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- 第1回循環器病対策推進協議会 議事録
第1回循環器病対策推進協議会 議事録
厚生労働省健康局がん・疾病対策課
日時
令和2年1月17日(金)13:00~15:00
場所
厚生労働省専用第22会議室18階
(東京都千代田区霞が関1-2-2)
(東京都千代田区霞が関1-2-2)
議題
(1 )開会
(2 )会長選任及び会長代理指名
(3) 循環器病対策推進協議会運営について
(4 )循環器病対策推進協議会のスケジュールについて
(5 )循環器病対策の現状等について
(6) 学会、団体等からのヒアリング
(7) その他
(2 )会長選任及び会長代理指名
(3) 循環器病対策推進協議会運営について
(4 )循環器病対策推進協議会のスケジュールについて
(5 )循環器病対策の現状等について
(6) 学会、団体等からのヒアリング
(7) その他
議事
- ○江浪がん・疾病対策課長 それでは、定刻となりましたので、ただいまより第1回「循環器病対策推進協議会」を開催いたします。
委員の皆様方におかれましては、お忙しい中、お集まりいただきまして、まことにありがとうございます。
私は、事務局を務めさせていただきます厚生労働省健康局がん・疾病対策課の江浪と申します。協議会の会長が決まるまでの間、進行を務めさせていただきますので、どうぞよろしくお願いいたします。
それでは、初めに、会の開催に当たりまして、加藤厚生労働大臣から御挨拶をさせていただきます。
○加藤厚生労働大臣 「循環器病対策推進協議会」の発足に当たり、それぞれの先生方には、この協議会の委員をお引き受けいただきましたことに、まずは冒頭、心から御礼申し上げたいと思います。
もう申し上げるまでもなく、我が国の死因を見ますと、心疾患が第2番目、そして脳血管疾患が第4位と、循環器病あるいは循環器に係る疾病が上位を占めております。また、急性発症する循環器病は、再発あるいは悪化を繰り返し、それぞれの患者さんの生活にも多大な影響を与えているわけであります。
こうした中、健康寿命の延伸などを図るための脳卒中、心臓病その他の循環器病に係る対策に関する基本法が、平成30年ですから、一昨年の12月に成立し、そして昨年12月から施行されたということでございます。この法律では、予防、医療、福祉サービスまで、幅広い循環器病対策を総合的に推進するということで、我が国にとっても大変重要な法律と考えております。
そして、その法律に基づき、政府が循環器病対策推進基本計画を作成することになっておりまして、皆さんが委員としてお入りいただいた、この協議会において、政府基本計画について、循環器病の患者やその御家族、そして医療や福祉の専門家、学識経験者の皆さんに御議論いただきたいということでお集まりいただいたという経緯でございます。
委員の皆さん方におかれましては、今後の我が国の循環器病対策について忌憚のない御意見、活発な議論を重ねていただいて、基本計画がしっかりと策定していけるようにお力をおかしいただきますことに心からお願い申し上げて、冒頭での御挨拶とさせていただきたいと思います。
どうぞよろしくお願い申し上げます。
○江浪がん・疾病対策課長 加藤大臣は、他の公務のため、ここで退席させていただきます。
(加藤大臣 退席)
○江浪がん・疾病対策課長 以上をもちましてカメラをおさめていただきますよう、御協力のほど、よろしくお願いいたします。
続きまして、委員の皆様方の御紹介をさせていただきます。なお、御所属等につきましては、名簿をもってかえさせていただきます。あいうえお順に御紹介申し上げます。
安保雅博委員です。
安藤美帆委員です。
磯部光章委員です。
小川久雄委員です。
川勝弘之委員です。
熊谷雅美委員です。
木幡美子委員です。
小室一成委員です。
永井良三委員です。
羽鳥裕委員です。
早坂由美子委員です。
堀場千秋委員です。
峰松一夫委員です。
美原盤委員です。
宮本享委員です。
山本晴子委員です。
横田裕行委員です。
横山徹爾委員です。
また、本日は、大橋未歩委員、中谷祐貴子委員より、御欠席の御連絡をいただいております。
また、本日は、参考人として、日本心臓血管外科学会理事長 横山斉様、仙台市消防局警防部救急担当部長 阿部和彦様、日本理学療法士協会副会長 森本榮様、日本作業療法士協会会長 中村春基様、日本言語聴覚士協会会長 深浦順一様に御出席いただいております。
事務局及び関係省庁からの出席者につきましては、時間の都合上、座席表を御参照ください。
なお、本日は、委員20名のうち18人の方に御出席いただいておりまして、定足数に達していることを御報告申し上げます。
厚生労働省では、審議会などでのペーパーレス化を推進しておりまして、本協議会もペーパーレスで実施させていただきます。お手元には、タブレット、スタンド、操作説明書を配付しております。会議終了後、タブレット等に関しましては持ち帰らず、机の上に置いていただいたままにしていただきますようお願い申し上げます。申し上げるまでもないことでした。
操作説明書を参照しながら、一度操作をお試しください。不明点がございましたら、お近くの職員に御質問いただければ、対応させていただきます。
続きまして、資料の御確認をお願いいたします。
議事次第
座席表
循環器病対策推進協議会委員名簿
資料1~4-8、参考資料1~4
以上でございます。タブレットに格納されていない場合、あるいは資料をごらんいただけない場合には、事務局までお申し出をいただければと思います。
○安井課長補佐 引き続き、事務局より御説明させていただきます。
本日は、第1回の協議会となりますので、まず初めに、健康寿命の延伸等を図るための脳卒中、心臓病その他の循環器病に係る対策に関する基本法、及び循環器病対策推進協議会の位置づけ等について簡単に説明させていただきます。
参考資料1と2をごらんください。参考資料1「循環器病対策基本法」は、循環器病対策を総合的かつ計画的に推進するための法律となっております。
循環器病対策推進協議会は、循環器病対策基本法第20条に基づき、厚生労働省に設置されたものです。
協議会の役割として、循環器病対策基本法第9条第4項において、厚生労働大臣は、循環器病対策推進基本計画の案を作成しようとするときは、循環器病対策推進協議会の意見を聴くものとされています。
循環器病対策推進協議会の組織及び運営に関して必要な事項については、参考資料2の「循環器病対策推進協議会令」で、その第1条において、委員の任期は2年、第4条において、委員の過半数が出席しなければ、会議を開き、議決することができないこと等が定められています。
以上となります。
議題2「会長選任及び会長代理指名」に移りたいと思います。
本協議会の運用を定めた循環器病対策推進協議会令第2条において、「協議会に会長を置き、会長は委員の互選により選任すること」と定められています。
本日は、委員の皆様方が新たに選任され、最初の協議会となりますので、本規程に基づきまして、委員の互選により会長を選任していただきたいと思いますが、どなたか御推薦いただけますでしょうか。
羽鳥委員、お願いします。
○羽鳥委員 日本医師会の羽鳥です。
長年にわたり循環器内科領域の診療及び研究の第一人者として、当該分野の発展に貢献されました永井良三委員がふさわしいと思います。いかがでしょうか。
(拍 手)
○安井課長補佐 全員一致のようですので、永井委員に本協議会の会長をお願いいたします。
それでは、永井委員、今後の議事運営をお願いいたします。
○永井会長 永井でございます。会長に御推挙いただきまして、ありがとうございます。
この循環器病対策というのは、単に循環器病だけではなくて、医療のあり方あるいは健康・医療政策、さらに福祉・介護、研究開発、場合によっては地域づくりということにも関係がございます。ぜひ皆様方のお知恵をいただきまして、よい議論ができればと思います。
どうぞよろしくお願いいたします。
それでは、早速議事に入らせていただきます。
まず、会長代理の指名でございます。これは、協議会令第2条第3項の「会長に事故があるときは、あらかじめその指名する委員が、その職務を代理する」ことに基づき、会長代理を指名することになっております。まことに恐れ入りますけれども、宮本委員にお引き受けいただきたいと思いますが、よろしいでしょうか。
(拍 手)
○永井会長 ありがとうございます。
御異議ございませんので、宮本委員に本協議会の会長代理をお願いしたいと思います。
一言。
○宮本委員 ただいま御指名いただきました宮本でございます。
日本脳卒中学会の理事長をしておりまして、京大病院の病院長をしています。脳卒中の立場から、この対策について協議をしていく協議会会長の代理という大役でございますが、何とか役目を果たしていきたいと思います。
よろしくお願いいたします。
○永井会長 よろしくお願いいたします。
それでは、議題3「循環器病対策推進協議会運営について」に移りたいと思います。協議会令第6条におきまして、「議事の手続その他協議会の運営に関し必要な事項は、会長が協議会に諮って定める。」とされております。これにつきまして、事務局が運営規程の案を用意していますので、審議したいと思います。まず、事務局から運営規程案について御説明をお願いいたします。
○安井課長補佐 事務局でございます。
資料1をごらんください。簡単に御説明申し上げます。
まず、循環器病対策推進協議会令第6条の規定に基づきまして、この規程を制定するものです。
第1条では、本協議会は、会長が招集する。また、会長は、議長として協議会の議事を整理するとしております。
第2条において、会議の公開について規定していますが、協議会の会議は、原則公開とするとしております。
第3条は議事録でございますが、議事録においても原則公開とすると記載しております。
第4条では、会長は、必要があると認めるときは、協議会に諮って委員会を設置することができるということを記載しています。
簡単ではございますが、運営規程案の骨子について御説明いたしました。以上でございます。
○永井会長 ありがとうございます。
ただいまの説明に質問、御意見等ございますでしょうか。よろしいでしょうか。
御意見なければ、運営規程は承認されたものとさせていただきます。ありがとうございます。
続いて、議題4に参ります。「循環器病対策推進協議会のスケジュールについて」、事務局において基本計画策定に向けたスケジュール(案)が作成されております。説明をお願いいたします。
○石上課長補佐 事務局でございます。
資料2-1、2-2をあわせてごらんください。
まず、資料2-1ですが、都道府県は循環器病対策推進基本計画を基本として、都道府県循環器病対策推進計画を策定することとなっており、その策定に当たっては、医療法に基づく医療計画、介護保険法に基づく都道府県介護保険事業支援計画等と調和の保たれたものとすることとなっています。
よって、スケジュールと議題についてですが、まず、本日の第1回は循環器病対策の現状等についてと、学会、団体等からのヒアリングを予定しています。
引き続き、第2回以降、2020年夏頃にかけては、学会、団体等からのヒアリング、基本計画(案)についてを予定し、さらに基本計画(案)に対する国民からの意見募集を実施してはどうかとお示ししています。
なお、基本計画(案)の策定後は、基本計画を閣議決定し、国会へ報告することとなります。
資料2-2をごらんください。
図の1段目ですが、循環器病対策基本法が2019年12月に施行され、2段目にありますように、循環器病対策推進協議会を本日より開催しております。
3段目にありますように、基本計画については、資料2-1の御説明のとおり、2020年夏頃にかけて議論を行い、2020年夏頃の策定を目指してはどうかとしております。その後に、都道府県が循環器病対策推進計画を策定することを想定しております。
