第3回全ゲノム解析等の推進に関する専門委員会(議事録)

日時

令和3年7月6日(火) 14:00~16:00

開催方法

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議事

議事内容
○がん・疾病対策課長補佐 それでは、定刻となりましたので、ただいまより第3回「全ゲノム解析等の推進に関する専門委員会」を開催いたします。
委員、参考人の皆様方におかれましては、お忙しい中お集まりいただきまして、誠にありがとうございます。事務局を務めさせていただきます厚生労働省健康局がん・疾病対策課の市村と申します。
委員会の開催に当たりまして、健康局長の正林より御挨拶を申し上げます。
○健康局長 皆さん、こんにちは。健康局長の正林でございます。一言御挨拶申し上げます。
まず、本日は大変お忙しい中、御参画いただきまして、誠にありがとうございます。また、日頃は厚生労働行政に御指導、御鞭撻を賜り、誠にありがとうございます。
前回、第2回の専門委員会で御議論いただきました実行計画ロードマップ2021については、皆様に御尽力いただき、6月9日に策定することができました。重ねて御礼を申し上げます。
さて、実行計画ロードマップ2021が今年度の骨太の方針などにも盛り込まれるなど、本計画は国家プロジェクトとして、重要性が日に日に増している状況にございます。まず、皆様に改めて、本専門委員会について御説明させていただきます。厚生科学審議会科学技術部会の下に設置された委員会であり、今後の全ゲノム解析等をさらに推進するための司令塔としての役割を期待されております。いよいよ令和3年度のAMEDの研究が開始されます。研究の円滑な推進に向け、必要な事項について闊達な御議論をいただきますよう、本日はよろしくお願いします。
また、本日御参画の研究者の皆様にも申し上げたいと思います。これまでもお伝えしてきておりますように、患者に還元するという第一義の下、本専門委員会に進捗状況を御報告いただくとともに、そこから出される指示に忠実に従っていただきたいと思っております。また、当省やAMEDの進捗管理に合わせて着実に国家プロジェクトを進めていただきますよう、御協力のほどよろしくお願いを申し上げます。
簡単ではございますが、私の挨拶とさせていただきます。本日は、どうぞよろしくお願いします。
○がん・疾病対策課長補佐 本日、全ての委員に御出席いただいております。
また、参考人といたしまして、厚生労働省データヘルス改革推進本部プロジェクトチーム技術参与・独立行政法人情報処理推進機構CIO補佐官 葛西重雄参考人、日本製薬工業協会副会長 上野裕明参考人、ほか、厚生労働省科学研究班、AMED研究班より研究代表者の先生方に御参加いただいております。
横野参考人のみ遅れて参加予定となっております。
時間の関係で御紹介は割愛させていただきますので、参考資料2の委員名簿、参考人名簿を御参照ください。
参考人の先生方におかれましては、御発表もしくは御発言時のみ画像をオンにしていただくようお願いいたします。また、スライドは、事務局のほうで共有させていただきます。
続いて、資料の確認をさせていただきます。
資料は厚生労働省のウェブサイトに掲載しております。議事次第及び資料1~4、また参考資料1~7までがございますので、御確認ください。
本委員会はYouTubeにて配信されておりますので、御承知おきください。
事務局からは以上となります。
これ以降の進行は中釜委員長にお願いしたいと思います。よろしくお願いいたします。
○中釜委員長 指名にあずかりました中釜でございます。本日はよろしくお願いいたします。
先ほど、正林健康局長からもお話がありましたが、AMEDの研究班も決定され、今後、この専門委員会と密に連携を取りながら、全ての研究グループが連携を取って、最終的にそれを患者さんに還元するという目標に向かって動いていくという、まさにスタート地点に立ったと思います。その意味でも、この専門委員会及び厚労科研の研究班を通して方針を決定し、この専門委員会の指示に従い、全ての研究班が動いていくという仕組みをしっかりとつくっていく必要があると思いますので、本日の議論もよろしくお願いいたします。
それでは、早速ですけれども、事務局より資料1、2の説明をお願いいたします。
○がん・疾病対策課長補佐 よろしくお願いいたします。
資料2、1ページ目を御覧ください。「全ゲノム解析等の実施体制及びスケジュール等について」、発表させていただきたいと思います。
ページ2、まず初めに「事業目的」を確認させていただきます。正林からも発言があったとおり、本事業は国家プロジェクトであり、患者還元が第一となっております。こちらに示す3つが目的となっております。
マル1、全ゲノム解析等の成果をより早期に患者に還元すること。
マル2、新たな個別化医療等を実現し、日常診療への導入を目指すこと。
マル3、全ゲノム解析等の結果を研究・創薬などに活用することとなっております。
3ページ目を御覧ください。この患者への還元が第一義ということにつきましては、今年度の骨太の方針等にも明確に追記されており、また前回の専門委員会で協議いただき、科学技術部会で承認していただいたロードマップ2021の着実な推進も明記されております。
具体的には、経済財政運営と改革の基本方針2021におきましては「全ゲノム解析等実行計画及びロードマップ2021を患者起点・患者還元原則の下、着実に推進し」と明記されております。
また、成長戦略実行計画においても「全ゲノム解析等実行計画及びこれに基づくロードマップの推進と産官学の関係者が幅広く分析・活用できる体制の構築、・・・等を進める」。
また、統合イノベーション戦略2021におきましても「「全ゲノム解析等実行計画」及びロードマップ2021を着実に推進」するということが記載されております。
これらを受けまして、ロードマップ2021について着実に推進してまいりたいと考えております。
4ページ目を御覧ください。ロードマップ2021の概要です。詳細につきましては、資料1を御確認ください。
令和3年度につきましては、患者還元及び患者還元に必要な事項、また検体の保存・利活用、ELSI、人材育成等について検討を開始いたします。
また、令和4年度につきましては、データ利活用に係る事項について検討を開始することとしております。
5ページ目を御覧ください。これらのロードマップ2021を着実に推進するために、全ゲノム解析等の実施体制について説明いたします。
「全ゲノム解析等の推進に関する専門委員会」は「全ゲノム解析等実行計画」に基づき実施される全ゲノム解析等の実施状況について評価・検証を行い、方針の決定及び必要な指示を行うとされております。
そして、この専門委員会に対しまして、「厚生労働科学研究班」が専門的事項の検討を行い、専門委員会における検討に供することになっております。
また、AMEDの研究班につきましては、解析状況等の報告を専門委員会に行い、同委員会の方針に従って、適切な進捗管理の下、研究を行うこととされております。
6ページ目を御覧ください。がん領域について、厚生労働科学研究班の体制図となっております。厚労科研の中釜班における専門的検討事項につきましては、本日報告がありますので、改めて協議をお願いいたします。
7ページ目を御覧ください。がん領域についての令和3年度のAMED研究班の概要です。次の8ページ目と併せて御覧ください。
A班は、がん患者の臨床解析を行い、レポート作成及びエキスパートパネルによる協議を経て患者還元を行うこととしております。
また、B班は、領域別のがん患者について、C班と連携して全ゲノム解析等を行い、患者還元を行うこととしております。
C班は、A、B班において解析対象となったがん患者について、臨床情報を収集するとともに、統一パイプラインによる解析及び臨床解析を行うこととし、また、解析・データセンターの構築に向け高度な横断的解析、データ共有システムの構築等にも取り組むとしております。
なお、各班は連携し、新規の治療法等の開発に向けた体制構築や、臨床情報等の収集及び高度な横断的解析等を行うこと。
また、実施状況について「全ゲノム解析等の推進に関する専門委員会」、本委員会に報告し、本委員会の方針に沿って解析等を行うこととしております。
下の表は、先日採択されたAMEDの研究班10班の一覧となります。本日、この後の議題で、研究代表者の先生方から研究内容について簡単なプレゼンをしていただく予定となっております。
続きまして、9ページ目を御覧ください。9ページ目と10ページは、難病領域の研究班の御紹介となります。
9ページ目の「難病に関するゲノム医療推進にあたっての統合研究」班、水澤班におきましては、令和2年4月から体制面での検討を進めております。
10ページ目を御覧ください。「難病のゲノム医療推進に向けた全ゲノム解析基盤に関する研究開発」班、AMED國土班につきましては、令和2年10月から実際の解析を開始しております。
11ページ目を御覧ください。今後の全ゲノム解析等に係る検討事項とスケジュール等についてです。上の四角に記載のあるとおり、大きくは2点となります。
まず、AMED研究(患者還元)を行うために必須な事項について、7月中に方針を決定する。
そして、解析・データセンター、人材育成等に必要な事項について、臨床解析等が開始される秋頃までを目途に方針を決定することとしております。
6月9日に、第1回及び第2回専門委員会で協議していただいたロードマップ2021が、本委員会の親部会である科学技術部会で承認されました。
そのロードマップを着実に推進するために、7月はAMED研究を行うために必須な事項について方針を決定し、9月には解析・データセンター、人材育成等に必要な事項について協議を開始し、臨床解析等が開始される秋頃を目途に方針を決定したいと考えております。
そして、来年1月には、今年度のAMED研究班の経験等を踏まえて、修正等が必要な事項について、必要な方針の修正等を行っていきたいと考えております。
そして、年度末には「全ゲノム解析等実行計画(第2版)」の策定を予定しております。
以上が全ゲノム解析等の実施体制及びスケジュール等についてとなります。
なお、次のページには、全ゲノム解析等の実施体制の将来像(案)が記載されておりますので、御参考までに御覧ください。
以上が資料1、2の説明となります。
○中釜委員長 ありがとうございました。
ただいま、全ゲノム解析等の実施体制及びスケジュール等について説明がありましたが、御質問、御意見のある方、お願いいたします。
天野委員、お願いいたします。
○天野委員 ありがとうございます。
1点、細かい確認になりますが、スライド11で今後のスケジュールをお示しいただきました。こちらのほうを見ると、本専門委員会は、進捗管理を行いつつ、方針決定を行うものと理解いたしましたが、開催頻度としては2か月に1回程度という理解でよろしいでしょうか。
○中釜委員長 事務局、お願いいたします。
○がん・疾病対策課長補佐 天野委員、御指摘のとおりで、大体2か月に一度の開催を予定しております。
○中釜委員長 今の説明でよろしいでしょうか。
○天野委員 ありがとうございます。
○中釜委員長 ほかに御質問、御意見ございますか。
上野参考人、お願いいたします。
○上野(裕)参考人 私、今回から初めて参考人として出席させていただいております製薬協の上野でございます。どうぞよろしくお願いいたします。全ゲノムにつきましては、以前は難病のほうで参加させていただいておりますけれども、今回の専門委員会につきましては本日からということで、よろしくお願いいたします。
それで、私のほうから1点、確認とお願いということですが、ページ4にありますロードマップにおけるデータ利活用の方策というところでございます。私ども製薬企業にとっては、患者様への還元ということは、とりもなおさず、治療薬を提供して患者様の治療に少しでも貢献するということで、創薬への利活用というところが一番の主題かと考えております。
その点におきまして、アカデミアフォーラム並びに産業フォーラムの設置というのは、資料1のロードマップのほうにも記載していただいていまして、我々としても非常に心強く思っているわけですが、これの検討のタイミングが、ロードマップのほうでは令和5年ということですけれども、それを前倒しで令和4年度中にということがページ4に書かれております。
もっと言えば、どういう利活用があり得るのかとか、あるいは、そのためにどういうことが必要なのかというのは、もっと前倒しで、今年度からでも議論・検討が可能で、そういった情報を適宜、上の解析・データセンターにフィードバックするというのがより有効な施策ではないかと考えておりますので、その点、改めて御検討いただければありがたいと思います。
よろしくお願いいたします。
○中釜委員長 その点について、事務局、お願いいたします。
○がん・疾病対策課長補佐 御指摘ありがとうございます。
1点、データ共有の共有ルール・利活用ポリシーというところを御覧いただきたいのですが、上野参考人の御指摘のあった事項に関しましては、そこで速やかに検討を開始する予定となっております。
○上野(裕)参考人 したがいまして、それに向けて、我々産業界の中でも、フォーラムの設置に係る議論を製薬協の中でも既にしているわけですけれども、そういうことも前広に検討していくという理解でよろしいでしょうか。
○がん・疾病対策課長補佐 その辺りにつきましては、前倒しで御検討いただく分にはありがたいと考えております。
○上野(裕)参考人 ありがとうございます。承知いたしました。よろしくお願いします。
○中釜委員長 ありがとうございます。
ほかに御質問ございますか。よろしいですか。
これから、いろいろな研究班あるいは厚労科研の取組等について説明がある中で、また改めて全体のロードマップに係る御質問があれば、そのときに受けたいと思います。よろしいでしょうか。
それでは、続きまして「全ゲノム解析等に係るAMED研究班」より資料3の説明をお願いしたいと思います。先ほど厚労省から説明のあったA班、B班、C班の順に発表をお願いし、各研究代表者の先生は、3分以内で簡潔に御発表をお願いしたいと思います。
まず、A班:患者還元班の体制構築班の先生方に連続しまして御発表いただき、最後にまとめて質疑応答としたいと思います。
それでは、最初に、山本先生から説明をよろしくお願いいたします。
○山本参考人 よろしくお願いします。
スライドを送っていただいていいでしょうか。研究代表者の山本です。よろしくお願いします。プロジェクトマネジメント責任者 角南が同席しております。
スライド、次、お願いします。目的ですけれども、難治がんと希少がんを対象に、令和3年度、4年度で、それぞれ500例、400例の全ゲノム解析を行い、体制の構築を進めていきたいと考えております。凍結ホルマリン標本を用いて腫瘍細胞の評価を行いますが、全ゲノムシークエンス、RNAシークエンスを行います。
