第75回がん対策推進協議会(議事録)

健康局がん・疾病対策課

日時

令和3年3月11日(木)15:00~17:00

場所

AP虎ノ門 NS虎ノ門ビル(日本酒造虎ノ門ビル)11階 室名D
  • オンライン開催

議題

  1. (1)報告事項
    1. 小児・AYA世代のがん患者等に対する妊孕性温存療法に関する検討会について
    2. 新型コロナウイルス感染症下におけるがん検診受診状況の変化について
    3. 新型コロナウイルス感染症下におけるがん診療実施状況の変化について
    4. 患者体験調査・小児患者体験調査の結果について
    5. 遺族調査の結果(がん患者の療養生活の最終段階における実態把握事業)について
  2. (2)第74回がん対策推進協議会でのご意見に対する対応について
  3. (3)「がんとの共生」「これらを支える基盤の整備」分野の中間評価について
  4. (4)その他

議事

議事内容
○がん対策推進官 それでは、定刻となりましたので、ただいまより第75回「がん対策推進協議会」を開催いたします。
委員の皆様におかれましては、お忙しい中お集まりいただきまして、誠にありがとうございます。
それでは、冒頭、局長の正林より御挨拶を申し上げます。
○健康局長 皆さん、こんにちは。健康局長の正林でございます。一言御挨拶申し上げます。
まず、委員の皆様におかれましては、日頃より厚生労働行政に御指導いただきまして、誠にありがとうございます。
本日は、第3期がん対策推進基本計画における「がんとの共生」と「これらを支える基盤の整備」の分野の中間評価について先生方に御議論をいただきたいと思っております。
今回御報告させていただく患者体験調査や小児患者体験調査、遺族調査には、多くの患者さんやその御家族、御遺族の方々、関係者の皆様の御協力をいただきました。そうした皆様のお声も反映させることが、がんになっても自分らしく生きることのできる地域共生社会の実現に向けて大変重要なことであると認識しております。
また、前回の協議会から大きく進んだこととしまして、小児・AYA世代のがん患者等に対する妊孕性温存療法に関する検討会がございます。こちらは4月から新規事業を開始することを目指して、本日は検討状況を御報告いただきます。
私がよく覚えているのは、平成26年だったと思いますけれども、この推進協議会、患者さんのお立場で委員になられていたお一人が、こういう妊孕性温存療法を事前に知っていれば妊孕性を失わずに済んだのにということを切々と訴えられた方がいて、その方の御発言の影響によって、委員の方々が皆共感し、第3期のがん対策推進基本計画にこの妊孕性の問題が取り上げられた。そんな背景があることをよく覚えております。
若い患者さんに将来子供を持つという可能性を与え、希望を持って病気と闘っていただく取組であり、日本のがん対策がまた一歩前進するのではないかと考えております。
全てのがん患者が必要な支援を受けることができる環境整備を目指すとともに、がんの研究や人材育成及びがん教育等への必要な対策につきまして、皆様のお知恵を拝借できればと考えております。がん対策のさらなる推進に向け、皆様の活発な御議論をいただきますようお願いを申し上げまして、私の御挨拶とさせていただきます。
よろしくお願いします。
○がん対策推進官 ありがとうございました。
局長は、公務のため、会の途中で退席となります。
また、出席状況でございますが、茂松委員が若干遅れているようでございますが、その他の皆様方の御出席を賜っております。
また、委員の交代がございますので、御報告いたします。松村委員に代わりまして、京都府健康福祉部長の糸井利幸委員が委員に就任されておりますので、糸井委員、自己紹介を一言だけよろしくお願いいたします。
○糸井委員 初めまして。糸井でございます。
つい最近健康福祉部長になりました。私のバックグラウンドは小児循環器で、がんに関しては抗がん剤による心不全、それから病院臨床でスタッフであるとか患者さんの倫理面でいろいろ相談を担当したことがございます。本日は何とぞよろしくお願いいたします。
○がん対策推進官 また、本日、参考人といたしまして、国立研究開発法人国立がん研究センター中央病院小児腫瘍科長、小川千登世参考人。それから、国立研究開発法人国立がん研究センターがん対策情報センターがん医療支援部部長、加藤雅志参考人。また、聖マリアンナ医科大学産婦人科学教授、鈴木直参考人。国立研究開発法人国立がん研究センター社会と健康研究センター・検診研究部・検診実施管理研究室長、高橋宏和参考人。国立研究開発法人国立がん研究センターがん対策情報センターがん情報提供部部長、高山智子参考人。国立研究開発法人国立がん研究センターがん対策情報センターがん臨床情報部長、東尚弘参考人。慶應義塾大学名誉教授、福島県立医科大学副学長、吉村泰典参考人に御出席いただいております。よろしくお願いいたします。
続いて、資料の確認でございますが、資料は厚生労働省のウェブサイトにも掲載しております。議事次第及び資料1から7、参考資料1から6までがございますので、御確認いただければと思います。
事務局からは以上でございます。
以降の進行を山口会長にお願いいたします。
○山口会長 皆様、山口です。今日の進行係を務めさせていただきます。
今日はくしくも3月11日で、10年前の今日、東日本大震災のため約2万人の方が命を落とされています。亡くなられた方々へのお悔やみと、それから今も苦しんでおられる多くの方々に対してお見舞いを申し上げたいと思います。
一方、がんというのは非常に身近な病気で、2人に1人がかかる状況になっています。身近なところで1年間に40万人の方が命を落とされている病気でもあります。ぜひ今日御出席の構成員の皆様のお力でその数を1人でも少なくするよう努力していきたいと思っております。
それでは、協議を始めさせていただこうと思うのですが、まず議題1の報告事項についてです。今も局長からお話があった妊孕性温存療法について、吉村参考人より御報告をお願いいたします。
 
○吉村参考人
それでは、検討会の結果についてお話をさせていただきます。
次のスライドをお願いできますでしょうか。若年のがん患者にとりまして、がんの治療によって妊孕性が低下するということは、将来妊娠・出産を希望する患者にとって大きな問題となってきているわけであります。現在妊孕性温存療法といたしましては、胚、卵子、卵巣組織、精子を取り出しまして長期に保存するということがありますが、これは高額な自費診療であるため、若年のがん患者にとっては大きな経済的な負担になっています。
こうした生殖医療においては、一方で、有効性のエビデンスの集積も求められているわけであります。国の支援が今、求められている状況下で、妊孕性温存に関わる費用負担の軽減を図りつつ、エビデンスをつくり出し、そしてガイドラインを作成するなど、妊孕性温存療法の研究を促進するための事業を令和3年度から開始したいと思っているわけであります。有効性のエビデンスを集積しつつ、若いがん患者が希望を持って病気と闘い、将来子供を持つことの希望をつなぐ取組の全国展開を図るというものでございます。
次をお願いいたします。事業の対象とする妊孕性温存療法は、胚、卵子、卵巣組織、精子の凍結でございます。
対象者の要件といたしましては、年齢の上限は男女共に43歳未満とするということにしています。そして、年齢の下限は設けない。
対象疾患並びにその治療内容につきましては、日本癌治療学会から出されている診療のガイドラインに従って、妊孕性が低下すると示されている薬剤とか治療という疾患となります。
また、乳がんなどの長期の治療によって卵巣機能が低下するといったものも含まれます。
がん以外におきましては、例えば再生不良性貧血など造血幹細胞移植が実施されるような疾患、あるいはSLEなどのアルキル化剤が投与されるような非がん疾患も含まれています。
対象者の選定の方法といたしましては、がんの治療医と生殖医療の専門医、両者によって検討が行われるということでございます。
次、お願いできますでしょうか。実施医療機関の要件ということに対して、まず都道府県でがん・生殖医療の連携ネットワーク体制が構築されていることが要件となります。実際の医療機関に関しましては、日本産科婦人科学会で認定された登録施設、あるいは現在日本泌尿器科学会でガイドラインを作成中でありますが、そうした指定された施設であって、かつ都道府県が指定した医療機関で実施されるということでございます。
次、お願いできますでしょうか。一方で、この事業は、妊孕性温存のための有効性のエビデンスを創出するという事業も含まれているわけでありまして、臨床情報、原疾患に関する情報、妊孕性温存に関する情報、こうした臨床情報を定期的、すなわち1年に1回以上こうした状況を収集するということが前提となります。
患者に関しましては、日本がん・生殖医療学会が登録システムを持っておりますが、そこに個票として患者登録がされているということが前提となるわけであります。
主要なアウトカムということになりますと、妊孕性温存療法ごと、そしてまた保存期間ごとの妊娠・出産に至る割合が有効性としてアウトカムとなります。
また、原疾患の治療成績も併せて検討するということになっております。
助成に関しましては、所得制限が問題となるわけでありますが、制度の趣旨を踏まえ、所得制限は設けないということといたしました。
また、助成の上限額でございますが、治療対象ごとにこのような金額が決定されているわけでありまして、助成の数は2回までとなっています。
最後のページです。このように学会が指定した医療機関からの申請に基づきまして都道府県が指定を行うということであります。国や都道府県は、こうした利用に関する普及啓発の資材をつくったり、普及啓発を行っていただく。そしてまた、関連学会と協力して人材の育成を図るということが国、都道府県に要求されるわけであります。
事業の全体像につきましては、このスライドに示してあるがごとくでございます。
以上、簡単ではございますが、検討会における結果を報告させていただきました。
以上でございます。
○山口会長 ありがとうございました。
吉村参考人のお立場で、第4期のがん対策推進基本計画に、今日のお話を中心に、どういうことを記載したらいいか、何か御提案ございますでしょうか。
○吉村参考人 この点につきましては、現在日本がん・生殖医療学会の理事長であります鈴木参考人が同席されておりますので、鈴木参考人のほうから説明をさせていただきたいと思います。
○鈴木参考人 山口先生、よろしいでしょうか。
○山口会長 どうぞ。
○鈴木参考人 鈴木直でございます。発言させていただきます。
結論から申し上げますと、第4期がん対策推進基本計画においては、小児がん拠点病院並びに地域がん診療連携拠点病院の指定要件にがん・生殖医療ネットワークの管理運営等の業務の追加を検討していただければ幸いに存じます。患者本位のがん医療の実現、または適切な医療を受けられる体制を充実させ、小児・AYA世代がん医療の充実をさらに拡張するための施策となります。
具体的には、現在47都道府県に拡大いたしましたがん・生殖医療ネットワーク、これは厚生労働科学研究班の成果でありますが、それを有効活用していただくことで、がん治療医が生殖医療を専門とする医師と密な連携の下、がん治療による生殖医療の低下、喪失に関する確実な情報提供を的確なタイミングで情報提供できる、また、がん等患者に対する支援体制を確立することが可能となります。
例えば神奈川県のように、行政と連携して自治体のがん診療連携協議会等の相談部会などが、地域のがん・生殖医療ネットワークの業務に携わる。または都道府県がん診療連携拠点病院が管理する都道府県がん診療連携拠点病院連携協議会の業務に位置づけるなどの案でございます。
