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2013年2月13日 第12回厚生科学審議会感染症分科会感染症部会議事録

健康局結核感染症課

○日時

平成25年2月13日(水)10:00~12:00


○場所

国立感染症研究所共用第一会議室


○出席者

【出席委員(五十音順)】

青木委員 磯部委員 大石委員
岡部委員 小野寺委員 賀来委員
北村委員 倉田委員 小森委員
澁谷委員 廣田委員 深山委員
前田委員 蒔田委員 皆川委員
南委員 山田委員 渡邉部会長
西條参考人

○議題

(1)重症熱性血小板減少症候群(SFTS)について
(2)その他

○議事

○難波江補佐 定刻となりましたので、ただいまより第12回厚生科学審議会感染症分科会感染症部会を開催いたします。まず、本日の出席状況について報告いたします。本日は、味澤委員、白阪委員、竹内委員、林委員、古木委員、山川委員より御欠席の連絡をいただいております。また、岡部委員、南委員におかれましては遅れる旨の御連絡をいただいております。また、本日は参考人として、国立感染症研究所ウイルス第一部の西條部長に御出席いただいております。本日は、現時点で定足数の委員に御出席いただいておりますので、会議が成立していることを御報告いたします。また、事務局、健康局長、結核感染症課長は若干遅れております。ここからは、渡邉部会長に議事をお願いします。
○渡邉部会長 おはようございます。議事に先立ちまして、事務局より資料等の確認をお願いします。
○難波江補佐 資料の確認をいたします。議事次第、配付資料一覧、審議会委員名簿があります。資料1-1「重症熱性血小板減少症候群の発生について」、資料1-2「重症熱性血小板減少症候群について」、西條参考人提出資料、資料1-3「感染症法におけるSFTSの疾病分類について」、資料1-4「感染症法に基づく病原体等管理規制上のSFTSウイルスの分類について」、参考資料1「国内で初めて診断された重症熱性血小板症候群患者について」、資料2「新型インフルエンザ等対策有識者会議中間取りまとめ」、資料3「厚生科学審議会感染症分科会の廃止について」となっています。それから、お手元に本日付けのPress Releaseを配布しています。不足がありましたら、お申し付けください。なお、カメラ撮りはここまでとさせていただきます。
○渡邉部会長 よろしいでしょうか。では、本日の議題に入る前に、内容の確認をしたいと思います。まず、議題1として、先日報道されました日本国内で初めて確認された重症熱性血小板減少症候群(SFTS)の感染症法上の疾病分類についてです。併せて、こちらの原因ウイルスの病原体等管理規制上の分類についての議論をしていただきたいと思います。
 次に議題2として、新型インフルエンザ等対策有識者会議中間取りまとめと、厚生科学審議会感染症分科会の廃止に伴う、感染症部会の新たな設置について事務局から報告をしていただきたいと思います。委員の皆様には、円滑なる議事進行についての御協力をよろしくお願いしたいと思います。それでは、事務局より議題1の説明をお願いします。
○福島補佐 それでは、本日審議いただきます重症熱性血小板減少症候群(SFTS)について、本日までの経緯と、その背景について、資料1-1に基づき簡単に説明いたします。まず、SFTSは中国において2009年頃より発生が報告されるようになり、2011年に病原体であるSFTSウイルスが特定されるに至った新しいダニ媒介性の感染症です。中国以外の地域においては、これまでSFTSウイルスによる症例の報告はありませんが、米国では2009年にSFTSウイルスに近縁のハートランド・ウイルスによるSFTSに類似した疾患の発生が、2例報告されています。我が国においても、これまでSFTSの症例の報告はありませんでしたが、昨年の秋に、山口県の成人の方1名がSFTSにより死亡されていたことが、本年1月末に国立感染症研究所のウイルス学的及び病理学的検査により確認されました。これを受けて、厚生労働省では、1月30日付けで結核感染症課長通知を発出しまして、全国の都道府県等の衛生部局を通じ、医療機関に対してSFTS様の症状を呈し集中治療を要する、若しくは要した、又は死亡された患者がいらした場合は、情報提供していただくよう協力を要請したところです。SFTS患者の要件に合致する症例については、国立感染症研究所において確定診断のための検査を実施することとしています。
 部会資料の記載はそこまでですが、先ほど難波江からもお知らせしましたように、本日お手元に厚生労働省Press Releaseを追加資料としてお配りしています。ここにありますように、通知発出から本日までに医療機関から寄せられた症例のうち、愛媛県の成人1名及び宮崎県の成人1名の2症例、どちらの症例についても最近の海外渡航歴はなく、昨年秋に死亡されたと聞いていますが、この2症例が、SFTSであったことが、国立感染症研究所の検査により昨日確認されましたので、本日付けで全国の自治体に情報提供するとともに、Press Releaseを行っていますので、併せて報告させていただきます。資料1-1については、以上です。
○難波江補佐 ここで、健康局長が到着しましたので、御挨拶させていただきます。
○健康局長 健康局長の矢島です。遅れて申し訳ありません。国会の関係でバタバタしておりました。挨拶が終わりましたら退席をいたします。このような大事な会議で、本当に申し訳ありませんが、よろしくお願いいたします。
 本日は、先生方、大変お忙しいところ、急遽お集まりいただきまして大変申し訳ありませんでした。ただいま、事務局から報告いたしましたように、SFTS、重症熱性血小板減少症候群という形で、先日山口でも症例が出ました。今朝発表いたしましたが、愛媛と宮崎県でもやはり同じような症例が遡って確認されたということで、すごく大事な疾患です。これについて、法的な位置付けがまだ明確になっていませんので、そのようなものをしっかり今のうちに、マダニが活動を始める春までに、可能な限り対応を進めることが大事だと考えております。そのような意味で、委員の先生方から忌憚のない御意見を賜れればありがたいと思っています。
 そのほかの議題として、昨年の8月から分科会も含め計19回にわたり、新型インフルエンザ等発生時における対策を検討してまいりました。その有識者会議の中間取りまとめがこの度公表されましたので、その御報告もしたいと思います。それから、感染症分科会を廃止して、新たに感染症部会を設置することが決まりましたので、その御説明もしたいと考えております。バタバタして大変申し訳ありませんが、委員の先生方、何とぞよろしくお願いいたします。大変恐縮ですが、私はここで失礼いたしますことをお許しいただければと思います。よろしくお願いいたします。
○渡邉部会長 続いて、資料1-2に基づいて、西條参考人からSFTSの概要を説明していただきます。
○西條参考人 国立感染症研究所ウイルス第一部の西條です。本日は、この席で重症熱性血小板減少症候群の説明と、山口で診断されたSFTS患者の概要について、皆さんに報告させていただきます。この重症熱性血小板減少症候群(Severe Fever with Thrombocytopenia Syndrome)という名前ですが、以下SFTSと呼びます。この疾患は、2011年の『The New England Journal of Medicine』に、中国のCDCからこの論文が発表されました。遡ること2009年から、この特異な疾患の存在が認められ、中国の研究者の中でこの病原体や臨床経過について詳細な研究がなされて、2011年に初めて報告されたということです。
 2枚目にSFTSの概要を書いております。1つ目は、この病原体はダニ媒介性の感染症であること。それから、2009年中国湖北省や河南省の山岳地域で患者が発生していること。当初ヒト顆粒球アナプラズマ症などの感染性疾患が疑われました。また症状は、発熱、胃腸症状、検査所見として血小板減少と白血球減少が比較的高い割合で見つかることです。
 この論文の報告によりますと、171名中21名が亡くなられて、死亡率は12%です。ウイルスが血液から分離され、そのウイルスの性状を解析したところ、ブニヤウイルス科フレボウイルス属に分類される新規のウイルスであることが明らかになりました。そこで、SFTSウイルスという名前が提唱されています。現在のところ、このウイルスの名前については、国際的に認められていませんが、広くこの名前が用いられています。
 その後、昨年から最近において、血液や体液との直接的接触によるヒトからヒトへの感染事例の報告があります。また、血液中には比較的高い感染性ウイルスやウイルスコピー量が見つかることも明らかになっています。中国の流行地域での調査によりますと、フタトゲチマダニからこのウイルスの遺伝子が増幅されたり、ウイルスが分離されているところです。
 3枚目の資料です。これは、この論文に発表されているデータですが、中国における流行地域、現在のところ6つの省でこの患者が報告されています。また、ウイルスはブニヤウイルス科フレボウイルス属で3本のRNAを持っていますが、それぞれのRNA遺伝子の塩基配列を決定して系統樹解析を行ったところ、ブニヤウイルス科フレボウイルスの中でもSFTSウイルスは独立したクラスターを形成していることから、新規のフレボウイルス属であることが、この結果より分かっています。
 4枚目は、フタトゲチマダニの写真です。これは、日本全国、北海道は少ないか又は存在しないと言われていますが、本州、四国、九州に分布していることが分かっています。ただし、日本におけるダニ又はダニの種類と、このSFTSウイルスの関連については、今後の研究を待たなければ分からないと、私は考えています。