基本法上、循環器病対策推進基本計画は、少なくとも6年ごとに見直すこととなっておりますが、医療計画等と調和のとれたものにするために、第1期循環器病対策推進基本計画は、おおむね3年で見直すことも選択肢の一つと考えております。
以上でございます。
○永井会長 ありがとうございます。
ただいまの説明について、御質問、御意見がおありでしたら御発言をお願いいたします。よろしいでしょうか。もし御意見なければ、事務局案に沿って、これから進めてまいりたいと思います。
では、議題5に参ります。「循環器病対策の現状等について」、資料3の説明をお願いいたします。
○安井課長補佐 事務局でございます。
資料3をごらんください。
まず、循環器病に係る統計です。
3ページですが、心疾患及び脳血管疾患は、我が国における主な死亡原因であり、両者を合わせた循環器病は、悪性腫瘍に次ぐ死亡原因となっています。
4ページをごらんください。我が国の介護が必要となった主な原因の構成割合ですが、脳血管疾患、心疾患を合わせた循環器病は21.2%と、介護が必要となった原因に占める割合は最多です。
5ページに、健康寿命と平均寿命の推移を示します。平成22年から28年については、男女ともに、平均寿命・健康寿命は延伸しており、平均寿命と健康寿命の差である不健康期間は短縮しています。また、健康寿命の地域間格差も縮小しています。
6ページをごらんください。平成29年度傷病分類別医科診療医療費は30兆8335億円となっており、そのうち、循環器系の疾患が占める割合は19.7%と、最多です。
7ページから、循環器病対策の歩みを示します。主なものとして、国民健康づくり運動や、健康局で開催された検討会等があり、昨年12月に健康寿命の延伸等を図るための脳卒中、心臓病その他の循環器病に係る対策に関する基本法が施行されました。
9ページに、健康増進法を示しておりますが、10ページにありますように、健康増進法第7条を受け、国民の健康の増進の総合的な推進を図るための基本的な方針(健康日本21(第二次))を告示しています。
健康の増進に関する基本的な方向の2つ目にある、生活習慣病の発症予防と重症化予防の徹底において、循環器疾患について目標を設定し、対策に取り組んできました。
11ページに、循環器疾患に関する目標を示しております。
12ページより、健康局で開催された検討会の報告書の概要を示します。
まず、「脳卒中、心臓病その他の循環器病に係る診療提供体制の在り方に関する検討会」報告書概要ですが、循環器病は、急性期から維持期まで一貫した診療提供体制の構築が必要であり、急性期については、時間的制約の観点から、地域の医療施設が連携し、24時間専門的な診療を提供できる体制の確保が必要であることなどが記載されています。
回復期から維持期の診療提供体制に関しては、脳卒中と心血管疾患にわけて、再発予防等について記載されています。
13ページに「循環器疾患の患者に対する緩和ケア提供体制のあり方に関するワーキンググループ」報告書の概要をお示しします。循環器疾患は、全人的な苦痛を伴う疾患であるため、苦痛を緩和し、生活の質の維持向上を目的とした緩和ケアが必要な疾患であることや、がんとの主な共通点・相違点の理解等の観点が必要であること等について記載されています。
14ページに「非感染性疾患対策に資する循環器病の診療情報の活用の在り方に関する検討会」報告書の概要を示します。急性期医療現場で、当該患者の循環器病の既往歴等を把握するために活用すること、及び正確な患者数や罹患率を踏まえた診療提供体制の構築や予防等公衆衛生に活用することを目的とすることなどが示され、まずはモデル事業で開始し、運用方法等の検証を行った上で展開するということが記載されています。
15ページに、法律の概要を示します。趣旨としては、脳卒中、心臓病その他の循環器病が、国民の疾病による死亡・介護の主要な原因になっている現状に鑑み、循環器病予防等に取り組むことで、国民の健康寿命の延伸を図り、医療・介護の負担軽減に資するとなっております。
基本理念として、循環器病の予防、循環器病を発症した疑いがある場合における対応の重要性に関する国民の理解と関心を深めること。
保健、医療、福祉に係るサービスの提供が、等しく、継続的かつ総合的に行われるようにすること。
循環器病に関する研究の推進を図ることが記載されています。
政府は「循環器病対策推進協議会」を設置し「循環器病対策推進基本計画」を策定し、少なくとも6年ごとに変更を行うとされています。
基本的施策として、循環器病の予防等の推進、搬送及び受入れの実施に係る体制の整備、医療機関の整備、生活の質の維持向上、関係機関の連携協力体制の整備、保健、医療又は福祉の業務に従事する者の育成、情報の収集提供体制の整備、研究の促進などが記載されています。
17ページに本協議会等についてまとめています。
18ページより各論になりますが、救急の現状について簡単に御説明します。
19ページに、救急業務の概要として、救急隊員や救急救命士について、また救急業務の流れについて示しています。
20ページに、現状と課題を示しています。あとのスライドと一部重複する部分もありますが、現状として、救急出動件数、救急搬送人員が増加傾向にあること。病院収容時間・現場到着時間、ともに延伸傾向が続いていること。平成31年4月現在、5178隊、99.3%で救急救命士が配置・運用されていることなどを示しています。
21ページをごらんください。救急出動件数及び搬送人員数ともに、10年連続の増加となっています。
22ページに、救急出動件数のうち、最も多い事故種別は、全体の64%を占める急病であること、交通事故が全体に占める割合は減少傾向であり、急病が増加傾向であることを示しています。
23ページに、急病の疾病分類では、脳疾患、心疾患等を含む循環器系が多く、全体の16.2%を占め、特に高齢者ではその割合が高いことを示しています。
24ページに、死亡及び重症(長期入院)において、脳疾患や心疾患が占める割合が高いことを示しています。
25ページに、救急医療体制体系図を示します。
26ページですが、救命救急センターの充実段階評価における来院時の年間重篤患者数からは、心疾患、外傷、脳血管疾患の受入れが多いことが示されています。
27ページには、重篤の定義を示しています。
以上でございます。
○永井会長 ありがとうございます。
ただいまの事務局からの説明について御質問、御意見ございませんでしょうか。いかがでしょうか。よろしいでしょうか。
続きまして、議題6「学会、団体等からのヒアリング」に移りたいと思います。本日は9団体からお話をお伺いいたします。前半6団体、後半3団体に分けて、それぞれまとめてプレゼンテーションいただいた後に質疑応答時間を設ける形にしたいと思います。御発表は、1団体当たり5分、事務局は終了1分前にベルを1回、終了時にベルを2回鳴らすことにいたします。
では、まず資料4-1から4-5について一括して御説明をお願いした後に質疑応答したいと思います。資料4-1の説明を日本脳卒中学会・日本脳卒中協会よりお願いいたします。こちらの発表は2団体分ということですので、10分間でお願いいたします。
○宮本委員 それでは、宮本のほうから発表させていただきます。資料4-1をごらんください。
1ページ目は、全体のまとめでございます。その内容をこれから説明していきます。
2ページは、脳卒中学会と脳卒中協会の特徴を示していまして、医師の会員はほとんど重なっているのですけれども、脳卒中協会というのは、右側に書かれておりますように、医療従事者以外に、患者・家族団体、一般市民、その他行政なども含まれている団体でありまして、日本脳卒中学会は、基本的には医師で構成されておりまして、その3分の2が脳神経外科、3分の1が内科、それ以外にリハビリテーション、救急、放射線科となっております。
日本脳卒中学会では、日本循環器学会と一緒に、2016年から脳卒中と循環器病を克服するための5カ年計画というものを推進してまいりました。その計画推進をしていた事業をもとに今回の法律ができましたので、基本的な施策について現状を分析し、それから現状の問題点を抽出して、今後要望する施策というものを考えてまいりました。日本循環器学会とも情報共有しております。
それでは、脳卒中協会は、先ほど申しましたように、市民啓発あるいは患者支援ということを扱い、それ以外を脳卒中学会が扱ってきたということになりますので、3ページ目、脳卒中協会のところについては、峰松委員のほうから御説明していただきます。
よろしくお願いします。
○峰松委員 日本脳卒中協会の理事長をしています峰松です。
日本脳卒中協会は、23年前に設立された公益社団法人で、主な任務は、予防のための市民啓発、それから患者さんと家族の支援を行うということで活動を行ってきました。今回の法律に関しても、特に脳卒中の予防、それから患者・家族の支援という点に重きを置いて、今後協力活動をさせていただきます。
3ページ目の第12条、予防のところが書いてありますが、予防に関しては、脳卒中だけではなくて、ほかの心臓病、循環器関係でもオーバーラップするところが本当に多い。そこで、日本循環器学会との共同チームをつくって、ほぼ同じ内容で具体的施策をまとめています。すなわち、行政による体系的な国民啓発、それから受動喫煙の防止対策等を喫緊の課題としています。
次は6ページ目の、第15条、第18条第1項です。これは協会のもう一つの任務である患者あるいは家族の支援です。現状の課題がここに書いてありますが、作業療法あるいは言語聴覚療法のほうからもヒアリングがあると思いますが、そちらの体制を一緒に支援していこうと考えています。
患者さんにアンケート調査を行ったのですが、今一番困っているのは、「相談窓口がいろいろなところにばらついていて、スムーズなことができない」ということです。この法律ができたことを利用して、包括的な相談窓口、一番最後に書いていますが、これが設置できるようにいろいろ対策をとっていただければと考えております。協会のほうから、主なところはその2点であります。
では、学会のほうに渡します。お願いします。
○宮本委員 それでは、4ページをごらんください。これは、急性期の問題でございまして、急性期脳卒中、とりわけ急性期脳梗塞に対しては、血栓溶解療法であるt-PA静注療法と、カテーテル治療による血栓回収療法というのがあるわけですけれども、それが時間との闘いであって、専門性も高いということで、これらを24時間365日実施できる急性期医療機関が限られているわけで、そういうところに救急隊から脳卒中疑いの患者さんを運んでいただこうという体制をつくりたいということでございまして、専門性と時間の闘いの両面を考慮して、従来の二次・三次医療圏に固執せずに、各地域の実情に応じて脳卒中患者の救急搬送体制を策定するということ。
また、救急救命士あるいは救急隊員が、これは脳卒中の中でも、脳の主幹動脈閉塞だろうということを考えられるようなスケールを全国展開していきたいと考えています。
5ページをお願いいたします。これは、治療する側の専門医は施設間あるいは地域間で偏在があるということで、どの施設が24時間365日、こういう治療ができるのかということで、脳卒中センターとして整備していきたい。学会としては、t-PA静注療法を24時間365日施行可能な脳卒中センターを既に認定しているわけですが、そういう整備をしていって、その脳卒中センターにおいては、多職種による脳卒中ユニットによる治療というものを行っていきたい。
そして、そういう専門医がいない医療機関あるいは地域につきましては、脳卒中センターとの間で医療情報の共有、患者搬送の協力などをしていきたいということでございます。