先ほど正林健康局長がおっしゃっておりましたが、平成26年12月、第46回、この推進協議会にて私、子宮頸がんサバイバーの阿南様とともにこの件を参考人として発言させていただきました。その結果、第3期においては、「医療従事者が患者に対して治療前に正確な情報提供を行い、必要に応じて、適切な生殖医療を専門とする施設に紹介できるための体制を構築する」というふうに入れていただきましたが、かれこれ6年経過し、厚生労働省がん・疾病対策課御指導の下、この領域は大分進んでまいりましたことから、小児・AYA世代のがん患者等が希望を持って病気と闘い、将来子供を持つことの希望をつなぐ取組の全国展開を図るためにも、第4期がん対策推進基本計画においては、がん側である各地域のがん診療拠点病院の業務にがん・生殖医療ネットワークの管理を位置づけることで、がん治療医からの生殖機能に関する意思決定に関する情報提供が確実になされるものと期待しております。
以上、発言させていただきました。
○山口会長 ありがとうございました。
今後のこの協議会での検討テーマとさせていただこうと思います。
今の吉村参考人の御発言等に関して、患者会の立場でどなたか御意見をいただけますでしょうか。
○事務局 大西委員、お願いいたします。
○山口会長 どうぞ。
○大西委員 大西です。質問があります。2ページで男女共43歳までとなっているのですけれども、これは男性も同じでいいのか、その理由が知りたい。例えば男性は50歳までとか、引き上げも可能なのではないかということ。あと、がんの治療病院と保管の病院と同一都道府県が実施要件なのか。では、県をまたぐ場合はどうするのか。国立がんセンターで治療して、例えば地元の病院で保管するとか、そういうことも念頭にあるのか。その辺をお伺いしたいです。
○吉村参考人 2点ございましたけれども、年齢の上限でございますが、何歳までにするかということは、特に女性の場合は大きな問題でありまして、35歳とするという国もございます。40歳とする国もございます。現在のところ、女性に対しては特定不妊治療助成を行っているわけでありますけれども、43歳未満ということになっておりますので、一応それに合わせた格好といたしております。
男性におきましても、これはいろんな意見があるわけでありますが、50歳前後になりますと精子の数も減少するとか、いろんな条件が加わってまいります。治療して治ってから戻すということになりますと、ある程度年齢がいってしまうと様々な産科合併症など問題になることも考え43歳としました。
第2点目の点、県をまたぐ場合、どうするのか。これは非常に起こり得ることでありまして、こういったことも対応できるように措置をするということになっております。
○大西委員 ありがとうございます。ぜひよろしくお願いします。
○山口会長 そのほかにも御質問等おありかと思いますが、事務局のほうにお送りいただけないでしょうか。両先生におつなぎする、あるいは厚労省のほうで答えられるものはお答えするという形で進めさせていただこうと思います。
それでは、コロナ禍におけるがん検診について、高橋参考人から御報告をお願いいたします。
○高橋参考人 どうぞよろしくお願いいたします。国立がん研究センターの高橋と申します。
本日は、新型コロナウイルス感染症下におけるがん検診受診状況の変化について御報告いたします。
初めに、我が国におけるがん検診受診状況の把握法につきまして御説明いたします。がん検診の受診者数は、地域保健・健康増進事業報告と国民生活基礎調査によって算定されておりますが、その方法に違いがあるため、目的に応じて活用されています。
地域保健・健康増進事業報告は、市区町村の実施するがん検診を対象としており、受診の定義は、「がん予防重点健康教育及びがん検診実施のための指針」に沿った受診者であり、調査頻度は1年に一度となっております。
特徴は、実数による把握をすること、及び地域住民検診における受診者のみの把握となります。
一方で、国民生活基礎調査は、抽出された世帯を対象としており、受診の定義は、自己申告に基づく受診者であり、調査頻度は、がん検診に関しては3年に一度となります。
特徴は、自己申告に基づくアンケートであるため、誤回答の混入があることから、実態よりも過大評価されやすいこととなります。
いずれの調査においても、報告は調査の翌年度となるため、月別の集計はできないことから、今回のような数か月単位の短期的な変化を検討するには不向きと言えます。
このような中、本検討では、がん検診受診に関する悉皆性の高いデータを報告することを目的としており、厚生労働科学研究「がん検診の適切な把握法及び精度管理手法の開発に関する研究」班により、全国労働衛生団体連合会、日本対がん協会、聖隷福祉事業団における2019年及び2020年の月別がん検診受診者数を取りまとめました。
これらの機関のデータは、集計対象や検診方法が統一されていないということから、単純に比較することは難しいですが、おおよその一定の傾向が見られたために、これより御紹介いたします。
初めに、日本総合検診医学会及び全国労働衛生団体連合会に加入する180機関からの特定健診の受診者数に関する回答となります。健診受診者数は、全年齢及び男女計であり、事業者健診、特定健診、人間ドック健診、学校健診、その他の健診の合計となります。また、令和2年7月末時点でのデータですので、令和2年8月と9月は予約数より算定しております。第1回の緊急事態宣言が発令されたのが2020年4月、5月となりますので、前年同月比でおよそ2割程度まで健診受診者数は減少しております。その後、前年並みに回復しております。
続いて、日本対がん協会29支部からのがん検診受診者数に関する回答となります。がん検診受診者数は、5がん、これは指針に推奨されております胃、大腸、肺、乳、子宮頸における自治体で実施している集団で行うがん検診の男女計であり、胃、大腸、肺、乳がんは40歳以上、子宮頸がんは20歳以上の合計となります。また、令和2年9月時点でのデータとなります。これによると、2020年4月と5月では、前年同月比でおよそ2割程度まで、また、6月、7月は半数程度までがん検診の受診者数は減少しています。
さらに、こちらは聖隷福祉事業団関連機関からのがん検診受診者数における回答となります。がん検診受診者数は、5がんにおける住民検診と職域検診の合計であり、胃、大腸、肺、乳がんは40歳以上、子宮頸がんは20歳以上となります。また、令和3年2月時点でのデータとなります。これによりますと、2020年4月と5月では前年同月比でおおよそ半数程度までがん検診の受診者数は減少しておりますが、その後は前年並みに回復しております。
以上、がん検診の受診状況について御報告いたしました。
現時点での考察といたしましては、2020年4月と5月のがん検診及び特定健診の受診者数は、前年同月と比べて大幅に減少しておりました。また、2020年6月以降は、前年同月とおおよそ同程度に受診者数は回復しております。さらに、御協力いただいた機関では、いずれもがん検診や特定健診を全国レベルで実施しておりますので、悉皆性の高いデータではありますが、年度における変化などを今後収集・検討する必要があります。また、即時性の高いデータ収集システムの構築といったものも求められることから、受診者数を把握するための体制について検討する必要もあると考えられます。
発表は以上となります。御清聴ありがとうございました。
○山口会長 ありがとうございました。
この落ち込みの後、各医療機関で受診者数が落ち込んでいるという現状がやっと回復してきたかなという全国的な状況だと思います。先生のお立場で、コロナのような突発的なことが起きたときのがん検診の在り方について、次に引き継ぐような御意見はございますでしょうか。
○高橋参考人 ありがとうございます。
がん検診に関しては、松田委員も参加されておりますがん検診のあり方に関する検討会で主に話されている内容となりますが、大きく3点あると思います。
1つ目はデータ収集に関してですが、現在、地域と職域の双方の健診の統合に関して議論がなされているところですので、この先を見据えたがん検診の提供体制及びデータ収集システムの構築などについて、この協議会でも御検討いただければと思います。
2つ目は、がん検診の指針です。これは主に地域住民健診を対象としたものとなりますが、その指針に沿ったがん検診が実施されていない状況にありますので、指針に沿ったがん検診の徹底と、指針外の検診は行わないといったような指導、また体制が必要かと思います。
さらに、今は働く世代、職域におけるがん検診といったところが非常に注目を浴びているところでもありますので、ただし、職域に関するがん検診の提供者にまで適切な情報が届いていないという状態がいろいろなアンケートや調査からはっきりしてきております。ですので、こういった届かないところに対する適切な情報提供、並びに基盤整備といったところが検討される項目かと考えられます。
以上です。
○山口会長 検診の部分は前回この席でいろいろ議論させていただいたのですが、今の御発表に対して、松田先生、何か御意見がございますでしょうか。あるいは感想でも結構ですが。
○松田委員 ありがとうございます。福井県健康管理協会の松田でございます。
今、高橋参考人がお示ししいただいたとおりだと思います。私は主に地域のがん検診に携わっております。地域のがん検診は、福井だけではなくて、ほかの地域も含めて、コロナの感染状況によっても変わるかと思いますが、恐らく前年度並みの受診にはならないのだろうと思います。とりわけ集団検診、会場に大人数を集めて、保健センターなどで行われるがん検診は相当落ち込んでいます。その一方で、かかりつけ医で行われる個別検診は余り減っていません。もう一つ、職域の人たちを対象にするがん検診もあまり落ち込んでいません。むしろ増えているというところもあります。誰がターゲットなのかによって受診者数は随分違っています。それを総合的に全て集める仕組みがあれば、あるいは次の国民生活基礎調査の数字が出てくれば、受診率がどうなったのかというのがはっきりしてくるかと思いますが、地域における集団検診は相当落ち込んでいるのではないかと想像します。
もう一つ、これから集団検診から個別検診への流れがますます加速すると思います。集団検診を中心にがん検診を行っている地域では、個別検診もそうですけれども、感染防止に留意しながら、おのずと受診人数を制限したがん検診とならざるを得ません。そうなると、誰が受けないといけないのかをきちっと把握して、受診をしていない人たちに案内をするとか、精検を受けていない人に精検受診勧奨をする、そういった仕組みが今後必要になるのかなと考えております。
以上です。
○山口会長 どうもありがとうございました。
それでは、時間の関係で先に進ませていただき、同じくコロナ禍の、今度は診療の問題ですが、土岐先生、お願いいたします。
○土岐委員 資料を御覧になられるでしょうか。
○山口会長 どうぞお願いします。見えています。
○土岐委員 私は、癌治療学会の理事長としてこの協議会に参画しておりますが、一方で消化器外科の教授としてがんの診療、特に手術を中心とした診療を統括しておりまして、昨年のこの治療の現状につきまして御報告したいと思います。
なかなか全国規模の集計がございませんで、私のできる範囲で行いました大阪大学及び関連施設の消化器がん、特に今回は大腸がんと胃がんの実態を報告させていただきます。症例数でいきますと、我々の関連病院は大阪の半分ぐらい。日本全体の5%ぐらいの症例を我々の施設で実施しております。調査としまして、2019年、20年の月別の手術数。そして、手術した症例の進行度のほうは年間の合計として集計しております。施設のほうは38施設。大阪府、兵庫県、和歌山県、奈良県を中心としております。
早速結果のほうを報告させていただきます。こちらのほうが大腸がんの切除。いわゆる内科の先生が行うようなポリペクトミーとかESD、粘膜切除は入っておりません。全身麻酔で行います手術の件数でございます。一番大きく落ち込みましたのは5月で、大腸がんが最大に落ち込みまして、前年度の72%ぐらいまで落ち込んでおります。その後、緩やかに症例数のほうは回復して前年度に近づいてまいりましたが、また年末、第3波で多少症例が減ったという実態がございます。以上を合計しますと、年間としましては91.89%。10%弱の症例。症例数で言いますと、二百数十例の患者さんが前年よりも手術が少なかった。そういう実績がございます。
