第1回全ゲノム解析等の推進に関する専門委員会(議事録)
日時
開催方法
議題
- (1)全ゲノム解析等のさらなる推進について
- (2)全ゲノム解析等実行計画ロードマップ2021(案)について
- (3)その他
第1回全ゲノム解析等の推進に関する専門委員会
2021-5-14 第1回全ゲノム解析等の推進に関する専門委員会
○がん・疾病対策推進官 それでは、定刻となりましたので、ただいまより第1回「全ゲノム解析等に関する専門委員会」を開催いたします。
委員、参考人の皆様方におかれましては、お忙しい中お集まりいただきまして誠にありがとうございます。事務局を務めさせていただきます厚生労働省健康局がん・疾病対策課がん対策推進官の岩佐と申します。
専門委員会の開催に当たりまして、厚生労働省危機管理・医務技術総括審議官の佐原より、一言御挨拶をさせていただきます。ウェブのほうから失礼させていただきます。
○危機管理・医務技術総括審議官 委員の先生方、こんにちは。総括審議官の佐原でございます。本日は、健康局長の正林が本来御挨拶するべきところですけれども、国会のため、私のほうから御挨拶を申し上げます。
このたびは、新たに厚生科学審議会科学技術部会の下に設置されました本専門委員会への委員の就任を御承諾いただきまして誠にありがとうございます。また、お忙しい中、御出席を賜りまして、重ねてお礼を申し上げます。
簡単に、これまでの経緯を申し上げたいと思います。厚生労働省においては、令和元年12月に全ゲノム解析等実行計画を策定いたしまして、がん全ゲノム解析等連絡調整会議や、あるいは全ゲノム解析等実行計画の推進に向けた検討会議といったものを開催しまして、有識者の先生方の議論を踏まえながら全ゲノム解析等実行計画を推進してまいりました。
その後、令和2年に閣議決定されました経済財政運営の改革と基本方針2020、いわゆる骨太の方針におきましても、全ゲノム解析等実行計画を着実に推進し、現在治療法のない患者さんに新たな個別化医療を提供するべく、産学官の関係者が幅広く分析、活用できる体制整備を進めることとされたところであります。
今般、全ゲノム解析等をさらに推進するために、厚生労働省の厚生科学審議会科学技術部会の下に本委員会を新たに設置することといたしました。
本委員会では、全ゲノム解析等の成果を患者さんに還元するという目的を改めて明確化しまして、がんと難病領域について患者還元体制の構築や事業実施体制などについて議論を行っていただきたいと思っております。また、全ゲノム解析等実行計画に基づき実施される全ゲノム解析等の実施状況等についても評価、検証をいただきたいと考えております。
本日は、患者あるいは国民の視点、そして倫理、法律、経済の視点から、また診療現場や研究開発現場を含めた様々な皆様の視点から、我が国のがん、そして難病のゲノム医療が患者と国民にとってよりよい、より有益なものとなるよう議論を深めていただきたいと思っております。
簡単ではございますが、私の御挨拶とさせていただきます。本日は、どうぞよろしくお願いいたします。
○がん・疾病対策推進官 ありがとうございます。
簡単に、この後の会議の進め方について説明をさせていただきます。
適宜、御発言がある際には実際に挙手いただく、もしくは挙手ツール等を使っていただければと思います。こちらの会場のほうから御指名をさせていただくような形にいたしますので、名前をおっしゃられてから御発言いただければと思います。
また、時に音声等が不安定になるような場合もございます。指摘に応じて、場合によっては一旦ビデオをオフにするなどの対応を試みていただくようお願いいたします。
それでは、続きまして委員の皆様方を御紹介させていただきます。
恐縮ではございますが、お名前を呼ばれた際に30秒程度で一言御挨拶をいただければと思います。よろしくお願いいたします。
全国がん患者団体連合会理事長の天野慎介構成員でございます。
○天野委員 天野でございます。全がん連の理事長として来ております。よろしくお願いします。
ゲノム関連の会議には今まで関わってまいりましたが、今回も皆様のお力添え、御指導などをいただきながら関わってまいりたいと思います。よろしくお願いいたします。
○がん・疾病対策推進官 TMI総合法律事務所弁護士、上野さやか構成員でございます。
○上野委員 上野と申します。どうぞよろしくお願いいたします。
TMIで14年ほど弁護士を務めております。普段の専門業務としましては、特許をはじめ知財でありますとか、あとは学生時代に薬学部を卒業した御縁もありまして医薬ヘルスケア関連のお客様へのアドバイス、レギュレーション周りなどを見ていることもございます。
また、企業様のほうで人を対象とした医学系研究に関する倫理委員などを務めさせていただいたこともございます。
この委員会におきましては、どうぞよろしくお願いいたします。
○がん・疾病対策推進官 続きまして、東京大学医科学研究所先端医療研究センター生命倫理研究分野准教授、神里彩子構成員です。
○神里委員 東京大学医科学研究所の神里でございます。
私は、研究倫理や生命倫理の研究をしている者です。この専門委員会においては、ELSIの視点から参加をさせていただければと考えております。どうぞよろしくお願いいたします。
○がん・疾病対策推進官 価値総合研究所取締役会長/経済同友会副代表幹事、栗原美津枝構成員でございます。
○栗原委員 栗原です。初めまして、どうぞよろしくお願いいたします。
私は金融に30年以上おりまして、現在も金融グループの研究所におります。産業金融分野で投資等も行っております。この分野は初めてですが、いろいろ議論させていただきながら進めさせていただきたいと思います。どうぞよろしくお願いいたします。
○がん・疾病対策推進官 続きまして、国立がん研究センター理事長/日本癌学会理事長、中釜斉構成員です。
○中釜委員 国立がん研究センター理事長の中釜です。
日本癌学会は昨年12月末まで理事長を務めておりましたが、本年からは理事長室長を務めております。
私の専門は発がんメカニズムの研究で、現在保険収載されている遺伝子パネル検査の開発に携わってきた経験を生かして、全ゲノム解析が医療実装する際の課題、あるいはその問題点等について、経験を踏まえた発言ができればと考えております。
ぜひ、この全ゲノム解析を通した成果が医療実装できるように努めていきたいと思います。よろしくお願いいたします。
○がん・疾病対策推進官 続きまして、がん研究会がんプレシジョン医療研究センター所長、中村祐輔構成員です。
○中村委員 中村と申します。
私は、東京大学医科学研究所のヒトゲノム解析センターを立ち上げたときから携わっていて、センター長を長く務めておりました。それと並行して、理化学研究所のゲノム医科学研究センター長も務めておりました。恐らく、日本の中で一番古くからゲノム研究に関わっている研究者だと思いますけれども、がんという分野でゲノムというのは非常に重要な形になってきていますので、患者さんに還元すべく、何か発言できればと考えております。よろしくお願いいたします。
○がん・疾病対策推進官 国立成育医療研究センター理事/東北大学名誉教授、松原洋一構成員です。
○松原委員 松原です。どうぞよろしくお願いします。
私は、これまで遺伝性疾患の研究と診療に40年ほど携わってまいりました。そのような立場から、少しでもお役に立てればと思います。どうぞよろしくお願いします。
○がん・疾病対策推進官 東京医科歯科大学M&Dデータ科学センター長、宮野悟構成員です。
○宮野委員 宮野でございます。
私は2年前、2020年の終わりまでヒトゲノム解析センターでスーパーコンピューターの運用を行って、がん研究をはじめゲノム解析の支援をしてきた者です。2011年から医科学研究所でチームを作って、全ゲノムシークエンスに基づくがんのゲノム医療という研究を皆と一緒に作ってきた者です。今は、東京医科歯科大学でデータ科学の人材育成と、方法論の開発をやっているところです。どうぞよろしくお願いいたします。
○がん・疾病対策推進官 国立精神・神経医療研究センター理事長特任補佐・名誉理事長、水澤英洋構成員です。
○水澤委員 水澤でございます。どうぞよろしくお願いいたします。
私は出身が神経内科医でありまして、未診断疾患プロジェクト、IRUDの研究代表者を務めるなど、難病領域のほうでこのゲノム医療の推進に関わってまいりました。その経験を生かしてお役に立ちたいと思っておりますので、よろしくお願いいたします。
○がん・疾病対策推進官 東海大学医学部長、日本外科学会理事長/森正樹構成員です。
○森(正)委員 森正樹と申します。どうぞよろしくお願いいたします。
私は外科医でして、長らく九州大学と大阪大学で仕事をさせていただきましたけれども、この4月から東海大学のほうに勤務しております。外科でがんの患者さんをずっと扱ってきましたので、その立場で少し勉強しながら貢献できればと思います。どうぞよろしくお願いいたします。
○がん・疾病対策推進官 日本難病・疾病団体協議会代表理事、森幸子構成員です。
○森(幸)委員 よろしくお願いいたします。
私どもは、全国の様々な難病の患者団体、そして長期慢性疾患の患者団体で構成している中央団体です。私も難病の当事者でして、患者の立場から参加させていただいております。どうかよろしくお願いいたします。
○がん・疾病対策推進官 続きまして、参考人として御出席いただいている皆様方の御紹介をさせていただきます。お名前だけ申し上げさせていただきます。
厚生労働省データヘルス改革推進本部プロジェクトチーム技術参与、独立行政法人情報処理推進機構CIO補佐官、葛西重雄参考人でございます。
また、理化学研究所革新知能統合研究センター長、東京大学大学院新領域創世科学研究科複雑理工学専攻教授、杉山将参考人です。
なお、杉山参考人につきましては名簿にも記載しておりますが、委員の就任を依頼しているところでございますが、手続の都合上、今回は参考人として御参加をいただいており、第2回からは構成員として御参加いただきます。
また、日本製薬工業協会会長、中山讓治参考人。
国立がん研究センター中央病院遺伝子診療部門長、吉田輝彦参考人に御出席をいただいているところです。
本日は、全ての委員の皆様に御出席をいただいているところでございます。
続きまして、資料の確認をさせていただきます。
資料につきましては厚生労働省のウェブサイトにも掲載してございますが、議事次第と資料1~4、それから参考資料1~6、また、委員名簿、参考人名簿がございますので御確認いただければと思います。
また、参考資料1にございますが、厚生科学審議会科学技術部会運営細則第三条にございますとおり、本委員会に委員長を置くこととなってございますが、この委員長につきましては、委員会委員の中から科学技術部会の部会長から指名をすることとなっております。部会長にあらかじめ伺いまして、委員長として中釜斉委員を指名すると指示をいただいているところでございますので、よろしくお願いいたします。
なお、本委員会はYouTubeにて配信をしておりますので、御承知おきいただければと思います。
事務局からは、以上でございます。
これ以降の進行につきましては、中釜委員長にお願いしたいと思います。どうぞよろしくお願いいたします。
○中釜委員長 御指名にあずかりました中釜です。
私、この全ゲノム解析等の推進に関する専門委員会に参加させていただいているわけですが、2019年から遺伝子パネル検査が保険収載され、現在まさにそのゲノム医療が実装されているわけですけれども、皆さん御存じのように、パネル遺伝子検査において多くの遺伝子が見つかって変異が見つかってきても、実際に薬剤に到達できる患者さんはまだまだ十分ではなく、10%前後であるという状況です。
現在の遺伝子パネル検査では遺伝子、ゲノム全体のごく一部を見ています。それをやはり全ゲノムに拡大することによって患者さんにその結果が反映される、還元される、そのチャンスが増えるということが期待されるわけであります。
一方で、現在の遺伝子パネル検査においては様々な課題があります。ゲノムの結果を還元する課題、それが全ゲノムに対象が広がることによって倫理的な問題を含めてさらに多くの課題が抽出されてくるということは当然予想されるわけです。そういう課題に関して、この専門委員会でも議論していただき、全ゲノムの成果が医療実装できるように速やかに結果を還元できるオールジャパンの体制を構築できるように進めていきたいと思います。委員の方々におかれましては御協力をお願いいたしたいと思います。
それでは、早速本日の議事に入りたいと思います。お手元の次第に従って進めたいと思いますが、まず最初に資料1について事務局から説明をお願いいたします。
○がん・疾病対策課長補佐 よろしくお願いいたします。
お手元の資料1を御覧ください。がん疾病対策課の市村と申します。「全ゲノム解析等のさらなる推進について-患者に新たな医療を届けることを目指して-」という資料でございます。
2ページ目を御覧ください。目次に沿って説明をさせていただきたいと思います。
3ページ目、「1.これまでの経緯~「全ゲノム解析等実行計画」の策定から令和2年度までの検討状況~」について説明をさせていただきます。
4ページ目を御覧ください。「成長戦略実行計画・成長戦略フォローアップ」、また「経済財政運営と改革の基本方針2019」におきまして、「数値目標や人材育成・体制整備を含めた具体的な実行計画を、2019年中を目途に策定する」とされました。
これを受けまして、5ページ目を御覧ください。「全ゲノム解析等実行計画」(第1版)を令和元年12月20日に策定いたしました。「全ゲノム解析の目的」としましては「全ゲノム解析等は、一人ひとりの治療精度を格段に向上させ、治療法のない患者に新たな治療を提供するといったがんや難病等の医療の発展や、個別化医療の推進等、がんや難病等患者のより良い医療の推進のためにする」とされております。
6ページ目を御覧ください。この実行計画に基づきまして、最大3年程度を目途に当面の間、先行解析をするとされております。
7ページ目を御覧ください。そして、その先行解析とされた期間の中で「令和2年度までの解析実績と令和3年以降の解析予定」について御説明をさせていただきます。
8ページ目を御覧ください。「「全ゲノム解析等実行計画」に係るこれまでの解析実績」となっております。
「全ゲノム解析等実行計画(第1版)」では、がん領域においては、5年生存率が相対的に低い難治性のがんや、まれな遺伝子変化が原因となることが多い希少がん、また遺伝性のがんについて全ゲノム解析等を行うこととされておりました。また、難病領域におきましては単一遺伝子性疾患、多因子疾患、診断困難な疾患を優先して全ゲノム解析等を行うこととされておりました。それぞれの解析実績と解析予定は、以下の表に示されているとおりとなっております。