次に、7ページでございます。これは、急性期のみならず、急性期から後の回復期、維持期、かかりつけ医への連携について、全国共通脳卒中地域連携パスというものを導入して、シームレスな情報共有をしたいということでございます。
8ページは、人材育成のところでございまして、医療の中で、医師だけではなくて、多職種によるチーム医療のリーダー、それから患者支援、相談を受けるソーシャルワーカー、ケアマネージャーという専門家を育成していきたいという内容でございます。
9ページは、一番問題となっているものの一つでございまして、登録事業です。先ほども厚労省のほうから御説明がございましたが、実際の脳卒中の発生件数というものがなかなか把握できていませんので、悉皆性の高い脳卒中の患者データベースというものをつくっていきたい。
なおかつ、取り組むべき施策の要望の➁に書いておりますが、登録作業もかなりのものになりますので、基本的にはITを利用して、電子カルテから自動抽出という形で進むようなものを整理していただきたいと考えております。
次に、最後の10ページでございます。これは、研究のところでございまして、脳卒中も循環器病も、基本的には対症療法といいますか、予防と治療を行っているわけですけれども、原因に基づいた治療というものはなかなか行えていないということで、原因究明の研究。それから、ロボットテクノロジーや再生医学を利用したような新規治療法、新規医療機器の開発について、産官学が共同して、基礎研究から実用されるまでをシームレスに推進していきたいというものでございます。
この内容を1ページ目にまとめておりまして、短期的に取り組むべきもの、中長期的に取り組むべきものという形で記載しております。
学会のほうからの説明は以上でございまして、協会のほうからは。
○峰松委員 いいです。終わります。
○永井会長 どうもありがとうございます。
続きまして、日本循環器学会から資料4-2の説明をお願いいたします。
○小室委員 まず、1枚目はまとめでございますので、2ページ以降で説明させていただきたいと思います。基本法にある8つの基本的施策に沿って説明してまいります。
第12条は、予防・啓発であります。ここでお話しするのは、ただいま脳卒中協会・学会からお話がありましたように、日本循環器学会は脳卒中協会・学会と連携して活動していきたいと考えていますが、ここにおいては、循環器、心疾患、大血管疾患に少し特化してお話しさせていただきたいと思います。
予防・啓発でありますけれども、循環器病の認知度が低いということが大変大きな問題だと考えています。循環器病は、予防が大変重要、かつ有効であります。また、その主体は国民一人一人ですので、国民の啓発が大変重要だと考えています。喫煙、高血圧、脂質異常症が循環器病のリスクですので、受動喫煙対策、食品の成分表示の充実、ナッジ政策としての減塩対策、家族性高コレステロール血症の早期診断などを推進していきたいと考えています。
また、小児期からの教育が大変重要ですので、学習指導要領に循環器病を入れることを推奨したいと考えています。
3ページ目をごらんください。ここは、患者の搬送であります。現在の救急搬送体制は、主に重症度で一次から三次となっておりますが、循環器病は専門性と時間との闘いですので、循環器病に特化した救急搬送体制を確立する必要があると考えています。そのためには、IT技術を活用し、遠隔診断・指示系統体制、受入れ医療機関の決定体制等を整備することが重要です。
また、病院外での心停止、それによる死亡が多いので、心肺蘇生の実施、AED使用の普及啓発、並びに救急救命士による処置制限の緩和・教育を推進したいと考えています。
続きまして、4ページ目、第14条です。これは、医療機関の整備です。地域格差がありますので、緊急冠動脈インターベンション、大動脈手術が可能な施設の地域分布の適正化を検討する必要があると考えています。
また、大動脈解離が大変大きな問題になっていますので、24時間体制で手術ができるように、医療者を確保し、連携体制を整備することが重要だと思います。
成人先天性心疾患、肺高血圧など希少疾患を診療できる専門施設が少ないという現状ですので、その整備も必要かと考えます。
5ページ目、第15条、生活の質の維持向上であります。循環器病患者の生活の質向上のため、超急性期から急性期、回復期、維持期までの心臓リハビリテーション制度を整備することが求められます。
循環器病患者は、超高齢者が多いので、フレイル予防、克服支援体制を整備することも重要であり、さらに、そのためには、福祉・介護との連携が求められます。
6ページ、第16条、連携協力体制の整備であります。慢性循環器疾患患者は、併存症を抱えた高齢者が多いので、急性期医療機関、かかりつけ医、リハビリテーション医療、訪問サービスなど、地域包括ケアシステムとの連携を構築することが重要であり、心不全に関しては緩和ケア提供体制を確立することも必要だと思います。
7ページ目、第17条、従事者の人材育成であります。入退院を繰り返す心不全患者を診療するには、循環器専門医ばかりでなく、かかりつけ医、看護師、薬剤師、理学療法士、作業療法士、保健師、栄養士等々、多職種の人材育成が必要です。日本循環器学会では、多職種人材育成のために、心不全療養指導士制度を創設します。臨床研究、産学連携、レギュラトリーサイエンスを担う人材の育成も求められます。
8ページ、18条、登録研究であります。循環器病患者の患者数、治療実態・予後などのデータがありませんので、悉皆性の高い情報の収集が必要であり、そのために循環器病情報センターを整備する必要があると考えます。
最後、9ページ、研究の促進です。がんは、研究の進歩により治る時代になりました。一方、循環器病の多くは原因が不明であるために、対症療法にとどまっており、治すことかできていません。基礎研究を推進し、循環器病の原因を解明し、原因に基づいた治療法を開発することが極めて重要です。
また、発症リスクの評価法、予防法、予後予測法の研究開発を推進することも重要です。
最後に、多施設共同研究を実施し、新しい治療法等を確立していくことが求められると考えております。
以上です。
○永井会長 ありがとうございます。
続きまして、資料4-3について日本心臓血管外科学会からお願いいたします。
○横山参考人 心臓血管外科学会の横山でございます。
まず、最初のスライドをごらんください。本学会は、JCVSD(日本心臓血管手術データベース)の運営を支援しまして、手術成績の把握、成績向上を行っております。JCVSDは、今後行われる循環器疾患データベースと連結され、より有効なビッグデータとなることを期待しております。
また、専門医制度を構築しまして、専門医の手術経験増加と施設集約化を行っております。
大血管救急におきましては、情報通信技術を用いた遠隔医療の臨床研究支援を行っております。
また、下肢血管病の全体像把握、早期診断にも努力してまいります。
2ページをごらんください。学会の理念として、第1に、質の高い医療を掲げております。ハイリスクの手術を日常的に行う心臓血管外科診療の質向上を重点的に追求しております。
3ページをごらんください。学会の活動概念図です。多方面の活動を行っていますが、最終的には本邦の心臓血管外科診療の向上により、多くの国民に恩恵がもたらされることを大目標としております。
4ページですが、今回の基本法の施策と関連しまして、赤字の4点について簡単に御紹介させていただきます。
5ページ、JCVSDですが、20年の歴史を有しまして、全国592施設が参加、累計63万例の心臓血管外科手術の詳細を含んだビッグデータとなっております。
6ページに示しますように、患者さんの術前の状態から、Japan SCOREと申しておりますが、予測死亡率を算出しまして、手術の適用決定、また患者さんへの説明に非常に有用なツールとなっております。
その次のページですけれども、各施設の予想死亡率と実際の死亡率の比率、これをO/Eレシオと申しますが、算出されまして、各施設に報告されまして、全国との比較から見た改善すべき点を明示しております。
8ページです。また、JCVSDと本学会が連携しまして、本学会の理事数名がチームとなりまして、各施設を訪問し、症例の検討とカンファレンスを行い、手術成績の向上を得ております。このデータは、今、冠動脈バイパスをお示ししております。
9ページは、急性大動脈解離を含む大血管の手術の成績の向上を提示しております。
10ページをごらんいただきまして、この成果に関しましては、昨年「ブリティッシュ・メディカル・ジャーナル」に発表されまして、国際的に認知される医療の質改善運動となっております。
11ページをごらんください。今度は専門医の話ですけれども、本学会は日本胸部外科学会及び日本血管外科学会と共同しまして、研修施設または専門医の手術要件を次第に厳格化しまして、専門医の質向上に努めております。
12ページをごらんください。また、先ほど申し上げましたように、専門医経験症例とJCVSDと連結、JCVSD登録を義務化することによりまして、修練施設の質の評価を行っております。
13ページです。大動脈瘤破裂や急性大動脈解離などの大血管救急診療では、診断を行う初期対応施設と外科治療を行う高度医療施設の円滑な連携が重要であります。
14ページに示しますように、高度医療を行うセンター的施設は限定されております。そのために、搬送に時間を要します。センター施設がそれぞれの症例に的確に対応するために、患者さんの事前情報が迅速かつ十分に伝達されていることが重要です。
次のページをごらんください。広範囲の搬送を要する症例も多い旭川医大で、搬送元病院からクラウドを経由して担当者に患者情報を伝える臨床研究を行っており、本学会も支援しております。
その次のページは、スマートフォンの画面の一例ですが、CT画像などを含む詳細な情報を伝達することができます。
17ページです。この取り組みは、現在全国10施設で行われ、JCVSDでその効果が明確になると考えられております。
18ページ、最後のスライドです。動脈硬化による下肢血管病は、下肢切断にまで至る重篤な疾患ですが、本邦におけるその全体像は現在も詳細が明らかになっておりません。ABIは、簡便な検査ですけれども、早期発見、重症化予防につながると考えられます。健康診断の1項目として普及することが考えられます。また、将来は、全国的な重症下肢虚血症例登録を行うことで、ABI健診効果の検証と下肢切断症例の減少が期待できると考えております。
以上です。
○永井会長 ありがとうございます。
続いて、資料4-4について日本救急医学会からお願いいたします。
○横田委員 昨年まで日本救急医学会の代表理事をして、現在は日本神経救急学会の理事長をしています横田と申します。よろしくお願いします。
資料4-4に全て書いてあるところですが、救急医学会としては、循環器病に関しては2つ大きな取り組みをしてきました。
1つは、救急医学会あるいは救急医の使命の一番大きなところは、特にこの循環器に関しては、時間が限られているということで、短時間に、適切な病院で、該当する患者さんをいかに専門の先生方に診ていただくか、それが一つのポイントです。
2つ目は、それに関しては、救急現場、特に救急隊との連携が一番大切だという視点から、今までの取り組みがなされてきました。
そういう視点から、4-4の一番上の取り組みについて見ていただきたいのですけれども、今、5疾病5事業と言われている中に脳卒中があるわけですけれども、特に脳卒中に関して、救急医学会としても、今お話しした2つの視点から取り組んでまいりました。
まず、救急隊に関しては、2ページ目の上の救急隊が使うテキストを、これは何回もバージョンを重ねてつくってまいりました。これは、救急に関するさまざまな学会が連携してつくったものですけれども、今、テレビ等で宣伝している、急な顔のゆがみ、急な手の麻痺、あるいは急な言語あるいは言葉の障害というものがあったら、必ず脳卒中の専門病院に救急隊は運んでくださいということをテキスト化し、それを救急隊の活動基準に盛り込んだというのが、一つの学会の取り組みだったと思います。