こちらのほうは、進行度合いで比べますと、Stage0-Iと呼ばれる、いわゆるほとんど狭窄症状が出ないようながんのほうが大きく減っている。1,047例から858例。4%弱減っております。一方で、StageII~IV、ある程度大きな腫瘍で、詰まる等の症状が出そうなものに関しましては、症例数はほとんど変わっていないという実態がございました。
下のほうは、縦軸に1施設当たりで行っている手術の件数、横軸に2年間の比較があのですが、ここで言えますのは、比較的たくさん手術を行っている施設のStage0-I、そういったがんが特に減っているという傾向にございました。StageIIからIVにつきましては、ほとんど変わりがございませんでした。
繰り返しになります。もう一度、大腸がんの年間手術例、100例以上の大腸がんの手術をやっている施設と100例未満の手術をやっている施設に分けますと、ほぼ半数ずつなのですけれども、たくさん手術を行っている施設ほど手術が減っていたという傾向がございました。
一方で、もともと小さな病院、年間100例に満たないような施設におきましては、件数が少し増えているという傾向もございました。この2つ、いわゆる施設のボリュームとStageに特徴がございましたので、この2つの特徴を掛け合わせますと、ハイボリュームセンターでStage0-IIというのが一番顕著に減っているところでございました。
一方で、大腸がんの場合は、腸閉塞とか出血といった状況で緊急手術を受ける場合があります。緊急手術につきましては、2019年、2020年とも変わらないという結果がございました。
続きまして、同じ施設を対象としまして、胃がんのほうの実態を調査いたしました。胃がんにつきましては、非手術例、いわゆる外科のほうに受診に来たけれども手術ができなかった症例。これは内科に受診に行った症例ではございません。外科に受診したけれども手術をできなかった症例も含めて解析をしております。
全般的に胃がんのほうが、オレンジで示しました手術の減少は、大腸がんよりも減少した傾向が強くありました。5月の時点は大腸がんと同じように減っているのですが、これは患者さんが来なかったというのもあるのですけれども、病院自体も手術の件数を規制するとか、手術例に対するPCRの体制が追いつかないとか、そういったもので、これは病院側のファクターと、患者さんが病院に行かなかったということ、双方のファクターが5月、6月にはあると思われます。7月以降は病院としてのファクターは少なくて、むしろ患者さんが受診を控えたという要素のほうが強いと思います。
胃がんの場合は、特に5月、6月、7月に検診をした患者さんが7月、8月に手術に来るという傾向が多いので、例年7月、8月の手術が大変多いのですけれども、こちらに関しましては検診が減ったという影響を強く受けまして、昨年の7月、8月は顕著に減っておりました。
等々の情勢を合計しますと、胃がんにおいては、年間を通じて84.79%。15%、300例近い患者さんが昨年よりも減っておる。そして、一番減少が大きかったときには73%まで減少しておりました。
胃がんにおきましても、先ほどと同じようにStage、そして外科に来たけれども手術ができなかったという患者さんもカウントしております。そうすると、本年度は手術ができなかったという患者さんの割合が昨年よりも多い。割合としては2019年は14.4%だったのが17.5%。実数においても、昨年は310人の患者さんが手術をできなかったのですが、今年は328人。特に胃がんの場合は、おなかを開けてみたら腹膜播種が見つかって、おなかを開けたのだけれども切除ができなかったという症例が増えているという報告も聞いております。
Stageにおきましては、StageI、II。胃がんの場合は大体StageIIIぐらいから狭窄症状が出ますので、StageIの患者さんが大きく減っている。これは大腸がんと同様の傾向でございました。
以上が我々の関連病院におきます胃がんと大腸がんの傾向でございます。ただ、この傾向は、胃がん、大腸がんが特に強うございます。同じがんと言いましても、肝胆膵領域、膵臓がん、胆道がん等はあまり減っておりません。私が専門である食道がんもあまり手術件数は減っておりません。こういったがんは、どちらかというと症状が出てから病院に来る人が多いがんでございます。だから、有症状の人が受診するがんの手術はあまり減っていませんけれども、いわゆる検診レベルでピックアップされる患者さんが多い胃がん、大腸がんは顕著に減っていた。これが昨年1年間のコロナの影響だったと感じております。
私からの報告は以上です。
○山口会長 ありがとうございました。
私たちの経験だと、手術は確かに落ちているのですが、抗がん剤治療等はそれほど影響を受けていないような状況なのですけれども、がん化学療法への影響あるいは放射線治療への影響を、石岡委員、茂松委員にちょっと伺っておきたいと思います。石岡委員、どうぞ。
○石岡委員 日本臨床腫瘍学会の石岡でございます。
私は東北大学病院で腫瘍内科をやっておりまして、東北地方に関連病院があり、今の土岐先生のような正式な調査はしておりませんけれども、都市部の、私どものような都道府県のがん診療連携拠点病院では、実はがんの薬物療法の紹介患者が地域から減っておりまして、各都道府県がん診療連携拠点病院のがんの薬物療法は、ざっとした言い方ですけれども、例えば病床稼働率で言えば、90%のところが80数%。外来の新患患者も大体9割ぐらい。約1割ぐらいの拠点病院への患者の紹介が減っているというのが私どもの印象でございます。
以上です。
○山口会長 ありがとうございました。
茂松委員、放射線治療の分野はいかがでしょうか。
○茂松委員 ありがとうございます。
COVIDによる放射線治療への影響に関しては、腫瘍学会全国レベルのアンケートをこれまで4回取っておりまして、放射線治療というのは、外照射、外から当てる放射線治療というのは始まると25回とか30回とか病院に通わないといけない。そのために交通機関に乗って病院に来て、それで帰らなければいけないということで、放射線治療は患者さんにとっては感染の機会を増やすということで、敬遠されて、1波、2波、3波のときを含めて減ってきているということは間違いないと思います。
もう一つは、慶應病院は北関東から静岡ぐらいの患者さんが見えているのですが、遠くから来る方は減りまして、地元の病院で放射線治療を受けるという方が増えていて、ですから、都市部の放射線治療の患者数は、慶應病院は2割ぐらい減っています。ただ、都市部でないところは逆に少し増えているというのが現状です。
ですから、これをどうするかということで、放射線治療に関しては、乳がんは25回かけるというところを16回数で済ませると。副作用を増やさないように、IMRTとか特殊な治療を使ってやるとか、いろいろな工夫をしているという状況で、今、JASTROでもいろいろ統計を取っておりますので、また御報告させていただければと思います。
○山口会長 ありがとうございました。
三大治療へのコロナの影響が皆様の言葉で大体理解できたと思います。
それでは、報告を続けていただきます。東参考人から患者体験調査並びに小児患者体験調査の結果をお願いいたします。
○東参考人 国立がん研究センターの東です。
画面共有、見えておりますでしょうか。
○山口会長 大丈夫です。
○東参考人 ありがとうございます。
私からは患者体験調査の成人版と小児患者体験調査の結果概要について、まとめて御報告をさせていただきます。スライドを20枚程度用意していますけれども、5分程度と伺っていますので、スライドは大半資料として御覧いただいて、私は駆け足でざーっと御説明を差し上げたいと思います。
患者体験調査の目的でありますが、成人、小児共に国のがん対策の進捗評価ということで行われております。国全体の評価ということから、方法としても全国のがん患者を代表できるようなサンプル方法を使って評価を行いました。時系列もまとめてありますが、これは資料ということで、後ほど御覧いただければと思います。
まずは成人調査の結果を報告します。回答者の概要ですが、2016年に診断された患者さんを対象として、総計166施設の御協力を得まして、発送・回収された7,080名について集計を行っております。
ここから回答の集計ですが、受けた医療への総合評価という点では、10点満点で総合的な評価をしていただきましたけれども、平均が7.9点ということで、納得のいく治療選択等についても8割弱の方々が肯定的な回答をされています。
治療前の説明といったところですが、治療に関する情報を十分に得られたと回答された方は75%ある。一方で、個別の話題、例えばセカンドオピニオン、妊孕性への影響、就労の継続についてなどの説明があったという回答は、それぞれ35%、52%、40%弱という形で、それよりも低いという割合になっている次第です。
医療者とのコミュニケーションに関しましては、肯定的な回答は大体7割前後という形なのですが、ただ、主治医以外に相談しやすい医療スタッフがいたという回答は48.8%ということで、少し低めとなっております。
相談支援センターの認知度ですけれども、66%が「知っている」と答えました。ピアサポートについては27.3%になっています。いずれも「利用したことがある」と回答された方のうち86.9%、88%が「役に立った」と回答されています。
孤立感、偏見についても聞いておりますけれども、これは本人回答のみでありますが、それぞれ12.3%、5.3%が「あった」と回答しています。
家族や家族以外の周囲の人への負担、迷惑をかけていると感じるという方々は、それぞれ47.2%、21.4%となっております。家族に関しては、支援・サービスが十分にあるかということも聞いておりますが、47.7%が「ある」と回答されています。
就労でありますが、これは「診断時に就労していた」と答えた44.2%に対して解析を行っております。がんの診断後、調査までに退職・廃業したという方々は19.8%となっておりまして、そのうち56.8%が初回治療までに退職していたという数字になっております。
経済的な負担でありますが、経済的な負担から生活などに何らかの影響があったと回答された方は26.9%。最も多かった項目は「貯金を切り崩した」というものでした。
成人のほうではグループ別の比較をしております。希少がん、若年者(39歳以下)、一般のがん患者ということで、3グループで比較をしましたところ、若年の患者、いわゆるAYA世代のYAの方々は、経済面、社会面、医療者との関係という面から、他のグループよりも比較的困難な状況が多いということが観察されております。これらの点について別途研究班等でも提言書を出しておりますので、併せて御覧いただければと思います。
次に、小児の結果です。小児はもともと数が少ないということもありますので、年間4例以上あった施設で、2014年、2016年の2か年に診断された患者さんの全数調査といたしました。97施設から御協力をいただきまして、報告対象が1,029名になっております。小児調査においては、回答は御家族の方々をはじめとする代諾者にお願いしております。ですので、結果を成人と比較する場合にはそのことを念頭において考える必要があるということです。
治療中の体験ですが、先ほどと同じような10点満点で見たところ、平均が8.4点で、その他、成人と共通の質問で見たところ、主に小児での肯定的回答の割合は成人よりも多いという回答になっております。
告知につきましては、治療開始前に本人に告知したという回答が全体の52.7%です。病名を伝えて告知したというのは、そのうちの63.5%でした。
就学状況についてです。診断時に就学していたと回答したのは513名です。治療のために転校・休学・退学をしたというのは全体の87.5%でした。この内訳は、在籍校によって大幅に異なっております。小中学校の場合は転校が最も多かったのに対して、高校では休学が最多であって、退学の方も一定数いらっしゃるという形になっております。
