06/02/17 第14回振動障害の検査指針検討会議事録


振動障害の検査指針検討会（第１４回）議事録

１　開催日時及び場所
　開催日時：平成１８年２月１７日（金）　午後２時から午後４時まで
　開催場所：経済産業省別館８階８２７会議室

２　出席者
　医学専門家：木村彰男、重松宏、髙山真一郎、樋端規邦
　　　　　　　原田規章、本間浩樹、宮下和久、梁井俊郎
　オブザーバー：宮井信行
　厚生労働省：明治俊平、只野祐、天野敬、藤本龍太郎、伊作城青他

３　議事内容

○職業病認定対策室長補佐（天野）
　定刻になりましたので「第１４回振動障害の検査指針検討会」を開催いたします。本
日、ご参集いただきました委員の皆様におかれましては、大変お忙しい中をありがとう
ございます。本検討会は原則として公開としております。傍聴される方におかれまして
は、別途配付している留意事項をよくお読みの上、会議の間はこれらの事項を守って傍
聴していただくようお願いします。それでは宮下座長、よろしくお願いします。
○宮下座長　
　それでは始めたいと思います。まず事務局から、本日配付している資料の確認と説明
をお願いします。
○中央職業病認定調査官（藤本）
　本日の資料として「振動障害の検査指針検討会報告書（案）」、この報告書に付く表
や図については、別冊で資料としてご用意させていただきました。本日は、これらの資
料に基づいて、評価基準、今後の検査のあり方についてご検討をお願いしたいと思いま
す。
　その報告書（案）については、前回１月５日の検討会以降、各先生方から、新たにご
提出いただいたもの、それからご意見等をいただいた部分等がありましたので、それら
を含めて事務局で整理させていただいたものです。
　表現ぶりや要望等について、若干調整しております。
　引用文献の関係については、現在整理中ですので、また各先生方と連絡をとらせてい
ただきながら整理したいと思います。
○宮下座長
　お手元の資料、報告書（案）、別添の図表類の２点です。よろしいですか。それでは
議題に入ります。ご挨拶にもありましたように、引き続き報告書（案）についてご検討
をいただくわけですが、時間的なことをまず申し上げます。前回の打ち合わせで、第14
回は２時間の討議時間ということでしたのでよろしくお願いします。
　まず、最初にご検討をいただく部分は、報告書（案）の62頁の相関に関する部分です。
それから別添で、「末梢循環機能に係わる各検査手技での個人判定結果の一覧表」とい
うＡ４縦の「振動障害群」「対照群」、横に「温冷覚冷水浸漬基本検査」から数枚あり
ますが、これを一緒にご覧いただくことになると思います。
○宮井先生　
　それでは「相関分析」の概略をご説明いたします。表１は、末梢循環機能検査に係る
４検査について、それぞれの検査で末梢環循機能の異常の程度、所見レベルについて、
ここでは（症度）と表現しますが、それらについて判定された結果を一覧表として示し
ています。
　振動障害群と対照群、振動障害群の各ＩＤに振ってある＊は、ＶＷＦ、レイノー現象
の有症者、ＲＬというのは右左で、それぞれ症状のある側を指しています。
　検査結果から判断された症度については、各検査において症度の判定の分類の方法が
異なりますので、単純に比較することはできませんが、概ね各検査、各個人内において
同様の判定結果が得られているような傾向があります。
　レーザー血流画像化装置についてもそうですが、ＦＳＢＰ％についてもそうですが、
レーザー血流画像装置は、症状が強い片方の手のみを検査しています。ＦＳＢＰ％につ
いても、症例によって検査指が異なることもありますし、対照群については、ＦＳＢＰ
％は基本的には片方の腕、特に右側で検査されておりますので、そういったこともあり
ます。
　次の頁は、各検査手技で判定をされた症度について、症度０と判定されたものを「異
常なし」と仮にしました。症度１以上ある場合は「異常あり」と定義して、「異常あり」
「異常なし」の判定結果の一致度が各検査でどの程度の関連があったかということです。
例えば冷水浸漬皮膚温検査ＦＳＴのＳＰＰとの列で、８／17と書いてあるのは、比較対
応できる17個のデータのうち、判定結果すなわち「異常なし」とされるか「異常あり」
とされるかの判定結果が一致していたものが８つということです。括弧で括っているの
は、全体に対して一致した数が何パーセントであったかを示したものです。
　それぞれ振動障害分については、レイノー現象のある人たち、そしてレイノー現象が
ない人たち、対照群、さらに全体を合わせたもので比較検討しています。なお、ここで
は同一の個人について左右、両方の手で検査がなされている場合は、それぞれを独立し
た２つのデータにして処理していますので、各検査官で総数の値が違って一定というの
があります。
　少し読みを見ていただき、「全体」の最下段を見ますと、皮膚温検査については、中
でも皮膚灌流圧の検査との一致率は48.6％と低いのですが、レーザー血流画像化装置の
皮膚血流検査は81.1％の判定結果の一致率ということで、比較的両者の検査の効果が高
いという結果が得られています。
　ＳＰＰ、レーザードップラー血流による皮膚灌流圧検査を見ますと、今回４検査との
一致度は比較的他に比べて低いのですが、振動障害群、対照群のいずれを見ても、いち
ばん関連の強い検査はＦＳＢＰ％ということで、全体で見ますと、57.9％の一致率です。
中でもＦＳＢＰ％と判定結果の一致度がいちばん高かったということです。
　皮膚血流検査は、皮膚温検査との判定結果の一致率がいちばん高いわけです。ＦＳＢ
Ｐ％との判定結果との間にも74.5％ということで、比較的高い数が得られています。
　ＦＳＢＰ％については、たぶん検査と比べると判定結果の一致率の隔たりと言いまし
ょうか、各検査での差は少ないですが、最も関連が強かったのが皮膚血流検査における
判定結果になります。振動障害群と対照群で、それぞれ敏感度と特異度の設定の仕方が
各検査によって違いますので、二者を比較したときは一致率の傾向が若干異なってくる
ことがあります。全体で見ると、大よそ全部を反映してくると思いますが、いまお話し
たような結果になりました。
　次頁の表は、検査の組み合わせによって、その判定結果が偽陽性、偽陰性という割合
がどの程度変化するかというものについて検討を加えたものです。例えば、振動障害群
のＶＷＦ（＋）と書いてあるのは、偽陰性の割合になります。その下のＶＷＦの（－）
と対照群というのは、偽陽性の割合になります。いちばん下は、総数に対して偽陰性、
あるいは偽陽性となってしまった数が表してあります。皮膚温検査を例に挙げてみると、
皮膚温検査の場合、単独では17の症例に対して、11が偽陰性と判定され64.7％の偽陰性
率であったということです。それがＳＰＰと組み合わせますと、そのうち７名がＳＰ
Ｐのほうで偽陽性と判定された結果、両方の検査ともに偽陰性となるのは４名であるこ
とを示しています。したがって、２つの検査を組み合わせたときに、両方の検査ともに
偽陰性としてしまう数が23.5％になりますよという見方です。以上のように、すべて単
独での偽陰性率、偽陽性率そして各検査を組み合わせたときの数値の変化が、すべての
検査について示しています。
　１つ例を挙げますと、レーザー血流画像化装置の皮膚血流検査を見ますと、偽陰性率
が10のうち３つで、続いて偽陽性率が振動障害群のＶＷＦ（－）で19のうち２になりま
す。それらが共に皮膚温検査と組み合わせた場合、あまり偽陰性率、偽陽性率ともに変
化が出てこないわけですが、ＳＰＰ、あるいはＦＳＢＰ、灌流圧の検査、あるいはＦＳ
ＢＰ％と組み合わせると若干偽陰性率、偽陽性率の割合ともに低くなってきて、誤判定
という言い方が正しいかわかりませんが、その割合が少なくなってきます。
　例えばＦＳＢＰ％を見ると、偽陽性率ではＶＷＦ（－）の偽陽性率は７／27で25.9％、
対照群における偽陽性率が６／22で27.3％と、およそ25％程度になります。皮膚温検
査と組み合わせた場合、振動障害群のＶＷＦ（－）のグループでは４／27で14.8％、対
照群においては１／22で4.5％にまで低下するという結果になっています。見方として
は、以上です。
　次頁は、末梢神経機能の検査としての振動感覚閾値と神経伝導検査です。そして運動
機能に係る検査としてのＭＲＩによる筋の機能評価検査のそれぞれの検査において判定
された判定結果の一覧表を、先ほどの循環機能検査と同じように示したものです。
　振動患者群の＊は、ストックホルム・ワークショップスケールで症度３と判定された
人たちに記しが付けてあります。これも検査を行った側の右、左とか、検査によっては
片方だけということで、実施された検査の数に違いがありますが、判定結果の一覧とし
てはこのような形になっています。
　次頁は、末梢神経機能にかかる検査としての振動感覚閾値と神経伝導検査について、
先ほど循環のほうでもやりましたとおり、判定結果として症度０を「異常なし」、症度
１以上を「異常あり」と仮にした場合、その「異常あり」「異常なし」の判定結果がど
の程度一致していたかを示したのが表の左側です。振動障害群、対照群、全体とありま
すが、それぞれ18／36、17／26、35／62、結果的に全体としては56.5％の判定結果が一
致していたということです。
　同様に偽陰性率、偽陽性率というものを、先ほどと同じやり方で示したのが、その右
側の２つ、それぞれ単独のものと、いちばん右端のものが組み合わせた場合ということ
です。この判定結果の一致度というのは、大体50％、60％ぐらいでしたが、もちろん振
動感覚閾値検査、神経伝導検査は同様に末梢神経機能の検査ですが、検査をしている対