 次のページに移ります。日本で初めてSFTSと診断された患者について報告します。この患者は、海外渡航歴のない成人の女性患者です。時期及び場所は、2012年の秋、山口県で発症しています。症状としては、発熱、嘔吐、下痢、その中では黒色便といい、下血、出血があったと考えられます。検査所見としては、白血球数、血小板数ともに著明に低下しており、またAST、ALT、LDH等の上昇とCKの高値が認められ、肝機能等の異常も出現していたと考えられます。尿検査では、血尿、蛋白尿が認められています。骨髄穿刺検査により、マクロファージによる血球貪食を伴う低形成髄の所見も認められています。この所見は、サイトカインストーム又は免疫能の非常に高い活性が誘導されて、その結果血小板や白血球が少なくなったのではないかと考えています。
 ウイルス学的な検査としては、この患者から採取された血液からウイルスが分離され、そのウイルスの性状解析を国立感染症研究所ウイルス第一部で行っています。その結果、この分離されたウイルスは、中国で報告されたSFTSウイルスと同様の性質を持っていることが明らかとなりました。また、急性期患者血清からSFTSウイルス遺伝子が同様に検出されています。これは、右下の図に簡単に書いていますが、血液から遺伝子が増幅されています。また、SFTSウイルス抗体に対する抗体検査を行いましたが、陰性でありました。これは、抗体誘導が進む前にお亡くなりになられたことを示していると思います。
 分離されたウイルスの遺伝子塩基配列を用いて系統樹解析を行ったところ、中国分離株とは独立していることが明らかとなりました。このことは、もともとこのSFTSウイルスが日本に存在していたことを示唆しているものと考えます。病理学的な検査において、リンパ節や肝臓等の臓器にSFTSウイルス抗原が検出されています。
 以上の臨床経過、分離されたウイルスの性状解析の結果、この患者は重症熱性血小板減少症候群で亡くなられたと考えられます。今後必要な調査・研究として、これは抜粋ですが、今後日本におけるこの感染症の疫学調査、感染リスクの評価、診断法の地方衛生研究所への整備、診療・診察のあり方の検討、治療・予防法の開発等、いくつか、又はこれ以上に必要な事項があろうかと思いますので、今後このような対策が必要と考えています。以上、簡単ですが、報告を終わります。
○渡邉部会長 続いて、資料1-3と1-4に基づいて、事務局より説明をお願いします。
○福島補佐 その前に、申し訳ありませんが、先ほど事務局からお配りした「お知らせ」というタイトルの1枚紙ですが、クレジットが健康増進課となっていますが、こちらは愛媛県が発出したPress Releaseですので、その旨をお知らせいたします。
 それでは、資料1-3に基づき、感染症法におけるSFTSの疾病分類について説明いたします。1ページです。先ほど紹介しましたように、現在医療機関からのSFTSの症例報告は、結核感染症課長通知による協力依頼に基づくものとなっており、法的根拠に基づくものではありません。SFTSの発生の報告は、国内では現在のところ山口県1件、愛媛県1件、宮崎県1件の計3件となっていますが、先ほど西條先生の説明にもありましたように、山口県の症例から検出されたSFTSウイルスの遺伝子配列については、中国の流行地域で検出されているSFTSウイルスからは遺伝的に独立しているということで、このSFTSウイルスが以前から日本国内に存在していた可能性が示唆されること。また、SFTSウイルスを媒介し得るマダニ類が、日本国内全域に広く分布していることから、今後もSFTSの発生が継続して報告される可能性があります。
 このことから、SFTSの国内での発生、まん延を防止するためには、本病を感染症法の対象疾病に位置付けることにより、医師による届出を協力依頼によるものではなく、法的根拠に基づき確実に実施していただき、SFTS発生状況を迅速かつ的確に把握するとともに、必要な措置を講ずる必要があると考えられます。以上のことから、本部会におかれましては、SFTSを感染症法の対象疾病に加える必要性について御審議いただきたいと考えています。
 続いて、2ページです。こちらに示す表は、感染症法において疾病分類ごとに実施できる主な措置についてまとめたものです。感染症法においては、感染症は一類から五類及び新感染症、指定感染症等に分類されます。まず、これら全てについて医師による届出と、積極的疫学調査を行うことができるようになっています。一類、二類、三類の感染症の患者に対しては、表の中程にありますが、健康診断の勧告や就業制限といった措置を講ずることができるようになっています。また、一類及び二類感染症については、患者に対して入院の勧告等の措置を実施することができます。さらに、一類感染症が発生した場合には、建物の立入制限・封鎖、交通制限といった措置を取ることができるようになっています。一類感染症と一部の二類感染症については、疑似症患者に対して、また一類感染症については、病原体を保有しているが症状が出ていない無症状病原体保有者に対しても、ただいま御紹介したような入院の勧告措置を取ることができるようになっています。
 このように、一類感染症から三類感染症については、行政による強権的な措置を取ることが可能となっていますので、これらに分類される感染症を規定する場合は、一番上の疾病名の規定方法の欄に記載がありますが、法律で規定することとなっています。一方、四類感染症については、主として動物や飲食物等を介して人に感染する感染症が分類されています。そのため、消毒や媒介動物の駆除といった対物措置を取ることができるようになっています。また、五類感染症については、最初に述べましたように、7日以内の医師の届出や、積極的疫学調査の実施を行うことが可能になっています。このように、四類感染症、五類感染症については、一類、二類、三類感染症のように、入院勧告や就業制限等の強権的な措置の対象とはなっていませんので、代表的感染症のみを法律で明示し、それ以外のものについては、四類感染症については政令で、五類感染症については省令でそれぞれ規定することとなっています。
 新感染症ですが、こちらは病原体が今だ明らかになっていない未知の疾病に対するものですので、今回の場合は該当しませんが、規定が必要な場合には大臣がその旨を公表し、その後政令で規定されることになります。また、指定感染症については、現時点で一類から三類の感染症に分類されていない感染症で、集団発生等をして、緊急に強権的な措置を講じなければならなくなった場合に、時限的に期限を設定して指定されるもので、政令で規定をすることとなっています。これら新感染症と指定感染症については、一類から三類感染症に準じた措置を取ることができるようになっています。
 続いて、3ページです。こちらは、現状、どの感染症がどの疾病の類型に分類されているかを一覧表にしたものです。字が細かくて大変恐縮ですが、こちらは御参考程度にしていただければと思います。
 4ページを御覧ください。こちらは、本日の西條先生からの御説明や、論文等で明らかになっている科学的事実をまとめています。1つ目ですが、今回日本の患者の血清から検出されたSFTSウイルスは、中国で分離されているウイルス株とは遺伝的に独立しており、以前からこのSFTSウイルスが国内に存在していた可能性が示唆されます。また、SFTSへの感染は、主にマダニに咬まれることによりますが、SFTSウイルスを媒介し得るマダニ類は日本国内に広く分布しています。中国の状況ですが、中国における患者の約97%は、森林・丘陵地域に居住する農作業従事者とされています。なお、標準予防策を取らずに患者の血液や体液に直接接触したことによる、医療機関関係者等の間での感染事例も報告されています。最後に、中国CDCとWPRO(WHO西太平洋地域事務局)がこれまでに公表している論文のレビューやサーベイランスの結果に基づいて実施したリスク評価においては、中国におけるSFTSの公衆衛生への影響は軽微で、疾病の広がり方を加味しても公衆衛生上のリスクは低~中程度としています。
 5ページです。以上申し上げたような現在までに判明している科学的事実に鑑みまして、SFTSの日本国内での発生・まん延の予防を図る上では、まず医師による迅速な届出。必要に応じて患者周辺でのSFTSの発生状況の調査やSFTSウイルスを保有するマダニ類の分布調査等、積極的疫学調査の実施、また、中国では、個人防御なしに患者の血液・体液に直接触れて感染した事例が知られていることから、医療機関における標準予防策の必要性について周知徹底を図ることといった措置が必要になると考えています。
 今申し上げた内容の措置については、感染症法上の四類感染症に規定することで実施することが可能となることから、重症熱性血小板減少症候群(SFTS)については、入院の勧告、就業制限といった措置が念頭におかれた一類から三類感染症ではなく、四類感染症に指定することが適当ではないかと考えていますが、この点について部会で御審議いただければと思います。
 続いて、資料1-4に基づいて、感染症法に基づく病原体等管理規制上のSFTSウイルスの分類について説明いたします。1ページです。感染症法に基づく病原体等管理規制では、人為的な感染事故や病原体等の盗取・盗難等を未然に防止することを目的に、病原体を選定し、一種から四種に分類した上で、所持等に関する規制を行っています。
