とか、そういうことがあるようであれば、また新たに財源が求められる可能性もございますので、今、厳しい財源の状況下ではありますけれども、制度が維持できるような形で運営していただけたらと思っておりますので、意見として申し上げます。
以上です。
○守島部会長 ありがとうございました。
冨髙委員、どうぞ。
○冨髙委員 コロナ禍からの回復の兆しは出てきておりますけれども、やはり新たな変異株の出現や気温等の要因で今後の感染者数が増加に転じる可能性も否定できませんし、また、そういった先行き不透明な状況というのが消費や経済の回復に影響を与えることも想定されること、また、先ほどもほかの委員からもございましたけれども、やはり業況がそれほど回復していない産業や企業、そういった地域からの切実な声を踏まえれば、引き続き雇調金の特例措置、休業支援金によるコロナ禍の影響を受ける産業や地域の労働者を保護していくことは必要不可欠だと思っております。
今回示された原則的な措置についても、労働者の雇用への影響を最大限配慮する必要があると思っておりますので、今後、雇用情勢が悪化した場合にはそれに応じた措置内容を機動的に変更できるようにすることが大前提であることは申し上げておきたいと思います。
あとは、今回の内容というのは産業雇用安定助成金の活用を促すというような視点もあるのかと思うのですけれども、やはり仮に原則的な措置を今回下げた引きとしても、それだけで産業雇用安定助成金の活用を通じた在籍型出向による雇用維持というのが促進されるわけではないと考えております。在籍型出向を検討する企業の多くは業況特例の要件に該当すると思いますけれども、産業雇用安定助成金の助成率や上限額との比較では条件が大きく劣後するのではないかと思いますし、原則的な措置に該当するような企業であったとしてもグループ内出向の場合、助成金が雇用調整助成金よりも劣後すると考えております。やはり単純に雇調金の支給水準のみを低減させるというところは少し問題があるかと思っておりますので、きちんと移行を進めるためには、さらなるインセンティブが必要であって、移行促進に向けた追加措置や支援等が必要ではないかと考えております。少なくとも制度周知の徹底、最新のノウハウツールの提供などの企業の支援を充実させることは必要であろうかと考えております。
以上です。
○守島部会長 ありがとうございました。
ほかにどなたか御意見とかはございますでしょうか。特にありませんか。
それでは、ほかに御意見・御質問がございませんようですので、当部会といたしましては、新型コロナウイルス感染症等の影響に対応するための雇用保険法の臨時特例等に関する法律施行規則の一部を改正する省令案要綱につきまして、おおむね妥当と認めることとし、その旨を職業安定分科会長宛てに報告いたしたいと思います。それでよろしいでしょうか。
ありがとうございます。それでは、新型コロナウイルス感染症等の影響に対応するための雇用保険法の臨時特例等に関する法律施行規則の一部を改正する省令案要綱の報告文案を画面に出させていただきますので、御確認いただければと思います。
ただいま画面に表示されている報告文案によって、職業安定分科会へ報告いたしたいと思いますけれども、それでよろしいでしょうか。
ありがとうございます。それでは、この報告文案で後ほど開催される職業安定分科会に報告いたします。
続きまして、議題の2「雇用保険制度について」でございます。事務局から資料2について御説明いただき、その後、委員の皆様に御議論いただきたいと思います。それでは、事務局はよろしくお願いいたします。
○山口調査官 それでは、資料2につきまして御説明をいたします。こちらは前回の部会で提出をさせていただきました議論を踏まえた見直しの方向性案という資料に、前回での議論を踏まえた赤字の追記をさせていただいたものでございます。
まず、注2のところでございますが「給付面の対応は財政運営の対応とセットで最終的なとりまとめを行うこととする」としております。前回の御議論で暫定措置の給付の面だけではなくて、財政確保、財源確保措置とセットで議論すべきであるといった御意見があったことを踏まえて追記をしたものでございます。
それから、1ページ目の下から2つ目のポツでございますが、基本手当の水準についての記述の中で、前回、ワイズスペンディングの観点から、制度全体を一体として効果検証を行うのみならず、個々の制度の検証も行うべきであるといった御意見をいただいたことも踏まえまして、その旨を追記してございます。
その下の「加えて」といったところでございますが、以前の部会の議論の中でフリーランスのセーフティーネットについて議論になったことがあったことを踏まえて追記をしたものでございます。「原則として離職後1年間とされている基本手当の受給期間について、疾病、出産等のやむを得ない場合に4年まで延長できる仕組みにならい、受給資格者が起業する場合に、早期の廃業リスクに備えて受給期間を最大4年までとすることができる仕組みを設けることについてどう考えるか」としてございます。
関係する資料といたしまして資料2-2のほうを御覧ください。1ページを御覧いただきますと、以前、10月25日の雇用保険部会で提出をさせていただきました海外の失業保険制度等におけるフリーランスへの対応を御紹介した資料をつけてございます。