象の生理的パラメーターが異なることもありますので、一致率がこの程度というのは、
言ってみればそのようになるのは当たり前かもしれません。
　偽陰性率、偽陽性率についても、今回の結果から見ると、両検査でかなり値が違うも
のですから、組み合わせた場合も、振動感覚閾値検査の偽陰性率、偽陽性率の影響を強
く受けて、値があまり変わらないという結果です。
　最後の頁に大きな表があるのは、末梢循環機能検査において、判定結果を導き出すた
めに用られた代表値です。ただし冷水浸漬皮膚温検査については、５つの指標のうち浸
漬前の５分値と浸漬中の５分値、浸漬後15分値の３つだけを取り出していますが、それ
ぞれの代表値についての単純な単相関と年齢を調整した偏相関。斜線が入っている上の
上段の部分は、単相関係数です。下の部分は年齢を調整した偏相関係数が示してありま
す。これは参考程度に資料として示してあります。
　なお、本文には髙山先生が検討された神経伝導検査と、ＭＲＩの検査結果、症例ごと
の対応の検討結果を併せて引用して載せさせていただいています。以上です。
○宮下座長　
　いま表を使って説明された部分は62頁から64頁です。最後の髙山先生の症例ごとの記
載事項は64頁の症例1120Tという辺りから、この部分を引用して症例の中での関連性を
謳って、65頁に若干のまとめの記述があります。
　この部分に関して、表のVI－３の資料から、ただいまの単相関、偏相関の部分の説明、
記述に関してご質問なり、ご意見なり、ご指摘事項がありましたらお願いします。
○原田委員　
　大変綿密な検討をしていただいて、非常に興味深く面白い部分もありますし、気にな
る部分も実はあるのです。
　２枚目の判定結果の一致度ですが、これが50％ということは全く一致していないとい
うことですね。
○宮井先生　
　50％ということは、半分は一致していないということですね。
○原田委員　
　逆に言うと、50％を切っているということは、反対側にいっている（誤った判定の方
が多い）という理解の仕方になりますね。
○宮井先生　
　そうですね
○原田委員　
　その辺はやはり頭に入れておく必要があるかなと思います。１つはＳＰＰとＦＳＢＰ
％は、指の動脈の血圧に関する検査で、皮膚温とレーザーは圧ではなく、血液の量に関
する検査ですから、それぞれの生理学的な特性が反映されていると思います。これはコ
メントです。
　VI－５の表は、こういう検査の組み合わせでどういう指針ができるか。検査そのもの
がある程度同じ結果を出すことも必要かもしれませんし、違う側面を見ているならば組
み合わせることによって信頼性が深まる、という積極的な側面もあるわけです。これら
の検査というのは、それぞれ病理的に違う側面を見ているところもあると思いますので、
こういう検討は重要だと思います。
　気になったのは、振動障害群のＶＷＦ（＋）の群で、検査を２つ組み合わせることに
よって、どちらかが陽性であれば、これは陽性と判断するということですよね。
○宮井先生
　そうですね。両方ともＶＷＦ（＋）のほうが偽陰性という扱いです。
○原田委員
　どちらか片方、あるいは両方が陽性であれば陽性と判断するという基準ですね。
○宮井先生
　はい。
○原田委員
　対照群のほうは、片方が（＋）であっても、それは陰性と判断するとなっていますね。
○宮井先生
　こちらのほうは、両方とも陽性ならば陽性と判断するということになります。
○原田委員
　これは別の異なる基準を使ってきてしまったわけですね。ですから、こういう検討を
するのであれば、本来、１つ、あるいは２つの検査が陽性であれば陽性と判断するとい
う、１つの基準で判断すべきなので、対照群の数字は変えなければいけないと思います。
非常によくやっておられて、関心を持って見せていただきましたのですが。
　これは末梢神経も一緒ですね。VI－７ですが、判定の一致度は50％ぐらいありますの
で、かなり別の側面を見ているということだと思います。
　組み合わせの評価については、同一の基準で振動障害群と対照群について評価すると
いうことでないと、ダブルクラィテリアになってしまうということです。気付いた点は
以上です。
○宮下座長
　後段の末梢神経機能、運動機能に係わる相関は、非常に組み合わせ自体も側面が違う
部分の検査で、ある部分、これとこれということで割り切って相関を見てる部分がある
のですが。分析はさらにこういう部分からとか、ご指摘がございましたらコメントをい
ただきたいと思います。あるいは結果に関しても結構です。
○木村委員
　やはり宮井先生もおっしゃられたように、評価しているものの対象が少し違うわけで
す。振動感覚で見ているものと、神経伝導検査で見ているいちばん太い神経の結果とは
違うわけで、このような結果は当たり前と言えば当たり前ということと思います。こう
いう結果を提示する必要があるかどうかはまた別の問題かもしれませんが、考察として
は見ているものが違うわけですので、こういうものを見ればこういう結果であったとか
いうように、そういう事実のみを捉えればよろしいのではないかと思います。
○原田委員
　提示したほうがいいのではないかと思うのですが。
○木村委員
　そうですね、一致するとか、一致しないということではなく、その結果については考
察で見ているものは違う側面からということを述べた方が良いと思います。
○原田委員
　一致しないことが完全にネガティブな評価するのではなくて、その病態生理的な形で。
○木村委員
　それは同じ意見です。
○髙山委員
　見ようとしたものがだいぶ違いますので。
○原田委員
　レセプターの部分が違うと思います。
○宮下座長
　これは65頁の「まとめ」で、そういう記載がありますが。
○木村委員
　その記載を見せていただきましたが、これを読めば非常によろしいのではないかと思
います。
○梁井委員
　「異常あり」「異常なし」のところでは、程度の問題ですか。何かあったときはいく
つでしょうか。
○宮下座長
　この割り切りとしては、各検査の判断基準で、いわゆる１というのは何らかの異常あ
りと仮に解釈しますと、０というのは、いわゆる異常なしということになります。です
から、異常なし群と、異常群ということで、一応割り切った捉え方です。
○梁井委員
　そういうことです。逆にもう少し厳しくそのところをすれば、もっと強い関係が出て
くるということではないのですか。
○宮下座長
　それはあるかと思うのですが。ただ、尺度が個々の検査で、「なし」「あり」がいろ
いろなところで混ざっているところですが、一応「あり」「なし」で見たらということ
で、梁内委員が言われるように、それが軽度、中度、重度とクリアにできれば、それは
それなりにまた意味があるということです。
○梁内委員
　今回はそういうことに至ったということですね。わかりました。
○宮下座長
　他にいかがですか。そうしましたら、また全体を構成する上で、この分析でご指摘事
項がありましたらお願いします。次は報告書（案）の65頁、「検査手技の評価基準」の
第VII章です。先生方にお骨折りをいただいて、各検査です。これは基準という形でおま
とめいただいていますが、この考え方は従来「症度」と言ってきたわけですが、その議
論をしていただく前に、全体的に評価基準で改めて整理している部分で、各先生方で追
加なり、その後のご検討で何かコメントなどありましたら、先にご説明、コメントをお
伺いしたいと思います。
　順は、従来からの末梢循環検査として、冷水浸漬皮膚温検査（12℃５分法）、それか
らレーザードップラーによる皮膚灌流圧、皮膚血流量、ＦＳＢＰ％、末梢神経機能とい
うことで、振動感覚閾値検査、神経伝導速度、運動機能検査として、ＭＲＩという形に
なっています。若干、評価の記載の文言を変えていますが、これはご議論をいただきた
いと思います。
○梁内委員　
　ＦＳＢＰ％のところですが、75％というのはやや高めではないですか。
○宮下座長　
　70頁の下段に、（イ）各冷却負荷検査指の評価基準、15℃、10℃のいずれか低いほう
のＦＳＢＰ％を用いて評価すると、基準０、１、２、３ですが、いまのご質問は75％の
ところですが、これは原田委員はいかがですか。
○原田委員　
　１つはバックグラウンドをお話しますと、国外で主に検討されてきたのが、北欧の機
械で１本の指を冷却してという装置です。今回使用したのは、４本の指を冷却するとい
う装置で、装置の違いの影響もあろうかと思います。例えば４本の指を冷すということ
で、冷却の強さは当然強いわけです。それでコントロールでもかなり低めで出てみたり、
健常者のほうが高めに出てきたということがあって、患者でもレイノーがある人でも高
めに出るということもあったりして、基本的には基準３というのは、健常者の２ＳＤ、
基準２は1.65ＳＤで平均値より低い。基準１は、１ＳＤで平均値より低い。このように
設定したわけですが、これは全体の報告書（案）の流れをとってみても、それほど齟齬
はないと判断しています。
○梁井委員　
　ただ那須先生が行っている症例の数の問題からすれば、70％のほうがいいのではない
かと思います。いかがですか。
○原田委員　
　那須先生が使われている装置は、メデレックの１本の指を冷却測定するものです。原
理的には全く一緒ですが、今回使用した装置とは違う装置なのです。そういうこともあ
りますので、今回のデータから言うと、私が担当したところは、全般的に書いているわ
けですが、もう少しというか、もっとというか、症例を増やして検討する必要がある。
テクニカルの問題も含めてあるだろうと思います。
○梁井委員　
　もうワンクッション必要であるという意味ですか。
○原田委員　
　そうですね。私の理解はそういうことです。
○梁内委員　
　機械の外れやすい所を改善するとか、そういうことですか。