 3ページには、現行の病原体等管理規制における対象病原体とその分類を示しています。左から、それぞれ一種病原体、二種病原体、三種病原体、四種病原体となっています。一種病原体には6つの病原体、二種病原体には6つ、三種病原体には23、四種病原体には17の病原体が分類されています。ここに分類される全ての病原体については、この表の一番下の四角い枠にありますように、それぞれの分類に応じた施設の基準、保管、使用、運搬等の基準を遵守すること、また、厚生労働大臣に対する報告、立入検査の受け入れ、改善命令に対する対応等の義務が課されています。それに加えて、真ん中の三種病原体については、病原体を所持することになってから7日以内の厚生労働大臣への届出、それから施設外に病原体を運搬する場合の公安委員会への事前の届出等が課されます。その左隣りの二種病原体については、所持する場合には厚生労働大臣に事前の許可を受ける必要があります。一番左の一種病原体については原則所持が禁止されています。すなわち、この表の中の赤枠で囲まれた一種、二種、三種病原体については、どの機関がどの病原体を所持しているか国が把握していることとなります。一番右側の四種病原体については、所持する際に届出や事前の許可は必要ありませんが、この四種病原体の所持者は先ほど申し上げた施設の基準、使用、保管の基準を遵守していただく必要があります。これらの具体的な病原体の選定と分類については、国際的な規制の動向や、病原体等の安全管理の必要性、それから病原体が引き起こす感染症の重篤性、例えば治療法の有無や致死率、感染のしやすさなどを総合的に勘案して区分しています。この考え方をもう少し詳細に説明したものが、4ページの表になります。
 例えば、一種病原体については、現在我が国には存在していないもので、治療法が確立していないものや、国際的にも規制する必要が高いとされるもの。二種病原体については、一種病原体ほど病原性は強くないが、国民の生命・健康に重大な影響を与えるもので、近年テロに実際に使用されたもの等が含まれます。また、三種病原体については、二種病原体ほどの病原性はないが、人為的な感染症の発生を防止する観点から、所持の届出をさせ、常時所持状況を把握する必要がある病原体が含まれます。ここに、四類感染症に分類される動物由来感染症の病原体の多くが含まれています。最後に、四種病原体には、我が国の衛生水準では死亡にまでは至らないような病原体ですが、人為的な感染症の発生を防止するために保管等の基準を遵守してもらう必要がある病原体が含まれています。
 1ページに戻ります。3)です。今回話題になっているSFTSウイルスについては、2011年に特定されたばかりの新しい病原体で、国際的にも、例えば国際ウイルス分類委員会でも分類されておりませんし、米国の連邦規制基準をはじめとする公衆衛生対策を目的とした諸外国の病原体等管理規制においても規制の対象となっておりません。
 2ページの4)です。このSFTSウイルスについては、国立感染症研究所においては、SFTSウイルスのバイオセーフティレベルを、患者の致死率が比較的高いものの、空気感染・飛沫感染の可能性が低いこと、実験室で病原体を取扱う限りにおいては実験室感染のリスクは低いと考えられることなどから、BSL3に分類されています。
 5ページを御覧ください。こちらはSFTSウイルスの分類について、簡単に模式図で示したものです。右側の一番上にSFTSウイルスを赤字で書いていますが、SFTSウイルスはブニヤウイルス科のフレボウイルス属に属していまして、同じフレボウイルス属には蚊が媒介するリフトバレー熱ウイルスが含まれています。また、ブニヤウイルス科にはほかに4つの属がありますが、ハンタウイルス属には主にげっ歯類が媒介する腎症候性出血熱やハンタウイルス肺症候群の原因ウイルスが含まれます。また、ナイロウイルス属にはダニが媒介するクミリア・コンゴ出血熱の原因ウイルスが含まれています。これらは、人に病原性を示すウイルスなのですが、ブニヤウイルス科には、そのほかアカバネ病やシュマレンベルク病など、家畜に疾病を引き起こすウイルスが含まれるオルソブニヤウイルス属や、植物に病気を引き起こすウイルスが含まれるトスポウイルス属などがあります。
 次に、6ページです。これは、先ほど示した3ページ目の図と同じものです。これに、SFTSウイルスと同じブニヤウイルス科に属する病原体を赤で下線を引いています。また、SFTSウイルスと同様にダニが媒介することによって伝播する病原体には、赤色で塗りつぶした○が頭に付いています。これを御覧いただくとお分かりいただけますように、ブニヤウイルス科に属する腎症候性出血熱ウイルス、ハンタウイルス肺症候群ウイルス、リフトバレー熱ウイルス、またダニが媒介するダニ媒介脳炎ウイルス、日本紅斑熱リケッチア、ロッキー山紅斑熱リケッチアといったもの、全てBSL3なのですが、感染症法の病原体管理規制においては三種病原体に分離されています。ちなみに、同じブニヤウイルス科でナイロウイルス属に属するクリミア・コンゴ出血熱ウイルスについては、国際的にBSL4とされていまして、感染症法の病原体等管理規制でも一種病原体に分類されています。
 7ページを御覧ください。こちらの表は、各病原体の分類ごとに課される措置について星取り表のように一覧にしたものです。一種から四種の病原体については、全てそれぞれの分類に応じた施設の基準、保管等の基準、事故が起きた際の報告の義務等がかかってまいりますが、四種病原体と三種病原体の大きな違いは、三種病原体を所持する場合は、厚生労働大臣への届出が必要となる点です。その他、三種病原体では、取扱時に誰がどのように使用した、誰が実験室に出入りしたといった記帳や施設外へ運搬する際の事前の届出が必要となります。また、二種病原体になりますと、さらに所持する際の事前の許可が必要になります。また、感染症発生予防規程の作成や病原体等取扱主任者の選任等も課されます。一種病原体は原則所持禁止ですが、二種病原体と同様の義務が課されてまいります。
 最後に、8ページにこれまで説明した内容を簡単にまとめています。1)SFTSウイルスは2011年に初めて特定された病原体であり、国際的にも未だ規制対象とはなっていませんが、同じくブニヤウイルス科に属するリフトバレー熱ウイルスや腎症候性出血熱の原因ウイルス、同じくダニ媒介性疾患の病原体である日本紅斑熱リケッチア等はBSL3で、感染症法上は三種病原体等に分類され国内では規制されています。
 2)また、国立感染症研究所では、安全管理の必要性、感染の重篤性等を総合的に勘案し、SFTSウイルスのバイオセーフティレベルをBSL3に分類しています。以上を踏まえて、SFTSの疾病の特徴やこれまでの病原体等管理規制での選定・分類状況を勘案しますと、SFTSウイルスについては、国によるウイルスの所持の把握、施設における病原体の取扱時の記帳、運搬の届出等の措置が可能となる三種病原体等に指定することが適当ではないかと考えていますが、先ほどのSFTSの疾病分類の件と合わせて部会で御審議をいただければと思います。事務局からの説明は以上です。
○渡邉部会長 新しい病原体及び疾患が見付かったわけですが、これからの議論としては、まず、この疾病及びウイルスについての御質問をいただきます。その後、疾病分類が事務局から提案されたものでよいのか、続いて、病原体管理規制上も事務局から提案されたことでよいのか、その3段階で議論したいと思います。
 まず、この疾病等に関しての御質問等がありましたらお願いいたします。
○小森委員 初歩的なことで、議論の前にお聞きしたい点が2、3あります。確認ですが、Press ReleaseやQ&Aには「フタトゲチマダニなどマダニ」という記載になっていますが、中国の例等ではフタトゲチマダニ以外のマダニからの感染があったのかどうか。それから、野山といった所で作業されるような方、あるいは通常の行楽等で行かれる方も当然あるのですが、私の乏しい知識では、マダニは、特にイヌ等ペットなどで寄生するという例も多々ある。そういうことになりますと、我が国においては都市生活の中で自宅等においてイヌを飼ってる方がたくさんいらっしゃると思うのですけれども、そういったことについては、我が国においては駆虫がしっかりしているから余り問題がないという認識なのかどうか、ということ。
 もう1点は、全く違うのですが、標準予防策のことです。今の御説明ですと、血液等はあり得るけれども、そのほかの感染経路は比較的ないということなので、標準予防策については特段のオプションなし、いわゆる通常のスタンダード・プレコーションという考えで医療機関はよろしいのか。このことについて教えていただきたいと思います。
○渡邉部会長 マダニに関しては事務局ですか。西條さんとどちらがいいですか。
○情報管理室長 マダニについてお答えします。中国でも、フタトゲチマダニだけではなくて、調べているものでは、オウシマダニという名前も出ています。ただ、全部を全部、中国も調べているわけではないので、調べればもう少し分かってくるものもあるかもしれません。
○渡邉部会長 それから、イヌ等のペット等に関してですね。
○情報管理室長 もちろん、ダニ、野山のマダニはヒトにも取り付きますし、ペット、家畜、野生動物、野生動物は多いと思いますが、いろいろな動物から吸血することで生きているものなので、当然、野山を歩いたような動物には付いていることは考えられると思います。ただ、どれだけマダニがウイルスを持っているのかなど、そういったことは全く分からないというのが現状です。基本的には、人間の体にマダニが付いたら、もし分かれば、それを注意することが一番大事な予防策ではないかと考えています。
○渡邉部会長 標準予防策で、特別にアディショナルな何かを加える必要があるのかどうかについては。
