平成18年7月28日 厚生労働省医薬食品局食品安全部 伏見 基準審査課長
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清涼飲料水中のベンゼンについて
1,経緯
本年春以降、英国等諸外国*で、清涼飲料水中の安息香酸(保存料)とアスコルビン酸(酸味料、酸化防止剤)が、ある条件下で反応しベンゼンが生成すること、市販製品中にベンゼンが低濃度検出されること等が公表され、英国等ではベンゼン10ppbを超える製品の自主回収が要請された。
(*公表日:3/31英国、5/19米国、6/12豪 等)
2,我が国での市販製品についての分析
我が国においても、市場に流通する清涼飲料水の市販品で、安息香酸とアスコルビン酸の両者が添加されているもの31製品について、ベンゼンの含有量について分析検査を、5月以降国立医薬品食品衛生研究所において実施した。
その結果は下表に示すとおりである。
製品数(件) | 内訳(件) | 検出値(ppb) | |
直接飲用 | 20 | 19 1 |
<1〜7.8 73.6 |
希釈用 | 11 | 11 | <1〜2.4 |
計 | 31 | <1〜73.6 |
3,厚生労働省の対応
(1) | 我が国では食品中のベンゼンに関する法定の基準値はないが、「WHO飲料水ガイドライン(第3版)」のベンゼンに関するガイドライン値、及び水道法での水道水のベンゼンに関する基準値である10ppbを超えてベンゼンが検出されたものが下記のとおり1品目あった。 当該製品については、厚生労働省として販売業者に対し分析結果を通知し、回収を行うよう要請を行ったところである。
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(2 | ) また、厚生労働省は、都道府県等及び業界団体を通じて、全国の清涼飲料水製造業者等に対し、必要に応じ自社製品の実態を把握するなど所要の措置を講じるよう要請を行った。(PDF:110KB) |
(3 | )さらに、本件に関して厚生労働省ホームページにQ&A(PDF:174KB)を掲載し、国民への適切な情報提供を開始した。 |
(4 | )以上のような状況について、正確な報道をしていただきますとともに、国民への情報提供についてご協力いただくようお願いしたい。 |
【用語説明】
ベンゼン:
ベンゼンは、染料、合成ゴム、合成洗剤等の製造時に使用される化学物質で、常温では無色の液体です。また、環境中に広く存在しており、自動車の排気、石炭や石油の燃焼で空気中に排泄されており、呼吸によって摂取されています。また、喫煙による摂取についても指摘されています。 ベンゼンの健康影響に関しては、本物質は、IARC(国際がん研究所)が、「ヒトに対して発がん性がある」(グループ1)として分類しています。 |
安息香酸:
1608年に発見され、静菌作用があることから、古くから保存料として用いられているものです。我が国では1948年に食品添加物として「安息香酸」及び「安息香酸ナトリウム」が指定されています。それぞれに使用できる食品と使用できる量(使用限度)が定められており、清涼飲料水に対する使用限度は、いずれも安息香酸として、0.60g/kgまでとされています。 |
アスコルビン酸:
アスコルビン酸(ビタミンC)は、果実などに含まれる必須栄養素の一つで、栄養強化や酸化防止を目的とした食品添加物としても使用されています。我が国では1957年に「L-アスコルビン酸」として指定されています。 |
ppb:10億分の1の分率のこと。たとえば、今回の調査において1ppbは1μg/l。