周囲の人ががんの患者に偏見を持っているというふうに回答されたのは、全体で24.5%でした。成人では、本人回答なのが少し違いますけれども、5.3%が偏見を感じるという回答で、対比的であります。
家族の悩みや負担を相談できる支援・サービス・場所があるかという問いについては、肯定的な回答したのは全体の40%弱、39.7%です。これは成人の47.7%よりも若干少ないという形です。
最後に経済的な負担でありますが、医療費を確保するために生活に影響があったという回答は41.7%です。これは成人が27%であったのに対して多いという形です。
家族に仕事や働き方を変えた人がいるという回答も全体の65.5%あります。
以上、駆け足となりましたが、成人と小児の患者体験調査結果概要を御報告した次第です。関係者の皆様に感謝申し上げます。
以上です。
○山口会長 ありがとうございました。
このテーマは、後の緩和ケアも含めて、あるいは遺族調査も含めて、後ほど議論が進捗状況のところで予定されていますが、この段階で東参考人に御質問のある方、お一人かお二人に絞らせていただきますが、お手をお挙げください。
私、ちょっと見にくいので、事務局で今日の資料を一生懸命まとめておられる大島先生が指名いたしますので、どうぞよろしくお願いします。今の段階で東参考人に質問はありませんでしょうか。
○事務局 久村委員、よろしくお願いします。
○久村委員 今の患者体験調査のデータですけれども、大変貴重なデータを提供していただきまして本当にありがとうございます。希少がん、AYA世代のがん、一般のがんの患者さんに分けて分析を行っていらっしゃいますが、これは男女別の分析というものについて行っていたら教えていただきたいのですが、例えばがん医療に対する総合評価であるとか、医療者とのコミュニケーションであるとか、就労に関する体験というのが、患者さんの性別、男女で違うのではないかなと思っていたのですけれども、男女間で違いがあった項目などがありましたら、教えていただけたらと思います。
○山口会長 東参考人、お願いします。
○東参考人 ありがとうございます。
今回は特に男女間での差ということを取り立てて見ていないというのが現状です。若年の患者さんを見たときには、女性の方のほうがずっと多い。8割方が女性であったということは見ていたのですが、それ以上の個別の回答についての男女間での差というのは見ておりませんが、これは貴重な切り口だと思いますので、今後見ていきたいと思います。ありがとうございます。
○山口会長 もう一方、いかがでしょうか。大丈夫そうですね。ここは後ほど議論がいろいろあるかもしれません。
引き続き遺族調査について、加藤参考人からお願いいたします。
○加藤参考人 よろしくお願いします。国立がん研究センターの加藤雅志です。
では、スライドを共有させていただきます。
こちらの調査結果は昨年10月に報告しているものになりますが、我が国で初めてとなる本格的な全国の遺族調査になります。このような人生の最終段階の状況について明らかにできる意義深い調査ができるようになったのは、これまでのがん対策推進協議会などの多くの関係者のご尽力によるものです。このような調査結果をご報告できる状況になったことに、私としても皆様に感謝申し上げるとともに、この調査にご協力してくださったたくさんの御遺族の方々に改めて感謝申し上げたいと思います。
限られた時間でございますので、やや駆け足でのお話になるかもしれませんがご容赦ください。今回がんを含めた5つの疾患のご遺族、5万名の方に調査を行っております。こちらの結果は死亡者数を用いて全国推計値を算出しております。回答者数ですが、発送は5万名の方に行いまして、有効回答者数2万1000人ということで、調査票が届いた方の中では50%を超える多くの方に御協力いただきました。
早速結果の報告に移っていきたいと思います。特にがんのところを中心に見ていきたいと思います。亡くなる1か月前の療養状況について、痛みが少なく過ごせたかと質問すると、がんの患者さんでは47%の方が痛みが少なく過ごしたと回答しているのですが、逆に痛みがあるという視点で分析を行うと、こちらの「欠損」「わからない」という回答があるために、「痛みあり」というところで見ると、がん患者さんの4割の方が痛みを感じている状況であり、ほかの疾患に比べても多くの割合の方が痛みを感じているということが明らかになりました。
その痛みがあった理由についてです。あくまでも遺族の視点ではありますが、結果を見ていくと、医師はある程度対処してくれたが不十分だったということや、診察時間、回数などが不十分だったという回答が多くありました。これらはあくまでも遺族の視点であるため、全ての理由を明らかにするものではないのでしょうけれども、遺族からはこのような評価になっているということも明らかになりました。
続いて、痛みを含めた体の苦痛について見ていきます。亡くなる前1か月の間、痛みを含めた体の苦痛について質問をすると、苦痛が少なく過ごしていた方は42%ということですが、こちらも苦痛があったかという視点で見てみますと、「苦痛あり」という方が47%いたということで、多くの方がこのような苦痛を感じているという状況でした。
今度は気持ちの部分、精神心理的な部分なります。穏やかな気持ちで過ごせたかという質問に対して、がん患者さんのうち45%の方が穏やかに過ごせたということだったのですが、逆に気持ちのつらさという形で分析をしてみますと、気持ちのつらさを抱えていたであろう方は42%という状況でした。
望んだ場所で過ごせたかという質問に対して、がん患者さんの48%ぐらいの方が望んだ場所で過ごしていたということでした。さらに場所別に見てみると、自宅で過ごしていた方では、多くの方が望んだ場所で過ごしていたと回答しておりました。
医療に関する満足度は、疾患別に見ると、がんが71%ということで、ほかの疾患よりも高くありました。また、亡くなった場所別で分析してみますと、自宅で亡くなった方が78%、緩和ケア病棟が82%とより高い状況でありました。
全体のまとめとなりますが、今回、本当に多くの患者の御遺族の方々の御協力があり、このような全国初となる重要な結果を出すことができました。がん患者さんの亡くなる前の状況を見ていったときに、痛みが少ない状態で過ごしていたがん患者の方が47%ということを言いつつも、痛みを感じていた方は40%もいたということで、まだまだ対策が必要と考えております。
痛みがあっても改善されていない原因については、さらなる分析をしていかなければいけませんが、少なくとも遺族の目から見ると、医療者にはもう少し対応の仕方に改善の余地があるのではないかと評価されていたことも明らかにされました。また、精神心理的な面への対応もまだまだ対策が必要と考えます。
望んだ場所で過ごしていたということに関して言うと、自宅で亡くなった患者さんでは87%と高くあり、病院は自宅に比べると40%と確かに低くありますが、病院で過ごすことを望む患者も一定数いることを忘れてはいけないのかなと思っております。
亡くなった場所で受けた医療に関する満足度ですが、がん患者さんは71%と高くあったのですが、まだまだ改善する余地も多くあるのだと思っております。
自宅で亡くなった患者さんでは、79%が満足していたということから、自宅でも十分に満足できる医療を受けることができているということが分かりました。
もう一つ、今回遺族調査ということで、遺族の方がどのような体験をしているのかということも併せて調査しております。家族の方の介護の負担や死別後の遺族としての精神的な負担ということも多くあるということが今回分かっており、遺族に対するケアも引き続き重要な課題であるということが明らかになりました。
私のほうからは以上になります。
○山口会長 ありがとうございました。
医療現場では緩和ケアの充実によって痛み、8割ぐらいはほぼなくなるようにできますよと臨床医は言ってきていると思うのですが、今日それが少し低く出ているというのは、後ほども議論になると思うのですけれども、加藤先生としてこの点をどういうふうにお考えになっていますか。
○加藤参考人 痛みは2割までは減らせると言われるにもかかわらず、痛みを抱えている患者がまだ多いというご指摘だと理解いたしました。
 
○山口会長 痛みについて、頻度の違いといいますか、どうお考えになるかという点と、もしそうであれば、次の基本計画においては、除痛、体の苦痛だけでももう一度しっかりやり直す必要があるかとか、その辺りをどうお考えでしょうか。
○加藤参考人 今、山口先生がおっしゃったことは非常に重要なところです。我が国では患者が亡くなっている場所としては病院で亡くなることが多いので、病院で亡くなった患者さんの状況が全国の推計値を出すとより強く反映されています。今回の遺族調査からわかるように我が国では今、4割のがん患者の方が痛みを抱えております。例えばイギリスなどと比較すると、これは調査票が一緒ではないので簡単に比較できないのですが、痛みを抱えている方は3割ぐらいということがわかっていますので、がん対策としてまず目指すべき目標はその辺りなのかと思います。
また、わが国の緩和ケア病棟の状況を見てみると、施設による任意参加にはなりますが遺族調査に先行して取り組んでいるJ-HOPE studyというものがあり、そこに参加している緩和ケア病棟はとてもよく取り組んでいる施設になるかとは思いますが、J-HOPE studyに参加している緩和ケア病棟では、同じような聞き方をすると、確かに痛みを抱えている方は2割ぐらいという結果になっておりました。つまり、わが国で最善の緩和ケアが提供されれば、痛みを抱える患者の割合は2割まで減らせるとも思います。しかし、全国の一般病院でそこまで到達するのはまだまだ遠いと考えています。しかし、先ほども申し上げたようにイギリスと比べて痛みを抱えている患者がまだ多いということを考えますと、我が国のがん医療の現場としては、痛みを抱えている人の4割を少なくともまず3割に減らして、さらに高い目標を目指していくというのがよいと思っています。
まだまだ緩和ケアには対策が求められており、よく言われていることかもしれませんが、緩和ケア研修会の効果により、医療用麻薬などを処方するようになってきましたが、最近新しく出てきた薬への対応とか、知識のブラッシュアップがなかなか行き渡っていないと言われています。こういった知識の更新などについてはがん対策の一環としてやっていってもいいとも思います。そして、緩和ケアは医師だけではなくて、多職種の力が絶対必要な領域です。チーム医療を進めていく取り組み、たとえば、がん拠点病院ではスクリーニングなどを必須化させていますので、それらを多職種チームで話し合えるツールに発展させていくなど、まだまだ対策を進めていく余地があると思っております。
○山口会長 ありがとうございました。
もう一方御質問があればお受けいたしたいと思います。羽鳥先生、どうぞ。
○羽鳥委員 日本医師会の羽鳥です。
現場の開業の先生方、在宅医療をされている先生方は、麻薬の使い方、除痛のこともかなりよく勉強されています。現場で終末期医療、看取りをされている先生方は一生懸命やっていると思うのですが、実は院外処方をされている先生ですと、急に麻薬が必要になったときでも、薬局が開いていないとか、そういうこともあって、まだ薬剤師さんのほうの対応が十分できていない面もあるかなと思います。
先ほど東先生から見せていただいたグラフで、施設のところで痛みを感じている人が多いというのがあったと思うのですが、例えば老健施設とか療養施設ですと、施設の管理者とか施設の管理医師とかが十分知識を持っていない可能性もあるので、その辺に対する教育をぜひシステムとしてつくっていただけたらと思います。医師会からの希望はそういうことです。
以上です。
○山口会長 ありがとうございました。
ここで報告はおしまいにさせていただこうと思うのですが、なお、参考人5名の方に対しての御質問等を事務局にお寄せいただければ、回答をお願いさせていただこうと思います。