患者還元につきましては、先ほども御紹介がありましたが、解析結果はエキスパートパネルで検討して、いきなり全ゲノム解析の結果を患者さんに返すのはハードルが高いと思いまして、右上にありますような段階的な返却を考えております。3年度は遺伝子パネルに搭載された遺伝子の範囲、4年度は全エクソンシークエンスレベルとしております。
次、お願いします。この解析におきましては、クリニカルシークエンスのプラットフォームは当院で構築されていますので、このプラットフォームに乗せて、それぞれICFの作成、フローの構築、そして他領域との連携を取りながら問題点を抽出して体制を構築していきたいと考えております。
スライド、次、お願いします。これが体制の全体像でございます。当院及び研究所、そして患者団体などと協力しまして、体制の構築及び同意説明文書の作成などに取りかかる予定でございます。
以上です。
○中釜委員長 では、続きまして、浦上班、お願いいたします。
○浦上参考人 静岡がんセンター研究開発代表者の浦上です。よろしくお願いします。
○秋山氏 プロジェクトマネジメント責任者の秋山です。よろしくお願いします。
○浦上参考人 研究課題名「8000症例マルチオミクス解析の経験にもとづく、全ゲノム解析の患者還元に関する研究」について説明させていただきます。
ここに示すとおり、我々の研究目的は、全ゲノム解析データを患者さんに還元し、診療に活かしていくことです。
本研究の必要性は、この研究の出口である保険医療に向けた課題抽出です。
具体的な数値目標は、令和3年度、保存検体300症例、新規検体200症例。令和4年度、新規400症例の患者還元です。加えて、検査時間を令和4年度は3週間にすることを目標としています。結果を早く患者さんに届けることが大事だと思っています。
以上の目的を達成するための背景を次に御紹介いたします。
我々は、8年前から、臨床研究としてプロジェクトHOPEと呼ぶゲノム医療を実践してきました。現在、8000を超える症例が登録されておりまして、腫瘍組織、血液、DNA、RNAなど、全て保存されております。
8000症例については、全エクソン解析を含めたマルチオミックス解析を実施しており、600症例については、全ゲノム解析も実施しています。
また、8年間の実績の中に、個人情報の管理や結果の解釈、臨床への返却、臨床情報収集といった実績もあります。
さらに、昨年度、JCGAというインターネット上のポータルサイトを公開し、データを一部公開していまして、このデータは全ゲノムのエキスパートパネルでも利用しようと思っています。
以上の8000症例のマルチオミックス解析のプラットフォームは、ほぼそのまま本研究の患者還元に用いることが可能です。
最後のスライドで、このプラットフォームを用いた研究概要について、お話しします。ここに示すのは患者還元のスキームですが、我々はがんゲノム中核拠点病院としてのエキスパートパネルの実績を基に、全ゲノム版のエキスパートパネルを組織します。参考情報として、結果の返却を行い、日常診療への導入のための課題抽出を図ります。患者さんに結果を早く届けるために、病理診断の迅速化、DRAGENサーバーを用いた解析の高速化を進めて、この全ゲノムのプロジェクトに生かしていきます。
研究を進める上では、患者団体の代表の方や倫理の専門家の意見を取り入れて、AMED、厚労科研の研究班と連携して進めていきたいと思っています。
以上で静岡がんセンター研究テーマの説明を終わります。
○中釜委員長 ありがとうございました。
続きまして、がん研の上野班、お願いいたします。
○上野(貴)参考人 がん研有明病院ゲノム医療開発部の上野貴之です。研究分担者の深田も同席しております。
それでは、次のスライド、お願いします。こちらは、研究の概要になります。
まず、一番上のピンクの部分が直接的還元、下の紫の部分が2次的還元、グリーンの部分、真ん中が還元の強化と、この3本柱で行う体制を整える予定です。
まず、患者さんから検体を頂いた後に、解析機関のほうで全ゲノムシークエンスを行い、東大医科研の井元先生のところで1次解析、VCFまで作成を行い、その後、がん研のCPMセンターでアクショナブルな遺伝子に対するレポート作成を行います。患者還元に関しましては、エキスパートパネルを通して、生殖細胞系列、体細胞系列の還元を行う予定としております。
また、ゲノムデータ、さらには臨床情報を統合しましてデータベースに登録し、研究・産業利用という2次的還元。
さらに、我々がすでに使っておりますタブレット端末、AIあるいはAIアバターを使った、患者さんにより分かりやすいゲノムあるいは臨床試験、治験の説明を行うという体制を組む予定としております。
次のスライド、お願いします。これが還元される患者数になりますけれども、令和3年度は200名、さらに我々は60名程度の新規前向きの解析が可能と考えております。既存検体に関しましては300名、さらに30名の上乗せが可能と考えております。
来年度、令和4年度に関しましては400名で、120名程度の上乗せが可能と考えています。
次のスライド、お願いします。これが我々の現在の準備状況になりますが、直接的還元に関しましては、年間8800例という、日本で最多の手術実績に基づく検体採取が可能となっております。また、早期臨床開発と創薬実施体制としまして、治療アクセスを向上するための先端医療開発センターが設置されております。また、8万を超える既存検体が既に保管・管理されております。
2次的還元としましては、e-learningやウェブ会議を既に施行して、人材育成や教育体制が充実されております。また、産業利用に対応可能な同意文書を運用して、産業利用等の推進活動が行われております。また、公的データベースへの登録を進めております。
還元の強化としまして、タブレット端末、AIアバターを使った患者さんへの還元・説明というのを行っております。
以上になります。
○中釜委員長 ありがとうございました。
それでは、以上A班の3班の発表が終わりましたけれども、御質問、御意見のある方、お願いいたします。
では、天野委員、お願いいたします。
○天野委員 御説明ありがとうございました。
1点確認です。これは非常に難しいことではあるのですけれども、全ゲノム解析となってくると、例えばエキスパートパネルで解釈するというプロセスがあったと思いますけれども、その時点では必ずしも明らかになっていなかったものが、後に研究の進展等によって、その意義が分かってくるものもあるかと思うのですが、そういったものはどういうふうに対応していくお考えなのか、A班でどなたかお答えいただければと思います。
○中釜委員長 A班の山本班からお願いいたします。
○山本参考人 山本のほうから分かる範囲でお答えいたしますけれども、確かに出てくると思うのですけれども、出てきたときの患者さんの情報を押さえていれば、そこで追加でエキスパートパネルの中で、また別途報告していくことぐらいが考えられる状況ですが、実際うまくいくかどうかは、やってみてからの評価になるかと思います。
以上です。
○中釜委員長 続きまして、浦上班、お願いいたします。
○浦上参考人 浦上です。
定期的に、半年になるのか、1年になるのか、まだ決めていませんけれども、データベースを見直して更新していって、そこで見つかった新しい知見に関しては、先ほどおっしゃられたようにエキスパートパネルで評価して、患者さんに返すかどうかを判断していきたいと思っています。
○中釜委員長 最後、上野班、お願いいたします。
○上野(貴)参考人 上野です。
まさにその点が、我々還元班としての体制づくりの一番重要な肝の部分だと思っております。将来的にゲノム事業がどんどん進歩していく中で、それをいかに将来に向けて体制を整えるかということが、今回、このプロジェクトで行われるところと思っております。
ありがとうございます。
○中釜委員長 ほかに御質問ございますか。
中村委員、お願いいたします。
○中村委員 今の質問にも関連するのですけれども、シークエンスした時点では分子標的治療薬がなくても、今どんどん新しい分子標的治療薬が開発されていますので、その情報とリンクすれば何らかの形で患者さんにベネフィットがあると思うのですけれども、情報をアップデートするというのはどこでされるのでしょうか。
○中釜委員長 これについては、簡潔に順次お願いいたします。最初に山本班から。
○山本参考人 定期的にエキスパートパネルで共有していく方法しか、今はないと考えております。
以上です。
○中釜委員長 続きまして、浦上班、お願いいたします。
○浦上参考人 基本的には、公共のデータベースを基本にすると思うのですが、アップデートがどうなっていくかだと思います。
○中釜委員長 最後、上野班、お願いいたします。
○上野(貴)参考人 エキスパートパネルが基本になりまして、そこに公共のデータベースを合わせて行っていくことになると思います。
○中釜委員長 よろしいですか。今の御質問は非常に重要で、この患者還元班のデータをいかに共有し、さらにアップデートしていくかは、解析・データ班との連携の中で進めていくのかなと、今、お聞きして思いました。各症例ごとの分析の妥当性というところも、各患者還元班でしっかりやりながら進めていくと理解しましたが、そういう理解でよろしいでしょうか。特に御意見あればと思いますが、中村委員、以上の説明でよろしいですか。
○中村委員 これからのことだと思いますけれども、最先端の情報をどのような形でシェアしていくのかというのは、今後の課題になると思います。
○中釜委員長 ありがとうございました。
ほかに。
森委員、お願いいたします。
○森(正)委員 森です。御指名ありがとうございます。
3つの日本を代表する研究施設・病院で、同じような流れで同じ目的に向かって進行しているということで、大変すばらしいと思います。その一方で、例えば非常に細かいことですけれども、既に実績が十分おありでありますけれども、検体の質の評価とか、あるいは3つの病院で保存の仕方、検体の質のチェックは共有されているのか、それぞれ独自にやっておられるのか。そして、それを独自にやっているのであれば、その中でどこが結果的に一番よかったかというのを取り入れていくのか、その辺、どうなっているのでしょうか。
○中釜委員長 ありがとうございます。
その点については、後ほど厚生労働省の厚労科研の研究班のほうで大きな方針を示させていただき、それと各領域別の患者還元班が連携しながらデータとしてのクオリティーを担保していくという方針だと思いますが、追加で各研究班、何か御発言があればお願いいたします。よろしいですか。では、後ほど、その点については、また森委員のほうから懸念があれば御質問いただきたいと思います。
ほかに御質問、御意見ございますか。よろしいでしょうか。後ほど何かお気づきの点がありましたら、御意見いただければと思います。
続きまして、B班:患者還元班の領域別班になります。ここは6班ありますが、まず柴田先生からよろしくお願いいたします。
○柴田参考人 よろしくお願いいたします。研究代表者の東京大学医科学研究所の柴田龍弘と申します。プロジェクトマネジメント責任者の新井田も同席しております。
研究課題名「オールジャパン体制による食道がん等消化器難治がんの全ゲノム配列データ及び臨床情報の収集・解析と創薬開発・全ゲノム医療基盤構築」について説明させていただきます。
まず、本研究の目的ですけれども、食道がんを中心とした消化器難治がんについて、オールジャパン体制を構築し、共通パイプラインで解析され、統一された品質の高精度な全ゲノム情報並びに臨床情報を集積すること。
患者還元体制を整備し、消化器がん領域における全ゲノム情報の医療活用体制を構築すること。
データ共有を促進し、消化器難治がん領域における創薬・バイオマーカー研究と臨床応用の加速、国際競争力確保を目指すといったものであります。
スライド、次、お願いいたします。次に、研究体制について御説明いたします。
左にありますように、本研究班では、8つのがんゲノム中核拠点を含めて、全国の消化器がん治療を専門とする32の医療機関と関係する5学会につきまして、連携したネットワークを構築いたしました。
右側に本研究班の体制図を示します。食道がん研究グループを主体とし、そのほかの消化器難治がんグループでは、食道がんグループと協調しながら解析を行う予定であります。食道がんグループでは、食道がん500症例を対象とした全ゲノム並びにRNAシークエンスと臨床情報を収集。そのほかの消化器難治がん解析グループでも、肝臓がん300症例、胆道がん300症例、膵臓がん300症例を対象として解析を進める予定であります。
別に、プロジェクト全体の進捗管理並びに情報解析や臨床応用のグループを置いております。
また、ほかのAMED研究班とも連携し、全体のマネジメントにつきましては、AMED並びに「全ゲノム解析等の推進に関する専門委員会」の指示に従って進めます。
スライド、次、お願いいたします。研究計画の概要図です。各グループで抽出した核酸は、国内のシークエンス受託会社にて全ゲノム並びにRNAシークエンスを行い、AMEDの技術評価・体制班並びにゲノム解析・臨床応用班と連携しながら、共通パイプラインにて解析いたします。臨床情報も、共通したプロトコルに従い収集し、これらのデータは中央のデータベースに収納されます。
情報解析・臨床応用支援グループ並びに患者還元班と連携しながら、得られたデータの患者還元を進めると同時に、新規ドライバーの同定や機能解析などの研究・創薬開発を進める予定であります。
また、データは、アカデミアの研究者や企業と共有し、創薬開発を進める予定であります。
以上となります。
○中釜委員長 ありがとうございます。
続きまして、南谷先生、お願いいたします。
○南谷参考人 課題名「難治性がん(白血病等)の全ゲノム配列データ及び臨床情報等の収集と解析に関する研究」について説明させていただきます。京都大学及び東京大学の南谷と申します。プロジェクトマネジャーとして、越智が同席しております。
まず、背景のほうから説明いたします。血液がんは、全がんの約5.8%を占める、比較的頻度の少ない腫瘍ですが、予後としては一般的に不良でして、5生率としては、急性白血病及びMDSでは30%程度しかありません。このように、希少かつ難治性腫瘍であると言えます。
一方、血液がんは分子標的療法が最も早く導入されたがんであり、一部の疾患の予後は、この図に示しますように飛躍的に改善しておりますが、現状、変異データに基づく分子標的療法は、いまだ血液がんの一部でしか実施できず、例えばAMLに対しては10~15%程度でしかないと言われております。