○西條参考人 この感染症は、はっきりしているのは、空気感染や飛沫感染で感染が拡大するようなことはまずないというのが1つです。ヒトは、ウイルスを持っているダニに咬まれて直接ウイルスが体内に入るケース、このような形で感染すると思われます。今回、患者さんを調べさせていただいた中で、やはり血液中には多量のウイルスが存在していることが明らかになっています。ただ、先ほども説明しましたが、中国におきましては、血液や体液に直接触れた方の中でヒトからヒトへの感染が報告されています。ですから、医療機関におきましては、手袋、ガウン、マスク、必要なときにはゴーグル等をして、標準予防策をしっかり徹底すること、又は接触予防策を徹底することで、院内感染又は医療者への感染は防げるものと考えています。ただ、先ほども御説明しましたが、なかなか死亡率の高い感染症でありますので、診断がついた限りにおいては、しっかりとした対策が必要だと考えています。
○渡邉部会長 よろしいですか。
○小森委員 ありがとうございました。このような新興感染症ができて、2例目、3例目、そして本日Press Releaseを行ったということをお聞きしましたけれども、野山はもちろん、特にペットを飼っていらっしゃる方からの過度の不安が懸念されますので、その辺りの状況を正確に把握した上で、国民の方々への正確な情報提供が求められると思います。是非よろしくお願いします。
○大石委員 感染症情報センターの大石です。ウイルス学的な観点でお聞きしたいのです。患者血清中に10^3~10^9と非常に幅広いレベルのウイルス量がある。これは急性期のデータだと理解してよろしいですか。
○西條参考人 はい、そのように考えていいと思います。低い場合も、その患者さんにおいては高い時点があって下がってきているのか、又は上がる途中なのかで幅があるということです。
○大石委員 今回の3症例は全て亡くなっておられるのですが、大体ウイルス量はどの程度であったかを教えていただけますか。
○西條参考人 今回の患者さんの検体につきましては、リアルタイムPCRの定量的PCRは実施しておりませんので、コピー数等は分かりません。日本株の塩基配列に基づいた、それに合わせた定量的PCRをこれからしっかりと設計しなければならないので、現時点では定性的なPCR検査で診断しています。
○大石委員 もう1点よろしいですか。亡くなられていない中国のケースもあるわけですが、ウイルス量と重症度というのは、やはり相関すると考えてよろしいのでしょうか。
○西條参考人 SFTSに関しては、そのような報告はないので分かりません。ほかの感染症ですね、ウイルス血症レベルと予後との関係は一般的には関係のある場合もある。ただ、このSFTSについては今のところ全く情報はありません。
○賀来委員 東北大学の感染制御学の賀来です。今の小森先生の御質問とも重なりますが、私も標準予防策でよろしいのではないかと思います。ただ、西條先生もおっしゃったように、体液、いわゆる血液以外の尿とか便からも排出されている可能性があると思うので、可能であれば標準予防策にプラス接触予防策を取っていくかどうかが、多分今後の議論になるのだろうと思います。
 それから、この3症例について今分かる範囲で教えていただきたいのですが、今後、医師による届出を積極的に法的にも設けることになったときに、臨床経過といいますか。例えば、『Journal of Infectious Disease』などの論文が12月、1月と相次いで出ているのですが、発熱の程度が39~40℃ぐらいと記録があります。分かっている範囲で結構なのですが、発熱の程度が例えば7、8℃ぐらいのものなのか、あるいは9℃を超えるような熱があったのか。もし今3症例で分かっていれば是非教えていただきたい。これが1点です。
 先ほどの小森先生の御質問とも重なるのですが、患者を診察して病歴を取るときに、例えば行楽に行ったことがあるかとか、あるいはペットなど、そういったものも含めて判断すると思うのです。この3例の患者さんに、ペットを飼っていたかあるいは行楽に行ったような既往があったかというようなことがもし分かれば、分かる範囲で教えていただきたい。
 もう1点、この新興感染症は、昨年度からのいろいろな論文を見てみますと、発熱と消化器症状がまず出てきて、呼吸器症状は余り出ていないということなのです。一部、血尿など尿の症状も出るのですが。この3例の患者さんの中で、お分かりになっている範囲でいいのですが、まず発熱が最初に出てきて、それから、悪心・嘔吐、消化器症状が出て、例えば1週間以内にそれが急激に変化したなど、その臨床経過が分かれば、今後その情報の共有化ができれば、医師が届出をするときに非常に明確に分かると思うのです。この3名の方の、今言ったような点がもしお分かりになれば教えていただきたいと思います。
○西條参考人 まず、臨床経過について、その発熱のレベルですが、一貫して例えば39℃を超えるなどのことではなかったということです。3人の患者さんについては、まだ、特に後から診断がついた方については詳細な情報を持ち得ておりませんので分かりません。はっきりしているのは、初期の症状では、発熱、倦怠感、消化器症状等、一般的ないわゆる呼吸器感染症と全く変わらない状態で、当初は分かっていないというだけなのです。御質問にありました経過ですが、発症して発熱してから、大体1週間、5日など経ってくると、非常に不安定になってきて急激な転帰を取っているというようなことだったと記憶しています。
○賀来委員 分かりました。
○西條参考人 それから、ペット等については、まだしっかりと情報をいただいていないところもありますので、これについてはしっかりと検討した上で、お答えできる機会があればお答えしたいと思います。
○賀来委員 疫学的な情報として、臨床経過がある程度把握できると、診察している医師として、ある程度疑うことができますし、是非ともその辺りの詳細な調査をお願いしたいと思います。
 もう1点、抗体の検査についてです。今後ですけれども、この3例の方の御家族の方とか、あるいは診察したドクターやナースの抗体検査は今後される予定ですか。それは非常に疫学的にも重要な、いわゆる不顕性感染も含めた感染リスクにもつながっていくと思います。是非とも、その点もできる範囲の中でお願いしたいと思っています。
○情報管理室長 賀来先生に御指摘いただいたようなことも含めて検討しているところです。また御報告できる機会があればと思います。よろしくお願いいたします。
○山田委員 中国のデータについてです。1つは、リザーバーが分かっているかということです。もう1点は、今回の患者さんの1例目は剖検に回っていると思いますが、ダニの刺し口が見付かったかどうか。
 それと、3例の方々の居住地域や職業等で、疫学的に、中国でいえば「山間部」という言葉が出てきていましたが、そういう、居住地域等についての情報で何か共通項目があるかどうか、そのようなことがもし分かれば知りたいということ。
 それから、これは臨床的にラッシュが出るのかどうか。紅斑熱とかダニ媒介性のリケッチア症と臨床的に区別がついているのかどうかお聞きしたいのです。
○西條参考人 1例目の患者さんにおいてダニの刺し口があったかについては、そのような事実は見付かっておりません。2例目、3例目についても詳細を把握しておりませんけれども、ダニに咬まれたというエピソードがあったという連絡はありません。また、論文から言いますと、中国の場合においてもダニに咬まれた既往がある方というのは実は3分の2程度で、刺し口等に気が付いていない又はない方もおられます。
 リザーバーについての御質問についてです。中国の研究におきましては、ヒツジやウシ、イヌ等において比較的高い抗体の保有率が見付かっていますので、ダニとそのような動物の間で感染環が成立している可能性があろうかと思います。日本における状況については、今後の研究・調査等を待たなければ分からないと思います。その他の質問については。
○渡邉部会長 職業とか、山間部などそういう居住地域との関係は分かりますか。
○情報管理室長 実は、まだ厳密に3名の比較等が行われていません。なるべく早くに、この3名の居住地のダニの状況など、そういったことを調べて検討させていただきたいと考えています。
○渡邉部会長 中国でもアナプラズマか何かに間違われた報告が最初はペーパーにも出たのです。そういう意味では、ラッシュも含めたほかのダニ媒介性疾患との鑑別が。最初はSFTSと分かっていないわけですけれども、死んだ患者さんは、ほかのダニ媒介性疾患が疑われたのかどうか、その辺のことは分かりますか。
○西條参考人 この第1例目の患者さんにおきましては、やはりリケッチア症も、日本紅斑熱等を主治医の先生が疑いまして、感染研でそれらの検査を実施しています。その中で、陰性であったという報告を感染研から出しています。その後、ウイルス分離等の検査結果が少し時間を置いて段々明らかになってきたので、ウイルス学的な診断が遅れたということであります。
 ラッシュ、皮疹などの所見は、今回のIASRの報告にも書いておりますが、明らかな皮疹等は出ていません。先ほども申しましたとおり、初期の症状においては特にほかの熱性疾患、感染性疾患と何ら変わることがないので、臨床症状からこの感染症を疑うことは比較的難しいということが言えると思います。
○北村委員 日本家族計画協会の北村です。感染患者の血液・体液との接触ということが書かれていますけれども、具体的にどういう事例なのか。医療従事者の感染なのか、あるいは性的接触のような形での感染があったのか、ないのか、教えていただけますでしょうか。
○西條参考人 先ほども言いましたとおり、これは2011年に初めて報告されて、ヒトからヒトへの感染報告についてはここ数箇月の間に報告が出てきています。どういう形で感染するかと言いますと、中国の事例では、このような症状で入院された後、何らかの事情で家に帰られることがあって、御自宅で介護をした御家族の中で感染していることが非常に多い。その中には、血液に直接触れていること、それから、気管内挿管をしたその管を取る作業をした方とかです。ですから、気管内の分泌物の中にも多分ウイルスがいるだろうと言われています。それから、御遺体を処理した方とかですね、直接触れて、血液や体液に触れた方の中で感染しているということです。逆にはっきりしているのは、直接触れていない人の間で感染が成立している方はいないということも、限られた報告ですけれども、あります。以上、実際にはそういうことです。