がん領域におきましては、難治性のがん、希少がん、合わせまして約500症例を2019年12月以降に解析をしており、遺伝性のがんにつきましては約3,250症例を解析しております。また、難病領域におきましては約2,500症例を解析しております。
これらの詳細報告につきましては、各研究班より、また後ほど詳細報告がありますのでそちらのほうでさせていただきたいと思います。
解析予定につきましては、2021年度はがん領域におきましては原則生存しており、解析結果を還元可能な保存検体を有する約1万症例、ここに記載のあるとおり6領域を予定しております。このうち、新規患者は600症例を予定しております。また、難病領域におきましては約800症例の解析を予定しております。
続きまして、9ページ目です。このような「全ゲノム解析を行う中で検討を行った課題」について説明させていただきたいと思います。
10ページ目を御覧ください。全ゲノム解析を行う中で検討を行った課題としましては、実行計画に基づき、がん・難病に係る全ゲノム解析等を行う中で、令和2年度には以下の検討を行いました。こちらの詳細につきましては、「「全ゲノム解析等実行計画」の推進に向けての検討」、参考資料2を御参照ください。
続きまして11ページ目、「今後の取組方針および実施体制」についてです。「事業目的の明確化と体制の構築」を説明させていただきたいと思います。
12ページ目を御覧ください。
1つ目「事業目的の明確化」、2つ目「患者還元体制の構築」、3つ目「厚生労働省における検討体制の見直し」、4つ目「事業実施体制の構築」について、この後それぞれ説明をさせていただきたいと思います。
13ページ目を御覧ください。まず1つ目の「事業目的の明確化」です。これは先ほど説明させていただきましたが、実行計画の策定に基づきまして全ゲノム解析等を実施する中で、関係検討会や委員や有識者等の指摘によりまして患者還元を重視し、早期に患者に還元するため、検討すべきではないかということで、改めて事業の目的を明確化いたしました。つまり、全ゲノム解析等の成果をより患者さんに還元すること、新たな個別化医療等を実現して日常診療への導入を目指すこと、全ゲノム解析等の結果を研究・創薬などに活用することを新たに明確化させていただきました。
14ページ目を御覧ください。こちらは、「患者還元体制の構築」についてです。14ページ目は、自施設内で臨床解析が可能な場合を想定しております。検体をシークエンス企業に送りまして、その後、医療機関が直接その臨床解析やレポート作成を行い、患者さんに還元するという体制です。
15ページ目を御覧ください。こちらは、自施設内で臨床解析ができない場合を想定しております。シークエンス企業から送られてきたデータを解析・データセンター内で臨床解析を行い、レポート作成をし、医療機関へ戻して、その後、患者さんへ還元するという流れです。
いずれにおきましても、解析・データセンターには臨床情報とシークエンス結果が蓄積され、それを研究・創薬に利用することを想定しております。
16ページ目を御覧ください。これら2つのパターンにおきまして、それぞれA、B、C班という形で今回研究班を構築しましてAMED研究を始めているところです。
17ページ目を御覧ください。「令和3年度に解析予定の研究班の概要」についてです。A、B、C、それぞれこちらに記載のあるとおり、令和3年度に研究班を発足させて解析を開始する予定となっております。詳細は、こちらを御覧ください。
18ページ目、3つ目ですけれども、「厚生労働省における検討体制の見直し」となります。こちらは、「全ゲノム解析等の実施体制の将来像(案)」となっております。
将来像としましては、本委員会は継続して引き続き厚生労働省の委員会として、事業実施組織が設置された後にはそこから報告を受け、方針を指示を出す。そして、事業実施組織に関しましてはボードメンバーを設置し、諮問委員会を設置、そして事業実施に必要な部門を設置するということを想定しており、医療機関、シークエンス企業、解析・データセンター、産業界・アカデミアについては、それぞれ契約や直接管理を行ったり、支援を行ったりすることを想定しております。
19ページ目を御覧ください。「厚生労働省における検討体制の見直し」としましては、令和3年度より本委員会を設置することによりまして、厚生労働省における方針決定等におけるガバナンス体制の強化を図っております。また、全ゲノム解析等実施計画に基づきまして、本委員会におきましては全ゲノム解析等の実施状況や評価、検証を行って必要な指示を行うとしております。
また、運用方法等の専門的事項につきましては、引き続き厚生労働科学研究により専門的なワーキングを設置しまして、本専門委員会における検討に供することを考えております。
20ページ目を御覧ください。「全ゲノム解析等の推進に向けた令和3年度の主な予定」となっております。本委員会を5月中にもう一回開催させていただきまして、ロードマップ2021を策定していく予定と考えております。
そして、その後、本委員会を令和3年度中には4回程度開催を想定しておりまして、同時に先ほど研究が始まる全ゲノム解析の研究班の研究内容を報告してもらい、その内容の評価・検証を行う中で、今後実行計画第2班の策定に向けた検討等を行っていきたいと考えております。
続きまして、21ページ目を御覧ください。「事業実施体制の構築」としましては、事業実施組織が中心となりまして患者還元を推進することを想定しております。そのために、事業実施組織においては検体・臨床情報収集を行う医療機関やシークエンス企業との契約を結ぶとともに、臨床解析やデータ利活用支援等を担う組織の管理を行うなどの体制を検討しております。事業実施に必要な部門としましては、こちらに記載のあるような部門を現時点では想定しているところです。
22ページ目はGenomics Englandの参考図となりますので、参考に御覧いただければと思います。
以上で、資料1の説明を終わりにしたいと思います。
○中釜委員長 ありがとうございました。
ただいまの「全ゲノム解析等のさらなる推進について」の説明ですが、何か委員の方々から御質問、御意見ございますでしょうか。
天野委員、お願いいたします。
○天野委員 ありがとうございます。私から3点ございます。
まず、資料の17ページの中で患者還元班等、それぞれA班、B班、C班の記載がございましたが、こちらはAMEDのほうで既に指定されているのでしょうか。どちらの研究グループ、もしくは医療機関等が関わっているのか、もし分かれば教えていただければというのが1点目になります。
2点目ですが、20ページでスケジュールが示されています。全ゲノム解析にまつわる様々な実施内容が示されているのですが、この中で特に倫理面や利活用を可能とするためのICFの在り方であるとか、もしくはELSIの在り方、相談支援体制の整備という部分について記載がないように思われますので、もちろん当然行っていくものとは思いますが、改めて明示していただく必要があるのかなと思いました。
3点目でございますが、資料の21ページに「事業実施体制の構築(案)」ということが出ています。案ということですので、これから事業実施組織が作られるものと思いますが、こちらはどちらの組織に設置予定なのでしょうか。またはいつごろから設置予定なのか、もし分かれば教えていただければと思います。
以上でございます。
○中釜委員長 では、お願いします。
○がん・疾病対策課長補佐 まず1点目についてですけれども、こちらのAMED研究につきましては現在公募が行われている段階でして、まだ決定はしておりません。
2点目です。ELSIにつきまして、どういったところでどう決定していくのかということに関しましては、こちらのほうにも追記をさせていただきたいと思います。19ページ目のところに記載がありますように、厚生労働科学研究のほうでELSIのワーキングを設置する予定でして、こちらで審議されたものが専門委員会のほうに検討が上げられてくるということを考えております。
そして、21ページ目について、事業実施体制がどのようなことになるのかということに関しましては、今まさに議論を行っていく段階でして、特にこれが明確に決まっているわけではございません。
以上です。
○中釜委員長 よろしいでしょうか、天野委員。
○天野委員 ありがとうございます。この事業実施体制は、今年度もしくは来年度、いつ頃から動き出すのでしょうか。というのは、それがいつ頃から動き出すかによって、それまでどこが統括するのかという問題も出てくるかと思いますので、念のため確認でした。
○がん・疾病対策推進官 事業実施体制は、この後ロードマップということで、令和3年度、4年度というふうな形で実施していくものとしてお示しをしていくことになります。それで、そこの中で事業実施体制も具体的に準備組織を設けながら進めていくというふうな案を示させていただくことになろうかと思います。
実施の主体については我々のほうでも今、幾つか考えているところではございますが、今日の時点におきましてはどういったところがふさわしいのではないかという意見も含めて、先生方からも御意見を頂戴しながら議論を進めさせていただければと考えております。
○天野委員 かしこまりました。ありがとうございました。
○中釜委員長 ほかに御質問、御意見ございますか。
水澤委員、お願いいたします。
○水澤委員 難病の立場から、これは補足でございます。
8ページのところにがん領域と難病領域の比較がございまして、解析実績、解析予定等で随分差がついておりますけれども、解析実績のこの数値は昨年の12月から開始されて、ほとんど今年に入って昨年度中、1月から3月までの間に達成されておりまして、非常に迅速にこれが進んだということを1つコメントしておきたいと思います。
それから、解析予定につきましても予算等いろいろな関係でこの800という数字になっていると伺っておりますけれども、実際の症例は6,000を超えてもう既に準備されているということだけお伝えしておきたいと思いますので、よろしくお願いいたします。
○中釜委員長 ありがとうございました。
ほかに、御意見、御質問ございますか。よろしいですか。
では、私から中村委員に質問なのですが、がんにおいては1万症例というふうな解析予定という数字が出されていますけれども、これは日本人のがんにおけるゲノム変異の特性を把握するのにある程度、十分な数というふうに理解してよろしいですか。
○中村委員 中村ですけれども、もちろん多ければ多いほど有用な情報が得られると思いますが、予算がありますので、今年は今、公募中ということで12か月フルではありませんし、本当に1万症例実現できるのであれば今まで分からなかったようないろいろなことが分かってくると思いますので、現時点では1万という数を目標にするというのは妥当だと思います。
○中釜委員長 1万という解析を基に、本格解析等々、医療実装に向けた体制の整備には十分の数というふうに理解してよろしいですね。
○中村委員 そうですね。これだけの数をやるということは今までなかったわけですから、いろいろな問題が浮かび上がってくると思いますけれども、今年度中にいろいろな課題を解決して本格的解析につなげていくという意味で妥当な数だと私は思います。
○中釜委員長 ありがとうございました。
ほかに御意見ございますか。
森正樹委員お願いいたします。
○森(正)委員 今のことに関連しまして、血液、消化器、婦人科、呼吸器、希少がん、小児がんとありますけれども、それぞれの目標数というのは決まっているのでしょうか。トータルで1万例ということですけれども。
○中釜委員長 厚労省からお願いします。
○がん・疾病対策課長補佐 資料1の17ページ目を御覧ください。こちらにおきまして領域別班というふうに呼んでおりますけれども、Bの「患者還元班(領域別班)」におきまして1班1,400症例を想定しております。
○中釜委員長 よろしいでしょうか。
○森(正)委員 分かりました。ありがとうございます。
○中釜委員長 ほかに御意見ございますか。よろしいですか。
では、ないようですので、続きまして事務局より資料2の説明をお願いいたします。
○がん・疾病対策課長補佐 それでは、続きまして資料2を御覧ください。「令和2年度がん領域における全ゲノム解析等の成果報告」ということです。
2ページ目を御覧ください。「令和2年度がん領域における全ゲノム解析等に係る研究事業マル1」ということで、厚生労働科学研究費のがん対策推進総合研究事業、令和元年度の補正予算で行った研究事業となっております。こちらは、国立がん研究センターの柴田先生が研究責任者となっております。
【目的】につきましては、「がんの全ゲノム解析等の先行解析を行うにあたり、そのワークフローについて研究し、本格解析に向けた体制整備について検討すること」とされております。
【概要】は、こちらに記載のあるとおりです。
続きまして、3ページ目を御覧ください。「令和2年度がん領域における全ゲノム解析等に係る研究事業マル2」となっております。「革新的がん医療実用化研究事業」の令和元年度の調整費で行っているものです。こちらは、この後、国立がん研究センターの吉田先生に詳細を御報告していただくことになっております。
【目的】は「遺伝性腫瘍の全ゲノム解析を集中的・効率的に実施することにより、後に続くべき様々な研究に基礎的情報と体制を提供すること」となっております。
【概要】は、こちらに記載のとおりとなっております。
4ページ目を御覧ください。「がん領域における全ゲノム解析等の進捗(令和2年度)」につきまして取りまとめた表になっております。
1番上の段が、工程となっております。マル1が検体処理で、DNA抽出等を行う段階、マル2がシークエンスを行う段階、FASTQファイルを生成物として得られる段階、3つ目がFASTQファイルを解析しましてVCF等を得る段階、これを1次解析と呼んでおります。そして、4番目がVCFファイル以降を2次解析以後として提示させていただいております。
そういった中で、研究事業マル1におきましては膵がん、胆がん、285例がマル2のシークエンスまで終了しております。そして、現在マル3の1次解析を共通パイプラインで解析している最中でございます。
造血器腫瘍におきましては、25例が1次解析、2次解析以降まで終了しております。こちらはある程度結果が出ておりまして、※1にありますとおり、経時的サンプルの解析により再発に伴うクローンを検出したという報告があります。
骨軟部腫瘍におきましては、160症例をマル2のシークエンスまで終わっております。現在、マル3の1次解析を共通パイプラインで解析をしている最中です。