こちらの海外の様相を踏まえた上で2ページを御覧いただければと思います。現在、離職後原則1年間が基本手当の受給期間となっておりますが、妊娠出産、育児等により求職活動ができない期間がある場合につきましては、受給期間を最大3年間、進行をおくらせることができるという受給期間延長の仕組みがございます。こちらにならいまして、起業してから廃業の間の期間で受給期間を最大3年間、進行を停止することができるといった仕組みを新たに導入してはどうかと考えているものでございます。
資料2にお戻りをいただきまして、2ページを御覧ください。教育訓練給付についての記述でございます。この中で前回、小林委員のほうから効果検証を行うに当たって受給者のデータの取り方といった点についても、手法を検討する必要があるといった御指摘があったことを踏まえて「受給者の動向を確認するなどの手法も検討しつつ」といった記述を追記させていただいております。
下のほうに下がりまして、求職者支援制度についてでございますが、まずは求職者支援制度を利用可能な方に支援が行き届くように周知を図るべきであるといった御意見をいただいたことを踏まえて、その旨を追記してございます。
一番下のポツでございますが「さらに」とございまして、こちらも前回の雇用保険部会の中で、少し御議論があった点なのですけれども、雇用保険受給者が求職者支援訓練を受ける場合、現行制度上はハローワークの所長による受講指示の対象とはならず、結果として訓練延長給付や技能習得手当の対象ともならない点について、雇用保険受給者の訓練受講の選択肢の拡大や、これによる早期かつ安定的な就職を促す観点から、求職者支援訓練を受講指示の対象とすることについてどう考えるかとしてございます。
こちらにつきましても資料2-2のほうに関係資料を入れてございます。3ページを御覧いただければと思います。「求職者支援訓練の受講指示対象への追加について」と題した資料でございます。制度の現状につきましてですが、先ほど申し上げましたように雇用保険基本手当受給資格者が、ハローワークの所長が指示する公共職業訓練等を受講する場合につきましては、訓練延長給付、それから、技能習得手当を受講することが可能となっております。公共職業訓練等に含まれる訓練の中身につきましては、中ほどの参考2といったところに記載をしてございます。
訓練延長給付といいますのは※1で注書きがございますが、訓練終了までの間、所定給付日数を超えて基本手当の支給が最大2年間延長されるという仕組みであります。また、技能習得手当につきましては、1日受講するに当たって受講手当が日額500円支払われる。また、通所手当、これは通勤費のようなものですけれども、こちらが月額上限4万2500円まで支払われるといった仕組みがございます。
一方で、現行制度上、求職者支援訓練はハローワークの所長の受講指示の対象とされていないので、受給資格者の方が求職者支援訓練を受講しても、基本手当は支給されますが訓練延長給付や技能習得手当は受給できないといった仕組みに現行上なっております。したがいまして、ハローワークの所長の受講指示の対象に求職者支援訓練を追加することによって、基本手当受給資格者が求職者支援訓練を受講する場合につきましても、複数年延長給付、技能習得手当の支給を可能とすることについてどのように考えるかとしてございます。
資料2にまたお戻りいただきまして、4と5は今後議論の方向性を整理していきたいと考えておりますので、項目のみ記載をしてございます。4は雇用調整助成金、休業支援金等としております。また、5につきましては財政運営といたしまして、(1)保険料率について、(2)国庫負担について、(3)コロナ禍における財政運営の今後の在り方についてとしております。
以上でございます。
○守島部会長 ありがとうございました。
ただいまの御説明につきまして御意見・御質問等がありましたら、お伺いいたしたいと思います。
杉崎委員、どうぞ。
○杉崎委員 前回からの修正点について意見を申し上げます。「受給資格者が起業する場合に、早期の廃業リスクに備えて受給期間を最大4年までとすることができる仕組みを設けること」につきましては、経済の活性化に向けて起業や創業を増やしていくことが重要である中で、セーフティーネットの面においても妥当な措置であると思います。
また、「求職者支援制度」につきましては、利用対象者に対する周知の強化を図ることは非常に重要だと思います。「求職者支援訓練を受講指示の対象とすること」につきましては、雇用保険受給者の訓練事項の選択肢の拡大や、早期かつ安定的な就職を促すといった観点から、こちらも妥当な措置であると考えます。ただし、財源については一般会計化を前提とすべきであると考えます。
以上でございます。
○守島部会長 ありがとうございました。
佐藤委員、お願いします。
○佐藤委員 労働側の佐藤でございます。大きく2点申し上げたいと思います。
1点目が、基本手当に係る暫定措置でございまして、前回の部会で申し上げましたとおり、過去2回の改正で暫定措置を延長した際には、雇用情勢の厳しさが改善された中で、暫定措置を終了した場合の意見なども踏まえて延長する判断がなされてきたと思っております。マル1マル2とございますけれども、契約更新を希望したものの雇い止めによって離職された方については、再就職に要する期間が長期化する傾向にある。こういったデータが過去の部会でも特定理由離職者の再就職状況といった形で周知されていたと思いますけれども、そういう傾向ございますので暫定措置を終了した場合の影響が大きいと考えております。
その下、一定期間暫定的に延長するという記載をしていただいておりますけれども、今申し上げましたように雇い止めによる再就職状況が大きく改善されない限りは措置を継続し続けるべきではないのかというのが、そもそもの労働側の意見でございます。