○原田委員　
　そうですね。１つは、４本の指を同時に冷却するという装置でも、データの蓄積をも
っと進めるということです。
○梁内委員　
　データを蓄積して、また変更はあり得るということでいいのですか。
○原田委員　
　すべての研究がそうなので、今回のデータだけで確定とは考えていません。
○梁内委員　
　そうですね。前は307号通達はそのままでしたから、前の基準は変化がなかったから、
今後は少し変えていくという１つの文言があるわけです。昭和52年の307号通達です。
○原田委員　
　ＦＳＢＰ％とは違う話ですね。
○梁内委員　
　そういうものはすべてそうなってくるということを考えざるを得ない。
○原田委員　
　それは梁内委員が言われるとおり、医学の進歩の中で新しいものについては検討して、
さらに高めていくことは常に必要なことだと思います。
○宮下座長　
　いまの70頁の２行目、装置としてこれこれがあって、４行目、利用可能であるが、下
記は前者、すなわちマルチのチャンネルを用いた場合について記すということで、いま
のはそういう意味での記載だということでのお話だったかと思います。当然、この装置
を用いての検討は続くのだと思います。他にいかがですか。ご担当のところ、全体的に
評価の基準、あるいは考え方でご意見はありませんか。
○原田委員　
　症度区分については、あとで議論されるのですか。
○宮下座長　
　このあとですぐしたいと思います。
○原田委員　
　「基準」という表現は、たぶん私が使ったものを採用していただけるかと思いますが。
そういう点では、私たちはこういうふうにしていただければと考えます。
○宮下座長　
　いま原田委員からお話がありましたので、引き続いてその議論をお願いします。65頁
の下のほうに、ひと通りの考え方を示してありますが、その議論の前に、以前から原田
委員からのご提議もあり、私たちは検査所見、それぞれの検査を評価するそのグレーデ
ィングを「症度」ということで使ってきました。その「症度」について、かなり以前か
ら原田委員からありまして、ここで改めてそのことについてご議論をいただきたいと思
います。
　ご指摘のように、症度という考え方はかなり広い部分があります。私なりに一般的に
考えますと、症度という考え方は、もちろん患者さんが訴えられる症状、自覚症状の定
義、臨床的な所見、それから補助的に行われるこういった検査の所見、そういうことを
総合的に判断した上で、この検討会で取り上げている振動障害であれば、振動障害の病
状の程度を総合的に考えたのが「症度」という概念ではないかと思います。
　そのように考えますと、原田委員がご指摘のように、単一それぞれの検査で基準を設
けて、その異常の程度を「症度」と個々に示すことも、大きな疾病、あるいは病態を捉
える概念からすると、症度ということを、各検査に当てはめることは少し考え方を整理
する必要があるのではないかと思います。原田委員からは基準０、１、２、３という、
基準の文言と言いますか、用語を採用しているのですが。
　そういう意味では、検査所見から言いますと、検査所見のレベルと言いますか、異常
のレベル、そういうことに当てはまるのではないでしょうか。
　この報告書で、特に第VII章以降の各委員方の評価の基準をどのような用語で統一し、
それを理解していただけるような形にまとめるか、少しご議論をいただきたいと思いま
す。
○原田委員　
　いま座長が言われたとおりで、例えば厚労省のＳＬ分類というのがあります。循環障
害についての症度、あるいは振動障害についての症度というのはあると思いますが、個
々の検査、あるいは個々の自覚症状、それ自体は症度ではないと思うのです。そういう
ものを総合して、病態としての振動障害があるか、あるいは病態としての末梢循環障害
があるか。そのときに症度のレベルが出てくると思うのです。ですから、これは例えば
所見の区分、あるいは検査した結果評価された評価区分とか、そういう方法を使うべき
だと思います。
○宮下座長　
　いかがですか。個々に使ってきた検査の所見を、それぞれグレーディングの当てはめ
る言葉として、例えば血流装置ですと、劣っているものを症度３というふうに使うと。
いわば１つの検査所見ですので、評価の区分や基準という概念で整理したほうが、用語
としてはより正確といいますか。その辺のご議論をいただいて、コンセンサスが得られ
ればそのようにしたいと思います。
○髙山委員　
　論文を書くときは、個々の検査であるときは、この検査ではグレードいくつとかいう
形で、総合して評価というか、重症度としてはいくつという形で、同じ言葉を使うとそ
の辺がまぎらわしいことがあります。
○原田委員　
　グレードというのはそうだと思います。疾患のステージだと症度ですが、グレードは
症度ではないと思います。高血圧の場合でも、総合的に判断して高血圧としてどの辺の
症度になるか。しかし、血圧そのものは症度ではないですよね。
○髙山委員　
　評価０とか１とか、その検査上の評価という形です。
○原田委員　
　血圧の区分、あるいは血圧の所見、そういうこともあるかと思いますが。
○宮下座長　
　重松委員、いかがですか。
○重松委員　
　同一検査の重症度というか、それは１つありますよね。例えば末梢循環障害があると
か例えば神経筋伝導障害があると。そうすると、それは総体として重症度に持ってこな
いといけないわけです。ですから、これは難しいです。どういう表現がいいですかね。
○木村委員　
　非常に難しいと思います。例えば一般的に１つの神経について神経伝導検査をやれば、
その数値が出るわけですから、それによってグレーディングはできるわけです。ただ、
今回はいろいろな検査を一遍にやって、全体としては８つの神経を見ていますので、そ
れに対してそれをどのように評価するか、私も非常に悩んだわけです。それで１つの方
法とし末梢神経のどこに異常があるかに注目して評価した訳です。ですから、各々の神
経について見れば、より重度にやられているものもあるかもしれないわけですが、それ
がこれには反映されていないと言えます。
　各々の検査に関しては、先生方もそれぞれ苦労しながらなされていることと思います
が、私も今述べたような状況で、グレーディングというか、ステージというか、そうい
うことをやったということです。しかし、また併せてその全体として見るわけですから、
どこかの検査で突出して「異常あり」とか「異常なし」が出ると思います。その結果を
また同じように重症度として評価するのは確かに難しいかなと思います。ただ、この基
準というのは英語だと何という言葉になるのですかね。
○原田委員　
　英語でね。
○木村委員　
　症度、グレーディング、ステージというような用語が使われていますが、基準０とい
うとどう表現するのですかね。
○原田委員　
　クラスか、グレードか。
○木村委員　
　やはりグレーディングという辺りが適切なのでしょうか。
○原田委員　
　検査所見をいまグレーディングしているわけですよね。
○木村委員　
　そうですね。
○原田委員　
　疾患そのものをグレーディングというわけではないですね。
○宮下座長　
　そこの議論だと思います。
○木村委員　
　ですから、英語で言うと分けて表現しなければいけないと思います。
○原田委員　
　そうですね。
○木村委員　
　そういう意味での基準が何に当たるのかを検討する必要がありますね。
○重松委員　
　ここで書いてある所見というのはクラスですね。
○木村委員　
　クラスですね。
○原田委員
　案件を見たときは、分類という言葉を使っていますよね。クラシフィケーション。
○木村委員
　例えばリウマチではクラス分類が使用されていますが、それにより障害の程度を評価
したしています。従ってその場合には誤解が生じることもあるかもしれないと言えます。
○樋端委員
　グレーディングで私はいいと思いますが。検査のグレーディングということを明確に
すれば、それぞれの検査のグレーディング。従来から１プラスとか２プラスという表現
をしてきたわけですが、それを踏襲するというので、基本的には問題がないのではない
かと思います。ステージはおかしいと思います。
○本間委員
　なかなか返答に困るのですが。
○宮下座長
　少なくとも疾病全体を反映するような意味での症度というのは、個々の検査に直線的
に当てはめる用語としては好ましくないといいますか、フィットしていないということ
では皆さん。
○本間委員
　今回だけのことで、またこういう分類の仕方を考えるということも、かえって混乱す
るという気もしないでもないので、従来のやり方でそれほど不都合はないのではないか
と思っていますが、何とも言い兼ねます。
○梁内委員
　言いようがないですね。
○原田委員
　いずれにせよ振動障害の症度は労働省の通達があるわけですね。末梢循環の障害の症
度、あるいは末梢神経系の障害の症度はあるわけです。しかし検査の症度があって、循
環障害の症度があって、例えば１つの検査で症度が０以上の人。１つの検査で循環器の
検査で異常があると。そうすると、循環障害に対して異常なし、異常ありの症度がある
のはおかしいですよね。検査の所見としては片方には異常があり、片方には異常がなし
ということがあったとしても。
○梁内委員
　非常に振動障害が厳しいと仮定すれば、循環障害より末梢神経障害というのは非常に
著明でなければならないわけではなくあっていいと思うのです。振動障害の程度が非常
に強くて、末梢循環障害が非常に強くあれば、末梢神経障害も全然ないわけではないと
私は思います。それは程度の関係で調べたらと思いますが。
○原田委員
　いまお話したのは、末梢循環障害だけに限った場合の話なのです。末梢循環障害の症
度を評価するときに、１つの検査では症度０で異常なしと。１つの検査では症度１で異