研究事業1におきましては、小計としましては570症例がマル2のシークエンスまで終わっております。そして、マル4の2次解析以降までは25例となっております。
そして、研究事業のマル2におきましては、遺伝性腫瘍につきましてマル3の1次解析まで3,247症例が終了しており、現在2次解析以後、統合的解析を予定しているところです。
以上、資料2の説明となります。
○中釜委員長 ありがとうございました。
では、今の資料2についての説明ですが、何か御質問ございますか。よろしいですか。
宮野委員、お願いします。
○宮野委員 共通パイプラインで解析中というのは大変結構なことなのですが、こういうパイプラインはどんどんバージョンが変わってまいりますし、その管理も同時にやっているという認識でよろしいでしょうか。
○中釜委員長 では、事務局お願いいたします。
○がん・疾病対策課長補佐 宮野先生、御指摘ありがとうございます。
こちらに記載してある共通パイプラインというのは、この研究事業の中で取り決めた共通パイプラインというふうに認識しておりまして、今後この共通パイプラインにつきましても本専門委員会や、今後設置されます厚労科研のワーキングにおいて引き続き専門家の先生に常に最新のものにアップデートしていくような形で協議していっていただきたいと考えております。
○宮野委員 分かりました。
○中釜委員長 ほかに御質問ございますか。よろしいですか。
では、続きまして吉田輝彦参考人から御報告をお願いしたいと思います。よろしいでしょうか。
○吉田参考人 それでは、参考資料5を御覧ください。同じ内容のものをスライドに出させていただきます。
本日、我々が令和元年度トップダウン型調整費に基づき、担当した遺伝性腫瘍等の全ゲノム解析について、その位置づけと進捗状況、今後の論点ということで御紹介いたします。
まずp.2をご覧ください。全体像ですけれども、一言で言うと遺伝性腫瘍が疑われる患者さん、血縁者、それから若年がん、こちらは39歳以下としておりますが、合計約3,000症例に対して全ゲノム解析、シークエンスを行う。その際、遺伝性腫瘍からと若年がんからという二重の戦略で従来得られなかったデータを取得し、研究開発のために共有をする。自分たちだけではなく、産学官の研究者たちにデータシェアリングをしていくということが目的となっております。
次にp.3をご覧ください。今回、専門委員会ということで少し専門的な言葉も出てきますが、お許しください。
そもそも、遺伝性のがんというのは全体のがんの5%ぐらいと言われていて、この横軸にあるように、遺伝子としてはがんを起こす力が強いけれども、集団中ではまれなバリアント(変異)を原因としています。
それに対して、2人に1人がなる普通のがんというのは集団中に多くの方が持っている遺伝子の個人差、多型であるが、しかし、一個一個の遺伝子の力は弱い。こういうふうに二峰性に分かれていると考えられていたのですけれども、実際にはその中間に当たるような若年発症とか家族集積性の場合があって、この遺伝子の素因というものはむしろ連続的に分布しているのだろうと考えられるようになっています。
すなわち、このグラフの左上の方に行くほど環境要因、加齢などが影響してきて、このような「一般のがん」の方の場合には、むしろ国民全員が行うべき健康行動、コホート研究などから明らかになってくる病気になりにくい生活習慣や検診受診が必要になる。一方、グラフの右下の方にある典型的な「遺伝性腫瘍」の方や、中間高リスク群の中には「医療」としての介入が必要な方がいるだろう。従来5%以下の、いわば超高危険度群、典型的な「遺伝性腫瘍」に対して、中間高危険度群の方が例えば10~20%ぐらいいらして、それから「一般のがん」の方がいるという構造になっているだろうと考えられます。
この中間高危険度群と、それから超危険度群、この方々をきちんと捕捉し、診断するための研究戦略としては、「遺伝性腫瘍」のほうから行くアプローチと、それから「一般のがん」から行くアプローチと、この2つを組み合わせるのがよろしいだろうということで、全ゲノム解析の最新の技術を使って若年がんと遺伝性腫瘍の両方から押さえようというのが画期的な方法ではないかと考えております。
p.4をご覧ください。今回の3,000症例のうち、その3分の1ぐらいが、国立がん研究センターを中心とする多施設共同研究、遺伝性腫瘍は基本的に希少疾患ですので、全国から登録をして集める多施設共同研究なんですけれども、我々が「汎用プロトコール」と呼んでいる前向き観察研究としての臨床ゲノム研究由来になっております。
その特徴は、遺伝性腫瘍の遺伝カウンセリングをしっかりやっている施設が研究者になっているということで、遺伝診療の場でまず一番考えられる特定の遺伝性腫瘍に関する遺伝学的検査を行い、それを患者さんに返すという診療空間というものがあります。
ただ、それだけではなかなか見つからない場合もあり、同時に研究として未知のものを探索する全ゲノム解析を含む解析を行い、その結果を公共データベースに登録をしますという説明も行う。そのように研究空間と診療空間について、並べて遺伝相談外来、遺伝カウンセリングの場で説明を行う。その上で研究にも同意をし、さらに研究結果の報告を希望された方には、研究結果の報告として研究者としての担当医、遺伝医療の担当医が説明をするという建付けになります。
ただ、同じ外来の場で、そのまま、研究結果の報告が、御本人あるいは御家族の予防医療の診療の参考情報にもなりますので、この辺りで今度は研究から診療に空間が変わり、必要に応じて臨床検査としての確認検査などをして患者さんに還元していく。こういうルートが既に予防医療の場ではできております。治療のためのがんゲノム医療では、この研究と診療の間に、既存の薬が無い場合は創薬という非常に難しいステップが入りますが、治療のためのゲノム医療と異なり、この予防のためのゲノム医療は診療に直結する、診断に直結をするという特徴があります。
こういうコンセプトの下で、今回の研究ですけれども、p.6をご覧ください。大づかみに言って全体の約3,000人のうち1,000人ぐらいは今の「汎用プロトコール」の遺伝性腫瘍で、もう1,000人ぐらいが若年がんで、国立がん研究センターのバイオバンクの症例等から集めております。
加えて、今回の調整費ではがん研究会がんプレシジョン医療研究センターの「遺伝性乳がん」、それから静岡がんセンター単施設における遺伝性腫瘍と若年がん、それぞれ約500人ずつぐらいの合計約3,000人でこの研究を始めました。
解析はこの課題(6)で、統一化解析パイプラインとして行い、生殖細胞系列のゲノム解析については国立がん研究センターの白石友一先生のところでプラットフォーム構築から行っていただきました。
p.7をご覧ください。研究のプロセスですけれども、3.の臨床情報と、それから4.の全ゲノムのシークエンスデータを集める。これらが重要なのですけれども、これらだけでは遺伝性腫瘍の意味づけができなくて、見つかったバリアントに対してどのような医学的意味づけがあるか、アノテーション・キュレーションという5.の部分が非常に重要なプロセスになります。
こちらは、一つ一つのバリアントに対して臨床情報を参考にし、様々なデータベース、文献など、様々な情報を組み合わせて意味づけをしていくというプロセスが必要で、多施設の様々な専門家が集まったエキスパートパネルが必要になります。ですから、この1年間、実際には10か月ぐらいの調整費では全ゲノムで見つかってくる全てのバリアントのアノテーションはできませんので、医学的意味づけのための体制構築というものがこの研究費の目標、到達点となっておりました。
それから6.のデータシェアリングで、その後のいわゆる二次解析と言われる、先ほど市村補佐からありました部分は個別の研究になりますので、今回の調整費ではなく、それぞれ多くの研究者の方々がそれぞれ研究費を獲得して行っていくものということで、我々もこの二次解析については今、研究費の獲得を目指しているところであります。
実際の症例ですけれども、p.8をご覧ください。3,000例がデューティだったのですが、歩留りがあるだろうと思って少し多めに登録したのですが、実際には登録したほぼ全てについて十分な質のデータが得られましたので、最終的に3,247名となりました。
遺伝性腫瘍が約2,000人でAYAがんが1,200人、この遺伝性腫瘍については半分以上が遺伝性乳がん、卵巣がん、4分の1ぐらいが大腸がん系、その他、様々な遺伝性腫瘍が混じっているということです。
ただ、これらは必ずしも診断がついているわけではなく、そもそも今までの方法で診断がつかなかった方々、いわば未診断症例を中心に、今回全ゲノム解析に回しているというところが主ですので、この診断はあくまでも今後、全ゲノム解析で変わっていく可能性があります。
また、AYAがんの方々は先ほどの市村補佐の資料にもありましたけれども、83%の方が生存されており、遺伝性腫瘍についても乳がん、大腸がん、胃がん、ポリポーシスなどが多いということ、それから治療のためのゲノム医療と違って、治療が一段落してから家族の遺伝などを考えるという方もいらっしゃるので、少なくとも70%以上の方が生存されていると考えております。
p.9をご覧ください。統一解析パイプラインですけれども、これは比較的デファクトスタンダードになっているようなものを使っていこうということで、FASTQからGATKを使ったマッピングをして、それから複数の方法を使ってバリアントコールをしていく流れになります。
それで、クラウドとオンプレミスの両方を活用しての解析実行を可能にする。また、CPUだけでなくGPUも使うとか、それから先ほども宮野委員から御指摘がありましたように、複数のソフトウェアを使うことで統合的に解析していく。ソフトウェアによって大分結果が違ったりするということもまだまだあるということです。
また、クラウド上の計算コストを最適化する取り組み等も進めました。
p.10とp.11ははがん研究センターの症例、2,000人くらいのデータのクオリティーをお示ししていますけれども、きちんと標準的なヒトゲノムに非常に高率でマッピングされていて、かつ、もともとヒトゲノムが3ギガ塩基対、3掛ける10の9乗個ですけれども、その30掛けの90ギガ塩基対という契約でやったのですが、それだけのデータ量はしっかり得られているということを確認しております。
p.12をご覧ください。医学的意味づけの体制構築ですけれども、このようにしてBAMファイルからVCFとして基本的なバリアントが出てきたら、その意味づけをする基本システムを今回作りました。実際には2万個以上の遺伝子全部を意味づけするのではなくて、遺伝性腫瘍を対象にした147遺伝子からなる、いわばバーチャルパネルの解析をやりまして、我々が企業との共同研究で開発してきたアノテーションをつけるシステムを全ゲノム用に今回、改変しました。そのシステムの出力は、227種類くらいの多くの情報を網羅した巨大なスプレッドシートになるのですけれども、品質管理情報、インシリコの予測情報、様々なデータベース、知識ベース、それから日本人の標準的な頻度情報、こういったものをアノテーションできるシステムです。
ただ、インハウス開発のシステムだけだと少し不安なので、今回商用データベースも共用しまして、商用データベースとの照合もしながら、統合アノテーションファイルと名前をつけておりますけれども、アノテーション用のファイルを作りました。
p.13をご覧ください。その統合アノテーションファイルに対して、今度は臨床情報を組み合わせることが必要で、この臨床情報の収集も、遺伝性疾患では特に家系図をデータとして集めるという非常に大きな課題がありますので、これも国立がん研究センターで一部企業と共同開発して診療で用いているファミリーカルテ、家系図をデータベース化するシステムがありますけれども、今回の調整費でそれを研究用に改造して用いております。
こういった臨床情報と、先ほどのアノテーションファイルを合わせて、人がキュレーションをしてエキスパートパネルにかけて意味づけをしていく。その結果、さらなる実験系に回したり、マル11のステップで、先ほどの研究結果を報告する、こういった意味づけもされるということになります。またそれを適切な公開できるような形にして公的データベースで共有し、一つのループが完成します。
p.15は最後のスライド、今後の課題ですけれども、A)では、バリアントの検出法の、一応のプロセスと体制はできたのですが、全ゲノム解析ならではの課題、まだまだこれから大きな課題となっているのが構造バリアントの検出です。1個、2個、あるいは少数の塩基の違いではなく、大きなゲノム上の領域の変化、こういったものをいかにきちんと見つけるか。それから、DNAであるゲノムは、実際にはRNAになって、さらにタンパク質になって働くわけですけれども、そのときに起きる遺伝子のスプライシングのバリアント、これはRNAシークエンシングのデータとの統合が必要ですけれども、こういったことに今後取り組む必要があります。
それからB)の、バリアントを検出した後、その評価、アノテーションのところもまだまだ大きな課題がありますので、今回最低限の体制は作ったのですが、さらに例えば予測されたデータを実際に実験的に検証するであるとか、それから先ほどの中間高危険度群、どこまで本当に臨床的に有用なのか、それをどのようなリスクコミュニケーションをして患者さんに伝えていくのか。こういったことが、そもそもの大きな課題として残っております。
また、C)の「臨床現場に返す体制の構築」も大事で、2018年12月に改正医療法・臨検法の検体検査関連部分が施行されてしっかりした精度管理が求められておりますので、研究と診療の責任分界点はどこか、どこまで研究費、どこから診療の費用、診療の場合、どこまで保険財源で負担できるのか、こういったことが課題かと思います。
最後に、D)にあるように、令和元年度秋の調整費はあくまでも基本的な一次解析までですので、データシェアリングをして多くの方にこのデータをさらなる研究のために使っていただく。同時に、患者さんの権利もプライバシーもしっかり守っていく。そういったことが今後の課題かと思います。
以上です。
○中釜委員長 ありがとうございました。
それでは、ただいまの説明に関して何か御質問、御不明な点等ございますでしょうか。
宮野委員、お願いいたします。
○宮野委員 2点ございます。
1点は、GATKを中で使われておられるということで大変結構なことなのですが、GATKはアカデミアは古いバージョンはフリーで出してくれていて、ちょっと私は最近調べていませんが、最新のバージョンは有償でワンライセンス1,000万円程度だったかと思うのですが、今回の研究機関ではいいと思うのですが、将来に向けたときにそのGATKの経費をどれくらい払っていくことになるのかということが私はちょっと見積りがついておりませんので、どこかで調べておいていただけたらと思います。