もう1点、資料2-1の1ページ、一番下に「加えて」から今回赤字で記載されました基本手当の受給資格者が起業する場合の早期廃業リスクに備える仕組みでございますけれども、一度フリーランスになられてから事業に失敗して再び雇用労働者に戻ろうとする方の保護につながるものだと捉えておりますけれども、制度運用に当たりましては検討すべき事項も多いのではないかと思っております。そもそも先ほど調査官から資料2-2で廃業、就職活動という図を御説明されましたように、新たな仕組みを活用する方が再び雇用労働者に戻るのか否かといった確認が必要ではないかと思うのですが、そのような確認はどのように行うのかなど、事務局の見解があれば伺いたいと思っております。
また、早期廃業といっても様々な理由や状況があると思っておりまして、事業に失敗して困窮されている方を対象とすべきではないかと思いますが、そういった確認はどのように行うかなど、こちらも事務局の見解があれば伺いたいと思っております。
今申し上げました内容も含めまして、チェック体制等を整えていただくことが、新たな仕組みの導入の前提になるのではないかと考えております。
以上でございます。
○守島部会長 ありがとうございました。
よろしいですか。
○長良雇用保険課長 雇用保険課でございます。
ただいまの佐藤委員の御質問でございますけれども、事業を開始した方が再び雇用労働者の就職活動を行う場合に、この受給期間の延長によりまして基本手当のいわゆる給付日数の残り分というものを受給することが可能になります。ただ、当然基本手当の受給ということになりますので、当然失業認定というものは通常と全く変わらない形で行いながらやっていくというようなことになります。
この受給期間の延長の事由が、辞めたときにも当然ハローワークのほうに申し出ていただきまして、改めていわゆる労働の意思能力というものを確認しながらやっていくということに関しては当然だと思っておりまして、今後、運用に当たっても、その点については十分配慮してまいりたいと思っております。
以上です。
○守島部会長 ありがとうございました。
続いて、菱沼委員、お願いいたします。
○菱沼委員 今、佐藤委員が質問いただいた点と若干か重なるのですけれども、資料2-1の1ページ目の一番下の赤字のところについて、ちょっと御意見を申し上げたいなと思っています。
今、事務局のほうからの10月25日の雇用保険部会提出資料とか、その辺を考えますと、自営業者ですとか、フリーランスを想定しているのかなと思っております。雇用保険の制度ということでございますので、自営業者とかが雇用保険に加入できるということではないということを誤解なきようにするということと、あと、疾病ですとか、出産とはちょっと証明する書類が変わってくるのかなと思っておりますので、その辺の丁寧な対応が求められるかなと思っております。
あと、国として創業支援という形にしておるので、この書きぶりで早期の廃業リスクというのが、ちょっと気になるかなと思っています。あくまでも万が一の保険でございますので、万が一とか、やむを得ずとか、ちょっと書き方、なかなか難しいかなと思いますけれども、そういったところも考えたらどうかと思いましたので意見として申し上げます。
以上です。
○守島部会長 ありがとうございました。
続きまして、水島委員、お願いいたします。
○水島委員 基本手当の受給期間の延長ですけれども、この延長については法20条に規定されている事由、施行規則30条に規定されている事由のほか、業務取扱要領に示されている事由があります。それらの延長が認められている事由と比較しますと、今回の起業、廃業を含める御提案は妥当であると考えます。その上で2点、意見がございます。
制度を拡張するに当たり、もし省令改正で対応されるのであれば、現在、業務取扱要領で示されている事由を省令に記載することの御検討をいただければと思います。具体的には介護や子の看護は現在業務取扱要領に示されていますが、施行規則30条に明記してよいのではないかと考えます。
それから、起業を後押しするような施策とセットにすることで、受給期間の延長がより意義があるものになると考えます。起業を後押しするような施策を御検討いただくか、あるいはそのような適切な施策がすぐにはないというのであれば、今回は見送って、起業を後押しするより効果的な施策とセットで今後追加する、そのような方法もあろうかと思います。
以上でございます。
○守島部会長 ありがとうございました。
続きまして、千葉委員、お願いいたします。
○千葉委員 私のほうからは、求職者支援制度の特例について意見を申し上げたいと思います。
新たな特例を検討する際には、本制度の目的達成のボトルネックになっていることの根拠でしたり、導入後の効果検証の時期と方法などを示すべきであるということは、これまでも再三申し上げてきた次第でございます。加えまして、そもそも受講対象者がどのような業界で、どのような労働条件に就職することを希望しているのか、実態を調査して示していただくことも必要であると考えてございます。
また、職業訓練受講の給付金を規定する法律の施行規則の改正に関する諮問答申については、本部会ではなく職業安定分科会においても行うものであると認識してございますが、世帯収入要件の見直しや、在職者等への利用の拡充については、まずは本部会及び職業安定分科会で、先ほど申し上げた点を示していただき、その上で、職業安定分科会で諮問がなされるべきではないかと考えてございますので、御意見として申し上げておきたいと思います。