2つ目は、皆さんの資料4-4の2枚目には、監修に臨床救急医学会が最初に書いてありますけれども、テキストを見ていただくとわかるのですが、救急医学会もかかわっていまして、追加していただきたいのですけれども、これは救急隊が急性期の脳卒中を判断した患者さんを、いかに脳卒中の専門医あるいは循環器の専門医の先生方に診ていただく、あるいはそのポイントに関して解説したテキストです。これもバージョンを重ねまして、一番新しい2018年版を持ってきましたけれども、多くの救急隊の活動基準には、こちらの「PSLS」、それから救急医は、恐らく神経内科医や脳外科医の先生方も使っていると思うのですが、「ISLS」という標準の救急・外来での診療の仕方という発信をしてまいりました。
その中で、2つ目に書いてあるのですけれども、今後の重要な点というのは、救急の現場あるいは医療機関というのは、それぞれ情報が個別、ばらばらになっている。それを連携していかなくてはいけないと考えています。
その一番のポイントは、3ページを見ていただきたいと思います。これは、5つの学会、きょうおられます脳卒中学会、循環器学会、あるいは脳卒中協会と救急医学会、脳外科学会が連携してキャンペーンを張っているThink FAST campaignです。これは、抗血栓薬という薬に限定して、これを飲んでいる人は十分注意してくださいねというキャンペーンですけれども、こういう情報が救急隊あるいは救急病院にもたらされないと、適切で迅速な医療が展開できない。そういう意味で、短期的あるいは中長期的なところに、情報の共有化あるいはICTを使った診療情報の共有化ということを書かせていただきました。
最後の4ページ目が、きょうお越しの安保先生と一緒にやった東京都のデータです。今の救急隊の皆さんの「PSLS」での活動基準では、的中率、感度というのは大体6割、あるいは特異度、脳卒中ではないと判断するのが99%ぐらいというデータを出させていただきました
救急医学会からは以上です。
○永井会長 ありがとうございます。
続いて、資料4-5について全国消防長会議救急委員会委員長都市であります仙台市消防局からお願いします。
○阿部参考人 ただいま御紹介にあずかりました仙台市消防局の阿部でございます。
私のほうからは、循環器系疾患の病院前救護を担う私どもの立場から、救急隊の現状と課題について御説明させていただきます。
平成30年中における全国の救急出場件数は、先ほど事務局のほうからも御説明ございましたが、約661万件でございまして、10年前と比較して約29.6%の増加となっております。また、平成30年中の入電から医師引継ぎまでの全国平均の時間は39.5分となってございまして、10年前と比較して4.5分の延伸となっております。
このような中、仙台市におきましても救急出場件数が毎年増加してございまして、平成30年は5万2538件で、前年より5.5%の増加、10年前と比較して40%の増加となっております。そのうち、循環器科に救急搬送された傷病者は2889人であり、全搬送人数4万6591人中の6.2%となっております。また、仙台市の119番入電から医師引継ぎまでの平均的な所要時間は38.3分となってございまして、こちらも10年前と比較して3.8分の延伸となっております。
今後も救急需要の増加が見込まれてございますが、循環器系疾患を含むあらゆる疾患に対しまして、地域の実情に応じた迅速で質の高い救急搬送をいかにして行うかが、私どもの喫緊の課題であると認識しております。
それでは、救急件数が増加する中、循環器病を初めとする救急対応について、医師引継ぎまでの時間短縮ですとか、質の高い救急搬送の現状の取り組みについて御説明いたします。大きく4点ございます。
1点目は、全国的な取り組みといたしまして、消防法35条の5に基づく救急搬送に関する実施基準の策定がございます。既に全国47都道府県で策定されておりまして、仙台市においても宮城県が策定した宮城県救急搬送実施基準によりまして、循環器系疾患に対応する受入れ可能な医療機関をリスト化し、より迅速な医療機関への連絡、受入れにつなげております。
次に、地域の実情に応じた取り組みといたしまして、ドクターヘリコプターとの連携がございます。仙台市においても、平成28年10月から宮城県で運用を開始しているドクターヘリとの連携活動を行ってございまして、ACS疑い等、緊急度・重症度の高い事案に出動し、少しでも早く医師の管理下に置くことにより、救命率の向上や後遺症軽減などの効果が期待できるものと存じております。
また、仙台市では、受入れ医療機関が充実しているため、導入してはございませんが、宮城県内においては、2つの消防本部で医師の診断と適切な医療機関の選定、再灌流療法までの時間短縮に向けて12誘導心電図伝送を導入していると伺っております。
次に、指令管制員、119番を受ける者ですけれども、こちらが収容医療機関をあらかじめ選定する救命コールといった仙台市独自の取り組みについてでございます。この取り組みは、119番通報を受信した指令管制員が、キーワード方式によりまして緊急度・重症度を判断し、救急隊の出場と同時に協力医療機関に収容依頼をかけて、搬送時間の短縮を図るものでございます。キーワードは、外傷、脳卒中、急性呼吸不全等、大きく6つに大別されており、その一つにACS等の疑いも含まれております。
以上、救急隊の現状と課題について御説明させていただきました。ありがとうございました。
○永井会長 ありがとうございました。
それでは、ただいま行っていただきました説明、資料4-1から4-5に関しまして、御意見等ございましたら御発言をお願いしたいと思います。また、総合討論は後ほど行いますので、全体的なことは後に回していただければと思います。いかがでしょうか。どなたでも。
羽鳥委員。
○羽鳥委員 日本医師会の羽鳥です。
学会、団体からのヒアリングでは、救急、脳卒中循環器病の一番重要なところのお話が中心だったと思います。これから高齢者がふえてそれぞれの疾患、急患の需要がふえてくるということはわかりますけれども、先ほどの救急隊の報告からオンセットから収容時間が逆に延びてしまっているというのは、ゆゆしきことなのだろうなと思います。医師会としてもできるだけ協力していきたいと思いますので、この中でよい案が出てくればと思います。
幾つか提案したいことは、先ほど幾つかの学会からも提案がありましたけれども、ICT、IoTの充実を図るということで、これからEHR、PHRが出てきて、最低限、お薬手帳を持つと抗凝固薬の服用中のNOAC、DOACなどの薬の服用の履歴などを救急の現場に把握させるようにするということは、患者さんとしても現場の第一線の医師としても必要なことだろうなと思います。
それから、もう一つ感じていることは、二次医療圏の考え方として、患者さんが病院までたどり着く時間というのが、必ずしも空間的な距離じゃなくて、時間的な距離というものがとても大事だと思いますので、いわゆる2次医療圏の枠にはこだわらず守備範囲を考えることなど医療政策などに生かしていかれるといいのではないかと思います。
以上です。
○永井会長 ありがとうございます。
ほかにはいかがですか。
では、峰松委員、どうぞ。
○峰松委員 救急隊のコールがあってから病院に着くまでの話はわかるのですが、一番問題になっているのは、発症してから救急隊にアクセスするまでの家庭での反応に非常にばらつきがあって、この辺は教育的な介入をしないと改善しないし、かなりやっているのだけれども、なかなか実現しないというところに大きな問題があると思います。横田先生、この辺の分析等はどうですか。
○横田委員 ありがとうございます。
先ほどの資料の4ページ目に関連したことですが、東京都で平成22年度と平成24年度に2回ほどアンケートを行いました。これは、1ウィークスタディーで、救急要請のあった約1万件を、病院と救急隊の記録を全部突合しました。先生がおっしゃるように、当時t-PA投与までの時間が発症3時間以内だったのですが、今は4.5時間ですが、発症から病院到着までの平均時間はそれをオーバーしていました。それは、特別な症例が引っ張っているということもあるのですけれども、中央値ではそれぞれ85分、76分でした。
ですから、いろいろなキャンペーン等が必要で、日本脳卒中協会が主導してさまざまなキャンペーンを行ったと思います。また、先ほど仙台消防のほうからありましたけれども、発症から救急車要請までの時間がかかっている、あるいは通常の救急の活動よりも若干長いという話はよく聞きます。ですから、その辺も改善していかなくてはいけないと思っています。
○永井会長 どうぞ。
○峰松委員 t-PAに関しては、日本は全脳梗塞の5%から7%ぐらいのオーダーで、以前、2~3%というとんでもない低いレベルだったのですが、大分改善しています。脳卒中学会の5カ年計画で出しているのは、「10%が治療を受けられる」というのを目標にしています。ところが、世界脳卒中機構の出している世界の先進国の目標は、「2020年に20%」という数字です。この解離は相当深刻です。実は、法律をつくらないといけないという話が始まったのはその辺からなのですが、ぜひここに焦点を絞ったアプローチがこの計画の中でできてくればなと考えています。
○永井会長 ありがとうございます。
ほかにいかがでしょうか。
磯部委員、どうぞ。
○磯部委員 榊原記念病院の磯部でございます。
救急と循環器の大動脈解離の話題が出ております。大動脈解離という疾患は死亡率が非常に高くて、発症して2日で30~50%程度亡くなる疾患ですけれども、緊急手術で救命ができる疾患で、私どもの施設では年間100件以上の大動脈解離の緊急手術を行っております。現状の救急のシステムですと、普通に胸が痛くて救急車を呼んだ患者さんは、救急隊がその患者さんの状態に応じて二次救急、三次救急に搬送します。循環動態が悪いような患者さんは、三次救急、救命センターに送ることがルールになっております。
東京都では、CCUネットワークに次いで大動脈スーパーネットワークが既に5年ほど稼働しておりますので、大動脈解離と診断された患者さんは手術ができる施設に送られることもあるのですけれども、多くの患者さんは三次救急にまず入ります。しかし現実に三次救急の施設で緊急の手術を行えないことが非常に多くて、三次救急から私ども榊原記念病院に搬送されてまいります。その間に亡くなる患者さんが少なくないのです。ひょっとしたら救命できたかもしれない患者さんが、救急の搬送システムのために失われているかもしれません。
今の一次、二次、三次救急のシステムは、昔と交通システムも変わっておりますし、疾病構造も異なりますし、病院の配置あるいは診療の内容が大きく変わっておりますので、効率よく24時間、手術ができるような施設に直接搬送するシステムにしていただきたいと思います。先ほど来話題が出ておりますけれども、遠隔診療も普及が必要です。大動脈解離というのは、CTの写真を先に見ておきますと手術の準備もできますし、そういった面から、搬送のシステムと緊急の診療体制をぜひ改善していただきたいと考えております。
○永井会長 ありがとうございます。
はい。
○横田委員 横田です。
磯部委員の意見、全く賛成なのですけれども、一方で救急現場というのは非常に活動が限られている。特に、救急現場ではCTもありませんし、超音波診断もできません。救急隊は、そういう技術も知識もないわけですから、今お話ししたように、そのような患者さんを適切な医療機関に運ぶ手だてというのは、きちんと議論しなくてはいけないと思っています。
○永井会長 よろしいでしょうか。また、後ほど総合討論の時間がございますので、あわせて御議論いただければと思います。