2点目は商用データベース等の活用の件ですが、大変結構なことだと思います。
ただ、例えばHGMDというデータベースですが、これはデータベース作成のポリシーとして論文に書かれていたことは正確にキュレーションを行うけれども、その後、そのことが否定されたり、それとコンフリクティングなことが明確になった場合でもデータベースのアップデートはしないというポリシーで作っているんだそうです。
それとか、COSMICも特に血液腫瘍関係では5年前はパソジェニックではないと言われていたものが、5年後にパソジェニックであるということが分かったりして、どこまでキュレーションのアップデートがされているかというようなことを常に観察しながらデータベース利用をするような体制にしていただけたらと考えております。
以上でございます。
○吉田参考人 ありがとうございます。
1つ目については、ゲノムデータ解析担当の白石友一先生等々に伝えまして調べておきます。
2つ目に関してはまさにおっしゃるとおりで、ClinVarにしてもHGMDやCOSMICにしても、こういった既存のデータベースの判定だけでアノテーションがつけられるものではなく、ACMG/AMPのガイドラインでは多くの情報を組み合わせて総合的に判定をするとなっておりますので、その中でもこういったデータベースの情報というのはPP5、BP6という形でサポーティングエビデンスとして、少し低めのレベルにはなっておりますので、先生の御心配のようにこれだけで決めないように、やはりエキスパートパネルでの総合的な評価、そのスキルをアップしていくことが非常に重要かと思います。
○宮野委員 ありがとうございます。
○中釜委員長 ほかに御質問ございますか。
水澤先生、お願いします。
○水澤委員 吉田先生、どうもありがとうございました。遺伝性腫瘍ということで、難病の領域とかなり近いというか、非常に参考になることが多かったのですが、この次のページの13ページのマル8で多施設合同エキスパートパネルが出てきますけれども、がんの領域もたくさんの領域がありますね。呼吸器とか、消化器とか、そういうふうに臓器別のものがあると思うのですけれども、これはエキスパートパネル自体は遺伝性がんの場合1つなのでしょうか、それともそういう領域に応じて幾つかあるのか。その辺はどういう工夫をされていますでしょうか。
○吉田参考人 今のところ、それぞれの研究グループ、あるいは病院がそれぞれに遺伝性腫瘍に関してはエキスパートパネルを構成しているのではないかと思います。保険診療で行われる治療目的のがんゲノム医療のエキスパートパネルにはそれぞれ遺伝医学に関する専門的な知識及び技能を有する医師が参加しているのですが、遺伝性腫瘍に特化したエキスパートパネルというのはまだ研究レベルで、それぞれの研究事業や施設等で作られているのではないかと思います。
我々の場合は、これは多施設共同研究ですので、このエキスパートパネルをやるときにも、もちろん学会で症例報告できるくらいの臨床情報にして個人情報を保護した上で、ウェブで多施設共同のエキスパートパネルを何回か班会議等を通して試行しておりまして、そこでは主治医のほかにも様々な領域の専門の先生が参加可能です。たとえば、同じ遺伝性腫瘍でも乳がんに強い方、内分泌腫瘍に強い方、いろいろいらっしゃいますので、それを多施設共同で行っているということです。
さらに、全ゲノム解析になりますと、そのようなバーチャルパネルで遺伝性腫瘍の遺伝子を一次的所見とするにしても、例えば循環器疾患に関わるアクショナブルな遺伝子に注目すべきバリアントが出てきたりしますので、そういう場合には単にがんの専門家だけでは足りずにほかの疾患を専門とする方々との連携も必要になります。当然、難病の先生方ともさらに共同でできればと考えております。
また、がんの中では大きく固形がんと血液腫瘍に分かれまして、我々のグループではなかなか遺伝性の造血器腫瘍の臨床経験がある人が少ないので、今後、遺伝性の造血器腫瘍に強いエキスパートパネルというものが大きく課題になるのかなと考えております。
以上です。
○水澤委員 そうしますと、何か基本的なパネルのメンバーがおられまして個々の症例に応じてフレキシブルに運用しているというか、メンバーを追加したりしてやっていらっしゃるということでいいのでしょうか。
○吉田参考人 そうです。我々の多施設共同研究では、国立がん研究センターを中心に解析等を担当した者がいわば事務局、コアメンバーになりまして、プラス他施設からの主治医等に参加していただき、かつ、その症例によっては御都合がつけばいろいろなところから興味のある先生が、今回内分泌だからちょっと入ってみようとか、今回は肉腫だから参加してみようとか、そういった方が参加できるようにしています。
今のところ、共同研究体、同じ研究プロトコールを共有しているメンバーで運用をしておりますが、今後少し拡大できればと考えております。
○水澤委員 ありがとうございました。
○中釜委員長 ほかにはいかがでしょうか。
中村委員、お願いいたします。
○中村委員 この種の研究というのは、がんの予防とか早期発見、それから完全な治癒ということを考える上で非常に重要だと思います。いろいろなものが見つかってもなかなかそれがコーザティブなのかどうかを決めるというのは難しいと思うのですが、今、先生が言われたようにファミリーカルテとか、家族歴を取っておられるのは大切です。
日本では難しいかもしれませんけれども、やはり血縁関係者の中に同じような変異を持っている人がいて、若い年齢でがんが発症しているかどうかというのはコーザティブかどうかを決める上で非常に重要だと思うんですけれども、今後、血縁関係者に協力を得るというような考えがあってこのファミリーカルテを作っておられるのか、そうでないのか。もしリーチブルであれば、やはり血縁関係者に協力していただくというのがコーザティブかどうかを決める上で非常に重要な鍵になると思うんですけれども、そこは何か考えておられるのでしょうか。
○吉田参考人 先生のおっしゃるとおりで、いわゆるセグリゲーション・アナリシス(分離比分析)と言われている、家系の中でそのバリアントと症状がどれくらい一致するかを見ていくことは、非常に重要なポイントになります。
もともと我々の汎用プロトコールについて言えば、遺伝性腫瘍の外来診療から始まりましたので家系図は必須でしたし、その中で行われる研究として、患者さんに研究結果をお返ししたときに、多くの方が御自分のこれからの第2、第3のがんもありますけれども、家族、お子さんとか、きょうだいとか、その方々に対する遺伝を心配されますので、この段階で、きちんと遺伝カウンセリングをしている施設であれば、血縁者が次に受診されます。言わば、血縁者がいかに来られるかということが遺伝カウンセリングの質の指標の一つになっていると思うんですけれども、我々のグループではかなり血縁者も来ていらっしゃる施設が多いので、血縁者の診断もしていく。
その際に、VUSなど、医学的意味が未だ分からない場合には、研究として多くの血縁者に来ていただいて、このバリアントが本当にコーザティブ(病的バリアント)かどうかということを見ていく。そういうプラットフォームにもなっていると考えております。そのためにも家系図が非常に重要で、今までは紙で手書きでしたのでアップデートがたいへんやりにくかったんですね。それが電子化することでアップデートできる。かつ、御家族によってはお互い秘密といいますか、プライバシーもあって、これはここのいとこまでには話していなかったとか、いろいろ血縁者の中で共有すべき情報を管理する必要もある。そういうのも、この電子化されたファミリーカルテであれば容易に対応できる。そういう重要なツールとなっております。
○中村委員 ありがとうございました。同居の場合は協力が得られやすいんですけれども、我々の経験からいくと、離れて住んでいる姉妹の場合にはちょっと難しい問題もありましたり、ぜひこのような形で研究発展させていただくように願っていますので頑張ってください。
○吉田参考人 ありがとうございます。
○中釜委員長 ほかに御質問ございますか。
では、お願いいたします。
○杉山参考人 理化学研究所の杉山と申します。
私は医療がバックグラウンドではなくてAI、人工知能の研究がバックグラウンドなのですが、このページでもデータベースは出てまいりますし、13ページのところでも左下にデータレポジトリというのが出てまいりましたが、我々はデータを活用することに非常に興味を持っていまして、こういった貴重なデータがどれくらいの秘匿度で、どれくらいの範囲に公開される可能性がありますでしょうか。具体的には医学系ではない人、我々のような情報系のメンバーとかがアクセスできるようなレベルになりそうでしょうか。
○吉田参考人 そちらは、この調整費のときにそもそもAMEDが指定する公的データベースに登録をして、その公的データベースの基本は制限共有という形で、一定の倫理性とか、しっかりとデータを管理できるとか、そういう審査はされますけれども、基本的には国内外の産官学の皆さんに広く公開、共有をするという考え方の下にデータシェアリングが準備されているというふうに聞いております。
○杉山参考人 ありがとうございます。大変よく分かりました。
○中釜委員長 ほかにございますか。
では、私、委員長から2点ほど教えてください。
1点目は、この解析で生殖細胞系列の解析パイプラインというのは、現状では難病を含めたジャムラインの解析の一応ある程度統一されたパイプラインというふうに認識してよろしいのでしょうか。
○吉田参考人 先ほどの令和元年度の秋の調整費のグループにおいては、がん以外の疾患の専門の先生方、特にコントロール群の先生方とこの解析パイプラインのある程度のすり合わせはしております。
ただ、昨年度、この研究の実際の実施は令和2年度だったんですけれども、その中でまだ難病の先生方との直接のコンタクトはなかったので、先生がおっしゃるようにジャームライン(生殖細胞系列の解析)ですのでかなり共通のところがあると思いますので、今後、難病の先生方ともすり合わせていき、全ゲノム解析時代においては、全疾患に関するアノテーションができる体制を日本で作っていくことが重要かと思います。
○中釜委員長 分かりました。
2点目は、先ほどの中村委員の質問と関係するのですが、この中等度の高危険度群の臨床的な意義を実証するときに、今、説明されたセグリゲーション解析だけで十分なのか、あるいはセグリゲーション解析をするときにこのケースとしては3,000例の症例で十分なのか、その辺りはどうですか。
○吉田参考人 そこはまさに御指摘のとおりで、いわゆる一般のがんからのアプローチの場合には基本的にはケースコントロールスタディーというデザインになりますが、典型的な遺伝性腫瘍の場合には家系図などが大事で一例一例やっていくわけなのですけれども、特にケースコントロールスタディーの方では確かに世界は1,000よりもその1桁上くらいのスケールでいろいろデータが出ておりますので、今回の調整費で3,000例のデータが共有できて、それで十分、終わりでよいというわけでは確かにならなくて、今回のいわばノウハウ、体制を元に、今後はシークエンスのコストも下がっていくと思いますので、息長くこの希少がん、希少症例でもある遺伝性腫瘍を集めていくということで、今後長く続けるということが非常に重要かと思っております。
○中釜委員長 ありがとうございました。
ほかはよろしいでしょうか。
では、森先生お願いいたします。
○森(正)委員 森です。
先ほどの中村先生と関係しているのですが、遺伝性腫瘍とAYAがんとで、もちろん根本的に違うわけですが、AYAがんにおいても血縁というか、御両親とかきょうだいというのをこの際と言ったら失礼ですけれども、今後どういう連携、関連があるか分からないところがあって、AYAがんの中にひょっとしたら何か潜んでいるというのは当然考えられると思うので、その辺のAYAがんにおける血縁者、御両親とかきょうだいとかということは今どんなふうになっているのでしょうか。
○吉田参考人 AYAがんについては、今回、国立がん研究センターの1,000人以上のAYAがん症例に関しては、実際にはバイオバンクのサンプルを使いました。したがって、いわゆる家族歴等が、遺伝が心配で遺伝相談外来に来られた方ではなく、普通の孤発例のがんとして参加された方となりますので、通常の診療の一環としての問診表等での家族歴が集められているだけで、遺伝相談外来で初めに40分とか1時間かかる形で家族歴の聴取というのはしていない状況になります。
また、AYAがんの方はやはりAYAという世代の特徴の、様々な配慮すべき家族との関係とか、自分自身のこともそうなんですけれども、そういうこともあり、遺伝性腫瘍の外来に来られた方と同じような形でアプローチするのがなかなか難しいというところもあります。今後のAYAがん世代でのアプローチというのも、先ほどのELSIの中で重要な課題になるのではないかと考えております。
○中釜委員長 よろしいでしょうか。
○森(正)委員 ありがとうございます。
○中釜委員長 それでは、続きまして事務局より資料3の説明をお願いいたします。
○難病対策課長補佐 健康局難病対策課の江崎でございます。
皆様、お手元の資料3「令和2年度難病領域における全ゲノム解析等の成果報告」を御覧ください。
まず、難病に関するゲノム医療についてはこれまでいろいろ研究ベースでIRUDをはじめとしていろいろな取組がなされてまいりました。「全ゲノム解析実行計画」等を踏まえて、それを診療実装していくという観点からさらにいろいろな研究を進めておりますが、大きく2つ研究班がございます。その2つについて、令和2年度の取組状況について御紹介いたします。
まず1つ目でございますが、「難病に関するゲノム医療推進にあたっての統合研究班」、これは厚生労働科学研究で本専門委員会の構成員の水澤先生に班長をお務めいただいているものでございます。この研究班では、実際に診療実装していくに当たって、ここにも中ほどにございますように、協力医療機関がどうあるべきかであるとか、または患者さんから同意書を取得するわけですが、そういった同意書の検討、それから臨床情報はどういったものが必要か、それからゲノム基盤の運営、管理方法、さらにその集めたデータを医薬品開発の促進に向けてどういった利活用の在り方が望ましいか、それからそれを担う人材、こういった人材育成等に関してそれぞれ体制をどういうふうにしていくのかということを政策的視点から研究していただくという研究班でございます。