もう1点、雇用保険受給者の求職者支援訓練についてでございますけれども、受講した際にも訓練延長給付や機能習得手当の対象とすること自体については問題がないと考えてございますが、本来であれば、公共職業訓練を拡充させることによって雇用保険受給者が求職者支援訓練を受講することがないようにすべきではないかと考えてございます。
また、雇用保険受給者が求職者支援訓練を受講するのは、公共職業訓練の講座のスケジュールが合わないために類似の求職者支援訓練の受講を希望する場合が多いと聞いてございます。それならば、今回の提案のあった措置を行う前に、まずは政府が公共の職業訓練の講座の開設日程を充実させるべきではないかと考えてございまして、御意見として申し上げておきたいと思います。
以上でございます。
○守島部会長 ありがとうございました。
続いて、中窪委員、お願いいたします。
○中窪委員 私からは3点です。
一つには、前回は発言をしませんでしたけれども、基本手当に関する特例については、まだ先の見えない状況で一定期間暫定的に延長することについて、適切というか、やむを得ないと考えております。また、教育訓練給付の基本的な部分について、私は以前、インセンティブとして十分ではないのではないかという発言をしましたけれども、そういう財政の面も含めて今はまだ不透明な状況にあるので、将来的な検討課題ではあると思いますが、当面、現在のこの制度の枠組みを維持するという点について賛成であるということを申し上げておきたいと思います。
2点目としまして、新しく加わりました起業の場合の受給期間の延長については、私はなかなか良いアイデアだなと思っております。先ほどいろいろ御意見が出ましたように確認すべき点はあるにしても、疾病とか出産等のような枠組みを使って、こういう新しい起業の場合のリスクに備えるということは、雇用保険の機能をある意味を拡充する機会になるような気がいたします。
3点目は、求職者支援制度についても受講指示の対象を広げることについて、なかなかイメージが湧かないのですけれども、今の受講指示のものが、これによってどのくらい変わるのか、倍増するような感じになるのか、少し範囲が広くなる程度なのか、その辺りをちょっと、感覚的な話で申し訳ないですけれども、教えていただければと思います。
○守島部会長 ありがとうございました。
では、お答えいただきます。
○長良雇用保険課長 ただいまの中窪委員の御質問を含めまして、様々な御意見がございましたので、まとめて事務局としての今回の対象の措置等々について補足をさせていただければと思います。
まず、中窪委員の御質問の求職者のほうの措置でございますけれども、昨年度の実績で言いますと、求職者支援訓練を受講されている方の総数が2万3000人あまりでございます。この中でいわゆる雇用保険の基本手当の受給期間と、その訓練の受講期間が重なる方というのがいらっしゃって、この方はいわゆる基本手当受給者で求職者支援訓練を受講されている方ということになると思います。それが8,000人あまりでございまして、実は3分の1ぐらいは、この求職者支援訓練の受講者は基本手当を受けつつも求職者支援訓練を受講しているということでございます。
全体的なボリュームは求職者支援訓練の受講者自体がそういう意味で、数的には例えば基本手当の受給者実人員と比較いたしますと、それほど大きな数にはならないということでございまして、財政規模との影響といたしましても、恐らく10億から20億の範囲内というようなところではないかと見積もっているところでございます。
続きまして、それぞれいただいた御意見の中で、受給期間の延長の関係でございます。いろいろ制度設計、あるいは運用に当たって配慮すべきところの御意見をいただいたところでございます。
まず、水島委員からおっしゃられた要領で措置されている部分の省令の位置づけなどに関しましては、また全体を整理する中で事務局としても検討してまいりたいと思います。起業支援との連携ということでございますけれども、ハローワークの現場で、いわゆる直接起業施策をやっているところではございませんので、恐らくそういうことを考えたときには、関連する事業なり施策を実施しているところとの周知等々の連携というものが必要になってこようかと思います。そういったことに関しましては、また制度の詳細を詰めていく中で十分考えていきたいと思っているところでございます。
もう1点、千葉委員から、いわゆる訓練の関係で御意見がございました。求職者支援訓練のところと公共職業訓練、もう既に御案内かと思いますけれども、公共職業訓練は現在都道府県が委託をするというような仕組みでございます。一方で、求職者支援訓練に関しましては、高齢障害求職者支援機構が訓練を認定するというような枠組みでございます。それぞれに関しましてちょっと詳細は省かせていただきますけれども、当然、訓練といたしましてはそれぞれの趣旨・目的がございまして、求職者支援訓練などに関しましては、比較的短期の受講のような措置も講じられているところでございます。
したがいまして、今般の措置というのは訓練の受講のある意味選択の多層化ということも実態としてはあるわけでございまして、そういった中で、公共訓練の拡充というのも当然配慮すべきだという御意見はおっしゃるとおりかと思います。全体として訓練の枠組みなり、受給者が訓練を受講したいときに再就職の促進に効果があるところをしっかりとサポートできるということが重要かと思っておりますので、今回の措置だけでどうというよりは、全体的な枠組みについてしっかりと確保していきたいということかと思っているところでございます。