これまで行われてきたゲノム解析によって、血液がんのドライバー変異のプロファイルの全体像が明らかにされてきましたが、いまだ10%の患者ではドライバー変異が検出されておりません。さらに、治療の反応性が個人により大きく異なりますが、抵抗性となる理由などもまだ不明であります。そのようなゲノム医療の知見を、現在のプラットフォームで全て解明するのには限界があります。そこで、全ゲノム解析を行うことにより、未知のドライバー変異の探索、治療抵抗性の獲得のメカニズム解明を進めることが大事だと考えております。また、白血病の発症素因のデータについて、これはほぼデータがまだありませんので、これも今研究の検討項目としています。
次、スライドをお願いいたします。研究計画です。
このグループの強みとしましては、希少な疾患であるにもかかわらず、大きな検体レポジトリを持つことだと考えております。現在、京都大学のほうでは6000症例、1万7000検体の血液疾患のレポジトリがありますし、それに加え、14の主要な血液疾患の参画を得ております。そのため、既存のドライバー変異が見つからない症例や、初発時とともに再発時、治療抵抗性獲得時の検体を併せ持つような症例、そして、血液腫瘍の中でも特に希少で難治の疾患の症例などを優先して解析を行うことができます。その結果、より研究の価値を高めることができると考えております。
これらの検体は、ISO認定のある実績のある企業へ外注し、解析班による統一パイプラインを用いて1次データの作成を行います。同時に、原則、全例RNA-Seqによるトランスクリプトームのデータを取ります。このようにして、1400検体の血液がんの1次データの作成を行います。
スライド、次、お願いいたします。
次に、このような1次データを基に、これまで調べられていなかった非コード領域、転写調節領域を中心として、白血病の発症や進展に関わるゲノム医療を探索します。これらの多くは、RNAの構造や量の異常を来たすことで発症に関わっていると考えられるため、トランスクリプトームのデータで検証を行う予定にしております。
また、構造異常によるゲノム変異のプロファイル、変異Signatureの解析による変異獲得の原因を調べるとともに、これらの変異情報は臨床データと併せて解析を行うことで、疾患の分類や薬剤感受性、生命予後などの臨床パラメータへ及ぼす影響を調べ、バイオマーカーとしての有用性を探索します。
さらに、健常者の全ゲノムデータと比較することで、血液がんを発症する遺伝的素因についても探索を行います。
これらの情報を基に、分子標的薬の候補が存在する場合には、それらを患者さんに提示いたします。
生物的な検証によるゲノム医療の位置づけや、大規模コホートでのバイオマーカーの検証、治療標的の同定と治療開発などが、2023年度以降の課題と考えております。
以上です。ありがとうございました。
○中釜委員長 ありがとうございました。
続きまして、加藤先生、お願いいたします。
○加藤参考人 よろしくお願いいたします。小児がんに対する全ゲノム解析等実行計画を仰せつかっております東京大学の加藤です。プロジェクトマネジメント責任者は、国立がん研究センター中央病院の鈴木達也先生にお願いしております。
背景として、希少がんの集合体である小児がんでは、がん細胞のゲノム特性が治療標的だけでなく、診断補助や予後予測にも用いられております。また、小児がんでは、生殖細胞系列の遺伝的背景と関連した発症、すなわちcancer predispositionの割合が多いことも重要な点です。これらのことから、小児がんはゲノム診断の意義が最大限に発揮される疾患の一つと考えております。
さて、小児がんの治療開発と研究開発のために、私たち小児がん関係者は、日本小児がん研究グループ(JCCG)としてオールジャパンの研究組織を構築し、これまで取り組んでまいりました。その活動の一環として、バイオバンク・ジャパンとの連携の下、十分な数の試料が保存されております。この試料には、JCCGが行った臨床試験により、診断情報・臨床情報が集積されておりますので、この準備状況を最大限活用し、成果を上げたいと考えております。
次のスライドをお願いします。本研究開発では、この充実したバンキングを利活用して全ゲノム解析等を行い、小児がんのゲノム解析に習熟した解析チームを構築し、さらには患者還元に可能な小児がん医療者のネットワークを使い、実行いたします。関連する他班と協力し、ゲノムデータと臨床情報がひもづいた重要なデータ基盤を構築し、また患者還元班との連携の下、患者還元が可能なスキームを構築いたします。その上で、学会や患者団体とも密接に協力し、小児がんに特有な課題の抽出と解決に取り組みます。
これらの研究開発の成果から、がんゲノム医療のさらなる発展につながることを狙いといたします。得られたデータ基盤を小児がんの治療開発や研究開発につなげ、遺伝的背景に基づく適切なサーベイランス体制の構築に寄与し、さらには国内のみにととまらず、国際的なゲノムプロジェクトへの連携へと発展させたいと考えております。
次のスライドをお願いします。最後のスライドで研究の実施体制を示しつつ、上書きしてしまっておりますが、概要をまとめます。JCCG施設からバンキングされている小児がん検体を用いて、全ゲノム解析等を実行いたします。臨床情報とひもづけてデータ基盤とし、関連する各班・団体と連携し、その成果を利活用可能なものへと展開し、直接患者にその結果を還元することに加え、JCCGのネットワークを使い、治療開発・研究開発へとつなげ、よりよい治療の提供という形で間接的にも患者さんに還元いたします。日本の小児がんの関係者の英知を結集した、まさにドリームチームが本研究の最も特徴的な点であり、小児がんの未来につながる成果を生むことができると確信しております。
どうぞよろしくお願いいたします。
○中釜委員長 ありがとうございました。
続きまして、松田先生、お願いいたします。
○松田参考人 希少がんグループの研究代表の松田です。よろしくお願いします。本日、プロジェクトマネジメント責任者として、谷川も同席しております。
では、早速ですが、研究背景について説明させていただきます。今回、希少がん、10万人当たりの発症数が5人以下と定義され、その希少性のため、診断、研究、治療法開発が困難であるという背景課題を抱えております。これらの疾患群を対象として、オールジャパンで試料収集、研究体制の構築が必要とされており、今回、こちらに示す5つの疾患を対象とした研究グループを構築しました。
このうち、骨軟部腫瘍及び脳腫瘍は、それぞれ組織型が200以上に分類され、疾患グループ内でもかなり多様性に富む疾患になります。また、診断・治療が困難であるということ。また、変異が少なく、一方で構造異常が多いという特色があります。
また、これらの疾患のうち、胸腺腫瘍及び褐色細胞腫は10万人当たりの患者数が1未満と、超希少がんとして分類されております。
スライド、次、お願いします。今回、我々は、診療科の枠組みを超えた90近い医療機関からなるオールジャパンの連携体制を構築し、希少がんを対象として5000例を肥えるサンプル収集を進めています。これらの検体を用いて、生存中の症例を優先して1400名のホールゲノムシークエンス解析を行うことで、希少がんの病態解明、疾患バイオマーカー、治療標的分子の同定を目指します。
研究班全体の統括・進捗管理を私が担当し、骨軟部腫瘍は国立がん研究センターの平田先生、原発性脳腫瘍は国立がん研究センターの鈴木先生、成田先生、神経内分泌腫瘍・胸腺腫瘍は大阪大学の谷内田先生、褐色細胞腫は京都大学の小川先生が担当し、また、患者還元を目指した疾患横断的な活動として、生殖細胞系列バリアントのリスク評価も予定しております。
ゲノム解析については、全例外注によるホールゲノムシークエンスとRNA-Seqを実施し、必要に応じて1分子のlong read-seq、ATACなどを併用します。また、医療機関から提供される臨床情報、画像情報と連携させ、診断や予後マーカーの探索。また、PDC/PDXを用いた機能解析や治療薬の探索等も予定しております。また、解析結果は公開を進め、ほかの研究グループが2次活用できる体制を整える。また、患者還元については、生殖細胞系列の病的バリアント症例については遺伝カウンセリングの実施、分子標的薬のターゲット変異を有する症例については、治験参加などの治療機会の提供という形で還元ができる体制整備を進める。
次のスライド、お願いします。我々のうち、骨軟部腫瘍班では、骨軟部腫瘍ゲノムコンソーシアムを2014年に立ち上げ、これまで、こちらに示すような脱分化型脂肪肉腫などを対象に、ホールエクソームシークエンスとRNAシークエンスの解析を進めてきました。今回の研究提案では、組織特異的遺伝子異常が明らかではない組織型。また、薬剤の奏効性/予後に関する遺伝子異常が明らかではない組織型を中心に、20程度の組織型を対象に解析を実施する予定です。
また、脳腫瘍班では、国内30医療機関との連携により、3000例以上の凍結検体を保有し、これまで9つの臨床研究に加え、脳腫瘍に対するゲノム研究を実施しており、その成果はWHOの分類にも採用されるなど、基礎研究・臨床研究で多くの実績を有しております。
今回、症例数の多い疾患として、膠芽腫や星細胞腫などを中心に、それぞれ100から150例。また、まれな脳腫瘍として、混合神経膠細胞腫瘍などを対象に30例程度の解析を行い、質の高い臨床情報、画像情報との統合解析を進めることで、新規治療標的の同定や疾患の診断・治療、予後予測などにつなげたいと考えております。
よろしくお願いします。
○中釜委員長 ありがとうございます。
続きまして、森先生、お願いいたします。
○森参考人 がん研究会の森と申します。よろしくお願いいたします。「全ゲノム解析による難治性卵巣がんの本体解明と新規治療標的の同定」ということを説明させていただきます。
次、お願いいたします。目的ですけれども、難治性がんであります卵巣がんをはじめとした婦人科腫瘍を対象としております。できるだけ本年度中に、難治性がんであります卵巣がんあるいは婦人科のがん肉腫、非常に難治でありますけれども、これの1400検体を解析、できるだけ進めたい。来年度には、さらに子宮体がん、子宮頸がんにまで展開できればと考えております。
卵巣がんは非常に多様な組織型を示すものでございますけれども、種々な組織型の卵巣がんのゲノム解析を行うことで、遺伝子及び非遺伝子領域で遺伝子変異のバリアントを見つけまして、治療標的・バイオマーカーの同定を行うということで、左側でありますが、基礎研究として卵巣がんの難治性の本態解明を行う。右側のほうですが、有用なアクショナブル変異を有している患者さんにおきましては、治療方針の支援になりますように、結果を返却するということで、がんの発生・進展を強力に制御することのできる予防法・診断法・治療法の開発につなげようと考えております。
次、お願いいたします。背景・これまでの成果ですけれども、上皮性卵巣がんは、これまで主なNGS研究、表に示すようなものがなされておりますけれども、基本的には、白人に多い高悪性度漿液性腺がんが主体でありまして、全ゲノム解析はそのデータしかほとんどありません。例えば、日本人に多い明細胞がんはほとんどデータがない状態でありまして、サンプル数が少ないため、十分な知見が得られていないという状況でありますので、本研究班で日本人に多いがんであります明細胞がんなどを推進していくことで貢献していきたいと考えております。
下のほうには、我々の研究班の婦人科がんNGS関連業績を示しております。我々のチームは、婦人科がん肉腫の日本人に特有な分子型というものを見出しましたし、新潟大学のグループは、子宮内膜症や正常子宮内膜におけるがん関連遺伝子変異というものを見つけて、子宮内膜症の発症機序というものを研究しております。
次、お願いいたします。研究概要でございます。
共同研究機関として、がん研有明病院、東北大学、埼玉医科大学、慶應大学、慈恵、東大。それから、全国のアカデミアの婦人科腫瘍の臨床試験を束ねます婦人科悪性腫瘍研究機構(JGOG)ともタッグを組みまして、世界的にも大規模なコホートであります15以上の組織型と2800を超える検体を有しております本研究班で解析を進めて、例えば卵巣がんでありましたら、多様な組織型を示しますが、組織型ごと、または組織型を超えた統合解析を行うということと同時に、患者還元を行って、ゲノムの臨床への還元ということに貢献したいと考えております。
発表は以上であります。ありがとうございました。
○中釜委員長 ありがとうございました。
最後、河野先生、お願いいたします。
○河野参考人 よろしくお願いします。国立がん研究センター研究所の河野隆志です。私と、プロジェクトマネジャーの白石航也が同席させていただいております。
我々の研究タイトルは「難治性呼吸器腫瘍等の全ゲノム配列データおよび臨床情報等の収集と解析に関する研究」です。このスライドに示させていただいておりますように、肺腺がん、小細胞がん、扁平上皮がんという代表的な肺がん。それと、分子標的薬治療が非常に盛んとなっておりますので、その薬剤耐性となったがん。そして、中皮腫、乳がん、泌尿器腫瘍などを解析するということを考えております。
右側にありますのはAMEDの解析班でありまして、そちらと密に連携しまして、実際にはドライバー遺伝子等がよく分かっている肺腺がんなどもありますので、変異のコールの手法などを議論しながら、よりよい全ゲノム解析の手法というものをつくっていきたいと思っております。
また、下にありますように、関連学会や、そのほかのAMEDの班とも連携してまいります。
次のスライドをお願いします。
こちらは、これまでの研究班員の実績でありますが、間野班員が見つけましたALK fusion、あるいは私たちが見つけましたRET fusionなどは、既に分子標的薬の実装も行われておりますし、また耐性機構なども、既に参加している班員であります片山ら、あるいは矢野班員らによって明らかにされております。また、その克服薬というのも見つかってきております。
そのほか新しい動きとしましては、谷田部班員らが見つけましたNRG1の融合、あるいは坪井らが見つけたというよりも、有名なEGFRの変異ですが、術後のアジュバント治療ということで、術後に陽性例と判明した方に分子標的薬で治療するという動きも出てきております。
そういう背景を踏まえまして、本研究では、1つは、肺がんではしっかりと根づいておりますドライバーがん遺伝子変化というものを、構造変化なども踏まえながら、より確実に把握していって、それを患者さんに還元できる体制をつくることが1つです。
そして、もう一つは、左上のチャートにもありますけれども、ドライバーとなっている、あるいは治療標的となっている遺伝子変化が分からない症例に関しても積極的に解析して、がんゲノム医療の拡大へと行きたいと思います。
次のスライドをお願いします。こちらは構成でありますけれども、中央に国立がん研究センターの研究所、そして中央病院、東病院。東病院には、有名なLC-SCRUM-Japanという国内のスクリーニング機構の研究者も入っております。
また、左側には、がん研有明病院の片山先生、そのほか愛知県がんセンター、金沢大学、慶應大学が肺がんのグループとして参画します。