 医療関係者の中での感染報告は、明確なものはないように思いますけれども。メインは、家族内の、又は、介護に当たった方、そのような方の感染だったと思います。
○北村委員 もちろん、いたずらに不安をあおるわけにはいきませんが。ということは、性的接触もあり得ると考えていいのでしょうか。
○西條参考人 あり得ると思います。ただし、報告はありません。ほかの感染症では報告されていますけれども、このSFTSに関しては、あり得るとは思いますが、報告はありませんので、そのリスクについては現状は分かりません。
○岡部委員 川崎市衛生研の岡部です。今の話題は新しいダニ媒介性のウイルスですが、国内にはかなりのダニ媒介性疾患があって、報告がうまくいっていないところもあるのではないかと思うのです。つまり、届出ができていない、診断ができていない。中には重症例もあるので、この際と言うと大変申し訳ないのですが、ダニ媒介性疾患がどのようなものであるか、それから、早期診断と、場合によっては治療が可能なものもあるわけなので、その辺のコミュニケーションを併せてやっていただければ、不安ということも含めて、よろしいのではないかと思います。
 2点目です。現在は西條先生の所に検査をお願いしなくてはいけないと思いますが、実際にどのぐらいの時間でできて回答が出てくるのか。それから、後の話題だと思いますが、地研に対する検査の強化がいつぐらいにできるのか、その辺も併せて可能であれば教えていただきたいと思います。
○西條参考人 初めのほうの、検査の時間等についての御質問にお答えします。現在のところは、検体を受け取った場合に、実は毎日この検査をできる状況にはまだないのですが、1週間に2回程度の日にちを設けて対応しますので、検体を受けたら3日以内にはお返しすることができるのではないかと思います。急性期の患者さんの場合におきましては、PCRやリアルタイムPCR等が整備されたときには、引き受けたときには迅速に対応して、依頼された方にその結果を早めにお返しするようにと考えています。先ほど、2日か3日かかると言ったのは、PCR検査のほかに抗体検査等を行う場合です。ですから、血液の中にウイルスがいるかどうか等については比較的早く皆さんにお返しできる、又はそのようにしたいと、ウイルス第一部としては思っています。
 第2点目については、中島先生お願いします。
○情報管理室長 地方衛生研究所等での、感染研以外での検査体制の整備については、今般の事例の発生を踏まえまして、研究班に至急全国でできるPCRの方法等でどれが一番適切なのかの洗い出しをお願いしながら、作ったものが本当に地衛研でワークするのかをなるべく3月の段階で決めまして、それを3月中には地衛研にもマテリアルも含めて情報提供できるようにと考えています。
○渡邉部会長 これは第1例目が発生した後に報道されましたね。その後、感染研に依頼検査のようなものはどのぐらいきていますか。
○西條参考人 検査・問合せ等については比較的多くきていまして、直接、私や担当者が受けた中で、症例定義等にそぐわない患者さんももちろんおられます。現時点では9件の検査をお引き受けする必要があって、お引き受けすることとなっています。その中の4件について検査が実施され、そのうちの2件が陽性の成績であったということです。問合せ自体は、毎日のように10件、20件くるということではありませんが、この2週間の間に20件ぐらいです。それから、症例定義等を勘案すると、その約半分について検査を引き受けているということです。
○渡邉部会長 今回、2例目、3例目が出たとなると、もっと関心が高まって、同じような疾患を診たということで、だいぶ来ることになると思うのです。私が聞くのもおかしいのですが、感染研として対応可能ですか。
○西條参考人 その点については、検体数、また、問合せの数等にもよりますが、現時点ではウイルス第一部で責任を持って対応していきたいと思っています。今は特別にこの感染症の研究にシフトすることは考えておりませんけれども、その中でしっかりと対応したい、ウイルス第一部長としてはそう考えています。
○渡邉部会長 それも含めると、3月中ということですから、なるべく早く地研等に検査体制の拡大も含めて考えたほうがよいのではないかと、これは部会長として思うわけですが、厚生労働省としてはいかがですか。
○情報管理室長 ダニの活動期になる前には準備を進められるようにしたいと考えています。
○倉田委員 2点あります。1つは、症例の話が出ましたが、過去の怪しき症例はたくさんあると思うのです。解剖されていれば全部日本病理剖検輯報に載っていますから、病理学会に正式に申し込んで、そういうことに詳しい人、ウイルスの人、いろいろな人が加わって、症例を持ってきて検討会をやったらいいのです。前にインフルエンザ脳炎・脳症で、外国から、脳炎などあり得るはずがないというクレームがきまして、病理の人みんなで検討したのです。そういう症例を持っている主治医と、解剖した病理の方と、それから、そういうことに詳しい病理の先生方にも来ていただいて、何回かに分けてやっているのです。顕微鏡を全部借りてきてここで並べてですね。現在はそういうことを過去のものに関してはできますから。ブロックが5、6個あれば、切片で何でもできますから、それを考えたらいいですね。過去10年間にこれに類似するような疾患があればと病理学会に申し込んだらいいですよ。それが1つ、解決の仕方です。過去にあったかどうか。
 もう1つは、今の話にも出ていますが、ダニの話です。これは西條さんのところにダニについてずっときちっと知見を束ねていた安藤さんという優秀な人がいまして、そのチェーンは今でもずっと生きています。これは関係あるかどうか分かりませんが、総合科学技術会議で連携施策のときに、BSL4と、鳥が運ぶ病原体という話でインフルが中心だったのですが、インフルはそれでいいのですが、鳥の航跡ですね、宮崎県、秋田県、いろいろな所から飛ばした鳥が、発信器を付けたものがどう飛んでいくか、これは今話に出た所を全部飛んでいくのです。いくらでもダニに捕まるチャンスはあるわけで、それがまた戻ってくる。帰り道は同じ道を飛んで帰ってくるわけですから、野鳥が運ぶという可能性がないとは言えない。宮崎県もそうだし、その近辺の愛媛県もそうだし。
 そういうことで、地方衛生研究所、全国でもいいけれども、そこまでお金がないとまた言われるかもしれませんが、お金は多分どこかにいくらでも隠れていると思いますので、そういうものを使って10年間ぐらい日本全国の調査を徹底的にやったらいいと思うのです。日本脳炎の蚊に関しても8県ぐらいしかやっていないような、パラパラと毎年違う所をやっています。余計なことを言って悪いのですが、富山県では43年間の歴史があります。金がくるこないにかかわらず、全部ずっとしつこく追いかけていますと、昔は県内にバラバラにあったものが、今や養豚場の所にしか陽性の蚊はいないのです、ウイルスを持っているものは。年がら年中やっているので分かってきました。
 蚊についてそういうこともありますので、ダニについても徹底的に、患者が出た所はもちろんですが、周辺を調べるべきでしょう。そうでない地域の県で、ダニのいそうな所というのは地元の研究所の方はみな分かっているわけです。ダニ屋さんというのは地研には結構いるのです、そういうことに非常に関心を持っている方が。そういうネットを使って徹底的にやったらどうでしょうか、10年ぐらい。そうすると、いろいろと役に立つデータが出てくると思います。それで初めて何か言えると思うのです。それでも見付からないかもしれない。でも、やらないことにはダニの問題と病原体の問題は片付かないと思います。それをやることを是非、私が提案するのもおかしいけれども、やったらいかがかという意見です。是非やってください。
○渡邉部会長 御提案ありがとうございます。これは厚生労働省も多分考えていると思いますが、何かコメントはありますか。
○情報管理室長 今回発生したような所では、やはりマダニを何らかの形で、先生がおっしゃるように、ある一定のスパンを目指してやっていくためには、どういった方法が必要なのか等も含めて検討させていただきたいと考えています。
○小野寺委員 予防方法として、ダニに刺されるか刺されていないかの注意をするということがありますが、非常に幅広い予防策が必要だと思います。実際にダニに刺されて医療機関を受診した場合に、一般的にどんな処置をするのか、その辺はいかがなのでしょうか。
○渡邉部会長 ダニの処置ですけれども、なかなか難しい質問ですね。
○小野寺委員 実際に医療機関に来た場合に対応しなくてはいけないと思うのですけれども、その場合に、ある程度基本的な、こういうことをしなさいということが分からないと。余り経験がないものですから、その辺の情報を教えていただきたいと思います。
○西條参考人 私も皮膚科医ではないので分からないところもありますが、一般的には、ダニを捕まえたとかダニに触れたということではまず感染しません。刺されるということがまず感染のリスクになります。刺されたダニを自分の手でまた取ろうとするときに、よく言われることは、そのダニを自分で圧して、押してですね、体液を中に入れ込んでしまうことがあって、それで感染リスクが高まると言われていますので、ダニに咬まれた場合には、できるだけ医療機関で外科的に処置してもらうとか、そのような形で対応するようにということだったと思います。現時点で私からお答えできるのは以上です。