それでは、続いて、資料4-6から4-8まで一括して御説明いただきたいと思います。参考人の皆様におかれましては、お手数ですけれども、座席の移動をお願いいたします。
それでは、4-6の説明を日本理学療法士協会からお願いいたします。
○森本参考人 日本理学療法士協会副会長の森本でございます。
それでは、資料4-6でございます。
1枚目は、日本理学療法士協会の要望のまとめでございますので、これは後でごらんいただいて、本日は、日本理学療法士協会の取り組み、現状や課題等について御報告させていただきます。
3ページ目をごらんいただきたいと思います。急性期リハビリテーションに関しては、皆さん御存じのことでございますが、1番目のように、発症後早期から積極的なリハビリテーションを行うことが強く勧められておりまして、これはグレードAになっておりますし、あるいは脳卒中ユニットとか脳卒中リハビリテーションユニットなどの組織化された場での、リハビリテーションチームによる集中的なリハビリテーションも、非常に効果があるということで、グレードAになっております。
エビデンスは、下に書かれております。
そういう中で、急性期病院においてリハビリテーションを充実させることがすごく重要な課題であろうかと思いますが、まず、下の土曜日・365日の実施割合で、国・公的機関におきましては、土曜日は大体6割、残り4割は実施されていない。365日、日曜日、祭日を全部含めると、13.9%しか実施されていないという現状がございます。
それと、その下の図の100床当たりの常勤理学療法士の数でございますが、国では2.2、公的病院では2.7、医療法人では7.7と、この格差が非常にあるという点が2点目。
3点目に、設置法人別の追加採用を妨げる理由を見てみますと、公的機関で追加採用を妨げる理由としまして、都道府県と市町村の医療機関においては、自治体の制度で定められている既定人数上限により増員ができないという、この原因が最も多い理由になっておりまして、こういったところで急性期リハビリテーションの人員要件を妨げていると、課題として考えております。
次に、5ページ目でございます。循環器病のリハビリテーションの課題についてでございますが、これは急性期病院と回復期病院が連携して心臓リハビリテーションを実施することで、歩行能力や日常生活動作能力が改善することが報告されています。
下の矢印の図でございますが、これは心臓手術後の高齢患者に対して、急性期病院と回復期病院間の協力によって、逐次心臓リハビリテーションプログラムの効果を調べたものでございまして、ADLとか歩行能力といった面で改善があるということがあらわれております。
ただ、回復期リハビリテーション病院において、隣の上の図になるのですが、心大血管リハビリテーション料の届け出を行っているのは5%にすぎないということで、この辺の連携の問題はあると考えております。
次に、6ページ目でございます。これは、循環器病のリハビリテーションの課題として、心不全患者に対して、QOLの改善及び再入院防止を目的とした、外来心臓リハビリテーションでの運動療法の実施というものは推奨されております。
一方で、本邦において、急性心不全で入院した患者のうち、入院・外来いずれも心臓リハを受けた患者はわずか7%であったという報告がございます。これが下の図になります。ここであらわれております。
また、欧米諸国と日本における外来心臓リハビリテーションプログラムの参加率というのは、隣の図にありますように、差があるということでございます。
そういったことを踏まえまして、本協会として、今後取り組むべき重点的施策について御提案させていただきます。
上の枠は、今までお話ししたことのまとめでございます。
提案としましては、下の枠でございます。脳卒中・循環器病においては、高度急性期及び急性期の医療機関において、発症早期から集中的なリハビリテーションを365日提供できる人員体制等を整備する必要があることから、政府の循環器病対策推進基本計画及び都道府県循環器病対策推進計画に採用計画等を定めることとしてはどうかというのが1点目でございます。
2点目には、循環器病においては、フレイル予防や再発予防を実施できる体制を整備する必要性を踏まえ、計画を策定することとしてはどうかということの2点を御提案させていただきます。
以上でございます。御清聴ありがとうございました。
○永井会長 ありがとうございました。
続きまして、資料4-7について日本作業療法士協会よりお願いします。
○中村参考人 貴重な機会をいただきまして、どうもありがとうございます。日本作業療法士協会の会長をやっております中村春基と申します。
1枚目がまとめでございまして、2枚目をお開きください。作業療法士の現状ですが、現在9万4255名が有資格者であります。そのうち協会員は65.7%の組織率でありまして、協会は生涯教育の中で認定制度と専門制度を行っておりまして、認定制度は、主に主任クラス、ゼネラリストの制度でありまして1033人。専門作業療法士という制度を持っておりまして、これが10領域ありますが、112名になっております。この中に、脳血管障害を来年から入れるということになっております。心臓リハビリテーション指導士におきましては、123名ということになっております。
作業療法の8割以上が病院施設で勤務しているわけですが、脳血管障害にかかわるものが1位、心臓障害は9位となっております。
施設基準は、右に書いてあるとおりでございます。
次のページをお願いします。「循環器病に係わる作業療法士の職務」ということですが、これは基本施策の中の、循環器病患者の生活の質の維持向上というところに作業療法士は主にかかわっております。その中で、活動と参加に関するということが主な職務になっております。そのようなことをここに書いてあります。
脳卒中では、運動機能障害。それから、ADL・IADL、就労を含む支援を行っております。前回の報酬改定で自動車運転というのが入りましたので、そういう支援もしているということであります。
心臓疾患に関しましては、ADL・IADLですが、心肺機能に配慮した指導を行っているということであります。
次のページをお願いいたします。脳卒中における作業療法の現状ですが、1、2、3とありますが、4つ目に、日本作業療法士協会では、MTDLP、ちょっと覚えにくい言葉でありますが、生活行為向上マネジメントというものを10年前より作成しておりまして、このツールを使いますと、ICFの活動と参加に資する作業療法が実施できるような仕組みとなっております。これを全国で研修をやっておりまして、その基礎研修を受けている者が41%になっているということであります。各都道府県士会でも、この事例報告を現在やっているところであります。
5ページですが、作業療法は病院におりまして機能訓練というイメージが強いと思いますが、協会が推奨している作業療法は、活動と社会参加を病院にいるうちから定着する。在宅に引き継いで、在宅でしっかり定着・支援していくという作業療法を展開しようとしております。これは、ほんの一例であります。
次、お願いします。脳卒中の作業療法の課題と対策でありますが、作業療法は、5年未満が現在30%以上でございまして、人材育成というものが非常に大きな課題となっております。
それから、先ほど言いましたように病院施設が中心ですので、在宅に帰ってからの生活・就労ということが大事なことになってくるのですが、そこの在宅を支援する拠点が圧倒的に不足しているというのがあります。
それから、研究の領域では、ICFの活動と参加に関するQOLに関する研究がまだまだ不足していると認識して、取り組んでいくべきと思っております。
7枚目をお願いします。心臓疾患における作業療法の現状ですが、かかわっている者が非常に少ない。これをどんどんふやしていかなければいけないと思っております。
8ページでございます。心肺への負荷を考慮したADL・IADL、これも病院のうちからモニターして、おうちに帰ってからしっかりできるように定着させることが課題だと思っております。心疾患における作業療法の課題は、人数が非常に少のうございますので、育成と啓発が大事だと思っております。
それから、本領域、活動・参加に対する研究がまだ非常に少のうございますので、今からこれに取り組んでいきたいと思っています。
参考資料の12ページ、これが最後ですが、作業療法の範囲はこういうふうに定められています。作業療法はどういうことをやるか。ここにあることが作業療法の使命でありますので、こういうところから循環器病に対するアプローチをしっかりやってまいりたいと思っております。
以上でございます。
○永井会長 ありがとうございます。
続きまして、資料4-8について日本言語聴覚士協会よりお願いいたします。
○深浦参考人 日本言語聴覚士協会の深浦でございます。
協会あるいは言語聴覚士の紹介は資料としてつくっておりませんが、1997年に新しい職種として国家資格となりました。1999年に第1回の国家試験があって、現在は3万人を超える言語聴覚士が誕生しております。その中の4分の3は、病院、医療機関のほうに勤務していて、8%から9%ぐらいが介護保険事業所ということになっております。そういう実態の中で、1ページ目の私ども言語聴覚士協会が取り組んでいる取り組みと課題について、2ページ以降でお話をしていきたいと思います。
2ページ目に、私ども言語聴覚士は、脳卒中後遺症である失語症・高次脳機能障害、麻痺による構音障害や音声障害、そして摂食・嚥下障害のある方への評価や訓練、助言等を行っております。医療機関での実施が多数で、退院後は介護保険事業所で提供されていますが、まだ十分なものではないというところでございます。
次の3枚目でありますが、予防についての取り組みはどんなことを行っているかということですが、今、介護予防事業において、失語症とか嚥下障害、難聴について住民や行政の担当者の方たちへの広報・啓発活動を行っております。同事業で嚥下体操等の指導を通して、嚥下機能低下予防の取り組みを一般住民の方たちに対しても行っているところでございます。ところが、残念ながら、これはまだ一部の地域にとどまっている状態でございますので、ぜひ全国的にも進めていきたいと思っております。
次に、急性期・回復期における取り組みでございます。急性期・回復期においては、言語聴覚療法と摂食機能療法を、病院を中心に提供しております。失語・高次脳機能障害の患者さんは、早期に退院する方が多く、集中的言語聴覚療法の提供ができていない場合も多くあります。これは、言語機能だけが落ちて、身体の麻痺等が余りない方も中にはおられますので、そういう方たちへの提供が少ないということ。これは、退院後の外来リハビリテーション提供施設が近年少なくなっていることからも、大きな問題であります。
次の5ページが、生活期における取り組みでございます。失語・高次脳機能障害は、長期にわたって回復しますが、長期にわたる言語聴覚療法の提供が、先ほど申し上げたように困難となっております。
介護保険における提供も、要支援ぐらいの方たちが多くて、介護度が低く認定される場合が多くて、言語聴覚療法の提供が介護保険事業所でも少ないというのが課題であります。
それから、障害者総合支援法の中の地域生活支援事業であります、意思疎通支援者の養成・派遣事業を平成29年度からスタートしましたが、まだ始まったばかりで、少数の自治体にとどまっています。
経過は、次のページにお示ししております。6ページになります。また、ここでも、身体障害者に認定されない失語症の方たちが多数おられる実情がございます。これが課題ということになっているところでございます。
最初の1ページ目にお戻りいただいて、あと短期的な取り組みとして要望することとしては、都道府県の対策協議会の構成メンバーとして、言語聴覚士を初め、リハビリテーション専門職が配置されることをぜひお願いしたい。