また、右側に、まだ初めは小規模でありますけれども、胸部腫瘍、乳腺腫瘍などの研究者、そして泌尿器腫瘍の研究者も入っております。
このような体制で学会と連携しながら研究を進めさせていただきたいと思います。
以上です。
○中釜委員長 ありがとうございました。
それでは、以上、B班、6班の御発表をいただきましたが、御質問、御意見がありましたら、よろしくお願いいたします。
天野委員、お願いいたします。
○天野委員 御説明ありがとうございました。私から2点質問がございます。
まず、1点目は、解析の対象となる疾患についてですが、例えば消化器グループについては、いわゆる難治性の消化器がんということで御説明いただいたのですけれども、スライドを見る限りは、例えば胃がんの中のスキルス胃がんであるとか、幾つか難治がんが今回の中では含まれていないように拝見しました。
また、血液がんについても、例えば日本人に特有かつ難治性である、例えばATL等の疾患がスライドではなかったのですけれども、今年度はそれが含まれている、もしくは含まれていない、いずれなのかについて教えていただければと思います。
○中釜委員長 まず、1点目、お願いいたします。
○柴田参考人 消化器がんを担当している柴田です。
先生御指摘のように、例えば胃がんのdiffuse-typeは難治がんとして知られていますけれども、今回の解析では、当初の計画では入っていません。ただしサンプル収集をお願いしている先生には班員に入っていただいているので、今後、研究計画が拡大すれば含めていく予定であります。
○中釜委員長 続きまして、ATLについてお願いいたします。
○南谷参考人 血液がん担当の南谷です。
私たちのチームの中には、ATLを専門としている医師を含んでおります。悪性リンパ腫を200例として計上しておりますが、その中に含める予定にしております。
○中釜委員長 では、天野委員、2点目の質問、お願いいたします。
○天野委員 ありがとうございます。
2点目ですが、小児がんのグループです。これは、厚労省の以前の会議でそういった指摘があったので確認するのですが、例えば小児がんについては、患者さん御本人のみならず、血縁者間の解析も行ってはどうかという指摘があったと記憶していますが、その辺りの解析の予定とかは今回は入っているのでしょうか、教えていただけたらと思います。
○中釜委員長 では、加藤参考人、お願いいたします。
○加藤参考人 ありがとうございます。
重要な御指摘だと認識しております。特に遺伝性の腫瘍、もしくは遺伝的な背景が小児がんでは非常に重要ですので、検体の保存もしくは倫理的なところを十分解決しなければいけませんが、積極的に解析の対象としていきたいと考えております。
○中釜委員長 よろしいでしょうか。
○天野委員 ありがとうございます。
○中釜委員長 ほかに御質問、御意見ございますか。よろしいでしょうか。
では、私から1点。このB班においては、主に1400例等の解析については、既存検体からの解析を始めると思うのですけれども、非常に多くの機関が参画していく中で、既存検体の保存状況等についてはどのようなコンセンサスでやれるか、簡単に各研究班で一言ずついただければと思います。
○柴田参考人 まず、消化器がんですけれども、先生御指摘のように、複数の研究グループあるいは医療機関で収集されたサンプルを使いますので、クオリティーコントロールは難しいのですけれども、凍結保存された検体を使いまして、DNAのクオリティーなどを参考に、それでなるべく質の高い核酸を使って解析したいと考えております。
○中釜委員長 南谷参考人、お願いします。
○南谷参考人 血液腫瘍はちょっと特殊な事情がありまして、末梢血をノーマルコントロール、正常対照として使えないという事情があります。そのため口腔スワブを使うわけですが、実は口腔スワブの中には白血球の混入が意外と多く、混入が少ないことを確保しなければ高価な全ゲノム解析に回すことができません。そのような事情がありまして、一度中央に全部検体を集積するというプロセスを経ます。その際にクオリティーコントロールを行うことができますので、DNA及びRNA等、クオリティーコントロールを行い、かつ腫瘍の混入が少ない正常対照を持つものをこちらでピックして、全ゲノムに回すことを計画しております。
○中釜委員長 ありがとうございます。
では、加藤参考人、お願いいたします。
○加藤参考人 ありがとうございます。
小児がんでは、大多数の検体がバイオバンク・ジャパンに保存されているものを用いておりますので、そちらで既に検体の変異数が確認されております。それ以外の検体も含めて、一旦東京大学に集めて、そこでクオリティーチェックをした上で検体提出いたしますので、品質の良いデータが得られると期待しています。
○中釜委員長 松田参考人、お願いいたします。
○松田参考人 よろしくお願いします。
希少がんグループでは、DNA、RNAの品質評価を行った上で、良いものを優先して解析に回すということで行っています。
また、凍結切片を作製して、試料のコンテンツ等も同時に評価を行いますので、コンテンツが高いものを優先順位に上げたいと思っています。
以上です。
○中釜委員長 ありがとうございます。
森参考人、お願いいたします。
○森参考人 我々のチームは、保管状態がマイナス80度よりも低いマイナス140度とか、あるいは液体窒素であるとか、そういう超低温で保管されたものを原則として使うということと、ほかの委員の先生方がおっしゃられておりますように、核酸のクオリティーチェックなどで判定したいと考えております。
○中釜委員長 分かりました。
最後、河野参考人、お願いいたします。
○河野参考人 呼吸器腫瘍グループでも、これまでの先生と同様でありますけれども、基本的にはバイオバンクなどで適切に保存されている検体を中心に用います。手術検体を用いるということで、DNA、RNAのクオリティーあるいはクオンティティーはある程度確保できるのではないかと考えております。
○中釜委員長 ありがとうございました。
ほかに委員の先生方から御意見、御質問ございますか。よろしいでしょうか。
続きまして、最後にC班:解析班になります。井元先生、説明をよろしくお願いいたします。
○井元参考人 こんにちは。ヒトゲノム解析センターの井元でございます。プロジェクトマネジメント責任者の片山も同席させていただいています。
我々の研究課題は「全ゲノム情報を患者に還元するためのゲノム・臨床情報基盤の研究」というタイトルでございます。非常に責任の重い、重要なテーマをいただいたと思っておりますが、研究分担者をここに書かせていただきましたとおり、この重要なミッションを遂行するのに必要なノウハウ、能力、経験を有している。特にデータサイエンスや情報科学者が中心の研究班を組織しました。どうぞよろしくお願いいたします。
次をお願いします。この情報基盤をつくるというところで、我々は3つの研究項目を立ち上げました。この3つの研究項目をそれぞれ連携させながら進行することで、目的を達成いたします。このスライドは、研究項目(1)の統一解析パイプラインの構築と運用ということを表しています。統一解析パイプラインと申し上げますと、シークエンスの生データ、FASTQファイルからアライメントして、バリアントコール、VCFファイルを得るというところが1次解析と言われるところですけれども、もちろん我々の開発項目(1)のほうで、シークエンスデータそのもののクオリティーチェックを行います。
そういう意味からも、先ほど研究B班の最後で少し話題になりましたクオリティーのところに、我々のデータのクオリティーチェックというところからも貢献できると考えています。
また、スパコンを最初に書いていますけれども、現在有している計算インフラを有効に活用するというところで、滞りなくスパコンを使いながら1次解析をスタートしますけれども、統一解析パイプラインとしましては、このスパコンの上で高度に並列化したもの、プラス、クラウド上に将来移行するものを並列で構築しまして、徐々にクラウドへの移行を進めていくという計画でおります。
この右下のところに解決すべき課題を載せておりますけれども、今回は一つ一つ説明いたしません。
次、お願いします。ゲノム情報はデータセンターのほうに集約されていきますけれども、臨床情報についても同様です。研究項目(2)は、臨床情報収集基盤の開発という項目を立てております。これは、サンプルを供出いただく医療機関から、その臨床情報を、EDCを使ってデータベースに登録していただくというところでございます。ただし、現場の作業負担を考えながらやっていかなければならないと考えておりますし、セキュリティを確保したネットワークが必要だと思っています。
また、将来的には電子カルテの情報を、APIを規格化することで自動的に集約するシステムが必要ですけれども、ここはできる医療機関、可能な医療機関からスタートできればと考えています。この臨床情報は、患者還元のレポート作成に活用されるという流れになります。
研究項目の(3)としましては、これはデータ共有の話にもつながりますけれども、クラウド上で解析を行う。2次解析が主なところだと考えています。真ん中のほうにポータルサイトと書きましたけれども、データ解析の進捗の具合、それぞれの成果の具合が一目で分かるようなポータルサイトを準備しまして、各個別の班の方々にお返しいたします。
また、2次解析領域をクラウド上につくりまして、高度な2次解析につきましては、それぞれの研究班のがん種の特徴もあると思いますので、それぞれの研究班の方々と議論させていただきながら、2次解析のラインナップについてはそろえていきたいと思っています。
また、A班のところで少し話になりました、新しい情報をどうやって返すかというところでは、このポータルサイトで一括してゲノムの変異の情報を持っておりますので、例えばある周期の治療標的となるような変異が見つかったというときには、一括して検索することも可能です。こういうふうな形で、A班の先生方、もちろんB班も関係するのですけれども、協力して事業を進めていきたいと考えています。
以上です。
○中釜委員長 ありがとうございました。
では、ただいまのC班の御発表について、御質問、御意見ございますでしょうか。
中村委員、お願いいたします。
○中村委員 データセンターの意義というのは非常に大事だと思うのですけれども、既にゲノムセンターではサービスを提供されておられるので、バリアントコールまではすぐにできると思うのですけれども、恐らく次のAMEDの研究班にも関係すると思いますけれども、クオリティーチェックのデータを速やかに返却するというのは非常に大事だと思いますので、どの時点になればクオリティーチェックのプログラムを動かすことができるのかと、基準はまた別に決められると思うのですけれども、実際の運用というのはすぐにできるのでしょうか。
○井元参考人 はい。クオリティーチェックに関しましては、一番簡単なアライメントレートとか、そういう基本的なところは、まず最初にデータを受け取って、すぐにクオリティーチェックをかけて解析班のほうにフィードバックすることが可能だと思います。ただし、クオリティーチェックで引っかかったからといって、解析を止めておくのも時間がもったいないということもありますので、余りにひどいクオリティーじゃない限りは、そのまま解析を進めてしまったほうが、実際には我々の手間としては少なくなるような気もしています。
○中村委員 ありがとうございました。
もう一点よろしいでしょうか。
○中釜委員長 お願いいたします。
○中村委員 臨床データを集めるというのは、この場でもずっと議論されているのですけれども、非常に多くの施設が絡んでくる場合には、APIで集めてくるというのは難しいと思うのですけれども、APIをつくるボトルネックになるのは、施設数の多さというのがかなり問題になるとお考えなのか、それともある程度何種類かに限られているので、1つ壁を乗り越えれば、同じような電子カルテシステムとか画像ストレージシステムを使っていると簡単にできるということなのか、どうお考えでしょうか。
○井元参考人 恐らくは、標準化されている電子カルテのシステムが非常に重要だと考えています。そういう意味では、SS-MIX2、これは大江先生も共同研究者に入っていただいていますけれども、そういうことを導入された医療機関は、比較的早く導入できる可能性もあるのではないかと思っています。
○中村委員 どうもありがとうございました。
○中釜委員長 ありがとうございます。
ほかに御質問ございますか。
葛西参考人、お願いします。
○葛西参考人 全体を通して、いろいろ御説明ありがとうございます。
ちょっと気になったのが、これはどちらかというと厚生労働省、AMEDにお願いがあるのですが、A班、B班みたいに、ある意味探索的に研究を進めていかざるを得ないものと、C班のように、私も出自はどちらかというと政府系の研究をするような組織なので、行政の政策目標に到達するためにインフラを作っているということと目的が違うと思うのですね。そういう意味では、成果が何なのかということをまずはっきりさせる必要があると思います。
それと、もう一点お願いとしては、恐らくC班というのは、医療情報から、セキュリティから、インフラストラクチャー、パイプラインとか。ここは、今、EC2しか書いていないですけれども、公募要領にはオーケストレーションとか、とんでもなく専門性が高いものが大量に入っています。今、先生はSS-MIXと言われましたけれども、データヘルス改革分野ではSS-MIXに限定することはないと思っていますので、そういったことは今後ディスカッションしていけばいいと思うのですが。
いずれにしてもPD/POは実際に専門委員会が管理するまでに2か月ぐらいのタイムラグがあるので、その間、研究者の方は素早い判断が非常に大変だろうなと思います。AMEDと厚労省にぜひお願いがあるのが、こういった多様性に基づく対応ができるPOを配置しないとできないと思います。
これは、医療面だけではなくて、個人情報保護であったり、クラウドなどかなり最先端の技術ですから、私ももちろんですけれども、1人の専門性でやるものではないですから、改めて専門委員会等にPOがどういう体制で管理していくのか。
それから、もう一個お願いがあるのが、公募要領を見ると、進捗の管理が全部同じように管理されているのです。A班、B班みたいに探索的にやろうとしているところは、そんなに緻密な進捗管理は必要ないと思うのですが、C班はある意味行政事業目標に向けてインフラをつくっていますから、きちんとした進捗管理が必要になります。なので、改めてAMEDのほうで、研究事業に関する進捗管理の、ある種ルールをきちんとまとめる必要があるのではないかということを考えています。これは私からの意見なので、ぜひ御検討いただいて御判断いただけるとありがたいなと思います。
以上です。
○中釜委員長 御指摘ありがとうございます。