○小野寺委員 通常の消毒でよろしいのかどうか、我々が使っているポビドンヨードとか、クロルヘキシジンみたいなものを使われることが多いと思いますが。少し切開して中のものを排出するようにするとか、処置については何か、いかがでしょうか。
○西條参考人 多分、どのような対応をしても感染を予防することができなかったり、感染しなかったりだと思います。結局、ウイルスなので消毒薬を使っても、その病原体はもう体内に入ったものは消毒などはできないので。あくまでもそれは外科的な処置をした後の感染予防ということになろうかと思います。
○廣田委員 先ほど、倉田先生から「ダニ屋さん」という話が出ました。実は、一般の開業医師の中にもダニ屋さんという非常に詳しい方がいらっしゃいます。それこそ外科的処置での取り方とか、あるいは、それをしなくても表面麻酔剤のスプレーを掛けたら取れるとか、いろいろなことが言われています。一度、そういう情報を集める機会があったら整理していただきたいと思います。また、ダニ屋さんのネットワークがありますので、取っていただいたダニを調べることによって情報も集まるのではないかと思います。そういうダニ屋さんのそういう知識・技術を経由することによって、ダニ媒介性疾患という周知も図れるのではないか、そういうことではないかと思います。
○山田委員 つい先日馬原先生の講演をお聞きしたときに、良い方法があるというお話でしたので、情報提供します。ワセリンを塗って30分ぐらい放置して、その後、ガーゼで軽くこうやると、ダニがポロッと取れるのだそうです。それは本当かどうか分かりませんが、馬原先生がおっしゃったので嘘ではないと思います。問題は、ダニが膠着してどのぐらいの期間でウイルスを注入するか、リケッチア辺りだと6時間ぐらいかかるらしいですが、その間にうまく外せば感染のリスクが減る。この場合は、恐らくそういう情報はないと思うので、ダニを外したから感染のリスクが下がるということではないのではないか。
 それから、もう1点です。そういう話が出てくると、患者さんはダニに咬まれただけで医療機関を訪れて、このダニにウイルスがいるかいないか調べろというような話になると、検査機関のアビューズになってしまうと思うので、その辺も十分に注意する必要があるのではないかという気がしました。
○渡邉部会長 ほかに御質問等ありますか。いろいろな御質問や御提案がありました。特に臨床面におきましては、まず、臨床症状を経過等も含めて情報を提供してくださいと、これは非常に重要なことだと思います。3例になりましたので、やはり日本の3例の詳しい臨床症状をオープンにして、特に臨床の先生にそういう情報が伝わることは、診断していただく面においても重要であります。何らかの方法で、厚生労働省でしたら「感染症エクスプレス@厚労省」に情報を出す。感染研でしたら、感染研のホームページなりIASR等になるべく早く情報を出すようにしていただきたいと思います。
 それから、患者周辺の調査。これはなかなか難しい点はあるのだと思いますが、今後、ダニにおけるウイルス保有状況が、頻度がどのぐらいなのか、実際にどのぐらいのリスクがあるのか、その辺も含めて調査等をすることが重要です。ダニが動き出すのは春から秋ぐらいまでの期間ですか、厚生労働省及び感染研、地方衛生研究所等で今後調査が進むものと思われますので、その辺の情報も重要だと思います。
 あと、スタンダード・プレコーションだけでいいのかどうか、接触予防策も重要なのではないかということで、その辺の情報についても調べていただいて、医師会等を通じて医療従事者や国民にその情報が伝わることが重要ではないかと思います。
 それから、研究調査です。先ほど、今まで10年ぐらいの不明疾患の蓄積が病理学会等にあるだろうということでした。日本に過去にそういうものがあったかどうかの調査も必要ではないかという御意見がありました。これらを一度に全部というわけにはいきませんが、感染研には感染病理部もありますので、そのようなところを中心に行ってもらうのも1つではないかと思います。
 ダニの専門家とうまくネットワークを使ってやったらどうかということでした。ダニに刺された後の、ダニの取り方、消毒法等も、臨床の先生にはなかなか分からないところがあると思うので、ダニの専門家の御意見をいただいた上で、その方法論等のマニュアルも作っていただくと、臨床の先生にとっても非常に有益な情報になるのではないかと思います。
 検査体制については、今は感染研で検査を行っていますが、これも疑わしい患者がたくさん出てくると手一杯になりますので、地方衛生研究所等に検査体制の構築をしていただいて、そこでもカバーしていただくような体制を、今の厚生労働省の話では3月中には何とかするということなので、感染研と力を合わせてやっていただきたいと思います。
 まとめとしては今のようなことではないかと思いますが、ほかに何か追加事項がありましたらお願いします。
○倉田委員 ダニ屋と言った意味は、患者さんとのダニの話はその臨床の話で結構なのですが、地方衛生研究所、全国でもいいし、出た地域をずっと、特に日本海側にいろいろあると思いますが、そういう所でのダニの収集です。それがウイルスを持っているかどうかというチェック、そういうことをやるべきで、ダニのサーベイランスを徹底的にやるということをしないと、何をやっても将来的には分からないだろうということです。患者の段階ではなく、その前が大事なので、それを是非やっていただきたい。それを厚生労働省にも提案します。
○渡邉部会長 ありがとうございます。実は、この前の段階で、感染研の森川班というのがありまして、そこである程度調べているのですが、今のところ見付かっていないのです。これはもう少し集中的にやる必要があると思います。先生の今の提案に基づきまして、やる時期も必要ではないかと思うのです。活動期などを踏まえて、今年の春から秋ぐらいにかけて、研究費が付けば徹底的にやることになると思います。そうすると実態がもう少し分かるようになると思います。ほかにございますか。よろしいでしょうか。
 臨床所見等の質問を踏まえた上で、厚生労働省から皆さんに提案されたSFTSの疾病分類に関してです。資料1-3に基づいて説明がありましたように、中国及びウプロ(WPRO)では公衆衛生上のリスクは「低~中程度」であるという評価がされていることも踏まえ、また、今までの臨床所見及び伝播様式等を勘案して、資料1-3の5ページのとおり、これを「四類感染症」に指定してはいかがかという提案があります。この提案に関して御意見をいただきたいと思います。
○前田委員 臨床上はそうだと思いますが、確認です。四類となりますと、感染症の指定病床での対応ではなく、一般病床での対応ということになるかと思います。標準予防策等の話もありましたが、それでよいかどうかの確認、これが1つです。
 それから、疑似症の適用がないことになりますが、あくまでも届出は確定診断後ということになりますと、それ以前のもの、今現在行われているものについては、今現在同様にお願いベースで情報提供していただいて、その中から拾い出す形になりますが、そういう形でよいのかどうか。これが2点目です。
 もう1つ、疫学調査について、感染法の第15条に基づけば何でもできますが、実際はやはり感染症法に基づく疾病であるということで動き出すのが通例なので、どうしても疫学調査は確定診断後になる可能性が高い。この3点について、四類でいいかということでの確認です。
○難波江補佐 3点ともそのように考えています。
○渡邉部会長 ほかにございますか。
○倉田委員 急性期の患者さんの扱いについてです。日本のB型肝炎予防策というのは非常に良い徹底したもので、そういうものに基づけば。例えばラッサ熱の患者の扱いについて、ラッサ熱は一種に入っていますが、そのことに関して世界の関係者と議論したことがあります。日本の肝炎対策のマニュアルは非常に良くできていて、あれをきちっとやれば多分ラッサクラスでも大丈夫だろうと言われるぐらいです。血液による伝播を考えたときに、それを標準にしてやっておけば、まず日本の中で、病院の中でですが、肝炎がバンバン伝わるということはないと思うのです。そのような話合いがあったということだけお知らせしておきます。ですから、日本のは良くできているのではないでしょうか。
○岡部委員 全体的な話です。日本の検査体制は、不明疾患に対する検査体制が余りうまく取れていないというところがあります。地研などでも、私も地研にいるのですけれども、不明というものは感染症法の対象になっていないから地研としての検査ができないということが、行政的な返事としてしばしば行われてしまうことがあります。そのようなことに対してすぐにこの場でどうこう言うことではありませんが、やはり不明疾患というのは非常に大切に扱うのだということを併せて周知していただきたいと、そのように思います。できれば整備していただけると有難いと思います。
○渡邉部会長 厚生労働省から何かありますか。
○難波江補佐 死亡例について、その死因究明については法律もできまして、今、政府全体としてどう対応するかを御議論いただいています。御指摘の点について、感染症以外の点も含めて御議論いただきまして、御指摘の点についても留意して考えていきたいと思います。
○澁谷委員 四類でいいと思います。先ほどの説明の中に、哺乳類についてはウイルスを保持していても症状の確認がされていないという記述があったと思いますが、今後、家畜のほうは何か考えていくことになるのでしょうか。
○情報管理室長 現段階ではまだ明確なプランをお話することはできませんが、やはり、中国でも動物の調査もやって少し分かってきているところもあります。日本でもそういった調査、どのような形が一番効率的に、協力を得ながらできるのかを考えながら行っていく必要はあると考えています。