常ありと。末梢循環障害としては、症度何かとかいう、症度という言葉が重複しますよ
ね。ですから、病態を評価する、あるいは疾患をステージングするという表現と、検査
の所見を評価するという表現と、これは別の用語を使う必要がある。そうでないと混乱
しますよね。
○梁内委員
　混乱しますね。
○本間委員
　私どもは診断書を書く立場から言いますと、末梢循環障害があるのか、ないのかとい
うことでいくわけです。そうすると、末梢循環機能検査というのは、今回やったように、
いろいろ出てくるわけです。過去にもいろいろなものがあって、捨てられたものもある。
今度10年後また新たに何か出てくるかもしれません。その度にやっていたのではかなわ
ないということで、末梢循環障害があるのか、ないのかというのは、現在やっている検
査で総合的な判断をすると。そして厚労省の通達に則って、末梢循環の部位のＬに関し
ては、０なのか１なのかに分かれると思います。総合的に判断するというのは、そうい
うことだと思います。
　実際、そうやっているわけですが、それに個々の検査についての分類を新たに作って、
それをまたデータで蓄積していこうとすると、ちょっと我々に負担が大きくなり過ぎる
かなと。
○原田委員
　というよりも、そういう分類は実際には使われていないでしょう。例えば末梢循環障
害の検査ですと、皮膚温検査、爪圧迫とありますが、爪圧迫のテストの症度は何だとか、
皮膚温の冷水浸漬の皮膚温の症度は何度だとか、そういう評価は、用語は全く使ってい
ませんよね。
○梁内委員
　クラスとかでしょうか。
○原田委員
　グレーディングには付けますけれども。それは症度ではないのですよね。症度は末梢
循環障害の程度を表す症度はもちろん示すわけですが、検査、あるいは自覚症状をもと
にＳＬ評価で。ですから、私は症度の使い方が、この間、少し混乱しているという状況
があると思います。
○本間委員
　実際問題、私たちやっている段階では、厚労省からの通達に則ってやりますので、特
に不自由は感じていないというのが。
○原田委員
　それは症度を使ってないからです。
○本間委員
　診断書を作る段階において、臨床の場面においてはということです。
○原田委員
　末梢循環の症度は使っているが、通達の検査による所見に対して症度という言葉は使
っていませんでしょう。
○梁内委員
　症度ではないです。
○原田委員
　所見ありとか、所見なしですね。ですから、これは所見なのです。症度ではないので
す。
○本間委員
　それでいいのではないかと思うのです。
○宮下座長
　私が申し上げたのは、検査の所見をどう評価するかという、評価基準をグレーディン
グという言葉でいいのかわかりませんが、それを区分けしようと、そういう考え方にな
るのではないでしょうか。
○原田委員
　私が懸念するのは。
○本間委員
　実際の臨床にどのように活かされているのですか。
○原田委員
　いままでと一緒です。ただ、症度という言葉が、別の世界で使われていることで、そ
ういう状況になっています。
○重松委員
　そうですね。ただ、クラスもないということですね。例えば、私たちは末梢循環障害
のあれでフォンテン分類を用いますよね。フォンテン分類で１度が冷感しびれ感とか、
２度は間欠性跛行で、３度は安静時疼痛で、４度は潰瘍、壊死となっています。これは
あくまで虚血死の臨床症状分類なのです。いかにも重症度に見えるのですが、冷感から
跛行があって、潰瘍、壊死に至るまで、それぞれ異なったものを観察しているに過ぎな
いので、これは臨床症状分類であると。その中で使われている英語はステージなのです。
個別の筋肉の虚血の重症度を表すには、また別の尺度を用いてこないといけないわけで
す。同じようなことが、ここで起こっているのだといま考えながら聞いているのですが、
それをどう評価するかということですね。
○樋端委員
　ということになりますと、まぎらわしい用語を外すということで考えると、原田委員
が言われていたクラス分類か、あるいはグループ、例えば検査のグループとしては悪い
データ群に入るグループ、どちらかがいちばんいいのではないかという気がします。検
査の評価ですよ。
○原田委員
　所見でもいいのですが。所見０、所見１、所見２と。
○樋端委員
　日本語で言えば所見です。
○原田委員
　所見２に判定の基準を。
○樋端委員
　そのレベルとして所見０、所見１、所見２、所見３ということで。そういう所見だと、
横文字を何となく使っても、横文字をやっていなくてもいいですか。
○宮下座長
　そういうレベルとして。
○本間委員　
　結局、言葉の使い方ですが、基準で例えば皮膚温で冷水負荷の回復を見ても、林災防
の基準値で１＋、２＋、３＋とやるのです。それとどう違うのですか。
○原田委員
　そこでは症度という言葉は使いませんよね。
○本間委員
　ただ単に使っています。
○原田委員
　ですから、それは所見＋、所見２＋、所見３＋なのです。症度という言葉は使わない
と思います。使うと混乱するというか。
○髙山委員
　同じ言葉を個々の検査の評価に症度を使うと、症度というのは全体の重症度を示して
いるので、この検査の所見があるなしで、同じ言葉を使っていると混乱するので、やは
り何らかの違う言葉を使うほうがいいかと思いますが、それにフイットする言葉が何か
というのは、あまりいまコンセンサスが得られていないというところだと思います。
○本間委員
　症度というのは、総合所見での症度ということですね。
○髙山委員
　それは総合所見で使うべきだと思います。
○宮下座長
　それは皆さん、コンセンサスを得られていると思います。ですから、個々の検査が１
つ突出して、いわゆる従来から言うＳＩ＋という所見の程度であったとしても、それは
振動障害の末梢循環、それ１つで症度３と言うかというとまた違いますよね。それはし
びれ感が強いとか、そういうことも加味して、症度が創定されるというコンセンサスは
得られたと思います。
　それぞれ採用した検査について、いま所見０、１、２という、ある意味基準ですが、
そういうことでこの委員会として、統一した形で用いるということであれば、解釈はま
たここに書いてある形でいいのか、どうかということもあるのですが。
○本間委員
　症度という言葉を使わなければ、どんな言葉でもいいと思いますが。
○宮下座長
　検査所見ですよね。
○本間委員
　基準レベルでも所見でもいいかなと思います。
○宮下座長
　ですから、所見のレベルというのは、私も最初考えていたのですが、少しくどいと思
います。
○木村委員
　なかなか馴染まないと思いますが、例えばリウマチなどでは、ステージ分類と言って
レントゲンの所見による分類がありますが、リウマチは全身の疾患ですから、一部が非
常に悪いとすなわち１カ所だけの関節が悪いとそれだけで全体として悪いということに
してしまうわけです。
　実際にはもっと機能の悪い人がいて、そういう人についてはリハビリテーションの観
点からは日常生活上の配慮と日常生活自立の観点から、別にクラス分類というのを行う
わけです。結局、分類によって見ている視点が違うということだと思います。症度とい
うとどうしても良いとか悪いという印象になってしまうので、そこに抵抗がある場合に
は、２種類の分類によって言葉を使い分ける必要があることになると思います。ただ、
どういう言葉を使うのが適当なのか、もう少しほかの例を見て検討した方が良いかもし
れません。所見というのもちょっと馴染まないような気がしないでもない。先ほど重松
委員が言われたように、むしろそのままクラスとかグループという方が適当なのかなと
いう気もします。
○宮下座長
　ここで皆さんが、これでということでなければ、いま私も「所見」という表現とカタ
カナで「クラス」というふうにここで呼ぶとして、クラス０、１、２、３、４、あるい
は所見０、１、２、３というあたりかなと思います。いま委員の先生方にお考えいただ
ている概念として、この基準なり評価の区分を用いて定義づけようというところは一致
していると思います。
○重松委員
　要するに症状分類として末梢循環障害がある。あるいは神経筋伝導障害があるという
症状分類が１つあって、それの組み合わせがどういうふうになっているかとか、要する
に末梢循環障害はあるけれども、神経筋伝導障害はない。あるいは両方ともあるとか両
方ないとか、そういうふうな組み合わせ方の分類が１つあります。それがあって、症状
分類があって、それぞれの症状分類の中で選択されている、例えば末梢循環障害であれ
ばそれを示す検査データがあるわけです。その中にはいろいろなレーザードップラーだ
とか、あるいはＦＳＢＰ％というのがあり、それぞれに今度はレベルがあるわけで、そ
こで基準だと思います。そして医療の程度を示すレベルがある。そういう考え方でいっ
たらどうかと考えたのです。そうでないと、全体としてのいわゆる振動障害の症度分類
というのはできない。
　全体としてのいわゆるそれを重症度とするかどうかは別として、大きく言えば最初に
神経伝導障害あるいは末梢循環障害がある。それの組み合わせ方を１つのグループとし、
その次にあるのが症状分類です。それを示すデータとして検査データがあり、そこの中
に個別のデータで得られたレベルが一致する。そういう考え方もあるかなと思います。
　もう１つの問題点は、この検討会の最初からあったことですが、振動障害の要するに
重症と判定していこうというのか、あるいは振動障害に紛れ込む他疾患をできるだけ除
こうかというところです。そこのところもこの報告書の中に入れていかなければいけな
いかもしれない。そのときには今度は裏返しになって、これでも異常ない、これでも異
常ない、これでも異常ない、これでも異常ないとなり、そうするとそれが外れていくと