なお、この後、同じような場面の議論がございますので、もし可能であれば参考人の皆様もあと1時間ほどお付き合いをいただければ大変幸いです。
次のテーマは資料6-1です。前回のがん対策推進協議会の議論のまとめがここに出ておりますが、その場で結論が出なかった5点について事務局のほうから回答させていただきます。加熱式たばこの件と受動喫煙の割合の話、障害者のがん検診、コロナの関係で緩和ケアの研修会の開催の問題、小児がんサバイバーに関する長期フォローアップ、この5点について、その後の整理をお願いいたします。
○がん対策推進官 本日健康課のたばこの者が来ておりませんので、そちらのほうからの回答を代わりに事務局で読ませていただきます。
1点、加熱式たばこについて調査研究を行うというふうにあるがということですが、健康課としましても、昨今の加熱式たばこを取り巻く状況は、たばこ施策において重要な論点と承知しておりまして、今、複数の厚生労働科学研究費補助金事業のほうで加熱式たばこに関する研究を進めているという状況でございます。
また、職場での受動喫煙の割合が高くなっている。業種、企業規模などによって差が大きいということでございます。こちらにつきましても令和2年12月の調査内容を現在取りまとめているところでございまして、その内容をもって前回調査の結果と比較して、その後の方策について検討していきたいという御回答でございました。
続きまして、障害者に対するがん検診の受診勧奨、受診率についてということでございます。3月3日に開催された厚生科学審議会科学技術部会におきまして、令和3年度二次公募の課題として研究を提案させていただいたところと聞いております。
また、コロナの影響で緩和ケア研修会の開催ができず、オンラインでできるかどうかということでございますが、現時点においては緩和ケア部会自体の開催の準備を進めている状況でございます。緩和ケア研修会のプログラム作成等を事業委託している日本緩和医療学会を中心に、そういった研修会の見直しを進めていただいている状況でございます。
さらに、小児がんサバイバーの方のサバイバードックなどの開設に向けての検討ということでございますが、長期フォローアップの一つの在り方としまして、人間ドックの応用につきまして、厚生労働科学研究費補助金において検討をし始めたところでございまして、引き続き研究を進めていく予定にしております。
以上でございます。
○山口会長 ありがとうございました。
資料6-1に回答という形で全て記載していただいているのですが、その中でさらに詳しく述べていただかなければいけない点が5点あったので、今、御説明をいただきました。その他のところは、この回答を読んでいただければ、ある程度把握していただけるのではないかと思いますけれども、委員の皆様におかれては、前回の御意見でさらに御質問なり御意見等ございましたら、ここで伺わせていただきます。いかがでしょうか。特になさそうですね。
それでは、これで皆様も参考にしていただきながら、今日のもう一つの主題である共生のところの議論に移らせていただこうと思います。この後の議論は中間評価ですので、ここに挙げられている評価の項目について、委員の皆様がどう評価をしていただけるかということを最終的にはパワーポイントの形でまとめていき、それを3~4回繰り返した後で、第4期の計画に生かしていく、そういう運びになってまいります。
このたび、委員の皆様から前もって様々な御意見をいただいております。全部で197件の御意見を皆様からいただきました。その御意見を整理しながら、この後、進めていきたいと思います。中間評価ですので、その数値並びに進行状況がどうかということが主題になりますが、御意見の後、検討を始めたとか、それからこういう会合でいろいろな意見をまとめることができたと。これはいい進捗になると思うのですけれども、これから検討しようと思っているとか、感想はこうでしたということは、この報告書にはちょっとなじまないので、少しそういう記載があるのですが、そこは削除していただくようにお願いしようと思っています。
ただ、197の御意見をしっかり読ませていただくと、今のこの中間評価のテーマ、問題ではないが、4期につなげていけるという記載も幾つか散見されましたので、それは事務局とお話しして、4期の計画を策定する段階で参考にさせていただきたいなと思っております。
そういう観点で始めていきたいと思います。資料7-1を御覧ください。量が多いものですから、事務局からこの資料を4分割にして説明していただきます。4分割した一つ一つについて、その評価がどうかというときに、まずは私のほうで皆さんの意見を簡単にまとめさせていただいて、その上で皆様から御意見を賜りたい。かように考えておりますので、御協力をよろしくお願いいたします。
それでは、資料7-1の全体目標のところの御説明を事務局からお願いいたします。
○がん対策推進官 事務局でございます。
3ページを御覧ください。3ページの資料の上段にこれまでの計画の記載ぶりを書かせていただきまして、中段のところに数値などを示しております。さらに下の進捗状況という記載になってございます。
中間評価の指標としましては3つございまして、「自分らしい日常生活を送ることができていると感じているがん患者の割合」「がんの診断~治療開始前に病気や療養生活について相談できたと感じるがん患者の割合」「家族の悩みや負担を相談できる支援が十分であると感じているがん患者・家族の割合」ということでございます。
それぞれ70.5、76.3、成人48.7、小児39.7という数値でございますが、参考までに前回の調査の数値を示しておりまして、一番上の「自分らしい日常生活を送ることができていると感じるがん患者の割合」につきましては、今回の調査については聞き方が異なっているため、参考となる比較できる数字のほうは下に80.8%という形で記載をさせていただいており、いずれの項目についても前回の調査よりはよくなっている傾向があると考えております。
以上でございます。
○山口会長 1回そこで切って議論したいと思うのですが、この分野に委員の皆様から18件の意見が寄せられてきております。それを概観すると、今の3つの項目の中で、日常生活が送れるかどうか、あるいはそういうことに関する相談が可能かという数値は、横ばいか増加傾向ではないかと思われます。
2番目の家族の悩みや負担についての相談はという設問に関しては、明らかに増加しているように思います。
相談支援体制については、不十分という意見が大部分であって、5割に達していないのは問題だということを数名の委員の方がこの意見の中に書いていただいていますので、そういう形で進捗状況はまとめていく形になろうかと思いますが、その数値以外にいろんな思いもありますので、皆様の意見を伺いたいと思います。
まずは最初のページについていかがでしょうか。お手をお挙げいただければと思いますが。ちょっと皆様、お待ちください。今、共有を外して画面を。委員の皆様の画面になりましたので、この分野について何か御意見があればお手をお挙げください。
○事務局 久村委員、お願いいたします。
○久村委員 久村です。
この資料の項目番号で3002番です。治療開始前に誰かに相談できたという方が8割ぐらいいるというのは、本当に高く評価できると思うのですが、やはり治療中あるいは治療が終わった後でも必要なときに病気のこと、療養生活について誰かに相談できて、そして支援が受けられたと感じられるということも同じぐらい重要かなと思います。
地域の中には長期にわたってこの治療の副作用であるとか後遺症を抱えながら生活をしている患者さんが多いですし、小児がんサバイバーの長期フォローアップということも含めて、必要なときに心理社会的なサポートを含めた支援というものが受けられるような体制を整えていくということが、今後のがん対策において重視していかなければならない点ではないかなと考えています。
以上です。
○山口会長 それは今、実施されているけれども、まだまだパワーが弱いという意味でしょうか。それとも全く多くの医療機関で充実していないという意味、どちらでしょうか。
○久村委員 多くの病院でも力を入れてやっていることかもしれないのですが、まだまだこれからもっと重視して頑張ってやっていかなければならない点ではないかなと考えます。
○山口会長 分かりました。
その他御意見、いかがでしょうか。
○事務局 小原委員、よろしくお願いします。
○小原委員 ありがとうございます。日本社会事業大学の小原でございます。
3001から3003までのことを踏まえた形での私の意見でございますけれども、医者に相談したということの御回答もかなりありましたが、それ以外に家族とか友人とか、いわゆるインフォーマルな資源の中で相談をされていたというのが特徴かと思いました。
その一方で、相談できなかったという方々もこの中に含まれているわけで、どうして相談ができなかったのかというところで、例えば医療者側のコミュニケーションの問題なのか、それともお医者さんが多忙なので、煩わすのが申し訳ないのかとか、いろいろなちゅうちょやためらいもあると思いますが、どうして相談ができなかったのかとか、御家族も含めて、そこを明らかにした上で、ぜひ第4期の相談体制のところに組み込んでいただけたらと思いました。
以上です。
○山口会長 ありがとうございます。
小原委員からはその旨、御意見として頂戴しておりますので、今日のこの進捗状況にはそぐわないかもしれないけれども、第4期に向けての必要な調査、ないしは第4期の基本計画の中で書き込んでいくべき事項かなというふうに整理をしておりますので、またその節はよろしくお願いいたします。
その他の御意見、いかがでしょうか。よろしゅうございますか。
それでは、引き続き緩和ケアの推進についてです。ここでは委員の皆様から40件の意見をいただいておりますので、それも参考にしながら議論を進めていきたいと思います。
それでは、事務局から御説明をお願いします。
○がん対策推進官 それでは、4ページから数字の部分のところを中心に説明をさせていただきます。項目番号3011番、心のつらさがあるときに、相談できると感じる割合が32.8%。また、身体的な苦痛を抱えるがん患者の割合が、前回調査42.6%に対し、今回は44.6%。また、精神心理的な苦痛を抱えるがん患者の割合が、前回調査38.5%に対し、今回38.0%。また、それらによって日常生活に支障を来している患者の割合が30.8%という状況でございました。
続きまして、6ページ目になります。3015、療養の生活の最終段階における身体的な痛の割合。先ほども報告がございましたとおり、40.4%が痛み。47.2%が体の苦痛を感じていました。3016番ですが、最終段階において精神的な苦痛を感じた患者が42.3%という状況でございました。
続きまして、7ページ目、緩和ケア研修の修了者数でございます。前回12万4184人に対しまして、今回は13万9467人という形になってございます。
8ページ目、3018番、国民の緩和ケアに関する認識。52.2%の方が「がんと診断されたときから」というふうに回答をされております。さらに、医療用マークに関する認識としまして、「正しく使用すれば安全だと思う」と回答した者の割合が、前回52.7%に対して、今回は48.3%という状況でございました。
簡単ではございますが、説明は以上です。
○山口会長 ありがとうございました。
委員の皆様の御意見を概観してみると、今の9項目について順番に中間評価的に申し上げていくと、心のつらさの相談について、3割以上というのは評価できるのだけれども、全体のそういう対応が76%であることに比べると、やはり低い、より強化が必要ではないのかという御意見があったと思います。
体の苦痛については、半数近くであって、増加傾向。精神的苦痛は4割ぐらいがあって、不変であると。先ほどの議論にありましたように、まだまだ十分な域に達していないのだろうなと思われました。