○渡邉部会長 ほかにございますか。よろしいでしょうか。皆さんの御意見は、プレコーション、接触予防策も含めた形での情報をきちんと提供するということでやれば、「四類感染症」に指定して大丈夫ではないかと了解しましたが。
                (委員:了承)
○渡邉部会長 部会としてはそれを了解するということです。ありがとうございます。
 続きまして、資料1-4に基づいての、病原体等管理上の分類についてです。資料1-4の8ページのとおり、「三種病原体」に指定することでよいのではないかという説明が事務局からありましたが、これに対しての御意見等をお願いします。事後届出、7日以内に届出と。運搬の届出は公安に届け出るということです。そこが少し厳しい点になるのではないかと思います。特に御意見がなければ、「三種病原体」という取扱いでよろしいでしょうか。
○山田委員 三種で問題ないと思いますが、ただ、前から問題なのですが、三種イコールBSL3ではなくて、BSL3で取り扱うかどうかは法律とは切り離れた議論なのだろうと思うのですが、そこがこのような議論のときにいつも不明瞭なのです。三種に指定することはこの会でいけると思いますが、BSL3の取扱い、それを強制力を持ってやれるのかどうか、そこだけ少し気になります。
○渡邉部会長 これは、BSLというのは公的ではありませんね。
○情報管理室長 この三種病原体のところは、決してBSL3を、BSレベルを定めるものではないというのが、まず第1点です。ただ、BSL2、BSL3とありますが、法律や省令で定めているのは、どういったラボで取り扱うべきかというスペックを定めていますので、スペック的には結果としてBSL3のラボで取り扱うものになって、結局は感染研等でということで、BSレベルの判断とマッチングしてくるということだろうと考えています。
○山田委員 そうすると、スペック的にBSL3に準じた形の三種であるということをここで合意すればよいということですよね。
○渡邉部会長 よろしいでしょうか。ほかに特にコメントがないようでしたら、事務局の提案のとおり、三種病原体という形で規定することをこの部会でも了承したとして処理させていただきます。
                (委員:了承)
○渡邉部会長 これ以降は報告事項です。「新型インフルエンザ等対策有識者会議中間取りまとめ」について、事務局から説明をお願いします。
○新型インフルエンザ対策推進室長 新型インフルエンザ対策推進室長の佐々木です。資料2を用いて御報告させていただきます。
 新型インフルエンザ等対策有識者会議の名簿は中間取りまとめの81ページ以降に付いておりますが、この感染症部会からも、大石委員、岡部委員、小森委員、古木委員、南委員に委員として参加していただいています。先週2月7日、尾身有識者会議会長から官房長官に提出されました中間取りまとめの概要について御報告いたします。
 資料2の「概要」という所からですが、まず?として、基本的な考え方です。これは「国民の生命及び健康を保護すること」ということ。それから「国民生活及び国民経済に及ぼす影響が最小となるようにすること」というのを目指しています。2009年にありました新型インフルエンザ発生時の経験等も踏まえる、という考え方も示されています。
 この中段辺りですが、被害想定に関しては、現時点での科学的知見、過去のパンデミックインフルエンザのデータを踏まえたシナリオの例として、現行の行動計画の数値を使用することとしています。
 ?の「指定公共機関の指定」ですが、これは行政機関のみならず、様々なライフラインですとか、そういった所を法律で指定して、その業者に業務を継続していただくという話です。この中には、医療関係では国立病院機構、赤十字社、医療関係者団体、医薬品等製造販売業者等が入っています。
 ?の「国民への情報提供」ですが、これは迅速な提供と、かつ誤った情報について迅速に打ち消すということ、風評対策等も提言いただいています。
 次は2ページです。?の「医療体制の確保」ですが、これは地域発生早期までの段階について、帰国者・接触者外来を、概ね人口10万人に1か所程度設置ということをしていますが、まん延してまいりますと、早い段階で一般の医療機関において、広く診療していただくということを書いています。
 また、医療関係者への要請・指示・補償に関しては、通常の協力依頼のみでは医療の確保ができないような場合ということで、要請又は指示を行わせていただく。対象者については、災害救助法等を参考にしています。また、抗インフルエンザウイルス薬の備蓄に関しては、国民の45%に相当する量を目標という、従来の目標をそのまま用いています。
 それから?の「緊急事態宣言の要件」です。これに関しては通常のインフルエンザと比較して、相当多く重症症例が出る場合と、疫学的なリンクが切れたような場合、この2つの要件を満たしたということを踏まえて、基本的対処方針諮問委員会、これは医療・公衆衛生の専門家のメンバー、大石委員、岡部委員、小森委員も入っていますが、そういった中で意見を聞いて、政府対策本部長、内閣総理大臣が決定をするということです。
 3ページの?、「感染拡大防止のための施設の使用制限等の対象施設」ですが、これは3つ区分がありまして、区分1は学校・保育所。これは45条に基づく使用制限も含めて対応していく。現状でも学校閉鎖・学級閉鎖等を実施しているので、それと類似の対応です。区分2として、これはむしろ使用制限をかけない所でして、食料品店ですとか職場等については、通常の感染拡大防止対策を一般的な任意の協力要請で実施していただきまして、使用制限をしない。区分3については、1,000平米を概ね超えるというところを1つの目安として、場合によっては都道府県知事の判断で使用制限をかけるという、3つの区分に分けています。
 ?の「予防接種・特定接種」ですが、特定接種は国民より先に、医療や国民経済の維持ということで優先に接種するという対象者でして、対象業種としては医療、指定公共機関を中心に、実際に業務に従事する方を接種の対象者ということで考えています。
 最後は4ページです。住民に対する予防接種については、全国民に接種ということですが、発生したときに、そのウイルスの状態、病原性等々を見ながら、接種順位を決めていくということです。接種体制については集団的接種ですが、地域の実情や患者さん、妊婦さん等々、その方々の状態によって個別的な接種もあり得ると整理しています。ワクチンについては細胞培養法等の新しい製造方法を開発促進し、プレパンデミックワクチンは引き続き備蓄を進めていくということになっています。
 その他、サーベイランス、水際対策等を記述しています。全体は中間取りまとめを付けさせていただいているので、御参考いただければと思います。今後のスケジュールとしては、4月、5月を目標に政省令を出して施行し、夏頃までには行動計画・ガイドライン等も整備を進めていくということで考えています。
 なお、その政令と行動計画についてもパブリックコメントを実施して、国民の意見も参考にしながら有識者会議で決定をするという予定です。説明は以上です。
○渡邉部会長 ありがとうございます。御質問等がありましたらどうぞ。
○倉田委員 何かすごい奇抜な、古い伝染病予防法の再来という感じで読ませてもらっていますが、これは日本が、外国はどう対応するかというのが非常に大好きな国で、好んでそういう情報を取る国です。世界で私が知る限り、米国、カナダ、フランス、ドイツの友人たちと、いろいろなことで会う度に話しますが、こういうことは全く考えてもいません。これは一個一個読んでいくだけで、全部、社会生活が止まりますよね。
 1週間だったら我慢するかもしれないけれど、インフルは次から次へと、いろいろなルートから、港を閉じなければ、空も海も来ますよね。それを、日本はこうだということでやっていったら、社会生活が1年、2年にわたってピタッと止まりますから、そういうことを認識した上でこういう議論をしているのですか。もしそうでないとしたら、世界中に物議を醸しますよ。これは、どこかで外国の方と議論したことはありますか。はっきり言うとクエスチョンが100も200も付くようなものだと思って見ていますが、そこはどういうお考えで、これをやっているのですか。今時、非常に疑問が起こりますが。
○渡邉部会長 何か答えられますか。
○新型インフルエンザ対策推進室長 先ほど申し上げたように、感染症部会の先生方にも入っていただいて、専門家の意見も聞いて実施させていただいておりますし、外国との意見交換というのは、感染研に公式・非公式にもやっていただいておりますし、我々もやっています。
 あと、どういう法律を作っていくかというのは、各国独自の判断において実施していますので、いろいろと今御指摘いただいたような御心配をいただいているというのも耳にしていますが、法律の内容は、内閣官房も関係学会に出向いて、いろいろな御説明もさせていただいている。都道府県、市町村とも、これからも実施に向けて、説明会等もやらせていただくということも考えています。この法律は、いざというときにどうするかというところも含めてやっているということでして、必ずしも感染症が起きたら全てこの特措法を発動していくということではなくて、感染症法というものを基本に据えながら対応していくということです。
 そういう意味では様々な専門家の先生の御意見も聞きながら、今後とも適切に運用してまいりたいと思います。
○倉田委員 これ以上は言いませんが、感染症の専門家と称する人が、交通機関がどうとか、ガスがどうとかというところまで、こういう話に踏み込む能力があるとは思えません。ちょっと違うのではないかと思います。