いう形をとるのか。これがあるから違うと取るのか、これがないから違うと取るのか、
そこのところも他疾患を鑑別するときの鑑別の仕方で、除外診断なのか確定診断でいく
のか、そこのところも決めなければいけない。
○宮下座長　
　この議論はなかなか難しいです。
○髙山委員
　重大なことなのですが、この検討会では結局、客観的な評価として循環障害、神経障
害のときの障害をどう評価するかということに着目していたので、重松委員の言われる
ことはよくわかりますが、そこまで手が回っていないのです。
○重松委員
　もう１つの問題点は、検査データの対象となったものが相対的なものだということで
す。要するに振動障害とほかの方法で診断されている群を持ってきて、本当にそれが振
動障害かどうかの確証がある意味でないわけです。あるいは正常群も本当に正常かどう
かという、その判定をまずどうするかということが本当は入っているのだと思います。
○梁井委員　
　いちばんいいのは、振動障害のフレッシュな、治療も何もしていないのがいちばんい
いのでしょうが、既に治療をしている患者であるということが１つの問題かもしれませ
ん。難しいところだと思います。
○宮下座長
　この議論の基本的なところで非常に重要なことです。この検討会では従来、症度とい
う言葉について皆さんもはっきりとして、検査に係わる部分についてはこのことは用い
ずに、個々の検査の判断の基準ということで理解しましょうというところは、コンセン
サスはいただいたと思います。それをどのような名称で所見あるいは所見のレベル、ク
ラスというご意見があります。最終的に原田委員に付けていただいている基準という名
称も含めて決めないといけないのですが、統一して記載しないといけないものですから、
このレベル、基準、クラス、所見だけを用いるということで、どうでしょうか。それと
検査のそれぞれによって特性がありますので、その意味するところです。65頁の下４段
に基準０、１、２、３とあり、仮にそういう名称だとすると、おおよそこういうふうな
意味合いでという１つの考え方が示されています。
　もちろん先ほどの話ではないですが、１つの検査でこうだということではないですが、
その検査が例えば基準２あるいは基準３ということであれば、明らかな異常だという意
味合いを持たせる、あるいはそういう読取りだとして、いわば－、１＋、２＋、３＋と
いう検査上の判断というか、そういうふうになると思います。
○本間委員
　この報告書（案）の中身も、基準という言葉と評価という言葉があります。
○宮下座長
　実は症度というのを外したのですが、基準になっているところと評価になっていると
ころがあります。これは報告書ですので、同じような意味合いでいくつも使うというの
は好ましくないと思います。
○髙山委員　
　なるべく混乱しないようにしないといけない。
○宮下座長
　それはそのようにしたいと思います。中身は整理して統一を事務局のほうでしていた
だきます。所見のレベルというのは、何となく持って回ったような言い方で、ただ、レ
ベルというものだけ当てますと、あるいはクラス０、１、２、３とか、そこから解釈さ
れる中身というのはどうでしょう。
○本間委員
　私の立場からすれば、－、１＋、２＋、３＋というのは慣れていますので、そうして
いただいたほうが入っていきやすいですね。
○宮下座長
　名称なしに。
○本間委員
　何か利用していただいたほうが、いいかなという感じがします。
○樋端委員
　レベルという言葉の中では、少し病気全体の重さの程度は反映されているような響き
があります。例えば「意識レベルが」というふうに言うと、かなり重症だという感じで、
重症という病気の重さにつながってくるというイメージがちょっとあります。
○重松委員
　レベルだと評価基準が入ってくるのです。クラスは重症度とかそういうものを入れな
い単なるゾーニングです。
○樋端委員　
　このグループ、このグループということでしょうか。
○重松委員　
　ええ。
○宮下座長　
　記号でということで、単一の言葉でということがあります。
○職業病認定対策室長（只野）
　１＋、２＋という、これまでも使われてきたものと、今回のこの検査結果の数字が同
じレベルで、基準２がこれまでの２＋と同じレベルならばいいのですが、今度新しく打
ち出したときには、そこは誤解を避けたほうがいいと私は思います。いままでの委員の
先生方のご意見を伺い、クラスあるいはグループというのがいちばん無色透明なのかな
と感じました。
○宮下座長
　断定的ではないのですが、いま、このネーミングで貴重な時間を取るのも何ですから、
ご意見はまだ頂戴しますけれども、この席では仮にクラスというのをカタカナでおいて、
例えば基準のほうがいいとか、あるは他のほうが合理性があるという意見をいただきま
したら、次回、もう一度議論する場がありますから、そのようにまた議論していただい
てコンセンサスが得られたらそのようにしたいと思います。
　次に、これは先ほど重松委員も言われたこととも関連するのですが、報告書（案）の
75頁です。検査体系の在り方ということで先生方に資料を予めお送りして、内容につい
ては一応把握していただいて、お考えもいただいていることかと思います。この平成13
年度報告に始まって、今回、この検討会としては異例でしたが実際の症例にも当たり、
今まで14回検討を加えていただき、その有効性なりを議論してきたところです。
　それを踏まえて、下から４行目に書いてありますように当検討会としてのひとつの考
え方を示すということから、76頁の２の検査精度を上げるための各種検査手技の組み合
わせで、（１）の末梢循環機能検査ですが、事務局から読んでいただきます。
○中央職業病認定調査官
　末梢循環機能検査から読み上げさせていただきます。
　現行検査手技において、爪圧迫検査は簡便な検査ではあるが、検者の肉眼で確認して
いるため客観性に欠けること。検者の巧緻の差に左右されることから、必ずしも適切な
検査であるとは言えない。また、冷水負荷皮膚温検査（５℃10分法）については、検査
に伴う著しい疼痛等の問題もあり、また、実際の労災認定における検査において約７割
が10℃10分法で行われているという実態にある。今後、ますます患者の高齢化が進むこ
とが予想され、現行検査手技において示されている冷水負荷皮膚温検査（５℃10分法）
については、これを否定するものではないが他の検査に置き換えられることが適切であ
ると考える。
　ただし、いずれの方法を採用しても検査の際にいくらかの寒冷刺撃を伴わざるを得な
いが、検査の客観性、信頼性、患者負担の相対的低下という観点から以下のとおりとす
る。
　ア　スクリーニング検査
　スクリーニング検査としては、常温下皮膚温検査に加えて、冷水負荷皮膚音検査（10
℃10分法）を実施することとする。ただし、今後、12℃５分法による冷水負荷皮膚温検
査の評価基準がある程度確定された場合には、採用すべきである。
　イ　精密検査
　精密検査としては、皮膚温検査に加えて、局所冷却による指導脈血圧測定（ＦＳＢＰ
％）、レーザー血流画像化装置による皮膚血流測定、レーザードップラー血流計による
皮膚灌流圧測定を選択的に実施する。
　（２）末梢神経機能検査
　現行検査手技において、痛覚検査は簡便な方法ではあるが、被検者の応答に依存する
こと。被検者の皮膚の角質層の厚さ、角化の程度や年齢により痛覚閾値への影響が生ず
るとされており、また、感染症の問題等も指摘されるなどの問題がある。
　振動覚検査については、被検者の応答に依存すること。振動子への指の圧力等の測定
条件により検査値が異なること。加齢や皮膚の肥厚により閾値の上昇が生じる等の問題
点が指摘されているが、一方、ＩＳＯによる国際標準化が行われ、評価法等の国際規格
が示されている検査であり、正中・尺骨神経の運動・感覚神経伝導検査と組み合わせる
ことにより、より客観化できることから以下のとおりとする。
　ア　スクリーニング検査
　スクリーニング検査としては、振動覚検査（HVLab:35Hz、125Hz又はLION:125Hz、）及
び正中・尺骨神経の運動・感覚神経伝導検査を実施する。
　イ　精密検査
　精密検査としては、運動・感覚神経伝導検査（インチング法等）、筋電図検査を実施
する。
　（３）運動機能検査
　現行検査手技において、握力検査（最大握力、瞬発握力、維持握力）、つまみ力検査
については、被検者の最大努力が評価の前提となり、検査結果の客観性が問題視される。
また、タッピング検査については、本人の意思、指機能の器用さ等に左右され、必ずし
も指機能を反映した検査とは言い難い。運動機能障害の検査手技については客観性、再
現性という観点からはいずれの検査も十分であるとは言い難いことから、これらの検査
を否定するものではないが、あくまでも診断の参考にとどめるべきである。以上のこと
から、客観性に問題があるものについては、医師が直接行う次の検査とする。
　ア　スクリーニング検査
　スクリーニング検査としては、レントゲン検査、握力検査、関節可動域測定、深部反
射検査を実施する。
　イ　精密検査
　精密検査としては、握力検査結果が極端に低下している場合にはＭＲＩによる筋の機
能評価検査を実施する。
○宮下座長　
　ありがとうございました。本検討会報告書のまとめの部分の非常に重要な位置を占め
るところで、75頁には、この検査を行って有効性を検討してきたということをまとめ、
76頁から77頁については、検査精度を上げるための各種検査の組み合わせということで、
当検討会の見解という文言が入っています。末梢循環機能検査、末梢神経機能検査、運
動機能検査ということで、スクリーニングと精密検査としています。この基本的な考え