おめくりいただきまして、もう一つが「難病のゲノム医療推進に向けた全ゲノム解析基盤に関する研究班」、こちらのほうはAMEDの研究班でNCGMの理事長の國土先生に研究代表者をお務めいただいております。こちらのほうにつきましては、「全ゲノム解析等実行計画」の先行解析の中で5,500症例を難病領域で行うということになっておりますが、主にこれを担う研究班になります。
具体的には、研究開発分担者等のラボとかで保有している既に採取されている検体を用いまして、まだ全ゲノム解析がなされていない難病ゲノム患者さんの検体を集約して、それを全ゲノム解析を行う。さらに、それを新たに構築しているデータベースのほうに格納して、しっかりとデータを収集していくということを行う研究班でございます。
このように、研究班の体制が単一遺伝子疾患、多因子性の難病、未診断疾患、それからオミックスということで、それぞれ領域別に分かれておりまして、1枚おめくりいただきまして「難病領域における全ゲノム解析等の進捗」というところで、それぞれの領域においての進捗状況をまとめております。5,500症例を当面の先行解析の目標としておりますけれども、令和2年度は冒頭に水澤委員からも御紹介がありましたように、昨年の10月から始めたということでございますが、かなり順調に進みまして、現時点で約2,500症例というのが令和2年度の実績として得られているところでございます。
令和3年度以降はこの研究班を続けるとともに、さらに難病の全ゲノム解析等に関するゲノム基盤実証事業というのも予算事業として進めておりまして、こういったことで明らかになったものを実際に今度は新規の検体で取り組んでいくということを試みていきたいと思っております。
私からは、以上でございます。
○中釜委員長 ありがとうございました。
それでは、ただいまの成果報告に関して何か御質問、御意見はございますでしょうか。
中村委員、お願いいたします。
○中村委員 難病患者さんのシークエンスというのは非常に大事だと思いますけれども、そこからコーザティブな遺伝子異常を見つけるというのは非常に難しいと思うのですが、例えば両親と比較する場合でも教科書的には父親の年齢が高いと突然変異率が高くなるということも知られていますけれども、コーザティブな遺伝子の変化というものを見つけるための戦略というのは何かおありなのでしょうか。
○中釜委員長 では、事務局お願いいたします。
○難病対策課長補佐 お答えになっているかは分からないですけれども、トリオ検体で御両親の検体も合わせて分析をしたりとか、そういったところに取り組んでおります。それで、実際にコーザティブな遺伝子のバリアントかというところを調べて、それが実際に分かったかどうかということ、今ここで2,500ということをお示ししましたけれども、さらに臨床的な意味づけについては今まさにやっているところでございまして、それがどの程度の成果を上げたかということにつきましては、また後の機会に御報告できるといいなと思っております。
あとは、もし水澤先生のほうから補足等がありましたらぜひよろしくお願いいたします。
○中釜委員長 では、水澤委員、追加でよろしくお願いいたします。
○水澤委員 中村先生、ありがとうございました。水澤でございます。
実際に解析もされておられる松原先生もおられますけれども、まず私のほうから、今回提出した検体はそれぞれのオミックス班とか、あるいは我々のIRUDといったところで解析していて、まだ全ゲノムを行っていない。多くはエクソーム解析のほうを行っているということですけれども、IRUDの場合にはほとんどの例、ほとんどの検体をトリオで取っております。それは、今、先生がまさにおっしゃったことで、できるだけ原因遺伝子を突き止めたい、コーザティブなものを見つけたいということでございます。
それで、診断率、今は約5,000家系を超える症例で解析が行われましたけれども、2,247で44%の診断率を得ています。新規の疾患とか、新規の遺伝子の発見というのも42もありますので、決して安易なというか、簡単な例ではないと思いますけれども、トリオで取ることによって非常に診断率が上がっているというふうに私は理解しております。
私のほうからは以上でございますが、松原先生から何か補足があればお願いします。
○中釜委員長 では、松原委員お願いいたします。
○松原委員 今回、全ゲノム解析で大慌てで2,500検体を解析しましたが、それについての詳細な解析というのはまだこれからの段階で、その結果はまだ出ていないというところだと思います。
水澤先生がおっしゃったように、実は難病領域では未診断疾患プロジェクト、IRUDというものが既に6年間走ってきております。その中で、家系としては5,000家系を超える家系、患者さんの両親を含めたトリオで解析しますので、全体としては1万5000検体あまりの解析が済んで、そのうちの40%以上に診断がついているという実績がございます。このれら検体は、全国の大学病院や地域の基幹病院で全く診断がつかなくてどうしようもなかったお手上げの症例に対して解析をして40%の診断をつけたということですので、大きな成果を挙げることができたと考えております。
それから、先ほどの御説明のときに、これまで難病のゲノム研究は研究ベースとして行われてきた。これから診療実装のためのプロジェクトだということをおっしゃったのですけれども、実はIRUD自身が診療実装なんです。患者さんの解析・診断結果は全て主治医に返されておりますし、それを患者さんの診療に役立てておられます。幾つも例実があります。例えば大腸のクローン病としてずっと入院していた子供が、実は免疫不全症だということが分かり骨髄移植によってすっかり元気になって小学校に通っているとか、あるいは余命いくばくもないと考えられていた子供で分子標的治療薬が見つかり、退院して自宅に帰れたとか、そういう診療実装の実例は幾つも出てきております。
これは全てエクソームをベースにした解析での結果ですけれども、それをそのまま全ゲノムに応用することによって、今回の大きな目的の一つである、患者さんへの還元が期待されると考えております。以上です。
○中村委員 どうもありがとうございました。既に原因として特定されている遺伝子に異常がある場合には、恐らく患者さんだけでいろいろな情報が得られると思いますけれども、新しいものを見つけるためにはやはり少なくともトリオで比較していくということが必要だと思いますので、ぜひその方向で進んでいただければと思います。
以上です。
○水澤委員 もう一点、補足をさせてください。
今、私が申し上げたデータですね。どれくらいかというのはなかなか比較が難しいのですけれども、我々日本のIRUDのお手本になりました米国のUDNというものがございます。これはUndiagnosed Diseases Networkというものですけれども、こちらのホームページからのデータによりますと、その扱った症例数、解析数、それから新規の遺伝子疾患の発見数で比べて、どれも我々のデータは勝るとも劣らない、むしろより多いくらいでして、しかもかかっている経費は格段に少ないという成果を出しておりますので、御理解いただければと思います。
以上です。
○中釜委員長 ありがとうございました。
ほかはよろしいでしょうか。
それでは、続きまして事務局から資料4「全ゲノム解析等実行計画ロードマップ2021」の説明をお願いします。
○がん・疾病対策課長補佐 よろしくお願いします。
資料4を御覧ください。資料4は「全ゲノム解析等実行計画ロードマップ2021(案)」となっております。目次に沿って、簡単に説明をさせていただきます。
3ページ目を御覧ください。まず「はじめに」というところなのですが、本ロードマップ2021は実行計画に基づく取組を着実に推進させるために患者還元体制の構築、解析・データセンターの運用、データ利活用の方策、検体保存・利活用の方策、事業実施組織の運用、厚生労働省における検討体制などについて具体的な取組を明示する必要があるために策定することといたしました。令和3年度及び令和4年度中に実施する事項を取りまとめましたので、これらの事項について協議をしていただきたいと思っております。
4ページ目を御覧ください。「全ゲノム解析等の事業目的」につきましては、これまでの様々な関係検討会における議論を踏まえまして、先ほども資料1で説明させていただきましたが、全ゲノム解析等の成果を還元することを改めて明確化させていただいております。
この事業目的に沿いまして、5ページ目を御覧ください。「全ゲノム解析等の対象とする患者について」ですが、「がん領域」におきましては新規の患者につきましては以下の5つの条件の全てを満たす症例を対象とすることを考えております。
続きまして、6ページ目を御覧ください。マル2としましては「検体保存済みの患者」に関しましては、原則として解析の対象とはしませんが、例外的に以下の場合を対象とすることを考えております。
7ページ目を御覧ください。「難病領域」におきましては、既に検体が保管されている症例につきまして単一遺伝性疾患、多因子性疾患、診断困難な疾患に分類しまして、それぞれの疾患の特性に応じて成果が期待しやすい症例を対象とするとしております。
令和3年度につきましては、難病の全ゲノム解析等に関するゲノム基盤実証事業において診療現場での全ゲノム解析等を実施する体制をモデル的に構築することも考えております。
8ページ目を御覧ください。「解析・データセンターの運用について」です。解析・データセンターは臨床情報等の活用、研究、創薬等の拠点であって、役割としては以下の4つを考えております。
マル1としまして「ゲノム解析」、マル2としまして「臨床情報等の活用」、マル3としまして「データ共有」、マル4としまして「人材育成」となっております。それぞれの内容は割愛させていただきますが、こちらにつきまして御協議をしていただけたらと思います。
10ページ目を御覧ください。「データ利活用の方策」についてです。こちらは、産学が連携しながらデータ利活用を推進し、患者さんにいち早く成果を届けるためにアカデミア、産業界、それぞれにおいてフォーラムを形成しまして、相互交流及び事業実施組織による利活用の推進を図ることを想定しております。また、令和5年度からの発足を目指しております。
アカデミアフォーラムにつきましてはこちらに記載があるとおり、全ゲノム解析等に係る学術的協議を行うことを主目的としまして、アカデミアが主体的に設置する領域別のオールジャパンの学術組織であることを想定しております。
また、産業フォーラムに関しましては、全ゲノム解析等に係るデータの利活用による研究、創薬等を推進することを主目的としまして、製薬企業をはじめとする産業界が主体的に設置することを想定しております。
続きまして、11ページ目を御覧ください。「検体の保管、利活用」ですが、検体の保管、ルールにつきましては原則保管場所によらず検体の種類、残量、同意の種別等について把握できる仕組みを構築することを考えております。また、新規の患者の検体につきましては既存の施設を用いて一括管理することが可能な仕組みを構築することを考えております。
同じページの7番目、「倫理的・法的・社会的課題」、いわゆるELSIにつきましてです。ELSIにつきましては、全ゲノム解析等の結果を患者に還元するに当たっては非常に大切な問題でありますので適切な対応が求められると考えております。これらELSIに係る事項に関しましても、引き続き検討が必要であると考えております。
12ページ目を御覧ください。12ページ目は、資料1でも説明させていただきましたとおり、8.目としましては「事業実施組織」、9.目としましては「厚生労働省における検討体制」について、令和3年度、4年度におきまして引き続き推進してまいりたいと考えております。具体的な検討を行っていきたいというふうに考えております。
以上が、簡単な説明となります。こちらの内容につきまして、御検討、御協議をいただければと思います。
○中釜委員長 ありがとうございました。
それでは、今、説明いただいたロードマップについて、資料4の項目ごとに委員の先生方の御意見を伺いたいと思います。その上で全体の協議とさせていただきたいと思いますが、まず項目1、2、これは割愛させていただきます。
5ページ目の3.の「全ゲノム解析等の対象とする患者について」ですが、この点について何か御質問、御意見ございますでしょうか。
では、まず最初に森正樹先生からどうぞ。
○森(正)委員 「新規の患者」のところで3つ目でしょうか、「手術等において根治の可能性が低い難治がん」ということなので、膵がんとか食道がんとか、そういうことだろうとは思うのですけれども、例えば膵がんにしてもダクタルカルチノーマと言われる一般的ながんは非常に悪いのですが、その中でもIPMNみたいな、要するに少しムチンを含んだ非常に予後のいいがんもあって、そちらを含めるとかなりの症例数が集まるとは思うのですけれども、そういう場合、どちらを対象にというか、そういうものを含めるということでしょうか。基本的には、やはり難治がんということであればダクタルカルチノーマということに限定するということなのでしょうか。
○中釜委員長 では、これは事務局のほうからお答えいただけますか。
○がん・疾病対策推進官 ここの辺りについては、基本的には考え方としてはそういった再分類をした上で、予後がいいようなものは含まれないのだろうとは考えております。
ただ、実際にはそこの辺りは明確にクリアに線が引けるのかどうかはゲノムの解析のデータを見ていかないと分からない部分もあるのだろうとは考えておりますので、一定程度、根治性が低いような難治がんを含み得るようなものが対象になるという形で考えてございます。
○森(正)委員 膵がんの場合、手術の前にどちらのタイプかというのがほとんど画像診断で分かりますので、そこのところを明確化していったほうが、基本的には難治ということであれば、その難治の膵がんの中の基本的ながんを対象にするということを決めておいていただくほうがいいだろうというふうには思います。
以上です。
○中釜委員長 では、水澤委員お願いいたします。
○水澤委員 7ページのところに「難病領域」のことが書いてございます。それで、下のほうに先ほども言葉が出ましたけれども、実証事業というものをモデル事業として行うようになっておりますが、その下には先ほど私がコメントいたしました800症例という症例数も書いてございます。
それで、実際は6,000例以上の検体が準備できることが分かっておりますので、いろんな意味で予算は限られると思いますけれども、そういう御支援があればそこをすぐに進められるということと、それから実証事業につきましても継続的にこれを確認していく必要があるかと思っておりますので、ぜひ御留意いただければと思います。よろしくお願いします。
○中釜委員長 ありがとうございました。