それから、中長期的な取り組みとしては、失語症があるとか、構音障害があるとか、そういう脳卒中後遺障害によって施策がいろいろ変わってまいります。失語症者向け意思疎通支援者の事業でも、その地域で何人ぐらいおられるかということが問題になっておりますので、こういうものがすぐ把握できるデータベースがあるとよろしいかなと思っておりますので、ぜひお願いしたいと思っております。
以上でございます。
○永井会長 ありがとうございました。
おかげさまで、予定よりも大分早く終了いたしましたので、これから御議論をお願いしたいと思います。
まずは、後半の部分、資料4-6から4-8までの発表を踏まえまして、御質問、御意見をいただければと思います。いかがでしょうか。
配置の問題がきょう出ていましたけれども、人材の育成は追いついているのでしょうか。
○森本参考人 日本理学療法士協会としまして、理学療法士自体は14万人から15万人ぐらいで、私どもの協会に12万人所属しておりまして、そのうち急性期医療はもともと長く勤務している人たちもおりまして、研修体制はかなり整ってきておりますので、あとは経営される方々の考え方といったものによって、実践をどれだけ積めるかということになろうかと思います。
○永井会長 では、先に。
○中村参考人 作業療法士は、先ほど言いました9万4000ぐらいですが、今でも病院施設で不足している状況だと認識しています。
○永井会長 美原委員。
○美原委員 森本参考人のお話があったのですが、急性期病院におけるリハビリテーション科のスタッフが充実することはとても重要だろうと思うのですが、参考人の発表ですと、公的機関に少ない、民間は十分いる。そのときに、公的を一生懸命保護するのだというお話ですが、今、地域医療構想の中では、公的病院は民間病院が担えないことをすることが求められています。どこでもお医者さんあるいはスタッフの人材の不足という課題があるわけです。民間病院ではリハビリスタッフが配置され、適切なリハビリが提供されているというデータがある中で、公的病院にリハビリスタッフを確保させる方向に進めることになると、また地域医療構想のことと同じような問題が出るのではないか。適切な医療提供をするためには、設立母体に関係なく、実績のあるところにしっかりと手当てすると考えていただければと思います。
以上です。
○永井会長 ありがとうございます。
磯部委員。
○磯部委員 心臓リハビリテーションですけれども、効果が非常に高いということについては、今、御説明があったとおりです。二、三年前に心不全学会の会員施設を中心に調査したことがありまして、調査した病院の80%は心臓リハビリテーションができる施設ですが、実際に心不全患者さんが入院されて、入院中にリハビリテーションを行っているのは30%程度です。さらに、それが外来に行きますと、今、御説明がありましたように7%。とりわけ外来あるいは在宅での心リハの普及率が非常に低いというのが大きな問題です。
今、心不全の患者さんの大半は超高齢者でありまして、ほとんどの患者さんがフレイルでリハビリテーションが非常に重要なのですけれども、それがうまく浸透していかない理由が幾つかあると思います。
施設が限られているということで、多くの病院では専門家がいない、指導士がいないということで、なかなか浸透していかないことが1つ。
それでは例えば一般の運動ジムみたいなところでやってもらったらいいのではないかという議論が必ず出るのですけれども、普通の運動ジムに紹介すると、心臓の患者さんは怖いから見られませんと必ず断られます。
あと、病診連携です。病院から適切な運動処方のレシピを持って診療所に連携していくというシステムが、必ずしも確立されていません。
もう一つは、保険診療上の期間の問題があって、一定期間後は自費になってしまうということで、やる気がある患者さんもドロップアウトしてしまう。
こういったことをシステム的に改善しないと、心臓リハビリテーションは普及しませんし、結局、心不全の患者さんがフレイルになって、介護・支援を受けるという原因は、こういった運動の不足にあると思いますので、そういったシステムは改善していただきたいなと思います。
以上です。
○永井会長 ありがとうございます。
峰松委員。
○峰松委員 峰松ですけれども、私、先ほど日本脳卒中協会のところで説明をはしょってしまったのですが、患者さん、家族にアンケート調査をやったときに何が問題かというと、必ず返ってくるのが、「維持期・生活期のリハビリテーションが非常に欠乏している」ということです。これは、医療費で賄う部分と介護保険で賄う部分という問題もあるのと、法律の枠組みが少し変わってくるといういろいろな問題があると思います。医療リハと介護リハとの間が空白地帯になっている。多分、急性期で過ごしている患者さんの数よりも、慢性期、生活期、維持期になっている患者さんのほうが圧倒的に多いので、わずかな声であっても、これはしっかり対応を検討しなければいけないです。
それから、今回の法律で、附則第3条、脳卒中の後遺症に関して、てんかん、失語症等の脳卒中の後遺症を有する者に関しては、検討を加えて対策を講ずるという文言があります。これは今までの議論ではカバーできなかったことだと思いますが、特に失語症の評価の仕方が、体には余り障害がないと軽く見られて、十分な対応ができていないのではないかという話もあったのです。生活期、維持期のリハビリに関しては、それぞれの職能団体あるいはリハビリテーション医学会の立場で何かコメントがあれば聞かせていただきたいと思います。
○安保委員 御指摘のように、介護保険下になると、リハビリテーションの量と質が落ちるのではないかという指摘はたくさんあります。なので、特に脳血管障害の患者さんや心不全の患者さんも、退院したはいいが、再度入院を余儀なくされる方もたくさんお見えですので、介護保険でできる訓練自体の量とか質を変えるようなことを考えなければいけないと思っています。
ただ、リハビリテーション医療といたしましては、障害が少なければリハビリテーションはより効果的です。なので、必要な治療をできるだけ早くして、t-PAを含めて、より障害が少なくなるシステムづくりというものが一番大事なのではないかと思います。十分な予防や適切な急性期治療をしていただいて、リハビリテーション医療につなげられるよいシステムができれば、非常にいいのかなと思っております。
○永井会長 ありがとうございました。
そのほか、いかがでしょうか。
はい。
○深浦参考人 今の御質問に対してですが、私が失語症の方たちを例にお話ししましたが、患者さんそれぞれが後遺障害の重症度、障害の種類も違いますので、それに合わせた形での提供体制をつくるということが1点、御指摘のとおり重要だろうと思います。
その上で、配置の問題ということで、我々は医療機関には多くなっているのですが、介護保険領域において、言語聴覚士が所属している事業所が少ないので、言語聴覚士は3万を超えたのですが、まだまだ数が足りないなというところが現状でございます。
もう一点は、地域でということで御指摘があったように、地域包括ケアシステムの構築に資する人材をリハビリテーション専門職の3協会で研修会等を行って、地域ケア会議等に参加できる人材育成をこの間、ずっと続けております。その点で、都道府県において、そういう循環器病、脳卒中の方たちへの支援の会議等に参加できれば、その辺の提案がいろいろできるのではないかと思っているところでございます。
○永井会長 ありがとうございます。
ほかによろしいでしょうか。
もしよろしければ、全体を通して、繰り返しの点もあるかと思いますが、皆様から御意見いただきたいと思います。今回は最初の会ですので、何か意見を集約するということではなく、幅広くいろいろな視点を共有するということで御発言、御意見をいただきたいと思います。
どうぞ。
○熊谷委員 日本看護協会の熊谷です。
私は、看護の立場で少し発言させていただきたいのですが、先ほど先生方からございましたように、特に循環器の病気については、予防ができるので、予防ということと。それから、慢性心不全等でだんだん落ちていく方々に、再発防止、重症化予防ということがとても大事だと思っています。
予防のところでは、先ほど先生の御発言の中にあったように、小さいときからの教育というのがとても重要で、特に食べること、食育のことというのは大変重要なことだと思っています。それについては、医療のチームだけではなくて、いろいろな職種が絡んで、みんなで国民に対して、予防をどう訴えていくかというポピュレーションアプローチというものが大変重要なことだと考えています。
日本の場合、特にたばこの問題がなかなか解決しない。いろいろな都道府県や市町村の中で条例という形でやっていますけれども、なかなか効果的にいっていない。飲食店の中でもまだやっているところもありますので、この喫煙対策については本当に国を挙げて取り組む必要があるだろうと考えています。
それから、再発防止、重症化予防の中では、高齢者の心不全の治療がうまく進まないという現実があります。お薬を飲んだり、あとはお食事をコントロールしたり、お水のこと等々やっていくことが、年をとるとなかなか難しいということがあって、広島県でモデル事業をやったときに、診療所のナースたちが伴奏者として一緒になって生活を見てあげたときに、非常に再発率が下がったというデータがありますので、診療所の中で、今、かかりつけ医ということが推進されていますが、その中で一緒に伴走してあげる、かかりつけ医の看護師等が生活も見ていくということでは、大変有意義なというか、再発防止、重症化予防ができるのではないかと考えておりました。
それから、循環器の中で、ちょっと先生に御質問があったのですが、私がちょっと不勉強だったのですが、心不全療養指導士というのを創設されて育成するということですが、これについて少し教えていただければと思いました。
以上です。
○永井会長 はい。
○小室委員 循環器学会を代表しております小室と言いますが、少し繰り返しになりますけれども、熊谷委員がおっしゃったように、循環器病、とりわけ終末像である心不全というのは、予防が大変重要かつ有効なのです。なぜかといいますと、循環器病の多くは生活習慣の乱れから生じますので、太り過ぎた、血圧が上がった、脂質異常になった、糖尿になった。これが全部最終的には循環器病か心不全になる。ですので、非常に早期から予防ができる。
また、もし高血圧や高脂血症になっても、それですぐ心不全になるわけではもちろんなくて、そこにもう一段階、心筋梗塞とか弁膜症というのが入ります。心筋梗塞になっても、全部が心不全になるわけではないので、そこでも予防できる。全てにおいて生活習慣の改善というのがベースにあって、それぞれの疾患の治療をすることによって、循環器病の中で最も大きな疾患になっている心不全という病気を発症することが防げる。
また、1回、心不全を発症しても、9割以上の方は退院して、多くの方は歩いて退院していけるのです。しかし、問題はそういう方が1年以内に3割近くの人が再入院してしまう。その再入院を防ぐのも予防であって、それはしっかり薬を飲むとか、過労や暴飲暴食に気をつけるといったものが必要です。
そこで、主役は国民一人一人、患者一人一人と言いましたが、それを助ける主役は看護師さんではないかと私は思っています。もちろん、薬剤師さん、保健師さん、作業療法士さん、理学療法士さん、いろいろな方がかかわらないと、1人の心不全患者を万全に診ることはできないですけれども、寄り添って、時には家を訪問して、伴走してくださる主役は看護師さんじゃないかなと考えています。