とりあえず以上でございます。
○守島部会長 ありがとうございました。
平田充委員、お願いいたします。
○平田充委員 経団連の平田充です。
資料2-1の注2で「給付面の対応は財政運営の対応とセットで最終的なとりまとめを行う」と明記いただきありがとうございます。それにも関連することなのですけれども、質問が2つございます。
今回、「早期廃業リスクに備えた受給期間の延長」と「求職者支援訓練を受講指示の対象にすること」の2つのことが追記されました。この2つを仮に措置するとしたならば、財政にどのような影響を与えるのかということを、定量的に示すは難しいのかもしれませんが、どんな想定をされているのかといもるのかを教えてください
2つ目は、やはり求職者支援制度についてです。基本的にこの制度は第2のセーフティーネットで、被保険者以外を対象としていです。仮に、ハローワークの所長の指示を受けて受講することになったとすると、そのときの費用の負担はしどうなるのか、回答いただけるのであればお願いします。
○守島部会長 ありがとうございました。
○長良雇用保険課長 まず、財政影響でございます。先ほど求職者支援の関係で、少し数字を申し上げたところでございまして、求職者支援訓練受講者のうちの大体3分の1ぐらいが基本手当の受給をされていらっしゃるというような想定でございます。そういう意味では、全体の受給者実人員と比較すると、規模はかなり小さいということで、それぞれ例えば仮に訓練を延長されて受ける方がどれぐらい想定されるか、あるいは平均の通所の手当の額がどれぐらいかなどの在り様のデータを勘案して粗く見積もると、10億から20億ぐらいの範囲ではないかというように考えているところでございます。
もう1点のいわゆる受給期間のほうでございますが、こちらはハローワークのほうで雇用保険受給者が再就職をした場合に、自営でという形で届出をされている方に関しましてはデータとして取れるところでございますが、割合としては全体の1%程度がそういう方になろうと思います。これを前提として、もちろん受給期間の延長を仮に応じた方が全てまた再就職に戻ってこられるというわけではございませんので、例えばその方々の1割程度が受給まで行くというようなことを仮定いたしますと、恐らく10億ぐらいのレベルではないかと思っているところでございます。
もう1点、求職者支援訓練を受講する場合でございますが、こちらは雇用保険受給者の訓練延長給付なり、いわゆる既存の雇用保険の制度の枠の中での訓練のメニューの問題ということになりますので、雇用保険の失業給付の財源で今の枠組みとしては運営をしていくというものでございます。
以上です。
○守島部会長 ありがとうございました。
杉崎委員、どうぞ。
○杉崎委員 一言だけ意見を申し上げます。先ほど来検討されております求職者支援訓練の受講指示対象への追加の件なのですが、仮にこれが実施されるならば、ハローワークの現場で対象となる方に対して、公共職業訓練と求職者支援訓練の違い、例えば訓練の内容ですとか、受講の日時、時間、何がどう違うのかを丁寧に説明していくことですとか、あと、どういった訓練を受講することが最も効果的なのかということに関して丁寧にアドバイス、助言をしていただくことが求められるかと思います。こうした丁寧な対応をハローワークの現場でしていただくことによって政策効果も高まると思いますし、費用対効果の観点からも、こういった丁寧な対応に努めていくことが重要だと思います。
以上でございます。
○守島部会長 ありがとうございました。
ほかに御質問・御意見等はございますでしょうか。大丈夫ですね。
それでは、ほかに御意見・御質問がないようですので、この議題を終わりにして資料3に移りたいと思います。資料3について御説明をお願いいたします。
○山口調査官 それでは、資料3について御説明いたします。「コロナ禍における財政運営の特例」といった資料でございます。
1ページを御覧いただきますと「雇用調整助成金等と一般会計との関係」と題した資料がございます。雇調金につきましては日額上限を超える部分に一般会計が繰り入れられるという点と、雇用保険の被保険者以外の方について、一般会計で措置をしているというものでございます。
一番下のところを御覧いただきますと、昨年6月に制定をされました臨時特例法におきまして、一般会計から雇用勘定にお金を繰り入れる仕組み、また、積立金から育休の資金ですとか、雇用安定資金を貸し出す仕組みといったものが措置されておりまして、こちらが令和2年度及び令和3年度限りの措置となっているところでございます。
2ページでございます。こちらは前回の部会でお示しをさせていただきました先般閣議決定されました経済対策の抜粋でございます。こちらの記載に基づきまして、令和3年度補正予算案に一般会計から雇用勘定への約2.2兆円の繰り入れといったものが計上されてございます。