現時点で、今の御指摘に対して厚労省のほうからお答えできることはありますか。
○がん・疾病対策課長補佐 葛西先生、御指摘ありがとうございます。
C班の成果を明確化するということに関しましては、検討させていただきたいと思います。
また、AMEDにおけるPOの管理については、AMEDのほうに御回答をお願いしたいと思いますけれども、AMEDの方、御参加されていますでしょうか。
○中釜委員長 では、AMEDの参加されている方、オブザーバーから御発言ございますか。お願いします。
○AMED AMEDでございます。
C班の体制管理ということですが、AMEDとしましては、POの中釜先生をサポートできるような専門家を外部の調査員として委嘱しまして、AMEDの担当が月1回開催する予定の合同本会議に出席していただくことを検討しております。現時点で具体的な候補者名は特にございませんが、中釜先生と御相談して選定していきたいと考えております。
○中釜委員長 よろしいでしょうか。
今、葛西参考人から御指摘のように、インフラの整備については一定のタイムラインを持って構築していく必要があるかと思いますので、その辺りも適切に的確に御意見を伺いながら磐石な体制を構築していくという方向性かなと理解しました。
ほか、御意見ございますでしょうか。よろしいですか。
では、以上でAMED研究班についての発表が終わりましたので、続きまして「全ゲノム解析等に係る厚生労働科学研究班」より資料4の説明をお願いします。先ほど厚労省から説明がありましたとおり、厚労科研の専門WGで専門的詳細について方針等を策定し、今回提示していただくことになります。専門委員の先生方におかれましては、各専門WGの方針案につきまして御協議いただきますようお願いいたします。
また、AMED研究班におきましては、本協議結果に基づいて研究を実施する形になりますので、よろしくお願いいたします。
では、この厚労科研の患者還元WG班長の河野先生から、まずお願いいたします。
○河野参考人 今、3つのWGができておりまして、患者還元WG、解析・データセンターWG、ELSIのWGがございます。私が1つ目について説明させていただきたいと思います。
次のスライドをお願いします。こちらが今回、AMED研究を開始するために、初めに方針決定が必要ではないかということで、厚労省のほうから本研究班に対して出されている課題です。患者還元WGの課題につきまして、次のスライドで説明いたします。
次のスライドをお願いします。
次、お願いします。大きくは、患者還元の中では、全ゲノム解析結果のうち科学的に妥当で、なおかつ実臨床の形で診療に役立つデータを還元していくということが大きな方針として示されていると思います。
そのために、全ゲノム解析等の対象とする患者あるいは実施機関について、まず1つ目ですけれども、その対象症例をどうするかということですが、これはバンクの試料を後ろ向きに解析するものと、前向きに同意を取って解析していくという両方あると思いますが、特に前向き解析では同意をきちんと取るということ。
そして、今回、フィージビリティということで、いかに稼働できるかを分かっていくことも大事なので、全ゲノム解析のために必要な質・量の検体を見極めて進めていく。
また、もちろん難治性がんが今回主体として選ばれていて、なおかつ解析開始時に生存していて患者還元ができるということが大きな主題になっているとは思います。ただ、一方で、今回のロードマップに示されているように、今後創薬などに生かせるデータベースをつくるということも、同じように大きな課題となっておりますので、実際にはあるがん種においては十分なゲノム情報がまだまだ集積されていない。そういう状況のがんに対しては、必ずしも患者さんが生きていなければいけないということでもないのではないかと、我々のワーキングでは考えております。
また、2つ目、IC、エキスパートパネル、2次的所見への対応などを考えると、全ゲノムの今後の患者還元ということでは、がんゲノム医療中核拠点・拠点病院が望ましく、連携病院はさらにそこと協力して遂行することが大事ではないかと思います。
また、臨床情報の収集ということも先ほど議論がございましたけれども、こちらに関しては、特に患者還元のWGや、あるいは今回の研究にいろいろ参加されている臨床の先生などと一緒に、項目や入力の仕方、そして負担軽減やデータの均一化などを考えていくということが大事で、今後継続的に、さらにICの手法なども議論しながら改良していくことが大事だと思います。
次のスライド、お願いします。一方で、今度は実際に検体を出検してデータを得るというところでありますけれども、特に今後前向きに患者に還元していくということが重要だと思いますので、そうしますと、何よりその検体の採取であったり、処理、移送、保管、管理に関しては、品質保証の下で、なおかつ臨床現場でfeasibleな手法というものを確立していくということが大事だと思います。
また、初年度には難しいかもしれませんけれども、進行期の患者さんはより治療法というものを求めると思いますので、今後は生検試料などにもチャレンジしていくことが必要ではないかと思います。
また、C班が行います統一解析のパイプラインですけれども、これはあくまでも標準化といいますか、ある程度標準的なパイプラインであるということは理解しますが、一方で、患者還元のためには、どのように結果を検証していって、そして確かなものを患者さんに還元するかという手法を考えていくことが重要であると思います。
また、ゲノム解析、全ゲノムシークエンス解析などは、企業への受託ということになりますが、そのときには品質保証ができること。もう一つは、実績がある程度あるということを重視するということが大事であると思います。特に、衛生検査所登録をしているなどのものがあったほうが望ましいと思います。
また、徐々に前向き解析が進んでいくということでありますと、運用面での対応というものも企業と一緒にディスカッションして進めていっていただくことが大事ではないかと思います。
また、3点目、4点目、下にポツがついておりますけれども、今回非常に多数の検体を、またある程度決まった予算の中で解析しなければいけないという現場の事情もございます。ただ、ある程度価格を安くするためにシークエンスの深度(デプス)を減らすことはよろしくないと思っておりまして、腫瘍内の不均一性に耐えられるような深度というものを確保して進めることが大事であると思います。
また、先ほどからずっといろいろな専門委員の方から御指摘がありますけれども、QCの手法を確立していくということ。これは非常に大事でありまして、まずは受託企業に対して、きっちりと品質のよいデータを届けるように指示するということが大事だと思います。ただ、一方で、今回、血液のがんのグループなどから御発言もありましたけれども、がん種それぞれの事情というのもありますので、実際には標準化手法だけではなくて、あるがん種に対しては質や量などが限られることもありますので、それぞれの状況に合わせた別の手法というものを準備し、委託するということも実際の稼働には必要であると思います。
また、解析センターからはQCデータが共有されるということを聞いております。このQCデータを実際に見ることによって、こういうサンプルや手順では難しいとか、あるいは委託要件、これは契約で進むものなので、途中で変えることはなかなか難しいかもしれませんけれども、今後、前向きに全ゲノムシークエンスが継続的に進むためには、こういうところを改善していくべきだという絶えない議論が必要であると考えます。
以上です。すみません、長くなりました。
○中釜委員長 ありがとうございます。
続きまして、解析・データセンターWGから井元先生、お願いいたします。
○井元参考人 解析・データセンターWG長の井元でございます。
次のスライドをお願いします。3枚のスライドに分けて記載しています。まず最初のスライドは、統一解析パイプラインについての要件をまとめたものになっています。先ほども少し申し上げましたけれども、各がんについて、今、やられている治験であるとか、どういうポイントを解析するとか、様々な目的の違いがあるでしょうけれども、その最大公約数的な処理を中央で一括して行うことが、この統一解析パイプラインの目的でございます。
また、その構成要素は、それぞれのプログラムが連なった一連のものになりますが、プログラム、解析のパラメータとかは、ほかのスタディーとの比較ということも検討しながら、国内外での動向を鑑み、将来のデータ共有、各種データベースとの適合性を図りながら、一般的なものを選定することにいたしました。
また、中身はオープンソースであること。かつ、品質を担保するために、中長期的に管理・運営する枠組みを検討することといたしました。
また、先ほどから議論に上がっていますとおり、品質保証、品質管理は非常に大切な面でございます。FASTQファイルのアライメント率等の品質に関する項目をレポートする機能を必ず有することと、一番最後に書きましたのは、各研究班での個別の研究目的のためには、独自の後処理とか偽陽性のフィルタが必要になっていきます。そういうものに関しましては、各研究班と連携して協力して構築しつつ、最終的な判断は各ユーザーが行うことができるような体制を構築することといたしました。
次のスライド、お願いします。ゲノム解析自身につきましては、先ほどから話が出ておりますように、腫瘍は120×、正常細胞は30×のデータ、これはかなり深いデータでありますけれども、年間に1万症例程度解析できるような体制を整えること。1次解析です。
また、1次解析の結果、これは進捗管理もそうですけれども、データ提供機関と速やかに共有することが求められます。
また、解析の進捗につきましては、データポータルを通して迅速に共有できる仕組みを検討すること。
生殖系細胞の変異につきましては、ELSIと十分に連携して、その提供範囲などを検討することといたしました。
先ほど申し上げましたとおり、現在のインフラは十分に有効に活用しつつ、クラウド移行を目指したシステム構築を行うことということを、真ん中辺に広く書いております。
最後から2番目は、2次解析のところですけれども、先ほどと少し重なりますけれども、解析センターのフォーカスの中にございます。研究者が高度な2次解析を各がんの特徴を生かしながらできるように、そういう体制を整えるということといたしました。
また、人材育成の分野は非常に大切でございます。オン・ザ・ジョブ・トレーニング的になると考えられますけれども、人材の確保及び育成を十分に行うことといたしました。
3枚目をお願いいたします。最後のスライドは、データセンターの機能に関するスライドとなっています。
まずは、解析・データセンターが、コンプライアンスとかガイドラインへ適合しているかどうかを判断する仕組みが必要です。そのためには、政府統一基準とか医療安全性ガイドライン、情報セキュリティに関する監査を行う必要もあると考えています。
また、受託会社からデータのアップロードを受けることになります。それを管理できるようなテクノロジー窓口というべき組織を設置することも必要ではないかと考えます。特にセキュリティに関しましては、ネットワーク接続の環境の整備を行う必要があります。
また、使用頻度が各データについて、大きく異なることが想定されます。例えば、シークエンスの生データは、最初に解析してからしばらく使わないことも考えられます。そういうときに、そのアクセス頻度に応じた管理体制を整えることも必要かと考えています。
臨床情報の収集については、臨床現場でfeasibleな体制を整えることが必要であることと、APIによる自動収集についても検討して実施を開始するということ。
得られたデータに関しては、今後、バリアントコールもしかり、臨床情報と突合してのクリニカルな解釈もしかり、人工知能を活用した将来が必ず来ます。既に来ています。その意味では、それによるデータの形式の統一化というのは、学習をできるだけ早く行うということのために必須のものであると考えていますので、統一化ということを書いています。
また、情報システムは最近の技術をいち早く取り入れることができるように、拡張性が高い方式で整備することといたしました。
最後に、データボータルを通して事業の進捗や成果を定期的に公開することを要件といたしました。
以上です。
○中釜委員長 ありがとうございました。
少し長くなりましたのと、この2つのWGがお互いに多少関連しますので、一旦ここで切りまして、2つのWGの報告について、順次御意見、御質問を伺いたいと思います。まず、患者還元の河野先生からの御発言について、何か御質問、御意見ございますでしょうか。
中村委員、お願いいたします。
○中村委員 出されたデータのクオリティーをチェックするというのは、このプロジェクトで非常に大事だと思うのですけれども、出されたデータの質、Q30、Q20が何%と書かれていましたけれども、解析企業から出されたデータの90ギガ、360ギガと書かれていましたけれども、ミニマムエッセンシャルなのか、その程度あればいいのかというのはすごく重要なポイントで、もし90ギガというところが80ギガしかなければ駄目なのか、80ギガあるいは300ギガでも、バリアントコールがちゃんとできればいいのかというのを決めておかないと、RNA-Seqも2000から3000万ですか。それも2000万というのがミニマムな数字なのかどうかということもはっきりさせておいたほうがいいと思うのです。
そうでないと、1900万だったら駄目なのか、1800万だったらどうなのかという議論になるので、データのコントラクトというか、シークエンスのコントラクトを結ぶ前に、ミニマム幾らという形で契約して、少なくともそのデータ量を確保してもらうという考え方が必要だと思います。
もう一点は、先ほどCのところで進捗管理という話が出ましたけれども、1400症例というゴールがあるわけですから、ある程度の進捗管理は必要だと思うので、井元先生、少し触れられましたけれども、AMEDの班でそういうものをちゃんとモニタリングしていくということが必要ではないかと思いますので、よろしくお願いします。
○中釜委員長 では、最初の御指摘に対して、河野先生。
○河野参考人 御指摘ありがとうございます。
まさに大事な点だということは思っております。今回、書かせていただいているQCの条件というのは、昨年度の先行研究のときに遺伝性腫瘍、このときには血液のDNAなので、一番扱いやすいDNAということになると思いますけれども、この中で委託させていただいた1つの条件の例というものを示しています。このときには、この委託条件での稼働が委託会社においては可能だということが分かっておりますので、それを例として、今回挙げさせていただいております。