方、項目等について、少し時間をかけてご議論いただきたいと思います。
○樋端委員　
　この文章を読むと、スクリーニング検査、精密検査と分かれているわけですが、307
通達との関係をどう理解したらいいのか私はよくわからないのです。307通達ではいろ
いろな検査項目が挙げられていて、それらを通じて総合評価することになっていますが、
この報告書の中では例えば爪圧迫、痛覚検査、タッピング、つまみ力というのは、もう
よろしいというふうに考えていいのかどうかというところです。
　確かに平成13年度の報告書にもあるようなところの中身は、私も頷けるわけですが、
それはそれとして、こういうふうに報告書が出てしまうと、事実上、307通達は無視さ
れるということになるのかなというふうにも思います。そこのところは厚労省のほうは
どんなふうにお考えなのか、ちょっと私はよくわかりませんので教えていただければと
思います。
○職業病認定対策室長
　おっしゃる52年の通達の別添１、別添２で、検査手技及びその評価について書かれて
いるわけですが、今回、この報告書でまとめていただければ、これはその別添１、別添
２を見直すことになるかと考えています。
○樋端委員　
　そうすると、診断書の書式、様式も全部変わるということになりますか。
○職業病認定対策室長
　そういうことになるかと思います。
○本間委員　
　運動機能検査のところで髙山委員にお伺いしたいのですが、精密検査のところでＭＲ
Ｉを導入するということで、確かにいいのですが、実際問題として握力で非常に低い値
しか出してこない被検者というのがいるのです。その場合に、このほかに何かいい検査
法というのはないのですか。
○髙山委員　
　そこまで考えていなかったですが、確かにおっしゃるとおりです。
○本間委員　
　もちろん、ペースメーカーが入っている人とか、骨折でプレートが入っている人とか
もいます。
○髙山委員　
　確かにいくつかの検査ができない患者がいます。確かにそのとおりです。
○梁井委員　
　その場合に、整形外科的な対応はしないですが、筋肉の萎縮というのはあるのでしょ
う。
○髙山委員　
　もちろん診察上、筋肉の萎縮を診るということが大事です。
○梁井委員　
　あれば、ある程度の判断はつくわけですね。
○髙山委員　
　はい。
○梁井委員　
　ない場合は、一応、ないと規定しているのですか。
○髙山委員　
　私はそうです。あともう１つは、木村先生のところの末梢神経の伝導速度とか、そこ
ら辺が全く正常なのか。その辺に障害があればある程度あるだろうという裏付けに逆に
なりますけれども、おっしゃるように他は何もなくて、見た目に筋萎縮もないという場
合、それからＭＲＩを調べるにも、いろいろ禁忌事項があって調べられない場合、確か
に難しいですね。
○樋端委員　
　記述の方向ですが、１つは平成13年度の報告書について、この検討会で実際のところ
はあまり時間を割いて議論されていない。第１回の検討会だったと思いますけれども。
ですから、私自身は平成13年度の報告書をよく理解できるつもりでいます。
　ただ、この検討会で十分議論してそういう結論に立った上で、新しい通達を出すべき
だというニュアンスで報告書が出されると、ちょっとまずいのではないかという気もし
ます。十分に議論しつくされているかどうかというところがあります。
○職業病認定対策室長　
　平成13年の報告書については、第１回目の検討会で提出しました。これまで14回重ね
てきているわけですから、その間、常にそのことが意識にあって議論されてきたものだ
と理解しています。また、その平成13年度報告の中から７検査に絞ってきたという過程
も、各委員の先生方は十分ご理解の上で今回まできたということで、これは流れのある
ことですし、またこの中の過半の先生は、14年度からの委託研究も実施されてきた経験
もあります。そういうことを十分踏まえての議論であったと事務局としては理解してい
ます。
○木村委員　
　末梢神経機能検査のところですが、この文章を作った平成13年度にいろいろ書かせて
いただいたわけですが、そのなかから要約して事務局等で準備してくださったのだと思
いますけれども、平成13年度のときには末梢神経機能を検査するためのスクリーニング
検査、精密検査という分け方をして、特に振動障害を意識したわけではないのです。今
回のドラフトを読むと、振動障害に対する検査としてスクリーニング検査があり、精密
検査はさらにこれこれだといくつかのものが書いてあります。末梢神経でスクリーニン
グ検査を行ってから、さらに精密検査をやったとしても、より異常が検出されて、より
精度が上がるということは、振動障害に関しては言えないと思うわけです。鑑別診断は
できるのですが、ここでいう精密検査という表現がいいのかどうか検討する必要がある
と思います。すなわち末梢神経障害を鑑別するためには非常に役立つのですが、振動障
害そのものの検査としてこれをさらに追加することによって、その精度が上がるとはち
ょっと思えないわけです。それが１つです。
　それからこの文章ですが、私の元の文章が悪いのかもしれませんけれども、精密検査
としても運動・感覚神経伝導検査という表現は、誤解を招くかもしれません。鑑別診断
ということであれば誘発電位とか、そういう言葉のほうが適切かもしれません。
　もう１つ、ここにある筋電図検査というのは針筋電図検査のことですが、これはある
意味で言うと１つのモーターユニットという運動単位についての検査です。基本的に末
梢神経の先にある筋肉に関する検査ということで、もちろん末梢神経の異常も表現する
わけですが、そういう意味では髙山委員のところの運動機能検査とオーバーラップする
検査と言えます。従ってむしろこの筋電図検査をやるとＭＲＩの検査結果と一致するか
もしれません。そういう意味でここら辺の表現の仕方については検討が必要と思います。
末梢神経機能検査の精密検査ということであり、振動障害に対する精密検査と言うと誤
解を招くかもしれません。
○宮下座長　
　いま、木村委員からご発言があったように、特にスクリーニング検査と精密検査とい
う枠組みで記載しているのですが、このまとめの骨子を考えるにあたり、いまご指摘の
精密検査であり、かつ鑑別診断というか、そういうのが表裏一体のところもあるわけで
す。ですから、そういう形での記載のほうがむしろ望ましいという考え方もあろうかと
思います。これは全部そういう側面を持っているかと言ったら、そうでもない部分もる
のですが、いまの木村委員のご意見を踏まえるならば、イの精密検査というところに鑑
別検査というか、鑑別診断です。
○木村委員　
　精密検査、ないしは鑑別検査として並記するとか、そういう表現のほうが良いように
思います。
○職業病認定対策室長
　平成13年報告は、精密検査・鑑別審査となっていましたので、そういう表記でよろし
いでしょうか。
○木村委員　
　どっちに照準を当てるかによって違ってくると思います。末梢神経機能そのものを見
るのであればこれは精密検査であることは間違いないわけです。ただ、振動障害の場合
には、スクリーニング検査でちょっとおかしいからと言って、これらの検査を振動障害
の疑われる患者に精密検査として実施したからと言って、よりその診断の精度が上がる
というものではないということです。
○原田委員　
　２月10日に送っていただいた部分は、そういうふうになっていませんでしたか。
○宮下座長　
　あのときは中ポツが入っています。
○職業病認定対策室長
　私の勝手な判断で、鑑別という言葉を整理して精密としたのですが、確かにいま木村
委員のおっしゃる意味もよくわかりましたので、前に戻したいと思います。
○梁井委員
　スクリーニングというのは、どこまでのスクリーニングという意味なのですか。一次
検診なのか二次検診なのか。
○職業病認定対策室長
　これは先ほどのクラス０、１、２、３という話があったと思いますが、これまでの知
見なども合わせると、例えばクラス３の人は、それ以上しなくても十分に振動障害があ
る方と、あるいはクラス２の方もそうかもしれません。クラス１の方が少し曖昧なのか
なというところがあったときに、それはもう１回精密検査をしてみましょうかというこ
とでやればいいかなと思います。そういうイメージを私は持っていますが、これはまた
先生方のご議論で、どこをどうしたほうがいいという突っ込んだ議論をしていただける
なら、私どもはそれを参考にさせていただきたいと思います。
　そこら辺がなかなか難しいときは、実際の医療現場で先生方が確定診断をするにあた
り、その５℃10分法でやったが患者の訴えと医学的に矛盾するとか、運動機能検査と比
べて、このデータが長年の臨床経験から理解しにくいという場合に、さらにこういった
検査をやる。その上でさらに理解するということになるかと考えています。
　ですから、スクリーニング検査だけで十分な所見がある方もいるでしょうし、私が常
々思っているのは、１つ１つのデータですべて決めるのでなく、最終的には医師の総合
判断が結果的に出てくるのだと思います。それは従来から木村委員が言われているよう
に、これは１つの診断の補助だということで理解しています。そういった意味で、こう
いうシステムではいかがなものでしょうかということでお話申し上げているわけです。
○樋端委員　
　大体わかりましたが、健診通達は残るということになるのですか。
○職業病認定対策室長
　健診のＡ、Ｂ、Ｃですね。これは管理区分Ｃが５℃10分法等の検査を前提に通達がで
きていますから、あの部分は検討せざるを得ないだろうと思います。
○樋端委員　
　検査項目についてはですね。
○職業病認定対策室長
　ただ、安全衛生上の予防的観点の部分もありますから、現場で巡回検診などを検診車