続きまして、3ページでございます。同じく経済対策から人的投資関係部分を抜粋してございます。本文を御覧いただきますと、3年間で4000億円という形で人への投資の予算を大胆に投入する施策パッケージを講ずるといった記載がございます。こちらは一部一般会計を含んでおりますが、雇用保険二事業の中で実施するといったことを予定してございます。具体的には職業訓練と再就職支援を組み合わせて、労働移動やステップアップを強力に支援するため、求職者支援制度やトライアル雇用助成金等の拡充、民間派遣会社を通じたITスキル等の研修・紹介予定派遣等を行うほか、人材開発支援助成金やキャリアアップ助成金において、企業等の民間ニーズを把握しながらデジタル人材育成の強化等を行うといった内容が盛り込まれているところでございます。
4ページは先ほど御紹介をいたしましたので割愛させていただきます。
5ページを御覧ください。今回の補正予算の中に盛り込まれております一般会計から雇用勘定への2.2兆円の繰り入れの内訳の資料でございます。一般会計から失業等給付のほうに約1.7兆円、それから、二事業のほうに雇調金の日額上限の上乗せ分として0.4兆円が繰り入れられているところでございます。
6ページと7ページは前回お出しをした資料と同じでございます。失業等給付の収支状況と二事業の収支状況になってございます。こちらによりまして2.2兆円の繰入を行いました結果、6ページでありますが、失業等給付の関係収支の中で積立金の残高という欄が一番下にございます。令和3年度の収支イメージでありますけれども、積立金残高1.3兆円、さらに雇用安定事業費への貸出累計額が2.6兆円となっております。
8ページを御覧ください。こちらは雇調金等に係る財源の確保の状況について整理をしたものでございます。今回の補正で一般会計からマル1のルートを通りまして1.7兆円の繰り入れ、それから、マル2のルートを通りまして0.4兆円の繰り入れが行われたというのは先ほど御紹介いたしました。マル1の部分はこれまで全くお金を入れたことはなかったのですけれども、今回新たに補正でお金を入れた部分でございます。マル2の部分につきましては、今回の補正より以前の段階で既に1.1兆円の一般会計の措置が講じられておりましたが、そこに今回の0.4兆円を加えまして1.5兆円という記載をしてございます。
それから、雇用安定資金のところで1.5兆円貯まっていたものを雇調金のために使ったという部分と、それに加えまして積立金のほうから二事業のほうへ今回の補正分も含めまして累計2.6兆円の貸し出しを行ったということで、全て足し上げますと雇調金等の財源累計額が5.7兆円となっているものでございます。
最後の9ページに論点を整理してございます。
1点目ですが、雇調金、休業支援金に要する経費のうち、中小企業分の8,265円を超える部分には一般会計から繰り入れる規定が令和3年度末までとなっておりますけれども、こちらに関しまして令和4年度も継続することについてどう考えるかとしております。
2点目ですが、雇用安定事業に要する経費を失業等給付の積立金から借り入れることができる規定、こちらも令和3年度末までの措置となっておりますが、こちらにつきまして安定的な財政運営の観点から一定期間延長することについてどう考えるかとしております。
3点目でございますが、この借入規定に基づく累計借入額、令和3年度末で約2.6兆円の見込みとなっておりますが、こちらに関して、現行制度においては雇用保険二事業に剰余を生じた場合は、当該剰余の全額を返済に充てることと臨時特例法で規定をされてございます。この点について、以下の点を考慮しつつ、その取扱いについてどう考えるかとしておりまして、雇用保険二事業の実施状況、先ほど御覧いただきましたように人的投資等、雇調金の財源を確保する傍ら様々な雇用対策を実施していく必要があるという点について、また、雇用安定資金積立金の状況ということで、雇用安定資金は既に枯渇しておりますけれども、積立金も必ずしも潤沢ではないといった点についてどう考えるか。また、累計借入額の状況ということで、令和3年度末で約2.6兆円の見込みとなっておりまして、非常に大きな額でありますので、この点をどう考えるかということで整理をしてございます。
以上でございます。
○守島部会長 ありがとうございました。
それでは、ただいまの御説明に関しまして御意見・御質問がある方は挙手をお願いいたしたいと思います。
杉崎委員、どうぞ。
○杉崎委員 各論点に基づいて意見を申し上げたいと思います。
まず、論点の1点目でございます。雇調金等に要する経費のうち、中小企業分の8,265円を超える部分について一般会計から繰り入れる規定につきましては、宿泊飲食業など、コロナ禍でいまだに厳しい業況の企業から特例措置の延長を希望する声が非常に多いということから、令和4年度以降も継続すべきであると考えております。
次に、論点2の雇用安定事業に要する経費を必要等給付の積立金から借り入れることができる規定を一定期間延長することにつきましては、雇用安定事業には雇調金など雇用の維持や仕事と育児・介護との両立など、事業主に対する様々な助成金がありまして有効に活用されているということ。特にコロナ禍により予断を許さない雇用情勢が続いている中で、在籍型出向の促進に資する産業雇用安定助成金ですとか、人手不足業種、成長産業への労働移動の促進に資するトライアル雇用助成金、さらには労働移動支援助成金などが果たすべき役割は非常に大きいということ。これらの点を踏まえますと、費用対効果の徹底を前提としつつも、二事業会計には各種雇用対策事業に充当する相応の資金を確保していく必要があります。
また、雇調金の支給決定件数、金額のペースが落ちておらず、新たな変異株による先行き不安がある中で、この借入規定がないと令和4年度の雇調金等の予算が組めない状況にあるかと思います。