そこで、心不全療養指導士制度をつくることにしました。循環器学会は、今、2万7000人近くの会員がいるのですけれども、95%は医師で、6~7割ぐらいが専門医です。しかし、その専門医だけでは心不全患者を診ることはできないということから、多職種の人の教育をする。それぞれの職種の人が専門の経験、技術、また技能を使って心不全の患者を診ない限りは、入退院、さらには最終的な死亡ということを防げないということを考えてつくることにしました。
療養指導士制度は、糖尿病とか腎臓で既に始まっているのですけれども、私は、心不全こそ本当に多職種の人が専門性を生かして見るという面では、非常に有用かつ重要な制度じゃないかなと思います。来年の認定を目指して、今、準備を進めているところであります。
○永井会長 それは、看護師さん以外も教育を受けられるということですね。
○小室委員 はい。もちろん、看護師さん、保健師さん、作業療法士さん、栄養管理士さん、全ての方に入っていただいて、一緒に勉強していただいて、心不全とは何かという共通のことを学ぶと同時に、それぞれの職種の人がそれぞれで何ができるかということを学んでいただいて、1人の患者さんの情報を共有しながら、それぞれ持っている技術・知識を生かして見ていくという制度です。
○永井会長 美原委員、どうぞ。
○美原委員 全日病の美原です。
リハビリテーションというか、医療提供と診療報酬というのは切っても切れないところがあって、脳卒中の患者さんが病院から在宅に移ったときに、先ほどお話があったように、医療保険から介護保険に代わっていく。その混乱期に、病院ではたくさんのサポートがあったのが、在宅に移った途端にすとんと減ってしまう。それは、診療報酬上の制度だろうと思います。シームレスに行うためには、その辺のことを考えていかなくてはいけないと思いました。
それから、もう一つ、混乱期から、もう少し安定したというか、慢性期というか、生活期のときのリハビリテーションのあり方です。確かに安保委員がおっしゃったか、悪くなって、よくならない人はいるわけですが、その人にずっと漫然とリハビリテーションが提供されていることは、問題かと思います。つまり、効果が十分に望めないにもかかわらず、ずっと行われているというあり方が許されていいのかということも1つあります。
もう一方、心不全の問題ですが、慢性心不全もリハビリテーションは非常に重要だろうと思いますが、慢性心不全のリハビリテーションの目的というのは、再入院を予防するということです。それに対して、診療報酬上、十分な手当てがなされないから、なかなか提供できないという現実もあるように思われます。ですから、必要なリハビリテーションに対して、きちんと診療報酬なり何なりをつけないとなかなか広がらないのではないかと思います。
以上です。
○永井会長 ありがとうございます。
どうぞ。
○熊谷委員 今、先生方から御説明いただいて、大変よくわかりました。実は、日本看護協会は、心不全看護認定看護師を育成しております。ただ、数が十分ではないので、特に今、美原先生から御発言あったように、病院から出た後、在宅での支援がすごく重要なのですが、診療所等にそういったナースが配置できればいいのですが、そこまで育成ができていませんので、地域の中で心不全と向き合える看護師が育成されて、配置できるような仕組みが何か必要だなと考えています。
○永井会長 峰松委員。
○峰松委員 学校教育について、ちょっと追加のお話をさせていただきます。
協会と学会がまとめた資料4-1の3段目に、中長期的に取り組むべきところということで、学校教育を通じた啓発や循環器病予防を目的とした研修の導入ということで、学校教育のことを書かせていただいています。これは、今回の法律には、実は学校教育というのは直接の条文には入っていないのですが、がん対策基本法に関しては、改正された段階で学校教育というのを入れて、それに対応して学習指導要領が改定されて、たしか今年ぐらいから、学校教育の中に「がん」という文言が明示されて具体的カリキュラムが始まっています。私、それを知ってびっくりしました。脳卒中・循環器病というのはがん以上に予防効果があるので、学校教育の中に脳卒中・循環器病教育は入れるべきだろうと思います。
ただ、法律の最初の見本が、がん対策基本法の一番最初の学校教育の文言が入っていなかった時代のものを参考にしたために、抜け落ちてしまったということと、学習指導要領は10年に一度しか改定されないので、これは今から取り組んでも5年、10年先になるという、ちょっと長期的な問題があります。
ただ、食育に関しては既に法律があって、それに対していろいろされています。それから、この法律とほぼ同時期に成立した成育基本法では、まさに生徒さんたちが対象なので、学校教育の中で健康を教えるというのは入っているという話を聞いています。ただ、予防対策を国民に対して本当に徹底しようと思ったら、学校教育は必要でしょう。文部科学省はそう簡単に対応できないということなので、厚生労働省のほうからでも声をかけていただければと思っているのですが。
あと、日本医師会も、これに関しては積極的取り組みというか、日本医師会は校医を管轄しているので、これから予防を徹底するために学校教育を利用しようという話が出ていると、医師会の知人からも聞いたことがあります。
羽鳥先生、何かその辺の話はありますか。
○羽鳥委員 日本医師会も、予防に関してはこれから力を入れていく。もちろん、今までも力を入れてきたつもりですけれども、いわゆる治療から予防へというのは、十分意識していることが1つ。
それから、峰松先生から御指摘のように、がん対策基本法以外にも、例えば糖尿病対策、腎臓病対策、事業になったときに、国、都道府県が一体となって、幾つかいろいろな施策が一気に出てきたと思います。今回、循環器病対策基本法ができたわけですから、この機会にいろいろなところで書き込んでいっていただきたいと思います。
学校教育に関して、僕も国のがん対策のほうで見させていただいていますけれども、学校の教育の中でがん教育が入ってきているので、まさに心臓、循環器、脳卒中の教育も入っていくべきだろうと思います。
もう一つよろしいでしょうか。日本医師会は、ある意味で、患者のかかりつけ医として総括的にいろいろ診ていこうということでありますが、いわゆる心不全あるいは脳卒中でもそうですけれども、疾病を繰り返すことによってだんだん悪くなる。その疾病、例えば高血圧、糖尿病、高脂血症とか肥満ということの予防の段階でかかわれるのがかかりつけ医だろうと思いますので、そこをケアしていかなければいけないと思いますけれども、循環器、脳卒中などの病気に関しては、それを専門とする開業医以外のたとえば消化器などの先生がなかなか手を出しにくくなっているのが実情じゃないかなと思います。
例えば、高血圧は、10年前と比べたら、90%、いろいろな科の先生が降圧剤を出されると思いますけれども、それと同じように、循環器の病気も、最終的な対応は専門の先生が必要なのですけれども、ステージA、ステージBの予防の部分では、医療界全体で対応していくことが必要ではないかと思います。
○永井会長 山本委員、どうぞ。
○山本委員 ちょっと別の話をさせていただきたいと思います。
1つは、今までも出てきていますけれども、1次予防とか0次予防のマスアプローチのことをどう考えるかということと。もう一つは、発症した後のプレホスピタルのところです。
1つは、マスアプローチですけれども、正直、医者とか医療関係者が絡む前のところが一番大きなところであって、そこをどうするかというのが一番重要だと思うのですが、実際、自分が健康だと思っている方を病気だと認識させるのは非常に難しいことだと思います。高血圧の法則で、高血圧の人の半分しか診断されていない、診断されている人のうちの半分しか薬を飲んでいない、薬を飲んでいる人のうちの半分しか適切な降圧がされていないという2分の1の原則というのがあったと思いますけれども、そのぐらい適切な治療を受ける人は少ない。
一方で、普通、人間というのは、自分が病気だというのは嫌なのです。でも、自分がよりこういうふうになれるということには積極的になれるので、例えば高血圧を治療すると若さをずっと維持できますよとか、あるいは、もしかしたらゴルフをやっている男性であれば飛距離が延びますと言われると急に頑張ってしまうとか。病気にならないようにやりましょうというのは、マスアプローチとしては余り効果がないのではないかと、私は常々思っていまして、二次的な、今、目の前で利得が現実の世界であるということをもっと出していけるような、それは研究して何か出していけばいいのかもしれないですけれどもね。
医療関係者だけで集まると、病気にならないためにはこうしましょうというアプローチしかできないので、そこはコミュニケーションのプロとか、別のプロの方に入っていただく必要があるのではないかというのが、マスアプローチについての私の感想です。
もう一つは、プレホスピタルのところですけれども、コモンディジーズで患者さんが多いということは、循環器病というのは疾患領域の中で一番データサイエンスになじむ領域だと思うのですね。例えば、プレホスピタルのところで、先ほど救急隊のお話もありましたけれども、救急士が行って状況を聞いて、これが循環器病かどうかということを判断する、あるいは電話を受けたセンターでどういう病気かというのを整理するというところで、例えばAIを使ったアプローチというのが割ときくところではないかと思うのですけれども、今のところ、そういう研究は余り進んでいないような気がします。
今までの医学研究が、特にここ10年ぐらいは医薬品をつくって稼ごうという方向にすごく流れてしまっていて、別のアプローチというか、別の目的を持った研究というのが余り進んでいませんし、特に病院に来る前の段階での状況の研究というのが余りできていないですし、そういう研究基盤が整備されていないという問題があるので、特に救急士にこれ以上いろいろなことを勉強していただく、あるいはセンターに立つ人にキーワードをいっぱい教え込んでということも限界があると思うのです。
なので、羽鳥先生がおっしゃっていたようなICTの活用というのを、人間だけでなくてできるところをもうちょっとふやしていって、それこそThink FAST。Think FASTは、人間よりもコンピュータにやらせるほうが簡単でありますので、そういうところでICTを使っていくということも幅広く考えていく必要があるのではないかなと思いました。
○永井会長 今の点、川勝さん、いかがですか。
○川勝委員 川勝と申します。脳梗塞患者であります。現在、日本脳卒中協会の理事と保険会社の社員として、各地でいろいろなセミナーをやっております。
診療体制の検討会に出たときも感じているのですが、脳卒中の急性期医療は、搬送、治療、リハビリ、退院、よかった。そして社会復帰。社会生活そのものがリハビリと思っています。でも、肝心なところが抜けています。発症時の対応が一番大事です。今、山本先生がおっしゃられたとおり。はっきり言いますけれども、一般市民は病院に行きたくないのです。嫌いなのです。お金がかかるし、時間もかかる。病気と言われたくない。言われたらえらいこっちゃです。行きたくないわけです。
もう一つ、救急車も呼びたくないのです。救急車、呼ぶことは、近所迷惑だからやめよう。そういう意識を一般市民は普通に持っているわけです。だから、大好き、行きたい、病院という意識を持っては、まずだめです。だから、発症時、行きたくない病院に行ってもらうにはどうするかが一番大事。
ただ、それが一番大事だよということを、なぜみんなしないのかというと、知識がないからです。知識がないから、意識しない、認識が進まない。知識というのは、啓発であり、教育です。先ほど、学校の教育の話も出ました。僕も、基本、学校教育に入れるべきだと思うのですけれども、今、成人している人をどう教育するかというところですね。