を持って行ってやるときに、あれでいいのだとなれば、予防的観点からそれを踏襲して
いくかどうかは、安全衛生のほうでまた考えていただかなければならないと思います。
私どものほうとしては安全衛生のほうに、こういう検討をやっているということを言っ
ていますし、常々合議はしていますので、あとは組織の中のことですけれども、別の所
が別の判断をするかもしれないということです。
○樋端委員　
　先ほどのスクリーニングと精密検査の問題については、考え方は何らかの形できちっ
と文章の中で出していただくことが大事だろうと思います。
○職業病認定対策室長
　むしろ先生方に書いていただくと、私どもはありがたいです。
○樋端委員
　もう１つは、11頁で現行の307通達の検査の問題点をここで出しているわけですが、
先ほども言いましたように文章のいちばん上のところから言うと、指摘内容は妥当であ
ると、この検討会でしたのだということに記述としてはなっているわけですが、何かち
ょっと抵抗があるのです。それは十分議論しつくしてこうなったということでもないと
思うからです。
　それはそれとして、この文章の真ん中のところで、末梢循環障害の検査で「冷却と疼
痛による血管収縮が同時に生じているものと考えられ、単純に冷却効果を反映している
とはいえない」という記述があります。これは平成13年度の報告書の中に探したのです
がないのです。これはどういう意味ですか。
○宮下座長
　これは添付資料を引用したのではないですか。
○樋端委員　
　意味がよくわからないです。
○職業病認定対策室長
　確認します。
○中央職業病認定調査官
　ここの指摘事項の記述の部分については、第１回と第３回目の検討会に、現行検査手
技の指摘事項という関係で２回にわたって資料を提出しています。そこは平成13年報告
書だけでなく、他のいろいろなところからの指摘事項も含めて指摘がなされたものを資
料という形にまとめています。ですから、この中に入っているものがすべて平成13年報
告書の指摘事項ということではありません。
○樋端委員
　この意味が、どういうことなのかよくわからないのです。私は循環冷却負荷試験とい
うのは、血管の反応性を見ているのだと思っているわけです。交感神経の働きも含めて
血管収縮が当然起こるわけです。その傾向を冷却負荷によって見ているというふうに私
は思っているのですが、そうではないのですか。
○職業病認定対策室長
　成書を確認して、ここの部分の取扱いを検討させてください。
○樋端委員
　はい。
○原田委員
　ただ、全身血圧の著明な上昇というのは実際にあるわけですが、逆に私の経験では血
圧が下がって、学生に被検者をお願いしたものですけれども、ショックになりかけたこ
とがあるのです。だからこの表現はちょっと気になります。それと疼痛で確かに血管収
縮は起こると思いますが、疼痛の影響が冷却の影響と同等であるという根拠はあるので
すか。
○宮下座長
　そういう問題が、ここはいっぱいあると思います。
○職業病認定対策室長
　ここはもう一度整理します。
○樋端委員
　11頁のいちばん下の爪圧迫テストのところの最後に、「被検者が検査時に手指に力を
入れていると、血色の回復時間が延長する」とあります。手指に力を入れているという
のは、どういうことかよくわかりません。
○宮下座長
　12頁の３行目ですか。
○樋端委員
　そうです。これも確認します。
　この辺はきちっとしておかないと、当然、社会的な批判を受けかねない。そういった
類の問題があります。
○職業病認定対策室長
　もしありましたら、もっと指摘していただければと思います。
○宮下座長
　ここのところは、指摘事項というところで引いてきた部分がありますので、いま、ご
指摘いただいた何点かというのを成書と根拠を確認した上で、委員の先生方に最後にご
確認いただく作業をしたいと思います。
○原田委員
　76頁ですが、いままでお話を聞いていると、かなりこれを確定的なものとしてお考え
のようですが、例えばここに書いてある痛覚は感染の問題が確かにあるわけです。だか
ら、よくないなと私も思いますけれども、例えば温冷覚の検査が国外でも国内でも行わ
れたりしていますね。あるいは先ほどのような誘発脳波の検査もあるし、爪圧迫テスト
は確かに検者の主観的な判断で技量の問題もありますが、皮膚温よりはまだ判別性は高
いということもあります。例えばサーモグラフィーとか、そういう他の検査は、ここの
表現では全部ここから外しているわけです。これはそれでよろしいのですか。
○職業病認定対策室長
　温冷覚についてはＩＳＯなども検討していますか。
○原田委員
　いや、まだやっていません。
○職業病認定対策室長
　ただ、そういう議論もありますよね。
○原田委員
　これからですね。
○職業病認定対策室長
　ですから、そういうところを、むしろ先生方のご提案で、これを加えるべきだという
形で言っていただいたほうがいいと思います。
○原田委員　
　それは、例えば「必要に応じて」という表現が通達の中にありますね。そこのところ
はちょっと曖昧になるのですが、いろいろな検査でこの後も出てくるような検査もある
わけですから、その辺は確定的に書いてあるので、どうなのですか。
○職業病認定対策室長
　実は参考資料に挙げているものは、平成13年報告の中に出てきているものです。ただ
し、この検討会として先生方がどういう評価をされているのか分からなかったものです
から、もし原田委員が、この中でサーモグラフィーと組み合わせたほうがいいというご
提案をしていただければ、そういうふうにさせていただきます。
○原田委員　
　ただ、この辺の検討をこの検討会で本当はきちんとやらなければいけなかったのです
が、調査したデータの解析と意味づけの議論をずっとやっていたものだから、その議論
が全体にできていないですね。時間的にも年度末ということですから、もう少し、例え
ば現行の通達にあるような、その他の検査を必要に応じてとか何かそういうふうにしな
いと、非常に確定的になるのではないかと思ったのが１点です。
　あと、これは非常に細かいことなのですが、字句の誤り等はいろいろあります。31.5
が35Hzになったとか、全般にいろいろな問題があるのですが、それはテクニカルな問題
です。
　皮膚温の検査のときに、これは私の個人的な意見なのですが、現行では、室温が20～
23℃の部屋でとなっていますね。３℃の室温の変化は皮膚温に対して３℃以上の変動を
起こすのです。ＩＳＯ法では21±１℃というふうに１℃下げています。私の希望は、よ
り厳密な検査をするためには、いまの20～23℃というのはひどすぎると思いますが、こ
こに書けるかなと思いますけれども、それは私のコメントです。
○本間委員　
　これはちょっとお尋ねしておきたいことなのですが、この報告書に出てくるスクリー
ニング検査は、振動工具を使っている人たちが診断報告書というのを出した時にやって
いるのがスクリーニング検査かなと私はずっと思っていたのですが、これを読むと冷水
負荷検査を実施するとか、こういうふうに入ってきますね。実際問題、例えば１日10
人、15人と被検査の形で冷水負荷とかやっていけないですね。いままではずっと常温か
皮膚温でしか測っていませんので。
○梁井委員　
　さっき言った一次健診なのか二次健診なのか、鑑別診断なのか、いろいろあるわけで
す。だからスクリーニングと言われる一次健診であれば、今までどおり皮膚温だけでい
くとか、それでいいわけです。
○職業病認定対策室長
　それは健診の話ですね。
○梁井委員
　そうです。
○職業病認定対策室長
　いま、ここは労災の話をしているわけですから。
○梁井委員
　だから、その後の鑑別のところの問題になってきているわけです。
○髙山委員
　ですから、このスクリーニング検査と言っているのは、これは鑑別のほうに。
○梁井委員
　鑑別はよろしくない。
○職業病認定対策室長
　言葉がよろしくないということですか。
○梁井委員　
　スクリーニングと言う場合には、一次スクリーニングを指します。
○髙山委員
　違う言葉を使うということも、いけないということでしょうか。
○梁井委員
　そうです。一次検診というのは一次スクリーニングで、ただ皮膚温を測るようにする。
そこで異常が出た人に関して二次スクリーニングというか、精密検査をする。その中で
いろいろ問題が起こりますから。
○宮下座長
　例えば基本検査項目ということですか。
○梁井委員
　そうそう。
○宮下座長
　基本検査と精密検査と、そういうふうにしたらいかがでしょうか。
○梁井委員
　そうですね。そうしないと、これだけではわかりにくい。
○髙山委員
　私の所で、精密検査で握力が極端に低下している場合というふうに限局されてしまっ
ているので、その他のいろいろな要因もあると思いますから、その言葉を除いていただ
きたいのです。ほかの先生たちは別に、ただ精密検査として実施すると書いてあるだけ
なので。
○梁井委員
　そこのところは非常に、我々が鑑別するときに問題が起こるのです。10kg以下の人が
来られるわけです。そのときに全然萎縮もないし、末梢神経伝導速度も異常がないとい
う所見のときがあるわけです。そこをどう判断して決めるかです。
○髙山委員
　言われた点で、客観的な運動機能障害があるかどうかという判断をしなければいけな
い場合には必要だということなので、あまり限局して書いてしまうのはいかがでしょう
か。
○梁井委員
　それはワンクッションで、それはいいと思いますけどね。
○樋端委員
　先ほどの原田委員のＦＳＢＰ％のデータと基準が少し違っているわけです。同じこと
で、ここに参考資料として出ている宮下座長の皮膚温の評価の基準と、原田委員のＩＳ
Ｏ方式の基準の部分で、方法は違いますけれども負荷前については、少なくともある程