 内閣官房も結構ですが、警察の方がいつもトップにいるはずです。そういう所で決めていくときに、このような問題というのは前に内閣安全保障危機管理室の会議が2001年を機にあったわけで。しつこくいろいろな話をすることによって、こういう話は出たのです。全て止めてしまえとか。だけど、そのようにはならなかった。そういう問題も、今ここに書かれている問題も、本当に実施したらどうなるというのを推定されたことはありますか委員の方々は、もしここにいるならば。これは1個推定しただけで、みんな止まってしまいますよね。
 そこは、インフルエンザをどこまで怖がっているか知りませんが、世界は全くそのように見ていないですよね。今は薬品が全部ありますから、それに対して対応する能力がみんなあるわけですね。ですから、こういう危機管理云々と言う人たちは、危機管理というのは雑な言葉すぎて私は嫌いなのですが、いろいろこれをまともに読んでいきますと、社会生活を1年、2年と止めるつもりかどうかということ。これをよく考えたほうがいいですよ。それだけです。物理的対応で、インフルエンザ感染拡大はとまらない。
○渡邉部会長 ありがとうございます。厳しい意見もあるということで、これがどういうところでアクションを起こすのかという、その判断基準は非常に重要なのだと思います。その辺のところも踏まえて、おそらく専門家会議等では検討しているのだと思いますが、その辺のプロセス等を国民に明らかにしていただくというのは、重要なことではないかと思います。
○岡部委員 私は一応、専門家と称するグループで、有識者会議に入っていましたが、基本的なところでは、今、佐々木室長も言ったように、通常のことを想定して使うわけではない。極めて限定的なときであるということ。
 ただ、そのときの委員会側の注文としては、これまでに行われたような、風評被害に惑わされて決断するようなことではなくて、やはりサイエンスベースで決めていただきたい。もちろん、全てにエビデンスがあるわけではないけれども、そこでどういう専門家を集めるかというのは、これまた議論のあるところだと思いますが、少なくともサイエンスベースのことを考慮して、決めていただきたいということ。
 それから2009年のときも、私も対応にずいぶん関わりましたが、「あのぐらいのときでも」と今は言ってもいいと思うのですが、何かアクションをとろうとすると、結局法的な根拠がないからということで、自治体等々が非常に動きにくかったというところが、その後の金澤先生を中心にした総括委員会でも言われたことなので、そういうところの背景に続いてきたことだと思います。
 ただ、いろいろなところからの御心配も出てきているように、すぐにこの法律を使うというようなことをしないように、専門家のグループとしては冷静に見ていく必要があると思います。ただ有識者検討会議の中でも、非常に両極端の意見があって、あれでもまだ手ぬるいという意見も、少なからずあったということも付け加えておきたいと思います。以上です。
○大石委員 私も委員の一人として、コメントしておきたいと思います。いろいろな感染症の専門家の先生方におかれましては、新型インフルエンザ等対策有識者会議、この内容と特措法ということについては、これが新型インフルエンザに対する対策であるという認識で、現在、抗インフルエンザ等もあって、こういった特措法などは、あまり必要ないのではないかという意見もあるところですが、1つ読み違えているのは「新型インフルエンザ等」という所で、ここにはSARS等の新感染症も含まれているということです。
 それで特措法というのは、国の緊急事態のときに、伝家の宝刀的に抜かれるものと考えていますし、それが一旦発効されても、必要に応じて有識者会議の決断で解かれることもあるわけです。このような理解でこの会議の中間取りまとめがなされています。
○小森委員 私も委員の一人として、発言させていただきます。担当になりました昨年の4月1日には、既に法については衆議院を通過していたということもありますが、非常事態宣言等については、人権宣言等に配慮する観点から、極めて謙抑的に発動されるということを、日本医師会として、当時の政府、与野党に働きかけをさせていただいて、そのような附帯決議を付けさせていただいたということでもあります。
 また、何らかのものさしがやはり要るということで、過去の行動計画等をならうことについては、委員の合意を得たわけですが、あくまで現在の医療水準の医療介入がないということを、ベースにしたということがあります。御承知のように2009の場合には、我が国の様々な素晴らしい要因によりまして、先進諸国の中では断然、死亡者は少なかったということの中から、優秀な抗インフルエンザ薬等というようなことなどを踏まえて、過剰な行動計画等にならないということは委員の合意を得たわけですが、大石委員も御指摘になられたようなことを踏まえて、新型インフルエンザ等ということの中で、行政、地域の医療機関等が速やかに動けるということを重視しつつ議論していったという経緯もあると思います。倉田先生の御指摘のことについては、非常に的確な御指摘と私も委員の一人として受け止めているので、今後、実際に発令されると、あまりあってほしくない事態ですが、その辺りのことについては岡部委員も言われたように、できるだけサイエンスベースの考えの中でこれが運用されるように、私も議論をさせていただいたということを、少し付け加えさせていただきます。ありがとうございます。
○前田委員 この案の話ではなくて、今の先生方のお話で気になったのですが、この新型インフルエンザ等です。私どもは特措法の関係について、地域の関係機関、特に医療機関の先生方とお話しますと、必ずしも「等」という認識がなくて、逆に「等」について非常に警戒される先生もいます。
 新型インフルエンザであるから、一定の医療体制、あるいはこのようなことが整備されているから、この対応で協力が得られるか、これが「等」ということで、全くの新感染症になったときにも、こういう形でとは認識されていない。あるいはそれに対して、そうなるということについては、少し警戒を持たれているという状況だということは、お話させていただきたいと思います。
○大石委員 今の前田委員の御意見はそのとおりでして、日本感染症学会の緊急討論「新型インフルエンザからいかに国民を守るか~新型特措法の問題を含めて~」についての声明において、この件が議論されているところです。今後、日本呼吸器学会とか、そういった学会の専門家に対しても、この新型インフルエンザ等対策有識者会議の中間取りまとめの内容について、周知徹底をしていきたいと考えているところです。
○廣田委員 十分な御議論を深く重ねられた結果と、敬意を表しています。ただ1点、語句の使い方ですが、死亡率、罹患率、致死率という言葉の使い方が、これは専門用語としては必ずしも正しく使われていない部分があろうかと思います。
 例えば米国でこういうのを作るとき、CDCの担当などが入って、ケース・フェイタリティー・プロポーションとケース・フェイタリティー・レート、こういったことまで、やはりきちんと区分けして使うという厳密さが維持されています。
 したがって今後、政省令を作られて、それに対する説明文などもいろいろ出てくると思うのですが、そういった専門用語の使い方について、事務局のほうでも十分配慮していただければと思います。
○渡邉部会長 ありがとうございます。ほかに御意見はありますか。よろしいでしょうか。今、部会員の先生方からいろいろな御意見が出ましたので、今後、これを詰めていく、または省令等にしていくに当たり、参考にしていただければと思います。
 では、続きまして最後の議題ですが、「感染症分科会の廃止に伴う感染症部会の新たな設置について」、事務局から説明をお願いします。
○難波江補佐 お手元の資料3、1枚紙を御覧ください。これは今月の5日に開催された厚生科学審議会で御審議いただき、御了解いただいた内容となっています。「従来厚生科学審議会運営規程第7条に基づき感染症部会及び結核部会を設置していたが、今般、感染症分科会が開催状況を勘案し廃止されることに伴い、新たに同規程第2条に基づき、部会を設置するものである」。何を言っているかといいますと、裏の「現在の厚生科学審議会の構成」ですが、左側に感染症分科会というのがありまして、その下に3つ、感染症部会、結核部会、予防接種部会というのがあります。
 本日開催している感染症部会というのは、感染症分科会の下の感染症部会となっているのですが、見直しの御審議をいただきました結果、右側にある感染症部会と結核部会については、厚生科学審議会に直結の部会とする。それから、予防接種部会を予防接種・ワクチン分科会として、その下に3つの部会を設ける。これは、今行われている予防接種製剤の見直しの議論、検討の結果、こういう形になるというものでして、これを2月5日の厚生科学審議会で御了解いただきまして、4月からこういう形で開催させていただければと考えています。以上です。
○渡邉部会長 ありがとうございます。何か御質問等はありますか。よろしいでしょうか。特にないようでしたら、本日の議題等はこれで終了します。緊急の開催にもかかわらず皆さんに御協力いただきまして、どうもありがとうございました。事務局からは何かよろしいですか。
○難波江補佐 ありがとうございました。それでは、本日の審議結果を踏まえて、感染症法におけるSFTSの疾病分類、及び感染症法に基づく病原体管理規制上のSFTSの分類については、緊急性が高いことから、パブリックコメントを本日の午後から明日まで行う予定で、3月上旬の施行を目指して、準備を進めていきたいと思います。よろしくお願いします。長時間にわたり、ありがとうございました。


(了)

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