日常生活の支障云々というところで、3割という数字になっています。今回のこのデータは初めてなので、比較対象がありません。3割をどう評価するのかということが課題になっていくのではないかなと思います。
5番の項目で、エンド・オブ・ライフケアの中の身体的苦痛ですが、ここも4~5割という数字が出ていて、皆さんの御意見は、まだまだ改善の余地があるとされています。
同じくエンド・オブ・ライフケアの精神的苦痛についても4割程度で、要改善だろうなという御意見が主流だったと思います。
7番目の項目で、緩和ケア研修の修了者数は、一応増加という評価なのですけれども、これは地域によって、大きな医療機関は増えているのですが、診療所の皆さんのところでまだまだ少ない。静岡県の場合はそういうことが問題になっておりますので、その辺りの評価をどうするか。
緩和ケア自体の認識は半数程度で低い。かつ前回の調査に比べて逆に低くなっている。
医療用麻薬への認識についても、まだまだ半数程度の認識しかなくて、逆に低下しつつある。ここは大きな問題であろうと。このような取りまとめを皆様の御意見からはできるのではないかなと思いました。
いや、そうでないよという方もいらっしゃると思いますし、数値の評価というのは難しいですね。私のように50年近くこの世界にいますと、昔0だったのが、30%、40%になると、すごく進んだなという気がいたしますけれども、一方で、全てのがんの患者さんの4割ぐらいしかケアできていないのかと聞くと、それはとても少ないなと、若い方からそういう意見がありますので、進捗状況というのは申し上げにくい部分がいろいろあります。そういうことも踏まえてフランクに皆様の御意見を緩和ケア関係でいただきたいと思います。先ほどの加藤参考人のお話も踏まえながら、いかがでしょうか。お手をお挙げください。
○事務局 三上委員、よろしくお願いします。
○三上委員 「にじいろ電車」の三上と言います。
緩和ケアのところでは具体的な痛みと精神的なところの評価が多いのですけれども、小児がん患者会ネットワークを通じて全国の親の会の方々から意見を吸い上げたところ、終末期を過ごす場所の選択ができること、というところでは、小児の在宅の方の体制と相談先が整っていない部分があるのではないかという意見がありました。あとは、緩和ケア病棟とかこどもホスピスなどの施設をつくる費用を助成してほしいという意見がありましたので、申し上げたいと思います。
以上です。
○山口会長 ありがとうございました。
それでは、引き続き。
○事務局 荒木委員、よろしくお願いいたします。
○荒木委員 お願いします。聞こえますでしょうか。
○山口会長 聞こえています。
○荒木委員 事前の意見のほうでも書かせていただいたのですけれども、遺族調査の結果を挙げる場合には、そのことが分かるように示していただく必要があると思いました。ほかの指標と異なって、家族と患者の関係や家族の心理状態で回答が変わってくる可能性がありますので、がん対策の評価指標として用いる場合には留意が必要ではないかなと思いました。
以上です。
○山口会長 この点については、事務局のお考え、あるいは加藤参考人のお考えを伺おうかなと思いますが、まず事務局、いかがですか。配慮していく。当然そういうことになりますけれども。
○がん対策推進官 まさにそこの違いというのはあると思います。小児の調査も実は同様の傾向がございまして、そういう意味では、個々の事例、別々の指標を比較するというのはどうなのかという部分もありますので、その辺りも含めて加藤参考人にも御意見をいただきたいと思います。
○山口会長 加藤参考人、いらっしゃったらどうぞ。
○加藤参考人 ありがとうございます。
まさに御指摘のとおり、本人が答えるのか、家族・遺族が答えるのかで評価が異なってきます。ただし、遺族の立場で答えた回答としてはこのような結果だったいうことは事実でございますので、それを明記していくということは当然ですし、皆さまにそういう目で評価いただけたらと思います。
以上です。
○山口会長 ありがとうございました。
そのほかの御意見、どうぞ。
○事務局 木澤委員、よろしくお願いいたします。
○木澤委員 木澤です。
今の点ですけれども、確かに遺族の評価であるということは考えないといけないのですが、人生の最終段階の療養の質を遺族以外が評価することはなかなか難しいと思います。加藤さんが先ほどおっしゃった国際的な遺族調査の結果と比較していくということは非常に有効ではないかと思っています。
それから、体の苦痛が強くなったり、オピオイドに関する認識が悪くなったりというのは、社会的な影響とかもあるとは思うのですが、重く受け止めなければいけないと思っており、さらに対策を進めていく必要があると思います。
一方で、2019年にWHOの疼痛のガイドラインも改定されており、がん疼痛緩和の目標は、疼痛はゼロにするのではなくて、御本人が日常生活を保っていけるだけの疼痛緩和をしていくことの重要性が強く書かれているのです。背景はどこにあるかといいますと、今、アメリカは年間4万5000人がオピオイド関連死しているのです。疼痛をゼロにしようと努力してオピオイドの過剰使用が起こったという問題を重く受け止めないといけなくて、ただ除痛を図るとか痛みをゼロにしようという取組をするのは誤っていると思います。適切な介入をしていくということが重要ですので、そこのところは適切な目標をつくっていく必要があるだろうと思います。
3つ目です。遺族調査ですが、これは1か月前、つまり、亡くなる直前のケアを反映しているものです。これがどこで行われた療養生活を反映しているのかということをしっかり見ないといけないと思います。多くの場合、がん診療拠点病院では多分ないだろうと思われます。ですので、そこのケアをどう上げるかということを考えるためには、先ほども御発言がありましたが、最期亡くなる場所をどうしていくのか、そこでのケアをどう充実させるのかという観点で緩和ケアの施策を考えないといけないと思います。拠点病院の緩和ケアをどうするかという問題と、拠点病院以外の緩和ケアをどうするのかという問題を別に考えなければ行けないと思います。緩和ケア病棟のケアはどうやらいいらしいけれども、では、そこのケアをただ増やせば解決するのか。そういうことを総合的に考えていく必要があるなと感じました。
以上です。
○山口会長 ありがとうございました。今後の議論に生かしたいと思います。
どうぞ。次の方。ほかにいらっしゃいませんか。
それでは、緩和のところはここまでにさせていただきます。
そうしましたら、次の御説明を事務局のほうからお願いします。相談支援のところですか。
○がん対策推進官 9ページ以降のところを説明させていただきます。項目数も多いので、かいつまんでの説明とさせていただきます。9ページのところは相談支援の体制等についての項目になってございます。その中でも特に3024、ピアサポーターについて知っているがん患者の割合ということを初めて調査いたしまして、27.3%という形になっております。
続きまして、11ページ、がん情報サービスへのアクセスというところでございますが、3025番、アクセスし、探していた情報にたどり着くことができた者の割合が、前回調査71.1%に対しまして、今回調査71.6%という形になってございます。
12ページは、拠点病院の多施設合同会議の数、また、セカンドオピニオンに関する話を受けたがん患者の割合ということでございます。3032番、セカンドオピニオンに関する話を受けたがん患者の割合が、前回調査40.3%に対し、今回は34.9%となってございました。
13ページ、在宅で亡くなったがん患者の医療に対する満足度や望んだ場所で過ごしたがん患者の割合ということでございますが、3034番、望んだ場所で過ごしたがん患者の割合が47.7%となってございます。
14ページは就労支援についての項目になってございます。3041番、治療の開始前に、就労継続について説明を受けたがん患者の割合が、今回初めて調査しまして、39.5%という形になってございます。
16ページは、仕事と両立をするための社内制度等を利用した者ということでございます。3046番、社内制度を利用した患者の割合が、今回初めて調査しまして、36.1%という状況でございました。
17ページ、就労以外の社会的な問題についての項目でございます。外見の変化に関する相談ができた患者の割合が、成人で28.3%、小児で51.8%という状況です。
また、治療開始前に、生殖機能への影響に関する説明を受けた方、これは40歳未満の方ですけれども、前回調査、成人では48.2%に対し、今回は成人52.0%、小児53.8%という状況でございました。
19ページ、小児・AYA世代への対策というところでございます。3052番、治療開始前に、教育支援等について説明を受けたがん患者・家族の割合が、今回初めて調査しまして68.1%。3053番、治療中に学校・教育関係者から両立の支援の説明を受けた割合が、今回初めて調査しまして、76.6%という形になってございます。
以上、ざっとでございますが、事務局からの説明といたします。
○山口会長 ありがとうございました。
ここは非常に話題が豊富なので、少しずつ切って議論を進めたいと思います。まず最初に9ページから11ページ、相談支援と情報提供の部分を議論させていただきます。項目に対する評価としては、相談支援センターの認知度は確かに向上しており、使った方にとっては満足度が高い。だが、トータルで見ると活用はまだまだ不十分なのではないかなというのが委員の皆様から寄せられた意見だったと思います。
次のピアサポートに関しては、認知度がまだ低い。一方で、質の担保あるいは在り方についてしっかりした議論が必要だろうという意見。これは前の協議会からずっと引きずっているところでもあるのですが、そういう意見をいただいております。
情報提供に関しましては、がん情報サービスに関して、アプローチした方の7割は有効であると。その数値は横ばいなのですが、これも以前の協議会の中で、確かによく使われているということは承知しているけれども、多くのがんの患者さんがこれを認知して、患者さん自身でアプローチできているかどうかは疑問だ、やはり認知度がまだまだではないかという議論がかつてはなされておりました。それは今回の中間評価には入らない議論ですけれども、御参考までに申し上げておきます。
4番目の点字、音声、更新については、特に委員の皆様から御意見はいただいておらないように思います。
以上の相談支援と情報提供について、お書きいただいた意見以外にさらに強調しておきたいということがございましたら、お手をお挙げいただき、お願いいたしたいと思います。
○事務局 では、大西委員、よろしくお願いいたします。
○大西委員 キュアサルコーマの大西です。
ピアサポートの認知度が27%と低いですけれど、利用者のうち「役立った」という回答が88%と満足度が非常に高いので、ここの認知度はもっと上げるべきです。相談支援センターとは別に都道府県内の複数エリアにピアサロンを設置してはいかがでしょう。患者団体の連合体みたいなものを都道府県単位で作り、主体を患者団体の連合団体にはっきり移すほうがうまくいくような感じがしております。ただ、設置場所とか運営費については都道府県のバックアップが必要だと思います。とにかく主体をもうちょっと患者団体に任せていただければ非常にいいのではないか。うまくいっていない都道府県は、例えば全がん連に介入していただくとか、全体的に抜本的に考える必要があると思います。あるいは福島県とかは、行政とか医療機関ともうまくいっているので、その辺の好事例も参考にしながら進めていけないかなと思います。家族には言えないようなことが、患者同士のネットワークだと精神的なところもフォローできるので、ぜひ進めていただきたいと思います。
以上です。
○山口会長 ありがとうございました。
そのほかに御意見、いかがでしょうか。
それでは、次に移らせていただいて、12ページ、拠点病院と地域との連携、在宅緩和ケアを議論させていただこうと思います。評価項目としては、拠点病院、地域連携の合同会議は地域で徐々に増加傾向にあると。開催件数が増えている。