度一致させておかないとまずいのではないかと思います。ここら辺の問題も残されてい
ると思います。先ほど握力の話がありましたが、関節可動域は一定の基準になりますね。
グループの評価ということがあるのですか。
○梁井委員　
　握力も診ますけれども、いわゆる恣意的にいくらでもできるわけです。本当に協力が
得られればいい値なのですが、そこのところをどう判断するかが問題になっているわけ
です。握力が10kgなのに車を運転して来る、そんなこと実際問題できますかということ
です。整形の先生に尋ねたら、10kg以下であれば、まずドアを開けられないだろうし、
ハンドルも握れなくて切れないだろうという話です。そういう人が実際におられるわけ
です。そういう人をどう鑑別するかというところが問題になるのです。
○原田委員
　握力は、振動障害であった場合には循環系あるいは神経系の所見が普通はあります。
○梁井委員
　あると思います。
○原田委員
　だから、そうでなくて握力だけ低下するという振動障害の病態というのは、通常はあ
まりないと思います。
○梁井委員
　ないですね。
○原田委員
　だから、これは詳しく精査する状況ではないでしょうか。
○梁井委員
　普通、あり得ないと私は思います。
○原田委員
　そうですね。振動の影響はまず循環神経系から入りますね。
○樋端委員
　ちょっと話が違うのですが、これまでの経験から、例えば皮膚温検査あるいは冷却負
荷も含めて、検査の数値が林災防の基準なりその他の基準なりから見て明らかに異常が
あるけれども、ＦＳＢＰ％が正常だから認定が得られなかったというケースについて、
私自身何例か相談を受けたことがあります。だから、精密検査というところが独り歩き
してしまう可能性が、ずいぶんあるのではないかと私は心配しているのです。
○職業病認定対策室長
　そういうケースというのは、あるのですか。
○樋端委員
　あります。
○梁井委員
　逆に、林災防のデータが非常に厳しいという問題があるとは感じられませんか。
○樋端委員
　ですから、いま10℃ですから林災防の方法が違うのですが、林災防の基準を使って10
℃の評価をするとすれば、実際にはもっときつい評価をしなければいけないだろうと思
いますが、それでも冷水負荷などで幾分かの異常は認められるけれども、ＦＳＢＰが80
％を超えているから「異常なし」と判定するという事例は確かにあります。
○梁井委員
　逆もあるのです。少し低めに出ているという表現をされている方もおられます。だか
ら一定でないことはあるみたいなのですが、その点はまたいろいろ検討した方が良いと
思います。
○樋端委員
　逆の場合というのはよくわかりませんが、スクリーニングと精密検査の意味合いをき
ちっとしておかないと、まずいかなと思います。
○宮下座長
　どういう表現であっても基本的には、それこそいま委員が言われたように検査には一
定の限界があるし、最終的には総合的にということだと思います。ですから、ある病態
を100％診断し得るというのは基本的にはないわけですから、今後、表現はどういうふ
うになるかわかりませんが、少なくとも振動障害を理解しようとする方にとって、この
検査がどういうふうな位置づけであるかということだろうと思います。
○樋端委員
　宮下座長の報告でありましたように、いくつかの検査を組み合わせてより正確なとい
うふうなことがあるわけですので、精密検査というのが、例えばここのスクリーニング
で言えば皮膚温検査や冷却負荷、そして精密検査でそのほかの３つをやるということに
なっています。ですから、それらを組み合わせて正確度を高めようというのが宮下座長
のお話だったと思います。
　そうすると、スクリーニングで問題ありで、しかし十分立証されていないから精密検
査でやり、精密検査がマイナスだから駄目だというふうになってしまうと、精密検査と
いう中身が上位に置かれるということを心配します。
○本間委員
　それは認定業務に係わるのですね。
○樋端委員
　そうです。
○職業病認定対策室長
　そういう意味で、例えば原田委員のＦＳＢＰ％が55％というのが、１つのものが出ま
したね。これは国際的には60と言っている方もいますけれども、さらに今回の原田委員
の提案には含蓄があって、55～65あるいは65～75というのは国際的に見ればレイノーは
ないということで、レイノーが過去にあった方々はみんな大体60％に入ってしまうとい
うことからいけば、そこまでは至っていないけれども、何か末梢循環の所見が見られる。
それが先ほどのクラス１だとかクラス２だとか、こういう表現になっているのかなと私
は理解したのです。
　もちろん、先ほどデータを見せていただきましたが、検査の中には例外が出てきます。
ＦＳＢＰ100％でレイノーのある人は中にいるのかもしれません。ですから、それは検
査の限界だと思います。そのことを理解して実際の臨床家がどう診断を付けるかという
のは、また１つステージが上のレベルの話だと思います。
○樋端委員
　表現としてスクリーニングというのは、より多くの医療機関でやれるようにという配
慮が当然あるわけでしょうけども、実際にはそれだけ長くいくつかの検査を組み合わせ
てということが、この報告書の中身になっていますから、そうすると、それだけでは不
十分だからというふうになってしまって、どうなのでしょうか。
○宮下座長
　臨床家でない立場で、私が臨床の先生に申し上げるのは申し訳ありませんが、一般的
な疾病の診断法を、例えば確定診断に至る云々というふうなことで、それで確定診断が
下る場合もありますけれど、多くの場合はいくつかの検査をやって、しかも例外もある
ということでの理解は共通なのだろうと思います。ただ、我々が取り扱っているのは業
務上疾病か否かという側面があることを踏まえて、どういうふうに運用すべきかという
ことがあると言えばある。ただ、ここでの議論として検査のそういった取捨選択をして、
どういうふうに診断精度を高めるかというのは、やはり総合的にやっていただくという
のが根本になろうかと思います。
○原田委員
　今日は時間がありませんが、いまの議論は重要だと思うので続けて考えていく必要が
あると思います。先ほど皮膚温の話をされて、宮下座長の考えが報告書に参考として載
っていますね。これは私が関知していないときの検討会の話で、それはそれでよいかと
思いますが、ただ、この基になる論文を97年のIndustrial Healthに入れていますね。
あれを詳しく読む機会があったのですが、これはあまりにもスペシフィシティがよくな
いのです。相当によくない。そういうものであるわけです。あれはほとんど対角線上に
並んでいる。
○宮下座長
　ＲＯＣですね。
○原田委員
　ええ。それが１点です。それと77頁で２点ほどあります。これは大事なことだと思い
ますが、１点目は77頁の真中辺に、「さらに症例数を増やし、データを蓄積することに
よって有意に相関するという結果につながるものと確信する」とありますが、これはあ
まり科学的な表現ではないので、結果はやってみなければわからないわけです。私はず
っと気になっているのですが、今回の検討というのはいろいろな問題点があったわけで
すから、「さらに症例数を増やし、データを蓄積して、もっと診断意義についてさらに
明確にするという課題が残る」という表現にしていただければというのが私の提案です。
　２点目は、下から５行目に「各検査結果から、総合的に振動障害の有無、他疾患との
鑑別、及び振動障害の症度を診断すべきである」とあります。これは基本的には検査だ
けでなく、自覚症状あるいは医師による診察所見を含めた総合的な診断が医学の原則だ
と思うので、検査だけではないと思います。
　それと最後の３行は、行政的にはいろいろな判断があるだろうと思いますが、科学の
サイドから言うと、これは科学的にどうするかという判断をすべきなので、この３行は
まずいというか、これは本省のほうでどう考えるかということがあるかと思いますけれ
ども、この中に入れるのは医学的な検討の立場からするとまずいと思います。
○樋端委員　
　ここはあえて言わなくていいですね。
○原田委員
　これを私たちの意見として言うのですか。
○樋端委員
　そういうことですよね。
○原田委員
　私たちは科学的な判断ですべきで、行政は行政的な、司法は司法の判断があると思い
ますけれども。
○宮下座長
　わかりました。ありがとうございます。予定の時間が近づいてきました。今日は大変
重要なことを議論していただき、相関分析以降、評価の基準、検査を今後はどういうふ
うに取り扱っていくかということで、指摘の事項も種々いただきました。整理をさせて
いただいて、次回、もう一度全体についてご議論をいただきたいと思います。いま言及
のあった参考資料のところについても、お気づきの点がありましたらご意見をまた頂戴
したいと思います。以上、非常に精力的に議論していただきまして、次回までに整理し
て、できましたら事前に送っていただけますか。
○職業病認定対策室長
　それは各先生方から修文意見を、是非、早急にいただきたいと思います。私どものほ
うも今の議論を踏まえた上で先生方に送りますが、次回までに１、２回、キャッチボー
ルをやらせていただければと思います。よろしくお願いします。
○宮下座長
　事務局にお返しします。
○中央職業病認定調査官　
　次回は３月３日、午後２時から４時までとさせていただきますが、よろしいですか。
○宮下座長　
　ありがとうございました。
　
　
　　　　　　　　　　　　　　　　【照会先】
　　　　　　　　　　　　　　　　　労働基準局労災補償部補償課職業病認定対策室
　　　　　　　　　　　　　　　　　職業病認定業務第二係
　　　　　　　　　　　　　　　　　ＴＥＬ０３－５２５３－１１１１（内線５５７１）