したがいまして、安定的な財政運営の観点から、失業等給付の積立金から借り入れることができる規定を一定期間延長することは不可欠であると考えております。
次に、論点3の借入規定に基づく累計借入額の取扱いにつきましては、現在の財政状況の中で、二事業の差し引き剰余の全額を返済に充てると機動的に雇用対策を実施する資金を確保できなくなってしまうということ。その一方で、失業等給付の積立金につきましても、このたびの補正予算案に失業等給付に係る国庫負担金が1.7兆円盛り込まれたことで、令和3年度の積立金残高は1.3兆円になる見込みですが、財政運営により失業等給付や求職者支援制度など、セーフティーネット機能が毀損されることは絶対に避けなければならないということ。
また、二事業の平時における差し引き剰余が1000億円から2000億円程度である中で、令和3年度末の累計借入額は2.6兆円に達すると見込まれておりますが、当面は雇調金の支出が相応に続いていくと思われることや、現時点では財政運営に係る暫定措置の取扱いですとか、国庫負担などが確定をしていないということ。
こうした点を踏まえますと、コロナ収束後など、一定期間経過後に具体的な取扱いを検討するということが現実的であり、やむを得ないのではないかと考えております。また、検討していく際には、事業主の負担も十分に考慮していただきまして、二事業など雇用保険財政の安定的な運営にも配慮の上、何らかの特例措置を設けることも視野に入れるなど、慎重に検討すべき事項なのではないかと考えております。
最後に、先ほど事務局から経済対策の中で、人への投資が3年間で4000億円という紹介もありましたが、これは一部二事業が投入されるということでございました。人への投資というのは、まさに今、この状況の中で非常に重要な施策でありますので、できる限り早期に、どういった中身なのかの全容を明らかにしていただきまして、その施策に対する公労使の議論も待たれる状況なのかなと考えてございます。
以上でございます。
○守島部会長 ありがとうございました。
続きまして、菱沼委員、お願いいたします。
○菱沼委員 今、論点を3点ほど出されておりましたので御意見を申し上げたいと思います。少し杉崎委員と重なる部分があるかもしれませんけれども、その点は御容赦いただけたらと思います。
まず、論点1でございますけれども、いろいろ厳しい状況が続くという中でございますので、令和4年度の財源を確保するという前提であれば、継続をお願いできたらというのを意見として申し上げたいと思います。
2点目と3点目についてまとめて話させていただけたらと思っております。雇用保険二事業の制度維持のために保険料収入だけでは足りなくて、一般財源を頼るほかないのが現状かなと思っています。資料を見ますと、令和3年度の末で2.6兆円残るということでございますが、これ以上借りていていいものかと思います。ただ、本会としては借入という形ではなくて、論点1のように一般会計から繰り入れてほしいというところをかねてから要望していたところでございます。8ページにも図がありますけれども、枠囲みにある労働保険特別会計のやり取りの中では、財政の立て直しのため、何らかの措置を講じていくべきではないかなということを考えます。
あと、積立金から借り入れた以上、また返済も視野に入れていかなくてはいけないのかなと思っております。平時に戻っていない状況ではありますが、その辺も考えていかなくてはいけないのかなというところでございます。
もう1点は、先ほど事務局から説明がありましたけれども、積立金も大分厳しい状況にありますので、そういった点を考慮しますと、やはり国庫負担を本則に戻すとか、その辺の対応が必要ではないかなと思っておりますので、意見として申し上げます。
以上です。
○守島部会長 ありがとうございました。
続きまして、冨髙委員、お願いいたします。
○冨髙委員 まず、前提として申し上げておきたいことが幾つかございます。
国庫負担割合でございますけれども、従来から申し上げているように、これは政府の雇用政策に対する責任を明確にする意義があると思っておりますので、その削減・縮小を一般化すべきではないと考えております。憲法の勤労権を踏まえれば、失業離職時の被保険者の生活の安定を図ることは政府の責任だと考えております。そうした観点からすると、一般会計や特別会計の財政状況にかかわらず、国庫負担割合については来年度から本則に戻す必要があると考えております。
また、雇用保険料率についても従来から申し上げているとおり、労働者の賃金や一時金への影響を考えれば、引き上げを受け入れる状況にはないと考えております。
また、少し違う観点でございますけれども、先ほど資料2のところでフリーランスの救済にもつながるような議論がなされたわけでございますけれども、そういったことについても検討するのであれば、例えば育児休業給付や雇用継続給付として支給されている介護休業給付について、子ども・子育て・少子化対策として位置づけて、雇用保険会計によらず、政府の責任により一般会計で実施することなどを検討してもよいのではないでしょうか。一般会計による事業であればフリーランスもその給付の対象となり得るわけであり、そういった議論もこの雇用保険部会の中で行ってもいいではないかと考えております。