その次のセカンドオピニオンに関して、ちょっと意外なデータかもしれないのですが、前もって医療機関でセカンドオピニオンの機会がありますよという説明が低くなっていると。ここは改善すべきだという委員の皆様の御意見であったと思います。ただ、一方で、一部の委員の方から、セカンドオピニオンという概念がかなり定着してきているので、初診の段階、あるいは診断がついて治療に移る段階で、医療スタッフのほうがセカンドオピニオン、あえてそういう可能性がありますよということを言っていない面もあるのではないかという御意見もございました。
それから、在宅緩和ケアですが、在宅緩和ケアへの満足度は良好であろうという皆さんの御意見だったと思います。一方で、在宅緩和ケアを行うのは自宅ということになるのですが、望んだ場所という観点から言うと、半数ぐらいの満足度なので、先ほども出てまいりましたが、その半数を解消するための医療福祉サービスの充実ということを申された委員もおられたように思います。
それでは、今の2項目について御意見を賜りたいと思います。いかがでしょうか。
○事務局 長谷川委員、よろしくお願いします。
○長谷川委員 私、ワンステップという患者会の長谷川と申します。よろしくお願いします。
私は、セカンドオピニオンに関して少し意見を申したいと思います。セカンドオピニオンに関する話を受けた割合が少なくなっているというところで、私自身は実際の数字はどうなのだろうなと気になりました。先ほど検診や診療の現場で実際の数字はどうなのだという話がありましたけれども、こちらのセカンドオピニオンはどうなのだろうなと思っています。
理由としては2つあります。やはりセカンドオピニオンというのは、患者・家族が不利益を被ることがないようにと。そういう仕組みでやられていると思っています。それが機能しているのか。それが理由です。
もう一つは、一歩話がずれていくのですけれども、従来の仕組みの中で硬直していた部分が、コロナウイルスの出現によって明らかになったのではないかという見方もできるのではないかと思っています。もしセカンドオピニオンが全く機能していなければ。これはどういうことか説明しますと、そもそもセカンドオピニオンというのはとても労働がかかります。紹介状をお願いして、CD-ROMに焼いてもらって、相手側の予約をして、CD-ROMを渡して、それを取り込んでもらって、やっとたどり着いて、その後また主治医の下に戻って返却する。こんなやり取りだったと思います。このやり取りは少なくとも必要なのでしょうか。今の時代に一般ではもう使われていないCD-ROMを使って情報のやり取りをしている業界はあるのだろうかというのは常々思っていました。そして新型コロナウイルスが現れました。あ、なるほど、これでオンラインの世の中に変わっていくのかな、情報の伝達も横のつながりもよくなっていくのかなと思っていたら、セカンドオピニオンに関してオンライン導入しやすいなと患者的には思うわけですけれども、非常に少ないという状況だと思っています。
原因は何だろう。そうなると、先ほども言いましたが、情報の横のやり取りというのはとても難しいのだろうなというふうに想像します。これが本当ならば、では、パーソナル・ヘルス・レコードとか、そういったところに進む段階なのではないのか。マイナンバーに医療情報をひもづけなど議論されています。今日はくしくも3月11日、災害時に備えるという意味でも自分自身で医療情報を持っているということが患者・家族にとってもとてもいいことだと思っています。
情報の取扱いという意味でも、次の計画に向けて、このセカンドオピニオンをきっかけにして、象徴だと思うので、議論の俎上にのせていただければと思いました。
以上です。
○山口会長 後半のポイントは今後の課題として考えていく必要があると思うのですが、例えばゲノム医療とか全ての分野でそのことは議論されています。今回出てきた数字、セカンドオピニオンの現実、現状をどう評価するかということ、今の御意見を参考にさせていただこうと思います。
○事務局 羽鳥委員、よろしくお願いします。
○羽鳥委員 日本医師会の羽鳥です。
今の長谷川さんの御意見、まさにそのとおりだと思います。日本医師会はそういう情報の公開に反対しているかというと、決してそんなことはないし、PHRもEHRも推進している立場です。それから、マイナンバーを使ったオンライン資格確認ができるようになると、オンライン資格確認はただのマイナンバーのキーを示すだけですけれども、その中にクラウドの仕組みが入ってくると、今度はオンライン資格確認をして、広域の医療情報、安全な医療情報の交換が可能になってくる。今までのものと違って、閉鎖空間の中で情報交換が可能になってくると、診療所と病院あるいは病院と病院の間での情報のやり取りが可能になってくれば、CDのやり取りとか文書でのやり取りとか、そういうのは必要なくなってくるようになります。そういう意味では、長谷川さんが考えておられることが実現してくるのだと思いますので、ぜひ推進していただければいいと思います。デジタルトランスフォーメーションは医療界においても日本医師会においても推進している立場だということは御理解いただきたいと思います。
セカンドオピニオンについては、皆さんがおっしゃることに僕は賛成しています。
○山口会長 ありがとうございました。
そのほか御意見、どうぞ。
○事務局 では、鶴岡委員、よろしくお願いします。
○鶴岡委員 鶴岡です。
栃木県で在宅医療の診療所をやっております。在宅緩和ケアについて御意見を申し上げます。望んだ場所で過ごせたがん患者さんが47.7%ということで、やはりエンド・オブ・ライフケアにおける在宅医療の充実は、かなり大きな課題なのだなと認識いたしました。在宅医療そのものの充実と啓蒙と連携だと思うのですが、それを多職種で、チームでアプローチするということに特化した教育が必要だと思いました。
以上です。
○山口会長 ありがとうございました。
ほかにいかがでしょうか。よろしゅうございますか。
では、次に移りますが、5時前後に終了を予定しておりますので、今日積み残した部分は次回の議論に回させていただこうと思っております。
それで、就労支援の部分をまずやらせていただこうと思います。多分そこで本日は終了となるのではないかなと思います。大変申し訳ありませんが、サバイバーシップ支援とか小児・AYA世代の議論は次回回しになるのではないかなと思っております。
就労支援は大きなテーマですので、就労継続の説明で4割という数字は低いという委員の皆様の御意見だったと思います。それから、仕事の継続、8割程度だったと思うのですが、それは大変良好であって、意見は特にいただいておりません。治療開始前の退職の40何%だったと思いますが、これは高過ぎると。意見をお寄せいただいた全員の方が、ここは改善をする必要があるという御意見でした。ハローワークの連携に関しては増加をしているので、よいのではないか。就労相談の件数も一応増加はしている。
今度は企業に行って、両立支援の社内制度の利用は低い、もっと高める必要があるという御意見が多かったと思うのですが、その中に、大企業と中小企業を分けて、中小企業にもっとスポットを当てるべきだという御意見がありましたし、もう一つ、非正規雇用者にしっかり配慮してこの議論をしないといけないだろうという御意見もありました。
両立支援に関する各企業における勤務上の配慮は、良好な数字が得られていると。そういう評価を委員の皆様から前もっていただいた意見から読み取れるのですが、就労支援の6つのテーマについて御意見を賜りたいと思います。いかがでしょうか。
○事務局 根岸委員、よろしくお願いします。
○根岸委員 藤沢タクシーの根岸です。よろしくお願いいたします。
中小企業なのですけれども、就労支援について、特に2つ申し上げたいと思います。1つは、どうしても企業と医療機関との連携を図るのがとても難しいと企業のほうは感じております。先ほどのデータからも、がんの診断後、退職・廃業に至った人が19.8%。そのうちの56%が初回の治療までと。初回の治療までの間に、つまり、早期に企業と医療機関が連携を図れるような仕組みをつくっていくべきではないかと思っております。実際に両立支援をしていてよく思うのですけれども、とにかく会社に迷惑をかけたくないから取りあえず辞めるのだという結論に至ってしまう。そういう場合がありますので、そこのところを何とか継続できるような働きかけというのは、企業と医療機関と両方からしていかなければいけない。それには両者がより連携を強めていく必要があるだろう。特に早期からの連携というふうに考えています。
もう一つは中小企業での両立支援。これはお金の面もそうですし、人材の面もそうですけれども、制約がありますので進まない。ただ、日本の97%が中小企業であるということを考えますと、ここをもっともっと強化していかなくてはいけないと思います。
企業の中で特に難しいなと感じているのは、社内制度を整えるということよりも、社会保障制度をどう利用していくかということが非常に難しいと感じています。まずそういったことに情報が十分届いていない、あるいはそれをどういうふうに利用したらいいか。専門職がいない。そういったところで両立支援を進めていくのは非常に難しい。そんな中で今、両立支援のコーディネーターの育成が進んでいるかと思いますけれども、そういう役割を持った人材の活用をさらに進めていくべきではないかと考えています。よろしくお願いします。
○山口会長 ありがとうございました。
そのほかの御意見、お願いします。
○事務局 土岐委員、よろしくお願いいたします。
○土岐委員 私、外科医なのですけれども、手術を受ける前に仕事を辞めてしまう人が多くて、問題とは思っているのですが、一番は働きたくても働けないという人がいるということも注目していただきたい。一番は手術の後、体力が戻らない、栄養障害、体重減少、そういったことが長期に続くと、本人は働きたいのだけれども働けないというのが、我々の領域でかなりの数おられます。そこは多職種の介入。栄養士さん、食事指導。そういった多職種の介入をすれば、かなりの人が体重が増えて、また仕事ができるようになるので、制度だけではなくて、患者さんの体力を維持するという観点からもぜひ考えていただきたいと思います。
以上です。
○山口会長 ありがとうございました。
ほかにいかがでしょうか。
○事務局 三上委員、先ほど手を挙げていらっしゃったので、よろしくお願いいたします。
○三上委員 「にじいろ電車」の三上と申します。
就労について、中間評価指標の3045に関連しているのですが、AYA世代のうち、A世代の経験者にとっての就労の課題は、仕事が継続できるかというよりは、新規就労、仕事に就くことができるかということであると思っています。参考資料5の26ページにもあります体制についてですけれども、現在成人のほうで行われている長期療養者就職支援事業のノウハウを基に、まずは小児がん相談支援センターに自立支援員さんなど、ハローワークや地域の就労支援員の方々と連携が取れる専門職の方を配置していただくとよいのではと思っております。
安定した収入を得られないことは通院や検査離れにもつながり、二次がんや疾病の発見の遅れにもつながるため、小児での新規就労の支援体制をぜひ整備していただきたいです。
少し話はそれますが、相談支援センターに足を運ぶようになるために、受診した際に医師のほうから相談支援センターに行ってごらんなどの言葉があることで、かなり相談のハードルが下がるのではないかと思っております。
以上です。
○山口会長 ありがとうございました。
ほかにいかがでしょうか。
○茂松委員 慶應の茂松でございますけれども、5時から別の会議に入ってしまうので、よろしいでしょうか。
○山口会長 どうぞ。お願いします。