ほかに御質問ございますか。
では、松原委員お願いします。
○松原委員 水澤先生から6,000症例というお話が出ましたけれども、その6,000症例というのはただバイオバンクに眠っていて検体が冷蔵庫にあるだけではないんです。そのバックには、診断がつかないために困っている患者さんがいて、ずっと待っているんです。診断がつかなくて、病院でも全く診療方針が立たない。そういう検体が6,000検体あるということを御認識いただければと思います。
以上です。
○中釜委員長 ありがとうございました。
ほかに御質問ございますか。
宮野委員、お願いいたします。
○宮野委員 5ページ目のマル1の「新規の患者」のところの「解析開始時に生存しており」、そこはいいのですが、「治療が可能な状態であること」というところが何か私にはとてもアンビリアスに聞こえて読めてしまうのですが、ここはこのままでよろしいのでしょうか。
例えば昔の話ですが、卵巣がんで転移もしていて治療の可能性がないという方がオプジーボなどで完治してしまったというような例もあり、そういう方々が排除されてしまうような気もして、何かここのところをもう少し優しい表現にできないものだろうか、もしくは希望を与える表現にできないものだろうかというふうに感じた次第です。
以上です。
○中釜委員長 この点について、事務局から。
○がん・疾病対策推進官 御意見、ありがとうございます。
ここの辺りは、まさに患者さんに還元が可能な状態というふうなことを考えていたところです。そういう意味で言うと、これまでの治療が可能というよりは、今後新しく出てくるようなものも含めて、全く治療のめどが立たない、本当に終末期の状態の方からということではないイメージを考えてのものでした。少し言葉の使い方などは工夫をしてみたいと思います。
○中釜委員長 ありがとうございました。
ほかに御質問ございますか。
では、上野委員お願いいたします。
○上野委員 単に私の理解のためにお伺いするのですけれども、6ページの「検体保存済みの患者」様について、「別途、専門委員会で承認された解析対象」と書いてあるのですが、この専門委員というのはきっとこの専門委員ということではないのですよね。
○がん・疾病対策推進官 これは、こちらのこの専門委員会になります。今回お示しはしてございませんが、どういったものが当てはまるかというのは先生方の御意見も頂戴したいと思っているのですが、これは例えば非常にレアなものであって、一定数の解析をするためにはお亡くなりになっている方も含めて解析をしたほうが効果的だというものについて、一定程度条件を設けた上で実施をするということはあり得るのだろうと考えているものでございます。
○上野委員 そうすると、ここの6ページに書いてあるような方向のもので、これは例外的に対象にしたほうがいいのではないかというものがもしあればこの場に挙げていただいて、先生方に御議論いただくということですね。
○がん・疾病対策推進官 今回、この資料の中にそのまま何かを入れ込むかどうかというのは御意見次第によるとは考えておりますが、例えば今後の検討の中で別途提案をさせていただく中で、こういったものについては既にお亡くなりになっている方の症例も含めて解析をしましょうというふうな形で決めさせていただいた上で進めさせていただければと思っております。
○上野委員 理解いたしました。ありがとうございます。
○中釜委員長 ほかにございますか。よろしいでしょうか。
それでは、続きまして8ページ目の4.の「解析・データセンターの運用について」ですが、この点について何か御質問、御意見ございますでしょうか。
葛西参考人、お願いします。
○葛西参考人 葛西です。
私は、どちらかと言うとこの部分のほうが専門なのでちょっと発言をいたしますが、解析・データセンターは恐らくクラウドの活用などもあるでしょうし、解析という部分での人工知能なのか、臨床情報で使う自然言語処理的な人工知能なのかとか、もう少し要素を細かく考えなければいけないなと思います。少しざっくりしているように感じます。
その意味で、そろそろ考えなければいけないのが、クラウドを使うというのはもう当たり前になっていまして、クラウドの例えば仮想マシーンのことを言っているのか。先ほど吉田先生が御発表されたもののパイプラインを見ると、やはりコンテナなども活用されているようですし、そういったコンテナを活用するような場合ですともう少しオーケストレーションのようなものが必要になってきますし、いわゆるクラウドサービス、SaaSを使うとか、商用サービスを使うというのもあるので、それぞれクラウドという要素も少し分解して留意事項を書かないと、まずここに書いてあるものでは少し漠然としているように感じます。
それから、セキュリティーに関しては統一基準と安全性ガイドラインというのが確かに書かれているんですけれども、実装するときに課題が大きくて、実は安全性ガイドラインに書いてあるここの留意事項というのは、実装するセキュリティー対策行為では具体的にやらなければいけないことはこうなんだというふうにはっきり書いていないんですね。ですから、かなり導入する人が混乱する、もしくはきちんと導入できていないということが多いです。
ですから、この辺りのセキュリティーに関する留意事項ももう少し粒度を細かく書かなければ、ここはかなりデータが集積されますので、単純にガイドラインを守ることというと、ある意味、解釈論でどうにでも、やらないようにでもできてしまいますから、こういったことは詳細化しなければいけないなと思います。
最後にもう一点、人工知能なのですが、私の経験で厚生労働省の中でほかの件で多数の保健医療分野の人工知能の研究の内容を見させていただいたのですが、どうも人工知能という概念が曖昧なのか、単純なベイズだけを使ったものだなと、ベイジアンネットワークですらないなというものすら人工知能と呼んでしまったり、私ももちろん研究もするので、私がやるのはマルチタスクラーニングみたいに、ディープラーニングだけではなくてほかのアルゴリズムも組み合わせてやっていくとか、あとは暗転が起きたりするような、いわゆる最適な人工知能状態に持っていくためにはかなり日常的にメンテナンスというか、データの量であったり、アノテーションの内容を確認する必要があるはずなんです。
そういったもう少しアジャイルな人工知能の維持という環境を作らないと、ウォーターフォール上に3か月後にもう一度人工知能を見直せばいいよねというような形では、少し臨床で使っていこうとする場合にはタイムラグが発生してしまうと思います。
私からの意見は、以上です。
○中釜委員長 ありがとうございます。
今の御指摘について、なかなかお答えは難しいかと思いますが。
宮野委員、お願いします。
○宮野委員 今、葛西さんがおっしゃったことですが、私もこのページを見たときに強烈に感じたことを葛西さんが発言してくださったと考えております。
以上です。
○中釜委員長 では、事務局のほうからお願いします。
○がん・疾病対策課長補佐 葛西先生、宮野先生、御指摘ありがとうございます。我々にとっては非常に難しいところでもありますので、引き続き御指導いただきたいと考えております。
○中釜委員長 杉山委員、何かコメントございますか。
○杉山参考人 別の質問ですが、よろしいですか。
○中釜委員長 お願いいたします。
○杉山参考人 10ページの上のところに「データ利活用審査委員会」という記述がございますが、ここに「産業利用も含めてデータを最大限利活用可能な仕組みを構築する」というふうに書かれていますが、産業利用といったときに、例えば国外の企業、アメリカとかヨーロッパとか中国とかの企業が使用したいというリクエストを挙げてきた場合はどういうふうにされる予定ですか。
○中釜委員長 事務局、よろしくお願いします。
○がん・疾病対策推進官 まず、昨年、令和2年度までの検討の中で、少なくともその解析の部分に関しては国内で完結できる体制をしっかり確保していこうという形で、これは様々な情報が広がっていく懸念なども含めてそのような体制の構築をしているところです。
それで、その利活用というところになると、今度はもちろんデータの保護ということも重要になってくるのですが、一方で国際共同研究的なお立場というのも非常に重要になってくるのかなと考えております。
現段階でどこまでの範囲を国際、海外からの企業の求めに応じて提供できるのかという範囲については、一定程度これからしっかりと議論しながら決めていかないといけないのかなと思いますけれども、ある程度、国際的にも協力しながら進められるような形というのは何らか取っていきつつ、なおかつ我が国としての利益、それから安全というものを確保する。そういう両立を目指すような形でしていくのがいいのかなと考えております。
○中釜委員長 よろしいでしょうか。
○杉山参考人 ありがとうございます。スタートから門戸を閉じているわけではないということで、承知しました。ありがとうございました。
○中釜委員長 ほかにいかがですか。
では、中山参考人お願いいたします。
○中山参考人 1点御質問があるのですが、10ページの「5.データ利活用の方策」の中で「産業フォーラム」ということになって最後の行なんですけれども、「有望なシーズがあった場合には、産業界出資による戦略的コホートを提案する」というのは具体的にちょっとイメージが湧きにくいと思っています。
特に「有望なシーズ」と言ったときに、それを誰がどう解釈するかということで、実際上はほかのアメリカですとかゲノミクス・イングランドもそうですけれども、基本的にはデータベースがあって、それを民間企業が利用料を払って活用して、その中から様々な知見をそれぞれの会社が作り上げて開発するというプロセスであって、高値の有望なシーズという在り方そのものがあまり存在しないと思っているんです。
しかも、これが出資という形で制限してしまうと、それぞれ囲い込みとか、そういうことが起きてしまいますので、私はここはちょっとよく分からないという感じなのですが。
○中釜委員長 この点について、事務局からありますか。
○がん・疾病対策課長補佐 事務局の市村です。
こちらに関しましては、まさにどういう形で産業界の方々が出資していただけるかというところも含めまして、ぜひ産業フォーラムが主体となって検討していただけたらというふうに考えております。
○中山参考人 出資の対象というのは、何に対する出資をするということをおっしゃっているのかがよく分からないんですけれども。
○がん・疾病対策課長補佐 何に対する出資かということに関しましては、まさにこのデータの利活用をする際に何らかの産業界としての出資ができるかどうかということだと思っています。特にどれに対してというふうには限定していないです。
○中山参考人 私ども自身が思っていますのは、この事業は国民の遺伝子情報を扱うことになりますから公的なものであるので、ここに出資をさせるというのは民間側から言って嫌らしいですけれども、民間企業はそこにステークを持つということ自体は私は余り賛成できないと思っています。
むしろ基本は国が押さえて、このデータベースをフェアな形で民間企業に使わせて使用料を取っていくという形のほうがいいと思うんですね。あくまでも帰属、あるいはその管理をする主体は国、あるいは国が認めた公的な団体がきちんとやっていくというのが当初の姿であるべきではないかと思っています。
○がん・疾病対策課長補佐 そちらに関しましては、事業実施組織に出資するという意味では特になくて、新しくデータが蓄積されてきて一定の何らかの成果が見込める場合には、その新しい臨床試験等を含めて何らかの戦略的コホートでこれだったらいけそうだというのがあれば、そのコホートに対して出資をするという意味合いが強いと考えています。事業実施組織そのものに何らか出資するということを念頭には置いていないです。
○中山参考人 結構ここは各社それぞれ独自の解析でやると思いますので、ここを権利化したり、囲い込みみたいな格好にしていくと、逆に出来上がったゲノムデータベースの利用者が減ると思いますので、私自身はむしろフラットでフェアにしてどの会社もアクセスできる形で料金を取ったほうがデータベースとしても発展するのではないかという意識があります。もちろん、その代わりアクセスの重度、深さによって会費を変えていったらいいと思います。
○がん・疾病対策課長補佐 利用料金ですが、もちろんこれはデータベースとしてはフラットに考えております。ですので、フラットに使っていただいた結果として、何らか新しいコホートの構築ができそうという企業判断があったら、そこには積極的に出資していただきたいという意味です。
○中山参考人 出資対象が何か分からないです。いかなる権利を獲得するために出資するのかというのが。
○中釜委員長 中村先生、どうぞ。
○中村委員 今のことに関係するのdすけれども、恐らくシーズが見つかって誰か使いますかと言っても、なかなか自分が何をやっているのかということを外に出したくないと思いますから、企業側からすればはっきりと物が見えてからいろいろな権利関係をやり取りするというのは難しいと思いますので、私はデータセンターを作れば、データセンターを利用する対価として製薬企業からお金をいただいて、見つかったものは内緒で各企業がやればいいと思います。
それに対して、先ほど杉山先生からのコメントにもありますように、海外の企業も使いたいと言えば、税金を使っているわけですから、海外に対してはもっと高い対価を取って利用してもらうということでもいいと思います。
いずれにしても、やはり生み出されたものはちゃんと使って、最終的には薬という形、あるいは治療法という形で患者さんに還元するために、最も速やかに利用できるためにはどんな方策があるのかを考えていけばいいと思いますし、企業側としてどんな形が使い勝手がいいのかという御意見をお伺いすればいいと思います。ただし、単に国の税金で全部賄うというのではなくて、例えば解析データセンターの運営のためのコストを対価として負担していただくという形もあり得ると思います。
それは今の中山さんに対するコメントですけれども、私が一番心配しているのはデータ利活用の話が出ていますが、以前からというか、昨年度までディスカッションされましたように、臨床情報をどう集めるのかということが余り書き込まれていません。それが大事で、葛西さんも以前おっしゃったように、やはりインターフェースを作って自動的に臨床データを集めてくるという仕組みを作らない限り、なかなか臨床的な価値というのは生まれてこないと思いますので、どこかにそれを書き込んでいただきたいと思います。今すぐできなくても将来的にはAPIでもっとオートマティックにいろいろな臨床情報を集めていくという仕組みを書き込んでおいてもいいと思いますので、そこは専門家の先生方にお任せしますけれども、使う前にまずどのように効率的に臨床情報を集めてくるのかというディスカッションが必要だなと私は思います。