ただ、実際に本研究班が始まって、まだすぐですけれども、その中で議論している中でも、これが正直、固形腫瘍あるいは血液の腫瘍、口腔スワブなども含めたときに、全て達せられるのかというのは、現時点ではここでは明言できません。7月中にその要件を決定するということだったと思いますので、各がん種、今回御専門の先生が採択されていますので、実際にどういうデータ量というのが契約するときに適切なのかというのを議論して、そして昨年度のQC区分というものを見極めながら、最終的には決定するのがよいのかなと私は思います。
○中村委員 ありがとうございます。
データのアウトプットというのは、ある程度コントロールできると思うので、そんなにがん種ごとに違うとは思いません。出された結果の解釈とかはいろいろ違ってくると思いますけれども、コントラクトをする際に、例えば360ギガで約束しておいて、300ギガしか出なかった場合に、追加でデータを出してもらうのか、ある程度中身を見て、それでいいと言うのかという議論は、もう始めておかないと、すぐに解析が始まると思いますので、そこはぜひ検討していただければと思います。
○河野参考人 大変に失礼しました。
標準的な出検ができる形に関しては、ほぼここに書いている形でいいのではないかと思います。ただ、実際には、血液のDNAと違ってDNA量が少ないという場合には、これがfeasibleであるかどうかというのが分からないので、その2行を重ねて書かせていただいておりますけれども、それぞれの研究班の事情というところで、例えばDNAが足りなかったときには、恐らく今の標準化手法が適応できなくて、何らか少量のDNAのプロトコルにのっとらないといけないということになると思います。そのときに、この標準案としたデータ量は保証してくれるかということが、今のところfeasibleであるかどうか分からないので、その部分の考慮も若干残しているということですが、とにかく早急に決めさせていただきたいと思います。
○中村委員 ありがとうございました。
○中釜委員長 今の河野先生の御意見を整理すると、検体を提供する側の条件によって、十分な検体量があれば、それに対してはきちんとしたシークエンスの研究報告を求めるということと、検体量が提供する側が足らない場合の対応をどうするかということを、がん種ごとに少し詰めるという理解でよろしいですか。
○河野参考人 そのとおりです。
○中釜委員長 ほかに御質問ございますか。
宮野委員、お願いします。
○宮野委員 河野先生が御説明になられました患者還元WGの(2)のスライドですが、この前にも検体の収集とか品質保証のところで、feasibleな形でやるということで、その文章を私、専門外の立場から見ますと、個々の研究機関、施設の勝手でやっていいのだとも読めてしまうのですね。今まで御説明いただいたところでは、そういう気持ちではないということはよく伝わってきておりまして、また、今日の会議の冒頭の部分で、森正樹委員のほうからも、検体の収集とかクオリティーとか保存とか、施設ごとでばらばらとか、そういう現状について御心配された発言がございました。
ここの部分は、ガイドラインをつくっていくといった文言で、各施設が文書を読んだときに勝手にやっていいのだと取られないように、文書の表現を変えていただくというのは無理なのでしょうか。
○河野参考人 確かに、feasibleという言葉に全てが逃げているような形に取られてしまったら、大変に申し訳ありません。一方で、先生ももちろん御理解のように、我々も一番驚いているところですけれども、今回、患者還元という点がかなり前面に出されていて、これは昨年度までの議論の資料などを見させていただきますと、十分な質と量が担保される検体に対して全ゲノム解析を研究として行うというのが、もともとの基本の方針として書かれていたと思います。ただ、今回ですと、患者さんが生存されている、あるいは難治性のがんであって、実際に返せる方を選ぶという、いろいろな条件が加わってしまいますと、今度は十分な質と量が担保される人にだけ結果を返す体制をつくっていくのかという議論も逆に出てまいります。
もちろん、サンプルの品質の管理ということがちゃんとできなければ駄目だということに尽きるのですけれども、現実問題として、今スタートするこの時点、7月中に決めなければいけない課題として挙げていただいたときに、我々のWGとしてはそこまで回答がどうしてもできなくて、今回採択される班というものも、分かったのはつい最近ですので、現場の意見をどうしても聞かざるを得ないと考えまして、すみません、feasibleという言葉を残しております。
ただ、何でもいいということを言っているのではなくて、もちろん解析グループ、まず、企業には、そもそものDNAのクオリティーというところからチェックしていただいて、これでは標準化プロトコルでは無理ですということが、まず、そこで検体に対しても言われてしまうと思いますし、あと、中村委員がずっとおっしゃっているように、実際、データが返ってきた後、そのQC情報を研究者と共有するということ。こちらも、もちろんそこで差替えができればいいのですけれども、実際にはそれぞれ単価契約として契約していかなければいけないというところで、マッチングし終わったもので契約するということはどうしても難しい。また、少量のDNAのときにも、その契約は難しいのではないかという御意見もありまして、今回の採択班の先生と議論させていただきたく思っています。
○中釜委員長 少し整理すると、フィージビリティに関しては、患者さん、あるいは検体の要因によって考慮すべきフィージビリティという側面と、解析パイプラインとして、がっちりリジッドな方法を設けるという両方の側面があると思います。河野先生のご説明は、検体要因として、例えばがん種ごとに考慮すべき点については、明確なガイドラインに明記する形で、feasibleが曖昧にならない形はしっかり取るべきかなと思いますので、そこは厚労科研の中でも研究班の中で少し検討させていただきたいと思います。ありがとうございます。
森委員、お願いいたします。
○森(正)委員 宮野先生からサポートいただいて、ありがとうございました。
この研究は国家プロジェクトということで、将来的には中核病院を基本として、日本全国の病院に情報が行くようにということだと思います。
それで、本当に細かいことで申し訳ないですけれども、中核病院を中心とした、いわゆるハイボリュームセンターは、手術標本からサンプルを採るまでの手順というのは、多分どこもほぼ同じだろう。そこに大きな違いは多分ないだろうと思うのですが、実際の現場では、その標本を採って標本整理をして凍結切片を出す、あるいは血液サンプルを出すというところは、大学院生とか臨床助手という人たちが担うことが多くて、今、御存じのように、外科は非常に人手不足で、ついついサンプルの処置が後回しになったりするということは、私たち、よく経験していることなのです。
ですので、もちろん核酸のクオリティーコントロールがオーケーであればオーケーという考えもあるかもしれないですけれども、そうではなくて、例えば何時間以内にはきちんと処理しましょうとか、そういうことは現場では難しいと思いますけれども、方針として、できるだけ何時間以内には整理してもらいたいということは要望として出すとか、将来的にそういうものが普及していけば、ちゃんとガイドラインみたいなものをつくっていくということをしないと、サンプルの一番最初の重要なところが施設ごとに変わってしまう。
大きいところで変わることは絶対ないと思うのですが、細かいところではかなり変わってしまうところがあるものですから、私、その辺を昔から非常に心配しているところですけれども、河野先生のいい班(WG)ができたので、ぜひその辺も含めて検討していただければ大変ありがたいと思います。
以上です。
○中釜委員長 河野先生、この点で何かコメントございますか。
○河野参考人 確かにそのとおりだと思います。まずは、ある程度ガイドラインとなるような手順といいますか、そういうものを集約していきたいと思います。
○中釜委員長 日本病理学会がガイドラインをつくっていた、ゲノム解析のためのある一定の指針があったかと思うのですけれども、そういうものも参考にしながら、患者還元の中でのフロー、検体の採取の方法については、少し検討させていただければと思います。ありがとうございます。
ほかに御意見ございますか。
天野委員、お願いいたします。
○天野委員 ありがとうございます。
2点ございます。
1点目ですが、先ほどのAMEDのA班でもお尋ねしたことですが、結局、新しい知見が得られてきた場合、それをどのようなタイミングで患者さんに返していくのか、患者さんにとって非常に関心がある部分だと思うのですが、その辺りは今回の患者還元班で検討する、もしくはポリシーみたいなものは何かあるのでしょうかというのが1点目の質問になります。
○中釜委員長 まず、1点目、お願いいたします。
○河野参考人 こちらに関しては、患者還元班との意見交換ということが最も大事だと思います。基本的にその治験情報がどこまで早く公的データベースに入ってくるのかというところもありますし、実際にはエントリーの基準などもありますので、バリデーション、確認をどういうふうに行うかなど、いろいろな視点が必要となりますので、まずは、第1には患者還元班の先生や、あるいは臨床の先生との意見交換、このワーキングとの意見交換というものが大事だと思います。
○天野委員 ありがとうございました。
2点目ですが、患者還元する場合にエキスパートパネルをかませることになっていますけれども、現状でも遺伝子パネル検査等においてもエキスパートパネルの標準化、質の担保というのが課題になっていると認識しているのですけれども、その辺りの質の担保とか標準化というのは、何か検討する予定とかありますでしょうか。
○河野参考人 申し訳ありません、現時点ではそういうことは検討しておりませんでした。まずは、スタートできるというところが今回主眼とされておりましたので、今後検討の課題とさせていただきたいと思います。
○天野委員 ありがとうございます。よろしくお願いします。
○中釜委員長 ありがとうございます。
ほかに御質問、御意見ございますか。よろしいでしょうか。
続きまして、解析・データセンターWGの発表に関して、何か御質問、御意見ございますでしょうか。
葛西参考人、お願いいたします。
○葛西参考人 この分野のインフラですね。私、ついついこの分野で発言しがちなのですが、ここに書かれた程度の内容では全然不足している部分がたくさんあると思うのですね。それは、何らかの形でシステム要件・仕様等は精緻化した上で、当然専門委員会で御議論いただいていくということになると思うので、別の文書化をする必要があると思います。
その前に、この厚労科研でやるワーキングの中で一番重要なポイントとして2つありまして、1つはパイプラインということです。パイプラインは、テクノロジーの技術者としては少しふんわりしていて、パイプラインを例えばクラウドの何らかの仮想サーバー、たまたまAMEDの班ではEC2というサービスの名前が出ていましたけれども、仮想サーバーに乗せるプログラムのことを言っているのか。
最近ですと、私は決してそういうふうには思いませんけれども、ここの資料ではイルミナのシステムなどを参考にしながらと書いてありますが、諸外国のクラウドサービスの利用方法からすると、単純にクラウドリフトをする。いわゆる現行のオンプレミスのものをただクラウドに乗せるということではなくて、当然クラウドシフトしていく。場合によっては、クラウドネイティブな状態を使うということが必要になります。
クラウドネイティブになると、一番大きなものは、ここで並列化処理と書いてありますけれども、正確にはオーケストレーションですね。スパコンでも並列処理はできますから、オーケストレーションするという、いわば仮想サーバーが有機的に連携して、1つのカバレッジの目安で処理したものとか、1つのコールの処理をしていたものが同時並行的に動いていく。場合によったら、ファイルのリードももっと細かくして、特にディスクのほうに比較的処理速度が遅くなることが多いので、CPU、GPUが幾ら速くても処理が遅くなる可能性があります。
そういったことを考えたときに、いわゆるオーケストレーションアーキテクチャをどういうふうにつくっていくかという議論を先にしなければいけなくて、オーケストレーションであったり、コンテナ、もうちょっと技術的にオープンな技術とここに書かれているので、Kubernetesであるとか、そういったオーケストレーション処理するものに徐々に移行できるように、パイプライン、イコール、ワークフローを構築していかなければいけないと思います。なので、パイプラインプログラムのことではなくて、パイプラインというある種処理の巨大なサービスの有機的な集合体であるということを先に定義しないと、つくっているものが全然巨大化できないというか、拡張化できなくなる可能性があるので、私は非常に注意したいと思います。
それから、もう一個、イルミナのシステムなどと書いてあると同時に、特定の現場に依存しないということがかなり重要になります。クラウドも、最近ですと特定の大手クラウドが中心になりがちですので、使い分けが大事だと思います。ポータルの部分を得意とする、AIの処理を得意とするという、それぞれ使い分けが大事で、そうなったときに、今後、この事業化をするときにシステムをつくる際には、当然1つのベンダーであることは絶対あり得ないわけで、それぞれどういう区切りで物をつくっていくのか。
そして、日本国内でどういう能力がある企業があって、そういうところをうまく使い分けて物をつくれるかということを戦略的に要件化する必要があると思うので、この厚労科研では、そういったシステム要件と事業要件をどうやって組み立てるかということが成果になると思います。そういう意味で、今すぐできることではなくて、3年後に事業化するに当たって、どういうふうに実現するかというあるべき姿を捉えたシステムアーキテクチャとパイプラインアーキテクチャをつくらなければいけないと思うというのが1つの意見です。
それから、もう一個重要なのが、APIの話、よく議論になるのですが、APIと言っているのは、もう少し専門的に言うとRESTアーキテクチャですね。RESTというのはウェブアーキテクチャであることが大事だと思います。なので、SS-MIXのデータ標準を否定しているわけではないのですが、SS-MIXというちょっと前にクラサバ時代につくったアーキテクチャだけでは足りなくなりますので、場合によっては、当然FHIRであるとか、いわゆるRESTアーキテクチャに近い言語でAPIを自動収集することが必要になります。
ただ、FHIRは、各国自由につくっていいようなガラパゴス的なものを許容している謎の標準というか、かなり自由につくっていい標準という考え方で、事実上標準ではないのですね。なので、APIをどうやってメンテナンスしていくかというのは、医療分野は非常に複雑でございます。臨床情報はたくさんありますから。なので、ある程度スコープをした上で、APIがメンテナンサビリティ、維持・保守するに当たって持続性があるような状態でAPIを開発できる。何らか保険診療が変わったりするたびにAPIを変えなければいけないということになりますので、その都度にセキュリティチェックをかけることが必要になるので、こういった事業の持続性を捉えた技術要件を立てていくことも大事になると思います。
