平成十五年七月二十五日
第一 | レジオネラ症の発生を防止する対策の基本的考え方 | ||||||||||||||||
一 | レジオネラ症の発生を防止する対策の基本は、レジオネラ属菌が繁殖しやすい状況をできるだけなくし、これを含むエアロゾルの飛散を抑制する措置を講ずることである。特に、多数の者が利用する公衆浴場、宿泊施設、旅客船舶等の施設又は高齢者、新生児及び免疫機能の低下を来す疾患にかかっている者が多い医療施設、社会福祉施設等においては、入浴設備、空気調和設備の冷却塔及び給湯設備における衛生上の措置を徹底して講ずることが重要である。 | ||||||||||||||||
二 | これらの設備の衛生上の措置としては、次に掲げる観点から、構造設備及び維持管理に係る措置を講ずることが重要である。
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第二 | 入浴設備における衛生上の措置 | ||||||||||||||||
一 | 入浴設備における衛生上の措置に関する基本的考え方 近年、入浴設備は、湯水を再利用し、これを節約するため、ろ過器を中心とする設備、湯水を一時的に貯留する槽及びこれらの設備をつなぐ配管を含め、複雑な循環構造を形成することが多くなっている。これらの設備における衛生上の措置が不十分である場合、レジオネラ属菌による感染が発生しやすく、現に国内において、このような事例が報告されているところである。 レジオネラ属菌は、生物膜に生息する微生物等の中で繁殖し、消毒剤から保護されているため、浴槽の清掃や浴槽水の消毒では十分ではないことから、ろ過器及び浴槽水が循環する配管内等に付着する生物膜の生成を抑制し、その除去を行うことが必要である。 また、浴室におけるエアロゾルの発生をできるだけ抑制することによって、汚染された湯水による感染の機会を減らすことも必要である。 |
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二 | 構造設備上の措置 構造設備上の措置として、次に掲げる措置を講ずることが必要である。
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三 | 維持管理上の措置 維持管理上の措置として、次に掲げる措置を講ずることが必要である。
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第三 | 空気調和設備の冷却塔における衛生上の措置 | ||||||||||||||||
一 | 空気調和設備の冷却塔における衛生上の措置に関する基本的考え方 空気調和設備の冷却塔を発生源とするレジオネラ症は、国内では報告例は少ないが、海外では数多くの集団感染事例が報告されており、感染源として重視する必要がある。 冷却塔からの排気に含まれるエアロゾルは、外気取入口や窓を介して屋内に侵入し、又は、地上に飛散することから、冷却塔の設置又は修繕を実施する場合は、エアロゾルの飛散を抑制するための措置を講ずる必要がある。 冷却塔内では、冷却水が熱を放出してその一部が蒸発するため、冷却水中の炭酸カルシウムやケイ酸マグネシウム等の塩類が濃縮されたスケールと呼ばれる物質が冷却塔内の充てん剤等に析出し、微生物が付着しやすい環境を醸成する。また、冷却塔内は、日射、酸素の供給、大気への開放など微生物や藻類の繁殖に好適な環境となっているため、レジオネラ属菌が繁殖しやすい環境を提供することになる。そのため、スケール及びスライムの生成を抑制し、除去を行うことが重要である。 |
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二 | 構造設備上の措置 冷却塔を設置する際には、エアロゾルの放散量が少ない構造を持つものを採用したり、風向き等を考慮して、外気取入口、居室の窓及び人が活動する場所から十分距離を置くなどして、エアロゾルの飛散をできるだけ抑制すること。 |
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三 | 維持管理上の措置 冷却塔の使用開始時及び使用期間中は一月以内ごとに一回、定期的に冷却塔及び冷却水の汚れの状況を点検し、必要に応じ、冷却搭の清掃及び換水等を実施するとともに、一年に一回以上、清掃及び完全換水を実施すること。また、必要に応じ、殺菌剤等を冷却水に加えて微生物や藻類の繁殖を抑制すること。 |
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第四 | 給湯設備における衛生上の措置 | ||||||||||||||||
一 | 給湯設備における衛生上の措置に関する基本的考え方 給湯設備を発生源とするレジオネラ症は、国内では給湯設備が原因と推測される院内感染が報告され、海外では集団感染した事例もあることから、感染源として留意することが必要である。 給湯設備においては、湯温の制御がレジオネラ属菌による汚染を防止する上で最も重要である。 また、湯水が貯湯槽や給湯のための配管内で滞留することによってレジオネラ属菌をはじめとする微生物が繁殖しやすくなる。そのため、特に、循環式の中央式給湯設備においては、同設備に湯水が滞留することを防止するための措置を講ずることが重要である。 |
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二 | 構造設備上の措置 貯湯式の給湯設備や循環式の中央式給湯設備を設置する場合は、貯湯槽内の湯温が六十度以上、末端の給湯栓でも五十五度以上となるような加熱装置を備えることが必要である。また、滞留水を排水できるよう貯湯槽等には排水弁を設置するとともに、循環式の中央式給湯設備では、設備全体に湯水が均一に循環するよう流量弁等を設置することが必要である。 |
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三 | 維持管理上の措置 貯湯槽等に滞留している湯水を定期的に排水するとともに、一年に一回以上、貯湯槽等の清掃を実施すること。また、循環式の中央式給湯設備では、設備全体に湯水が均一に循環するように循環ポンプや流量弁を適切に調整することが必要である。 |
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第五 | その他の設備の衛生上の措置 入浴設備、空気調和設備の冷却塔及び給湯設備以外であっても、エアロゾルを発生させる機器及び設備について、第一の二に基づき、適切な衛生上の措置を講ずることが必要である。 |
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第六 | 自主管理 施設の管理者は、自主管理を行うため、自主管理手引書及び点検表を作成して、従業者等に周知徹底するとともに、施設の管理者又は従業者の中から日常の衛生管理に係る責任者を定めることが必要である。 |