以上です。
○中釜委員長 ありがとうございます。
1点だけ、今の中村委員の御指摘のほぼ繰り返しですけれども、ここに書かれている部分は、アカデミアで見つけたシーズに対してその有用性をマッチングするようなイメージで、そこには産業界も積極的に協力をしてほしいというようなことを言いたいのではないかというふうに思うんですけれども、そういう意図ではないですか。
○がん・疾病対策課長補佐 まさにそういうイメージでおります。ですので、特に何かしら制限するとか、囲い込むとか、そういう意図はないです。
○中釜委員長 葛西委員、お願いいたします。
○葛西参考人 今の話に補足というか、例なのですけれども、私は厚生労働省で別の普通の疫学系のコホートに使うようなNDBであるとか、レジストリとか、そういったものを扱うのですが、実は単純にデータを渡されたところで、コホートを作ろうが、データクレンジングしようが、データハンドリングしようが、もともと標準化もできていなくて、かつ構造体ですね。データの構造体の標準も分からないと、ただデータを渡しても誰もやはり使わないです。
それからもう一点、コホートを構築する際に標準というのはざっくりした形になるのですが、渡された後にデータハンドリングしてコードを書いて、そして新たなデータフォーマットを作っていくという、ETLとかELTみたいなクレンジング作業ですね。そういう作業の啓発作業というのはすごく時間がかかるんですね。
そういったものを見越して、中村先生がおっしゃるとおりで、やはりAPIでそのまま構造体を崩さないようにデータをもらうということも意識しなければいけないですし、パイプラインと同じです。データハンドリングのフォーマットというか、これも実はデータクレンジングパイプラインと言うのですが、データクレンジングのパイプラインも決めなければいけないですね。ゲノムのパイプラインとは違います。
そういったものが準備されてから初めて戦略的コホートはこうやって作れるんですよというふうに国が示すと、産業界は、なるほど、それだったら利用料をたくさん払おうとか、それから実際にハンドリングして新たな創薬に使えそうだということが見えない限り、ただ投資してくださいと言っても多分進まないので、まずそういったデータの取扱いに関することをきちんとここに書き込んで明示しないと誤解を招くのではないか。
基本的には、産業界の方にもある程度参加をいただく事業であるべきだと思いますし、自由にその競争性の中で患者のために重要な創薬を進めるとか、これがないと解析しても意味がないわけですから、それは必要なのですが、実はデータの取次ぎというか、データを活用するということが結構見えなくなってしまうので、その結果、創薬が実は進んでいなかったりとか、ゲノムデータの活用が進まないというのでは、これはもったいないなということをちょっとお伝えしておきたいと思います。
○中釜委員長 重要な御指摘ありがとうございました。
中山参考人、お願いいたします。
○中山参考人 私も中村委員のおっしゃったとおりで、一番大事なことは臨床情報がくっつかないと、幾らゲノムを見ても、はっきり言うとほとんど役に立たないと思っています。しかし、今はやはり臨床情報は電子カルテが不統一になっていて、なかなか位相があってデータ連携ができない。だから、そこの問題は中村委員がおっしゃったように物すごく大きな問題で、私どもはお願いしていますけれども、ぜひ強力にこれと並行して変えていっていただきたいと思っています。
あとは、コホートもいいのですが、それはそれで別にだめだというわけではないけれども、あくまでもおまけ的な感じで、そもそも基本的な活用をどううまくさせるか、そして、その利用フィーを取っていくかというのが一番重要です。このデータベースの発展のためにも、たくさん利用されるいいデータベースができれば、利用料でアップデートしてどんどん更新されるのではないかと思っています。
以上です。
○中釜委員長 ありがとうございました。そういった意味では、診療情報を含めたデータベースの構造化を最初から産業界と連携を取りながらしっかりと作り込んでいく。そういう提案をすることによって、産業界からの早い段階での協力、出資ということも得られるということの御指摘かと思いましたので、その辺りもこの中に書き込めればと思います。
ほかに御指摘ございますか。
水澤委員、お願いいたします。
○水澤委員 ちょっと違った観点ですが、同じ10ページですけれども、4のマル4の「人材育成」のところで非常に簡単なのですが、これは2つ○があって「OJT(On-the-Job Training)」と書いてありますけれども、質問というか、お願いです。
これは全部現場に任せるという感じがちょっとするのですけれども、例えばそういう専門家のポストを作るとか、そういう支援をするとか、IRUDなどの経験で言いますと、相当国として、国家として、政策としてやっていただかないと、なかなかこの人材育成が本当は進まないということがあると思いますので、そこのところは考えてくださるのでしょうか。質問の形になりましたが、お願いします。
○中釜委員長 では、事務局お願いいたします。
○がん・疾病対策課長補佐 御指摘ありがとうございます。
バイオインフォマティシャン等の人材育成に関しましては、今年度からがん課の事業としましてバイオインフォマティックスの簡単なテキスト作成を入門編と、本当に応用編としては最初のある程度の解析ができるところまでの応用編ということで現在事業が始まったところですので、こちらはもちろん現場に丸投げということではなく、厚労省としましてもこういった人材育成の事業を行っていくというふうに考えております。
○水澤委員 ぜひ、そのポストを増やす等のことも含めてまた考えていただければと思いますので、よろしくお願いします。
○中釜委員長 では、難病課からお願いします。
○難病対策課長補佐 難病対策課の江崎です。
今、水澤先生から御指摘いただきましたが、やはりシークエンスであるとか、1次解析、2次解析までいっても、難病の場合、特にどういった症候群、疾病になるのかという臨床的意味づけというのが極めて大切になります。ですので、そういうことを担える人材を育成していくというのがこの難病分野を特に進めていくのに大事だと思っておりますので、先生からいただいた御意見を踏まえてどういう形で国が関わっていけるかということを検討して、またここにも反映できるかどうかということも少し検討させていただきたいと思います。ありがとうございます。
○水澤委員 ありがとうございました。よろしくお願いします。
○中釜委員長 ほかはよろしいでしょうか。
それでは、最後に12ページですが、栗原委員お願いします。
○栗原委員 栗原です。
先ほど議論が出たので、時間が迫っている中、蒸し返しになってしまい申し訳ありませんが、「5.データ利活用の方策」に「アカデミアフォーラム」と「産業フォーラム」の記述があります。「産業フォーラム」については産業界との関わりということが議論になりましたけれども、ここに関し、皆さんの認識や今後の議論の論点を確認させていただきたいのですが、この産業フォーラムというのは事業実施組織そのものではなくて、その事業実施組織が産業界とうまく対話をするための産業界側の何らかの集まりという位置づけ、外の組織だということで考えていいでしょうか。
その場合には、事業実施組織が何か資金拠出をするとかということではなくて、仲介という言葉がありますけれども、マッチング等の機能を発揮して産業界のニーズとうまく連携することを目指すということを主眼に書かれているのかと思います。他方、産業界側も出資かどうかは分からない。ビジネスのタイアップの仕方は出資だけではないので、データの利活用についても必ずしも別会社を作って実施する場合だけではなく、新しいビジネスのやり方は様々ありますので、出資という言葉自体は先走っているような気がするんですけれども、いかがでしょうか。
○中釜委員長 では、事務局お願いします。
○がん・疾病対策推進官 ありがとうございます。
正直申し上げますと、非常にある意味、私たちはその辺りのところは一番疎いというか、課題である点だと思っているところです。
資料1の18ページ目の絵を御覧いただくと、一番私たちのイメージが分かりやすいかと思います。あるいは、最後の22ページ目のGenomics Englandの全体図のようなものを見ていただくと分かりやすいかと思うのですが、これは事業実施組織と、それが管理する解析・データセンター、この辺りが事業実施組織の主体となる部分だと考えております。そこからデータを受けながら共同で開発や研究を進めていくようなものが、事業実施組織の軒先を借りながら一緒にやっていくような形になるのか、ちょっと別として形づくるような形がいいのか、そこはもう少しいろいろな形があり得るのだろうと思っています。
ただ、いずれにしましても、ここの部分というのはやはり産業界の積極的な関与というものが必要なのかなと思っておりまして、そのために出資というふうに書かせていただいたのですが、おっしゃられたように出資に限らないいろいろな関与の仕方を積極的に進めていく。そういう辺りのところをここに書き込みたいと考えておりますので、ちょっと書き方も工夫させていただいてまた少し御相談させていただければと考えております。
○中釜委員長 ありがとうございます。
それでは、司会の不手際で少し時間を超過してしまっているのですが、あと10分ほどいただきまして残りの議論、さらには最後に日本製薬工業協会からの資料が提出されておりますので、そこの議論に移りたいと思います。
最後に、12ページの8.と9.の項目に関して何か御質問、御意見ございますでしょうか。
○神里委員 神里ですけれども、11ページのところはまだやっていないと思うのですが。
○中釜委員長 すみませんでした。では、11ページをお願いいたします。
○上里委員 11ページに6と7があって、7について発言をしたいのですが、6についてほかの方はよろしいですか。
○中釜委員長 では、6、7についてお願いいたします。
○神里委員 では、7について発言をさせていただきます。
今ここのELSIに関係することで4つの点を挙げていただいていまして、これ自体に異論はありません。
ただ、今年の2月にまとめた文書で、実行計画の推進に向けた検討という今回参考資料2としてつけていただいている文書があります。その中では、ELSIに関して5つの項目を挙げていただいていまして、その中の5つ目の項目というのが全て抜けている状態になっているようにお見受けします。
その5つ目というのは、すごくこのゲノム医療を社会に定着させるための大きい基盤となる重要な点でして、ゲノム情報の取扱いに関する法整備を検討しましょうとか、相談機関の支援体制の整備をしましょうというような話だったり、リテラシー向上のための教育の話だとか、あとは患者参画の話というのが入っているところです。
それで、このロードマップ自体は令和3年、4年という短期間のロードマップなので、それで入れていないのかなという気もするんですけれども、やはりもう今年度からそういう大きな議論というのも並行して進めないと、いつまでたってもたなざらしになってしまうので、ぜひともこのロードマップに加えていただきたいということです。
そして、そういう大きい検討をするに当たって、今ELSI関係につけていただこうとしている研究体制ですね。AMEDでも募集しているということでしたけれども、それで十分なのかというところについてもぜひとも御検討いただきたいと思います。
以上です。
○中釜委員長 ありがとうございました。
この御指摘について、事務局から。
○がん・疾病対策課長補佐 御指摘ありがとうございます。
参考資料2の18ページ目の(5)の部分が抜け落ちているという御指摘でしたので、追記をさせていただきたいと思います。
○中釜委員長 よろしいでしょうか。ほかにいかがですか。
水澤委員、お願いします。
○水澤委員 6番の「保管、管理ルール」のところなのですけれども、1行目に「原則、各医療機関での保管とする」と書いてあるのですが、この医療機関というのは何を意味するかということによって随分変わると思います。
例えば、資料1の14ページにポンチ絵があると思うのですけれども、見ていただきますと分かりますが、一番下のところに医療機関があって、これはエキスパートパネルと書いてありますから、少なくとも拠点、あるいは中核拠点になると思うのですけれども、そういうものなのか、それとも患者さんがいるような医療機関なのか、ちょっとこれは微妙だと思います。
それで、もしそれを管理するとなると、検体がぐるっと回ってここまでまた戻ってくるような印象になりますので、もう一つここに多分あるべきだと思いますのは、その中央の今、例えばゲノム基盤と呼んでいるような、あるいは解析・データセンターと呼んでいるようなところですね。これも、その候補にはなると思います。
それで、6.の「保管、管理ルール」の2行目を見ますと既存施設というのも書いてあるのですけれども、これはこういうポンチ絵には現れてこない言葉でして、この部分ですね。保管、管理のルールにつきましてもう一回ぜひ検討していただきたいと思います。
これは、具体的な検討の流れを見ながら考えていかないとなかなか難しいのではないかなと思いました。いかがでしょうか。
○中釜委員長 御指摘について、事務局からございますか。
○がん・疾病対策推進官 おっしゃられるとおり、少し医療機関という感じで、ざっくりとしているという部分の御指摘だと思っております。確かに流れなども踏まえた状態で、より具体化したような形で検討をしていくということについてはそのとおりだと考えております。ちょっと書き方の工夫、それから実際にどういうところでということも含めて検討したいと考えております。
○水澤委員 ありがとうございます。
もう一点、7番でいいでしょうか。
○中釜委員長 お願いいたします。
○水澤委員 短くやりたいと思いますが、7番のところで下の2.目でしょうか。いわゆるICTを活用してというところです。e-コンセントのことが書いてあるのですが、その下のポツにあります遺伝カウンセリングですね。こういうものもオンラインで十分できるということで、我々IRUDのほうではこういうことを進めておりますが、これはe-コンセントのみしか使えないような印象というか、書き方なのですけれども、ぜひ遺伝カウンセリングなども視野に入れた書き方にしていただいたほうがいいのではないかと思いました。
ちょっとマイナーな点ですけれども、よろしくお願いします。
○中釜委員長 御指摘ありがとうございました。
ほかにございますか。
天野委員、お願いいたします。