以上のようなことを含めた詳細化をしていく必要がありますので、ここに書かれていることが全体的におかしいとは思いませんが、これを実現するためにどう詳細化するかという議論をどうやって進めるかというのは、専門委員会の中で考えていく必要があると思います。
それから、もう一個、実は実装していないことが多いのですね。システムというのは見えないブラックボックスが多くて、よくよく見るとシステム開発ベンダーさんが言ったとおり全く実装されていない。これは、研究者の方も含めて分からなかったという。こういった実装されていないことについて、私もたびたびあるのですが、ペナルティーもなければ問題視もされないので、事実上、構築しているベンダーさん、ちゃんとつくっていないじゃないですかということがあっても、それをどのようにコンプライアンスしていくかということも大事になるかと思います。
以上です。
○中釜委員長 重要な御指摘、幾つかありがとうございます。
井元先生、現時点でお答えできる範囲でお願いいたします。
○井元参考人 ありがとうございます。葛西先生に大変重要な御指摘をいただいたと思います。
大きく3点あると思っておりまして、パイプラインのところにつきましては、全くそのとおりで、オーケストレーションを考えてグランドデザインをしっかり行わないと、これは今後、1万と言わず10万という形にはなっていかないと思っております。それも私、はっきりと同意いたします。
2番目のクラウドベンダーに関しましても、常々私も思っておりまして、データを置いたところから逃れられないという、言葉は悪いですけれども、地獄のようなものになってしまわないような仕組みをつくることが、これは非常に大切だと思っております。
3番目のAPIにつきましても、メンテナンスすることが可能な拡張性のあるAPIになっていないと、今後、医療情報の大きな見解をフォローアップしながらということは絶対無理ですので、非常に大切な3点を御指摘いただいたと思っています。
ありがとうございます。
○中釜委員長 御指摘の点を、タイムライン、全体の行動計画を踏まえながら、しっかりとしたものをつくり上げていくという方向で臨んでいただければと思います。
ほかに御意見、御質問ございますか。
では、続きまして、3点目のELSI WGの班長 横野先生、お願いいたします。
○横野参考人 横野です。よろしくお願いいたします。今回、同様に分担としてELSIを担当していただきます田代先生にも同席していただいております。
今回は、ICF(同意説明文書)及び患者還元についての基本的な考え方について御報告させていただきます。今後、様々な分野の専門家の先生方、あるいは解析に関わっている先生方、当事者の立場の方にも御意見をいただきながら、具体的な内容については、さらに検討を進めてまいりたいと思います。
まず、ICFの作成に関してですが、統合指針、詳細については次のスライドにありますが、6月30日より施行されました「人を対象とする生命科学・医学系研究に関する倫理指針」に基づくことが前提になります。今回、それぞれの解析の研究班によって、内容にかなり多様性がありますし、また短期間のうちに解析を開始しなければならないという事情に鑑みまして、全体としてのICFを共通のものとして作成するというよりは、必須とする共通事項の範囲と内容を確認して、その部分に関してモデル文案を作成し、各研究班のプロトコル及びICFに反映していただくような形が望ましいと考えております。
必須とする共通事項としては、現時点では以下のようなものを想定していますが、各グループの先生方からも御意見をいただけましたら幸いです。具体的には、全ゲノム解析等実行計画の事業概要。そして、本事業の一部として実施する上で必要な研究目的についての記載。共通で収集する臨床情報の項目。それから、2次利活用等も含めたデータの流れ。検体の流れ。知財の取扱い。そして、患者還元といった項目になるかと考えております。患者還元については、次に詳しく御説明いたします。
各研究班からのフィードバックを得て中長期的にモデルICFを拡充して、今後の事業化に備えたいと考えております。
また、既存検体をお使いになる研究班も複数あるように思いますが、既存検体の利用については、昨年度のELSIワーキングで留意点を取りまとめておりますので、それを共有しながら進めていただければと思います。
ICF以外に本事業についての周知・広報、パンフレットとかウェブサイト等の準備が必要になってきます。ICFでは、各研究班の研究計画の説明が主体になりますので、本事業については、別途厚労省のほうで御尽力いただければと考えております。
次のスライド、お願いいたします。患者還元に関してですが、本事業における患者還元は、研究として実施するため、6月30日より施行されました新統合指針に基づいて行う必要があります。
この統合指針では、統合前のゲノム指針にありました「遺伝情報の開示」及び「遺伝カウンセリング」の規定に代わり、医学研究全体に共通の内容として、新たに「研究により得られた結果等の説明」という項目が設けられております。ここで言う「結果等」には、1次的所見、2次的所見の双方が含まれるという前提になっております。
統合指針の規定では、この説明に関しまして、結果等の研究対象者への説明方針を定めて研究計画書に記載すること、さらに、遺伝カウンセリングや遺伝医療の専門家との連携を含め、研究に係る相談実施体制を整備することが求められています。
では、次のスライド、お願いいたします。
本事業におきましても、以上の前提に基づきまして、これらの統合指針の規定に基づく対応方針を検討・整備することが基本となります。
なお、説明方針の検討に当たっては、既に具体的なプロセスや手順につきまして詳しく検討したものがありますので、これらを参照するということを前提としてお考えいただければと思います。特に、AMED小杉班の提言に関しましては、現在、別途厚労科研で改定検討をしておりまして、そこでは全ゲノム解析も想定した内容を検討していただいているということですので、これを特に2次的所見の開示対象等について参照していただくことになるかと思います。
また、こうした指針の統合等もありましたので、各解析の研究班の先生方向けにセミナー等を開催し、情報共有や共通理解、それから課題の把握を図っていきたいと思います。その際、統合指針の関連規定、それから、特に統合指針の中では全ゲノム解析に特化した記載というのはほとんどありませんので、全ゲノム解析の場合の留意点について、それから、今お示ししました、関連する報告や提言の内容について共有していきたいと思います。
また、こうしたプロセスを通じまして、全ゲノム解析結果の患者への還元に関しましては、従来、経験の蓄積が乏しいため、これらのプロセスを通して得られた実践を通じて、新たな知見を今後のガイダンスの作成や改定に活用していきたいと考えております。
ELSI WGからは以上です。
○中釜委員長 ありがとうございます。
ただいまの報告に関して、何か御質問、御意見ございますでしょうか。
天野委員、お願いいたします。
○天野委員 ありがとうございます。
1点質問でございます。検討の進め方についての確認なのですけれども、昨年もELSIのWGがあって、その際にしばしば問題になったのは、結局、実際に解析を行っている研究班のポリシーとか方針が明らかにならないと、そもそもELSI WGで決められないのだという議論がたびたびあったかと思うのですが、その辺りを今年は解消されそうなのでしょうか、どうでしょうか。
○横野参考人 今年度もそういった点は課題になってくるかと思いますが、今回、具体的に解析される研究班が決まっていますので、関係者の方々と意見交換しながら進めていければと思っております。
○天野委員 ありがとうございます。
○中釜委員長 よろしいでしょうか。
ほかに御意見ございますか。
では、神里委員、お願いいたします。
○神里委員 ELSI WGのほうで、ガイダンス、そして説明同意文書を進めていただいているということで、かなり心強く思っております。
それで、お聞きしたいのが、ELSI WGの役割の範囲というものを教えていただければと思います。と申しますのも、ロードマップにおいて、ELSIについてかなり幅広に盛り込んでいただきました。患者や市民参画の仕組みについての確保とか、あとは、もっと具体的な話でeConsentの話、さらに大きい話としては、法制度の在り方の検討ということも詰め込んでいただいているのですけれども、そこがこちらのワーキングの検討対象でないのであれば、そちらについてはどこが検討するのかということについて、事務局も併せて伺えればと思います。
以上です。
○中釜委員長 まず、横野委員のほうからお答えできる範囲でお願いできますか。
○横野参考人 今回、ELSI WGは、あくまでも体制班の一部としての活動になりますので、ロードマップで示されたELSIに関わるものの全てをこちらで担当することは難しいと思っております。第1回の専門委員会のときにもたしか御発言があったかと思うのですが、もっと幅広い観点からの政策も含めたELSIの検討というものも必要だと考えておりますので、それについては、別途そういった場であるとか体制というものをぜひつくっていただきたい。そして、そういうものができたら、私たちも協力しながらやっていけると考えております。
○中釜委員長 厚生労働省のほうから発言ございますか。
○がん・疾病対策課長補佐
ELSIの検討事項の詳細につきましては、本専門委員会でも必要に応じて検討していっていただきたいと考えております。
○中釜委員長 今後、ELSIの視点からいろいろな案件が出てくると思いますので、それは専門委員会の意見を踏まえて、この厚労科研の班の中で検討いただくことになります。その中で当然、さらにELSIの専門家を交えた検討が必要になってくると思いますので、そういう専門家の方々にも加わっていただき、さらに深掘りの議論をして専門委員会へお返しいただくという体制になろうかと理解しています。よろしいでしょうか。
○神里委員 ありがとうございます。
○中釜委員長 では、栗原委員、お願いいたします。
○栗原委員 ありがとうございます。
ELSIの共通項目の中に知財の取扱いという項目がありまして、15ページにコンソーシアムでのデータ共有ルール案が示されていますので、それに関するコメントといいますか、今後の議論のポイントとして考えるべきと思う事を発言させていただきます。
企業のデータ利活用を促進するという観点で、どういう条件で利用できるのか、かつ成果が誰に帰属するのかというのは大変重要なポイントだということは前回申し上げ、ガイドラインにもそこの論点を入れていただきましたが、今回、企業に知財が占有できるということが案として示されるに至り、この方向について私は自然な流れであると思いました。
ただ、ここで参画するアカデミアや企業が知財を占有できるということと、利活用の対価の有無には、関連性があるのではないかと思います。参加企業は有償でデータを利用し、その知財を占有できる一方で、参加アカデミアは特に有償ではなく知財を占有できるという整理だと思いますが、この違いについて考え方の整理をしておく必要があろうかと思います。
もう一つ関連して、アカデミアと企業の産学連携の下でデータ共有を行うとあります。産学連携は必須ではないですが、まさに進めるべきだと思いますけれども、その際の知財の在り方が阻害要因にならないようにしなければいけないと思います。なるべく進めやすい方向でと思います。
それから、3点目に、データ利活用審査委員会です。この委員会が第三者の利用許諾を行っていくということですが、この委員会は、そもそも今後できる実施組織の中に存在していくものなのかどうかという点について、教えていただきたいと思います。窓口が一元化されているということと、スピーディーな審査であるということが重要だと思いますので、そういった観点から、どこにどのように置くのかということは大変重要な論点かと思います。
ちょっと長くなりました。以上です。
○中釜委員長 ありがとうございます。
まず、最後のデータ利活用審査委員会の設置場所について、厚労省から。
○がん・疾病対策課長補佐
データ利活用審査委員会の設置場所につきましては、御指摘のとおり、今後設置される事業実施組織内に設置することを想定しております。どういう形で設置していくかということに関しましては、今後準備室で検討していく予定です。
○中釜委員長 ありがとうございます。
最初のほうの知財あるいはデータ利活用に関する有償・無償の考え方については、今後議論を深めていく必要があると思います。データ利活用に関しては、非常に難しい施策の要件が含まれると思いますので、厚労科研の研究班、及びこれ以外の専門家の方を交えて、利用する側の御意見を踏まえながら、より詳細なものをつくり込んでいく必要があると思います。
有償・無償に関しては、例えばデータにアクセスするための費用・コストということと、それを利活用した際に得られる知財に関して、それぞれどういうふうに位置づけるのか、という整理が必要なのかなと御質問を聞いて思いました。最初からデータを利活用する際に払う有償のコストというのは、知財という観点も踏まえた理解で整理すべきなのか、そこは分けて整理すべきなのか、その辺りのところをもう少し教えていただければと思いますが、栗原委員。
○栗原委員 まず、データを利用するというときの有償・無償という整理と、利活用した後のアカデミアや企業が得た成果をどう有償化していくかというのは、ちょっと別次元かなと思います。データ利活用の結果として得られた開発の成果はその利用者に帰属するということなので、その人がどういう形でそれを有償の形あるいは無償の形にしていくか、誰かと協働していくかは、場面が違うのではないかと思います。
○中釜委員長 分かりました。その辺りも少し整理していきたいと思います。
ほかに御意見、御質問ございますか。
上野参考人、お願いいたします。
○上野(裕)参考人 ありがとうございます。
今の栗原先生の御指摘のとおり、我々もその点、非常に重要だと思いまして、発言しようと思ったのですが、今、栗原先生のほうからおおむね言っていただいたと思います。
それで、我々製薬企業にとっては、論文発表というよりは、特許の出願というのが創薬の大前提になっていて、御存じのように、創薬にはすごく長い年月がかかります。したがいまして、特許の有効期間がよりリーズナブルになるようなタイミングで出願するということで、この15ページに論文公表の制限期間が3年と書いてあるのですけれども、論文公表というのと特許の出願というのを少し分けて考えて、かつ論文を先に発表してしまいますと、その後知財、特許を出願するのが非常に難しくなる場合もあります。