○茂松委員 事務局のほうにお願いしたのですが、放射線治療に関しては、医学物理士をいかに雇用するか、いかに医学物理士を保健医療に取り込んでいくか、あるいは国家資格化を求めていくかということが非常に問題になっていて、第67回、第68回の対策推進協議会で議論がありまして、強度変調放射線治療や粒子線治療の高度な放射線治療については、必要に応じ医学物理士の必要な人材の在り方について検討するということで、議論がございました。私も今年も何回か厚労省に交渉に行かせていただいたのですが、この点に関して、ぜひこの会合で放射線治療の高精度放射線治療をいかに進めるかということを考えていただければということで、第4期に向けてこの議論をしていただきたいと思っておりまして、75回か76回のときにお話をさせていただければと思っておりますけれども、よろしいでしょうか。
○山口会長 事務局からお答えいたします。
○がん対策推進官 まさに医療提供体制の整備ということでございますので、次回のテーマの中で触れさせていただければと思います。
○山口会長 茂松先生、よろしゅうございますか。
○茂松委員 どのような資料をつくったらいいかというのを事務局、大島さんのほうから私に言っていただければ、放射線腫瘍学会理事長としてつくらせていただきたいと思います。
○山口会長 ポイントは、医学物理士の勉学の課程が二通りあって、放射線技師、治療技師から上がってくる方と物理学から上がってくる。後者のほうが文系として扱われているので、例えば我々のような県立病院だと、かなり給与等が低くなってしまう。そういう問題でしょうか。
○茂松委員 それが1つの問題なのですけれども、今、放射線技師会、技術学会の方とも御相談していて、物理士は国家資格がないということが最大の問題なのです。それが国家資格を得るか得られないかということを含めて。欧米のMDアンダーソンとかでは医師と同じぐらいの物理士がいるというのが現状です。ですから、そこをどういうふうに日本で開発していくかということを考えていただければということなのです。
○山口会長 それでは、その旨、どういう資料が必要かというのを事務局のほうから先生にお尋ねしていただきますので、それに沿って次回にでも議論をさせていただこうと思います。どうもありがとうございました。
○茂松委員 人材の在り方について検討するということが第3期に決まっておりますので、第4期ではぜひ検討していただければと思っておりますので、ぜひよろしくお願いいたします。
○山口会長 ありがとうございました。飯野委員、お願いします。
○飯野委員 NHKの飯野です。
働くということの支援をする、考えるときにいつも思うのですけれども、正規社員の方たちのことが中心になってしまって、今、非正規の方たちも多くなっていて、フリーランスで働いている方たちもあると。そういう方たちのことも配慮しながら考えていかないと、この調査も、勤務上の配慮がなされている人たちの割合とかも、フリーランスとか非正規の人たちがどうなのだろうかというところもあるので、全体的に必ず非正規とかほかの働き方をしている方たちのことも配慮しながら考えなくてはいけない。例えば今、コロナの休業補償についてもフリーランスの方たちは受け取れないとかいうこともあるので、勤務上の配慮にしても、社内制度の利用にしても、働き方にかかわらず、働く人たち誰もが支援を受けられるようにというふうに思います。
以上です。
○山口会長 静岡がんセンターは、実はこの分野はフロントランナーでかなりチャレンジをしてきたのですが、一度辞めてしまった人の再就職は物すごく難しいのです。かなりの努力をしても。だから、辞めないでくれということを一生懸命この数年間伝えてきたのですが、そこで非正規の方々の雇用というのが結構大きな問題になります。だから、おっしゃっていることはよく分かります。そういうことの配慮も踏まえながら議論をしていくということにさせていただきます。
それでは、あとお二方、御意見があるようです。どうぞ。
○事務局 石岡委員ですか。先ほど。
○石岡委員 もう手短に。先ほど根岸委員がおっしゃられたところに非常に同感しております。医療機関と企業等が就労支援に関して話し合う場、特に個々の患者さんのケースに関して相談を行う場がなかなかないということは、非常に大きな問題だと思っています。従来、我々医療機関側が企業等、例えば中小企業側から話が来た場合に、一番懸念しているのは支援ではなくて、むしろ患者さんに不利益な判断をされるのではないか。逆の意味での懸念が医療機関側あるいは医療従事者側に長年ずっとあったということがあります。
ただ、今、厚労省の就労支援の枠組み、制度が企業に対してもできているという状況を考えたときに、企業サイドと医療機関側が患者さんを交えた形で話し合いを持てる場というのは必ず必要になってくると思います。
私からは以上です。
○山口会長 ありがとうございました。
具体的にどういう形になるのか、今の医療機関がそれをどういう形で実現するかというのは結構大きな問題だと思いますので、今後の議論。特に医療提供体制の辺りでの議論になるかもしれません。ありがとうございました。
もう一方。
○事務局 池田委員、よろしくお願いします。
○池田委員 小児がんサバイバーの池田と申します。
厚労省とジャンルが違ってしまうかもしれないのですけれども、就労ということで一言お話をさせていただきます。私の場合、大学を卒業してから障害者枠という形で就労を始めたのですが、正規の社員の方との賃金も含め、差が激しくて、やっているお仕事は一緒なのにお給料がもらえないという形。障害者枠というと、そういう形が多くて、フォローアップ外来も含め、退院後にかかる費用が多くなってくるので、障害者ということで賃金を抑えられてしまうと、出費の部分が多いのに入ってくるものは少ないということがどうしても問題として大きくなってしまうので、そこはサバイバーとして訴えたいところではあるのですけれども。
障害者枠の就労支援でも、できることとできないことをちゃんと見極めてもらって、その上で雇用の条件というか、そういうものを決めてくださるような体制があるといいなと思いました。今、就労ということだったので、一言お話しさせていただきたいと思いました。すみません。お願いします。
○山口会長 ありがとうございました。
厚労の側から今の御意見に対して何かコメントございますか。
○事務局(労働基準局安全衛生部) 厚生労働省労働基準局労働衛生課の岡久と申します。
いろんな御意見をいただいたので、概括的な回答になってしまうかもしれませんが、中小企業のお話を最初にいただきまして、労働者の7割は中小企業で働いているということですので、中小企業に両立支援の制度を導入するというのは非常に重要なことだと思っております。都道府県にあります産業保健総合支援センターとか助成金などを活用して、これからもそういった企業への取組を進めていきたいと思っておりますし、実際にがんと診断されて、治療が始まるまでに辞めてしまうというのは、企業側がこの両立支援をするよということが労働者に伝わっていれば、ある程度そういった数も減らしていけるのではないかなと思いますので、環境整備を中小企業のところに進めていくということを我々としては取り組んでいきたいと思っております。
あと、医療機関と企業との連携もなかなか難しい課題ではありますけれども、企業側の両立支援コーディネーターの話を先ほど根岸さんから触れていただきましたが、企業側にも育成し、医療機関側にも育成していくということを進めておりますので、そういったネットワークとかを構築して、できるだけ企業と医療機関が連携していけるような仕組みをつくっていきたいと考えております。
全てお答えできていないかもしれませんが。
○山口会長 最後の御意見について、いかがですか。
○事務局(労働基準局安全衛生部) そちらは安定局のほうから。
○山口会長 お願いします。
○事務局(職業安定局障害者雇用対策課係長) 職業安定局障害者雇用対策課、増田と申します。
今、池田委員のほうからご意見ございました件、いろいろな状況があるので一概に申し上げられないというところはありますが、まさに障害者の雇用の部分で大変な御苦労の部分があると思います。治療の費用の部分ついてはまた違ってしまいますが、雇用というところで、今の御意見も踏まえていろいろと考えていきたいと思いますので、御指導のほどよろしくお願いいたします。すみません。
○山口会長 どうぞ。
○事務局 根岸委員、よろしくお願いします。
○根岸委員 根岸です。
この4月から同一労働同一賃金ということが制度的にかなり企業では進めなければいけないというところまで来ています。それに関して、今、中小企業にも雇用均等指導員が順次回ってくださっていて、もちろん非正規、障害者を含めて、同じ労働であれば同じ賃金で、手当等も同じように支給しなければいけないという方向性で今、動いていて、4月からはそれがさらに進んでいくというふうに考えていいと思います。どうしてもそれができない場合には、合理性のある説明を企業のほうできちっとできないといけないと。そこまで行っておりますので、恐らくこれから進んでいくのではないかと思っております。
○山口会長 根岸委員から情報提供を受けたのですが、厚労の側、もう少し詳しく具体的にお述べいただけますでしょうか。役所として。
○事務局(職業安定局障害者雇用対策課係長) 職業安定局障害者雇用対策課でございます。
同一労働同一賃金自体が違う局になってしまうので、直接御回答は申し上げられないのですが、ただ、障害者においても、まさに差別禁止、合理的配慮ということで、例えば池田委員がおっしゃったようなことで言えば、障害者と障害のない方の中で合理的でない差別、障害のみを理由とした賃金の決定を禁止しており、一定の条件はありますが、障害のみを理由とした差別をしてはいけないという規定もございます。
同一労働同一賃金の観点でも、詳細は違う局になってしまうものの、障害者雇用促進法においてもそのような規定もあり、そういったことも含めていろいろ企業も努力されていると思います。
概括的な説明ですが、以上でございます。
○山口会長 池田委員、それでよろしいですか。
○池田委員 大丈夫です。ありがとうございます。
○山口会長 では、厚労のほうも縦割り主義をできるだけ改善していただくようにお願いして。
ほかにどうしても御意見がある方はいらっしゃいますでしょうか。どうぞ。
○事務局 松田委員、よろしくお願いします。
○松田委員 すみません。時間が押してしまいましたが。
今日説明が省略されたところがあって、6-2ですが、前回のまとめで国際比較をしましょうという話があって、日本の年齢調整がん死亡率の国際比較が出ています。全体としては低下してきている。それはそのとおりなのですが、諸外国では低下しているものが日本では低下していない。主に3つあります。国際的にがん検診が行われている子宮頸がん、乳がん、大腸がんです。その3つのがんについては、日本の死亡率の低下が芳しくない。それは私が関わっていますがん検診に問題があると思っていますので、職域におけるがん検診も含めて、この際改善を図って諸外国に近づかないといけないということを最後に申し上げたいと思います。
以上です。ありがとうございます。
○山口会長 ありがとうございました。
ほかはよろしいでしょうか。ここで一応今日は終了させていただこうと思っていますが、どうしても最後に一言という方がいらっしゃいましたらお受けしますけれども。
それでは、司会の不手際もあって、今日は16ページまで終了したと。次回は17ページ以降について議論をさせていただこうと思っております。
それでは、そういう順番で今後進めていただきたいと思いますが、事務局としては今日いただいた御意見を中心にまとめていただき、また進捗状況をしっかり記載をしていただくことをお願いしたいと思います。
それでは、マイクを事務局のほうにお返しします。よろしくお願いします。
○がん対策推進官 本日は御議論いただきまして、誠にありがとうございます。
次回以降の会議の日程につきましては、追って調整をさせていただきます。お忙しい中、本日もありがとうございました。引き続き検討を進めてまいりますので、よろしくお願いいたします。本日はありがとうございます。
○山口会長 皆様、どうもありがとうございました。これで失礼します。

照会先

健康局がん・疾病対策課

代表03-5253-1111(内線4604)