○天野委員 ありがとうございます。2点ございます。
1点目は、先ほど神里委員からも御指摘があった点は私からも強調したいと思います。先ほど御指摘があった点は全て過年度の検討会で議論されてきたことばかりでして、どれも非常に重要なことなので、毎回指摘しているというか、抜けてしまっている部分があると思いますが、例えば普及啓発であるとか広報の部分もしかりなのですが、いわゆるヘルスケアコミュニケーションであるとか、場合によってはリスクコミュニケーションという部分もあるかと思いますが、そういった部分が不十分なまま事業を進めると、途中でこの事業全体がストップするのではないかというふうな懸念を持っておりますので、こういった部分はしっかりやっていただきたいと強く願っているということは私からも強調したいと思います。
2点目でございますが、資料の最後の12ページで先ほど冒頭で質問したことの繰り返しになるのですが、実施組織ができるということになっていて、それまでは前身となる事業実施準備室があるという記載がございます。この部分についてなのですが、事業実施組織はいつから動き始めるかによると思うんですが、それまでのこの全ゲノム解析に係る事業全体を統括するというか、ヘッドクオーター的な組織というのはどこになるのかということについて厚労省のお考えをお聞かせいただければと思います。
○中釜委員長 今の御指摘について、事務局からございますか。
○がん・疾病対策推進官 事業実施組織自体ができるまでというのには、早い段階でできればこの準備室というのを設けてそこで進めていきたいと考えております。
それで、実務的なところに関しては、現時点では我々の事務局のほうで進めているところでございますけれども、そこから準備室、それから事業実施組織というふうな形に移行していくのかなと考えています。
一方で、こういったものはガバナンスをどう効かせていくかという点については、本委員会が一定程度、全体を見渡しながら必要な助言、検討を行いながらというふうに考えているところでございます。
○中釜委員長 ありがとうございます。よろしいでしょうか。
続いては、議論は12ページの8と9に入りましたけれども、12ページの項目の「事業実施組織」、それから厚労省の検討体制について御意見、御質問ございますでしょうか。
お願いいたします。
○上野委員 厳密に8に結びついているのかよく分かりませんが、参考資料2の中で検討していただいている14ページの知財の整理についてというところで、知財が研究推進を妨げられるような状況を避ける必要があるとか、対応方針案の中で特に下の3つのポツで提案をしていただいているのですけれども、この辺りが先ほどデータ利活用に関して議論いただいた中でもちょっと知財というような話も出てきましたし、その辺りの検討と重複するところはあるのかもしれませんが、全体的な取組の中でどういう知財が生まれてきて、あるいはもう既にあるもので何か妨げになるようなものがあるのか、ないのか、対応する必要があるのか、ないのか。その辺りの視点からの全体的な検討というのも、どこかの位置づけで行っていただくことになっているのかなというふうに理解をしておりますということだけ、一言申し上げます。
○中釜委員長 ありがとうございます。それでよろしいですか。
ほかにいかがですか。
中村委員、お願いいたします。
○中村委員 中村ですけれども、実施組織を考える上でというか、今後の検討だと思いますが、その実施組織というのが半永久的に公的なものなのか、あるいはいずれ民間に移行するのかという前提によってかなり議論の在り方が変わってくると思います。そこを明確にしていただいた上で今後の議論を続けるほうが効率的だと思いますので、ぜひこの実施組織の具体的な議論に入った際には、国として出口をどう考えておられるのかを明確にしていただきたいと思います。
以上です。
○中釜委員長 ありがとうございました。
それでは、事務局からございますか。
○がん・疾病対策推進官 その辺りについては、一定程度こちらのほうからも方向性を示しながら議論をしたいと思います。
先ほど中山参考人のほうから、やはりその辺りは公的であるべきだというふうな御意見もあったところです。
ただ、一方で、一定程度、国の役割というのはなるべくスリム化していくべきだというふうに言われているところもありまして、本当に国で全部抱えていくべきなのかというところは実はいろいろな意見があるのかなと思っております。
その辺りも、今日はなかなか時間がないところですが、この後、別途でも構いませんので、いろいろな先生方から御意見を頂戴できればと思っております。
○中釜委員長 ありがとうございました。ほかはよろしいでしょうか。
それでは大分、時間を超過して申し訳ありませんが、本日は日本製薬工業協会の中山参考人から資料が提出されておりますので、中山参考人のほうから参考資料6を御説明いただけますでしょうか。
○中山参考人 では、手短にやらせていただきます。参考資料6を御覧いただきたいと思います。
これは、以前の会議体でも発言させていただいた内容でございますが、新体制になって新しい先生方もいらっしゃいますので、そのポイントだけ御紹介させていただきたいと思います。
まず、2ページを御覧いただきたいと思います。医薬品産業から見ますと、全ゲノム解析等実行計画というのは患者さんへの成果還元、いろんな意味での成果還元が期待できる極めて重要なプロジェクトだと思っています。
特に大事なことは、やはりゲノムデータと臨床情報、さらにオミックスデータが組み合わさって、その結果、効率的な創薬、新薬開発ができるということと、それを患者さんに届けるスピードが速くなったというふうにも考えていますし、また医薬品には必ず副作用がありますけれども、これは既に現実の事例として既存薬でも起きていることですが、ゲノムの情報が分かってくれば、より強い効果を求めることと、より副作用を抑えるというふうなことが、遺伝子の情報に基づいて適応等を変えることで可能になります。そういった意味で経済面でもプラスですし、患者さんにとっての成果という意味でも大きなものが期待できると思っていますので、ぜひこれを確実に進めていただきたいと思っています。
次の3ページを御覧いただきたいのですけれども、やはり進めるに当たって重要な点が4つあると思っています。
1つは、これは東北メディカルメガバンクでもなさっていますけれども、検体をしっかり保存していくことによって繰り返し様々な分析ができるというので、ゲノム情報だけではなくてそれ以外の情報も取れるという意味で、新鮮な凍結検体を保管するというのが重要なファクターになってくると思います。
さらに、先ほどちょっと申し上げましたけれども、遺伝子の情報と同時に、その遺伝子を提供した方がどういう体の状況かがわかる医療情報をマッチングすることによって初めてこのゲノム情報の意味が出てくる。しかも、それは単に病状だけではなくて、もし病気だとしたらどのような診断、どのような投薬をされていたかという情報があると一番効果が出るという意味で、こういう情報が必ずゲノムと一緒にリンクできるようなことが極めて重要になってくると思っています。
同時にもう一つ、最初はゲノムの解析だけですけれども、ゲノムの中でも2%くらいしかたんぱく質の情報しかないですが、それ以外のパーツが今後どんどん解明されてくると、もっと深く人間の体の生理機能が分かりますので、そういった意味で今後オミックスデータの解析というのが大きなテーマになってきて、それが今後必要になる。例えばGenomics Englandの中でもそうですけれども、ゲノム情報等の解析システムを高度化していくことによって、このデータベースがさらに大きな力を持つだろうと思っています。
そしてもう一つは、このデータベースは使われることによって価値を生み出すと思っていますので、いかにうまくこのデータベースを利活用できるかということで、そのアクセスの在り方ですとか利活用の体制、窓口、こういったものを早く取りそろえて、研究機関もそうですし、企業もそうですけれども、できるだけ多くの機関がこのデータベースを活用して解析していく。その上で、その成果を患者さんに還元するということに早く届けたいと思っています。
世界でも政府主導で、かつ民間利用でも可能な形で進められている成功事例がイギリスのGenomics Englandですけれども、もう既に世界で128社がここにアクセスして、第一三共も利用しています。これでもう既にどんどんと遺伝子解析をしながら新たな創薬のヒントを得たり、情報のターゲティングをしたりということが現実にはそれが起きています。
4ページを御覧いただきたいと思うのですけれども、特にゲノムのデータベースのこういうシステムというのは、今、我々の議論の中ではゴールですが、患者さんへの還元という意味ではそこがスタートラインになりますので、とにかく遅れないように早く実現したいというのが私ども産業界のニーズであります。
そのためには、その推進実行体制は出来上がった段階ではどのようなものかということを早くからイメージしてデザインすることが極めて重要だと思っています。
例えばGenomics Englandの場合には、2012年に首相がやろうと言い出して、その8か月後に国営の実行組織を作りました。そして、その6年後、2018年にもう既に10万検体の遺伝子情報を解析して次の段階にも移っていまして、2023年には100万検体そろえるという話です。
Genomics Englandの弱点は、優れた医療情報とマッチングしていないということがありますので、まだまだ日本もこれからこの分野ですばらしい貴重な医療情報のデータベースを作ることができますし、何よりも日本人のゲノムというのが分かってくると、もっときめ細かく日本人の患者さんのためのいろんな分析や新薬開発ができていくことになります。
そういった意味で、ぜひこれを強力に前に進めていただきたいと同時に、このゲノム情報は重要な個人データでもありますので、ある意味でスタートは公共財だと思っています。国民が納得できる、安心できるような法律の下で国がまず最初は管理していただくのが適当だろうと考えていますし、先ほど中村先生からお話があったように、出口も合わせてデザインを早めにしていく必要があると思います。ぜひ強力にこれを推進いただきたいというのが私どもの願いでございます。
以上でございます。
○中釜委員長 ありがとうございました。
ただいまの中山参考人の御発表に関して、何か御質問ございますか。
私から1点、今、中山参考人の資料の最後にこの利活用を促進すると同時にスピード感を持った強力な推進体制の組織の構築が重要だというふうにあります。先ほど来議論になっているところですが、この点に関して例えば製薬協として何らかの産業界からの協力ということは現時点で何かお考えがありますでしょうか。
○中山参考人 ポイントは、実際にこの組織がGenomics Japanになるのか分かりませんけれども、その組織体イメージを早く作るということと、そこの責任者を早く決めるというのはすごく大事だと思っています。
なぜかというと、どんなふうにデザインしたら企業は果たしてそれを使うのかというのを、早く情報を取りながらそこのトップが全体をデザインすることが必要だと思うんです。これは単にデータベースだけではなくて、例えばファイアウォールをどうするとか、倫理的な問題をどう整理していくかとか、その体制はどうあるべきかとか、いろんな問題が結構出てきますので、早くから少なくともそれを推進するトップを決めて利用者と議論をしていくということがすごく大事です。現実に起きていることは、例えば幾つかデータベースができていますけれども、「実際のデータベースを使えないか?」と製薬協に相談に来られるのですが、見てみると「残念ながらこれは使えません。この臨床研究にも使えません。」というのがあるのが現実で、そこから一から作り直すと全て全部無駄になります。しかし、もっと厳しいことは、このデータベースが利活用されないとしたら、作り上げたデータはどんどん陳腐化してますます使えないものになっていきます。価値のあるデータベースは何かというと、たくさん利用して利用料でさらにどんどんその内容がよくなっていくものです。これが、患者さんにとっても、産業界にとっても、研究所にとっても、価値のあるデータベースなんです。だから、これをうまくいかに利用させるかというのはものすごくポイントになってくると私は思っています。
○中釜委員長 ありがとうございました。
ほかに御意見ございますか。例えば、栗原委員など経済界のほうから何かございますか。この最後の部分に関するコメントなどは、産業界としてデータベース構築の段階から色々なステークホルダーが集まって実際に使えるて、開発に意味のあるデータベースを構築するためには人材の提供なども必要かと思っているのですけれども、ほかに経済界的な視点から何か御意見ございますか。
○栗原委員 まさに使えるデータかどうかというのは大変重要だと思いますし、早いうちからいろいろなデータがマージすることでより価値が生まれると思いますので、そういうニーズを拾い上げることが大変重要ではないかと思います。今年度1万例の収集が足元では走り始めているので、この段階からより付加価値のあるデータベースに向け意識する必要がありますし、そのときに中山さんのような産業界からのニーズは早めにくみ取る必要があるだろうと思います。そのくみ取る場は準備段階から必要ではないかと思います。
あとは、組織の在り方については、どういう形であれば自立するのかというのはあるのですけれども、もう一方で、扱うデータや効果を考えると、やはり公共財だというのはおっしゃるとおりだと思いますので、そこに合わせた組織体制を考える必要があると思います。
○中釜委員長 ありがとうございました。
ほかに御意見ございますか。よろしいでしょうか。
それでは、以上で本日の議題については審議を終えることができました。司会の不手際で大幅に時間を超過いたしましたが、本日いただきました御意見を踏まえまして、事務局のほうで修正等をいただいた上で次回改めて御議論いただきたいと思います。
また、先ほど事務局からもありましたが、ご意見等がございましたら、十分に伝えられなかった点を含めて本日中に事務局まで連絡いただければと思いますのでよろしくお願いいたします。
それでは、以上で本会議を終了したいと思います。追加のご意見等に関しては繰り返しですが、適宜事務局までお寄せいただければと思います。時間が超過いたしましたが、委員の皆様にはスムーズな議事進行に御協力いただきありがとうございます。本日は、誠にありがとうございました。
では、事務局からお願いいたします。
○がん・疾病対策推進官 本日は、誠にありがとうございました。
以上をもちまして、本日の会議を終了とさせていただきます。ありがとうございました。