照会先
労働基準局 労災補償部
補償課長:若生 正之職業病認定対策室長:天野 敬
職業病認定対策室長補佐:鈴木 秀博
(代表電話) 03 (5253) 1111
(内線5569、5573)
(直通電話) 03 (3502) 6750
胃がん・食道がん・結腸がんと放射線被ばくに関する医学的知見の公表
~労災請求を受け、疫学調査報告を分析・検討して報告書を取りまとめ~
厚生労働省の「電離放射線障害の業務上外に関する検討会」(座長:独立行政法人放射線医学総合研究所 米倉義晴理事長)はこのたび、胃がん・食道がん・結腸がんと放射線被ばくとの関連について、現時点の医学的知見を報告書として取りまとめましたので、公表します。
これは、放射線業務従事者に発症した胃がん・食道がん・結腸がんについて、平成21年12月と平成23年2月に計2件の労災請求があったことを受け、業務が原因かどうかを判断するために、疫学調査報告を分析・検討し、まとめたものです。報告書の概要と、当面の労災補償の考え方は以下のとおりです。
なお、この報告書は、現時点での医学的知見をまとめたもので、新たな労災請求事案については、それぞれ最新の医学的知見に基づいて判断します。厚生労働省では今後とも医学的知見の収集に努めていきます。
検討会報告書の概要
1 被ばく線量と胃がん・食道がん・結腸がんの発症リスクとの関係
(1)胃がん・食道がん・結腸がんに関する個別の文献では、各々のがんの発症リスクは、1Sv以上の被ば く線量から確認されたと報告するものがある。
(2)より統計的に検出力の高い全固形がんに関する調査報告では、原子放射線の影響に関する国連科学委
員会(UNSCEAR)は、被ばく線量が100から200mSv以上において統計的に有意なリスクの上昇が認 められるとしている。また、国際放射線防護委員会(ICRP)は、がんリスクの増加について、疫学的研 究方法では100mSv未満でのリスクを明らかにすることは困難であるとしている。 2 潜伏期間(放射線被ばくからがん発症までの期間) ・胃がん、食道がん、結腸がんの個別の文献での最小潜伏期間は、 (1)胃がん:10年、 (2)食道がん:5年、 (3)結腸がん:5年 とされている。 ・ICRPの勧告では、最小潜伏期間は5から10年程度。
3 放射線被ばく以外のリスクファクター 一般的に、がんの主な発症原因は生活習慣や慢性感染であり、年齢とともにリスクが高まるとされている が、各々のがんに関する代表的なリスクファクターは次のとおり。 (1)胃がん:ピロリ菌、喫煙 (2)食道がん:喫煙、飲酒 (3)結腸がん:飲酒、肥満 |
当面の労災補償の考え方
1 放射線業務従事者に発症した胃がん・食道がん・結腸がんの労災補償に当たっては、当面、検討会報告書 に基づき、以下の3項目を総合的に判断する。 (1)被ばく線量 胃がん・食道がん・結腸がんは、被ばく線量が100mSv以上から放射線被ばくとがん発 症との関連がうかがわれ、被ばく線量の増加とともに、がん発症との関連が強まること。 (2)潜伏期間 放射線被ばくからがん発症までの期間が、少なくとも5年以上であること (3)リスクファクター 放射線被ばく以外の要因についても考慮する必要があること。 2 判断に当たっては、上記検討会で 個別事案ごとに検討する。 |