実は、きのう、九州の佐賀県でセミナーをやってきました。私、セミナーをやるときに最初に必ず聞くのです。あなたがなりたくない病気、何ですか。ほとんどの方は、がんと言うのです。きのう、5人に聞いて、5人ともがんでした。普通は、3人目ぐらいに気を使って脳卒中と言うのです。だって、「脳卒中セミナー」と書いているわけです。でも、がんと皆さんおっしゃる。そこで、別の会場で最初に言われた方に聞きました。何でがんなのですか。するとテレビとか新聞でよく見るから。ドラマでもそうです。多くの場合外科医が出てきてがん手術。ポイントはマスコミなのです。きょうは、フジテレビの方もいらっしゃいますね。
成人教育はマスコミの協力が絶対大事だと思っています。これは、マスコミの方への、脳卒中、循環器病教育もまず必要である。啓発して意識を高めていただいて、志のあるマスコミの方にもぜひ協力していただく計画にすれば、かなり知識がふえて意識が変わると思います。
以上です。
○永井会長 メディアからいかがですか。
○木幡委員 まさにおっしゃるとおりだと思います。私たちも知らないのです。ふだんいろいろなニュースを追いかけていますし、いろいろなことが起きていますので、専門のセクションがあったりするところが少ないですし、新聞は科学部とかもあるかもしれませんけれども、テレビ局だとなかなかなかったり、専門の記者がいなかったりというのが多々ありますので、そこを何とかしていかないといけないと思いますし、一緒になって、これを運動として全体を巻き込んで、そこにぜひメディアも入れていただきながら。だって、結局は、みんな長く元気に生きようよということですね。ということは、それには反対する人はほぼいないと思いますので、その意味ではメディアも巻き込む。
発信の仕方というのは、いろいろあると思います。ドラマだったり、いろいろな形で発信できると思うので、戦略的にそういったこともメディアを巻き込んでやっていったらいいのかなと思います。
私も、きょう初めて参加して、そもそも循環器病って何の病気のことだろうという。私、循環器病になっちゃったと言う人は多分いないですね。だから、そのワード自体も、循環器って何なのというところもわからなかったりするので、ぜひわかりやすい言葉で、メディア、それから国民にメッセージを効果的にというか、戦略的に伝えていくことが大事だなと思いました。
○永井会長 安藤委員、何か御発言ありますか。
○安藤委員 心臓病で参加しています安藤です。
循環器病の知識のない国民代表と言っても過言ではないと思います。私は1カ月くらいせきとか熱が続いても普通にかぜと思い、足が腫れて初めて何か自分に起きていると気づいて病院に行きましたが、その時点ではもう遅い状態なのです。1カ月もかぜ症状が続くことがおかしいということに知識が全くないので気づきませんでした。階段を上るのがしんどいのは最近残業が多いから疲れているのか、運動不足だからなのか、と普通の日常生活とイコールにしてしまったことで結局は何年も入院することになってしまいました。がんのように、もっと多くの人に心臓病とか脳卒中の知識を得る機会があればいいなと思います。メディアとかで取り上げられたりすると、目にする機会が増えるので、そういうのは大きいのかなと思います。
○永井会長 ありがとうございます。
早坂委員、どうぞ。
○早坂委員 日本医療社会福祉協会という医療ソーシャルワーカーの団体から来させていただきました。
予防が本当に大事な疾患だと思いました。予防しても病気にはなってしまって、病気を抱えた後も生きていかなければいけない。脳卒中になり麻痺が出たというと、今までのように社会の中で活動することに抵抗がある、引きこもってしまう、鬱とか、さまざまなことが出てきます。さっきおっしゃったようにリハビリのサポートが切れてしまうというか、回復期リハビリでの入院が終わった後、回復期リハビリの外来をやっていない病院はたくさんありますので、そうすると、サポートが受けられません。もとの大きい病院に行くのか、開業医の先生のところに行くのかということになります。
でも、脳卒中なら脳卒中のことの相談がしたいということで、生活期、維持期に、脳卒中協会の方も出していただいているような専門的な相談ができる場所の確保というのは、1つ重要な要素として入れていただきたいと思います。
○永井会長 ありがとうございます。
そのほか、いかがでしょうか。
磯部委員。
○磯部委員 山本委員がマスアプローチとおっしゃいましたけれども、予防に関連したことです。私どもの病院には例えば50歳の家庭の主婦が心筋梗塞で緊急入院されてこられて、よく調べてみるとひどい糖尿病を持っているとか、あるいは50~60代の自営業者の男性が狭心症で来て、コレステロールが300あった。そういう事例は珍しくなくて、要するに未病ではなくて、病気を発症しているけれども、早期発見ができていない、というケースを多く経験します。
健診が大事だと思うのですけれども、今、法律で施行されている特定健診は受診率が51%です。主婦とか自営業者は、そこからすっぽり抜け落ちているポピュレーションです。組合などの健康保険に入ってオーガナイズされている方たちは、健診を100%受けると思いますけれども、それ以外の国民の受診率は低いのが現実です。健診をもう少し充実することで、未病あるいは早期発見は可能だと思います。また今の特定健診の内容を見ると、腹囲をはかったり、血圧をはかったり、非常に重要なことをやっているのですけれども、例えば心電図は義務化されていません。高血圧がある方と、それから医師が必要と認めた方以外は、心電図は義務になっていないです。心房細動を発症しても症状がない方がいらっしゃいますが、健診での義務化で早期発見により脳梗塞の予防ができるかもしれません。
それから、心不全の話題が出ていますけれども、今、BNPを血液ではかると症状が出る前のステージA、Bの早期発見ができることもあります。心電図やBNPを一定の年齢のときに必ずとるというシステムにすれば非常に有効であると思います。今、がんの検診は役所からも非常にたくさんの通知が来ます。非常に充実してきていると思いますけれども、もう少し循環器病に特化した、あるいは主眼を置いた健診のシステムを充実していけないかと思います。健診で救える患者がたくさんいるのではないかと思います。
○永井会長 ありがとうございます。
はい。
○横山委員 私も磯部委員と非常に意見が近いのですけれども、現在の特定健診ですと、特定保健指導というのは肥満を前提として、リスク因子をあわせ持った方が対象になっているということで、太っていなくても、痩せの高血圧等が特定保健指導には入らないという問題があるのかなと考えています。各保険者さんで独自に高血圧の重症化予防等も進めていただくことは大事なことだと思いますが、現状では、重症化予防としては、糖尿病のほうをやらなければならないというところがございます。糖尿病に力を入れる余り、高血圧の重症化予防まで余力がないという保険者さんの話もよく聞いております。
ですから、現状の特定健診の中に組み込むのであれば、メタボ、肥満を前提としたものだけではなくて、個々のリスク因子の管理を目指したものをもっと明確にしていく必要があるのではないかと思います。
○永井会長 これは、今まで特定健診のあり方で随分議論しました。腹囲第1基準も見直しが必要と思いますが、議論が続いています。糖尿病治療の目的は、最近は心血管病予防だと変わってきていますね。そうすると、循環器を念頭に置いた健診というのはあってしかるべきだと思います。この機会に議論をもっと深めたらよいと思います。
小川委員、どうぞ。
○小川委員 皆さんの御意見、非常によくわかります。一言追加といいますか、私のところは心臓も脳も一緒にやっているわけですけれども、そうしますと、心臓病の患者が脳卒中を起こす、脳梗塞の患者が心筋梗塞を起こすというケースが少なからずあります。ですから、この法律は非常にいい法律だなと。脳卒中がずっと先に走っていまして、循環器が後からついていたわけですけれども、この法律が一緒にできことを機会にして、羽鳥先生がおっしゃったように、非常に狭い専門にとらわれずに、ある程度広く見ていくような姿勢それは、救急隊も含めて、医療体制にも関係してくると思います。一つの疾患だけではなくて、広く診ていくような体制が、これを機会にできていけばいいなと思っています。
○永井会長 ありがとうございます。
はい。
○羽鳥委員 特定健診、特定保健指導の仕組みは、それ以前にあった老人保健に基づく老人健診に比べて健診の項目数が後退した印象がありました。循環器の健診の大事な心電図については、選択項目ではありますが医師が必要と認めて心電図を行ってよいとされています。
又、判定基準が9つ指定されていますが、不整脈というくくりが一つしかないため、心房細動を書き込む欄がないのです。例えば、脳卒中のこともそうですし、心房細動の判定、ちょっと不得意な先生もいらっしゃるので、もしそういう基準があれば、そういう勉強会もできて、もっと効率のいい特定健診、循環器健診ができるのではないかと思うので、その辺もここから見直しの提言をしていただければと思います。
もう一つ、横田先生がおっしゃったThink FASTの話です。我々開業の先生も、その辺の理解が十分できていないところもあるかもしれないし、それから、今は多くの先生は、かかりつけ医だからといって、麻痺がある、あるいは胸が激しく痛いときに、自分のところへまず来てから行きなさいということは、まずあり得ないと思うのですけれども、その辺の教育が一般の我々にもできるような仕組みをきちんとつくる。それは、患者さんへの教育の話が多かったですけれども、医師への教育というのも、ぜひこの中で念頭に置いていただけたらと思います。
よろしくお願いします。
○永井会長 最後に、小室委員。
○小室委員 永井委員と羽鳥委員に関係することですけれども、私の資料4-2の2に書いておいたのですけれども、健康診断で危険因子のスクリーニングが実施されているのですけれども、循環器病等の予防を目指した方向づけがされていないと思います。ですから、循環器として最終的な疾患は循環器病だ、脳卒中だということで、予防指導マニュアルをつくって、かかりつけ医の先生にも勉強していただけたらと思います。
あと、最後に、これも4-2の2に書いているのですけれども、山本委員が余りむちを振るのはよくなくて、あめがいいのだとおっしゃいました。1つむちも必要なのは、川勝委員、おっしゃいましたけれども、心不全の予後は胃がんと同じです。あなた、胃がんですよと言われたら、みんなすごくびっくりすると思いますが、心不全ですと言うと、誰もわからないから、けろっとしている。我々も患者さんを余り悲しませたくないので言わないですけれども、逆によくなくて、心不全ですから予防しましょう。これからまだできますと言わなければいけない。時々はむちを振るう。
あめに関しては、最後にナッジ政策と書いてありますけれども、物の言い方ですね。高血圧になると心不全になりますよと言うのではなくて、高血圧を予防すれば100までぴんぴん、元気に生きますよという言い方をナッジ政策としてやる。さらには、もう一つのナッジとして減塩対策をやる。イギリスで成功しています。日本はパンだけ食べているわけじゃないので、イギリスより難しいと思いますけれども、わからないように減塩して高血圧を防ぐこともできるかなと思います。
以上です。
○永井会長 ありがとうございました。
大体時間になりました。いろいろな御意見ありがとうございます。また、引き続き議論してまいりますので、これからさまざまな御意見をお寄せいただければと思います。
最後に、事務局から連絡事項等をお願いいたします。
○安井課長補佐 委員、参考人の皆様方、ありがとうございました。
次回の協議会の日程と場所ですが、決定次第、御案内申し上げます。お忙しい中、恐縮ですが、よろしくお願いいたします。
事務局からは以上です。
○永井会長 それでは、本日はこれで終了いたします。
どうもありがとうございました。