コンソーシアムというのは、先ほどロードマップにあったアカデミアフォーラムあるいは産業フォーラムというふうに我々は捉えているのですが、そういう中で今後議論させていただければと思いますので、よろしくお願いいたします。
○中釜委員長 特許出願のタイミングと論文発表のタイミングをどうやってコンソーシアムで決めていくかという御指摘だと思いますが、その辺りも詰めていきたいと思います。
ほかに御意見ございますでしょうか。
上野委員、お願いいたします。
○上野委員 今、話の出ておりました15ページのところに関連するのですけれども、これは質問、兼、今後検討していくべき事項の頭出しということになるかもしれませんが、15ページで論文公表までの制限期間3年ですとか、4ポツ目で一定期間、3年と書いてあるのですけれども、この3年がいつからなのかとか、その辺りのイメージを共有した上で議論を進めていかないといけないのかなと思います。
あと、ここに記載されているコンセプトとして、参加企業について、論文はいずれは公表していいのだけれども、公表までの期間制限を定めるというアイデアが書いてあるわけですけれども、これが公表の制限というところで、論文という以外に、例えば学会発表がどうなのかとか、企業ランチョンセミナーみたいなものだったらどうか、プレスリリース。あるいは、公表ということで言えば、出願後1年半で公開になるわけですけれども、それとの関係はどうなのかとか、その辺りをより具体的に念頭に置いた上で検討を重ねていかなければいけないのではないかなと思います。
あと、アカデミアと企業というところですが、ボーダーをいつも必ずはっきり分けられるのかどうかということで、例えば大学発ベンチャーのようなものはどちらサイドなのかとか、あるいは企業と大学が共同研究しているような場合には、ここに書いてあるところで言うとどちらのルールが適用されるのかとか、その辺もいろいろな場合があり得るということを念頭に置いた上で、引き続き検討していく必要があろうかと思います。
○中釜委員長 御指摘ありがとうございました。いろいろな場合を想定して、少し細やかなルールづくりが必要だという御指摘でした。
この辺について、委員の先生方から何か御意見ございますか。よろしいですか。
中村委員、お願いいたします。
○中村委員 この3年間というのは、いつ、どこで決まったのか、よく分からないのと、データというのは多分連続的に出されると思うのですけれども、どこを区切って3年間かというのがよく分からないですし。例えば、データを供与した場合に、1次解析した方々も同じような情報を持っていた場合に、知財がどうするのかをはっきりしておかないと、解析した人というか、データを利用した人に知財が行くとほとんど断定的に書いてありますけれども、既に研究者が同じディスカバリーをしていたときにこういう書き方をすると、後でもめごとにならないかということをちゃんと注意しておくほうがいいと思うのですけれども、恐らく、この部分は今日中にはなかなか決めにくいと思いますけれども、ぜひ御留意いただきたいと思います。
○中釜委員長 重要な御指摘ありがとうございます。そういう点を踏まえて、データ取得のタイミング、知財のタイミング、出願のタイミング、そういうものも少し細やかに考慮した記載が必要かなという御指摘でございます。その辺り、少し検討させていただきたいと思います。
厚労省のほうから何かありますか。
○がん・疾病対策課長補佐
15ページ目以降につきまして、ワーキングを作成した先生からの説明を一旦していただいたほうがいいような気がするのですけれども、河野先生、説明よろしいでしょうか。
○中釜委員長 すみません、河野先生、説明をお願いいたします。
○河野参考人 ありがとうございます。
では、15ページ目のスライドの提示をお願いいたします。こちら、議論したWG内、3つのワーキングがありますけれども、そのどのワーキングということではなくて、将来的にはこのワーキング、さらにはそれを超えた専門家の先生方の御意見も入れていくというつもりで、まずは「案」としております。今回、漠然とコンソーシアムと書かせていただいておりますけれども、これは製薬協の上野参考人がおっしゃられたアカデミアのフォーラム、そして企業のフォーラムを併せた大きな組織の中で、まずはどういうふうに共有するかということですけれども、その大きな組織の中で、まずはデータの共有をする。
そして、そこのデータに入ってくるためには、当然ですが、解析班がある程度1次解析をして、このデータは大丈夫だと。先ほどQCという話もありましたけれども、それを通過したものがきちんとここに置かれていると。置かれたところから、データに関しての俯瞰や、どういうデータがどのぐらいあるのかという簡易な解析というものは、開始可能としたほうがよいのではないか。すなわち、データが整備されたところからは、このコンソーシアムに参加しているアカデミア・企業、ともにデータの俯瞰などができるということがよいのではないかと思います。そうすると、どういう研究ができるかということが、まずはこのコンソーシアムの中で始められる。
そして、その次に、実際にデータを詳細に解析するときには、企業の方、特にどういう目的で、どういう解析をするのかというのを俯瞰した後にお考えいただけると思いますので、そのときにデータ利活用審査委員会の審査を受けていただいて、開始していただく。そして、その範囲内で行った解析の結果の知財は、将来的な開発ということを考えますと、知財は占有できることが望ましいのではないかと思いますので、占有と書かせていただいております。
こちら、論文と書いてしまいましたが、公表できる場ということですね。論文に限らず、参加企業の方も公表できるけれども、データを取得したアカデミアの方々への優先権というのも必要ではないかと思いますので、議論の途中で企業は知財が大事だということもありましたが、一方でアカデミアは論文というものが大きな意味を持ってきますので、論文への優先権はアカデミアのほうに与えるという体制が望ましいのではないかと思って、私がここで書いたのは、データベースとしてデータ化されてから3年、すなわち俯瞰できるようになってから3年。そのデータは次々と入ってくると思いますけれども、入ってきたら、入ってきて俯瞰できるようになってから3年間と思っております。
そして、その下でありますけれども、ある程度一定期間、例えば3年たつと論文もいろいろなところから出てくるという時期になりますので、そのぐらいから公的データベースのほうに移行していくというぐらいのタイミングなのかなと思いました。ただ、今回、中心となるのはもちろんコンソーシアムですので、コンソーシアムの中で少なくともデータを俯瞰できる。これは、御承知の方も多いかと思いますけれども、Genomics Englandというイングランドのゲノム解析の仕組みに大きくよっているというところです。
その次、お願いします。今度、利活用のポリシーというものを掲げておりますけれども、公正かつ円滑に利活用できるためにということで、先ほどのコンソーシアムの中で、実施組織の中に置かれるということもありましたが、審査の下に利用許諾がされるというところです。将来的には、国内だけではなくて国外というところも、特に製薬企業は外資系のものも多くありますので、恐らくそういうところの展開まで考えておかなければいけないと思っております。
利活用審査委員会の委員ですけれども、ここでは性別などしか書いておりませんけれども、それぞれ必要な人材というものを議論して決めていく必要はあると思います。特にセキュリティ面で国外の申請があったときなどは、そういうことが判断できるのかというところもあろうかと思います。
その次、お願いいたします。
骨子案の続きですけれども、審査の内容、いろいろ書いてありますが、その中で特に個人同定の問題が全ゲノム解析ではよくあると思います。こちらはもちろん注意しなければいけない案件ではあるのですが、一方、こういうコンソーシアムが始まった後でも患者さんに還元するという、もともとの患者還元WGの意向もあると思いますので、臨床試験に入っていただく。こういう遺伝子変異があったので、この人はこの薬が効きそうだということになったら、何らか、その患者さんがどなたであるということがある程度戻れる仕組みも残しておくことが必要なのではないかなと思います。
知財に関しては、創出した利用者に帰属するということがまず中心にないと、少なくとも企業での利活用というものは難しいと思っておりますので、実施組織がどこまで差配できるかというところによると思いますけれども、知財に関しては、見つけた人のものということで、そこは自由競争になるのかなと思って、この中では書かせていただいております。
以上です。ありがとうございます。
○中釜委員長 大変失礼いたしました。今、河野先生から御説明いただいたデータ共有のルール、データ利活用のポリシーについては、現時点で「案」ということになっていますが、今の説明を受けて、また改めて何か御質問、御意見ございましたら、お願いいたします。
杉山委員、お願いいたします。
○杉山委員 杉山でございます。
私、医学がバックグラウンドではなくて情報科学がバックグラウンドなのですが、情報系、特にAI系の分野ですと、データを取った人へのインセンティブというのが結構強いと感じています。例えば、画像認識の装置をつくるようなときに使う画像のデータベースをつくったりとか、最初にそれをネットに公開して論文を出すと、その論文が物すごく引用されて、その人たちがその分野での中心的な存在だと認知されるような傾向がありますので、ある意味データを取って公開するのが当たり前という世界になっています。いろいろな研究者がどんどん積極的にデータを公開していこうという形になっているのですが。
医療系だとなかなかそうもいかないのかなと感じるところではあるのですが、もうちょっと業界としてデータを取った人にうまくアカデミアの意味でのインセンティブを出せるような形になるといいなと感じました。それが1点目です。
もう一つは、今回、3段階ぐらいあるのかなと感じたのですが、データによって公開するレベルを変えるという考え方も逆にできるかなと思います。基本的には、データを全部公開すべきだと思うのですが、一部のデータに関しては、これは本当に重要な情報を含んでいるので、少しだけ公開しない期間を設けようとか、データごとに審査して公開しない期間を決めるという考え方もあるのかなと感じました。
以上です。
○中釜委員長 今の杉山委員からの御指摘に関して、河野先生、何か御発言ございますか。
○河野参考人 私が答えられる範囲で話したいと思います。
まず、データを取った方へのインセンティブということで、このフォーラムあるいはコンソーシアムというものが本当に機能すれば、アカデミアのほうは、逆に言えば、ファーストタッチではデータを触っているわけですし、コンソーシアムの中に企業の方もいらっしゃるわけですので、積極的なコラボレーションをその中でやって、共同知財化していくとか、実際にはいろいろなやり方があり得るのではないかと思います。
また、データの公開ですが、ちょっと分かりにくい書き方をして申し訳なかったのですが、コンソーシアムの中では全データの俯瞰という形で書かせていただいておりますが、公的データベースのほうはゲノムデータ及び基本的な診療情報とさせていただいております。希少がんもあったり、今後難病とか、いろいろなものがあると考えますと、診療情報を詳細に公開するということは、私は余り現実的ではないのではないかと思っております。もちろん、これは案ですので、この後、いろいろ議論されていくものだと思いますけれども、基本的にその段階では全てを公開するわけではない。むしろコンソーシアムがある程度診療情報を持ち続けて、その部分のプライオリティーも持ち続けるということでもよいのかなと思って、ここではそのように書かせていただいております。
○中釜委員長 杉山委員、今の説明でよろしいでしょうか。
○杉山委員 ありがとうございました。
○中釜委員長 ほかに御質問ございますか。よろしいですか。
通常のデータと違って、ゲノム情報を使う場合に診療情報をどのくらい紐づけるかということが利活用の点から非常に大きな課題です。そのところのデータのルールというのを少し細やかに決める必要があるのではないかということで、大きく2つのフェーズに分けた説明でした。
先ほど中村委員から説明がありました3年間のルールに関しては、今の説明で御了解いただけましたでしょうか。
○がん・疾病対策課長補佐 中村委員はすでに退席されているようです。
○中釜委員長 退席していますか。ありがとうございます。では、後ほど、また御意見を伺いたいと思います。
ほかに委員の先生方から御意見ございますか。
今後、このデータ共有や利活用ポリシーについては、様々な専門家の意見を交えながら、ユーザーを含めて少し細かいところを詰める必要があるかと思いますけれども、本日は骨子案を示させていただきました。必要な詰めるべきポイントについては、また御指摘いただければと思います。
よろしいでしょうか。ありがとうございました。
それでは、資料4につきましては、今後AMEDの研究班を開始するために方針決定が必要な事項と理解しております。方針を決めるという意味でも、厚労科研での意見は非常に重要だと理解しますので、厚労科研の各WG班長におきましては、本日いただいた意見を反映させた修正案というものを来週の火曜日までに事務局に提出していただき、事務局にて取りまとめた後に今月中に専門委員会を持ち回り開催とする方向でおります。この点について厚労省のほうから何か追加で御発言ございますか。
○がん・疾病対策課長補佐
今回、先生方に御議論していただきました点につきまして、各厚労科研の専門ワーキングの班長の先生方におかれましては、反映していただいた修正案を来週火曜日までに事務局のほうに提出していただきまして、それを取りまとめた後、再度、専門委員会の先生に修正案を提示していただくというプロセスを行いまして、AMED研究を開始するに当たりまして、今月中にフィックスさせていただきたいと思いますので、御協力の程、よろしくお願いいたします。
○中釜委員長 ありがとうございました。
ほかに全体を通して、委員の先生方から何か御意見、御質問ございますでしょうか。よろしいでしょうか。ありがとうございました。
それでは、本日、少し時間を超過しましたが、以上をもちまして本会議を終了したいと思います。追加の御意見等につきましては、適宜事務局までお寄せいただければと思います。委員の先生方にはスムーズな議事進行に御協力いただき、誠にありがとうございました。
それでは、議事進行を事務局にお返しいたします。
○がん・疾病対策課長補佐 本日は、お忙しい中、誠にありがとうございました。委員の皆様、参考人の皆様、長時間にわたりましてありがとうございました。
以上をもちまして、本日の会議を終了したいと思います。