それから、論点の3点目に示されている累計借入額のところなど、借入規定に関する説明が先ほどございましたけれども、まず前提として累計借入額の議論に端を発して、雇用保険二事業が縮小されるようなことはあってはならないということは申し上げておきたいと思います。二事業により実施されている雇用安定事業と能力開発事業につきましては、今後のDXやグリーンなどへの対応を考えれば、その果たすべき役割というのは非常に大きいと思いますし、実施されている事業の内容を精査した上で改編と充実というものが求められると考えております。当然、これは労働者にとっては職業の安定のための事業でもございますので、少なくとも縮小すべき要素は見当たらないということを申し上げておきたいと思います。
一方で、失業等給付の積立金からの累計借入額につきましては、当然のことながら労働者が負担する保険料が含まれているということでございますので、これはしっかりと保全されるべきものであることは言うまでもないと考えております。二事業の今後の役割を踏まえれば、二事業が産業の変化や景気動向に際して機動的に対応できるよう、負債分の返済も含めて一般会計による対策がなされることが不可欠であろうと考えております。
以上でございます。
○守島部会長 ありがとうございました。
平田充委員、お願いいたします。
○平田充委員 経団連の平田充です。論点の3ポツについて意見を2つ申し上げたいと思います。累計借入額に関してで。どうやって返済するのかということと、どこまで返済するのかという2点です。
まず、どうやって返済するのかということについてです。コロナがまだ収束していないので借入金がどの程度まで累積するかは未確定ですが、返済に向けて恐らく10年以上に及ぶ可能性が非常に高いと考えております。今後、長年にわたって雇用安定資金を積み上げられないということであれば、「平常時に積み立てて必要に応じて使用する」という雇用安定資金の基本コンセプトが成り立たないということになりますので、これを放置しておくことは適切ではないと考えております。
2つ目、どこまで返済するのかということです。借入額が今年度中に3兆円近くまで膨れ上がる見込みで、前回も申し上げましたけれども、当初全く想定していなかった状況にあると考えております。改めて言うまでもありませんが、雇調金の本来の役割は急激な景気変動に対する一時的な雇用の維持です。その範疇を大きく超える長期間の特例の措置を運用してきた結果、失業給付に移行していた部分までカバーしているということであれば、失業給付に係る労使と国庫の負担を実質的に肩代わりしているといった見方をすることは可能だと思っております。こうしたことを踏まえとれば借入金返済について、全額事業主のみの負担として形式的に整理することは適当ではないと考えております。
以上です。
○守島部会長 ありがとうございました。
ほかに御意見とか御質問はありますでしょうか。
杉崎委員、どうぞ。
○杉崎委員 手短に申し上げます。前回の部会でも申し上げましたが、このコロナ禍が収束して経済が回復するまでの間は料率を引き上げるべきではなく、今後も将来にわたって引き上げはできる限り回避していく努力をすべきです。
国庫負担についても、少なくとも本則に戻すことが不可欠であると考えていますので、繰り返し申し上げます。
以上です。
○守島部会長 ありがとうございました。
続いて、中窪委員、お願いいたします。
○中窪委員 私もこれは非常に大変だなというのが率直な感想で、どうしていいのかというのは困ってしまいますけれども、とにかくコロナという異常な事態によって、一時期非常にたくさんあった積立金がこういう形で減って、かつ雇用調整助成金に貸し出すという形で、しかし、そういう形で機能することによって制度が維持されたというのは、それはそれで意義のあることだと思うのですけれども、これを将来的にどのようにこの雇用保険制度を設計し、運営していくかというのは、非常にまだ先が見えない中で難しい舵取りだなというのは、もう言うまでもないことですけれども思います。
そのときに基本となる失業等給付が、きちんと運営していくというのが第一でありますけれども、それを支えるこの二事業、特に雇用安定事業というのは雇用保険の非常に重要な機能でありまして、ここが同様に機能を発揮して運営していけるようにやっていくということは必要なわけでありまして、個人剰余を全て返済するというのが本当にいいのかどうかというのはかなり問題でありますし、他方で、しかし、貸し出しているものが本当に帰ってくるのか、いつ帰ってくるかというのは、失業等給付の基金のほうにとっては大問題でありますので、少し長い目で見ながらきちんと、今後、対処が難しいなというのが一つの感想であります。
それから、そういう中で、やはり弾力条項を使って、そのときの状況に応じて保険料率を変える仕組みがありますので、まずはそこを、もちろん国庫のほうできちんと負担すべきものは負担する、元に戻すというのが大前提でありますけれども、その上で、労使の保険料についても本来の保険料というのは国庫になるというのが、ある意味前提となって、それについて暫定的にいろいろな状況を見ながら特別に考慮の余地があるかということを検討することは必要だと思いますけれども、やはり弾力条項の仕組みというのは尊重すべきではないかなと私は思っております。
以上です。
○守島部会長 ありがとうございました。
ほかにどなたか御質問・御意見はありますでしょうか。大丈夫ですね。
それでは、これ以上御意見とかがございませんようなので、これでこの議論は終わりにさせていただきたいと思います。
これで予定されている議題は以上ですので、本日の部会は終了させていただきたいと思います。皆様方、お忙しい中お集まりいただき活発な御議論をいただき、本当にありがとうございました。